2022.07.18更新

前回書いたようにバストを下垂させる要素として
・加齢
・22.7キロ(50ポンド)を越える体重減少
・肥満
・大きなブラサイズ
・妊娠回数が多い
・喫煙
を指摘した報告の中で、強調されていたのは、ひとつは「母乳育児は下垂の原因ではない」であり、もうひとつが、「筋トレしても下垂の予防や改善にはならない」ということ。

バストの下垂に関して、問題があると思うのは「クーパー靱帯が伸びてバストがたれてしまう」という説明。

あたかもクーパー靭帯が胸壁から伸びて乳房全体を支えているように誤解されやすいのですが、実はクーパー靱帯は乳腺組織と皮膚をつなぐ靭帯です。

バストの下垂を報告した米国の形成外科医は、筋トレが役に立たない理由をうまく説明してします。

「バストは皮膚とは強く、筋肉(胸壁)とはゆるくつながっています。(筋トレをしても)バストは筋肉とともに上がる以上に、皮膚とともに落ちるものなのです。」

これだけでは希望を打ち砕くだけですが、希望の灯として、ワコールからの発表を紹介しておきます。

ワコールが集積している日本人女性の体型計測のデータ解析によると、加齢による体型の変化は誰でも同じように進むのですが、進み方には個人差があって、40代、50代になっても20代の体型を維持している女性が2割ほどいるそうです。その人たちの特徴として以下の3つが挙げられています。

1)運動
特別ハードなトレーニングというわけではなく、美しい姿勢を意識していたり、たくさん歩いたり、身体をよく動かすことを心がけている。
2)食事
規則正しい食生活をしている。
3)下着
正しいサイズの下着を着用している。

ワコールの悪いクセ(?)は最後は必ずサイズの合った下着が大切と話をまとめようとするところ。まあそれは民間営利企業だから仕方ないと大目に見ることにするとして、注目すべきは「たくさん歩いたり」が挙げられていること。


揺らした方が

「バストが垂れるから有酸素運動はしない方がよい、筋トレだけしてればいい!」という見解があるのを知って、それに反論しようと、ここ数ヶ月バストや有酸素運動について文献を読みあさったのですが、「たとえバストを揺らすとしても、ウォーキングやジョギングなど積極的に身体を動かして健康的な生活を送ることが、結局は体型維持の秘訣である!」を結論とさせていただきます。

 



(参考文献)
1) Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

2) 日本女性の加齢による体型変化
坂本 晶子
アンチ・エイジング医学
2014;10(6):78-83

3) ボディエイジング〜加齢による女性の体型変化〜
岸本 泰蔵
日皮協ジャーナル
No.65(2011.2):278-286

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.07.03更新

論理の誤りの典型に「単なる前後関係を因果関係と見誤る」というのがあります。たとえば洗車をしたら雨が降ってすぐ汚れたことから、「洗車をしたから雨が降った!」と洗車が原因、雨が結果と思い込むこと。

これくらいバカバカしいとすぐに見透かすことができますが、では「授乳するとバストが垂れる」はどうでしょう?

何がバストを下向きにするのか


実際、世界の文化圏をまたいで、「授乳はバストの形を崩す」伝説はひろまっています。イタリアの女子高生の30%はそう信じていると回答していますし、ドミニカの女性が早めに母乳育児を切り上げる理由にもなっています。

このように「授乳はバストの形を崩す」伝説は、世界中の育児に影響を与えているわけですが、実は授乳がバストの形態にどう影響するか医学的な検証は行われていません。

バストは美容外科における大きな柱のひとつ。日本では圧倒的に胸を大きくする豊胸術が行われますが、米国では逆に大きく、垂れた胸を小さく、引き上げる手術がよく行われます。

肥満が社会問題になっている米国では、胃を小さくしたりする肥満に対する手術がよく行われ、その結果大幅に減量してバストが垂れて、今度はバストの下垂に対する美容手術の件数も伸びているとか。

