2022.11.13更新

一時期、大本命だったのが「目黒」。

お客様にも「たぶん目黒になります・・」と口走っていたこともあります。

実は目黒は私にとって美容医療の出発点。もう20年以上も経つわけですが、美容外科医としての初日に勤務(というか見学)したのが、神奈川クリニック目黒本院でした。

たぶん決まりそうという予感もあって、あらためて目黒駅周辺を散策したりして、今はホテルになっている当時の目黒本院に行って懐かしんでみたり、すっかりその気になっていました。

候補物件だったのは、目黒駅から2分で、小ぎれいなビルの1階。オーナーもできればクリニックに入居して欲しいと希望されていて、あとは細かな条件面で折り合えばというところでした。

目黒

 

話が一転したのが、異業種のライバルが登場してから。俄然オーナーが強気になったことで、ついに「目黒」はまぼろしとなってしまいました。

キャリアをスタートさせた場所で最後の10年を過ごすというのも悪くないと思ったのですが、なかなかうまくいかないものです。


 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.26更新

移転候補地として、チラチラと頭に浮かんだのは武蔵小杉。今は長野に移住しましたが、東京に住んでいたときのご近所さん。



通勤時間的に自由が丘よりさら長くなりそうですが、東京駅からは横須賀線一本なので、実は短いというのもポイント。



都心に近づくよりは、賃貸料も安そうだし、土地勘がある安心感もあるのですが、ただ、ヘタに土地勘があると、アラにも気づくというか、朝夕の駅の混雑が悪夢のように思い出されてどうしてもそれ以上踏み込めませんでした。





そのほか東急東横線沿線では学芸大学、中目黒、大井町線沿線では旗の台もチラッと頭に浮かんだのですが、いずれも泡のごとくすぐに消え去りました。


10年ほど前に自由が丘に開設したときは、候補物件がいくつも出てきて、その中から選べた印象だったのですが、時代が変わったのか、今は美容クリニックの候補になる物件はほんとうに少ない。



こうしてだんだん私の目は恐れ多くも東京の中心部に向かって行ったのでした。

自由が丘開設直前の待合室風景
(懐かしの画像:自由が丘開設直前の待合室風景)






 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.20更新

■マッサージ
人はなぜマッサージで癒やされるのだろう?
どうしてまた受けたくなるのだろう?

そんなマッサージの「なぜ」が医学的に解き明かされつつあります。

大切な人に「愛」を伝える法


■C触覚線維
マッサージでは皮膚感覚が刺激されますが、このときポイントになるのがC触覚線維。毛根に巻き付いて、毛の振動を感知している神経繊維です。

このC触覚線維は、「柔らかいタッチ」と「ゆっくりとした動き(毎秒3~10cmの速度)」に反応します。そして、C触覚線維からの刺激が脳に届くと、愛情ホルモン・オキシトシンが分泌されるようになります。

別に凝り固まった身体をほぐさなくとも、表面的な皮膚感覚を上手に刺激することで人に幸福感を与えることができるのですから、「たかがマッサージ」なんてもう言ってられません。断然「されどマッサージ」なのです。


■「愛」を伝える
個人的に注目したのは、ほとんどの感覚機能が加齢とともに衰える中、C触覚線維の感度は加齢による影響を受けないばかりか、逆に亢進すること。そうならマッサージは、高齢者のケアにもっと活用できるかもしれません。

もし大切な方が、ご病気や認知症などで意思の疎通ができなくなったとしても、面会のさいには優しく、ゆっくりと身体をさすってあげて下さい。言葉は通じなくても、そのお気持ちは必ずや「愛情」として伝わっているはずです。

 

 

(参考文献)
1) 皮膚感覚と心
山口 創
日本香粧品学会誌
2022;46(1):51-58

2) The effects of aging on tactile function in humans
McIntyre S, et al.
Neuroscience
2021;464:53-58


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.15更新

移転候補地として最初に頭に浮かんだのは大井町でした。

大井町

 

