最近、美容クリニックで細胞外マトリックス治療という言葉を耳にする方もいるかもしれません。これは、お肌のハリや弾力を支える細胞外マトリックス(ECM)という土台を、注射によって再生・活性化させる新しい美容医療のアプローチです。
この治療でよく使われるのが、イタリアのメーカーが開発したSUNEKOS(スネコス)、PROFHILO(プロファイロ)、JALUPRO(ジャルプロ)、HYDRO(ハイドロ)などの製剤です。これらの製剤は、ヒアルロン酸をベースに、アミノ酸などを配合することで、肌が本来持つ再生能力を引き出すことを目指しています。日本では細胞外マトリックス治療と呼称されています。
でも、どうしてイタリアでこのような治療が生まれたのでしょうか?その背景には、イタリアの美容医療における先進的な取り組みと、ヒアルロン酸の奥深い科学があったのです!
イタリアは肌再生治療のパイオニアだった!
実はイタリアは、注射による肌の若返り治療の先駆けです。1990年代末から2000年代初頭にかけて、純粋なヒアルロン酸を少しずつ肌に注入するバイオリバイタリゼーションという技術が、イタリアの科学者によって発見され、実用化されました。これは、肌の水分を補給し、みずみずしさを取り戻すための治療法として広まりました。
コラーゲンを増やすという新しい発想とアミノ酸の重要性
しかし、イタリアの美容医療の専門家たちは、単に水分を補給するだけでなく、肌のハリや弾力の源であるコラーゲンやエラスチンを根本から増やせないかと考えました。
そこで注目されたのが、アミノ酸の力です。アミノ酸は、コラーゲンやエラスチンを作るための材料となる重要な成分です。特に、Conti医学博士は、創傷治癒の研究からヒントを得て、「必要なアミノ酸を肌に補給すれば、弱った細胞(線維芽細胞)が再び元気を取り戻し、コラーゲンを再生できるのではないか」という画期的なアイデアを提唱しました。
そしてついに、2004年、世界で初めてアミノ酸とヒアルロン酸を組み合わせた注射によるコラーゲンブースター「Jalupro(ジャルプロ)」がイタリアで誕生したのです!。ジャルプロは非架橋ヒアルロン酸に加え、グリシン、プロリン、リシン、ロイシンなどコラーゲン産生に必要な特定のアミノ酸が配合されています。Conti博士はこの製剤によって「体内のアミノ酸を補充しコラーゲン産生を促進する」という新しい治療カテゴリーを切り開きました。
もう一つの重要な発見!ヒアルロン酸の分子量による作用の違い
さらに、イタリアの研究者たちは、ヒアルロン酸そのものが持つ力、特に分子量の違いによって肌への作用が異なるという重要な点に気づきました。
ヒアルロン酸(HA)は、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンの繰り返し構造を持つ多糖類で、生体内には数kDa(キロダルトン)から数百万Da(ダルトン)まで、さまざまな分子量のものが存在します。この分子量の違いが、ヒアルロン酸の持つ生物学的な機能に多様性をもたらすのです。
例えば、
• 高分子量のヒアルロン酸(HMWHA):肌の表面で水分を保持する力が強く、肌に潤いを与え、バリア機能をサポートする役割があります。また、ROSスカベンジャーとして作用し、線維芽細胞とECM成分を保護する可能性も示唆されています。
• 低分子量のヒアルロン酸(LMWHA):肌の奥深くまで浸透しやすく、線維芽細胞を刺激してコラーゲンやエラスチンの産生を促す効果が期待されています。SUNEKOSパフォルマなどに含まれています。
このように、アミノ酸によるコラーゲン産生のサポートというアイデアに加え、ヒアルロン酸の分子量を使い分けることで、より効率的に肌の再生を促せるのではないか、という考え方が生まれたのです。
個性を発揮するイタリア発の製剤たち
その後、ヒアルロン酸の分子構造やアミノ酸の配合などを改良しながら、さまざまなメーカーが独自の技術を開発し、次々と新しい細胞外マトリックス治療の製剤が登場しました。
⚪️Profhilo(プロファイロ):2015年登場。ヒアルロン酸の構造にこだわり、高分子と低分子のヒアルロン酸を特殊な技術(NAHYCO技術)で配合することで、肌の引き締め効果を高めた製剤です。化学架橋剤を使用せずに安定化された超高濃度の純粋なヒアルロン酸を特徴としています。
⚪️Sunekos(スネコス):2017年登場。6種類の必須アミノ酸とヒアルロン酸を独自の特許処方で配合し、コラーゲンとエラスチンの産生を包括的に促進することを目指した製剤です。低分子量と中分子量のヒアルロン酸があります。
⚪️Hydro(ハイドロ):2018年頃登場。分子量の異なる3種類のヒアルロン酸を組み合わせたハイブリッド製剤で(PromoItalia社)、保水力と組織再生を目的として開発されました。ヒドロキシアパタイトカルシウムやアミノ酸を含む製剤もあります。
これらのイタリア発の製剤は、それぞれ異なる特徴を持ちながらも、「塗る・貼る」スキンケアでは届かない肌の奥深くへ有効成分を届け、コラーゲン生成の土台を強化することで、肌質やハリ・弾力を改善するという共通の目的を持っています。
イタリアの美容医療現場での評価
イタリアの美容医療医師は、これらのECM治療製剤を極めて高く評価しています。その理由として、
◎ 自然な形で肌を若返らせることができる
◎安全性が高い
◎ 患者さんの悩みに合わせて製剤を選べる
といった点が挙げられています。スネコスとプロファイロを比較すると、「スネコスはコラーゲン・エラスチン産生によるECM再構築に優れ、プロファイロは高い保水力による皮膚の引き締めに優れる」といった認識もあるようです。
このように、イタリアで生まれた細胞外マトリックス治療は、肌そのものの健康と美しさを再生する治療として、今やエイジングケアの新たなスタンダードとなっています。
日本で「細胞外マトリックス治療」として注目されているのは、まさにこのイタリアで培われてきた美容医療の流れなのです。
ご自身の肌悩みに合わせて、これらの治療法を検討してみてはいかがでしょうか。気になることがあれば、いつでも当院にご相談ください。
当院で取り扱う細胞外マトリックス治療