そんなバストの下垂と日々向かいあう米国の形成外科医から、「何がバストを下垂させているか?」を検討した報告が出されました。

それによるとバストを下垂させる原因とされたのは
・加齢
・22.7キロ(50ポンド)を越える体重減少
・肥満
・大きなブラサイズ
・妊娠回数が多い
・喫煙
でした。

この報告は、「授乳はバストの下垂の原因にはならない」と結論づけています。「妊娠することで下垂したのであって、授乳したからではない」と、前後関係はあっても、原因と結果の因果関係にはないとしています。

報告した医師は、「授乳でバストが崩れる」ことへの懸念が、先進国で母乳育児する率が高まらない一因になっていると憂慮していますが、「妊娠でバストが崩れる」としたら、ますます少子化に拍車がかかるのではないかと私は憂慮してしまいます。


(参考文献)
Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.25更新

■□■□■□■□■□■□■ニキビ治療の誤解「ブツブツが治ったら治療は終わり」

ニキビ診療での課題のひとつは「皮膚科受診の遅れ」ですが、もうひとつ「中途半端な治療」も課題といえます。

多くの方は、「ブツブツが治ったら治療は終わり」と考えがちですが、治療を止めれば当然またできてしまうわけで、ひどくなったときだけ皮膚科にかかることを繰り返しています。

ニキビ治療の終わりをハッキリ線引きするのは難しいですが、そう簡単に肌質が変わるはずもないので、治療は長期戦を覚悟しなければなりません。


ニキビ治療は長〜いお付き合い

■□■□■□■□■□■□■治療を継続することに意味はある!?

もちろん治療の継続をいうからには、続けることに意味がないといけないのですが、その点については、次のようなエビデンスがあります。

日本では未発売ですが、エピデュオ・フォルテ(アダパレン0.3%+過酸化ベンゾイル2.5%)を使った臨床報告です。

ニキビ患者を集めて、顔の半分にだけこのエピデュオ・フォルテを6ヶ月間塗って治療効果をみました。

この報告の最も画期的な点は、塗り薬であるエピデュオ・フォルテでニキビ瘢痕の数を減らしたことですが(もちろん炎症性ニキビの減少、テクスチャーの改善も)、効果は3ヶ月、6ヶ月と尻上がりに上がって、治療を継続するすることの重要性が示唆されました。

実はこの報告には続きがあって、調子にのった(?)研究者が、さらに治療期間を半年延長したのです。

するとフォルテを使用した半顔は、半年でニキビ痕は22%減少していたのですが、1年後には27%まで減少させることができました。

返す返すも残念なのは、日本ではエピデュオ・フォルテは使えず、アダパレン(ディフェリン)の濃度が低いエピデュオゲルしかないこと。

ただこのシリーズには、そのエピデュオゲルを使ったバージョンもあって、半年間使用してニキビ瘢痕を増加させなかったという結論が得られています。しかも新しいニキビ瘢痕ができるのを防ぐだけでなく、すでにあるニキビ瘢痕を、数としては減らせなかったけれど、目立たなくするに役立ったと評価されています。

ニキビ治療をまじめに半年、1年と続けられる人はほとんどいないのではないでしょうか。ぜひ1年は続けて、そのとき止める理由がなければさらに続けてはどうでしょう。新しいニキビが出来るのを防ぐだけでなく、すでにある瘢痕の数を減らせる可能性すらあるのですから。


■□■□■□■□■□■□■ニキビの正解とは!?

ニキビには治療のガイドラインがあって、そこでは急性炎症期の治療に続いて、「維持療法」が明記され、アダパレン(ディフェリン)やBPO製剤の外用療法が推奨されています。

ニキビは「ブツブツが治ったら治療は終わり」なのではなく、その後またできないように「維持療法」を続ける、それが正解なのです。

ガイドラインが掲げる基本方針なのに、そうしたことがなぜか一般には浸透していないように思われます。何か裏があるのでしょうか?

