2025.06.29更新

第一印象


「人は見た目が9割」——この言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。実際、私たちは初対面の人にわずか数秒、場合によっては0.1秒という驚くべき短時間で印象を抱きます。

心理学の研究結果をもとに、第一印象がどのように作られるのか、そして「見た目が9割」という通説の真実について、科学的な視点から解き明かしていきます。

現代のSNS時代における第一印象の変化についても触れながら、私たちが日常的に経験する印象形成のメカニズムを詳しく見ていきましょう。


1.第一印象とは

人は誰かと初めて出会うと、短時間のうちに、その人の見た目や話し方、雰囲気などから「優しそう」、「信頼できそう」、「怖そう」といった印象を持ちます。これが第一印象です。


2.第一印象はいつ、どのようにして作られるか?

「第一印象は会って数秒で決まる」とよく言われます。学術的には、0.1秒で決まる!という報告まであります(文献1)。

その報告では顔写真を 0.1秒/0.5秒/無制限で提示した実験を行い,0.1秒でも無制限に観察した場合と高い相関を示し,極めて短時間で安定した印象が形成されることを実証しました。

これには続報もあり(文献2)、顔写真を見る時間が33ミリ秒を超えると、無制限に観察した場合と判断が一致し始め、167ミリ秒を超えるとそれ以上一致度は改善しませんでした。

私たちが顔の見た目から他者に対する印象を自動的かつ効率的に形成していることを裏付けています。


3.第一印象は見かけが9割!?

2005年に「人は見かけが9割」という題名の本がベストセラーになりました。第一印象の形成においても、「見かけ」、つまりは視覚情報が圧倒的に重要と思えるかもしれません。

こうした場面でよくメラビアンの法則(文献3)が引用されます。

メラビアンの法則とは、人同士のコミュニケーションにおいて、相手に与える影響の割合を示した心理学の法則です。

具体的には、以下の3つの要素が相手に与える影響の割合を表しています:
視覚情報(見た目):55% - 表情、身振り、服装など
聴覚情報(声):38% - 話し方、声のトーンなど
言語情報(話の内容):7% - 実際に話している言葉の内容

この法則は、アメリカの心理学者メラビアンが提唱したもので、「人は見た目が9割」という考えの根拠としても使われています。

注)「人は見た目が9割」の「9割」とは非言語情報が聴覚情報+視覚情報として93%になることが根拠になっています。


「メラビアンの法則」は本来、言語内容と非言語情報が「矛盾している」場合に、受け手がどの情報を手がかりに判断するかを示したもので、メラビアン本人も一般的に当てはめるのは誤用であると、繰り返し指摘しています。

「視覚情報が第一印象の55%を占める」などと説明するのは、明らかに誤用です。

視覚情報――容姿や服装、表情・しぐさなど――は第一印象形成において強力なファクターですが、それだけが全てではありません。言葉遣いや会話の内容、声のトーンといった聴覚・言語情報もまた初期評価に欠かせない要素であり、場合によっては視覚情報以上に重視されるのです。


4.SNSでの第一印象!?

SNSプロフィールやオンライン上の情報に基づく第一印象についても触れておきます。私たちはしばしば、対面で会う前に相手のオンライン上のプロフィールやSNSを見て印象を抱きます。


これについて興味深い研究として、Weisbuchら(2009)は大学生のFacebookページから抱かれる印象と、その学生と直接対面して抱かれる印象が一致するかを調べました(文献4)。

結果、Facebook上で「好感が持てる」と評価の高い学生は、実際に会ってみてもやはり周囲から好かれる傾向が確認されました。

オンラインのソーシャルな世界は、リアルタイムの対人交流とそれほど変わらない可能性があり、SNSプロフィールやオンライン上の情報を参考にすることは、相性の良いパートナー、友人、従業員を見つける上で一定の効果があると結論づけられています。


5.まとめ

第一印象は確かに短時間で形成されます。研究によると、わずか0.1秒という瞬間的な時間でも、私たちは他者に対して安定した印象を抱くことができます。これは人間の持つ驚くべき能力の一つです。

しかし、「人は見た目が9割」という通説については注意が必要です。よく引用されるメラビアンの法則は、言語内容と非言語情報が矛盾している特殊な状況での研究結果であり、一般的な第一印象形成にそのまま当てはめることは適切ではありません。

実際の第一印象形成では、視覚情報(容姿・服装・表情)は確かに重要な要素ですが、それだけが全てではありません。言葉遣いや声のトーン、会話の内容といった聴覚・言語情報も同様に重要な役割を果たします。場面や状況によっては、これらの要素が視覚情報以上に重視されることもあります。

現代のデジタル社会では、SNSやオンラインプロフィールを通じた第一印象も重要になっています。興味深いことに、Facebook上での印象と実際に会った時の印象には一定の相関があることが研究で示されており、オンラインでの第一印象も決して軽視できないものとなっています。

第一印象を良くするためには、見た目だけでなく、話し方や振る舞い、そしてオンラインでの自己表現まで含めた総合的なアプローチが大切だと言えるでしょう。


【参考文献】

1) First impressions: Making up your mind after a 100-ms exposure to a face.
Janine Willis, et al.
Psychological Science
2006;17(7), 592-598

2) Evaluating faces on trustworthiness after minimal time exposure.
Alexander Todorov, et al.
Social Cognition
2009;27(6):813-833

3) Silent Messages
Albert Mehrabian
Wadsworth Publishing Company, Belmont, CA
1971年

4) On Being Liked on the Web and in the "Real World": Consistency in First Impressions across Personal Webpages and Spontaneous Behavior
Max Weisbuch, et al.
J Exp Soc Psychol
2009;45(3):573-576

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年6月29日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2024.04.19更新

