今では美容に興味のある方なら、ほとんどの方がご存知の「ハイフ(HIFU)」。この革新的な技術がどのようにして誕生し、現在の美容医療に欠かせないものになったのか、その歴史と進化の過程をご紹介します。
1. 原点は「切らずに治療する」医療技術
ハイフ(HIFU=High-Intensity Focused Ultrasound)は、もともと「メスを使わずに身体の内部だけを熱で治療する」ことを目指した医療技術です。
1920~50年代には、脳の深部や動物組織に超音波を集中照射して、表面を傷つけずに内部を加熱・破壊する研究が行われました。しかし当時は画像診断の精度が低く、照射範囲を正確に制御できなかったため、研究開発は一時停滞することになりました。
2. 画像診断技術の進歩と美容分野への応用
1980~90年代にエコーやMRIなどの画像診断技術が飛躍的に進歩したことで、HIFUは再び脚光を浴びるようになります。前立腺がんや子宮筋腫の治療で医療現場に導入され、その安全性と効果が確認されました。
この成功を受けて、「メスを使わずに熱エネルギーを届ける技術を美容にも応用できるのでは?」という発想が生まれました。2007年にはSMAS筋膜(顔のたるみ手術で重要視される層)へのHIFU照射がリフトアップに有効である可能性が示唆され、2009年に米国FDAが眉のリフトアップ目的でHIFU機器を初めて承認。美容医療での本格的なハイフ時代の幕開けとなりました。
3. 初期から第2世代HIFUへの進化
美容医療向けハイフの先駆けとなったのは、2009年に発売された「Ulthera(ウルセラ)」です。ただし当初は痛みが強い、照射範囲が狭い、機器コストが高いなどの課題を抱えていました。
2010年代に入ると、痛みの軽減や照射効率を高めた第2世代HIFUが各社から次々と登場します。韓国メーカーのウルトラセルやウルトラフォーマーなどは、複数ラインを同時に照射できる「マルチライン技術」を採用。これにより施術時間や痛みを大幅に減らすことに成功し、ハイフの普及を加速させました。
4. 世界的な普及と安全性への意識
こうした技術的進化により、ハイフは「切らないフェイスリフト」「お昼休みにできるリフト」として広く認知されるようになり、韓国や中国、東南アジアなどでも需要が急速に拡大しています。
一方で人気が高まるにつれ、無資格サロンや粗悪機器による火傷や神経麻痺などのトラブルも報告されるようになりました。そのため、日本でも医療機関での適切な施術と、安全性についての啓発活動が積極的に進められているのです。
5. 当院のウルトラフォーマーと今後の展望
当院では、韓国Classys社の「ウルトラフォーマー(Ultraformer)」を導入しています。マルチライン照射技術により痛みを抑えられることが大きな特徴です。
さらに当院では、ハイフの照射はドクターが直接行うことで、一人ひとりのお顔のたるみや肌の状態に合わせて深度や出力を細かく調整。ベストの結果が得られるよう努めるとともに、「こける」などのトラブル防止にも万全を期しています。
ハイフは、現在「切らない美容施術の代表格」として進化を続けており、リフトアップや若々しい印象を求める多くの方にとって、信頼できる選択肢となっています。