もしかしたら維持療法が一般化して、国民の医療費がさらに増えるのは避けたいという政治的思惑から、あまり声高には言わないことになっているとか・・さすがに考えすぎか。


(参考文献)
1)Adapalene 0.1%/benzoyl peroxide 2.5% gel reduces the risk of atrophic scar formation in moderate inflammatory acne: a split-face randomized control trial
Dréno B,et al.
JEADV
2017;31:737-742

2)Prevention and reduction of atrophic acne scars with adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in subjects with moderate or severe facial acne: results of a 6-month randomized, vehicle-controlled trial using intra-individual comparison
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2018;19:275-286

3)Long-term effectiveness and safety of up to 48 weeks' treatment with topical adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in the prevention and reduction of atrophic acne scars in moderate and severe facial acne
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2019;20:725-732



 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.18更新

ニキビには「早期から治療を!」と皮膚科の先生は言いますが、ほんとうに早期から治療したらメリットがあるのでしょうか?


結局、一番悪いのは


実はこれは簡単明瞭で、反対の意味の「治療の遅れ」がニキビが瘢痕化する有名なリスクファクターとして知られています。

リスクファクターの中でも特にこの「治療の遅れ」が重要視されるのは、これだけは自分でなんとかできるから。

そのほかのリスクファクターである「家族歴の有無」は、自分ではどうにも変えようがないし、「重症ニキビ」だって、そうなってからでは手遅れです。


ただ皮膚科の先生が一生懸命「早期からの治療」を叫んでも、実はそれを妨げている一因は皮膚科の先生自身にもある気がします。

日頃、ニキビのできている方には皮膚科受診をすすめるのですが、「時間がかかりすぎる」、「行っても治らない」、「ろくに診てくれない」、「話を聞いてくれない」と逆襲されることも多い。

そんなときは同業者の肩をもって「今の医療制度では、たくさんの患者さんを診ないと経営的に成り立たないから、皮膚科の先生も大変なんですよ」とフォローしますが、ほんとうにそうなのかどうかは定かではありません。

問題の多いニキビ診療の現状が、結局は美容皮膚科医につけいる余地を与えているわけで、うまい汁を吸ってる同業の先生方には「おぬし、ワルよの~!」と申し上げたい。



(参考文献)
1)Acne scarring: why we should act sooner rather than later
Dréno  B,et al.
Dermatol ther.
2021;11(4):1075-1078

2)Development of an atrophic acne scar risk assessment tool
Tan J,et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol.
2017;31(9):1547-1554

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.09更新

ニキビの文献を読んでいて、次のような言葉を見つけました。

「ニキビには重症度のいかんを問わず瘢痕化するリスクがある。皮膚科医はたとえ軽症のニキビ患者であっても、早期から継続的な治療で瘢痕形成を防がねばならない。」

ニキビ治療の究極の目標は、ニキビの瘢痕化を防ぐこと。これが皮膚科・美容皮膚科の共通の認識なのです。

ニキビ瘢痕こうできる



ただそうなると、どんなニキビが瘢痕化しやすいのか、あらかじめ予想がつくと好都合。ところがこれまではただ漠然と「重症のニキビ、炎症の強いニキビほど瘢痕化しやすい」と言われていただけ。

反論の余地はないように思えますが、でも実際の臨床ではそう簡単に割り切れないから前述のように、「重症度のいかんを問わず」、「たとえ軽症であっても」となるわけです。

そんな臨床上のモヤモヤを吹き払うかのような、顔のニキビのひとつひとつをキッチリ2週間毎に6ヶ月追跡した臨床研究が報告されました。

それによると、ニキビ瘢痕の83%は炎症後の赤みや色素沈着から生じていました。もっとも多いのが、赤ニキビ→炎症後の赤み→瘢痕とたどるコース。

また、あとで瘢痕になった丘疹(ブツブツ)は、ならなかった丘疹より経過が長かった(10.5日対6.6日)ことも判明しました。

結論自体は当たり前すぎます。経過が長く、ブツブツが平らになったあとも赤味が残るような重症のニキビ、炎症の強いニキビほど凹み(瘢痕)を作りやすい、というものですから。