 

4月7日(日)の夜から腹痛に襲われ、8日(月)に病院を受診したところ絞扼性イレウスの診断で緊急手術となりました。


昨年秋に大腸がんが発覚し手術しましたが、先月術後半年の定期検査があり問題なかったし、一度開腹手術を受けると腸管の癒着が生じて通過障害(腸閉塞)をきたしやすくなるので、深刻な話ではないと思っていましたが、腸閉塞となると鼻から管を入れて何日も様子を見ることになって、もしかしたら長期入院になるかもしれないし、また今回は手術しないで回復したとしても、またいつ腸閉塞を起こすかもしれないという爆弾を抱えて生活しなければならず、すっかり憂鬱になってしまいました。


ところが、この春から交代になった若い主治医はとても積極的で、治療方針として緊急手術の提案があり、「いつですか?」とおそるおそる聞いたら、「今日!」だと。緊急手術にはもちろんリスクはありますが、何より「すぐ治療して、すぐ退院したい!」という私の気持ちにピッタリな提案。手術までの時間も待ち遠しいくらいでウキウキしていました。


手術は内視鏡手術から、開腹手術になったのですが、前回よりは傷の大きさも半分ほどで、痛みもずっと楽でした。何より腸を切除することもなく腸を締め付けていた癒着でできたバンドをチョキンと切るだけだったので、手術後の経過も早くて開腹手術でありながら月曜に入院・手術でその週の金曜日には退院することができました。


退院後は、13日(土)、14日(日)は外出は控えましたが庭仕事(!)で体調を整え、ちょうど術後1週間となる4月15日(月)に診療を再開させることができました。


ご予約の変更でご迷惑をおかけしたお客様には謹んでお詫び申し上げます。また早期の社会復帰を可能にしてくれた主治医をはじめとする医療スタッフの皆様にはお礼を申し上げます。



腸閉塞で手術だなんて、まるで昨年秋のデジャブかのようで、「いよいよか・・」と気を回される方もいるでしょうが、まことに残念(?)ながら「いよいよ」ではまったくございません。今回の手術所見として、お腹の中にはがんの転移、再発はまったく認めませんでした。


手術、入院も2度目となると特別な感慨など何もありませんでした。ただ消化管に持病を抱えていると、体調がいとも簡単に崩れることがよくわかったので、今後は元気なうちに自分のキャリアの集大成を急ぎたいと思います。


これから私が展開する美容医療にぜひご期待下さい。晩節を汚したくないので、後ろ指を指されるようなことは決して行わないことをお約束します。



 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2023.09.10更新

 

コロナから学んだこと


これだけ世界中で猛威を振るうコロナだから、自分もそのうち・・と覚悟しているのに、なかなか罹らないから、もしかしたらこのまま乗り切れるかと淡い期待を抱いた途端、アッサリ罹ってしまいました。

(学んだことその1)一気に肺炎!

最初は夏風邪のような喉の異変で、この時点での抗原検査は陰性でした。それからとどまることなくノドの痛みが悪化して、もうつばも飲み込めないほどになるとともに痰が多く出るようになりました。

普通の風邪でもインフルエンザでも肺炎になることはあります。でもそれは「こじらせたら」の話。最初からではない。コロナは肺炎ウイルスだから当たり前と言われたらそれまでですが、最初から来る!自分が感染してみてようやくこの感染症の恐ろしさが実感できました。

実を言うと私は痰をうまく口からペッと出せなくて、何かの拍子に喉に絡んでもごくんと飲み込んできたのですが、つばも飲めないほど痛いのに、それでも飲み込まなければ確実に窒息するという状況は悲惨の極み。これがいつまで続くのかと想像するだけで、病と闘う気が失せました。

私も医師、それも呼吸器外科医としてのキャリアが長かったので、何度も痰づまりで息が吸い込めずパニックになりましたが、さすがに痰を詰まらせて死ぬわけにはいかないと、頭の中に肺、気管支の解剖を思い浮かべて、痰が出やすいように対位ドレナージを工夫して乗り切りました。

ご自身、ご家族がコロナに罹って自宅療養の際は、この痰を出しやすくする「体位ドレナージ」のテクニックは必須だと思います。「痰 体位ドレナージ」で検索して、自身にとってわかりやすいサイトをチェックしておきましょう。


(学んだことその2)いつから社会復帰していい?

ようやく最悪期を乗り越えると、急に免疫システムが作動したように感じられ順調に改善していきました。ただ、開業医である自分はいつから仕事復帰していいのだろう?という素朴な疑問が残りました。

厚労省が5類移行後の対応についてこう発表しています。
1)外出を控えるかどうかは個人の判断
2)外出を控えることが推奨される期間
発症日を0日目として5日間経過するまで
発症後5日以降まで症状が続くときは、症状が軽快して24時間経過するまで
3)周りの方にうつさないための配慮
発症日を0日目として10日間を経過するまでは高齢者などハイリスク者との接触を控えることやマスクを着用する

一律に発症日からの日数で規定していて検査はまったく要件に入っていないことは意外でしたが、そもそもが「個人の判断」なのですから妥当なラインなのでしょう。

私の場合は偶然ですが、結局「周りの方にうつさないための配慮」に従って、11日目に診療を再開していました。

私は自分で診断して、結局医療機関に連絡することもなく、勝手に治ったわけですが、皆様ご自身やご家族が罹ったとき、どのタイミングで医療機関に連絡すべきか、軽症だと迷惑がられるのではないかと悩まれるかも。

その答えは「医療機関に頼りたいときが頼りどき」。これはコロナに関わりなく、救急車をいつ呼ぶか、救急センターをいつ受診するかも同じ。軽症、重症なんて医師が判断すべきことです。

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