何と言っても大井町線で自由が丘と直結しています。東急だけでなく、JR、りんかい線もあって交通の便も良さそう。大規模な再開発が進行していて、大きなタワマンができたり、街としても将来性が感じられます。

実はビルを内見したときは好印象で「これで決めた!」とまで思ったのですが、クリニックに戻るために大井町線に乗っている間に「やっぱ、止めた!」と180度気持ちが変わってしまいました。


大井町2

 

大通りに面した、駅から歩いて数分の立地的には申し分のないビルでした。気になったのはひとつは7階ということ。エレベーターが故障などで停止したらどうなるのか?お客様に階段を使って下さいと言うのか?

もうひとつは他の階のテナントはほとんどが塾で、午後から夕方にかけてかなり騒がしそうだったこと。お客様は子供たちとギューギューのエレベーターに乗ることになります。

この時点では、まだ他にいくらでも候補物件は出てくるだろうと、たかをくくっていたので、アッサリお断りしてしまいました。

でも、それが苦労の幕開けとなったのです。

 

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.02更新

自由が丘に再開発計画があることを知らず、その上まさか自分のクリニックがその地域に入るなんて夢にも思っていなかったので、クリニックの移転はまさに青天の霹靂。

このクリニックを開設したのは2011年の9月。ほとんど開業支援のコンサルタントに丸投げでしたが、それでもこんな大変な思いはもう二度としたくないと思ったものでした。まさか10年経ってまた同じことを繰り返さなければならないとは。

今のところどこに移転するのか、いつ移転するのか、それすら決まっていません。

決まってから発表しろとお叱りを受けそうですが、二転三転しながら、アタフタする様を楽しみに見守っていただきたいと、ちょっと自虐的になっています。

自由が丘が好きで、そこにクリニックを開設できたことに幸せを感じていたわけですが、今回少なくとも、大好きな自由が丘からは離れることにしました。

当院開設前のビルの様子
(懐かしの画像)当院開設前のビルの様子


自由が丘がどう変貌していくか見守りたいのもヤマヤマですが、おそらくあと10年程度となった自分のキャリアを思ったとき、慌ただしく工事が進行する街ではなく、落ち着いた静かな環境で診療に没頭したいという気持ちの方が強くなったのです。

候補地としては、東急線沿線で、今よりは東京駅に近い方角。何と言っても長野から新幹線通勤している身ですから、少しでも通勤時間を短縮して、身体の負担を減らしたいと思っています。

どこを狙っているかわかります?


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.02更新

■日焼け止めの課題
それは、もっと長波長側への防御能の拡大。

現在米国では、紫外線のUVBの防御能の目安には日本と同様にSPFがありますが、UVBより波長の長いUVAについては、“broad spectrum”というちょっとわかりにくい表現を採用しています。

そして、日焼け止めというのは波長が長いほど防御は難しくなるわけですが、少なくとも370nmまでの波長までは90%以上をブロックできる日焼け止めだけが“broad-spectrum”と表記できることになっています。ただし370nmは320~400nmのUVA領域。つまり長波長のUVAは十分ブロックできなくても仕方ないと認めた基準なのです。

このように現状では、紫外線のUVA領域ですら、全体をカバーできていないのが現状なのに、ここにきて、さらに長波長の可視光線の問題が話題になっています。

従来は可視光線(人が目で光、色として捉えることができる波長の光線)は皮膚には無害とされていたのですが、可視光線の中でも特にブルーライトは、肌の色の濃いタイプの人では日焼けの原因になることが確定的になってきました(色白の人では赤くなるだけ)。


■可視光線の防ぎ方
では可視光線対策にはどうすればいいの!とすぐに心が騒ぐ気持ちもわかりますが、実は可視光線は目に見えるので、その防御能もある程度見た目からも判断できます。

