2025.11.16更新


1 はじめに

「筋トレでバストの下垂を予防できる」という考えは、美容・フィットネス業界で広く信じられています。 SNSやフィットネス雑誌では、「バストアップエクササイズ」や「美バストを作る筋トレ」といった情報が溢れています。

しかし、この考えは医学的に正しいのでしょうか。 筋トレの効果について、最新の医学研究をもとに検証していきます



筋トレでバストの下垂は防げるか?


2 バストの下垂予防と筋トレの関係:医学的エビデンスの有無


バストの下垂と筋トレの関係について、医学的なエビデンスは非常に限られています。

いきなり結論から言えば、健康な女性における胸部筋力トレーニングが将来のバスト下垂を予防するかどうかを直接検証した研究は、現時点では存在しません。

美容の予防医学において重要な課題でありながら、科学的に未解明の領域となっています。


3 バストアップ筋トレの効果を検証した唯一の研究

バストの下垂に対する筋トレの効果を直接測定した唯一の研究は、2016年に発表された減量手術を受けた女性75名を対象とした無作為化試験です(文献1)。

減量手術を受けた女性75名を対象とし a) 経皮的電気刺激と胸筋トレーニングの併用群 b) 胸筋トレーニングのみの群 c) 何もしない群 の3つにグループに分けて、乳房下垂の改善について検証したところ、経皮的電気刺激と胸筋トレーニングの併用群では乳房下垂は改善しましたが、胸筋トレーニングのみの群では改善は認められませんでした。

ただ、この研究は大幅な減量後のバストの下垂に対する治療であり、将来のバスト下垂を予防できるかどうかを検証したものではありません。


4 なぜ胸の筋トレは意味ないのか?「大胸筋でバストアップ」の嘘と真実

では、なぜ一般的に「筋トレでバストアップする」と言われているにも関わらず、医学的には効果が限定的なのでしょうか。 その理由は、バストの形状を維持している主要な構造が筋肉ではないからです。バストを支えているのは「クーパー靭帯(Cooper’s ligament)」と呼ばれる繊維組織です。


4-1 胸が垂れる原因は筋肉ではない?クーパー靭帯と筋トレの関係

クーパー靭帯は、乳腺組織を皮膚や胸筋膜につなぎ止める役割を果たしており、バスト全体に網目状に張り巡らされています。 胸が垂れる主な原因は筋肉の衰えではなく、この靭帯が伸びたり損傷したりすることにあります。

米国の形成外科医は、乳房の下垂をテーマにした論文の中で、筋トレがバストの下垂予防に役立たない理由を的確に説明しています。

「バストは皮膚とは強く結合していますが、筋肉(胸壁)とはゆるくつながっているだけです。筋トレをしても、バストは筋肉とともに上がる以上に、皮膚とともに落ちていくものなのです(文献2)」


4-2 一度伸びたクーパー靭帯は復活しない

残念ながら、一度伸びたクーパー靭帯は元に戻ることはありません。 大胸筋はバストの土台となる位置にありますが、バスト自体(乳腺組織と脂肪)とは直接的な構造的つながりはありません。つまり、どれだけ大胸筋を鍛えても、伸びてしまったクーパー靭帯を復活させたり、バストそのものを持ち上げたりする効果は期待できないのです。



5 まとめ:バスト下垂を治す方法は筋トレ以外にある

バストの下垂予防における筋トレの効果について、医学的には「見た目の補正には役立つが、構造的な下垂の予防・改善を裏付ける証拠はない」という位置づけが適切です。

筋トレによって期待できる効果
✅胸部全体のボリュームアップによる見た目の改善
✅姿勢の改善によるバストラインの印象向上
✅上半身の筋力向上による全体的な体型改善

筋トレでは期待できない効果
✅クーパー靭帯の強化
✅構造的な下垂の予防
✅すでに下垂したバストの根本的な改善

バストの下垂を予防したい場合は、適切なブラジャーの着用、急激な体重変動の回避、禁煙などの生活習慣の改善が重要です。

筋トレは健康維持やボディメイクには有効ですが、バストの下垂予防に関しては過度な期待を持たず、現実的な効果を理解した上で取り組みましょう。


【参考文献】

1. Ruiz-Tovar J, Llavero C. Effect of Pectoral Electrostimulation on Reduction of Mammary Ptosis After Bariatric Surgery. Surg Laparosc Endosc Percutan Tech. 2016 Dec;26(6):459-464.​​​​​​​​

2. Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

 

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月16日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.15更新


1 はじめに

判断の誤りの典型に「単なる前後関係なのに因果関係があると判断してしまう」というのがあります。

たとえば洗車をしたら雨が降ってすぐ汚れた経験をしたことから、「洗車をすると雨が降る!」と洗車が原因、雨が結果と思い込むこと。

これくらいバカバカしいとすぐに見透かすことができますが、では「授乳するとバストが垂れる」はどうでしょう?


授乳は乳房下垂の原因にはなりません

2 「授乳すると胸が垂れる」は本当?バスト下垂にまつわる誤解

実際、世界中に「授乳するとバストが垂れる」伝説はひろまっています。

イタリアの女子高生の30%はそう信じていると回答していますし、ドミニカの女性が早めに母乳育児を切り上げる理由にもなっています(文献1)。

このように「授乳するとバストが垂れる」伝説は、世界中の育児に影響を与えているわけですが、医学的に見て、その伝説はほんとうに正しいのでしょうか?


3 大幅な減量で胸が垂れる?形成外科・美容外科から見たバストの変化

バストは形成外科・美容外科における診療分野の大きな柱のひとつ。日本では圧倒的に胸を大きくする豊胸術が行われますが、米国では逆に大きく、垂れた胸を小さく、引き上げる手術がよく行われています。

肥満が社会問題になっている米国では、胃を小さくしたりする肥満に対する手術がよく行われますが、その結果大幅に減量してバストが垂れて、今度はバストの下垂の美容手術を受ける女性も多いそうです。


4 医学的に証明された「胸が垂れる原因」とは?喫煙や加齢の影響

そんなバストの下垂と日々向かいあう米国の形成外科医から、「何がバストを下垂させているか?」を検討した報告が出されました(文献1)。

それによるとバストを下垂させる原因とされたのは
加齢:皮膚の弾力低下によるもの
22.7キロ(50ポンド)を越える体重減少:22.7キロ(50ポンド)を越えるダイエットなど
肥満:BMIが高いことによる負担
大きなブラサイズ:重力の影響を受けやすいため
妊娠回数が多い:授乳ではなく、妊娠そのものによるホルモンや体型の変化
喫煙:タバコは皮膚のハリ成分を破壊するため
でした。


5 授乳ではなく「妊娠」が胸の変化の原因?医学的根拠による結論


この報告は、「妊娠することで下垂したのであって、授乳したからではない」と、前後関係はあっても、原因と結果の因果関係にはないとしています。

報告した医師は、「授乳でバストが崩れる」ことへの懸念が、先進国で母乳育児する率が高まらない一因になっていると憂慮していますが、「妊娠回数が多いとバストが崩れる」なら、ますます少子化に拍車がかかるのではないかと私は憂慮しています。



(参考文献)
Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月15日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.13更新

1:はじめに

日本国内での美白スキンケア市場は 2,000〜3,000億円規模と言われますが、さまざまな製品であふれかえっていて、何を選んだらいいか皆様もお悩みではないでしょうか。

そこでエビデンスという視点から見ることで、皆さんの選択をサポートできればという思いで「美白成分ランキング2025」というブログ記事を書きました。

それはかなりの時間と手間暇をかけた労作でしたが、その予備調査の中で最終的にはランキングから漏れたものの、将来有望と思われる成分もありましたので、今回はそれを紹介します。
*ただし、当院では取り扱っていません。宣伝広告の意図はありません。


2:次世代の美白成分Melasyl(メラジル)とは?

今回ご紹介するのは、ロレアル社が18年もの研究を経て開発した独自の美白成分Melasyl(メラジル)です。

これまでの美白成分と何が違う?

次世代美白成分メラジル

従来の美白成分の多くは、メラニンを作る細胞(メラノサイト)にある「チロシナーゼ」という酵素の働きを阻害するものでした。

それに対してMelasyl(メラジル)は、メラニン色素の"材料"となる「メラニン前駆体」と結合して、メラニン色素になるのを妨害するという、新しいアプローチをとっています。これにより、メラニン色素を作る細胞にダメージを与えることなく、過剰な色素沈着だけを選択的に抑えることができます。

日本では「2-メルカプトニコチノイルグリシン」という化粧品表示名称で、整肌成分に分類されます。海外では、ラ ロッシュ ポゼの「メラ B3 セラム」などに配合されています。


3:Melasyl(メラジル)の成分特徴

この成分が注目される理由は、大きく分けて「有効性」と「安全性」の両立が期待できる点にあります。

a. 高い有効性

肝斑(かんぱん)治療において、ハイドロキノン4%との直接比較試験(3ヶ月)で同等(非劣性)の改善効果が示されました。さらに、肌への刺激反応はMelasyl(メラジル)群(6.0%)の方がハイドロキノン群(21.4%)より有意に少なかったと報告されています(文献1)。

近年注目されるブルーライト(HEVライト)による色素沈着モデルでも、ビタミンCでは効果が見られなかったのに対し、Melasyl(メラジル)は有意な改善を示しました(文献2)。

b. 非常に高い安全性・忍容性

Melasyl(メラジル)は、メラニンを作る機能を完全に止めてしまうわけではないため、肌への負担が少ない設計と考えられます。

臨床試験を通じて、強い刺激や有害事象の報告が目立たないのが大きな特徴です。特に、アジア人やラテン系、アフリカ系の肌(フィッツパトリックIV〜VI)を含む多様なスキントーンに対しても、良好な安全性と有効性が示されています(文献1〜3)

これにより、従来の成分で刺激を感じやすかった方や、長期間の継続使用(*)を目指す方にとって、現実的な選択肢となる可能性があります。
注意(*) ハイドロキノンには使用期間の制限があります。


4:Melasyl(メラジル)の課題・留意点

美白成分として高いポテンシャルを感じさせるMelasyl(メラジル)ですが、現時点での課題もあります。

a. 入手しにくさと価格
ロレアル社の独自特許成分であるため、2025年現在、配合されている製品はまだ限定的です。そのため、製品はプレミアム価格になりがちです。

b. 香りの問題は「製品次第」
Melasy (メラジル)が配合されたラ・ロッシュ・ポゼのメラ B3 セラムには特徴的な香料が配合されていて、香りに敏感な使用者にとっては強く感じられる可能性があります。ただし、これはMelasy (メラジル)の問題ではなく、製品の処方設計によるものです。

c. 長期的なデータの不足
これまでの試験成績は良好ですが、登場してからまだ日が浅いため、10年、20年といった超長期的な使用データはこれから蓄積されていく段階です。


