2025.11.29更新

【はじめに】冬の不調、実は「暖房病」かも?

暖房の効いたオフィスにいると、頭がぼーっとしたり、肌が粉を吹いたりしていませんか?

その症状、医学的な診断名ではありませんが、通称「暖房病」と呼ばれるものかもしれません。暖房病とは、暖房による「乾燥」と「頭寒足熱の逆転(のぼせ)」によって生じる不調の総称です(文献1)。

この記事では、多くの方が悩む「暖房病」の正体と、砂漠レベル(湿度30%以下)の過酷な環境から肌を守る「医学的な解決策」を、美容皮膚科医の視点から解説します。


【基礎知識】「暖房病」とは?肌と体に起きるSOS

暖房病は正式な疾患名ではありませんが、冬季に室内暖房の使用によって生じるさまざまな体調不良の総称として広く知られています。

暖房病の主な症状
⚫️皮膚の乾燥・かゆみ(最も多い)
⚫️鼻・喉の乾燥
⚫️頭痛・めまい・吐き気
⚫️倦怠感・集中力の低下

皮膚症状は、呼吸器症状と並んで最も多く見られる症状です。

暖房病

医学的視点
冬季には乾燥性皮膚炎(皮脂欠乏性湿疹)の患者が増加し、皮膚科外来で多く見られる疾患の一つとなります。特に高齢者では70%以上に皮膚乾燥が認められており(文献2)、加齢に伴い皮膚科を受診する患者数も増加傾向にあります。

呼吸器症状と並んで、乾燥性皮膚炎や「肌枯れ」リスクが急増する季節といえます。


なぜ暖房で肌がボロボロに?恐怖のメカニズム

オフィスの現実は砂漠以上
冬の空気はもともと含有できる水分量が少なく乾燥しがちですが、暖房によって空気を温めると相対湿度はさらに低下します。暖房使用時の室内湿度は20〜30%まで低下することも珍しくありません。これはサハラ砂漠並みの乾燥度です。

肌内部で起きていること
乾燥肌のケアは単なる美容の問題ではなく、炎症性皮膚疾患の予防という意味において重要な医学的意義を持ちます(文献2)。

適切な保湿ケアとスキンケアにより、皮膚バリア機能を維持することが、炎症の予防に直結します。

乾燥肌を放置すると、「乾燥→微小亀裂→炎症→かゆみ→掻破→さらなるバリア破綻」という「かゆみ‐掻破(そうは)サイクル」の悪循環に突入し、肌のダメージが進行してしまいます。

特にアトピー性皮膚炎や敏感肌の方、50代以降の女性(皮脂量低下)は、暖房環境下での肌ダメージを受けやすい傾向があります。


あなたは大丈夫?「暖房病」肌リスクチェック

以下の項目に当てはまるものはありませんか?

✅夕方になるとファンデーションが粉を吹く
✅室内に入ると顔がほてる(赤ら顔予備軍)
✅いつもの化粧水がしみる(敏感肌化のサイン)
✅唇が常に乾いている
✅水分をあまり摂らない(隠れ脱水のリスク)

複数当てはまる方は、暖房病による「肌枯れ」リスクが高い状態かもしれません。


【実践編】自分でできる「暖房病」の治し方・対策

環境対策

理想の湿度は40〜60%です(文献3)。この範囲は単なる快適性の問題ではなく、感染症予防や皮膚バリア機能の維持に重要な医学的意義を持ちます。

◉加湿器の活用:自動湿度制御機能付きがおすすめ。週1〜2回の清掃で雑菌繁殖を防止しましょう。
◉加湿器がない場合の裏技:濡れタオルをデスク近くに干す、デスクに水の入ったコップを置く、観葉植物を配置するなどの方法も効果的です。
◉換気も忘れずに:30分に1回程度、2方向の窓を数分全開にすることで、CO₂濃度を下げて倦怠感を軽減できます(文献4)。室内のCO₂濃度が1000ppmを超えると眠気や注意力低下が起こりやすくなります(文献5)。

スキンケア対策(保湿)
成分選び:「セラミド」、「ヘパリン類似物質」、「ナイアシンアミド」など、バリア機能を修復する成分を含む保湿剤を選びましょう。
回数:1日2回、全身に保湿剤を塗るのが保湿ケアの基本です。
タイミング:入浴後は皮膚からの水分蒸散が急増するため、素早い保湿が重要です。
日中のケア:オフィスでも乾燥を感じたら、こまめに保湿剤を使用しましょう。

インナーケア
冬は「喉が渇きにくい」のに「水分は失われやすい」ため、医学的にも隠れ脱水が増える季節です。特に暖房の効いた室内は湿度が20〜30%まで下がることもあり、皮膚や呼吸からの水分蒸散が進みます。

喉の渇きは脱水が始まった後に現れるため、"口渇前のこまめな飲水"は医学的にも推奨されます。ただし1日の必要量は個人差があり、目安は1.2〜1.5L前後が一般的です。


暖房病インフォグラフィック


【まとめ】「暖房病」から肌を守るために

暖房病はただの乾燥ではありません。肌のバリア破壊です。
「たかが乾燥」と放置せず、以下のポイントを意識しましょう。

⭐️室内湿度40〜60%を維持する
⭐️バリア修復成分(セラミド、ヘパリン類似物質、ナイアシンアミドなど)を含む保湿剤を使う
⭐️こまめな水分補給で「隠れ脱水」を防ぐ
⭐️肌とは直接関係ありませんが、換気してCO₂濃度を下げ、倦怠感を予防することも忘れずに
どうしても辛い症状が続く場合は、早めに医療機関でご相談ください。適切なケアで、冬の肌を守り抜きましょう。


【参考文献】
1  広報いけだ 2024年12月号
https://mykoho.jp/koho/272043/9031882/page/3

2 皮脂欠乏症診療の手引き (2021)
皮脂欠乏症診療の手引き作成委員会
日本皮膚科学会誌
2021;131(10):2255-2270

3 Indirect health effects of relative humidity in indoor environments
A V Arundel, et al.
Environ Health Perspect
1986 Mar:65:351-61

4 換気の悪い密閉空間を改善するための換気の方法
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf

5 建築物環境衛生管理基準の検討について
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000771215.pdf

 

おすすめする保湿剤


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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月29日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.23更新

はじめに

1970年代から80年代にかけて、日本中を席巻した「小麦色の肌」ブームをご存じでしょうか。あるいは、懐かしく思い出される方もいらっしゃるかもしれません。こんがりと焼けた肌は、健康的でアクティブなライフスタイルの象徴として、多くの若者の憧れでした。

しかし、このブームの終焉は、単なる流行の移り変わりではありませんでした。それは、私たち日本人が科学的な知見に基づき、「太陽(紫外線)との付き合い方」を変化させてきた歴史の表れでもあったのです。


欧米文化への憧れと「小麦色の肌」の時代

そもそも、なぜあの時代にこれほどまで日焼けが礼賛されたのでしょうか。

1970年代から80年代にかけて、日本で「小麦色の肌」が流行した理由の一つは、欧米の文化の影響でした。海外旅行が一般的になり、アメリカやヨーロッパの健康的でアクティブなライフスタイルが注目され、日焼けした肌がその象徴として受け止められました。

特にファッション誌や広告では、日焼けしたモデルが登場し、サーフィンやテニスといったアウトドアスポーツも人気を博しました。これにより、日焼けは「健康的」「活発的」といったポジティブなイメージを持たれるようになったのです。

かつての「小麦色の肌」ブーム 


「日光浴」から「外気浴」へ:母子手帳が語る変遷

その後、私たちの日光に対する認識がどのように変化したのか、その歴史を端的に物語っているのが「母子手帳(母子健康手帳)」の記述です。

かつて、母子手帳には「日光浴」を推奨する項目がありました。「赤ちゃんは日光に当てて丈夫に育てよう」というのが、当時の常識だったのです。しかし、オゾン層の破壊や紫外線による皮膚がん、そして美容医療の分野でも重視される「光老化(シミ・シワ)」のリスクが科学的に明らかになるにつれ、この常識は覆されます。

そして1998年(平成10年)、母子手帳からついに「日光浴」という言葉が消え、代わりに「外気浴」という言葉が使われるようになりました(文献1)。「直射日光に当たる」ことではなく、「外の空気に触れる」ことへと推奨が変わったことは、日本人が「日焼け=健康」という認識を改め、紫外線防御へと大きく舵を切った好例と言えるでしょう。


2025年、再び見直される「適度な日光」の重要性

それから四半世紀以上が経ち、「徹底した美白・紫外線対策」が定着した現在、再びその揺り戻しとも言える動きが出てきています。過度な紫外線対策による「ビタミンD不足」が、新たな健康リスクとして懸念され始めたのです。

2025年3月、日本小児科学会誌において「乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言」が発表されました(文献2)。この提言の中では、現代の子供たちのビタミンD欠乏が深刻化している現状を踏まえ、食事やサプリメントでの補給に加え、適度な紫外線を浴びることの重要性があらためて強調されています。

かつての「無防備に焼く」時代から、「徹底的に避ける」時代を経て、現在は「害(光老化)を防ぎつつ、恩恵(ビタミンD)を得る」という、より賢くバランスの取れた付き合い方が求められる時代に入ったのです。


サプリメントだけでは代替できない「太陽の恩恵」

これまで美容医療の現場でも「紫外線は徹底的に避け、ビタミンDはサプリメントで補う」という指導が主流でした。しかし、最新の研究からは疑問が投げかけられています。

2025年の専門家のレビュー(文献3)によれば、日光を浴びることで皮膚で生成されるビタミンDやその関連物質の健康効果は、サプリメントでは完全には再現できないことが示唆されています。

さらに太陽光はビタミンD合成以外にも、以下のような複合的な恩恵をもたらすことがわかってきています。

皮膚からの一酸化窒素(NO)放出による血圧低下作用
免疫系の調整
◉メンタルヘルスへの好影響

実際、紫外線対策の先進国であるオーストラリアでは、単なる「日光回避」から方針を転換しています。UVインデックス(紫外線指数)に基づき、紫外線が強い時は防御しつつ、弱い時は適度に浴びることを推奨する、リスクとベネフィットのバランスを重視したガイドラインが定着し始めています。


まとめ:美容医療の視点から考える「攻めと守り」のバランス

⭐️かつての「小麦色ブーム」から「徹底美白」へ、そして今は「賢い共存」へと、太陽との距離感は進化しています。

⭐️美肌を守るためには紫外線からの「完全防御」という古い考え方を変えることが必要です。そもそも健康な身体こそが「美しい肌」の前提であるということは忘れてはいけません。

⭐️紫外線対策の先進国であるオーストラリアと日本とでは、紫外線の強さや環境も異なるため、日本の気候や日本人の肌質に合わせた、日本独自の「太陽との付き合い方」のガイドラインが必要です。

⭐️ただ避けるだけではなく、光老化のリスクをコントロールしながら、太陽の恵みも賢く取り入れる。それが、これからの時代の美容医療が提案すべき「最適解」なのかもしれません。


 

 

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 *2025年10月1日調べ

【参考文献】

1)国民のビタミンD不足を補うための日光照射の勧め(2017年4月10日)
国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20170410/20170410.html

2)日本小児医療保健協議会栄養委員会 "乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言"
日本小児科学会雑誌
2025;129(3):494-496

3)Beneficial health effects of ultraviolet radiation: expert review and conference report
Uwe Riedmann, et al.
Photochem Photobiol Sci
2025 Jun;24(6):867-893

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月23日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.13更新

1:はじめに

日本国内での美白スキンケア市場は 2,000〜3,000億円規模と言われますが、さまざまな製品であふれかえっていて、何を選んだらいいか皆様もお悩みではないでしょうか。

そこでエビデンスという視点から見ることで、皆さんの選択をサポートできればという思いで「美白成分ランキング2025」というブログ記事を書きました。

それはかなりの時間と手間暇をかけた労作でしたが、その予備調査の中で最終的にはランキングから漏れたものの、将来有望と思われる成分もありましたので、今回はそれを紹介します。
*ただし、当院では取り扱っていません。宣伝広告の意図はありません。


新しい美白成分メラジル


2:注目成分の紹介〜Melasyl(メラジル)

今回ご紹介するのは、ロレアル社が18年もの研究を経て開発した独自の美白成分Melasyl(メラジル)です。

これまでの美白成分と何が違う?

従来の美白成分の多くは、メラニンを作る細胞(メラノサイト)にある「チロシナーゼ」という酵素の働きを阻害するものでした。

それに対してMelasyl(メラジル)は、メラニン色素の"材料"となる「メラニン前駆体」と結合して、メラニン色素になるのを妨害するという、新しいアプローチをとっています。これにより、メラニン色素を作る細胞にダメージを与えることなく、過剰な色素沈着だけを選択的に抑えることができます。

日本では「2-メルカプトニコチノイルグリシン」という化粧品表示名称で、整肌成分に分類されます。海外では、ラ ロッシュ ポゼの「メラ B3 セラム」などに配合されています。


3:Melasyl(メラジル)に注目する理由

この成分が注目される理由は、大きく分けて「有効性」と「安全性」の両立が期待できる点にあります。

a. 高い有効性

肝斑(かんぱん)治療において、ハイドロキノン4%との直接比較試験(3ヶ月)で同等(非劣性)の改善効果が示されました。さらに、肌への刺激反応はMelasyl(メラジル)群(6.0%)の方がハイドロキノン群(21.4%)より有意に少なかったと報告されています(文献1)。

近年注目されるブルーライト(HEVライト)による色素沈着モデルでも、ビタミンCでは効果が見られなかったのに対し、Melasyl(メラジル)は有意な改善を示しました(文献2)。

b. 非常に高い安全性・忍容性

Melasyl(メラジル)は、メラニンを作る機能を完全に止めてしまうわけではないため、肌への負担が少ない設計と考えられます。

臨床試験を通じて、強い刺激や有害事象の報告が目立たないのが大きな特徴です。特に、アジア人やラテン系、アフリカ系の肌(フィッツパトリックIV〜VI)を含む多様なスキントーンに対しても、良好な安全性と有効性が示されています(文献1〜3)

これにより、従来の成分で刺激を感じやすかった方や、長期間の継続使用(*)を目指す方にとって、現実的な選択肢となる可能性があります。
注意(*) ハイドロキノンには使用期間の制限があります。


4:Melasyl(メラジル)の課題・留意点

美白成分として高いポテンシャルを感じさせるMelasyl(メラジル)ですが、現時点での課題もあります。

a. 入手しにくさと価格
ロレアル社の独自特許成分であるため、2025年現在、配合されている製品はまだ限定的です。そのため、製品はプレミアム価格になりがちです。

b. 香りの問題は「製品次第」
Melasy (メラジル)が配合されたラ・ロッシュ・ポゼのメラ B3 セラムには特徴的な香料が配合されていて、香りに敏感な使用者にとっては強く感じられる可能性があります。ただし、これはMelasy (メラジル)の問題ではなく、製品の処方設計によるものです。

c. 長期的なデータの不足
これまでの試験成績は良好ですが、登場してからまだ日が浅いため、10年、20年といった超長期的な使用データはこれから蓄積されていく段階です。


5:まとめ

✅Melasyl(メラジル)は、従来とは異なるメカニズムで美白効果を発揮する新しい成分として、大きな可能性を秘めています。特に、ハイドロキノンと同等の効果を持ちながら、刺激が少なく、多様な肌質の方にも使用できる点は大きな魅力と言えるでしょう。

✅現時点では入手可能な製品が限られているものの、今後の製品展開次第では、敏感肌の方や長期的な美白ケアを望む方にとって、有力な選択肢となることが期待されます。

✅美白成分選びでお悩みの際は、エビデンスに基づいた情報を参考にしながら、ご自身の肌質に合った成分を選んでいただければと思います。当院でも、皆様の美白ケアをサポートするため、最新の情報収集と適切な治療提案を続けてまいります。



クリニックで取り扱う美白関連製剤

 

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【参考文献】

1) Efficacy and tolerability of a new facial 2-mercaptonicotinoyl glycine-containing depigmenting serum versus hydroquinone 4% over 3-month treatment of facial melasma
Thierry Passeron, et al.
Dermatol Ther
2025;15:2379

2) Topical prevention from high energy visible light-induced pigmentation by 2-mercaptonicotinoyl glycine, but not by ascorbic acid antioxidant: 2 randomized controlled trials
Virginie Piffaut, et al.
Front Pharmacol
202516:1651068

3) Efficacy of a 2-MNG-containing depigmenting serum in the treatment of post-Inflammatory hyperpigmentation
Ann Laure Demessant-Flavigny, et al.
J Cosmet Dermatol
2025;24(2):e16735


 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.09更新

0 はじめに

「次世代レチノール」として注目を集めているバクチオール。今回は、バクチオールのマーケティング戦略から実際の効果まで、医学的な視点で客観的に解説します。レチノールが肌に合わなかった方、エイジングケアを始めたいけれど刺激が心配な方に、ぜひ知っていただきたい内容です。

バクチオールはレチノールの代わりになるか?