しかし、この研究は「長い経過」、「赤み」が、瘢痕になるニキビを見分ける重要なポイントだと明らかにしました。

ということは、「長い経過」の間に、まだ「赤み」のうちに適切な治療を開始すれば、瘢痕になることを予防できる可能性がありそうです。できてから1週間以上たつもの、平らになってからも赤みの残るものを放置していてはいけません。


(参考文献)
1)Acne scarring: why we should act sooner rather than later
Dréno  B,et al.
Dermatol ther.
2021;11(4):1075-1078

2)Prospective study of pathogenesis of atrophic acne scars and role of macular erythema
Tan J,et al.
J Drugs Dermatol.
2017;16(6)567-573

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.03更新

皮膚粗鬆症は、美容皮膚科の対象ではありません。しかし、それでは皮膚科領域かと言えばそうでもない。なぜなら皮膚粗鬆症というのは正式な病名とは認められていないから。

では、誰が診ているのか?誰も診ていません。

皮膚粗鬆症

実際に皮膚粗鬆症で皮膚が剥けたりして生活に支障をきたしているのは、ご高齢のとくに介護施設などでケアを受けている方々に多いと想像されます。そうした施設に行くと手足に痛々しく包帯を巻いている方をよく見かけます。

皮膚が剥けてしまうことが、どれだけ大変なことか。皆様の中にもヤケドを負ったりして、皮膚のありがたみを実体験した方もいらっしゃるでしょう。面倒でも毎日手当しないといけませんし、触るといたいし、入浴のさいにはさらにしみて痛い。

介護施設には痛くても、お世話をしてくれる方には気兼ねして正直に言えず、ただただ我慢している方がたくさんいらっしゃるに違いありません。

何もやりようがないなら、それは年をとることの「苦痛」のひとつとして割り切るしかありません。しかし、少しでも改善させる対処法があるなら、少しでも痛みがなく、穏やかに暮らせるようにしてあげたい。

理想的には1%中分子ヒアルロン酸、0.05%レチナールと5%ビタミンCを含んだ保湿クリームがあればベストですが、コストが高くなりすぎて現実味がありません。

もし、このブログがどなたか化粧品メーカーの方の目に触れることがあれば、せめて有効成分として中分子ヒアルロン酸とビタミンCがある程度含まれた保湿剤を作っていただけませんでしょうか。

それは決して大きな利益を稼ぐようなものではありませんが、現実に苦しまれている多くの高齢者の方に福音をもたらし、メーカーにとって会社としての存在価値は爆上がりするに違いありません。



 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.05.27更新

皮膚粗鬆症は、肌の「究極の老化」、ということは、皮膚粗鬆症に効果的な治療法こそが、ほんとうのエイジングケアといえるし、有効でない治療は、エイジングケアとして役立たずだということ。

皮膚粗鬆症の治療法が模索される中で明らかになったのは、ヒアルロン酸の重要性です。


美肌へのアプローチ


これまでの美肌術はコラーゲンをターゲットにすることが多く、バカのひとつ覚えみたいに「コラーゲンを増やします!」なんてアピールしていたわけですが、実はそんなことはそれほど大事じゃなかった。

ひとつの証拠になるのは、皮膚粗鬆症の治療において、いわゆる「コラーゲン」を増やす施術は結果を出せていないこと。

もうひとつの証拠は、ヒアルロン酸を使った美肌術で、たとえば厚労省御用達(?)アラガン社のボライトでは、1回注入して数週間で結果が出ていること。

「コラーゲンを増やす」施術では、その期間では顕微鏡で見たらコラーゲンが増えてるのがわかるくらいがせいぜい、肉眼的にはまだ効果が見えてくるはずがない。コラーゲンなんて増やそうとしなくても、ヒアルロン酸を増やすだけで十分に美肌効果は出るということがわかってしまった。