5:まとめ

✅Melasyl(メラジル)は、従来とは異なるメカニズムで美白効果を発揮する新しい成分として、大きな可能性を秘めています。特に、ハイドロキノンと同等の効果を持ちながら、刺激が少なく、多様な肌質の方にも使用できる点は大きな魅力と言えるでしょう。

✅現時点では入手可能な製品が限られているものの、今後の製品展開次第では、敏感肌の方や長期的な美白ケアを望む方にとって、有力な選択肢となることが期待されます。

✅メラジルは素晴らしい成分ですが、もし既にあるシミや肝斑を『より早く、確実に』治療したい場合は、やはりハイドロキノントレチノインを用いた治療がゴールドスタンダードです。当院では医師の管理下で副作用をコントロールしながら処方を行っています。



クリニックで取り扱う美白関連製剤

 

おすすめの関連ブログ記事

 



【参考文献】

1) Efficacy and tolerability of a new facial 2-mercaptonicotinoyl glycine-containing depigmenting serum versus hydroquinone 4% over 3-month treatment of facial melasma
Thierry Passeron, et al.
Dermatol Ther
2025;15:2379

2) Topical prevention from high energy visible light-induced pigmentation by 2-mercaptonicotinoyl glycine, but not by ascorbic acid antioxidant: 2 randomized controlled trials
Virginie Piffaut, et al.
Front Pharmacol
202516:1651068

3) Efficacy of a 2-MNG-containing depigmenting serum in the treatment of post-Inflammatory hyperpigmentation
Ann Laure Demessant-Flavigny, et al.
J Cosmet Dermatol
2025;24(2):e16735


 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.09更新

1 はじめに

「次世代レチノール」として注目を集めているバクチオール。今回は、バクチオールのマーケティング戦略から実際の効果まで、医学的な視点で客観的に解説します。レチノールが肌に合わなかった方、エイジングケアを始めたいけれど刺激が心配な方に、ぜひ知っていただきたい内容です。


2 「次世代レチノール」は嘘?バクチオールの仕組みとマーケティングの真実

「次世代レチノール」は嘘?バクチオールの仕組みとマーケティングの真実

「バクチオール」というコスメ成分には、「次世代レチノール」、「第二のレチノール」、「レチノールに代わる・・」などのキャッチフレーズがついています。

そのおかげで初めて「バクチオール」を目にした人にも、いかにも効果があるような期待感を与えることに成功しています。

たとえその人がレチノールを知らなくても、少なくとも「従来より進んだ新しい成分」というポジティブなイメージを植え付けることができるでしょう。

この場合、レチノイドの中でも「レチノール」を相手に選んだのがニクい。これがレチナールだと知名度が低いので、消費者の心に響かないし、トレチノインを選ぶとただではすみません。レチノイドはトレチノインを中心にエビデンスが積み重ねられてきているから、すぐに医学論争に発展します。

そこで、「レチノール」。これが感心するほどにちょうどよい。たいていの医師も、「まあ、コスメだから好きなように言わせておくか・・」とスルーしてくれます。

レチノールのイメージを消費者に刷り込ませることで、細かく説明するまでもなく、その効果を消費者に想像させることができます。

実に見事なマーケティング戦略です。

バクチオールの医学的裏付けとなる学術文献(文献1)はメーカーの研究員が書いています。

その題名は
Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects
で、タイトルでもレチノールに似た機能(retinol-like functional)を持つと強調しています。

本文に入ると冒頭からひたすらレチノイドの話が展開され、全体的にもレチノールとの類似性をこれでもかと強調しています。最初これを読み終えたとき、レチノールとの類似性を強制的に理解させられただけで、肝心のバクチオールについてはさっぱりわからないという、不思議な気分になりました。

この論文のタイトルにあるa retinol-like functional compoundから「次世代レチノール」、「第二のレチノール」、「レチノールに代わる・・」などのキャッチフレーズが生まれているのです。


3 バクチオールとレチノールの医学的な違い|構造・作用機序・エビデンス

論文では、バクチオールとレチノールは皮膚に作用した時の遺伝子応答で重なる部分があるとして、両者の類似性を主張しています。

ただし、バクチオールとレチノールは構造的に類似性がないし、レチノールを含むレチノイドの特徴であるレチノイン酸受容体との結合は示されていないことから、薬理学的にはまったくの別物です。せいぜい作用機序的に「重なる部分がある」と言えるくらい。

なのでretinol-likeと言えるかといえば、医学的には言い過ぎであり、広告的にはよくできたコピーとなります。


4 エビデンスに基づくバクチオールの効果

構造的、薬理学的にはバクチオールとレチノールは別物ですが、以下に挙げた臨床効果における、a. アンチエイジング効果、b. ニキビへの効果は共通しています。


4-1 小ジワなどのアンチエイジング効果

レチノールとの比較研究では、バクチオール0.5%クリーム(1日2回)とレチノール0.5%クリーム(1日1回)が12週間にわたって比較され、小ジワと色素沈着を同程度に減少させました(文献2)。

4-2 ニキビ・ニキビ跡への効果

軽度から中等度のニキビ患者を対象とした0.5%バクチオールクリームを12週間使用するパイロットスタディでは、炎症性病変の数が有意に減少し、炎症後色素沈着(PIH)も改善しました(文献3)。


ニキビ治療はガイドラインに基づく皮膚科での治療が基本ですが、さらに治療を強化するなら美容皮膚科でのケミカルピーリングプラズマ治療をお勧めします。


4-3 皮脂抑制と抗アンドロゲン作用

ジヒドロテストステロン(DHT)への変換に関わる酵素を阻害することで、皮脂分泌の増加と微小コメドの形成を抑制できる可能性が示唆されています(文献4)。ただし、人でのエビデンスは十分とは言えません。


5 バクチオールの副作用は?妊娠中・授乳中の使用や「皮むけ」について

バクチオールとレチノールの比較試験では、レチノール群に皮むけ・ヒリヒリ感が多く、バクチオール群では問題は少なかったと報告されています。バクチオール群で4週時に一時的に赤みが見られた人も8〜12週時には軽快していました(文献2)。

まれな有害事象として、アレルギー性接触皮膚炎が挙げられます。

なお、レチノールなどレチノイドは妊娠中には使用することができません。バクチオールはレチノールとの類似性を強調されていますが、実際には別物なので話は違いますが、妊娠・授乳中のデータは不足しています。製品の注意書きの指示に従って下さい。


6 バクチオールとレチノールどっちを使う?敏感肌や合わない人への推奨

バクチオールは、レチノールの代替品というより、レチノールがどうしても肌に合わない方の「ひとつの選択肢」と位置付けるのが現実的です。

こんな方へ

  • 1.刺激反応のためどうしてもレチノールが使えない
  • 2.敏感肌で刺激を極力避けたい
  • 3.エイジングケアを始めたいが、まずは刺激の少ない製品から始めたい
    *ただし、「刺激の少ない」レチノールを求めてバクチオールに手を出すくらいなら、あくまでレチノールで、ただその使い方を工夫すべきです。


レチノールはエイジングケアとして使うには力不足であり当院では取り扱っていません。名前は似ていますが、レチナールCDトレチノインをお勧めします。レチノイドは使い慣れるのにコツが必要ですが、当院では皆様がトラブルなく使っていけるようメールでサポートしています。


7 まとめ:バクチオールはレチノールの完全な代わりにはならない

⭐️バクチオールは「次世代レチノール」という魅力的なキャッチフレーズで注目を集めていますが、その実態はレチノールとは構造的・薬理学的に異なる別の成分です。

⭐️しかし、臨床研究ではアンチエイジング効果やニキビへの効果が確認されており、レチノールと比較して刺激が少ないという大きなメリットがあります。朝晩使用でき、他の成分との併用制限も少ないため、使い勝手の良さも魅力です。

⭐️バクチオールは「レチノールの代替品」ではなく、「レチノールがどうしても合わない方にとっての一つの選択肢」として理解するのが適切でしょう。


ご自身の肌状態に合わせて、適切な成分を選択することが、効果的なスキンケアの第一歩です。



医師が選ぶ「結果が出る」レチノイド療法

 

【参考文献】

1 Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects
Chaudhuri RK,et al.
Int J Cosmet Sci.
2014;36(3):221-230

2 Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing
S Dhaliwal,et al.
Br J Dermatol
2019;180(2):289-296

3 Applications of bakuchiol in dermatology: Systematic review of the literature
Carolina Puyana,et al.
J Cosmet Dermatol
2022;21(12):6636-6643

4 The Use of Bakuchiol in Dermatology: A Review of InVitro and InVivo Evidence
J Greenzaid,et al.
J Drugs Dermatol
2022;21(6):624-629


 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月9日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.10.09更新

はじめに

お母様やお父様の肌を見て、「少しぶつけただけで皮膚が裂けてしまった」、「紫色のあざができやすくなった」と心配になったことはありませんか?

