2021.08.31更新

 もうあの講演を聴いてから10年は経っているかもしれません。演者は高名な皮膚科の先生。話の流れから、「顔の老化の80%は光老化」というのは、根拠のない作り話ではないかと言い出されました。

その理由は、いろんな論文に出てくるのに、参考文献を付けている論文を見たことがない、80%という数値を挙げながら参考文献がないなんて学術文献としてあり得ないと。そうして元になる論文を探し続けて、最終的にたどりついたのは、皮膚ガンの原因の80%は紫外線という文献だったそうです。

おそらくそれがまわりまわって、いつの間にやら皮膚ガンの話が老化の話になり、参考文献は行方不明になってしまった、事の真相はこうだろうというのが先生の結論でした。

肝心の講演の本論はすぐに忘れたものの、この話は私の耳にこびりつき、以来ずっと論文でこのフレーズを見るたびに参考文献はないかと目を凝らすようになりました。そして、苦節10年、ついにその日が来ました!ある光老化のレビュー論文が、参考文献をつけて「顔の老化の80%は光老化」と書いていたのです。

その参考文献とは、Facial Plastic Surgery Clinics of North America にありました。このシリーズは研修医をしていた病院の図書館においてあって、今は知りませんが、当時は雑誌というよりハードカバーの書籍のようで、アメリカの香りを楽しむためによくめくっていたものでした。さっそく該当論文を取り寄せると、「加齢に伴う顔の変化」という総論的な論文で、その時点でちょっとイヤな予感がしたのですが、読み進めても一向に「顔の老化の80%は光老化」が出てきません。なんとどこにもない!

こんな参考文献の付け間違いなんてあるのかと憤慨しましたが、頭に上った血が下がり始めた頃に、またしても参考文献付きの「顔の老化の80%は光老化」を見つけてしまいました。今度、参考文献にあげられていたのは、the New England Journal of Medicine、泣く子もだまる医学界のトップジャーナルです。「顔の老化の80%は光老化」の言い出しっぺは、ニューイングランドジャーナル誌だったのです。

「顔の老化の80%は光老化」は、臨床研究の結論ではありませんでした。何度も言いますが、医者なら泣く子も、口うるさいベテランの医者も黙るニューイングランドジャーナル誌のほとんど公式見解といえるエディトリアルに出てくるのです。そこには、anecdotallyと断って「顔の老化の80%は光老化」と述べられていました。anecdotallyをどう訳したら正確かわかりませんが、要するに学術証拠には基づかない「見解」だったのです。ただし、それは誰も逆らえないトップジャーナルの公式見解。

およそ10年にも渡る私の「顔の老化の80%は光老化」を探す旅は、こうして「泣く子とニューイングランドジャーナルにはかなわぬ。」ということで終わったのでした。

(参考文献)
Understanding Premature Skin Aging
Uitto J.
N Engl J Med.
1997;337(20):1463-1465

 

 

 twitterへ

 

自由が丘ブログバナー  

 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

詳しいお問い合わせ・ご予約はこちらから