1 優秀すぎるマーケティング戦略

「バクチオール」というコスメ成分には、「次世代レチノール」、「第二のレチノール」、「レチノールに代わる・・」などのキャッチフレーズがついています。

そのおかげで初めて「バクチオール」を目にした人にも、いかにも効果があるような期待感を与えることに成功しています。

たとえその人がレチノールを知らなくても、少なくとも「従来より進んだ新しい成分」というポジティブなイメージを植え付けることができるでしょう。

この場合、レチノイドの中でも「レチノール」を相手に選んだのがニクい。これがレチナールだと知名度が低いので、消費者の心に響かないし、トレチノインを選ぶとただではすみません。レチノイドはトレチノインを中心にエビデンスが積み重ねられてきているから、すぐに医学論争に発展します。

そこで、「レチノール」。これが感心するほどにちょうどよい。たいていの医師も、「まあ、コスメだから好きなように言わせておくか・・」とスルーしてくれます。

レチノールのイメージを消費者に刷り込ませることで、細かく説明するまでもなく、その効果を消費者に想像させることができます。

実に見事なマーケティング戦略です。

バクチオールの医学的裏付けとなる学術文献(文献1)はメーカーの研究員が書いています。

その題名は
Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects
で、タイトルでもレチノールに似た機能(retinol-like functional)を持つと強調しています。

本文に入ると冒頭からひたすらレチノイドの話が展開され、全体的にもレチノールとの類似性をこれでもかと強調しています。最初これを読み終えたとき、レチノールとの類似性を強制的に理解させられただけで、肝心のバクチオールについてはさっぱりわからないという、不思議な気分になりました。

この論文のタイトルにあるa retinol-like functional compoundから「次世代レチノール」、「第二のレチノール」、「レチノールに代わる・・」などのキャッチフレーズが生まれているのです。


2 本当にretinol-likeと言えるか!?

論文では、バクチオールとレチノールは皮膚に作用した時の遺伝子応答で重なる部分があるとして、両者の類似性を主張しています。

ただし、バクチオールとレチノールは構造的に類似性がないし、レチノールを含むレチノイドの特徴であるレチノイン酸受容体との結合は示されていないことから、薬理学的にはまったくの別物です。せいぜい作用機序的に「重なる部分がある」と言えるくらい。

なのでretinol-likeと言えるかといえば、医学的には言い過ぎであり、広告的にはよくできたコピーとなります。


3 実際の効果は?

構造的、薬理学的にはバクチオールとレチノールは別物ですが、以下に挙げた臨床効果における、a. アンチエイジング効果、b. ニキビへの効果は共通しています。


a. アンチエイジング効果
レチノールとの比較研究では、バクチオール0.5%クリーム(1日2回)とレチノール0.5%クリーム(1日1回)が12週間にわたって比較され、小ジワと色素沈着を同程度に減少させました(文献2)。

b. ニキビへの効果
軽度から中等度のニキビ患者を対象とした0.5%バクチオールクリームを12週間使用するパイロットスタディでは、炎症性病変の数が有意に減少し、炎症後色素沈着(PIH)も改善しました(文献3)。

c. 抗アンドロゲン作用
ジヒドロテストステロン(DHT)への変換に関わる酵素を阻害することで、皮脂分泌の増加と微小コメドの形成を抑制できる可能性が示唆されています(文献4)。ただし、人でのエビデンスは十分とは言えません。


4 副作用と安全性

バクチオールとレチノールの比較試験では、レチノール群に皮むけ・ヒリヒリ感が多く、バクチオール群では問題は少なかったと報告されています。バクチオール群で4週時に一時的に赤みが見られた人も8〜12週時には軽快していました(文献2)。

まれな有害事象として、アレルギー性接触皮膚炎が挙げられます。

なお、レチノールなどレチノイドは妊娠中には使用することができません。バクチオールはレチノールとの類似性を強調されていますが、実際には別物なので話は違いますが、妊娠・授乳中のデータは不足しています。製品の注意書きの指示に従って下さい。


5 どんな人におすすめ?

バクチオールは、レチノールの代替品というより、レチノールがどうしても肌に合わない方の「ひとつの選択肢」と位置付けるのが現実的です。

こんな方へ

  • 1.刺激反応のためどうしてもレチノールが使えない
  • 2.敏感肌で刺激を極力避けたい
  • 3.エイジングケアを始めたいが、まずは刺激の少ない製品から始めたい
    *ただし、「刺激の少ない」レチノールを求めてバクチオールに手を出すくらいなら、あくまでレチノールで、ただその使い方を工夫すべきです。



6 まとめ

⭐️バクチオールは「次世代レチノール」という魅力的なキャッチフレーズで注目を集めていますが、その実態はレチノールとは構造的・薬理学的に異なる別の成分です。

⭐️しかし、臨床研究ではアンチエイジング効果やニキビへの効果が確認されており、レチノールと比較して刺激が少ないという大きなメリットがあります。朝晩使用でき、他の成分との併用制限も少ないため、使い勝手の良さも魅力です。

⭐️バクチオールは「レチノールの代替品」ではなく、「レチノールがどうしても合わない方にとっての一つの選択肢」として理解するのが適切でしょう。


ご自身の肌状態に合わせて、適切な成分を選択することが、効果的なスキンケアの第一歩です。



クリニックで取り扱うレチノイド

 

【参考文献】

1 Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects
Chaudhuri RK,et al.
Int J Cosmet Sci.
2014;36(3):221-230

2 Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing
S Dhaliwal,et al.
Br J Dermatol
2019;180(2):289-296

3 Applications of bakuchiol in dermatology: Systematic review of the literature
Carolina Puyana,et al.
J Cosmet Dermatol
2022;21(12):6636-6643

4 The Use of Bakuchiol in Dermatology: A Review of InVitro and InVivo Evidence
J Greenzaid,et al.
J Drugs Dermatol
2022;21(6):624-629


 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月9日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.10.09更新

はじめに

お母様やお父様の肌を見て、「少しぶつけただけで皮膚が裂けてしまった」、「紫色のあざができやすくなった」と心配になったことはありませんか?

これらは「皮膚粗鬆症(ひふそしょうしょう)」と呼ばれる、高齢者特有の皮膚脆弱化(皮膚脆弱)現象かもしれません。骨粗鬆症が骨をもろくするように、皮膚粗鬆症は皮膚を構造的に弱くし、わずかな外力でも深刻な損傷を起こすことがあります。

しかし、皮膚脆弱の対策や皮膚萎縮のスキンケアを正しく行うことで、このようなもろくなった皮膚を守り、高齢者の生活の質(QOL)を改善できます。

本記事では、医学的根拠に基づいた皮膚保護とスキンケアの実践法を、家庭でも実践できるようわかりやすく解説します。

高齢者の肌の守り方


なぜ高齢者の肌は“もろく”なるのか

加齢に伴い、真皮のコラーゲンや弾性線維が減少し、軽い摩擦やずれでも皮膚裂傷(スキンテア)や紫斑が生じやすくなります。

また、長期のステロイド外用や紫外線曝露も皮膚萎縮や皮膚脆弱化を促進します。こうした慢性的な皮膚の構造的脆弱性は、“dermatoporosis(皮膚粗鬆症)”として提唱されています(文献1)。

日本でも「スキンフレイル」という概念が導入され、乾燥や弾力低下を中心とした皮膚の予備力低下を全身フレイルと関連づけ、早期の皮膚脆弱対策と皮膚保護の重要性が強調されています(文献2)。


家庭で守る「5つの柱」

1)皮膚を“乾かさない・こすらない”(毎日のスキンケア)

皮膚脆弱スキンケアの基本は、「乾かさない」「こすらない」ことです。

洗浄(入浴)

✅ぬるめ(38~39℃)・短時間で行いましょう。
✅高温浴(40℃以上)は高齢者の失神・溺死リスクが指摘されています(文献3)。
✅石けん成分を含まない低刺激性洗浄料を使い、泡で包むようにやさしく洗います。

高齢者の皮膚はアルカリ性に傾きやすく、固形石鹸などの使用はバリア機能の低下を招きます。弱酸性環境を保つことが皮膚保護につながります。

保湿

日本皮膚科学会の報告によると、高齢者の70%以上に乾燥がみられ、これが皮膚脆弱化の主因とされています(文献4)。

✅入浴後すぐに全身へ保湿剤を塗布し、保湿剤は1日2回を目安に継続しましょう。
毎日の保湿ケアによりスキンテア(皮膚が裂けたり、めくれたりすること)の発生率が約50%減少したという報告もあります(文献5)。

✅保湿剤選びのポイント

有効成分主な製品例作用機序最適な使用状況注意点
ヘパリン類似物質 ヒルドイド 水分を角層に結合・保持 全身の乾燥 出血傾向のある方は慎重に
尿素 ケラチナミン、ウレパール 角質軟化作用 手足、かかとなど角質の厚い部位 傷や炎症部位では刺激感あり
ワセリン プロペト、白色ワセリン 皮膚表面に膜形成 重度の乾燥、敏感部位の保護 べたつきが強い

*保湿剤はこの3種類だけではなくたくさんあり、どれを選ぶかよりも、「塗る量」、「塗る頻度」が重要です。


✅「ティッシュペーパー法」で適量を確認すると、過不足のない塗布量が分かります。

1️⃣保湿剤をぬる
手や足など、かさついているところに、保湿剤をぬります。

2️⃣ティッシュをあてる
 ぬった場所に、ティッシュペーパーを軽くのせます。そっとあててください。

3️⃣ティッシュの様子を見る
すぐに落ちる → ぬる量が少ない
べったりくっつく → ぬる量が多すぎる
少しだけついて残る → ちょうどよい


2)摩擦・ずれ・打撲を減らす(皮膚が裂けたり、めくれたりしないために)

✅皮膚脆弱対策では、皮膚に力を加えない工夫が重要です。
✅衣服は長袖・長ズボン・膝下靴下を基本に、前腕・下腿はチューブ包帯などで保護。家具の角や手すりには緩衝材を装着しましょう。
✅移乗の際は「引きずらずに持ち上げる」ことが鉄則。介助者は指輪・長い爪を避けることも皮膚保護につながります。

これらはISTAP(国際スキンテア諮問委員会)の最新ガイドライン(2018)に基づいています(文献6)。


3)接着剤(テープ・ドレッシング)による皮膚損傷を回避

高齢者の皮膚萎縮対策として、医療用テープ選びは極めて重要です。

✅低外傷性シリコーン系テープを優先(文献7)
✅必要最小限の範囲に貼付し、剥がす際は「低い角度でゆっくり(low & slow)」を徹底
✅リムーバー・バリア膜の併用も有効です。皮膚表面を保護し、剥離時の外傷を軽減します。


4)生活習慣:栄養・水分・日光対策・“低温やけど”防止

✅皮膚の構造を守るには、体の内側からの皮膚脆弱対策も欠かせません。
✅たんぱく質摂取:高齢者は1.0–1.2g/kg/日(文献8)を目安に。
✅水分補給:脱水は皮膚の乾燥と脆弱化を進めます。
✅日光対策:SPF30以上・PA+++以上を使用し、外出中は2時間ごとに再塗布。帽子・衣服・日陰も活用。
✅低温やけど防止:湯たんぽ・カイロの長時間接触を避けましょう(文献9)。


5)服薬・併存症に配慮

✅ステロイド外用・全身投与は皮膚萎縮を助長します。使用部位や期間を最小限に(文献10)。
✅抗凝固薬内服者では紫斑・皮下出血のリスクが上がるため、環境整備による打撲防止が重要です。


まとめ

高齢者の皮膚は、加齢や紫外線、薬剤、慢性的な乾燥などによって構造的に弱くなり、皮膚脆弱・皮膚萎縮・皮膚粗鬆症といった状態を招きます。

しかし、日々の皮膚保護と生活習慣の見直しで、皮膚を守り、再びしなやかさを取り戻すことが可能です。

皮膚脆弱対策のポイントは以下の5つです。

1️⃣皮膚を乾かさず、こすらない
─ 弱酸性洗浄料と1日2回の保湿で皮膚バリアを守る。

2️⃣摩擦やずれを防ぐ
─ 服装・環境整備・介助方法を工夫してスキンテアを予防。

3️⃣テープ・ドレッシングによる損傷を防ぐ
─ シリコーン系製品・リムーバーを上手に活用。

4️⃣栄養・水分・日光・温熱の管理
─ 内側からの皮膚強化と、外的刺激からの保護を両立。

5️⃣薬剤・疾患への配慮
─ ステロイドや抗凝固薬による皮膚萎縮リスクを意識し、医師と連携。

高齢者の皮膚は、「老化だから仕方ない」と思われがちですが、適切なスキンケアと保護で再び強く、美しく保つことができます。ご家庭でのケアが、転倒やスキンテアなどの重大な事故を防ぎ、生活の質を支える第一歩です。


 

関連記事・サイトもお楽しみ下さい

 

【参考文献】

1) Dermatoporosis: a chronic cutaneous insufficiency/fragility syndrome. Clinicopathological features, mechanisms, prevention and potential treatments
Kaya G, Saurat JH
Dermatology
2007;215(4):284-94

2) 地域高齢者に対するスキンフレイルスクリーニングツールの開発と妥当性の評価
飯坂真司, et al.
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
2018;22(3): 287-296.

3)Effects of Hot Bath Immersion on Autonomic Activity and Hemodynamics Comparison of the Elderly Patient and the Healthy Young
Y Nagasawa, et al.
Jpn Circ J
2001 Jul;65(7):587-592

4) 高齢者における皮脂欠乏性湿疹診療の手引き 2021
日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/131_2255.pdf

5) The effectiveness of a twice-daily skin-moisturising regimen for reducing the incidence of skin tears
Keryln Carville, et al.
Int Wound J
2014 Aug;11(4):446-53

6) Best Practice Recommendations for Prevention and Management of Skin Tears in Aged Skin: An Overview
Kimberly LeBlanc, et al.
J Wound Ostomy Continence Nurs
2018 Nov/Dec;45(6):540-542

7) Overlooked and underestimated: medical adhesive-related skin injuries
Sian Fumarola, et al.
J Wound Care
2020 Mar 1;29(Sup3c):S1-S24

8) ESPEN practical guideline: Clinical nutrition and hydration in geriatrics
Dorothee Volkert, et al.
Clin Nutr
2022 Apr;41(4):958-989

9) 「低温やけど」の事故防止について(注意喚起)
独立行政法人製品評価技術基盤機構
https://www.nite.go.jp/data/000005074.pdf

10) Glucocorticoid-Induced Skin Atrophy: The Old and the New
Elena Niculet, et al.
Clin Cosmet Investig Dermatol
2020 Dec 30:13:1041-1050

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年10月10日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.10.02更新

 

CBD


はじめに

美容業界でも大麻の成分のうち向精神作用のないカンナビジオール(CBD)を含むコスメが次々に登場しています。しかも、カンナビジオール(CBD)には

✅抗炎症作用
✅抗酸化作用
✅皮脂分泌抑制(抗ニキビ)作用
✅保湿作用
✅創傷治癒促進作用
✅アンチエイジング作用

が期待されている(文献1)というのですから、とてつもないスケールです。それがほんとうならカンナビジオール(CBD)コスメだけでスキンケアは全てまかなえそうです。


なぜCBDにこれほど期待が寄せられるのか

なぜこんなにもカンナビジオール(CBD)に期待が寄せられるかと言えば、カンナビジオール(CBD)が、内因性カンナビノイド受容体と結合できるから。

内因性カンナビノイド受容体は、おもに中枢神経系、免疫系で働きますが、皮膚でも健康な肌を支えている(文献2)ことから、CBDコスメにもきっと様々な美肌効果があるはずという甘い(?)期待が膨らんでしまうのです。


「内因性カンナビノイド受容体」とは何か

「内因性カンナビノイド受容体」が期待の根源にあるのですが、なぜ身体の中に大麻成分に対応する受容体があるのでしょうか?