これらは「皮膚粗鬆症(ひふそしょうしょう)」と呼ばれる、高齢者特有の皮膚脆弱化(皮膚脆弱)現象かもしれません。骨粗鬆症が骨をもろくするように、皮膚粗鬆症は皮膚を構造的に弱くし、わずかな外力でも深刻な損傷を起こすことがあります。

しかし、皮膚脆弱の対策や皮膚萎縮のスキンケアを正しく行うことで、このようなもろくなった皮膚を守り、高齢者の生活の質(QOL)を改善できます。

本記事では、医学的根拠に基づいた皮膚保護とスキンケアの実践法を、家庭でも実践できるようわかりやすく解説します。

高齢者の肌の守り方


なぜ高齢者の肌は“もろく”なるのか

加齢に伴い、真皮のコラーゲンや弾性線維が減少し、軽い摩擦やずれでも皮膚裂傷(スキンテア)や紫斑が生じやすくなります。

また、長期のステロイド外用や紫外線曝露も皮膚萎縮や皮膚脆弱化を促進します。こうした慢性的な皮膚の構造的脆弱性は、“dermatoporosis(皮膚粗鬆症)”として提唱されています(文献1)。

日本でも「スキンフレイル」という概念が導入され、乾燥や弾力低下を中心とした皮膚の予備力低下を全身フレイルと関連づけ、早期の皮膚脆弱対策と皮膚保護の重要性が強調されています(文献2)。


家庭で守る「5つの柱」

1)皮膚を“乾かさない・こすらない”(毎日のスキンケア)

皮膚脆弱スキンケアの基本は、「乾かさない」「こすらない」ことです。

洗浄(入浴)

✅ぬるめ(38~39℃)・短時間で行いましょう。
✅高温浴(40℃以上)は高齢者の失神・溺死リスクが指摘されています(文献3)。
✅石けん成分を含まない低刺激性洗浄料を使い、泡で包むようにやさしく洗います。

高齢者の皮膚はアルカリ性に傾きやすく、固形石鹸などの使用はバリア機能の低下を招きます。弱酸性環境を保つことが皮膚保護につながります。

保湿

日本皮膚科学会の報告によると、高齢者の70%以上に乾燥がみられ、これが皮膚脆弱化の主因とされています(文献4)。

✅入浴後すぐに全身へ保湿剤を塗布し、保湿剤は1日2回を目安に継続しましょう。
毎日の保湿ケアによりスキンテア(皮膚が裂けたり、めくれたりすること)の発生率が約50%減少したという報告もあります(文献5)。

✅保湿剤選びのポイント

有効成分主な製品例作用機序最適な使用状況注意点
ヘパリン類似物質 ヒルドイド 水分を角層に結合・保持 全身の乾燥 出血傾向のある方は慎重に
尿素 ケラチナミン、ウレパール 角質軟化作用 手足、かかとなど角質の厚い部位 傷や炎症部位では刺激感あり
ワセリン プロペト、白色ワセリン 皮膚表面に膜形成 重度の乾燥、敏感部位の保護 べたつきが強い

*保湿剤はこの3種類だけではなくたくさんあり、どれを選ぶかよりも、「塗る量」、「塗る頻度」が重要です。


✅「ティッシュペーパー法」で適量を確認すると、過不足のない塗布量が分かります。

1️⃣保湿剤をぬる
手や足など、かさついているところに、保湿剤をぬります。

2️⃣ティッシュをあてる
 ぬった場所に、ティッシュペーパーを軽くのせます。そっとあててください。

3️⃣ティッシュの様子を見る
すぐに落ちる → ぬる量が少ない
べったりくっつく → ぬる量が多すぎる
少しだけついて残る → ちょうどよい


2)摩擦・ずれ・打撲を減らす(皮膚が裂けたり、めくれたりしないために)

✅皮膚脆弱対策では、皮膚に力を加えない工夫が重要です。
✅衣服は長袖・長ズボン・膝下靴下を基本に、前腕・下腿はチューブ包帯などで保護。家具の角や手すりには緩衝材を装着しましょう。
✅移乗の際は「引きずらずに持ち上げる」ことが鉄則。介助者は指輪・長い爪を避けることも皮膚保護につながります。

これらはISTAP(国際スキンテア諮問委員会)の最新ガイドライン(2018)に基づいています(文献6)。


3)接着剤(テープ・ドレッシング)による皮膚損傷を回避

高齢者の皮膚萎縮対策として、医療用テープ選びは極めて重要です。

✅低外傷性シリコーン系テープを優先(文献7)
✅必要最小限の範囲に貼付し、剥がす際は「低い角度でゆっくり(low & slow)」を徹底
✅リムーバー・バリア膜の併用も有効です。皮膚表面を保護し、剥離時の外傷を軽減します。


4)生活習慣:栄養・水分・日光対策・“低温やけど”防止

✅皮膚の構造を守るには、体の内側からの皮膚脆弱対策も欠かせません。
✅たんぱく質摂取:高齢者は1.0–1.2g/kg/日(文献8)を目安に。
✅水分補給:脱水は皮膚の乾燥と脆弱化を進めます。
✅日光対策:SPF30以上・PA+++以上を使用し、外出中は2時間ごとに再塗布。帽子・衣服・日陰も活用。
✅低温やけど防止:湯たんぽ・カイロの長時間接触を避けましょう(文献9)。


5)服薬・併存症に配慮

✅ステロイド外用・全身投与は皮膚萎縮を助長します。使用部位や期間を最小限に(文献10)。
✅抗凝固薬内服者では紫斑・皮下出血のリスクが上がるため、環境整備による打撲防止が重要です。


まとめ

高齢者の皮膚は、加齢や紫外線、薬剤、慢性的な乾燥などによって構造的に弱くなり、皮膚脆弱・皮膚萎縮・皮膚粗鬆症といった状態を招きます。

しかし、日々の皮膚保護と生活習慣の見直しで、皮膚を守り、再びしなやかさを取り戻すことが可能です。

皮膚脆弱対策のポイントは以下の5つです。

1️⃣皮膚を乾かさず、こすらない
─ 弱酸性洗浄料と1日2回の保湿で皮膚バリアを守る。

2️⃣摩擦やずれを防ぐ
─ 服装・環境整備・介助方法を工夫してスキンテアを予防。

3️⃣テープ・ドレッシングによる損傷を防ぐ
─ シリコーン系製品・リムーバーを上手に活用。

4️⃣栄養・水分・日光・温熱の管理
─ 内側からの皮膚強化と、外的刺激からの保護を両立。

5️⃣薬剤・疾患への配慮
─ ステロイドや抗凝固薬による皮膚萎縮リスクを意識し、医師と連携。

高齢者の皮膚は、「老化だから仕方ない」と思われがちですが、適切なスキンケアと保護で再び強く、美しく保つことができます。ご家庭でのケアが、転倒やスキンテアなどの重大な事故を防ぎ、生活の質を支える第一歩です。


 

関連記事・サイトもお楽しみ下さい

 

【参考文献】

1) Dermatoporosis: a chronic cutaneous insufficiency/fragility syndrome. Clinicopathological features, mechanisms, prevention and potential treatments
Kaya G, Saurat JH
Dermatology
2007;215(4):284-94

2) 地域高齢者に対するスキンフレイルスクリーニングツールの開発と妥当性の評価
飯坂真司, et al.
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
2018;22(3): 287-296.

3)Effects of Hot Bath Immersion on Autonomic Activity and Hemodynamics Comparison of the Elderly Patient and the Healthy Young
Y Nagasawa, et al.
Jpn Circ J
2001 Jul;65(7):587-592

4) 高齢者における皮脂欠乏性湿疹診療の手引き 2021
日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/131_2255.pdf

5) The effectiveness of a twice-daily skin-moisturising regimen for reducing the incidence of skin tears
Keryln Carville, et al.
Int Wound J
2014 Aug;11(4):446-53

6) Best Practice Recommendations for Prevention and Management of Skin Tears in Aged Skin: An Overview
Kimberly LeBlanc, et al.
J Wound Ostomy Continence Nurs
2018 Nov/Dec;45(6):540-542

7) Overlooked and underestimated: medical adhesive-related skin injuries
Sian Fumarola, et al.
J Wound Care
2020 Mar 1;29(Sup3c):S1-S24

8) ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics
Dorothee Volkert, et al.
Clin Nutr
2022 Apr;41(4):958-989

9) 「低温やけど」の事故防止について(注意喚起)
独立行政法人製品評価技術基盤機構
https://www.nite.go.jp/data/000005074.pdf

10) Glucocorticoid-Induced Skin Atrophy: The Old and the New
Elena Niculet, et al.
Clin Cosmet Investig Dermatol
2020 Dec 30:13:1041-1050

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年10月10日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.10.02更新

 

CBD


はじめに

美容業界でも大麻の成分のうち向精神作用のないカンナビジオール(CBD)を含むコスメが次々に登場しています。しかも、カンナビジオール(CBD)には

✅抗炎症作用
✅抗酸化作用
✅皮脂分泌抑制(抗ニキビ)作用
✅保湿作用
✅創傷治癒促進作用
✅アンチエイジング作用

が期待されている(文献1)というのですから、とてつもないスケールです。それがほんとうならカンナビジオール(CBD)コスメだけでスキンケアは全てまかなえそうです。


なぜCBDにこれほど期待が寄せられるのか

なぜこんなにもカンナビジオール(CBD)に期待が寄せられるかと言えば、カンナビジオール(CBD)が、内因性カンナビノイド受容体と結合できるから。

内因性カンナビノイド受容体は、おもに中枢神経系、免疫系で働きますが、皮膚でも健康な肌を支えている(文献2)ことから、CBDコスメにもきっと様々な美肌効果があるはずという甘い(?)期待が膨らんでしまうのです。


「内因性カンナビノイド受容体」とは何か

「内因性カンナビノイド受容体」が期待の根源にあるのですが、なぜ身体の中に大麻成分に対応する受容体があるのでしょうか?

別に人の身体は大麻のためにはじめから受容体を用意していたわけではありません。ただ身体の中に入った大麻の作用機序を調べる中で、大麻成分と結合する未知の受容体が発見され、「内因性カンナビノイド受容体」と命名されたのでした(文献3)。


受容体の作用とリガンドの関係

「内因性カンナビノイド受容体」が作動すると皮膚においては

✅抗炎症作用
✅抗酸化作用
✅皮脂分泌抑制(抗ニキビ)作用
✅保湿作用
✅創傷治癒促進作用
✅アンチエイジング作用

などの多彩な作用を発揮する可能性がある(文献1)のですが、リガンド(受容体に結合できる物質)はスイッチのようなもので、受容体をオンにすることもあればオフにすることもあるのです。


実際の臨床試験で確認された効果は?