まず透明な日焼け止めはまったく無力。可視光線を吸収も反射もしないからこそ透明なのですから。

塗って白くなる日焼け止めはある程度有効。白く見えるということは可視光線全域を表面で反射しています。当然ブルーライトもある程度反射しています。

可視光線対策としてもっと優れているのが、黄色や赤や黒の色素でブルーライトを吸収してしまう方法。たとえば黄色に見えるのは黄色だけを反射してそれ以外の色を吸収しているから黄色に見えるわけで、ブルーライトも吸収しています。黒はすべての可視光線を吸収しているからそう見えるので、これが一番強力。ただし、黒の日焼けめでは売れそうにありません。

実際には、黒、赤、黄色をした酸化鉄を白の酸化チタンと合わせることで、肌の色味に合わせて調整した日焼け止めがあります。これが米国で販売されているtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)。


「色付き」にしてくれ


■次世代の標準日焼け止めか!?
これが現状では、可視光線対策としての日焼け止めの決定版。tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を使用すれば可視光線の浸透を93~98%防げるとか。最近の日焼け止めの文献では、肌の色の濃いタイプの方には、tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を推奨しています。

■tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なのは?
「次世代の」と大げさに書きましたが、全員にtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なわけではありません。

tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なのは、
1)光線過敏症状のある方
2)肝斑や色素沈着で治療している方
3)肌の色の濃いタイプで日焼けを避けたい方
に限られます。

「限られます」としたものの、3)を入れたら、結構な割合の人が当てはまりそう。

■日本でtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)はどう手に入れたらいい?
では、日本で市場に出回っている製品にもtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)に該当する日焼け止めはあるのでしょうか?それとも海外のサイトから購入するしかないのでしょうか?

■もっと時代の先端を走って!NAVISION
当院でも取り扱っているナビジョンを見ていると、「色つき」の日焼け止めがあって、それには見分けるポイントになる「酸化鉄」が含まれています。もしかしてtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)?とさっそく問い合わせてみましたが、「この製品は可視光線対策として設計されていません。」だって。「今後も研究を継続していきます」って、もっと自分から道を切り開いていかなかったら、永遠にラロッシュ・ポゼに勝てないよ!

■とぼけるな、ラロッシュ・ポゼ!
世界的に美容皮膚科御用達の日焼け止めの感もあるラロッシュ・ポゼの製品の中から、米国ではtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)として販売しているものなら間違いないと思い、問い合わせたところ「日本で販売されている製品の中で、どれが米国ではtinted sunscreenと表記しているか、こちらでは把握しておりません!」とまさかのすっとぼけた回答。製品の中には酸化鉄を含む「色つき」があって怪しいが・・・。

■最後は米国頼みか・・
最大の問題は、tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)の決め手になる成分の酸化鉄が、実は米国FDAのリストでは無効(!)な成分に分類されていたり、紫外線のSPFに相当する防御能の表記も定まっていないなど、とにかく制度が時代遅れになっていること。

tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を名乗るルールもないから、悪意を持ったメーカーの登場を防げません。

米国FDAが動けば、世界が動くわけですから、どうしても期待してしまうのですが、FDAは日焼け止めについては、有効成分の承認が遅れていることも長らく批判されていて、日焼け止め部門(そんなのあるか知らんけど)の動きの遅いのが気になります。


 

 

(参考文献)
1) Photoprotection beyond ultraviolet radiation: A review of tinted sunscreens
Lyons AB, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1393-1397

2) Practical guide to tinted sunscreens
Torres AE, et al.
J Am Acad Dermatol.
2022;87(3):656-657

5) Visible light Part II: Photoprotection against visible and ultraviolet light
Geisler AN, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1233-1244


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.09.14更新

ついに決着!日焼け止め30分前説


■前回紹介した、「日焼け止めは外に出る30分前に塗るべき!」というネットニュースにTwitter上では、すぐ効くはず!と反論が殺到した一件。

米国皮膚科学会が「15分前」を推奨していることを知っていましたが、その根拠がわからなかったので、こんな意見もあると紹介だけして、結論は先送りしました。

■実はこの時点では、以前に「皮膚の老化の80%は光老化」という都市伝説の出処を探し出すのには10年かかったことを思い出して、気長に「30分前説」の根拠を探るしかないと、日焼け止めの使い方、塗り方に言及してそうなベーシックな論文から読み始めました。

