2023.05.12更新

美容クリニックでボツリヌス療法(ほんとうは製剤名で書いた方がわかりやすいですが)を続けていると、だんだん効きが悪くなったり、効果の持続時間が短くなったりすることがあります。それがボツリヌス療法の「耐性」問題。


この「耐性」については、以前から防ぐ方法はわかっていました。それはドイツのメルツ社が製造するゼオミンを使うこと。ゼオミンは神経毒素以外の余分なボツリヌス菌由来のタンパク質を含みません。そのため免疫を刺激して抗体を作ることがないとされ、実際ゼオミンのみを使用していて耐性が生じたとする報告はありません。


ただし、実際に美容目的でボツリヌス療法を続けて、中和抗体ができてしまう確率は、0.2~0.4%と高くはありません。「美容医療でのボツリヌス療法で使われる量は少ないから心配しなくてもよい」という楽観論が支配的でした。


そのため、美容医療業界では、ボツリヌス療法でどの製剤を使うかは、「耐性」問題が表面化しない限りどれでもいいが、「耐性」が疑われ出したらゼオミンに変更するというのが、これまでの「常識」でした。


ゼオミン自体はかなり前から市場に出回っている製剤ですから、日本でも扱っているクリニックは数多くあります。その他の製剤とともに製剤選択肢のひとつとして位置付けられているに過ぎません。


ところが、これまでの「常識」を見直す動きが出始めました。この動きを牽引しているのは、なんと米国形成外科学会(正確には米国形成外科学会の関連オープンアクセス誌)です。


背景にあるのは、ひとつは「美容医療でのボツリヌス療法で使われる量は少ないから」を言い訳にしていたのに、美容医療でのボツリヌス療法の適応が広がり、使用量も増えていること。もうひとつは美容医療以外でもボツリヌス療法が使われる疾患の増加。


ボツリヌス療法を取り巻く状況は大きく様変わりしています。ボツリヌス療法で検索すると、驚くほど多くの一般診療の医療機関が引っかかるご時世になりました。今のところボツリヌス療法が使われるのは一部の神経疾患ですが、その中には脳卒中の後遺症も含まれ、決して珍しい疾患だけとは言い切れません。今後さらに多くの病気治療に使われるようになることも予想されます。将来的には誰でも病気の治療のためにボツリヌス療法が必要になるかもしれません。


「耐性」の何が問題かと言えば、将来ボツリヌス療法が適応となる疾患になったときに、耐性ができていたらボツリヌス療法が使えなくなることなのです。


個人的な見解ですが、米国形成外科学会はその公的な立場上、あからさまに一社の製剤を勧めるわけにはいかない。それでも重大な問題であるからメッセージは発する必要がある。そこで学会直属の機関誌ではなく、学術誌としては格下になるけれども、逆にオープンアクセス誌だから誰にも見てもらえる姉妹誌から、「耐性」を扱う文献を掲載することにしたのではないでしょうか。昨年2回も。


その中では、「耐性の症状が生じる前から」、「初めてボツリヌス療法を受ける人にも」、「できるだけ耐性を生じにくい製剤(つまりはゼオミン)」を使うべきと結論づけられています。ボツリヌス療法のスタンダードを、これまでのように耐性を疑ってからゼオミンに変更するのではなく、初めから(!)使う方向へと変わることを促す内容です。


こうした文献を読んで、当院ではボツリヌス療法で使う製剤をボトックスからゼオミンに変更しました。厚労省承認製剤のボトックスか、耐性を作らないゼオミンか相当悩みましたが、美容でのボツリヌス療法で「耐性」を生じさせることは、何としても防がなければならないという思いが決め手になりました。

 

未来につなげるボツリヌス療法


ゼオミン(BOCOUTURE)を取り扱う代理店に発注した時に聞いた話では、まだ国内の美容クリニックで明らかな動きはないということでした。米国形成外科学会の関連オープンアクセス誌上で展開される啓蒙活動に、日本の美容医療界がどう反応するのか、それとも気づかずにスルーするのか、既読スルーするのか興味深く見守りたいと思います。

 

 

(参考文献)
1) Neurotoxin Impurities: A Review of Threats to Efficacy
Je-Young Park, et al.
Plast ReconstrSurg Glob Open
2020;8(1):e2627