別に人の身体は大麻のためにはじめから受容体を用意していたわけではありません。ただ身体の中に入った大麻の作用機序を調べる中で、大麻成分と結合する未知の受容体が発見され、「内因性カンナビノイド受容体」と命名されたのでした(文献3)。


受容体の作用とリガンドの関係

「内因性カンナビノイド受容体」が作動すると皮膚においては

✅抗炎症作用
✅抗酸化作用
✅皮脂分泌抑制(抗ニキビ)作用
✅保湿作用
✅創傷治癒促進作用
✅アンチエイジング作用

などの多彩な作用を発揮する可能性がある(文献1)のですが、リガンド(受容体に結合できる物質)はスイッチのようなもので、受容体をオンにすることもあればオフにすることもあるのです。


実際の臨床試験で確認された効果は?

なので外用薬としてのカンナビジオール(CBD)がどのような効果を持つかは、期待論だけを膨らませても無意味で、実際に臨床試験で確認するしかありません。

質の高い臨床試験(ランダム化比較試験など)が行われていることを条件にすると、効果が実証されたのは

◎乾燥性湿疹(文献2)
◎乾癬(文献4)

にとどまります。

これ以外では、ニキビに関してはランダム化二重盲検比較試験である第II相臨床試験が進行中とされ、途中経過で有望と報告されています(文献5)が、続報は途絶えています。

期待された慢性的な皮膚のかゆみについては、100名の患者を対象としたランダム化比較試験で、その効果が否定されてしまいました(文献6)。


まとめ

◉現状では、華々しい効果の期待は萎みつつあり、せいぜい保湿剤にしかならないと結論づけられます。

◉少なくともCBDコスメが声高に宣伝するような皮膚の恒常性の維持に関わっているかのような物言いは、故意か過失かはともかく完全に言い過ぎです。

◉CBDコスメは、「内因性カンナビノイド受容体」とそれが作動したときの「内因性カンナビノイドシステム」という身に余る命名を最大限に利用(悪用?)したに過ぎないというのが、現状での私の結論です。

 

 

ブログ人気記事ランキング

 *2025年10月1日調べ


【参考文献】

1) Therapeutic Potential of Cannabidiol (CBD) for Skin Health and Disorders
Sudhir M Baswan, et al.
Clin Cosmet Investig Dermatol
2020 Dec 8:13:927-942

2) Cannabinoid Signaling in the Skin: Therapeutic Potential of the "C(ut)annabinoid" System
Kinga Fanni Tóth, et al.
Molecules
2019 Mar 6;24(5):918

3) カンナビノイド受容体の内因性リガンドの発見
木村 敏行
ファルマシア
1993;29(11):1293

4) Cannabinoids and Their Receptors in Skin Diseases
Eun Hee Yoo, Ji Hyun Lee
Int J Mol Sci
2023 Nov 20;24(22):16523

5) Cannabinoids: Therapeutic Use in Clinical Practice
Cristina Pagano et al.
Int J Mol Sci
2022 Mar 19;23(6):3344

6) Cannabinoids for the treatment of chronic pruritus: A review
Christina Avila, et al.
J Am Acad Dermatol
2020 May;82(5):1205-1212

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年10月2日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.09.08更新

結局、美白剤はどれがいいのか?

多くの人が頭を悩ませるこの問いに、生成AIを活用して、純粋に医学的にエビデンスレベルの高い順にランキングを作成しました。

美白成分ランキング



利用したのは、ChatGPT5Proです。網羅的にリサーチして、条件に基づいてランキングを作成することに、もはや人間の出る幕はありません。

このランキングをぜひ美白美容液をお選びのさいに参考にして下さい。なお、生成AIが作成したのはランキングとプロンプトで、それ以外の記事の全ては人間が書いています。

使用したプロンプトは末尾に掲載しています。

複雑なプロンプトになりましたが、要するに美白成分を
1)医学的なエビデンスで評価
2)対象疾患を肝斑、炎症後色素沈着に限定
3)単剤で評価(肝斑でゴールドスタンダードである3剤併用療法を判断から除外する)
4)外用剤に限定(肝斑で内服でも使用されるトラネキサム酸は外用のみで評価する)
することでランキングを作成しました。

あらかじめ、今回のランキングの限界を述べておくと、美白成分は一つの企業が開発し、独占的に市場に展開しているものがいくつもあります(チアミドール、ルシノール、システアミン)が、そうしたケースでは臨床試験も独占している企業から資金ないし資材の提供を受けており、その試験の結果が歪んでいる可能性を否定できません。

今回のランキングではそうしたバイアスが除去できていません。

それではランキングの発表です。




第10位 メチマゾール(製剤名:メルカゾール)


よほどの美容通の方でもメチマゾール(製剤名:メルカゾール)の名前を聞くのは初めてではないでしょうか?メチマゾール(製剤名:メルカゾール)は本来甲状腺疾患で使われている薬です。


◉作用機序:
メチマゾール(製剤名:メルカゾール)は抗甲状腺薬で、チロシンから甲状腺ホルモンが合成されるときの酵素チロシンペルオキシダーゼ(TPO)を阻害しますが、さらにメラニン生成酵素であるチロシナーゼも阻害することが発見されました。



◉ランキングの根拠:
肝斑患者50人を対象とした4%ハイドロキノンとの比較試験(代表文献a)では、ハイドロキノンには劣りましたが、症状の改善が認められました。メチマゾール(製剤名:メルカゾール)は細胞を直接壊す毒性(細胞毒性)はなく、DNAに変異を起こす危険性(変異原性)も低いので、外用薬として長期使用しても比較的安全であり、肝斑治療の代替候補になり得ると結論付けられています。



◉補足コメント:

⚪️今回ランキングの10位に入ったのは、市場には出回っていないメチマゾール(製剤名:メルカゾール)でした。

⚪️現状、承認された美白成分ではないので、市販の製品には配合されていません。あくまで研究・試験的使用の範囲にとどまっています。

⚪️コスメないし医薬品として入手可能な美白成分に限定して、ランキングを作り直そうかとも思いましたが、今回はあくまでエビデンスを最優先することにしました。

⚪️メチマゾール(製剤名:メルカゾール)は何十年も前から甲状腺機能亢進症に使われる成分であり、外用薬として承認されて日の目を見る可能性はありません。

⚪️それよりも可能性が高く現実的なのは、「メチマゾール誘導体」で、すでにコウジ酸や抗酸化物質と結合させた誘導体の開発が進んでいます。

⚪️今すぐではないにせよ、こうした「メチマゾール誘導体」が新規美白成分として、近い将来ドラッグストアで見かけるようになるのではないかと期待しています。



◉代表文献:
a) The efficacy and safety of topical 5% methimazole vs 4% hydroquinone in the treatment of melasma: A randomized controlled trial
Mehdi Gheisari, et al.
J Cosmet Dermatol
2020 Jan;19(1):167-172




第9位 ナイアシンアミド


ナイアシンアミドはビタミンB3の一形態のことで、スキンケアの成分としては美白、シワ改善、皮膚バリア改善、抗炎症、皮脂抑制といった多面的な効果が期待できます。



◉作用機序:
ナイアシンアミドは、他の多くの美白剤とは違い、作用機序がチロシナーゼの阻害(色素の産生をブロックする)ではなく、色素細胞から周囲の角化細胞へのメラニン色素の転送を阻害することで作用します。



◉ランキングの根拠:
肝斑患者27人を対象とした4%ナイアシンアミドと4%ハイドロキノンとの比較試験(代表文献b)では、両群とも症状の改善が認められ、有意差はありませんでした。この試験では病理検査も行われ、ナイアシンアミドが肝斑に特徴的なマスト細胞の浸潤、日光弾性線維症を改善させたことが認められました。



◉補足コメント:
ナイアシンアミドは美白治療において、理想的な併用治療となります。
それは、他の美白剤がチロシナーゼを阻害してメラニンの生成量を減らし、ナイアシンアミドがそれでも作られてしまったメラニンの輸送を妨げることになるからです。


さらに、メラニン色素の茶色系だけでなく、ナイアシンアミドは赤ら顔の赤色系、黄ぐすみの黄色系にも効果を発揮します。


こんなに広範囲に「色」の問題をカバーできるのはナイアシンアミドだけではないでしょうか。



◉代表文献:
b) A double-blind, randomized clinical trial of niacinamide 4% versus hydroquinone 4% in the treatment of melasma
Josefina Navarrete-Solís, et al.
Dermatol Res Pract
2011:2011:379173

 


第8位 タザロテン


日本人には馴染みがありませんが、ニキビ治療薬のディフェリンと同じ合成レチノイドです。


ディフェリンやトレチノインより作用は強力ですが、その分刺激反応も強いというのが米国での評価です。



◉作用機序:
1. メラニン色素の角化細胞への転送の阻害
タザロテンは、メラニン色素が詰まったメラノソームが、肌の表面の細胞である角化細胞へ運ばれるのを妨げます。
2. 表皮ターンオーバー促進
これによりメラニンを含む角化細胞の排出が促進され、沈着した色素が早く除去されます。
3. 炎症反応の抑制
タザロテンは抗炎症作用を持ち、炎症に伴う色素沈着の悪化を防ぐ効果が示されています。



◉ランキングの根拠:
肌の色が濃い人種に属するニキビ患者74名を対象とした二重盲検ランダム化対照試験(代表文献c)でタザロテン0.1%クリームの効果を評価したところ、タザロテンクリームは肌の色が濃い患者のニキビ跡の炎症後色素沈着の治療に有効でした。



◉補足コメント:
実は当院では以前タザロテンを販売していたのですが、ほとんど売れないまま期限切れを迎えたため、そのまま取り扱いをやめてしまいました。


日本人には強力なレチノイドはハードルが高すぎるのかもしれません。タザロテンには「塗るだけでニキビ跡が治療できる」というとんでもないエビデンスもあるだけに残念です。

タザロテンの当院での取り扱いを再開しました。

タザロテンには、塗るだけの毛穴・ニキビ跡治療という外用療法の新しい可能性を切り拓くポテンシャルがあります。



◉代表文献:
c) Tazarotene cream for postinflammatory hyperpigmentation and acne vulgaris in darker skin: a double-blind, randomized, vehicle-controlled study
Pearl Grimes, Valerie Callender
Cutis
2006 Jan;77(1):45-50




第7位 トラネキサム酸


トラネキサム酸は何かと日本と縁が深い成分。発見したのも日本人なら、1970年代に肝斑がうすくなるという美白効果に気づいたのも日本人です。



◉作用機序:
皮膚にシミができる時には、「プラスミン」という酵素が重要な役割を果たします。


プラスミンは、メラノサイト(メラニンを作る細胞)にメラニンを作らせる様々な「情報伝達物質」の産生を刺激する「スイッチ」のように働きます。


トラネキサム酸はこのプラスミンが作られるプロセスを阻害する働き(抗プラスミン作用)で美白効果を発揮します



◉ランキングの根拠:
複数の臨床試験をまとめて「全体として効果はあると言えるか?」を調べる方法として、「メタ解析」があります。


いくつかあるメタ解析では、肝斑に対するトラネキサム酸外用の評価は揺れていて、最新のメタ解析(代表文献d)では、「他の治療と比較して、優位性が確立されていない」として、さらなる大規模なランダム化比較試験が必要であると指摘しています。


◉補足コメント:
有効性を示す臨床試験もありますが、評価されているのは効果の高さというより、トラブルが生じにくく使いやすいからなので、医療用というより化粧品用の美白成分と言えるでしょう。



◉代表文献:
d) Efficacy of Oral, Topical, and Intradermal Tranexamic Acid in Patients with Melasma — A Meta-Analysis
Panchal VS, et al.
Indian Dermatol Online J
2023 Dec 1;15(1):55-63

 



第6位 システアミン(Cyspera®)


システアミンは、アミノ酸の一つメチオニンの分解を通じてすべての哺乳類の細胞に自然に存在する、人間にとって天然の分子です。その美白作用は1960年代には発見されていました。しかし、独特の非常に強い匂いのため、長年にわたり外用剤の開発は進みませんでした。技術的に匂いを大幅に減らすことに成功したことで製品化にこぎつけました。



◉作用機序:
システアミンの正確な作用機序は完全には解明されていませんが、複合的にメラニン生成を阻害し、暗色のユーメラニンから明るいフェオメラニンへとシフトさせると考えられています。



◉ランキングの根拠:
肝斑に対する5%システアミンと標準的治療であるハイドロキノンの併用療法との比較試験の中には、5%システアミンの方が優れた結果を出したという報告(代表文献e)もあります。



◉補足コメント:
美容皮膚科学の世界において美白剤の優劣は、肝斑のレビュー論文でどう評価されるかが重要な意味を持ちます。


昨年発表されたレビュー文献(代表文献f)には「システアミンは、ハイドロキノンに比べて有効性が劣る可能性があるものの、軽度から中等度の肝斑に対してハイドロキノンに替わる治療の選択肢となりえる。」と書かれています。



◉代表文献:
e) Clinical evaluation of efficacy, safety and tolerability of cysteamine 5% cream in comparison with modified Kligman's formula in subjects with epidermal melasma: A randomized, double-blind clinical trial study
Maryam Karrabi, et al.
Skin Res Technol
2021 Jan;27(1):24-31


f) An Update on New and Existing Treatments for the Management of Melasma
Christian Gan, Michelle Rodrigues
Am J Clin Dermatol
2024 Sep;25(5):717-733

 


第5位 4‑n‑ブチルレゾルシノール(ルシノール)


日本のポーラが美白成分として研究開発しました。



◉作用機序:
メラニン合成の入り口に当たるチロシナーゼ(メラニン合成の律速段階の酵素)を強力に抑制するとともに、メラニン合成の出口の酵素も抑制します。さらにはチロシナーゼそのものも減らすことで美白作用をもたらします。

分子構造的にレゾルシノールという“骨格”はヒトのチロシナーゼと相性がよく、そのためルシノールやチアミドールのように、この“骨格”をベースにした成分はとても強力(ハイドロキノンより桁違いに強力)に酵素を止められるとされています。



◉ランキングの根拠:
臨床研究は数も質も十分ではありませんが、複数のランダム化比較試験で効果が実証されています。そのうちの一つでは、ルシノールは、臨床的および客観的な皮膚色の評価に基づき、3ヶ月間の治療後、基剤単独と比較して、肝斑の改善に有意な有効性を示しました(代表文献g)。



◉補足コメント:
肝斑の系統的レビューでは、副作用のリスクが低い新規化合物を探求する動きの中で、代替治療薬の一つとして提案されるようになっており、日本発のルシノールも世界的に認知されていると言えるでしょう。



◉代表文献:
g) Evaluation of efficacy and safety of rucinol serum in patients with melasma: a randomized controlled trial
A Khemis, et al.
Br J Dermatol
2007;156(5):997–1004

 


第4位 トレチノイン


第8位のタザロテンに続いて第4位にトレチノインと、レチノイドが2つランクインしました。



◉作用機序:
1. 表皮ターンオーバー促進
これによりメラニンを含む角化細胞の排出が促進され、沈着した色素が早く除去されます。


2. 炎症反応の抑制
トレチノインは抗炎症作用を持ち、炎症に伴う色素沈着の悪化を防ぐ効果が示されています。



◉ランキングの根拠:
トレチノインを含む3剤併用療法は世界的に肝斑治療のゴールドスタンダードです。ですから、トレチノインというと肝斑のイメージが強いですが、40週間にわたる二重盲検無作為化対照試験で、トレチノインはプラセボと比較して黒い肌に生じる炎症後色素沈着を有意に改善したことが示されています(代表文献h)。この研究は、炎症後色素沈着の治療におけるトレチノインの安全性と有効性を裏付けています。