■そうしたら皮膚科領域の名だたる一流紙も「15~30分前」を勧めているし、WHOも「20分前」を勧めていることを知り愕然としましたが、それでも今回は案外あっさり問題は解決しました。優しく謎解きをしてくれたのは、カナダ皮膚科学会の公式ジャーナルでした。


■日光を浴びる15分から30分前に日焼け止めを塗ることが推奨される根拠は、ひとえにSPFなど日焼け止めの効果の測定がその条件で行われているからだったのです。水分の影響を排除するため、時間をおいてから効果測定はスタートするのです。

■想像上は塗った直後から効果がありそうでも、実際効果を証明したわけではないから、一流ジャーナルをはじめ、米国皮膚科学会やWHOなど世界的権威は、証明されていないことを推奨することはできないという立場を貫いているわけです。

■カナダ皮膚科学会の公式ジャーナルは、Twitterの皆様の憤りを晴らすように書いてくれています。「(15分から30分前に塗るべきという)推奨を支持するエビデンスはまったくない(a complete lack of evidence)」。

その上で、実際上の日焼け止めを塗るタイミングとしては、日光に当たる前に塗ればよく、ただ、水を浴びるときは15~30分前がよいと結論づけています。

■結局、誰も間違っていたわけでも、ウソ情報を流したわけでもなかったのです。たぶんこれからも「日焼け止めは外に出る30分前に塗るべき!」というネットニュースがときどき流れるでしょうが、人知れず微笑みながら聞き流すことにしましょう。


(参考文献)
1) Sunscreen application, safety, and sun protection: the evidence
Li H, et al.
Journal of Cutaneous Medicine and Surgery
2019;23(4):357-369

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.09.06更新


30分前に塗る?日焼け止め

■Twitterから
最近、Twitterで議論を呼んだのが、ネットに出た「日焼け止めは、外に出る30分前に塗るべき」という記事。批判の嵐が巻き起こり、中にはメーカー各社に確認を取る方もいて、結局、質問した10社ほどのすべてが、「塗ればすぐに有効」と返答したとか。

こんな都市伝説まだ生き残っていたのか!という意見もあったから、以前からときおり蒸し返される問題なのでしょう。今回は、少なくともTwitter上では「即効説」の圧勝となり、「30分前説」は瞬殺された格好。


■米国皮膚科学会は「15分前説」
確かに塗った瞬間から肌に到達する紫外線を反射、吸収するはずだから、「即効説」が当然に思えるのですが、ちょっと引っかかる点があります。

実は、米国皮膚科学会は日焼け止めの使い方について「15分前説」をとっているのです。これが単なる医師の利益を死守するためだけの日本の医学会ならともかく、国民に正確な医療情報を提供することを使命とする米国の医学会の言っていることとなると無視しにくい。

米国皮膚科学会の看板を背負って、見え透いたウソ情報を流すとはとても思えないのです。しかも学会サイトに掲載されているから、世界中の人が見ていて、間違いはすぐに指摘され訂正されるはず。そうなってないということは、それ相当の根拠があるに違いありません


■もしかしたら・・
「即効説」だろうが、「15分前説」だとうが、たとえ「30分前説」だろうが、現実にはメイクの手順や外出の準備を考えれば、日焼け止めを塗ってから、実際に外に出て日光を浴びるまでには時間もかかるだろうから、大きな違いはないでしょうが、何とも人騒がせな問題です。

もしかしたら・・日焼け止めが市場に出回りだした頃に、「日焼け止めは塗ってから何分で有効になるのか?」というような形で議論になっていたのかも。時間とともにそうした議論の存在すら忘れ去られてしまったのかもしれません。

もしかしたら・・「30分前説」は、日本人らしい奥ゆかしさから「15分説」を倍にして、より安全確実にしたものかもしれません。

もしかしたら・・長年、化粧品とくに日焼け止めの研究開発に携わっている方にお聞きしたら即答していただけることなのかもしれません。


(参考文献)
1) How to apply sunscreen(米国皮膚科学会サイト)
https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.09.01更新