2) Immunogenicity Associated with Aesthetic Botulinumtoxin A: A Survey of Asia-Pacific Physicians' Experiences and Recommendations
Je-Young Park, et al.
Plast ReconstrSurg Glob Open
2022;10(4):e4217

3) Emerging Trends in Botulinum Neurotoxin A Resistance: An International Multidisciplinary Review and Consensus
Wilson W S Ho, et al.
Plast ReconstrSurg Glob Open
2022;10(6):e4407

4) Immunogenicity of Botulinum Toxin Formulations: Potential Therapeutic Implications
Warner W Carr, et al.
Adv Ther
2021;38(10):5046-5064




 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2023.05.07更新

移転先が浜松町と決まったとき、最初に頭に浮かんだのは3歳の保育園児だった頃に、東京モノレールの見物に行ったことでした。

今でも覚えているのは、モノレールが浜松町駅からゆっくりカーブを描きながら出ていって、また再びゆっくりカーブを描きながら戻ってきたこと。


モノレール1

 

これは今の画像ですが、おそらく当時と路線は変わっていないから、この風景を見ていたのだと思います。

東京モノレール浜松町駅のある建物は、JR浜松町駅北口すぐにありますが、今は世界貿易センタービルが建替え中のため、剥き出しとなっています。駅周辺の再開発により、東京モノレール浜松町駅自体も建替え工事で生まれ変わるようです。

モノレール2

 

ノスタルジーに浸ってばかりでは前には進めない・・東京でつくづく痛感します。


 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2023.02.22更新

 

自由が丘での診療最終日である2月21日が来ました。

もっと感慨深いものかと勝手に想像していましたが、案外アッサリとこの日が来て、そしてまたいつものようにアッサリと「お疲れ様!」とスタッフに声をかけてクリニックを後にしました。

別にこれで引退するわけでもないし、次の浜松町での診療再開に向けた準備が忙しくて、のんびり振り返っている暇はないというのが正直なところ。

東京都や保健所の許認可関係は無事通過したので、3月9日(木)の診療再開は問題なさそうと安心していたら、突如浮上したのが「資材不足」。

どんな「資材」かというと、洗面台のシンク。資材の高騰や不足はニュースで耳にしていましたが、まさか資金や物件や許認可でもなく、「資材不足」、それもシンクが診療再開への最大の障害になるとは思ってもいませんでした。

内装業者さんが手を尽くして下さっているので、あとは運を天にまかせるしかないのですが、どこまでもハラハラが尽きないクリニック移転顛末記なのでした。

ウォールサイン

 

自由が丘で入口正面にあったクリニックのウォールサインは、すでに外され浜松町へ運ばれました。

 

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.12.11更新

いよいよ結論を申し上げると、クリニックの移転先は、「浜松町」に決定いたしました。

浜松町1

 

今回の物件探しでは、アットクリニックさんに大変お世話になりました。アットクリニックさんのサイトでは物件が東京は23区別に掲載されていて、目黒の本命だった物件を振られてからはその先の港区で探していて、浜松町にたどりつきました。

もし、同じように物件探しをしている方がいたら、アットクリニックさんをオススメします。今回お世話になったIさんにはもう足を向けて寝られないほど感謝しています。

これまでの仲介業者さんは物件オーナーの代理人みたいでしたが、Iさんは終始こちらにとっていい条件になるようオーナー側と交渉して下さいました。まるでこちらのコンサルタントみたいに。この場を借りてお礼申し上げます。


浜松町2

 

 

当初はあくまで二番手、三番手の候補でしたが、考えていくうちに「浜松町」が一番!に変わったのですが、その最大の理由は、候補物件の中で、ここが一番今来て下さっているお客様にご案内しやすいこと。

電車を利用するなら、自由が丘を起点とすると、大岡山で大井町線から三田線直通の目黒線への乗り換えが便利。「芝公園」で降りて、東京タワーを眺めながら5,6分ブラブラ歩けばクリニックに到着です。

または駅の外に出る必要がありますが、大井町線の中延で都営浅草線に乗り換えて「大門」へ。「大門」は最寄り駅でクリニックはもう目と鼻の先。

JR山手線の浜松町、都営三田線の芝公園、大江戸線、都営浅草線の大門。この3つの駅が使えます。



今回の移転騒動はこうして「浜松町」に決着したわけですが、ひとつお詫びがあって、クリニック移転顛末記(1)で、自由が丘を出ることを決意した理由が、残りのキャリアを再開発工事などのない静かな環境で過ごしたいからと書きました。その気持ちにウソ偽りはなかったのですが、実は・・「浜松町」のビルのそばでは、まさにその再開発工事が真っ最中で、唖然、呆然、愕然としたことをお詫びとともにご報告申し上げます。