◉補足コメント:
レチノイドが美白剤??と思われるでしょうが、肝斑、炎症後色素沈着に対して単独使用の臨床試験があり、効果が証明されている以上、ChatGPTが美白剤と判断するのも当然かもしれません。



◉代表文献:
さすがに第4位になると代表文献のジャーナルの権威性も段違いです。


h) Topical tretinoin (retinoic acid) therapy for hyperpigmented lesions caused by inflammation of the skin in black patients
S M Bulengo-Ransby, et al.
N Engl J Med
1993 May 20;328(20):1438-43




第3位 アゼライン酸


当院で肝斑治療に使用しているアゼライン酸が第3位です。


アゼライン酸はニキビ、色素沈着、赤ら顔の治療に使われます。大人ニキビができやすく、そのたびに色素沈着になって困っている方に最適です。



◉作用機序:
アゼライン酸の美白作用の作用機序は、主に以下の点に起因すると考えられます。

1 チロシナーゼの阻害:アゼライン酸は、メラニン生成に関与する主要酵素であるチロシナーゼを直接的かつ競合的に阻害します。
2 メラノサイトへの選択的抑制効果:アゼライン酸は、特に過活動性メラノサイトに対して選択的な抑制効果を示します。
3 活性酸素種(ROS)の産生抑制と抗酸化作用




◉ランキングの根拠:
高評価につながったのは、他の美白剤と比べ明らかに大規模なランダム比較試験でハイドロキノンと同等という結果を出していることが大きいでしょう。


文献自体はやや古めですが、対象人数が329人で、観察期間が24週という大規模かつ長期の二重盲検試験で、ハイドロキノンと同等の効果を証明しています(代表文献i)。



◉補足コメント:
アゼライン酸は肌への刺激が軽度で、ほとんどの人が安心して使い続けられるのが特徴です。文献的には妊娠中の使用も安全とされています。

またアゼライン酸は抗菌作用もありますが、一般的な抗生物質とは異なり耐性を生じないとされています。

 

◉代表文献:
i) The treatment of melasma. 20% azelaic acid versus 4% hydroquinone cream
L M Baliña, K Graupe
Int J Dermatol
1991 Dec;30(12):893-5




第2位 チアミドール


チアミドールはドイツの Beiersdorf(バイヤスドルフ)が開発した美白成分です。

 

◉作用機序:
チアミドールの美白作用の作用機序は、チロシナーゼ酵素の活性を阻害することです:

◎チロシナーゼ酵素の阻害: チロシナーゼは、皮膚の過剰な色素沈着の治療において阻害標的となる酵素です。これは、メラニン生成における律速酵素であるためです。


◎ヒトチロシナーゼへの特異性: 多くの市販のチロシナーゼ阻害剤の臨床的有効性は限られており、これは主に、標的としてヒトチロシナーゼではなくマッシュルームチロシナーゼに対して試験されたためです。しかし、チアミドールは、50,000以上の化合物のスクリーニングの結果、ヒトチロシナーゼの特に強力な阻害剤として特定されました。


◎他の阻害剤に対する優位性: 試験管内(in vitro)では、チアミドールは、アルブチン、コウジ酸、ハイドロキノンなどの一般的に使用される過剰色素沈着阻害剤よりも優れていることが示されています。

 

◉ランキングの根拠:
新しい美白成分なので臨床試験の数も多くありませんが、肝斑にも炎症後色素沈着にも有意な改善をもたらすことが示されています。ハイドロキノンとの比較で言うと、2%ハイドロキノンより効果的、4%ハイドロキノンとは同等の効果という評価です。


肝斑がある女性50人を対象にした0.2%チアミドールと4%ハイドロキノンを比較した90日間の試験で、チアミドール群では84%、ハイドロキノン群では74%で改善を認めました。有意差は認められませんでした(代表文献j)。



◉補足コメント:
昨年の肝斑のレビュー文献でも、「チアミドールは、肝斑の治療薬としてハイドロキノンに匹敵する可能性がある」と高い評価を受けています(代表文献f)。美白剤の王座をハイドロキノンから奪えるとしたら、このチアミドールかもしれません。


ハイドロキノンと比較して、重篤な副作用や色素沈着の悪化のリスクが低く、安全な治療選択肢であると考えられます。

 

◉代表文献:

j) Efficacy and safety of topical isobutylamido thiazolyl resorcinol (Thiamidol) vs. 4% hydroquinone cream for facial melasma: an evaluator-blinded, randomized controlled trial
P B Lima, et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol
2021 Sep;35(9):1881-1887

 


第1位 ハイドロキノン


ハイドロキノンは、数十年にわたる臨床使用の歴史と、最も広範な臨床文献に裏打ちされ、第1位にランクされました。

 

◉作用機序:
ハイドロキノン(HQ)の美白剤としての作用機序は、主に以下の点が挙げられます。

◎チロシナーゼ酵素の阻害:
HQの主要な作用機序は、メラニン生成に関与する酵素であるチロシナーゼを阻害することです。チロシナーゼは、アミノ酸のチロシンをメラニン前駆体に変換する作用を触媒します。HQが存在すると、チロシナーゼはチロシンよりもHQを優先的に酸化するため、メラニンが生成されません。

◎メラノサイトの構造および機能の改変(細胞毒性):
ハイドロキノン(HQ)は、メラニン生成に関わる酵素であるチロシナーゼを阻害するだけでなく、メラノサイトの構造と機能も変化させることで色素過剰症を軽減します。



◉ランキングの根拠:
安全性への懸念が存在するものの、その証明された強力な有効性と圧倒的なエビデンスの蓄積量は、依然として他の追随を許しません。


今回のランキング作成に当たっては、文献のエビデンスを判定するために臨床ガイドライン作成などで国際的に広く使われているGRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システム を活用しました。

GRADEでは高(High)、中(Moderate)、低(Low)などと評価しますが、ハイドロキノンは唯一の高(High)評価でした。ちなみに高(High)とは「新たな研究が出ても結論が大きく変わる可能性は低い。」ことを意味します。



◉補足コメント:
美白効果を称賛される一方で、ハイドロキノンは副作用のリスクを内包しています。そのため米国では2020年10月以降、ハイドロキノンが配合されたコスメの販売はできなくなりました。


その背景には美白剤の「ゴールドスタンダード」ハイドロキノンならではの「濫用」の問題があります。


肌の色が黒く生まれた人が白くしたいという理由で、高濃度のハイドロキノンを長期間にわたり自己判断で使って副作用を引き起こす事例が実は世界中で後をたちません。


そのため米国だけでなく世界的に見ても、化粧品への配合は禁止される流れになっています(日本では化粧品の配合が許されています)。


ハイドロキノンの使用は、医師の監督下で、計画的な治療サイクルに基づいて行われるべきです。



◉代表文献:
代表文献として選んだのは、米国での2006年の行政による「ハイドロキノンを含むコスメの禁止提案」に対し、全米屈指のニューヨーク市のマウント・サイナイ病院の皮膚科の臨床教授が、詳細に安全性データを吟味して規制に反対したレビュー文献です(代表文献k)。米国皮膚科学会公式ジャーナルが掲載しています。


k) The safety of hydroquinone: A dermatologist's response to the 2006 Federal Register
Jacob Levitt
J Am Acad Dermatol
2007 Nov;57(5):854-72


結局、米国では2020年にハイドロキノンを含むコスメの販売は事実上禁止されました。ただし処方薬としての使用は継続され、今も「医師の管理下で最も有効な美白剤」との位置づけは維持されています。





クリニックで取り扱う美白剤

 

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##今回ランキング作成にあたり使用したプロンプト##


役割
あなたは、皮膚科領域のエビデンス合成(systematic review & evidence grading)を専門とする研究者です。依頼者は臨床家です。依頼者の臨床意思決定を支えるため、**皮膚の炎症後色素沈着(PIH)と肝斑(melasma)に対する外用(topical)“単剤”**の治療効果を、最新の学術文献に基づいて比較し、**客観的指標とGRADEで評価したランキング(Top 10)**を作成してください。

ゴール
1PIH用 Top 10 と 肝斑用 Top 10 を別々に作成(重複可)。
2可能なら**“総合(PIHと肝斑を横断)Top 10”**も提示。
3各有効成分ごとに順位・理由・根拠文献(代表RCT/対照試験の主要3本まで)を明示。
4エビデンスの質はGRADE(High/Moderate/Low/Very low)で提示。
重要:該当する単剤RCT/対照試験が十分でない場合は、ランキングに無理に入れず「エビデンス不足」として別枠に列挙。Top 10に満たない場合は該当数のみ提示。

対象・定義
・対象疾患:PIH、肝斑(各々で評価)。
・介入:**外用“単剤”**の美白/色素改善成分(例:ハイドロキノン、アゼライン酸、ナイアシンアミド、コウジ酸、アルブチン、トラネキサム酸外用、システアミン、メキノール、4-n-ブチルレゾルシノール/チアミドール、ビタミンC誘導体 等)。
・対照:プラセボ/車両、無治療、または有効成分比較。
・アウトカム(客観指標を優先):
色差計/分光測色(L*a*b*、ΔL*、ITA°)、メラニンインデックス、
MASI/mMASI(肝斑)、客観スコア(BSA、デジタル画像解析)、
有害事象(刺激感、皮膚炎等)、治療中止率、再発率。
・対象皮膚タイプ:Fitzpatrick I–VI(IV–VIへの外的妥当性も評価項目に入れる)。

除外基準(厳守)
・コンビネーション療法(例:Kligman/トリプルセラピー、ハイドロキノン+トレチノイン等)は除外。
・内服・注射・点滴は除外(トラネキサム酸は外用単剤の試験のみ評価)。
・手技系(化学ピーリング、レーザー、光治療、マイクロニードリング等)やサンスクリーン単独も除外(ただし併用の有無はリスク・オブ・バイアスとして言及)。
・症例報告や非比較研究のみはランキング対象外(補足に回す)。

文献収集と選別
・一次情報を最優先:RCT、盲検化、対照群ありを重視。
・データベース:PubMed/MEDLINE、Embase、Cochrane、J‑STAGE等。検索日を明記。
・言語:日本語・英語(他言語も要約可)。
・同一試験の重複出版は1件に統合。
・事前登録/プロトコルの有無、サンスクリーン使用の均衡、追跡期間も抽出。

エビデンス評価(GRADE+スコアリング)
1 GRADE:High / Moderate / Low / Very low(リスク・オブ・バイアス、非一貫性、間接性、不精確性、出版バイアス;大効果・用量反応でのアップグレード可)。
2 **総合スコア(0–13点)**でランキングを算出:
○研究の質(GRADEを点数化):High=3, Moderate=2, Low=1, Very low=0
○効果量(SMDまたは群間差の標準化):なし/極小=0、小=1(≈0.2)、中=2(≈0.5)、大=3(≈0.8)、非常に大=4(>0.8)
○再現性/一貫性:独立RCT数やメタ解析の有無:0–3
○客観アウトカムの採用(測色/MI/MASI等):0 or 1
○フォトタイプIV–VIの裏付け:0 or 1
○安全性(AEによる中止や重篤事象):+1(概ね良好)、0、−1(有害事象多い)
3 同点時のタイブレーク:①GRADEが高い>②効果量が大きい>③フォトタイプ外的妥当性>④安全性>⑤最新性。
可能なら**効果量の算出根拠(平均差/SD、SMD、信頼区間、I²)**を簡潔に提示。

出力要件(必須)
・表形式(日本語)+ 機械可読JSON の両方を出力。
・PIH Top 10、肝斑 Top 10、(任意で)総合Top 10の順に提示。
・各成分ごとに以下を1エントリで記載:
[表エントリ項目]
Rank/有効成分(日本語名 / 英語名 / 同義語)
適応:PIH/肝斑(該当に✔)
推奨濃度域・用法(根拠試験のレンジと期間)
主要アウトカム(例:ΔL*、mMASI、MI 等)と効果量(SMD/群間差、95%CI)
GRADE(High/Mod/Low/VLow)
総合スコア(0–13) 内訳(例:3+3+2+1+1+1=11)
安全性要約(刺激性/PIH悪化の有無、離脱率)
代表文献(最大3件):著者・年・誌名・試験デザイン・N・期間・PMID/DOI
要約(なぜこの順位か:2–3行)
[JSONスキーマ(例)]{ "condition": "PIH | Melasma | Overall", "updated_on": "YYYY-MM-DD", "rankings": [ { "rank": 1, "agent": { "jp": "ハイドロキノン", "en": "Hydroquinone", "synonyms": ["HQ"] }, "indication": ["PIH","Melasma"], "dose_range": "2–4% cream, qHS", "duration_range_weeks": "8–24", "outcomes": [{"metric":"ΔL*","effect_size_SMD":0.85,"CI":"0.60–1.10"}], "GRADE": "High", "score_breakdown": {"GRADE":3,"effect":3,"consistency":3,"objective":1,"phototype":1,"safety":0}, "total_score": 11, "safety": "軽度刺激、接触皮膚炎まれ。長期高濃度で外因性黒皮症の報告あり。", "key_refs": [{"author":"…","year":2020,"journal":"…","PMID":"…","DOI":"…"}], "rationale_jp": "…" } ], "insufficient_evidence": ["成分名A","成分名B"]}

追加指示
図表の明確化:指標(L*、mMASI、MI)の**方向(改善=数値の増減どちらか)**を明記。
サンスクリーン:介入群・対照群での取扱いが均衡でない場合はリスク・オブ・バイアスとして言及。
重複回避:同一製剤の異名・誘導体は薬理学的に区別し、別分子は別エントリ。
ブランド名の最小化:基本は一般名で記載。
透明性:検索式、期間、除外理由を簡潔に付記(数行で可)。
臨床翻訳:最終セクションで、誰に・どの状況で有益になりやすいか(例:フォトタイプIV–VIのPIH での実効性)を1段落に要約。

期待する最終セクション(短い総括)
要約:上位3成分の共通点(客観指標での一貫した効果、再現性)
ギャップ:エビデンス不足の領域(例:特定フォトタイプ/長期安全性)
実装上の注意:刺激性対策、使用期間の目安、再発管理の示唆(文献準拠)

品質基準
・正確性>網羅性>簡潔性。
・引用はPMIDまたはDOI必須、可能ならページ/図表番号。
・直接比較のない成分間は効果量の標準化で比較。恣意的判断を避ける。
・断定的表現はGRADEと効果量で裏づける。

 







 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月11日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.08.12更新

はじめに

鏡を見るたびに「肌がくすんでいる」「黄色っぽくなってきた」と感じることはありませんか?その「黄ぐすみ」の正体は、AGEs(エージーイー:終末糖化産物)と呼ばれる老化物質の蓄積かもしれません。

AGEsとは、私たちの体を構成するタンパク質や脂質が糖と結びついてできる「焦げ」のような物質。まるでトーストの焦げ目のように、肌を内側から黄ばませ、ハリや弾力を奪っていきます。しかも恐ろしいことに、一度できてしまったAGEsは、なかなか体外に排出されません。

しかし、諦める必要はありません。最新の研究により、AGEsの蓄積は日々の生活習慣で予防でき、すでに蓄積したAGEsも改善できる可能性があることがわかってきました。本記事では、AGEsについて医学的根拠を交えながら詳しく解説していきます。

AGEsとは?

体内で起こる「糖化」という現象

AGEs(Advanced Glycation End Products:終末糖化産物)は、還元糖(ブドウ糖・果糖など)がタンパク質や脂質に結合して生じる不可逆的な生成物です(文献1)。

医学的根拠
◉AGEsは不可逆的で代謝されにくいため、皮膚に年々蓄積します。特に、皮膚コラーゲンの代謝回転が遅いことが、AGEs蓄積の主な理由とされています(文献1)


AGEsが肌にどのような悪影響を及ぼすか?