 

室内で必要? 日焼け止め


■こんな専門家も・・
室内にいるときでも、窓から日光が入るから、日焼け止めを塗っておいた方がいいと勧める専門家がいるらしい。確かに「紫外線の中でもUVAは波長が長いから窓ガラスを貫通して室内に入り、肌を老化させる・・」と書かれた文章を見かけることは多い。

■しかし・・
室内の光線量を実際に調べたわけでもないし、文献的な裏付けをしっかりおさえているわけでもないので、強くは言いづらいのですが、それはやりすぎではないだろうか、本当はいらないのでは?

■こんな調査が・・
そうした判断を支えているのは、数年前に講演で聴いた話。子供の近視が激増している原因は、外で遊ぶ時間が短くなって、太陽光に含まれるバイオレットライト(ブルーライトの近縁)が目に入らなくなったからという話。

この学説を唱えた慶応大学眼科の調査研究によると、都内の学校の教室内ではまったくバイオレットライトを検出できなかったといいます。窓からも入らなければ、照明にも含まれていない。ついでに言えば、メガネのレンズもバイオレットライトを通さない(だからメガネをかけると近視が進行するのかも)。

バイオレットライトすらないなら、それより波長の短いUVAがあるわけない。窓ガラスは紫外線のうちUVBはシャットアウトするけど、UVAは通してしまうとされてきたわけですが、それは昔の板ガラスの話で、現代建築のサッシ窓ならUVAもシャットアウトしている可能性がある。

■車内と室内
アンチエイジング医学の領域で、光老化の例としてよく使われるトラックドライバーの写真があって、これは顔の右半分だけが顕著に肌が劣化しているのですが(運転中に顔の右側にだけ日光を浴びている)、ガラスを通してでも光老化が進行する一つの実例になっています。

でも、車内と室内を同一視するのはさすがに強引。車内というのはガラスと人の位置が数十センチの距離に固定されている特殊な状況。室内で言えば、窓ガラスにずっとへばりついているようなもので、そんな過ごし方をする人はいない。

■可視光線からの防御は難しい
日光憎し(?)で凝り固まった方の中には、紫外線(UVA)はともかく、窓ガラスから光が入るなら可視光線は通してるはずで、可視光線でもブルーライトは日焼けの原因になるではないかと反撃してくるかもしれません。

しかし、それをいうなら市場に出回るほとんどの日焼け止めでは、どんなにSPFやPAが高くてもブルーライトなど可視光線の防御にはならないから、そう簡単に「室内でも日焼け止めを!」と言うなと反論したい。

■海外では・・
米国皮膚科学会は、外出前に、できたら15分前までに日焼け止めを塗るよう推奨しています。たぶん世界中探しても、室内での日焼け止めの使用を推奨しているガイドラインなどはないでしょう。ただ、さすがにそれを確かめてくれとは言わないでいただきたい。ないものをないと証明するのは難しいですから。

■たまにはお肌に楽をさせてあげて
吹けば飛ぶような話を大げさにして、がんじがらめのスキンケアを推奨するのが専門家の役目とはとうてい思えません。「室内でも日焼け止めを!」なんて、そんなスキンケアは窮屈すぎます。室内ではスキンケアも最小限にして、お肌を少しでも負担から解放してあげてはいかがでしょうか。


 

(参考文献)

1) How to apply sunscreen
https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen

2) Photoprotetion: clothing and glass
Almutawa F, et al.
Dermatol Clin.
2014;32(3):439-448

3) Photoprotection by window glass, automobile glass, and sunglasses
Tuchinda C, et al.
J Am Acad Dermatol.
2006;54(5):845-854

4) The role of glasses as a barrier against the transmission of ultraviolet radiation: an experimental study
Duarte I, et al.
Photoimmunol Photomed.
2009;25(4):181-184