なので外用薬としてのカンナビジオール(CBD)がどのような効果を持つかは、期待論だけを膨らませても無意味で、実際に臨床試験で確認するしかありません。

質の高い臨床試験(ランダム化比較試験など)が行われていることを条件にすると、効果が実証されたのは

◎乾燥性湿疹(文献2)
◎乾癬(文献4)

にとどまります。

これ以外では、ニキビに関してはランダム化二重盲検比較試験である第II相臨床試験が進行中とされ、途中経過で有望と報告されています(文献5)が、続報は途絶えています。

もしニキビや酒さ(赤ら顔)にスキンケアで対応するのであれば、CBDのような新しい成分よりも、すでに医学的に抗炎症・皮脂抑制効果が確立されているアゼライン酸トレチノインを選択する方が、現時点では賢明と言えるでしょう。

期待された慢性的な皮膚のかゆみについては、100名の患者を対象としたランダム化比較試験で、その効果が否定されてしまいました(文献6)。


まとめ

◉現状では、華々しい効果の期待は萎みつつあり、せいぜい保湿剤にしかならないと結論づけられます。

単なる保湿目的や乾燥肌のケアとして考えるなら、高価なCBDコスメに手を出す前に、医療機関専売のADパーフェクトバリアのような高保湿・低刺激な製品をお試し下さい。

◉少なくともCBDコスメが声高に宣伝するような皮膚の恒常性の維持に関わっているかのような物言いは、故意か過失かはともかく完全に言い過ぎです。

本当の意味で皮膚の細胞外マトリックスに働きかけ、肌の恒常性や自活力を取り戻したいとお考えなら、CBDコスメではなく、美容医学的なアプローチであるスネコスプロファイロなどの細胞外マトリックス製剤をお勧めします。

◉CBDコスメは、「内因性カンナビノイド受容体」とそれが作動したときの「内因性カンナビノイドシステム」という身に余る命名を最大限に利用(悪用?)したに過ぎないというのが、現状での私の結論です。

 

 

ブログ人気記事ランキング

 *2025年10月1日調べ


【参考文献】

1) Therapeutic Potential of Cannabidiol (CBD) for Skin Health and Disorders
Sudhir M Baswan, et al.
Clin Cosmet Investig Dermatol
2020 Dec 8:13:927-942

2) Cannabinoid Signaling in the Skin: Therapeutic Potential of the "C(ut)annabinoid" System
Kinga Fanni Tóth, et al.
Molecules
2019 Mar 6;24(5):918

3) カンナビノイド受容体の内因性リガンドの発見
木村 敏行
ファルマシア
1993;29(11):1293

4) Cannabinoids and Their Receptors in Skin Diseases
Eun Hee Yoo, Ji Hyun Lee
Int J Mol Sci
2023 Nov 20;24(22):16523

5) Cannabinoids: Therapeutic Use in Clinical Practice
Cristina Pagano et al.
Int J Mol Sci
2022 Mar 19;23(6):3344

6) Cannabinoids for the treatment of chronic pruritus: A review
Christina Avila, et al.
J Am Acad Dermatol
2020 May;82(5):1205-1212

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年10月2日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.09.16更新


「骨粗鬆症」はよく知られていますが、「皮膚粗鬆症」という言葉は初めて聞く方も多いのではないでしょうか。しかし、これは年齢を重ねるすべての人に関わる、皮膚の究極的な老化現象です。


「みんなの皮膚粗鬆症」イメージ画像


1 皮膚粗鬆症(ひふそしょうしょう)とは?加齢で皮膚が薄く脆弱になる病態

皮膚粗鬆症とは、加齢などにより皮膚が薄く(皮膚萎縮)、もろくなる(皮膚脆弱)状態を指します。皮膚が脆弱化すると、わずかな摩擦や刺激でも内出血によるアザができたり、皮膚が裂けやすくなります。

特に高齢者の手足に多く見られ、ケア施設で腕などに包帯を巻いている方がいるのは、それが原因であることが少なくありません。

ひどい場合は、皮下で大きく出血する「深部剥離性血腫」といった、重篤な合併症につながることもあります。

2 皮膚粗鬆症の主な症状(皮膚萎縮・偽瘢痕・老人性紫斑)

典型的な症状を紹介します。


皮膚萎縮

皮膚がペラペラにうすく、透けて見えるようになること。日光に暴露されていた部分に生じます。

皮膚萎縮



偽瘢痕
傷つけた覚えがなくても、自然に真皮に亀裂が生じて瘢痕化します。70歳以上の20~40%に見られ、女性に多いとされます(文献1)。

偽瘢痕


老人性紫斑
わずかな外傷でも、また外傷の覚えがなくても生じます。血管が破れてできることもありますが、血管から血液が漏れ出て生じるとも言われます。

老人性紫斑



こうした皮膚粗鬆症の根本原因は加齢。60歳前後から見られるようになり、70歳以上では多くの人で認められるようになります。ということは、人生100年時代にはきわめてありふれた、みんなに共通した肌トラブルになるはずです。

「皮膚粗鬆症」という言葉が生まれたのは2007年。まだ疾患名とは認められていませんが、
その存在が知られるようになり、予防することが一般的になれば、それはきっとご高齢の方のQOLの改善につながります。自分の肌がどうなるかということだから、誰にとっても人ごとではありません。


3 皮膚が薄い・脆弱になる原因とは?ステロイドや加齢の影響

◉皮膚粗鬆症の主な原因は加齢、長年の紫外線ダメージ、そしてステロイドの長期使用です。ステロイドを長く使用していると、副作用として皮膚萎縮が起こり、皮膚が薄くなることが知られています。

◉この病態の根底には、皮膚の表皮細胞(ケラチノサイト)の細胞膜にある「ヒアルロソーム」の機能不全が深く関わっていると考えられています(文献2)。

◉「ヒアルロソーム」は皮膚において「ヒアルロン酸工場」の役割を果たしています。ヒアルロン酸が減少することで、皮膚はボリュームを失い、皮膚脆弱性が高まってしまい、わずかな刺激でも傷つきやすい状態へと進行するのです。

▶注射による真皮層の再構築(細胞外マトリックス治療)


スネコスプロファイロ



4 皮膚粗鬆症(皮膚萎縮・皮膚脆弱)の治療と対策・治し方

最も重要なのは予防であり、紫外線対策や慢性的なステロイドの使用を控えること、喫煙を避けること、適切な栄養摂取(特にタンパク質やビタミンCの補給)が挙げられます。

また、日頃から手足のスキンケアを欠かさず行うことも重要です。


現在研究されている皮膚萎縮や皮膚脆弱に対する治療法には、以下のようなものがあります。

4-1 【治療法1】中間サイズヒアルロン酸による皮膚萎縮の改善

皮膚粗鬆症では、肌のうるおいと弾力に欠かせないヒアルロン酸を生成する「ヒアルロソーム」がうまく機能しなくなります。

◉中間サイズ(分子量80~150 kDa)のヒアルロン酸を皮膚に塗布することで、この「ヒアルロソーム」の働きを活性化させ、皮膚の萎縮を改善し、ハリや厚みを取り戻す効果が示されています(文献2)。

◉中間サイズ(分子量80~150 kDa)のヒアルロン酸は、マウスにおいてステロイドによる皮膚萎縮を予防する効果も確認されています(文献2)。

◉皮膚粗鬆症の患者を対象とした研究では、1ヶ月間の中間サイズ(分子量80~150 kDa)のヒアルロン酸(1%)の局所塗布により、紫斑(青あざ)の減少や皮膚の萎縮状態の改善が見られました(文献2)。


4-2 【治療法2】レチナールの効果:皮膚を厚くするアプローチ 

レチナールはビタミンA誘導体の一種で、単独でもヒアルロン酸合成酵素を誘導することが知られています(文献2)。

◉中間サイズ(分子量80~150 kDa)のヒアルロン酸とレチナール(0.05%)を一緒に使用すると相乗効果を発揮し、皮膚萎縮の改善、老人性紫斑の減少により大きな効果が期待できることが示されています(文献2)。


4-3 【治療法3】ビタミンCの外用:老人性紫斑の改善

◉老人性紫斑の改善には、5%のL-アスコルビン酸を含むビタミンCの外用が有効であることが、臨床試験で示されています(文献3)。皮膚の弾力性および厚さの改善も認められています(文献4)。


5 まとめ:皮膚を厚くするケアで皮膚粗鬆症を予防しよう

50歳をすぎたら、顔のスキンケアにかける熱意をぜひボディ(特に前腕、下腿)にも分けてあげて下さい。

乾燥とそれによるかゆみを防ぐ保湿ケアにとどめず、一歩すすめて皮膚粗鬆症ケアにしましょう。いつまでもピチピチの肌でいられるように。


皮膚粗鬆症のケアに

 

関連サイトもお楽しみ下さい

 

 

【参考文献】

1) Dermatoporosis: a chronic cutaneous insufficiency/fragility syndrome.Clinicopathological features, mechanisms, prevention and potential treatments
Gürkan Kaya, Jean-Hilaire Saurat
Dermatology
2007;215(4):284-94

2) New therapeutic targets in dermatoporosis
G Kaya
J Nutr Health Aging
2012 Apr;16(4):285-8

3) Dermatoporosis. What We Know and What to Expect
Badea, M. A., et al.
Romanian Journal of Military Medicine
2025;128(3):242-247

4) Dermatoporosis - The Chronic Cutaneous Fragility Syndrome
Uwe Wollina, et al.
Open Access Maced J Med Sci
2019 Aug 30;7(18):3046-3049

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月16日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.09.08更新

結局、美白剤はどれがいいのか?

多くの人が頭を悩ませるこの問いに、生成AIを活用して、純粋に医学的にエビデンスレベルの高い順にランキングを作成しました。

美白成分ランキング



利用したのは、ChatGPT5Proです。網羅的にリサーチして、条件に基づいてランキングを作成することに、もはや人間の出る幕はありません。

このランキングをぜひ美白美容液をお選びのさいに参考にして下さい。なお、生成AIが作成したのはランキングとプロンプトで、それ以外の記事の全ては人間が書いています。

使用したプロンプトは末尾に掲載しています。

複雑なプロンプトになりましたが、要するに美白成分を
1)医学的なエビデンスで評価
2)対象疾患を肝斑、炎症後色素沈着に限定
3)単剤で評価(肝斑でゴールドスタンダードである3剤併用療法を判断から除外する)
4)外用剤に限定(肝斑で内服でも使用されるトラネキサム酸は外用のみで評価する)
することでランキングを作成しました。

あらかじめ、今回のランキングの限界を述べておくと、美白成分は一つの企業が開発し、独占的に市場に展開しているものがいくつもあります(チアミドール、ルシノール、システアミン)が、そうしたケースでは臨床試験も独占している企業から資金ないし資材の提供を受けており、その試験の結果が歪んでいる可能性を否定できません。

今回のランキングではそうしたバイアスが除去できていません。

それではランキングの発表です。




第10位 メチマゾール(製剤名:メルカゾール)


よほどの美容通の方でもメチマゾール(製剤名:メルカゾール)の名前を聞くのは初めてではないでしょうか?メチマゾール(製剤名:メルカゾール)は本来甲状腺疾患で使われている薬です。


◉作用機序:
メチマゾール(製剤名:メルカゾール)は抗甲状腺薬で、チロシンから甲状腺ホルモンが合成されるときの酵素チロシンペルオキシダーゼ(TPO)を阻害しますが、さらにメラニン生成酵素であるチロシナーゼも阻害することが発見されました。



◉ランキングの根拠:
肝斑患者50人を対象とした4%ハイドロキノンとの比較試験(代表文献a)では、ハイドロキノンには劣りましたが、症状の改善が認められました。メチマゾール(製剤名:メルカゾール)は細胞を直接壊す毒性(細胞毒性)はなく、DNAに変異を起こす危険性(変異原性)も低いので、外用薬として長期使用しても比較的安全であり、肝斑治療の代替候補になり得ると結論付けられています。



