酒は「百薬の長」と昔から言われ、飲み過ぎはダメだとしても、適度な飲酒なら健康に良いというのがこれまでの常識。ビールなら中瓶1本、ワインなら軽めの2杯が適量とされ、とくに赤ワインはアンチエイジング的にもいいともてはやされてきました。
ところが、お酒とアンチエイジングをこよなく愛する人にはとんでもない論文が発表されました。掲載されたのは世界でも指折りの権威ある雑誌「ランセット」で、単なる臨床研究ではなく、これまで発表された195の国と地域で行われた臨床研究の総まとめです。
なんと!!お酒は適量ならむしろ健康にいいというのは間違いで、一番健康によい摂取量はゼロ(飲まない方がよい)!!というのが衝撃の結論。
(出典:参考文献より)
これらは女性のアルコール摂取量と疾患リスクの関係を表したグラフです。黒い線で見て下さい。横軸がアルコール摂取量、縦軸が疾患リスクです。右が虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)の場合で、右に向かっていったん下がってから上昇カーブを描いています。つまり少量の摂取ならむしろリスクを下げる効果が認められています。
しかし左側の乳癌ではただ右肩上がりに疾患リスクが上昇しています。飲めば飲むほど乳癌リスクは高くなるというわけです。
そして・・こちらがその衝撃のグラフ
(出典:参考文献より)
これがアルコール摂取量と死亡リスクの関係を表したグラフです。さまざまな死亡をすべてまとめると、残念ながら(!)グラフは右肩上がりになってしまうのです。つまりアルコールは飲めば飲むほど死亡リスクを高め、健康的な飲酒などなく、一番健康的な摂取量はゼロ!だということを示しています。
アルコールの適量を巡る論争はこれからも続くでしょうが、今回の論文は相当にインパクトがあります。研究グループは世界中でアルコールの摂取に関するコンセンサスを見直す必要があるとコメントしています。
(参考文献)
Alcohol use and burden for 195 countries and territories,1990-2016:a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016.
GBD 2016 Alcohol Collaborators.
Lancet
2018 Aug23.