5) Visible light Part II: Photoprotection against visible and ultraviolet light
Geisler AN, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1233-1244


 

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2022.08.15更新

正直に白状すれば、私は有酸素運動が好きではありません。ジムでバイクをこいだり、ランニングマシンで走っていると、ハムスターになったようで人間性を否定された気分になるし、単調さに耐えかねて「この時間を本や論文を読む時間に使った方が、自分の残された人生において有益ではないだろうか・・」というバカげた疑問に真剣に悩むことになります。

しかし、それでも有酸素運動には同情(?)するところもあって、それはほんとうのスゴさが十分に知れ渡っていないこと。有酸素運動のメリットというとたいてい心肺機能を強化できるとか、インスリン抵抗性や動脈硬化が改善するというのですが、そんな説明では人の心に響くわけがない。

有酸素運動のほんとうのスゴさは、今が健康だろうが、闘病中だろうが、長生きできるようになること。


米国には身体活動のガイドラインがあって、成人では週に有酸素運動を中強度(ウォーキングなど)なら150分以上、高強度(ランニングなど)なら75分以上、加えて筋トレを週2回以上することが推奨されています。

米国人はネコも杓子もランニングしている印象がありますが、実際にガイドラインを満たす身体活動をしているのは、成人全体の16%。有酸素運動だけ満たしたのは24%、筋トレだけは4.5%だとか。

そしてここからがスゴいのですが、50万人の成人米国人を対象に調査したところ、ガイドラインを満たす運動をしていた人は、全ての死亡原因をまとめた比較で、運動をしていない人に比べ、死亡率が40%、有酸素運動だけでもしていれば29%も減少していたのです。

死因を癌、心血管系、事故・ケガなどと8つの原因別に分けたとき、有酸素運動はすべての原因別死亡率を減少させていました。

そして、付け加えればこの効果は、健康人より基礎疾患のある人でより大きかったのです。


日本人でのデータもあります。それは糖尿病患者を対象にした研究ですが、1日30分程度のウォーキングで、なんと死亡率はほぼ半減しました。

この研究では、当初は心臓病による死亡率が減ることで、全体の死亡率を減少させるだろうと予想を立てていたようですが、実際は心臓病での死亡はそんなに減っていなくて、それではなぜ死亡率が半減までしたのかよくわからないという、何とも締まらない結末になるのですが、それにしても半減とはスゴい。

日頃、医者というのは、わずかな人数を対象にした研究で、吹けば飛ぶような数値の差を、統計式をこねくりまわして有意差があるとかないとかで大騒ぎしているのですが、それを思えば、何千、何万人単位で30%とか50%の差なんて、開いた口がふさがりません。

ここまで来ても、意気地のない私なんか「あまり膝に負担をかけると、膝関節症になるから・・」と駄々をこねたくなるのですが、最近講演で聞いた話では、ランニングしている人の方が、何もしていない人より膝関節症になりにくいとのことなので、残念ながら心配無用のようです。

「あんまり時間が・・」という最後の粘りにも、それなら筋トレは置いといて、まずは有酸素運動だけでもすべきというのが、エビデンスに基づく冷徹な結論。文献を読み過ぎたせいか、どうにも逃げ場がなくなって困ってしまいます。あとは朝の犬の散歩を何とか有酸素運動と呼べないかと、どこまでも図々しく考えているのですが、チンタラ歩いているだけなので、呼べるワケがない・・・。


有酸素運動とはいえないか!?


 

(参考文献)

1) Physical Activity Guidelines for Americans 2nd edition
https://health.gov/sites/default/files/2019-09/Physical_Activity_Guidelines_2nd_edition.pdf

2) Recommended physical activity and all cause and cause specific mortality in US adults: prospective cohort study
Zhao M, et al.
BMJ
2020;370:m2031

3) Leisure-time physical activity is a significant predictor of stroke and total mortality in Japanese patients with type 2 diabetes: analysis from the Japan Diabetes Complications Study(JDCS)
Sone H, et al.
Diabetologia
2013;56:1021-1030

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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