◉補足コメント:

⚪️今回ランキングの10位に入ったのは、市場には出回っていないメチマゾール(製剤名:メルカゾール)でした。

⚪️現状、承認された美白成分ではないので、市販の製品には配合されていません。あくまで研究・試験的使用の範囲にとどまっています。

⚪️コスメないし医薬品として入手可能な美白成分に限定して、ランキングを作り直そうかとも思いましたが、今回はあくまでエビデンスを最優先することにしました。

⚪️メチマゾール(製剤名:メルカゾール)は何十年も前から甲状腺機能亢進症に使われる成分であり、外用薬として承認されて日の目を見る可能性はありません。

⚪️それよりも可能性が高く現実的なのは、「メチマゾール誘導体」で、すでにコウジ酸や抗酸化物質と結合させた誘導体の開発が進んでいます。

⚪️今すぐではないにせよ、こうした「メチマゾール誘導体」が新規美白成分として、近い将来ドラッグストアで見かけるようになるのではないかと期待しています。



◉代表文献:
a) The efficacy and safety of topical 5% methimazole vs 4% hydroquinone in the treatment of melasma: A randomized controlled trial
Mehdi Gheisari, et al.
J Cosmet Dermatol
2020 Jan;19(1):167-172




第9位 ナイアシンアミド


ナイアシンアミドはビタミンB3の一形態のことで、スキンケアの成分としては美白、シワ改善、皮膚バリア改善、抗炎症、皮脂抑制といった多面的な効果が期待できます。



◉作用機序:
ナイアシンアミドは、他の多くの美白剤とは違い、作用機序がチロシナーゼの阻害(色素の産生をブロックする)ではなく、色素細胞から周囲の角化細胞へのメラニン色素の転送を阻害することで作用します。



◉ランキングの根拠:
肝斑患者27人を対象とした4%ナイアシンアミドと4%ハイドロキノンとの比較試験(代表文献b)では、両群とも症状の改善が認められ、有意差はありませんでした。この試験では病理検査も行われ、ナイアシンアミドが肝斑に特徴的なマスト細胞の浸潤、日光弾性線維症を改善させたことが認められました。



◉補足コメント:
ナイアシンアミドは美白治療において、理想的な併用治療となります。
それは、他の美白剤がチロシナーゼを阻害してメラニンの生成量を減らし、ナイアシンアミドがそれでも作られてしまったメラニンの輸送を妨げることになるからです。


さらに、メラニン色素の茶色系だけでなく、ナイアシンアミドは赤ら顔の赤色系、黄ぐすみの黄色系にも効果を発揮します。


こんなに広範囲に「色」の問題をカバーできるのはナイアシンアミドだけではないでしょうか。


▶クリニックで取り扱うナイアシンアミド10%


 

 



◉代表文献:
b) A double-blind, randomized clinical trial of niacinamide 4% versus hydroquinone 4% in the treatment of melasma
Josefina Navarrete-Solís, et al.
Dermatol Res Pract
2011:2011:379173

 


第8位 タザロテン


日本人には馴染みがありませんが、ニキビ治療薬のディフェリンと同じ合成レチノイドです。


ディフェリンやトレチノインより作用は強力ですが、その分刺激反応も強いというのが米国での評価です。

*当院ではディフェリンを取り扱っています。



◉作用機序:
1. メラニン色素の角化細胞への転送の阻害
タザロテンは、メラニン色素が詰まったメラノソームが、肌の表面の細胞である角化細胞へ運ばれるのを妨げます。
2. 表皮ターンオーバー促進
これによりメラニンを含む角化細胞の排出が促進され、沈着した色素が早く除去されます。
3. 炎症反応の抑制
タザロテンは抗炎症作用を持ち、炎症に伴う色素沈着の悪化を防ぐ効果が示されています。



◉ランキングの根拠:
肌の色が濃い人種に属するニキビ患者74名を対象とした二重盲検ランダム化対照試験(代表文献c)でタザロテン0.1%クリームの効果を評価したところ、タザロテンクリームは肌の色が濃い患者のニキビ跡の炎症後色素沈着の治療に有効でした。



◉補足コメント:
実は当院では以前タザロテンを販売していたのですが、ほとんど売れないまま期限切れを迎えたため、そのまま取り扱いをやめてしまいました。


日本人には強力なレチノイドはハードルが高すぎるのかもしれません。タザロテンには「塗るだけでニキビ跡が治療できる」というとんでもないエビデンスもあるだけに残念です。

タザロテンの当院での取り扱いを再開しました。

タザロテンには、塗るだけの毛穴・ニキビ跡治療という外用療法の新しい可能性を切り拓くポテンシャルがあります。


▶クリニックで取り扱うタザロテン


 

 



◉代表文献:
c) Tazarotene cream for postinflammatory hyperpigmentation and acne vulgaris in darker skin: a double-blind, randomized, vehicle-controlled study
Pearl Grimes, Valerie Callender
Cutis
2006 Jan;77(1):45-50




第7位 トラネキサム酸


トラネキサム酸は何かと日本と縁が深い成分。発見したのも日本人なら、1970年代に肝斑がうすくなるという美白効果に気づいたのも日本人です。



◉作用機序:
皮膚にシミができる時には、「プラスミン」という酵素が重要な役割を果たします。


プラスミンは、メラノサイト(メラニンを作る細胞)にメラニンを作らせる様々な「情報伝達物質」の産生を刺激する「スイッチ」のように働きます。


トラネキサム酸はこのプラスミンが作られるプロセスを阻害する働き(抗プラスミン作用)で美白効果を発揮します



◉ランキングの根拠:
複数の臨床試験をまとめて「全体として効果はあると言えるか?」を調べる方法として、「メタ解析」があります。


いくつかあるメタ解析では、肝斑に対するトラネキサム酸外用の評価は揺れていて、最新のメタ解析(代表文献d)では、「他の治療と比較して、優位性が確立されていない」として、さらなる大規模なランダム化比較試験が必要であると指摘しています。


◉補足コメント:
現在、トラネキサム酸は医薬部外品としてのみ配合可能で濃度の上限も2%と定められています。しかし、臨床試験で効果が実証されたのは3〜5%であり、この上限規制がトラネキサム酸が「美白力」を十分発揮できないようにしていると言えます。

そのため現状では医薬部外品のコスメに期待できるのは予防・日常ケアであり、シミ、くすみ、色素沈着の治療目的ならクリニックの医療用医薬品を選ぶといいでしょう。


▶クリニックで取り扱うトラネキサム酸


 

 


◉代表文献:
d) Efficacy of Oral, Topical, and Intradermal Tranexamic Acid in Patients with Melasma — A Meta-Analysis
Panchal VS, et al.
Indian Dermatol Online J
2023 Dec 1;15(1):55-63

 



第6位 システアミン(Cyspera®)


システアミンは、アミノ酸の一つメチオニンの分解を通じてすべての哺乳類の細胞に自然に存在する、人間にとって天然の分子です。その美白作用は1960年代には発見されていました。しかし、独特の非常に強い匂いのため、長年にわたり外用剤の開発は進みませんでした。技術的に匂いを大幅に減らすことに成功したことで製品化にこぎつけました。



◉作用機序:
システアミンの正確な作用機序は完全には解明されていませんが、複合的にメラニン生成を阻害し、暗色のユーメラニンから明るいフェオメラニンへとシフトさせると考えられています。



◉ランキングの根拠:
肝斑に対する5%システアミンと標準的治療であるハイドロキノンの併用療法との比較試験の中には、5%システアミンの方が優れた結果を出したという報告(代表文献e)もあります。



◉補足コメント:
美容皮膚科学の世界において美白剤の優劣は、肝斑のレビュー論文でどう評価されるかが重要な意味を持ちます。


昨年発表されたレビュー文献(代表文献f)には「システアミンは、ハイドロキノンに比べて有効性が劣る可能性があるものの、軽度から中等度の肝斑に対してハイドロキノンに替わる治療の選択肢となりえる。」と書かれています。



◉代表文献:
e) Clinical evaluation of efficacy, safety and tolerability of cysteamine 5% cream in comparison with modified Kligman's formula in subjects with epidermal melasma: A randomized, double-blind clinical trial study
Maryam Karrabi, et al.
Skin Res Technol
2021 Jan;27(1):24-31


f) An Update on New and Existing Treatments for the Management of Melasma
Christian Gan, Michelle Rodrigues
Am J Clin Dermatol
2024 Sep;25(5):717-733

 


第5位 4‑n‑ブチルレゾルシノール(ルシノール)


日本のポーラが美白成分として研究開発しました。



◉作用機序:
メラニン合成の入り口に当たるチロシナーゼ(メラニン合成の律速段階の酵素)を強力に抑制するとともに、メラニン合成の出口の酵素も抑制します。さらにはチロシナーゼそのものも減らすことで美白作用をもたらします。

分子構造的にレゾルシノールという“骨格”はヒトのチロシナーゼと相性がよく、そのためルシノールやチアミドールのように、この“骨格”をベースにした成分はとても強力(ハイドロキノンより桁違いに強力)に酵素を止められるとされています。



◉ランキングの根拠:
臨床研究は数も質も十分ではありませんが、複数のランダム化比較試験で効果が実証されています。そのうちの一つでは、ルシノールは、臨床的および客観的な皮膚色の評価に基づき、3ヶ月間の治療後、基剤単独と比較して、肝斑の改善に有意な有効性を示しました(代表文献g)。



◉補足コメント:
肝斑の系統的レビューでは、副作用のリスクが低い新規化合物を探求する動きの中で、代替治療薬の一つとして提案されるようになっており、日本発のルシノールも世界的に認知されていると言えるでしょう。



◉代表文献:
g) Evaluation of efficacy and safety of rucinol serum in patients with melasma: a randomized controlled trial
A Khemis, et al.
Br J Dermatol
2007;156(5):997–1004

 


第4位 トレチノイン


第8位のタザロテンに続いて第4位にトレチノインと、レチノイドが2つランクインしました。



◉作用機序:
1. 表皮ターンオーバー促進
これによりメラニンを含む角化細胞の排出が促進され、沈着した色素が早く除去されます。


2. 炎症反応の抑制
トレチノインは抗炎症作用を持ち、炎症に伴う色素沈着の悪化を防ぐ効果が示されています。



◉ランキングの根拠:
トレチノインを含む3剤併用療法は世界的に肝斑治療のゴールドスタンダードです。ですから、トレチノインというと肝斑のイメージが強いですが、40週間にわたる二重盲検無作為化対照試験で、トレチノインはプラセボと比較して黒い肌に生じる炎症後色素沈着を有意に改善したことが示されています(代表文献h)。この研究は、炎症後色素沈着の治療におけるトレチノインの安全性と有効性を裏付けています。