肌への影響:美容の大敵

AGEsの蓄積は、女性の美容上の悩みに直結します。


シワ・たるみの原因

AGEsはコラーゲンやエラスチンなどの皮膚の線維成分に結合し、これらを硬くもろくします。正常なコラーゲンは柔軟性があり、肌の弾力を保っていますが、AGEsによって架橋されたコラーゲンは硬化し、肌のハリが失われます。

医学的根拠
◉AGEsがコラーゲン線維に蓄積することによる変化(文献2):
●コラーゲン線維の硬化(Stiffening)
●コラーゲン線維に力が加わった際にエネルギーが線維内に蓄積され、もろくなって破壊されやすくなります
●組織の機能低下

黄ぐすみ・くすみ
AGEsは褐色の色素を持つため、皮膚に蓄積すると肌が黄色っぽくくすんで見えます。これは糖化による「黄ぐすみ」と呼ばれ、通常の美白化粧品では改善が困難です。

医学的根拠
◉2024年に黄色い色を持つ糖化最終産物AGEY(Advanced Glycation End-product Yellow)が、皮膚の黄変に直接関与することが判明しました(文献3)。


皮膚におけるAGEsの蓄積のリスクファクター

1. 年齢(加齢)
加齢は皮膚AGEs蓄積の最も確実なリスクファクターです。

医学的根拠
◉Verzijl et al.らの研究により、皮膚コラーゲン中のAGE含有量は年齢とともに線形的に増加することが証明されています(文献1)。


2. 糖尿病・高血糖状態

医学的根拠
◉韓国人2型糖尿病患者310名を対象とした研究では、糖尿病の罹患期間が長いほど、SAF(皮膚自己蛍光)で測定されたAGEsのレベルが高いことが認められました(P < 0.001)(文献4)


3. 紫外線暴露

医学的根拠
◉若年者において、通常は紫外線から保護された皮膚部位にはAGEsの顕著な蓄積は見られませんが、日光にさらされる部位ではAGEsの沈着が増加していることが示されています。特に、光老化した部位にAGEsの蓄積が多く見られると報告されており、紫外線暴露がAGEs形成を促進する可能性が示唆されています(文献5)



4. 食事由来AGEs

医学的根拠
◉549食品のAGE含有量データベース解析により、乾熱調理(高温かつ低水分量の状態で行われる調理法)は、未調理の状態と比較して、食事由来のAGEsの生成を10~100倍以上促進することが報告されています(文献6)

◉現代の食事が主に加熱調理されているため、高レベルのAGEsを含んでいるとされ、特に「グリル、ブロイル、ロースト、ソテー、フライ」といった調理法が新規AGEsの生成を促進・加速させることを指摘しています(文献6)


5. 喫煙

医学的根拠
◉タバコの煙はAGEsの外因性供給源であると報告されています。能動喫煙はもちろん受動喫煙でも曝露時間が長くなるにつれて皮膚のAGEs蓄積の指標である皮膚自己蛍光(SAF)レベルを上昇させることが明確に示されています(文献7)


皮膚に蓄積したAGEsは除去できるか?

現在の科学的見解
皮膚に蓄積したAGEsの完全な除去は困難ですが、部分的には除去・減少させることができる可能性があります。

1. オートファジー経路によるAGEs除去
オートファジーとは、細胞の中にたまった"古い部品やゴミ"を分解して再利用する仕組みのこと。2016年にはこの仕組みの解明で大隅良典先生がノーベル賞を受賞しています。

医学的根拠
◉人工的にAGEsを蓄積させたヒト表皮細胞を使用した実験で、オートファジー促進剤で処理すると、蓄積していたAGEsは有意に減少しました。オートファジーの活性化が皮膚の表皮細胞内に蓄積したAGEsの除去を促進できることを示唆しています(文献9)。


2. AGEブレーカー(架橋断裂薬)
AGEブレーカーとは、糖化によって形成されたタンパク質間の架橋(特に長寿命のコラーゲンに多い)を切断し、組織の硬化や機能低下を可逆的に改善することを狙う治療アプローチです。動物実験で一定の効果を示しています。

美白の敵 〜AGEs〜

3. 食事療法・生活習慣改善

実践可能な対策
⚪️AGEs含有食品の摂取制限(文献6)
⚪️調理法の変更(焼く、揚げる→蒸す・煮る)(文献6)
⚪️カロリー制限(文献8)
⚪️禁煙(文献7)
⚪️節酒(文献10)


まとめ:AGEsと上手に付き合い、美肌を守る

現時点では:
◎糖尿病なら、血糖値をしっかりコントロールする
◎糖尿病でなくとも血糖値を急激に上げる食習慣をさける
◎UVケアで紫外線から肌を守る
◎上記「3. 食事療法・生活習慣改善」を実践する
これが、最も科学的根拠に基づいたAGEsから肌を守る方法です。

AGEsは、私たちの肌を内側から黄ばませ、老化を促進する「美肌の敵」です。AGEsとの闘いは長期戦ですが、正しい知識と継続的な努力により、年齢を重ねても美しく輝く肌を保つことができます。今日から少しずつ、AGEs対策を始めてみませんか?


クリニックでの美白治療

 

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【参考文献】
1) Advanced Glycation End Products in the Skin: Molecular Mechanisms, Methods of Measurement, and Inhibitory Pathways
Chun-Yu Chen, et al.
Front Med
2022 May 11:9:837222

2) Advanced-Glycation Endproducts: How cross-linking properties affect the collagen fibril behavior
Julia Kamml, et al.
J Mech Behav Biomed Mater
2023 Dec:148:106198

3) Identification of Yellow Advanced Glycation End Products in Human Skin
Bin Fang, et al.
Int J Mol Sci
2024 May 21;25(11):5596

4) Skin accumulation of advanced glycation end products and cardiovascular risk in Korean patients with type 2 diabetes mellitus
Lee-Seoul Choi, et al.
Heliyon
2022 Jun 2;8(6):e09571

5) Advanced glycation end products: Key players in skin aging?
Paraskevi Gkogkolou, Markus Böhm.
Dermato-endocrinology
2012 Jul 1;4(3):259-70

6) Advanced glycation end products in foods and a practical guide to their reduction in the diet
Jaime Uribarri, et al.
J Am Diet Assoc
2010 Jun;110(6):911-16.e12

7) The association between various smoking behaviors, cotinine biomarkers and skin autofluorescence, a marker for advanced glycation end product accumulation.
Robert P van Waateringe, et al.
PLoS One
2017 Jun 20;12(6):e0179330

8) Oral glycotoxins determine the effects of calorie restriction on oxidant stress, age-related diseases, and lifespan
Weijing Cai, et al.
Am J Pathol
2008 Aug;173(2):327-36

9) Autophagy activators stimulate the removal of advanced glycation end products in human keratinocytes
T Laughlin, et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol
2020 Jun:34 Suppl 3:12-18

10) Inhibition of advanced glycation endproduct formation by acetaldehyde: role in the cardioprotective effect of ethanol
Y Al-Abed, et al.
Proc Natl Acad Sci U S A
1999 Mar 2;96(5):2385-90




制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年8月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.05.27更新

 

【目次】

1: そもそも肌の「ハリ」とは?
2: あなたのハリ不足、主な原因はこれかもしれない
3: 肌のハリを取り戻すための多角的アプローチ
4: 自分に合ったハリケアを見つけるためのステップ



残酷に肌の「ハリ」は失われます。

「最近、なんだか肌に元気がない…」「ファンデーションのノリが悪くなったかも…」鏡を見るたび、ため息をついていませんか?

この記事では、多くの方が悩む「肌のハリ」について、その正体から原因、そして科学的根拠に基づいた具体的な改善アプローチまでを詳しく解説します。


1. そもそも肌の「ハリ」とは?



1-1. ハリがある肌、失われた肌ってどんな状態?

「肌のハリ」とは、一般的に、指で肌を押したときに内側から押し返してくるような弾力、みずみずしさ、そして見た目のツヤ感が揃った状態を指します。

皮膚科学的には、この「ハリ」は皮膚の粘弾性(viscoelasticity)として定義されます。これは、外からの力によって皮膚が変形した際の抵抗力と、その力を取り除いた後に元の形に戻ろうとする性質の組み合わせを意味します。


1-2. 肌を支える構造と「ハリ」のメカニズム

皮膚は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という三層構造になっています。

皮膚の構造

表皮(ひょうひ): 厚さ約0.2mmの最も外側の層で、外部の刺激から肌を守るバリア機能を担っています。ターンオーバー(新陳代謝)によって、約4週間で新しい細胞に入れ替わります。

真皮(しんぴ): 表皮の下にあり、厚さ約2mmの層です。皮膚の本体とも言える部分で、肌のハリや弾力、潤いを保つ上で非常に重要な役割を果たしています。

皮下組織(ひかそしき): 真皮の下にあり、主に脂肪細胞から構成されています。衝撃を和らげるクッションの役割や、体温を保つ断熱材としての役割、エネルギーを蓄える役割などがあります。

この三層構造の中で、肌のハリと弾力に最も深く関わっているのが「真皮」です。真皮は、以下の主要な成分で構成されており、これらが複雑に絡み合って、肌のハリを支えています。

細胞外マトリックス


コラーゲン(膠原線維)
: 真皮の約70%を占める線維状のタンパク質です。網目状に張り巡らされており、肌の強度や構造を支える、いわば建物の鉄骨のような役割を担っています。

エラスチン(弾性線維): 真皮内に数%しか存在しませんが、ゴムのように伸び縮みする性質を持つタンパク質です。コラーゲン線維同士を束ねるように存在し、肌に弾力性(元の形に戻る力)としなやかさを与えます。コラーゲンが強度を保つのに対し、エラスチンは柔軟性をもたらします。

ヒアルロン酸: コラーゲンやエラスチンなどの線維の間を満たしているゼリー状の物質(基質)の主成分の一つです。非常に高い保水力を持ち、1グラムで約6リットルもの水分を保持できると言われています。肌の内部に水分をたっぷりと蓄え、みずみずしさやふっくらとしたボリュームを与えます。

線維芽細胞(せんいがさいぼう): 真皮内に点在し、上記のコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などを産生する工場のような細胞で、真皮の構造と機能を維持しています。


1-3. ハリはこうして生まれる

「肌にハリがある」状態とは、真皮層において線維芽細胞が活発に働き、質の良いコラーゲンが豊富に存在してしっかりと肌を支え、エラスチンがその構造に弾力性を持たせ、さらにヒアルロン酸などの基質成分が水分を抱え込んで全体をふっくらと満たしている状態を指します。


次の章では、あなたのハリ不足を引き起こしている可能性のある、より具体的な原因について探っていきます。


2. あなたのハリ不足、主な原因はこれかもしれない



2-1. ハリを奪う最大の敵!紫外線ダメージの影響

肌の老化を引き起こす最大の外的要因として知られているのが紫外線です。紫外線は、私たちの肌の奥深くまで到達し、ハリを支える重要な成分にダメージを与えます。

紫外線がハリを奪う


真皮まで届くUV-A波がコラーゲン・エラスチンを破壊

太陽光に含まれる紫外線のうち、特に「UV-A波(紫外線A波)」は波長が長く、雲や窓ガラスを通り抜けて皮膚の深い部分、つまり真皮層にまで到達します。紫外線を浴びると皮膚内でコラーゲン分解酵素が過剰に産生され、コラーゲン線維を切断・断片化してしまいます。これにより、真皮の構造が崩れ、肌は弾力を失い、シワやたるみといった形でハリ不足に陥ります。


2-2. 乾燥は万病のもと?肌のバリア機能低下とハリ不足

肌が乾燥すると、カサカサするだけじゃなく、肌のハリまで失われてしまうんです。それには、次のようなステップがあります。

ステップ1:肌の表面がカラカラに
まず、肌の一番外側にある「角層(かくそう)」という部分の水分が減ってしまいます。角層は、レンガとセメントのように細胞とうるおい成分(セラミドなど)からできていて、乾燥すると、このセメントが崩れてすき間だらけになり、そこから水分がどんどん逃げてしまいます(文献1)。

ステップ2:肌の奥でSOS!ハリが弱り始める
さらに乾燥が進むと、肌の細胞の周りの水分バランスが崩れてしまいます。これが刺激となって、肌荒れを引き起こす物質が出てきてしまい、肌のハリや弾力を支えている大切な繊維(コラーゲンやエラスチン)を壊してしまう酵素が活発になります(文献2)。

ステップ3:うるおいクッション(細胞外マトリクス)がしぼんで、さらにたるむ
肌の真皮には、ヒアルロン酸やプロテオグリカンといった、たくさんの水分を抱え込むスポンジのような成分(細胞外マトリクス)があります。乾燥すると、これらも減ってしまい、肌の内側から押し上げるようなハリが失われ、しぼんだ印象になってしまいます(文献3)。

まとめ:乾燥は肌の奥まで影響する大敵!
肌の乾燥は、ただうるおいが足りないという表面的な問題だけではありません。肌の表面から奥深くまで、次々とダメージが広がっていく現象なのです。


2-3. 知らず知らずのうちに進行?肌の酸化・糖化

私たちの体内や皮膚で起こる「酸化」と「糖化」も、肌のハリを静かに蝕む原因となります。

肌の酸化(サビつき)
紫外線、大気汚染、ストレス、喫煙などによって体内で過剰に発生する活性酸素(ROS)は、皮膚において、コラーゲンやエラスチンを変性・劣化させ、線維芽細胞の働きを弱めることで、ハリや弾力の低下を促進します。

肌の糖化(コゲつき)
食事などから摂取した余分な糖質が、体内のタンパク質(主にコラーゲン)と結びついて変性させ、最終糖化産物(AGEs)という老化物質を生成する反応を「糖化」と呼びます。

AGEsがコラーゲン線維に蓄積すると、コラーゲンは硬くてもろくなり、肌のしなやかさや弾力が失われます。黄ぐすみの原因にもなります(文献4)。


2-4. 生活習慣の乱れが招くハリ低下(睡眠不足、喫煙など)

日々の生活習慣の乱れも、肌のハリに深刻な影響を与えます。

睡眠と成長ホルモン、ターンオーバーの関係
睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、コラーゲンの産生や修復が十分に行われなくなります。その結果、肌のハリが失われます(文献5)。

喫煙によるビタミンC消費と活性酸素
研究によれば、喫煙者の皮膚では非喫煙者に比べてコラーゲンの産生が低下し、分解酵素の産生が増加することが報告されています(文献6)。


2-5. 表情筋の衰えも大きな要因??