皮膚の老化において、確かにコラーゲンも減少しているのだけれど、一番本質的で、皮膚の萎縮に直接的に関与しているのはヒアルロン酸。だからこそヒアルロン酸を補充することで皮膚の萎縮は改善される。

これまでの美容業界全体で推進してきた「コラーゲン伝説(コラーゲンを増やせば肌にハリが戻る)」は誤りとまではいえないけれど、ずいぶんと本質を遠回りしている感が否めません。

美容医療業界は皮膚の「再構築」という言葉が好きですが、皮膚のヒアルロン酸が代謝される過程でのヒアルロン酸受容体の活性化が「再構築」のカギを握っています。皮膚のヒアルロン酸代謝を活発に、そして円滑に回し続けることが、皮膚の「再構築」、老化対策としてもっとも重要なポイントなのです。


レチノイドが皮膚の老化治療に有効な理由として、コラーゲンの分解を抑制し、生成を促進するという面が強調されますが、それももしかしたら本質を見誤っているかもしれない。レチノイドは、皮膚のヒアルロン酸量を増やし、またヒアルロン酸受容体も増やすので、そちらがレチノイドの抗老化作用として本質的なのかも。

ここ数年で美容医療業界にはヒアルロン酸を主成分とした美肌術が次々に登場していて、私はそれを「ヒアルロン酸充填療法」と勝手に分類しているのですが、ヒアルロン酸充填療法とレチノイドの組み合わせは、現状で最強のエイジング対策と確信しています。


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.05.18更新

骨粗鬆症は知っていても皮膚粗鬆症は知らない人の方が多いに違いない。でもご安心(?)下さい。きっとあなたも身につまされるときがやってきます。

みんなの皮膚粗鬆症


皮膚粗鬆症とは、究極の皮膚の老化症状のこと。皮膚がペラペラにうすくなって脆弱になり、裂けたり、剥けやすくなります。ご高齢の方がケアされている施設にいくと、手足に包帯している方がたくさんいることに気づくことでしょう。


典型的な症状を紹介します。
①皮膚萎縮
皮膚がペラペラにうすく、透けて見えるようになること。日光に暴露されていた部分に生じます。

皮膚萎縮


②偽瘢痕
傷つけた覚えがなくても、自然に真皮に亀裂が生じて瘢痕化します。70歳以上の20~40%に見られ、女性に多いとされます。

偽瘢痕

③老人性紫斑
わずかな外傷でも、また外傷の覚えがなくても生じます。血管が破れてできることもありますが、血管から血液が漏れ出て生じるとも言われます。

老人性紫斑



こうした皮膚粗鬆症の根本原因は加齢。60歳前後から見られるようになり、70歳以上では多くの人で認められるようになります。ということは、人生100年時代にはきわめてありふれた、みんなに共通した肌トラブルになるはずです。

「皮膚粗鬆症」という言葉が生まれたのは2007年。まだ疾患名とは認められていませんが、
その存在が知られるようになり、予防することが一般的になれば、それはきっとご高齢の方のQOLの改善につながります。自分の肌がどうなるかということだから、誰にとっても人ごとではありません。

50歳をすぎたら、顔のスキンケアにかける熱意をぜひボディ(特に前腕、下腿)にも分けて下さい。乾燥とそれによるかゆみを防ぐ保湿ケアにとどめず、一歩すすめて皮膚粗鬆症ケアにしましょう。いつまでもピチピチの肌でいられるように。


 