◉補足コメント:
レチノイドが美白剤??と思われるでしょうが、肝斑、炎症後色素沈着に対して単独使用の臨床試験があり、効果が証明されている以上、ChatGPTが美白剤と判断するのも当然かもしれません。


▶クリニックで取り扱うトレチノイン


 

 



◉代表文献:
さすがに第4位になると代表文献のジャーナルの権威性も段違いです。


h) Topical tretinoin (retinoic acid) therapy for hyperpigmented lesions caused by inflammation of the skin in black patients
S M Bulengo-Ransby, et al.
N Engl J Med
1993 May 20;328(20):1438-43




第3位 アゼライン酸


当院で肝斑治療に使用しているアゼライン酸が第3位です。


アゼライン酸はニキビ、色素沈着、赤ら顔の治療に使われます。大人ニキビができやすく、そのたびに色素沈着になって困っている方に最適です。



◉作用機序:
アゼライン酸の美白作用の作用機序は、主に以下の点に起因すると考えられます。

1 チロシナーゼの阻害:アゼライン酸は、メラニン生成に関与する主要酵素であるチロシナーゼを直接的かつ競合的に阻害します。
2 メラノサイトへの選択的抑制効果:アゼライン酸は、特に過活動性メラノサイトに対して選択的な抑制効果を示します。
3 活性酸素種(ROS)の産生抑制と抗酸化作用




◉ランキングの根拠:
高評価につながったのは、他の美白剤と比べ明らかに大規模なランダム比較試験でハイドロキノンと同等という結果を出していることが大きいでしょう。


文献自体はやや古めですが、対象人数が329人で、観察期間が24週という大規模かつ長期の二重盲検試験で、ハイドロキノンと同等の効果を証明しています(代表文献i)。



◉補足コメント:
アゼライン酸は肌への刺激が軽度で、ほとんどの人が安心して使い続けられるのが特徴です。文献的には妊娠中の使用も安全とされています。

またアゼライン酸は抗菌作用もありますが、一般的な抗生物質とは異なり耐性を生じないとされています。


▶クリニックで取り扱うアゼライン酸


 

 


◉代表文献:

i) The treatment of melasma. 20% azelaic acid versus 4% hydroquinone cream
L M Baliña, K Graupe
Int J Dermatol
1991 Dec;30(12):893-5




第2位 チアミドール


チアミドールはドイツの Beiersdorf(バイヤスドルフ)が開発した美白成分です。

 

◉作用機序:
チアミドールの美白作用の作用機序は、チロシナーゼ酵素の活性を阻害することです:

◎チロシナーゼ酵素の阻害: チロシナーゼは、皮膚の過剰な色素沈着の治療において阻害標的となる酵素です。これは、メラニン生成における律速酵素であるためです。


◎ヒトチロシナーゼへの特異性: 多くの市販のチロシナーゼ阻害剤の臨床的有効性は限られており、これは主に、標的としてヒトチロシナーゼではなくマッシュルームチロシナーゼに対して試験されたためです。しかし、チアミドールは、50,000以上の化合物のスクリーニングの結果、ヒトチロシナーゼの特に強力な阻害剤として特定されました。


◎他の阻害剤に対する優位性: 試験管内(in vitro)では、チアミドールは、アルブチン、コウジ酸、ハイドロキノンなどの一般的に使用される過剰色素沈着阻害剤よりも優れていることが示されています。

 

◉ランキングの根拠:
新しい美白成分なので臨床試験の数も多くありませんが、肝斑にも炎症後色素沈着にも有意な改善をもたらすことが示されています。ハイドロキノンとの比較で言うと、2%ハイドロキノンより効果的、4%ハイドロキノンとは同等の効果という評価です。


肝斑がある女性50人を対象にした0.2%チアミドールと4%ハイドロキノンを比較した90日間の試験で、チアミドール群では84%、ハイドロキノン群では74%で改善を認めました。有意差は認められませんでした(代表文献j)。



◉補足コメント:
昨年の肝斑のレビュー文献でも、「チアミドールは、肝斑の治療薬としてハイドロキノンに匹敵する可能性がある」と高い評価を受けています(代表文献f)。美白剤の王座をハイドロキノンから奪えるとしたら、このチアミドールかもしれません。


ハイドロキノンと比較して、重篤な副作用や色素沈着の悪化のリスクが低く、安全な治療選択肢であると考えられます。

 

◉代表文献:

j) Efficacy and safety of topical isobutylamido thiazolyl resorcinol (Thiamidol) vs. 4% hydroquinone cream for facial melasma: an evaluator-blinded, randomized controlled trial
P B Lima, et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol
2021 Sep;35(9):1881-1887

 


第1位 ハイドロキノン


ハイドロキノンは、数十年にわたる臨床使用の歴史と、最も広範な臨床文献に裏打ちされ、第1位にランクされました。

 

◉作用機序:
ハイドロキノン(HQ)の美白剤としての作用機序は、主に以下の点が挙げられます。

◎チロシナーゼ酵素の阻害:
HQの主要な作用機序は、メラニン生成に関与する酵素であるチロシナーゼを阻害することです。チロシナーゼは、アミノ酸のチロシンをメラニン前駆体に変換する作用を触媒します。HQが存在すると、チロシナーゼはチロシンよりもHQを優先的に酸化するため、メラニンが生成されません。

◎メラノサイトの構造および機能の改変(細胞毒性):
ハイドロキノン(HQ)は、メラニン生成に関わる酵素であるチロシナーゼを阻害するだけでなく、メラノサイトの構造と機能も変化させることで色素過剰症を軽減します。



◉ランキングの根拠:
安全性への懸念が存在するものの、その証明された強力な有効性と圧倒的なエビデンスの蓄積量は、依然として他の追随を許しません。


今回のランキング作成に当たっては、文献のエビデンスを判定するために臨床ガイドライン作成などで国際的に広く使われているGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システム を活用しました。

GRADEでは高(High)、中(Moderate)、低(Low)などと評価しますが、ハイドロキノンは唯一の高(High)評価でした。ちなみに高(High)とは「新たな研究が出ても結論が大きく変わる可能性は低い。」ことを意味します。



◉補足コメント:
美白効果を称賛される一方で、ハイドロキノンは副作用のリスクを内包しています。そのため米国では2020年10月以降、ハイドロキノンが配合されたコスメの販売はできなくなりました。


その背景には美白剤の「ゴールドスタンダード」ハイドロキノンならではの「濫用」の問題があります。


肌の色が黒く生まれた人が白くしたいという理由で、高濃度のハイドロキノンを長期間にわたり自己判断で使って副作用を引き起こす事例が実は世界中で後をたちません。


そのため米国だけでなく世界的に見ても、化粧品への配合は禁止される流れになっています(日本では化粧品の配合が許されています)。


ハイドロキノンの使用は、医師の監督下で、計画的な治療サイクルに基づいて行われるべきです。


▶クリニックで取り扱うハイドロキノン


 

 



◉代表文献:
代表文献として選んだのは、米国での2006年の行政による「ハイドロキノンを含むコスメの禁止提案」に対し、全米屈指のニューヨーク市のマウント・サイナイ病院の皮膚科の臨床教授が、詳細に安全性データを吟味して規制に反対したレビュー文献です(代表文献k)。米国皮膚科学会公式ジャーナルが掲載しています。


k) The safety of hydroquinone: A dermatologist's response to the 2006 Federal Register
Jacob Levitt
J Am Acad Dermatol
2007 Nov;57(5):854-72


結局、米国では2020年にハイドロキノンを含むコスメの販売は事実上禁止されました。ただし処方薬としての使用は継続され、今も「医師の管理下で最も有効な美白剤」との位置づけは維持されています。





クリニックで取り扱う美白剤

 

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##今回ランキング作成にあたり使用したプロンプト##


役割
あなたは、皮膚科領域のエビデンス合成(systematic review & evidence grading)を専門とする研究者です。依頼者は臨床家です。依頼者の臨床意思決定を支えるため、**皮膚の炎症後色素沈着(PIH)と肝斑(melasma)に対する外用(topical)“単剤”**の治療効果を、最新の学術文献に基づいて比較し、**客観的指標とGRADEで評価したランキング(Top 10)**を作成してください。

ゴール
1PIH用 Top 10 と 肝斑用 Top 10 を別々に作成(重複可)。
2可能なら**“総合(PIHと肝斑を横断)Top 10”**も提示。
3各有効成分ごとに順位・理由・根拠文献(代表RCT/対照試験の主要3本まで)を明示。
4エビデンスの質はGRADE(High/Moderate/Low/Very low)で提示。
重要:該当する単剤RCT/対照試験が十分でない場合は、ランキングに無理に入れず「エビデンス不足」として別枠に列挙。Top 10に満たない場合は該当数のみ提示。

対象・定義
・対象疾患:PIH、肝斑(各々で評価)。
・介入:**外用“単剤”**の美白/色素改善成分(例:ハイドロキノン、アゼライン酸、ナイアシンアミド、コウジ酸、アルブチン、トラネキサム酸外用、システアミン、メキノール、4-n-ブチルレゾルシノール/チアミドール、ビタミンC誘導体 等)。
・対照:プラセボ/車両、無治療、または有効成分比較。
・アウトカム(客観指標を優先):
色差計/分光測色(L*a*b*、ΔL*、ITA°)、メラニンインデックス、
MASI/mMASI(肝斑)、客観スコア(BSA、デジタル画像解析)、
有害事象(刺激感、皮膚炎等)、治療中止率、再発率。
・対象皮膚タイプ:Fitzpatrick I–VI(IV–VIへの外的妥当性も評価項目に入れる)。

除外基準(厳守)
・コンビネーション療法(例:Kligman/トリプルセラピー、ハイドロキノン+トレチノイン等)は除外。
・内服・注射・点滴は除外(トラネキサム酸は外用単剤の試験のみ評価)。
・手技系(化学ピーリング、レーザー、光治療、マイクロニードリング等)やサンスクリーン単独も除外(ただし併用の有無はリスク・オブ・バイアスとして言及)。
・症例報告や非比較研究のみはランキング対象外(補足に回す)。