表情筋についても肌のハリに関連して取り上げられることがあるので、ここで触れておきます。

「肌のハリ」が真皮層のコラーゲンやエラスチンの質と量によって生まれる弾力性を指す場合、表情筋の衰えがこれらの成分に直接的に影響を与えるという医学的エビデンスはありません。

しかし、加齢などで表情筋が萎縮したり、筋力が低下したりすると、その上にある皮膚や脂肪組織を適切に支える力が弱まります。結果としてハリがないように見える(ハリ感が低下したように見える)ようになるでしょう(文献7)。


これらの原因は、単独で作用することもあれば、複合的に絡み合って肌のハリを奪っていることもあります。次の章では、これらの原因を踏まえ、失われたハリを取り戻すための具体的なアプローチについて解説していきます。


3. 内側からも外側からも!肌のハリを取り戻すための多角的アプローチ


3-1. 今日から見直す!正しいスキンケアで潤いをチャージ

スキンケアの基本は、肌のバリア機能を守り、うるおいを保持すること。そして、ハリ不足に特化した成分を効果的に取り入れることが重要です。


3-1-1. 抗加齢治療のゴールドスタンダード レチノイド

レチノイド(トレチノイン等)は抗加齢治療のゴールドスタンダードとされ、シワやたるみの治療に広く用いられています。

トレチノイン(レチンA)外用は1970年代にニキビ治療に使われ始めましたが、その後の研究で表皮のターンオーバー促進や真皮コラーゲンの新生効果が確認され、光老化によるシワ改善薬としてFDA承認されました。

レチノイドは皮膚に多角的に作用します:

⚪️線維芽細胞を刺激してコラーゲン産生を促進し、コラーゲン密度を高める

⚪️コラーゲン分解酵素(MMP-1など)の発現を抑制して既存コラーゲンの劣化を防ぐ

⚪️表皮の細胞増殖を促し表皮肥厚をもたらすことで小ジワを目立たなくする



レチノイドは総称で、エイジングケアとして使えるものとして
◉タザロテン
◉トレチノイン
◉レチナール
◉ディフェリン
の4種類があります。

ドラッグストアなどで入手しやすい成分にレチノールがありますが、レチノールは作用が弱すぎるので、エイジングケアとしては推奨できません。

臨床的には、レチノイド外用で細かいシワの減少や皮膚の弾力性・厚みの改善が3〜6か月の使用で現れることが数多く報告されています。



レチノイドは医学的エビデンスが確立したハリ改善の第一選択であり(文献8)、医師の指導の下での使用が推奨されます。


3-1-2. 保湿ケアの重要性:肌細胞をふっくらさせる

肌のハリを保つためには徹底した保湿ケアで、肌内部の水分蒸散を防ぎ、外部刺激から肌を守りましょう。


水分保持に欠かせないセラミド・ヒアルロン酸
セラミドは角層細胞の間を埋める脂質で、水分を挟み込みバリア機能をサポートします。ヒアルロン酸は真皮にも存在する成分で、高い保水力を持ち、肌にみずみずしさと柔軟性を与えます。化粧品は主に角層の保湿を担います。


3-1-3. ワンランク上のケアを目指す!ハリを出すためにおすすめのその他の美容成分

⚪️コラーゲン産生を助けるビタミンC誘導体
ビタミンCはコラーゲンの合成に必須の栄養素であり、抗酸化作用も持ち合わせます。肌への浸透性と安定性を高めたビタミンC誘導体は、メラニンの生成を抑える効果も期待でき、ハリと透明感の両方にアプローチできます。

⚪️シワ改善にも期待できるナイアシンアミド
ナイアシンアミド(ビタミンB3)は、コラーゲン産生促進やバリア機能改善、シワ改善効果が報告されている注目の成分です(文献9)。

⚪️エイジングケア注目の「ペプチド」
化粧品に配合される特定のペプチド(シグナルペプチドなど)は、細胞に特定のシグナルを送り、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった真皮の主要成分の産生を促進する働きが期待されています。 これにより、肌の内側からハリや弾力を高める効果が期待できます。 (文献10)。



3-1-4 徹底的な紫外線対策で未来の肌を守る

紫外線は肌のハリを奪う最大の外的要因です。「光老化」を防ぐために、一年中、天候に関わらず紫外線対策を徹底しましょう。

◉曇りの日も室内でも油断禁物: UV-A波は雲や窓ガラスを透過して肌の奥深くまで到達します。室内でも窓際にいる場合は対策が必要です。

日焼け止めの正しい選び方と使い方: 日常生活ではSPF30、PA++、屋外での活動時間が長い場合はSPF50+、PA++++など、シーンに合わせて選びましょう。重要なのは、十分な量をムラなく塗り、2~3時間おきに塗り直すことです。

帽子や日傘など、物理的な遮断も効果的: 日焼け止めと併用することで、より効果的に紫外線を防ぐことができます。


3-2. 身体の内側から整える食事と睡眠

3-2-1. ハリ肌を作る栄養素を意識したバランスの良い食事

●タンパク質、ビタミンA・C・E、亜鉛などの重要性
●抗酸化作用のある食べ物
●糖化を防ぐ食習慣のポイント: 急激な血糖値の上昇は糖化を招きます。血糖値が上がりにくい低GI食品を選んだり、野菜から先に食べる「ベジファースト」を心がけたりしましょう。


3-2-2. 睡眠不足はターンオーバーの乱れに直

毎日同じ時間に寝起きする、寝る前のカフェインやアルコールを控える、リラックスできる環境を整えるなど、質の高い睡眠をとるための工夫をしましょう。


3-3. 表情筋トレーニングと適度な運動で肌の土台をサポート

⚫️表情筋トレーニング?: 表情筋の衰えが直接的に真皮のコラーゲン量に影響を与えるという医学的エビデンスは現時点では明確ではありません(2-5. 参照)。

⚫️全身の運動も効果的?: ウォーキングなどの有酸素運動や筋力トレーニングで皮膚の弾力性や真皮の構造が改善することが報告されています(文献11)。しかし、質の高いエビデンスは見当たりません。


3-4. 見直したい日々の習慣(喫煙、過度なケアなど)

◎喫煙と肌のハリの関係: 禁煙はハリを取り戻すための大きな一歩です。

◎摩擦などの肌への過度な刺激を避ける

◎無理なダイエットが肌に与える影響: 急激な体重減少や栄養不足は、肌のハリを支えるために必要な栄養素が不足し、肌のしぼみやたるみを招くことがあります。無理なダイエットは禁物です。


3-5. 自宅でできるスペシャルケア(美顔器、シートマスクなど)

⚪️美容家電(LED、EMSなど)の活用: LEDもEMSもどちらもエビデンスはありますが、美容家電としてのLED、EMSが有用かどうかは別の問題です。過度に期待することなく、各機器の説明書をよく読んで判断して下さい。

⚪️美容成分配合のシートマスクやパック: シートマスクの密封性が、有効成分の吸収と効果を向上させます。(文献12)。

ただし、長い時間つけたままにしておくと、逆効果で肌が乾燥しやすくなることは忘れられがちです。シートマスクやパックをつけておく時間は文献12では25分未満としています。



3-6. 【専門的アプローチ】美容医療という選択肢

セルフケアだけでは改善が難しい顕著なハリ不足に対しては、美容医療が有効な選択肢となります。

3-6-1.マイクロニードル(マイクロニードリング)

「コラーゲン誘導療法」とも言われ、日本では2000年代後半に最初はダーマローラー(極細針が多数付いた手動ローラー)として導入され、2010年代後半からは電動式のダーマペンが登場し、美容クリニックで、毛穴、ニキビ跡治療として、またエイジングケアとして使われています。


3-6-2.細胞外マトリックス治療(注入療法)

イタリアで生まれた細胞外マトリックス治療の製剤は、分子量の異なるヒアルロン酸の組み合わせやヒアルロン酸とアミノ酸の組み合わせからなります。これを顔全体で10〜20か所に皮下に注入する治療です。
コラーゲンやヒアルロン酸を個々に増やすというより、皮膚幹細胞、線維芽細胞の働きやすい環境を整えることで、コラーゲンもエラスチンもヒアルロン酸も、つまりは「細胞外マトリックス」を全体として増やす治療です。


3-6-3. HIFU(ハイフ)

高密度焦点式超音波(High-Intensity Focused Ultrasound)を用い、皮膚の深層にあるSMAS筋膜や真皮層に熱エネルギーを与え、コラーゲンの収縮と産生を促します。

【HIFUの新たな可能性?】紫外線ダメージで変性したコラーゲン配列を正常に戻す研究報告
HIFUは主にたるみ治療に用いられますが、近年、肌質の改善にも寄与する可能性が示唆されています。

2022年に発表された動物実験(マウス)の研究では、紫外線によってダメージを受け、配列が乱れてしまった皮膚のコラーゲン線維が、HIFUを照射することによって、より正常に近い規則正しい配列パターンに再構築されることが報告されました(文献13)。

これは、HIFUが単にコラーゲンを「増やす」だけでなく、紫外線ダメージによって「変性したコラーゲンの質的な改善」にも貢献しうる可能性を示唆しています。

まだ動物実験の段階であり、ヒトでの効果はさらなる検証が必要ですが、HIFUが光老化によって損なわれた肌の根本的な構造を修復するエイジングケア治療となる可能性を秘めているかもしれません。


3-6-4.フラクショナルレーザー

コラーゲン生成促進 皮膚に微細な熱ダメージを与えることで創傷治癒反応を引き起こし、コラーゲンやエラスチンの再構築を促します。肌のハリ、毛穴の開き、小ジワなどの改善が期待できます。


4. 自分に合ったハリケアを見つけるためのステップ



この章では、ご自身に合ったハリケアを見つけ、効果的に実践していくための具体的なステップをご紹介します。


4-1. 原因を理解することから始めよう

まず最も大切なのは、ご自身のハリ不足が主に何によって引き起こされているのか、その原因を冷静に分析し理解することです。

例えば、「日焼け止めを塗る習慣があまりない」、「保湿ケアは化粧水だけで済ませてしまうことが多い」、「甘いものや炭水化物が大好き」、「睡眠時間が不規則で短い」など、ご自身の生活習慣やスキンケアを振り返り、思い当たる原因をピックアップしてみましょう。原因が明確になることで、対策の優先順位が見えてきます。


4-2. できる対策から一つずつ取り入れる

原因の見当がついたら、次は対策です。しかし、一度に全ての対策を完璧に行おうとすると、負担が大きくなり長続きしません。大切なのは、ご自身にとって無理なく「これならできそう」と思える対策から一つずつ、確実に取り入れていくことです。

例えば、紫外線対策であれば、「まずは毎日、顔と首に日焼け止めを塗ることから始める」、乾燥対策であれば、「今使っている化粧水に加えて、保湿効果の高いセラミド配合の美容液をプラスしてみる」など、具体的な行動目標を立てると良いでしょう。


4-3. 専門家(美容皮膚科医など)への相談も視野に

セルフケアだけではなかなか改善が見られない場合や、より積極的なケアを求める場合は、美容皮膚科医などの専門家に相談してみてはどうでしょうか。

ただし、美容医療は効果が期待できる反面、リスクやダウンタイムも伴います。どのような治療が自分に適しているのか、費用はどのくらいかなど、納得いくまで説明を受け、信頼できる医師のもとで治療を選択することをお勧めします。



まとめ:今日から始めて、弾むようなハリ肌を手に入れよう!

「昔のようなハリはもう戻らないのでは…」と諦めかけていた方もいらっしゃるかもしれませんが、この記事を通して、「肌のハリ」は正しい知識と適切なケアによって取り戻せる可能性があることをご理解いただけたのではないでしょうか。

ご自身の肌状態とハリ不足の主な原因を把握し、日々のスキンケアや生活習慣を見直すことが、ハリを取り戻すための大切な第一歩です。そして、レチノイドやビタミンC誘導体といった有効成分を取り入れたり、紫外線対策を徹底したりと、できることから一つひとつ実践していくことが重要です。

しかし、セルフケアだけでは改善が難しい、あるいはより早く確実な効果を実感したいという方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、ぜひ美容皮膚科にご相談ください。自己判断でのケアは、時に遠回りになってしまうこともあります。

当クリニックでは、お一人おひとりの肌質やお悩みを丁寧にカウンセリングし、医学的根拠に基づいた診断のもと、あなたに最適な「肌のハリ」改善プランをご提案いたします。あなたの「ハリを取り戻したい」という想いに、全力でお応えします。

 

クリニックでのハリを出す治療

 

取り扱いレチノイド




(参考文献)
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Dermatol Ther.
2004;17 Suppl 1:43-48

2) The possible involvement of skin dryness on alterations of the dermal matrix
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3) Dry skin management: practical approach in light of latest research on skin structure and function
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4) Research Advances on the Damage Mechanism of Skin Glycation and Related Inhibitors
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7) The Facial Aging Process From the "Inside Out"
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8) Retinoids in the treatment of skin aging: an overview of clinical efficacy and safety
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10) Peptides: Emerging Candidates for the Prevention and Treatment of Skin Senescence: A Review
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2025;15(1):88

11) 筋力トレーニングが美肌に貢献することを世界で初めて報告
立命館大学 NEWS & TOPICS
https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=3229

12) Short-term skin reactions and changes in stratum corneum following different ways of facial sheet mask usage
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J Tissue Viability
2024;33(4):831-839

13) Rejuvenation of photoaged aged mouse skin using high-intensity focused ultrasound
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J Plast Reconstr Aesthet Surg
2022;75(10):3859-3868



 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月27日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.05.20更新

 

【目次】

1: そもそも「美白」とは?人はどこまで「白く」なれるのか?
2: 肌が黒くなる主な原因を理解しよう
3: 【今日からできる】肌を白くするための具体的な方法
4: 【より効果を実感したい】美容内服薬・美容施術
5: 【Q&A】肌を白くする方法に関するよくある疑問


人は白くなければ気が済まないのか?

有色人種が抱く白い肌への憧れは、時に常軌を逸した行動に走らせます。美白剤を使いすぎて肌に障害を来たしたり、意味のない美白点滴に群がったり・・人の「美白」への渇望を表す例は世界中に転がっています。

つくづく「美白」とは呪われた言葉だと思います。


今回はそんな呪いの言葉「美白」に科学的に迫ります。



1:そもそも「美白」とは?人はどこまで「白く」なれるのか?


「美白」という言葉を聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?透き通るような白い肌、シミやくすみのない均一な肌色など、多くの方が憧れる肌の状態かもしれません。

しかし、実は「美白」という言葉には、私たちが普段イメージするものとは少し異なる意味合いや、長い歴史的背景、そして肌の色に関する基本的な知識が関わっています。

この記事では、まず「美白」という言葉の成り立ちから、まず「美白」という言葉の成り立ちから、現代における定義、そして人はどこまで「白く」なれるかについて、詳しく掘り下げます。


1-1. 「美白」という言葉の歴史:古くから続く美への探求

「美白」という言葉の歴史は意外と古く、江戸時代には「美白散」という名の化粧品が存在していた記録があります。これは、当時から白い肌が美しいとされ、人々がそのための努力をしていたことを示唆しています。

さらに明治時代に入ると、「美白」は美容業界の専門用語として使われるようになり、より一般的な美意識として定着していったと考えられます。

このように、白い肌への憧れは一朝一夕に生まれたものではなく、日本の文化の中で長い時間をかけて育まれてきた価値観の一つと言えるでしょう。


1-2. 厚生労働省が定める「美白」の効能とは?:誤解されやすい本来の意味

現代において「美白化粧品」や「美白ケア」といった言葉をよく耳にしますが、実は「美白」という言葉は、厚生労働省が医薬部外品の効能として認めているものです(文献1)。

そして、その本来の意味は「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」というもの。つまり、今ある肌の色を白くするのではなく、将来的にシミやそばかすができるのを予防するという意味合いが強いのです。

もちろん、メラニンの生成が抑制されれば、結果的に肌の透明感が上がったり、トーンが明るく感じられたりすることは期待できます。しかし、「肌を漂白して真っ白にする」といった変化をもたらすものではないという点は、正しく理解しておく必要があります。


1-3. 海外での「美白」表現について:whitening だけじゃない?

日本で「美白」というと、英語では whitening という単語が思い浮かぶかもしれません。しかし、欧米諸国、特に多民族国家においては、 whitening という言葉は肌の色に関する差別的な意味合いを含む可能性があり、使用には注意が必要です。

そのため、海外の化粧品などでは、肌のトーンを明るく見せる、輝かせる、といったニュアンスで lightening(ライトニング)や brightening(ブライトニング)といった言葉が使われることが一般的です。

これは、肌の色そのものを変えるのではなく、肌の質感や透明感を高めることで、より健康的で明るい印象の肌を目指すという考え方に基づいています。


1-4. 人種による肌の色の違い:一番肌が白い人種は?

