世の中には「こうすればがんが消える!」とか「末期がんから生還した!」という誠に喜ばしい話がゴロゴロしていますが、そんなこと宝くじに当たるよりあり得ないことは理解しているつもり。
でも、いざ自分ががんの当事者になると、そこは人間の弱さというか、少しでも生きられる方法はないものかと探してしまいます。
私が目をつけたのは、生活習慣、特に食習慣の改善。
大腸がんは、がんの中でも生活習慣の影響を受けていると言われます。内科学の世界の最高峰ハリソン内科学の最新版にも「日本人に大腸がんが増加しているのは食生活の欧米化が原因である」と書かれています。
生活習慣が大腸がんの発症に関わっていることは確実だとして、問題となるのは、がんを発症して手術をしてからでもそれまでの悪習を懺悔して悔い改めたら、予後は変わるか!?ということ。
大変図々しい「改心」に聞こえるでしょうが、もしかしたら何とかなるかも(?)かもしれません。
現行の大腸がんガイドラインには、この話は出てこないから、エビデンスとしてはまだ十分ではありませんが、「藁をも掴む」話としては、その「藁」は結構しっかりしているので、同じ境遇の方がいらしたらぜひ耳を傾けていただきたい。
この議論のスタートとなった論文は、2007年にJAMAに掲載されました。JAMAは米国医師会が発行する世界で5本の指に入る医学ジャーナルです。
およそ1,000人のStage3大腸癌患者(手術、術後化学療法済み)を対象にして、摂取した食事内容と予後(治療の結末)との関連を解析しています。
まず食事内容から2つの主要な食事パターン(欧米型食パターンと健康型食パターン)に分けて解析を進めています。
欧米型食パターンとは、赤身肉、加工肉、菓子類やデザート、フライドポテト、精製穀物の摂取量が多い食事パターンのこと。健康型食パターン(prudent dietary pattern)とは、果物、野菜、豆類、魚、鶏肉、全粒穀物の摂取が多い食事パターンのこと。
結論は、「欧米型食パターンの傾向が強い人では、傾向が弱い人に比べ、有意に再発リスク、死亡率が高い。」というもの。
ただ、健康型食パターンは、それによりがんの再発を防いだり、死亡率を下げたりする効果は認められませんでした。
この研究は個々の食品や栄養成分ではなく、食事パターンに着目しているのが特徴なので、以上の結果から赤身肉や加工肉が悪い!と個々の食品に言及することはできませんが、欧米型食パターンから離れた食パターンを実践しようとすれば赤身肉、加工肉を避けるということになります。
念のため付け加えておくと、赤身肉というのは、ヒレかサーロインかという話ではなく、豚、牛、羊、鴨などの肉、要するに鶏肉、魚以外の食肉のこと。
また、加工肉というのは、ハム、ソーセージ、ベーコンなどのことを指します。