文献収集と選別
・一次情報を最優先:RCT、盲検化、対照群ありを重視。
・データベース:PubMed/MEDLINE、Embase、Cochrane、J‑STAGE等。検索日を明記。
・言語:日本語・英語(他言語も要約可)。
・同一試験の重複出版は1件に統合。
・事前登録/プロトコルの有無、サンスクリーン使用の均衡、追跡期間も抽出。

エビデンス評価(GRADE+スコアリング)
1 GRADE:High / Moderate / Low / Very low(リスク・オブ・バイアス、非一貫性、間接性、不精確性、出版バイアス;大効果・用量反応でのアップグレード可)。
2 **総合スコア(0–13点)**でランキングを算出:
○研究の質(GRADEを点数化):High=3, Moderate=2, Low=1, Very low=0
○効果量(SMDまたは群間差の標準化):なし/極小=0、小=1(≈0.2)、中=2(≈0.5)、大=3(≈0.8)、非常に大=4(>0.8)
○再現性/一貫性:独立RCT数やメタ解析の有無:0–3
○客観アウトカムの採用(測色/MI/MASI等):0 or 1
○フォトタイプIV–VIの裏付け:0 or 1
○安全性(AEによる中止や重篤事象):+1(概ね良好)、0、−1(有害事象多い)
3 同点時のタイブレーク:①GRADEが高い>②効果量が大きい>③フォトタイプ外的妥当性>④安全性>⑤最新性。
可能なら**効果量の算出根拠(平均差/SD、SMD、信頼区間、I²)**を簡潔に提示。

出力要件(必須)
・表形式(日本語)+ 機械可読JSON の両方を出力。
・PIH Top 10、肝斑 Top 10、(任意で)総合Top 10の順に提示。
・各成分ごとに以下を1エントリで記載:
[表エントリ項目]
Rank/有効成分(日本語名 / 英語名 / 同義語)
適応:PIH/肝斑(該当に✔)
推奨濃度域・用法(根拠試験のレンジと期間)
主要アウトカム(例:ΔL*、mMASI、MI 等)と効果量(SMD/群間差、95%CI)
GRADE(High/Mod/Low/VLow)
総合スコア(0–13) 内訳(例:3+3+2+1+1+1=11)
安全性要約(刺激性/PIH悪化の有無、離脱率)
代表文献(最大3件):著者・年・誌名・試験デザイン・N・期間・PMID/DOI
要約(なぜこの順位か:2–3行)
[JSONスキーマ(例)]{ "condition": "PIH | Melasma | Overall", "updated_on": "YYYY-MM-DD", "rankings": [ { "rank": 1, "agent": { "jp": "ハイドロキノン", "en": "Hydroquinone", "synonyms": ["HQ"] }, "indication": ["PIH","Melasma"], "dose_range": "2–4% cream, qHS", "duration_range_weeks": "8–24", "outcomes": [{"metric":"ΔL*","effect_size_SMD":0.85,"CI":"0.60–1.10"}], "GRADE": "High", "score_breakdown": {"GRADE":3,"effect":3,"consistency":3,"objective":1,"phototype":1,"safety":0}, "total_score": 11, "safety": "軽度刺激、接触皮膚炎まれ。長期高濃度で外因性黒皮症の報告あり。", "key_refs": [{"author":"…","year":2020,"journal":"…","PMID":"…","DOI":"…"}], "rationale_jp": "…" } ], "insufficient_evidence": ["成分名A","成分名B"]}

追加指示
図表の明確化:指標(L*、mMASI、MI)の**方向(改善=数値の増減どちらか)**を明記。
サンスクリーン:介入群・対照群での取扱いが均衡でない場合はリスク・オブ・バイアスとして言及。
重複回避:同一製剤の異名・誘導体は薬理学的に区別し、別分子は別エントリ。
ブランド名の最小化:基本は一般名で記載。
透明性:検索式、期間、除外理由を簡潔に付記(数行で可)。
臨床翻訳:最終セクションで、誰に・どの状況で有益になりやすいか(例:フォトタイプIV–VIのPIH での実効性)を1段落に要約。

期待する最終セクション(短い総括)
要約:上位3成分の共通点(客観指標での一貫した効果、再現性)
ギャップ:エビデンス不足の領域(例:特定フォトタイプ/長期安全性)
実装上の注意:刺激性対策、使用期間の目安、再発管理の示唆(文献準拠)

品質基準
・正確性>網羅性>簡潔性。
・引用はPMIDまたはDOI必須、可能ならページ/図表番号。
・直接比較のない成分間は効果量の標準化で比較。恣意的判断を避ける。
・断定的表現はGRADEと効果量で裏づける。

 







 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.08.18更新

はじめに

ニキビが治った後に残る茶色いシミ、虫刺されの跡がいつまでも消えない黒ずみ、レーザー治療後に現れる予期しない色素沈着…これらはすべて「炎症後色素沈着(PIH: Post-Inflammatory Hyperpigmentation)」と呼ばれる皮膚トラブルです。

特に私たち日本人を含むアジア人にとって、炎症後色素沈着は避けて通れない肌悩みの一つです。なぜなら、黄色人種の肌は構造的に色素沈着を起こしやすいからです。

本記事では、炎症後色素沈着のメカニズムから日常に潜む意外な原因、そして科学的根拠に基づいた治療原則まで、医学的エビデンスを交えながら詳しく解説していきます。


1)炎症後色素沈着とは?定義と特徴

炎症後色素沈着は、皮膚の炎症や外傷が治癒した後に、その部位に過剰なメラニン色素が沈着して生じる後天性の色素異常症です。

医学的根拠
◉炎症後色素沈着は、炎症性皮膚疾患の一般的な後遺症であり、肌の色が濃い患者に多く、重症度も高い傾向があります(文献1)。


2)なぜ色素沈着が生じるのか?そのメカニズム

[1] 炎症が起きる
ニキビ、傷、やけど、湿疹など様々な原因で皮膚に炎症が発生

[2] サイトカインが放出される
炎症が起きると、皮膚の細胞から「サイトカイン」という情報伝達物質が放出されます
これは細胞間の「連絡係」のような役割をします

[3] 色素細胞が刺激される
サイトカインがメラノサイトという色素を作る細胞に「もっと働け!」という指令を出します
通常より活発に働き始めます

[4] メラニン色素が過剰に作られる
活性化したメラノサイトが、メラニン色素を通常より多く生産。

ポイント
炎症の種類によって、放出されるサイトカインの種類や量が異なります
そのため、炎症後色素沈着の程度や治りやすさも炎症の原因によって変わります

PIHの原因1位ニキビ


3)炎症後色素沈着が生じやすい主な場面

第1位:ニキビ(尋常性ざ瘡)

医学的根拠
◉アジア7カ国におけるニキビ患者について、炎症後色素沈着の有無について評価を行ったところ、58.2%(188/324)が炎症後色素沈着を有していた(文献2)


第2位:アトピー性皮膚炎

医学的根拠
◉ステロイド外用薬の使用後に見られる色素沈着は、皮膚炎が持続したことによって生じる「炎症後色素沈着」であり、色素沈着を防ぐためには、ステロイド外用薬などの抗炎症外用薬を早期に使用し、皮膚炎を十分に沈静化させることが重要である(文献3)。


第3位:外傷・熱傷

医学的根拠
◉熱傷後の炎症後色素沈着発生率は、50〜60%で、特に肌の色の濃い人で生じやすい(文献4)。


4)見逃しやすいスキンケア由来の炎症後色素沈着

摩擦(こすりすぎ):ナイロンタオル等の慢性摩擦で「摩擦黒皮症」と呼ばれるパターンの色素沈着が生じます(文献5)。まず摩擦習慣の中止が必要です。

化粧品による接触皮膚炎:刺激性/アレルギー性接触皮膚炎の後に炎症後色素沈着を残すことがあります(文献6)。原因特定と診断において、パッチテストが重要な役割を果たします(文献6)。


5)炎症後色素沈着が消えない理由

5-1)「色素失禁」で遷延(文献7)

色素失禁は、本来表皮に存在すべきメラニン色素が基底膜を越えて真皮内に落ち込む現象です。

[1] 炎症が原因で、表皮と真皮の境界である基底膜が破壊される
[2] 表皮内のメラニンが真皮に落下
[3] 真皮内マクロファージ(メラノファージ)によって貪食される
[4] 青灰色で遷延すること:この真皮性色素沈着は、「青灰色の色合いを呈し、より遷延しやすい」とされています。


5-2)肌の色によるメラノソーム分解の違い(文献8)

メラニン色素は細胞内ではメラノソームという袋状の構造物に入っています。メラノソームが分解されることで、色素沈着をきたした肌が元の色に戻るわけですが、肌の色の濃い人では、メラノソームの分解が遅れる、つまり色素沈着からの回復が遅れることが指摘されています。


6)炎症後色素沈着の治療原則

原則1:原因「炎症」の鎮静化
ニキビ・湿疹・接触皮膚炎など基礎疾患の制御が最優先です。「炎症」が続く限り、色素沈着は治りません。

原則2:メラニン生成の抑制
ハイドロキノン(HQ):2%または4%のハイドロキノンは炎症後色素沈着の標準的外用薬の一つです(文献9)。
レチノイドもよく使われ、患者の64%(118名中)で部分的な色素沈着の軽減が見られたと報告されています(文献9)。

原則3:既存メラニンの排出促進
ケミカルピーリングは外用療法の補助として炎症後色素沈着改善に役立つことがありますが、肌の色の濃い人では術後炎症後色素沈着のリスクに配慮が必要です。


7)まとめ:炎症後色素沈着と正しく向き合う

・原因炎症の特定と鎮静化が最優先

・摩擦・刺激を避け、日々の遮光(UVケア)を徹底
日焼け止めの使用は、炎症後色素沈着の予防という観点からも極めて重要です。ステロイドの外用も含め、ほとんどの予防法は限定的な有効性しか示していませんが、日焼け止めだけは、一貫して炎症後色素沈着の発生を減少させました(文献10)。

・治療の中心は、ハイドロキノンやレチノイドなどの外用剤

・レーザー治療は慎重に

・時間はかかるが改善は見込める——基本的に「炎症」さえ収まれば、治るのは時間の問題(とはいえ半年から1年かかりますが)​​​​​​​​​​​​​​​​


クリニックでの美白治療

 

 おすすめの関連ブログ記事

 


【参考文献】

1)Postinflammatory Hyperpigmentation: A Review of the Epidemiology, Clinical Features, and Treatment Options in Skin of Color
Erica C Davis, Valerie D Callender
J Clin Aesthet Dermatol
2010 Jul;3(7):20–31

2) Frequency and characteristics of acne-related post-inflammatory hyperpigmentation
Flordeliz Abad-Casintahan, et al.
J Dermatol
2016;43(7):826-828

3) アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024
佐伯秀久, et al.
日本皮膚科学会雑誌
2024;134(11): 2741-2843

4) Inflammatory response: The target for treating hyperpigmentation during the repair of a burn wound." Chi Zhong, et al.
Front Immunol
2023 Feb 1:14:1009137

5) アミロイド沈着がみられたfriction melanosisの6例並びにアンケート調査によるfriction melanosisの頻度
馬場 安紀子, et al.
日本皮膚科学会雑誌
1986;96(12):1215

6) 化粧品開発とその障害の歴史 I
伊藤正俊
日本香粧品学会誌
2022;46(3):247–256

7) Postinflammatory Hyperpigmentation
Elizabeth Lawrence, et al.
StatPearls [Internet].
StatPearls Publishing, 2024

8) Keratinocytes from light vs. dark skin exhibit differential degradation of melanosomes
Jody P Ebanks, et al.
J Invest Dermatol
2011 Jun;131(6):1226-33

9) Treatment of Post-Inflammatory Hyperpigmentation in Skin of Colour: A Systematic Review
Kristie Mar, et al.
J Cutan Med Surg
2024 Sep-Oct;28(5):473-480

10) Prevention of Post-Inflammatory Hyperpigmentation in Skin of Colour: A Systematic Review
Kristie Mar, et al.
Australas J Dermatol
2025 May;66(3):119-126



 



制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年8月18日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.08.12更新

1 はじめに

鏡を見るたびに「肌がくすんでいる」「黄色っぽくなってきた」と感じることはありませんか?その「黄ぐすみ」の正体は、AGEs(エージーイー:終末糖化産物)と呼ばれる老化物質の蓄積かもしれません。

AGEsとは、私たちの体を構成するタンパク質や脂質が糖と結びついてできる「焦げ」のような物質。まるでトーストの焦げ目のように、肌を内側から黄ばませ、ハリや弾力を奪っていきます。しかも恐ろしいことに、一度できてしまったAGEsは、なかなか体外に排出されません。

しかし、諦める必要はありません。最新の研究により、AGEsの蓄積は日々の生活習慣で予防でき、すでに蓄積したAGEsも改善できる可能性があることがわかってきました。本記事では、AGEsについて医学的根拠を交えながら詳しく解説していきます。


2 AGEs(終末糖化産物)とは?肌の「糖化」と「焦げ」の正体

体内で起こる「糖化」という現象

AGEs(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)は、還元糖(ブドウ糖・果糖など)がタンパク質や脂質に結合して生じる不可逆的な生成物です(文献1)。

医学的根拠
◉AGEsは不可逆的で代謝されにくいため、皮膚に年々蓄積します。特に、皮膚コラーゲンの代謝回転が遅いことが、AGEs蓄積の主な理由とされています(文献1)


3 AGEsが肌に与える悪影響|黄ぐすみ・茶色いくすみ・シワ 

3-1 コラーゲンの硬化によるシワ・たるみ

AGEsの蓄積は、女性の美容上の悩みに直結します。


シワ・たるみの原因

AGEsはコラーゲンやエラスチンなどの皮膚の線維成分に結合し、これらを硬くもろくします。正常なコラーゲンは柔軟性があり、肌の弾力を保っていますが、AGEsによって架橋されたコラーゲンは硬化し、肌のハリが失われます。

医学的根拠
◉AGEsがコラーゲン線維に蓄積することによる変化(文献2):
●コラーゲン線維の硬化(Stiffening)
●コラーゲン線維に力が加わった際にエネルギーが線維内に蓄積され、もろくなって破壊されやすくなります
●組織の機能低下

3-2 糖化による「肌の黄ぐすみ」の原因 

AGEsは褐色の色素を持つため、皮膚に蓄積すると肌が黄色っぽくくすんで見えます。これは糖化による「黄ぐすみ」と呼ばれ、通常の美白化粧品では改善が困難です。

ナイアシンアミドは、臨床試験で肌の黄ぐすみの改善が報告されています。黄ぐすみには糖化(AGEs)も関与しうるため、抗糖化の観点から注目されていますが、外用で皮膚AGEsがどの程度減るかは今後の検証が必要です。


医学的根拠
◉2024年に黄色い色を持つ糖化最終産物AGEY(Advanced Glycation End-product Yellow)が、皮膚の黄変に直接関与することが判明しました(文献3)。


4 なぜ蓄積する?肌の糖化(AGEs)を加速させる5つの原因

AGEsが蓄積する原因


4-1 加齢

加齢は皮膚AGEs蓄積の最も確実なリスクファクターです。

医学的根拠
◉Verzijl et al.らの研究により、皮膚コラーゲン中のAGE含有量は年齢とともに線形的に増加することが証明されています(文献1)。


4-2 糖尿病・高血糖状態

医学的根拠
◉韓国人2型糖尿病患者310名を対象とした研究では、糖尿病の罹患期間が長いほど、SAF(皮膚自己蛍光)で測定されたAGEsのレベルが高いことが認められました(P < 0.001)(文献4)


4-3 紫外線暴露

医学的根拠
◉若年者において、通常は紫外線から保護された皮膚部位にはAGEsの顕著な蓄積は見られませんが、日光にさらされる部位ではAGEsの沈着が増加していることが示されています。特に、光老化した部位にAGEsの蓄積が多く見られると報告されており、紫外線暴露がAGEs形成を促進する可能性が示唆されています(文献5)


4-4 食事由来AGEs

医学的根拠
◉549食品のAGE含有量データベース解析により、乾熱調理(高温かつ低水分量の状態で行われる調理法)は、未調理の状態と比較して、食事由来のAGEsの生成を10~100倍以上促進することが報告されています(文献6)

◉現代の食事が主に加熱調理されているため、高レベルのAGEsを含んでいるとされ、特に「グリル、ブロイル、ロースト、ソテー、フライ」といった調理法が新規AGEsの生成を促進・加速させることを指摘しています(文献6)


4-5 喫煙

医学的根拠
◉タバコの煙はAGEsの外因性供給源であると報告されています。能動喫煙はもちろん受動喫煙でも曝露時間が長くなるにつれて皮膚のAGEs蓄積の指標である皮膚自己蛍光(SAF)レベルを上昇させることが明確に示されています(文献7)

 

5 肌に蓄積したAGEsは除去できる?美容皮膚科での糖化治療

肌の“こげ”とも言えるAGEs(終末糖化産物)は、糖とタンパクが結びつき、時間をかけてコラーゲンなどに蓄積していく変性物質です。いったん架橋して硬くなったAGEsは基本的に不可逆的で、現時点で「皮膚にたまったAGEsを完全に消す」決定打はありません。

5-1 美容医療による「組織の入れ替え」と黄ぐすみレーザー治療

では美容医療は無力かというと、そうとも言い切れません。フラクショナルレーザー(CO2フラクショナルレーザープラズマ)など、皮膚に微小な損傷を作って創傷治癒を起こし、組織の入れ替え・再構築(リモデリング)を促す治療では、結果として“AGEsを含む古い成分が置換される”可能性があります。ただし、これはあくまで理屈の話で、治療前後で皮膚AGEsがどれだけ減るかを主要評価として検証した研究はありません。


6 今日からできる「肌の焦げ」対策と予防習慣


AGEs対策


結局、AGEs対策の本命は「除去」よりも蓄積の予防です。血糖スパイクを繰り返さない食習慣、喫煙を避けること、そして紫外線対策。これらで“新たに増える速度”を落としつつ、必要に応じてリサーフェシング等で肌の質感改善を図る——この組み合わせが、現実的で誇大にならないAGEsとの向き合い方です。

実践可能な対策
⚪️AGEs含有食品の摂取制限(文献6)
⚪️調理法の変更(焼く、揚げる→蒸す・煮る)(文献6)
⚪️カロリー制限(文献8)
⚪️禁煙(文献7)
⚪️節酒(文献10)
⚪️紫外線からの防御(文献5)


まとめ:AGEsと上手に付き合い、美肌を守る

現時点では:
◎糖尿病なら、血糖値をしっかりコントロールする
◎糖尿病でなくとも血糖値を急激に上げる食習慣をさける
◎上記「実践可能な対策」を実践する
これが、最も科学的根拠に基づいたAGEsから肌を守る方法です。

AGEsは、私たちの肌を内側から黄ばませ、老化を促進する「美肌の敵」です。AGEsとの闘いは長期戦ですが、正しい知識と継続的な努力により、年齢を重ねても美しく輝く肌を保つことができます。今日から少しずつ、AGEs対策を始めてみませんか?


クリニックでの美白治療

 

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【参考文献】
1) Advanced Glycation End Products in the Skin: Molecular Mechanisms, Methods of Measurement, and Inhibitory Pathways
Chun-Yu Chen, et al.
Front Med
2022 May 11:9:837222

2) Advanced-Glycation Endproducts: How cross-linking properties affect the collagen fibril behavior
Julia Kamml, et al.
J Mech Behav Biomed Mater
2023 Dec:148:106198

3) Identification of Yellow Advanced Glycation End Products in Human Skin
Bin Fang, et al.
Int J Mol Sci
2024 May 21;25(11):5596

4) Skin accumulation of advanced glycation end products and cardiovascular risk in Korean patients with type 2 diabetes mellitus
Lee-Seoul Choi, et al.
Heliyon
2022 Jun 2;8(6):e09571

5) Advanced glycation end products: Key players in skin aging?
Paraskevi Gkogkolou, Markus Böhm.
Dermato-endocrinology
2012 Jul 1;4(3):259-70

6) Advanced glycation end products in foods and a practical guide to their reduction in the diet
Jaime Uribarri, et al.
J Am Diet Assoc
2010 Jun;110(6):911-16.e12

7) The association between various smoking behaviors, cotinine biomarkers and skin autofluorescence, a marker for advanced glycation end product accumulation.
Robert P van Waateringe, et al.
PLoS One
2017 Jun 20;12(6):e0179330

8) Oral glycotoxins determine the effects of calorie restriction on oxidant stress, age-related diseases, and lifespan
Weijing Cai, et al.
Am J Pathol
2008 Aug;173(2):327-36

9) Autophagy activators stimulate the removal of advanced glycation end products in human keratinocytes
T Laughlin, et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol
2020 Jun:34 Suppl 3:12-18

10) Inhibition of advanced glycation endproduct formation by acetaldehyde: role in the cardioprotective effect of ethanol
Y Al-Abed, et al.
Proc Natl Acad Sci U S A
1999 Mar 2;96(5):2385-90




制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月16日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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