ご存知の通り、人の肌の色は人種によって様々です。この違いは、主に皮膚に含まれるメラニン色素の量によって決まります。

メラニン色素は、紫外線から肌細胞を守る役割があり、日差しの強い地域に住む人々はメラニン色素が多く、肌の色が濃くなる傾向があります。逆に、日差しの弱い地域に住む人々はメラニン色素が少なく、肌の色が薄くなる傾向にあります。

一般的に、世界で最も肌の色が白いとされるのは、北ヨーロッパの民族です。具体的には、スカンジナビア半島(ノルウェー、スウェーデン、デンマークなど)やバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、アイルランド、スコットランドなどに住む人々が挙げられます。


北欧の女性
画像:世界で最も肌の色が白いとされる北欧の女性

これらの地域は高緯度に位置し、一年を通して日照時間が短く、紫外線量も少ないため、メラニン色素を多く生成する必要がありませんでした。むしろ、少ない紫外線でも効率よく体内でビタミンDを生成するために、明るい肌の色が適応的な形質として進化してきたと考えられています。

このように、肌の色は単なる見た目の問題ではなく、人類がそれぞれの環境に適応してきた結果であり、非常に多様性に富んでいます。


1-5. 人はどこまで白くなれる?自分の本来の肌色を知る方法

「美白ケアを頑張れば、どこまでも肌は白くなるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、残念ながら私たちの肌の色には、遺伝的に決まった限界があります。

自分の本来の肌色、つまり努力によって目指せる白さの限界とは、紫外線をほとんど浴びていない体の部分の肌色のこと。例えば、二の腕の内側や太ももの内側などは、日常的に衣服で覆われており、太陽光の影響を受けにくいため、その人の遺伝的な肌色に近いと言われています。お風呂に入る際などに、全身を鏡で見て、最も白い部分の色が、あなたが目指せる肌の白さの目安となります。


この記事の目的は、どうすれば自分の限界の「白さ」に近づけるか?です。その前に、次章ではまず肌が黒くなる主な原因について詳しく見ていきます。

 





メラニンを生成する刺激
イラスト:メラニン生成を刺激する要因


2:肌が黒くなる主な原因を理解しよう



今度は、多くの方が美白ケアを始めるきっかけとなる「肌が黒くなる、あるいは黒く見える」主な原因について、詳しく解説していきます。原因を正しく理解することが、効果的な対策への第一歩です。


2-1. 肌が黒くなるメカニズム:メラニンの生成と蓄積

私たちの肌が黒くなる最も大きな要因は、「メラニン」という色素です。メラニンは、肌の表皮の最下層にあるメラノサイト(色素細胞)という細胞で作られます。

実は、メラニンは私たちの肌を様々な外部刺激、特に紫外線によるダメージから守るために生成される防御物質です。メラニンが生成されることで、紫外線が肌の奥深くまで侵入し、細胞の核の中にあるDNAを傷つけるのを防いでいます。いわば、肌の天然の日傘のような役割を果たしているのです。

しかし、過剰な刺激を受け続けると、メラノサイトはメラニンを大量に作り出し、それが肌の細胞に蓄積されていきます。この蓄積されたメラニンが、シミやそばかす、そして肌全体の色が濃くなる原因となるのです。


2-2. 肌を黒くする最大の原因~紫外線~

肌を黒くする最大の外的要因は、太陽光に含まれる「紫外線」です。紫外線には主にUVA(紫外線A波)とUVB(紫外線B波)の2種類があり、それぞれ肌への影響が異なります。

UVB(紫外線B波): 肌の表面に強く作用し、短時間で赤みやヒリヒリとした炎症(サンバーン)を引き起こします。メラノサイトを直接刺激し、メラニンの生成を活発化させるため、シミやそばかすの主な原因となります。エネルギーが強く、細胞のDNAを傷つける作用も強いため、皮膚がんのリスクを高めることも知られています。

UVA(紫外線A波): (UVBほど急激な変化は引き起こしませんが、波長が長く、肌の奥深く(真皮層)まで到達します。じわじわと肌にダメージを与え(サンタン)、メラニンの生成を促進するだけでなく、肌のハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチンを変性させ、シワやたるみといった肌老化(光老化)の原因にもなります。UVAは雲や窓ガラスも透過するため、曇りの日や室内でも対策が必要です。

これらの紫外線によるダメージが長年にわたって蓄積されると、肌は黒くなるだけでなく、様々な肌トラブルを引き起こしやすくなります。


2-3. 紫外線以外にメラニン合成を促進する要因

紫外線以外にも、メラノサイトを刺激し、メラニンの合成を促す要因があります。これらには、活性酸素種、一酸化窒素、過酸化脂質などが挙げられます。
大気汚染物質(PM2.5、排気ガスなど)や精神的なストレスなども活性酸素種を発生させ、酸化ストレスを引き起こす要因となり得ます。つまり、現代社会の生活環境そのものが、肌を黒くするリスクと隣り合わせであると言えるでしょう。特に、酸化ストレスはメラニン生成を促すだけでなく、肌のくすみや老化も加速させます。


2-4. メラニン以外に肌が暗く見える原因:

肌が暗く見える原因は、メラニンの増加だけではありません。様々な要因で生じる肌のトーンダウンも、肌を暗い印象に見せる要因となります。
角質の蓄積による肌表面のごわつき: 肌のターンオーバーが乱れると、古い角質が剥がれ落ちずに肌表面に蓄積し、厚くなります。これにより、肌の透明感が失われ、ごわついてくすんで見えます。

血行不良による顔色の悪さ: 冷えや睡眠不足、ストレスなどにより血行が悪くなると、肌に十分な酸素や栄養が届かず、顔色が悪く見えたり、青黒くくすんだりします。

乾燥による肌のバリア機能低下とキメの乱れ: 肌が乾燥すると、キメが乱れて光が均一に反射しなくなり、影ができてくすんで見えます。また、バリア機能が低下し、外部刺激を受けやすくなることで、さらなる肌トラブルを招く可能性もあります。

巡りの滞りによる影響と透明感の低下: 例えば、リンパの流れや血行が滞ると、体内の不要な水分や細胞活動に伴う代謝産物などがスムーズに排出されにくくなることがあります。このような状態は、肌のすっきりとした印象を損ない、透明感が失われてどんよりとくすんで見える一因となる可能性があります。


2-5. 肌への摩擦や刺激による色素沈着

洗顔時のゴシゴシ洗い、タオルでの強い摩擦、無意識にニキビや肌荒れを触る癖なども、肌への慢性的な刺激となります。このような刺激は、肌内部で炎症を引き起こし、その結果としてメラノサイトを活性化させ、炎症後の色素沈着を招き、肌を部分的に黒ずませる原因となることがあります。特に、ニキビ跡の色素沈着などが代表的です。


2-6. 生活習慣の乱れとターンオーバーの乱れ

健康的な肌を保つためには、規則正しい生活習慣が欠かせません。睡眠不足、栄養バランスの偏った食事、過度なストレス、喫煙、運動不足といった生活習慣の乱れは、ホルモンバランスの乱れや血行不良、免疫力の低下などを引き起こします。

これらの影響は、肌の「ターンオーバー」の乱れに直結します。肌は、約28日周期(年齢や肌状態により変動)で新しい細胞に生まれ変わる仕組みを持っています。このターンオーバーが正常に機能していれば、生成されたメラニンや古い角質は自然に排出されます。しかし、生活習慣の乱れによってターンオーバーが滞ると、メラニンや古い角質が排出されずに肌内部に蓄積し、シミやくすみ、肌のごわつきの原因となるのです。また、肌のバリア機能が低下し、乾燥や外部刺激に対しても弱くなってしまいます。


2-7. 糖化とカルボニル化による黄ぐすみ

肌の「黄ぐすみ」も、肌全体を暗く見せ、疲れた印象を与える要因の一つです。これは主に「糖化」や「カルボニル化」といった体内の化学反応が関わっています(文献2)。


糖化: 食事などから摂取した余分な糖分が、体内のタンパク質(コラーゲンなど)と結びつき、AGEs(糖化最終生成物)という茶褐色の老化物質を生成する反応です。AGEsが肌のコラーゲンなどに蓄積すると、肌が黄色くくすみ、ハリや弾力も失われます。

カルボニル化: 脂質の酸化によって生じるアルデヒドなどがタンパク質と反応し、ALEs(カルボニル化最終生成物)という物質を生成する反応です。これも肌の黄ぐすみや弾力低下の原因となります。
パンや甘いものの過剰な摂取、揚げ物などの酸化した脂質の摂取といった食生活の乱れは、これらの反応を促進する可能性があります。


2-8. 遺伝的要因(地黒)

生まれつき肌の色が濃い、いわゆる「地黒」の方もいます。これは、遺伝的にメラニンを生成する能力が高い、あるいはメラニンの量が多い体質であるためです。この場合、美白ケアで目指せる白さには限界がありますが、紫外線対策や適切なスキンケアによって、シミやそばかすを防ぎ、肌の透明感を高めることは可能です。

これらの原因を理解することで、日々の生活の中でどのような点に注意し、どのようなケアを行えば良いのかが見えてくるはずです。次回は、これらの原因を踏まえた上で、今日から実践できる具体的な美白方法についてご紹介します。


一家で日焼け止め
画像:一家で日焼け止め!

 

3:【今日からできる】肌を白くするための具体的な方法



ここでは、毎日のスキンケアと生活習慣の見直しによって、今日から取り組める肌を白くするための方法をご紹介します。


3-1. スキンケア編:正しいケアで肌の透明感を引き出す

毎日のスキンケアは、美しく健やかな肌を目指す上での基本です。特に洗顔と保湿、そして目的に合った成分の活用が鍵となります。


3-1-1. 洗顔:基本は朝と夜の2回、優しく丁寧に

米国皮膚科学会(AAD)は、肌のタイプや状態に応じた洗顔を推奨しており、一般的には1日2回(朝と夜)および汗をかいた後の洗顔を基本としています(文献3)。


洗顔料の選び方: 自分の肌質(乾燥肌、脂性肌、混合肌、敏感肌など)に合った、マイルドで低刺激性の洗顔料を選びましょう。アルコールフリーや無香料の製品も、肌への負担を軽減する選択肢となります。

洗い方のポイント
摩擦レス洗顔: 洗顔料をしっかりと泡立て、泡をクッションにして肌の上を滑らせるように優しく洗います。ゴシゴシこする行為は、肌への刺激となり、色素沈着の原因にもなりかねません。

ぬるま湯で: 熱すぎるお湯は肌の必要な皮脂まで奪い乾燥を招き、冷たすぎる水は毛穴の汚れが落ちにくいことがあります。32~34℃程度のぬるま湯が推奨されます。

すすぎは丁寧に: 洗顔料が残らないよう、フェイスラインや髪の生え際まで丁寧にすすぎます。

清潔なタオルで優しく押さえる: 清潔なタオルを使い、水分を吸い取るように優しく押さえます。ここでも摩擦は禁物です。


3-1-2. 保湿:洗顔後はすぐに、たっぷりと

洗顔後の肌は水分が蒸発しやすいため、すぐに保湿ケアを行うことが重要です。

基本的なステップ
化粧水(ローション): まずは化粧水で肌に水分を補給し、肌を柔らかく整えます。コットンまたは清潔な手で、優しくパッティングするようになじませましょう。

美容液(セラム): 美白有効成分など、目的に合わせた美容液を使用する場合は、化粧水の後に使います。

乳液(ミルク)・クリーム: 最後に乳液やクリームで油分を補い、水分の蒸発を防ぎ、肌のバリア機能をサポートします。乾燥が気になる場合は、より保湿力の高いクリームを選びましょう。

乾燥対策アイテム: 冬場やエアコンの効いた部屋など、特に乾燥が気になる場合は、保湿クリームを重ね付けしたり、加湿器を使用して室内の湿度を適切に保つ(一般的に40~60%が目安)ことも効果的です。


3-1-3. 美白有効成分配合のスキンケアアイテムを取り入れる

厚生労働省が承認した「美白有効成分」を配合した医薬部外品(薬用化粧品)は、「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」効果が期待できます。

ビタミンC誘導体: メラニンの生成を抑制する作用や抗酸化作用が期待されます。多くの研究でその効果が示唆されていますが、製品の濃度や安定性、肌への浸透性によって効果は異なります(文献4)。

アルブチントラネキサム酸: これらも代表的な美白有効成分です。アルブチンはメラニン合成酵素であるチロシナーゼの働きを阻害する作用が、トラネキサム酸はメラノサイトの活性化を抑える作用や抗炎症作用が知られています。これらの成分についても、その効果を示唆する研究報告がありますが、効果には個人差があります(文献5,6)。

フラーレン: 強力な抗酸化作用を持つ成分として知られ、肌の酸化ストレスを軽減することで間接的にメラニン生成を抑制する効果が期待されています。ただし、美白有効成分として医薬部外品の承認を得ているものではなく、化粧品成分としての配合となります。その効果については、基礎研究レベルでの報告はありますが、ヒトでのエビデンスはまだ十分とは言えません。

(注意点) これらの成分は、あくまでメラニンの生成を「抑える」ものであり、肌の色そのものを漂白するものではありません。また、効果の現れ方には個人差があります。


3-1-4. 徹底的な紫外線対策を一年中行う

紫外線はシミやそばかす、肌の黒化の最大の原因です。WHOや米国皮膚科学会(AAD)などの専門機関は、季節や天候に関わらず、年間を通じた紫外線対策の重要性を強調しています(文献7,8)。

日焼け止めは毎日塗る習慣を

SPF/PA値の目安と使い分け

SPF:UVBを防ぐ効果の指標。日常生活ではSPF15~30程度、屋外での軽いスポーツやレジャーではSPF30~50、炎天下でのマリンスポーツなどではSPF50+が目安です。

PA:UVAを防ぐ効果の指標。「+」の数が多いほど効果が高く、日常生活ではPA+~++、屋外活動ではPA+++~++++が推奨されます。

こまめな塗り直しが重要: 汗や摩擦で落ちてしまうため、2~3時間おきを目安に塗り直しましょう。

十分な量を使用する: 顔全体であれば、ティースプーン1杯程度が目安です。

物理的な防御も併用: 帽子(つばの広いもの)、長袖・長ズボンの衣服(色の濃いもの、目の詰まった生地が効果的)、日傘、UVカット機能のあるサングラスなどで肌の露出を極力避けましょう。

紫外線の強い時間帯を避ける: 一般的に午前10時~午後2時頃は紫外線量が多いため、この時間帯の長時間の外出は可能な範囲で避けるのが賢明です。

※紫外線を全く浴びないことのリスク: 紫外線は体内でビタミンDを合成するために必要です。過度な紫外線対策はビタミンD不足を招く可能性もあるため、食事からの摂取や、必要に応じてサプリメントの利用も考慮し、バランスを考えることが大切です。


3-2. 生活習慣編:体の内側から肌をケア

美しい肌は、外側からのケアだけでなく、内側からのアプローチも不可欠です。


3-2-1. 栄養バランスの取れた食事を心がける

肌の健康を維持し、透明感を引き出すためには、バランスの取れた食事が基本です。

美白効果が期待できるとされる栄養素と食品(エビデンスについて)

ビタミンC、E、A、B群: これらは肌の健康維持に不可欠なビタミンです。ビタミンCやEには抗酸化作用があり、メラニン生成の抑制や肌のダメージ軽減に関与するとされています。多くの研究で皮膚への有益性が示唆されていますが、特定の食品を摂取することで「直接的に肌が白くなる」というハッキリしたエビデンスはありません。バランス良く摂取することが重要です。
(例:ビタミンCはパプリカ・ブロッコリー・柑橘類、ビタミンEはナッツ類・植物油、ビタミンA(βカロテン)は緑黄色野菜、B群は肉類・魚介類・豆類など)

ポリフェノール、リコピン: これらも強力な抗酸化作用を持つ成分で、紫外線によるダメージから肌を守る効果が期待されています。
(例:ポリフェノールは緑茶・赤ワイン・カカオ、リコピンはトマトなど)

これらの成分の経口摂取による美白効果に関するヒトでの臨床研究は存在しますが、結果は様々であり、さらなる研究が必要です。

L-システイン: メラニンの生成を抑制する効果や抗酸化作用が期待され、医薬品やサプリメントに利用されています。一部の研究では有効性が示唆されています(文献9)が、食事から大量に摂取することは難しく、サプリメント等での摂取においても効果や安全性については専門家への相談が推奨されます。

亜鉛: 皮膚のターンオーバーをサポートするミネラルです。

発酵食品: 腸内環境を整えることで、間接的に肌の健康に寄与する可能性がありますが、直接的な美白効果に関するエビデンスは十分ではありません。

抗酸化作用の高い食品を積極的に: 上記のビタミンC、E、ポリフェノール、リコピンなどを含む野菜や果物を積極的に摂りましょう。

コラーゲンを増やすとされる食品: コラーゲンを多く含む食品(手羽先、牛すじなど)や、体内でコラーゲン合成を助けるビタミンCを一緒に摂ることが推奨されることがありますが、美白効果の明確なエビデンスは確立されていません。

糖化を防ぐ食事法: 急激な血糖値の上昇を抑える低GI食品を選んだり、野菜から先に食べる「ベジファースト」を心がけたりすることは、AGEs(糖化最終生成物)の生成を抑え、黄ぐすみを防ぐのに役立つと考えられています。この分野の研究は進んでいますが、直接的な美白効果としてのエビデンスはまだ構築中です。