どこまでいっても「再開発」からは逃げられないようです。



  

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.12.04更新

大本命だった「目黒」に振られてから、もしかして流浪のクリニックになるのでは・・という恐怖心がフツフツと湧き上がってきました。すでに自由が丘ではクリニックの近隣は次々と立ち退いています。

自由が丘

 

尻に火がついたようになって、目黒でダメならと、南北線をさらに麻布十番、永田町と北上して、手当たり次第めぼしい物件を探りました。

その中で、ひとつ勉強になったことがありました。

永田町の巨大ビルがテナントを募集していて、身の丈も考えずにその気になったのですが、巨大ビルへの入居を考えるときに、注意しなければならないのが、内装工事のさいの防火設備など、「B to B」と言われる工事。

たとえばスプリンクラーの設置ですが、巨大ビル本体と接続しなければならないため、勝手に業者は選べません。必ず巨大ビルを作ったいわゆる「ゼネコン」に発注する必要があります。しかもテナント契約をして、内装のデザインが決まらないことには、どこにいくつスプリンクラーが必要か決まらないため、テナント契約をして引くに引けなくなってから、「ゼネコン」からの巨額な請求を無理矢理飲まされるのです。どのくらい巨額かというと、およそ数個のスプリンクラーで、その他のすべての内装工事と同じくらい。私はそれを聞いて、あまりにバカらしくて巨大ビルに入る野望を捨てざるを得ませんでした。

でも、今では永田町は諦めて正解だったと思います。駅から数分という立地でしたが、実際には地下鉄のホームから考えると果てしなく遠い。ずっと地下鉄構内を歩いて、最後に地表に出るのに長い階段を上がって・・と、とても今来て下さっているお客様に軽々しく「来て下さい」とは言えませんでした。

「日本の中心で美容を叫ぶ!」と自分だけで勝手にキャッチフレーズを作ったのですが、あえなくこの案もボツになりました。


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.11.13更新

一時期、大本命だったのが「目黒」。

お客様にも「たぶん目黒になります・・」と口走っていたこともあります。

実は目黒は私にとって美容医療の出発点。もう20年以上も経つわけですが、美容外科医としての初日に勤務(というか見学)したのが、神奈川クリニック目黒本院でした。

たぶん決まりそうという予感もあって、あらためて目黒駅周辺を散策したりして、今はホテルになっている当時の目黒本院に行って懐かしんでみたり、すっかりその気になっていました。

候補物件だったのは、目黒駅から2分で、小ぎれいなビルの1階。オーナーもできればクリニックに入居して欲しいと希望されていて、あとは細かな条件面で折り合えばというところでした。

目黒

 

話が一転したのが、異業種のライバルが登場してから。俄然オーナーが強気になったことで、ついに「目黒」はまぼろしとなってしまいました。

キャリアをスタートさせた場所で最後の10年を過ごすというのも悪くないと思ったのですが、なかなかうまくいかないものです。


 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.26更新

移転候補地として、チラチラと頭に浮かんだのは武蔵小杉。今は長野に移住しましたが、東京に住んでいたときのご近所さん。



通勤時間的に自由が丘よりさら長くなりそうですが、東京駅からは横須賀線一本なので、実は短いというのもポイント。



都心に近づくよりは、賃貸料も安そうだし、土地勘がある安心感もあるのですが、ただ、ヘタに土地勘があると、アラにも気づくというか、朝夕の駅の混雑が悪夢のように思い出されてどうしてもそれ以上踏み込めませんでした。





そのほか東急東横線沿線では学芸大学、中目黒、大井町線沿線では旗の台もチラッと頭に浮かんだのですが、いずれも泡のごとくすぐに消え去りました。


10年ほど前に自由が丘に開設したときは、候補物件がいくつも出てきて、その中から選べた印象だったのですが、時代が変わったのか、今は美容クリニックの候補になる物件はほんとうに少ない。



こうしてだんだん私の目は恐れ多くも東京の中心部に向かって行ったのでした。

自由が丘開設直前の待合室風景
(懐かしの画像:自由が丘開設直前の待合室風景)






 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.20更新

■マッサージ
人はなぜマッサージで癒やされるのだろう?
どうしてまた受けたくなるのだろう?