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2022.05.12更新

「誰が何を言っても許される・・・サイエンスの匂いさえしない・・」

皮膚科学会の重鎮が、学術誌で美容医療の現状をこう表現されています。

自分が足を踏み入れた頃に比べると、ずいぶんましになったと思うのですが、それでもまだ「サイエンスの匂いさえしない」施術が残っています。

例えば「脂肪代謝を高めて脂肪を減らす」注射。典型的には、メソセラピーと称される施術法で見られます。


メソセラピー

メソセラピーはヨーロッパで行われている代替医療のひとつ。たとえば膝の痛みに苦しむ人に対し、膝関節の周囲の皮膚に鎮痛剤をまんべんなく少量ずつ皮内注射します。

痩身を目的とするときも、脂肪の代謝を亢進させるという多くの植物由来の成分を、痩せたい部位に少量ずつ多数カ所注入するのです。

最大の疑問点は、たとえ一時的には脂肪代謝を亢進させることができたとしても、持続的な痩身効果が得られるのか(得られるとはとても思えない)?ということ。

残念ながら、メソセラピーはあまりに施術者ごとに施術方法が違いすぎて(いい加減すぎて)、痩身効果があるのか検証できません。

かつて、メソセラピーとは違う流れで脂肪代謝を高めて脂肪を減らすとする製剤(成分的には喘息の吸入治療薬)で、有効性・安全性を評価する治験がスタートしたことはありました。しかしいつの間にかその後の消息を聞かなくなりました。

現状では、脂肪の代謝を高めることで痩身効果が得られるというエビデンスはありません。「脂肪代謝を高めて脂肪を減らす」注射は消え去るべき。

「誰が何を言っても許される・・・サイエンスの匂いさえしない・・」

こうした評価が、一日も早く昔話になりますように。

 

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2022.05.04更新

脂肪溶解注射の深層

2015年の米国FDAによる二重顎治療としてのデオキシコール酸の承認は画期的な出来事でした。

実はそれまで脂肪溶解注射には暗雲が立ちこめていたのです。

そもそも脂肪溶解注射が美容施術としてはじまったのは1980年代。

使われたのは、ドイツなどで高脂肪血症や肺塞栓(肺の動脈に脂肪が詰まる病気)の治療薬として承認されていたフォスファチジルコリン製剤でした。

しかし、この施術が広まるにつれ不適切な使用から健康被害も散見されるようになり、各国が規制に乗りだし、米国では医薬品を取り締まるFDAから警告が出され、ブラジルではフォスファチジルコリン製剤を使うことは禁止されてしまいました。

この状況を直接的に打破したのが冒頭に書いた2015年の米国FDAによる承認でしたが、その前に脂肪を溶かしているのはフォスファチジルコリンではなくデオキシコール酸であるという「主役」の交代劇がありました。

交代劇の第1幕は2006年。
フォスファチジルコリン製剤には、デオキシコール酸が配合されていました。デオキシコール酸は生体の消化管内にある天然の界面活性剤で、フォスファチジルコリンを水に溶かすための乳化剤として使われていました。

2006年の告発論文では、そのデオキシコール酸が単独でフォスファチジルコリン製剤と同程度の脂肪溶解作用を持つことから、脂肪を溶かしていたのはデオキシコール酸であって、フォスファチジルコリンではないと結論づけました。

交代劇の第2幕は2010年。
ついに技術的困難を克服して完成させたフォスファチジルコリン単独製剤を使って、フォスファチジルコリンには脂肪を溶かす作用がないことが報告されました。

単なる添加物と思われていたデオキシコール酸が実は脂肪溶解注射の主成分だと明らかにされたことは、美容医療業界にとってはショッキングな出来事でしたが、脂肪溶解注射に科学的なメスが入ったことは幸運でした。


注射だけで痩せられる、細くなれる!という、夢というかわがままを叶えてくれる脂肪溶解注射。最近はデオキシコール酸を主成分にしつつ、炎症作用を抑える成分を加えた製剤がトレンドになっています。

しかし、いまだにフォスファチジルコリンの「呪縛」がはびこっていて、「脂肪を溶かす最新のフォスファチジルコリン製剤」なるものも登場します。今、美容医療に携わり、とくに施術として脂肪溶解注射を行っている医師には、この施術を正常進化させる責務があると痛切に思います。

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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