■前回紹介した、「日焼け止めは外に出る30分前に塗るべき!」というネットニュースにTwitter上では、すぐ効くはず!と反論が殺到した一件。
米国皮膚科学会が「15分前」を推奨していることを知っていましたが、その根拠がわからなかったので、こんな意見もあると紹介だけして、結論は先送りしました。
■実はこの時点では、以前に「皮膚の老化の80%は光老化」という都市伝説の出処を探し出すのには10年かかったことを思い出して、気長に「30分前説」の根拠を探るしかないと、日焼け止めの使い方、塗り方に言及してそうなベーシックな論文から読み始めました。
■そうしたら皮膚科領域の名だたる一流紙も「15~30分前」を勧めているし、WHOも「20分前」を勧めていることを知り愕然としましたが、それでも今回は案外あっさり問題は解決しました。優しく謎解きをしてくれたのは、カナダ皮膚科学会の公式ジャーナルでした。
■日光を浴びる15分から30分前に日焼け止めを塗ることが推奨される根拠は、ひとえにSPFなど日焼け止めの効果の測定がその条件で行われているからだったのです。水分の影響を排除するため、時間をおいてから効果測定はスタートするのです。
■想像上は塗った直後から効果がありそうでも、実際効果を証明したわけではないから、一流ジャーナルをはじめ、米国皮膚科学会やWHOなど世界的権威は、証明されていないことを推奨することはできないという立場を貫いているわけです。
■カナダ皮膚科学会の公式ジャーナルは、Twitterの皆様の憤りを晴らすように書いてくれています。「(15分から30分前に塗るべきという)推奨を支持するエビデンスはまったくない(a complete lack of evidence)」。
その上で、実際上の日焼け止めを塗るタイミングとしては、日光に当たる前に塗ればよく、ただ、水を浴びるときは15~30分前がよいと結論づけています。
■結局、誰も間違っていたわけでも、ウソ情報を流したわけでもなかったのです。たぶんこれからも「日焼け止めは外に出る30分前に塗るべき!」というネットニュースがときどき流れるでしょうが、人知れず微笑みながら聞き流すことにしましょう。
(参考文献)
1) Sunscreen application, safety, and sun protection: the evidence
Li H, et al.
Journal of Cutaneous Medicine and Surgery
2019;23(4):357-369
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