そんなマッサージの「なぜ」が医学的に解き明かされつつあります。

大切な人に「愛」を伝える法


■C触覚線維
マッサージでは皮膚感覚が刺激されますが、このときポイントになるのがC触覚線維。毛根に巻き付いて、毛の振動を感知している神経繊維です。

このC触覚線維は、「柔らかいタッチ」と「ゆっくりとした動き(毎秒3~10cmの速度)」に反応します。そして、C触覚線維からの刺激が脳に届くと、愛情ホルモン・オキシトシンが分泌されるようになります。

別に凝り固まった身体をほぐさなくとも、表面的な皮膚感覚を上手に刺激することで人に幸福感を与えることができるのですから、「たかがマッサージ」なんてもう言ってられません。断然「されどマッサージ」なのです。


■「愛」を伝える
個人的に注目したのは、ほとんどの感覚機能が加齢とともに衰える中、C触覚線維の感度は加齢による影響を受けないばかりか、逆に亢進すること。そうならマッサージは、高齢者のケアにもっと活用できるかもしれません。

もし大切な方が、ご病気や認知症などで意思の疎通ができなくなったとしても、面会のさいには優しく、ゆっくりと身体をさすってあげて下さい。言葉は通じなくても、そのお気持ちは必ずや「愛情」として伝わっているはずです。

 

 

(参考文献)
1) 皮膚感覚と心
山口 創
日本香粧品学会誌
2022;46(1):51-58

2) The effects of aging on tactile function in humans
McIntyre S, et al.
Neuroscience
2021;464:53-58


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.15更新

移転候補地として最初に頭に浮かんだのは大井町でした。

大井町

 

何と言っても大井町線で自由が丘と直結しています。東急だけでなく、JR、りんかい線もあって交通の便も良さそう。大規模な再開発が進行していて、大きなタワマンができたり、街としても将来性が感じられます。

実はビルを内見したときは好印象で「これで決めた!」とまで思ったのですが、クリニックに戻るために大井町線に乗っている間に「やっぱ、止めた!」と180度気持ちが変わってしまいました。


大井町2

 

大通りに面した、駅から歩いて数分の立地的には申し分のないビルでした。気になったのはひとつは7階ということ。エレベーターが故障などで停止したらどうなるのか?お客様に階段を使って下さいと言うのか?

もうひとつは他の階のテナントはほとんどが塾で、午後から夕方にかけてかなり騒がしそうだったこと。お客様は子供たちとギューギューのエレベーターに乗ることになります。

この時点では、まだ他にいくらでも候補物件は出てくるだろうと、たかをくくっていたので、アッサリお断りしてしまいました。

でも、それが苦労の幕開けとなったのです。

 

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.02更新

自由が丘に再開発計画があることを知らず、その上まさか自分のクリニックがその地域に入るなんて夢にも思っていなかったので、クリニックの移転はまさに青天の霹靂。

このクリニックを開設したのは2011年の9月。ほとんど開業支援のコンサルタントに丸投げでしたが、それでもこんな大変な思いはもう二度としたくないと思ったものでした。まさか10年経ってまた同じことを繰り返さなければならないとは。

今のところどこに移転するのか、いつ移転するのか、それすら決まっていません。

決まってから発表しろとお叱りを受けそうですが、二転三転しながら、アタフタする様を楽しみに見守っていただきたいと、ちょっと自虐的になっています。

自由が丘が好きで、そこにクリニックを開設できたことに幸せを感じていたわけですが、今回少なくとも、大好きな自由が丘からは離れることにしました。

当院開設前のビルの様子
(懐かしの画像)当院開設前のビルの様子


自由が丘がどう変貌していくか見守りたいのもヤマヤマですが、おそらくあと10年程度となった自分のキャリアを思ったとき、慌ただしく工事が進行する街ではなく、落ち着いた静かな環境で診療に没頭したいという気持ちの方が強くなったのです。

候補地としては、東急線沿線で、今よりは東京駅に近い方角。何と言っても長野から新幹線通勤している身ですから、少しでも通勤時間を短縮して、身体の負担を減らしたいと思っています。

どこを狙っているかわかります?


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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