脂質の多い食べ物を制限する: 過剰な脂質、特に酸化した脂質の摂取は、肌の炎症やくすみの原因となる可能性があります。

水分をしっかり摂取する:体内の水分が不足すると肌も乾燥しやすくなります。しかし、水分摂取が直接的に肌を白くするというエビデンスはありません。


3-2-2. 質の高い睡眠を確保する

睡眠中に分泌される成長ホルモンは、肌のターンオーバー(新陳代謝)を促し、日中に受けたダメージを修復するのに役立ちます。

睡眠とターンオーバーの関係: 質の高い睡眠は、正常なターンオーバーを維持し、メラニン色素の排出をスムーズにするために重要です。

効果的な睡眠: 一般的に6~8時間の睡眠が推奨されますが、必要な睡眠時間には個人差があります。就寝前のカフェイン摂取を避ける、寝室の環境を整える(静かで暗い、快適な温度・湿度)など、睡眠の質を高める工夫をしましょう。睡眠と美白効果の直接的な関連を示す強固なエビデンスはありませんが、肌の健康維持に睡眠が不可欠であることは広く認識されています。


3-2-3. 適度な運動を取り入れる

適度な運動は血行を促進し、肌の隅々まで栄養と酸素を届け、くすみの改善やターンオーバーの正常化に繋がります。

血行促進とくすみ改善: ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、無理のない範囲で続けられる運動を取り入れましょう。

マイオネクチンとメラニン生成抑制の関係: 近年、運動によって筋肉から分泌される「マイオカイン」という物質群の中に、メラニンの生成を抑制する可能性のある「マイオネクチン」などが含まれるという基礎研究の報告があります(文献10)。しかし、これがヒトにおいてどの程度の美白効果をもたらすかについては、まだ研究段階であり、エビデンスは十分ではありません。


3-2-4. ストレスを上手に管理する

過度なストレスはホルモンバランスを乱し、自律神経の不調を引き起こし、肌のターンオーバーの乱れや皮脂の過剰分泌、バリア機能の低下などを招くことがあります。これらが間接的にくすみや肌荒れの原因となることがあります。

リラックスできる時間を作る: 趣味の時間を持つ、深呼吸をする、瞑想する、自然に触れるなど、自分に合ったリラックス方法を見つけて実践しましょう。ストレス管理と美白効果の直接的なエビデンスは限定的ですが、肌の健康全般に良い影響を与えると考えられます。


3-2-5. 喫煙や過度な飲酒を控える

喫煙: 血管を収縮させて血行を悪化させ、肌に必要な酸素や栄養素の供給を妨げます。また、大量の活性酸素を発生させ、ビタミンCを破壊し、メラニンの生成を促進する可能性も指摘されています。

過度な飲酒: 脱水状態を引き起こし肌を乾燥させたり、肝機能に負担をかけて体内の解毒作用を低下させたりすることで、間接的に肌の状態を悪化させる可能性があります。


これらの方法は、一朝一夕に効果が出るものではありませんが、根気強く続けることで、肌本来の透明感を引き出し、健やかで明るい印象の肌へと導いてくれるでしょう。次回は、より効果を実感したい方向けの美容内服薬や美容施術について解説します。


近未来の美容クリニックでの肌治療
画像:近未来の美容クリニックでの肌治療

 

4:【より効果を実感したい】美容内服薬・美容施術



日々のスキンケアや生活習慣の改善に加えて、「もっと積極的に美白を目指したい」、「より確かな効果を実感したい」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。そのような方々に向けて、ここでは美容内服薬による内側からのケアと、美容クリニックで受けられる専門的な施術についてご紹介します。

4-1. 美容内服薬で内側からアプローチ

体の内側から美白にアプローチする方法として、美容内服薬の活用があります。これらは、肌の健康をサポートし、シミやそばかすの原因となるメラニンの生成を抑制したり、肌のターンオーバーを整えたりする効果が期待される成分を含んでいます。


4-1-1. 市販のビタミン剤と皮膚科処方薬の違い

まず、市販のビタミン剤と美容皮膚科などで処方される医薬品には違いがあることを理解しておきましょう。

市販のビタミン剤(医薬部外品や栄養機能食品など)

比較的広範囲な方を対象としており、安全性が重視されているため、有効成分の含有量が処方薬に比べて少ない場合があります。
ドラッグストアなどで手軽に購入できます。
効能・効果の表現が医薬品に比べて穏やかです。

皮膚科処方薬(医療用医薬品)

医師の診断に基づいて、個々の症状や体質に合わせて処方されます。
有効成分の含有量が多く、より高い効果が期待できる一方、副作用のリスクも考慮する必要があります。
医師の管理下で使用されるため、安全かつ効果的な治療が期待できます。

美白を目的とした内服薬に関しても、自己判断で市販薬を長期的に使用するよりも、一度医師に相談し、ご自身の肌状態や体質に合ったものを処方してもらう方が、より安全で効果的です。


4-1-2. 主な内服薬成分とその効果

美容皮膚科で美白目的に処方される主な内服薬の成分と、期待される効果について解説します。

シナール(アスコルビン酸・パントテン酸カルシウム配合剤)

⚪️主成分と働き:アスコルビン酸(ビタミンC)とパントテン酸カルシウム(ビタミンB5)を配合した薬です。ビタミンCには、メラニン色素の生成を抑制する作用、できてしまったメラニンを還元(薄くする)する作用、コラーゲンの生成を助ける作用、抗酸化作用などがあります。ビタミンB5は、ビタミンCの働きを助けるほか、皮膚や粘膜の健康維持、ストレスへの抵抗力を高める効果が期待されます。

⚪️期待される効果:シミ・そばかすの改善、色素沈着の予防、肌のハリ向上、抗酸化による肌老化の抑制。

⚪️エビデンスについて:ビタミンCの経口摂取による美白効果(メラニン抑制、色素沈着改善)については、多くの基礎研究や一部の臨床研究でその有効性が示唆されています(文献4)。

パントテン酸も皮膚の健康維持に重要ですが、美白への直接的な強いエビデンスはビタミンCほど多くはありません。

これらは皮膚科診療において広く用いられており、一般的に推奨される治療法の一つです。


ハイチオール(L-システイン)

⚪️主成分と働き:L-システインはアミノ酸の一種で、体内で代謝されると抗酸化物質であるグルタチオンの生成を促進します。また、メラニン生成に関わる酵素チロシナーゼの活性を阻害する作用や、肌のターンオーバーを正常化する働き、過剰なメラニンの排出を促す効果が期待されます。

⚪️待される効果:シミ・そばかす・日やけなどの色素沈着症の改善、肌荒れ、ニキビの改善。

⚪️エビデンスについて:L-システインの経口摂取によるシミ・そばかすへの効果については、日本国内で医薬品として承認されており、臨床試験においても一定の有効性が示されています。肌のターンオーバーを整えることによる間接的な美白効果も期待できます(文献9)。


グルタチオン

⚪️主成分と働き:グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸からなるペプチドで、私たちの体内に広く分布し、強力な抗酸化作用を持つ成分です。肝臓の解毒作用を高める働きや、メラニン生成抑制作用が注目されています。

⚪️期待される効果(内服・点滴):美白効果、シミ・くすみの改善、肝機能改善、抗酸化作用によるアンチエイジング効果などが謳われています。

⚪️エビデンスについて(特に美白効果):
内服薬:グルタチオンの経口摂取による美白効果については、いくつかの小規模な臨床研究で肌のトーン改善を示唆する報告がありますが、現時点ではエビデンスは十分とは言えません。経口摂取されたグルタチオンの多くは消化管でアミノ酸に分解されるため、そのままの形で吸収されて効果を発揮するかどうかについては議論があります。一般的に美白効果を期待して推奨されることがありますが、確立された治療法とまでは言えません。

点滴・注射:点滴による投与は経口摂取よりも血中濃度を高く上げることができます。しかし、グルタチオン点滴による美白効果を裏付ける質の高い大規模な臨床研究は依然として不足しており、医学的エビデンスは確立されていません。一部のクリニックでは人気の施術ですが、効果の持続性や最適な投与量、長期的な安全性についてはさらなる検証が必要です。副作用として、稀に発疹、食欲不振、吐き気などが報告されています。また、アナフィラキシーショックのような重篤な副作用のリスクもゼロではありません(文献11,12)。
肝機能改善薬としては医薬品として承認されていますが、美白目的での使用は適応外使用です。


ユベラ(トコフェロール酢酸エステル)

⚪️主成分と働き:トコフェロール酢酸エステルはビタミンEの一種です。強力な抗酸化作用を持ち、血行を促進する働きがあります。活性酸素による細胞のダメージを防ぎ、肌のバリア機能をサポートします。

⚪️期待される効果:血行促進によるくすみの改善、肌荒れの改善、抗酸化作用による肌老化の予防。シミやそばかすを直接的に薄くする効果よりも、肌全体のコンディションを整えることで美白をサポートする役割が期待されます。

⚪️エビデンスについて:ビタミンEの抗酸化作用や血行促進作用は広く知られており、皮膚の健康維持に貢献します。他の美白成分と併用することで、相乗効果が期待されることもあります。単独での強力な美白効果を示すエビデンスは限定的ですが、肌の保護や老化予防の観点から有用と考えられています。

これらの内服薬は、単独で用いるよりも、個々の肌状態や目的に合わせて複数を組み合わせて処方されることが一般的です。必ず医師の診察を受け、適切な指導のもとで使用するようにしましょう。


4-2.美容クリニックでの施術

よりスピーディーに、そして目に見える効果を実感したい場合には、美容クリニックでの専門的な施術が選択肢となります。ここでは代表的な美白治療をご紹介します。


4-2-1.ケミカルピーリング:古い角質除去とターンオーバー促進

◉施術内容:肌の表面に専用の薬剤(グリコール酸、サリチル酸、乳酸など)を塗布し、古くなった角質や毛穴の汚れを優しく取り除く治療です。これにより、乱れた肌のターンオーバーを整え、新しい皮膚の再生を促します。

◉期待される効果:くすみの改善、肌の透明感アップ、ごわつきの改善、ニキビ・ニキビ跡の改善、毛穴の開きの改善、小じわの改善など。メラニンを含む古い角質が剥がれ落ちることで、肌のトーンが明るくなる効果も期待できます。


4-2-2. レーザー治療

◉施術内容:特定の波長のレーザー光を照射し、シミやそばかすの原因となるメラニン色素を選択的に破壊したり、肌の深層に働きかけてコラーゲンの生成を促したりする治療です。シミの種類や深さ、肌質によって様々な種類のレーザー(Qスイッチレーザー、ピコレーザーなど)が使い分けられます。

◉期待される効果:ピンポイントのシミ・そばかす・あざの除去、肝斑の改善(レーザートーニングなど)、肌全体のトーンアップ、毛穴の引き締め、肌のハリ感アップなど。


4-2-3. 光治療(IPL):シミやくすみにアプローチ

◉施術内容:IPL(Intense Pulsed Light)という幅広い波長の光を肌に照射する治療です。レーザーのように単一の波長ではなく、複数の波長の光を組み合わせることで、シミ・そばかす、赤ら顔、くすみ、小じわ、毛穴の開きなど、様々な肌トラブルに同時にアプローチできます。

◉期待される効果:シミ・そばかす・くすみの改善、肌全体のトーンアップ、赤ら顔の改善、毛穴の引き締め、肌のハリ・ツヤ感アップなど。比較的ダウンタイムが少なく、マイルドな治療法です。


4-3. 美容施術を検討する際の注意点やクリニック選びについて

美容内服薬や美容施術は、セルフケアだけでは得られにくい効果が期待できる一方で、いくつかの注意点があります。

◎効果の個人差と限界:肌質や症状、生活習慣などにより、効果の現れ方や程度には個人差があります。また、どんな治療法でも万能ではなく、限界があることを理解しておきましょう。

◎リスク・副作用:全ての医療行為には、何らかのリスクや副作用の可能性があります。施術前に医師から十分な説明を受け、理解・納得した上で治療を選択することが大切です。

◎ダウンタイム:施術によっては、赤み、腫れ、かさぶた、内出血などが生じ、日常生活に一時的な制約が出る「ダウンタイム」が必要な場合があります。

◎費用:美容医療は自由診療が基本となるため、保険適用外で費用が高額になることがあります。治療内容、回数、費用について事前にしっかりと確認しましょう。

◎継続の必要性:一度の治療で永続的な効果が得られるとは限りません。効果を維持するためには、定期的な治療やメンテナンスが必要となる場合があります。


美容内服薬や美容施術は、正しく理解し、適切に活用することで、あなたの美白ケアを力強くサポートしてくれるでしょう。しかし、最も大切なのは、ご自身の肌としっかり向き合い、専門家とよく相談しながら、納得のいく方法を選ぶことです。


完璧なUVケア
画像:完璧なUVケア

 

5:【Q&A】肌を白くする方法に関するよくある疑問




美白ケアを始めると、「本当に効果があるの?」、「どれくらいで白くなるの?」など、様々な疑問が浮かんできますよね。ここでは、お客様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します。

Q1. 地黒でも肌は白くなりますか?

A1. 生まれ持った肌の色(スキンタイプ)を遺伝的な限界以上に白くすることは難しいと言えます。しかし、ご自身が本来持っている肌の明るさまでトーンアップすることは十分に可能です。

多くの方が「地黒」と感じている肌の色は、実は日常的に浴びる紫外線による日焼けや、摩擦などの刺激による色素沈着が影響している場合があります。

【地黒か日焼けかを見分けるポイント】
紫外線をほとんど浴びていない二の腕の内側やお腹、太ももの内側などの肌の色と、顔や腕など露出部の肌の色を比べてみましょう。もし内側の肌の方が明るい場合は、日焼けによる影響で肌が暗く見えている可能性が高く、適切な紫外線対策や美白ケアによって、その明るさに近づける可能性があります。


Q2. 生まれつき肌が黒いのはなぜですか?

A2. 肌の色は、主に皮膚に含まれる「メラニン色素」の量と種類によって決まります。このメラニンを生成する能力や量は、ご両親から受け継いだ遺伝的な要因によって大きく左右されます。

メラニン色素には、紫外線から肌細胞を守るという重要な役割があります。日差しの強い地域にルーツを持つ人種は、肌を守るためにメラニンを多く生成する遺伝的特徴を持っている傾向があります。つまり、生まれつき肌が黒い、あるいは褐色が濃いというのは、紫外線に対する防御機能が高いとも言えるのです。


Q3. 1週間で肌を白くする方法はありますか?

A3. 残念ながら、1週間という非常に短い期間で肌の色を劇的に白くする、あるいは目に見えて明るくトーンアップさせることは医学的に難しいと言えます。

肌には「ターンオーバー」という新陳代謝のサイクルがあり、新しい皮膚細胞が生まれてから古い角質となって剥がれ落ちるまでには、健康な肌でも約28日程度の期間が必要です(年齢や肌の状態によってこの期間は変動します)。メラニン色素もこのターンオーバーの過程で徐々に排出されていきます。

そのため、美白ケアの効果を実感するには、このターンオーバーのサイクルを考慮した、ある程度の継続期間が必要となります。


Q4. 美白ケアの効果はどのくらいで実感できますか?

A4. 美白ケアの効果を実感できるまでの期間は、肌のターンオーバーの周期が一つの目安となります。一般的には、ターンオーバーの1サイクル以上、つまり1ヶ月~3ヶ月程度の継続的なケアで、肌の明るさや透明感の変化を感じ始める方が多いようです。

しかし、効果の現れ方には個人差が大きく、使用する美白有効成分の種類、濃度、スキンケア製品の浸透技術、ご自身の肌質、生活習慣(特に紫外線対策の徹底度)、そして目指す肌の状態によっても異なります。


大切なのは、焦らずに正しい方法でケアを継続することです。すぐに結果が出なくても、地道な努力が数ヶ月後の肌に繋がっていきます。もし効果実感が乏しい場合は、一度医師にご相談いただくと良いでしょう。



伝統的UVケア
伝統的UVケア?

まとめ:正しい知識とケアで、理想の透明美肌へ

この記事では、「美白」の正しい知識から、肌が黒くなる様々な原因、今日から実践できるスキンケアや生活習慣の改善策、そしてより高い効果を求める方への美容内服薬や美容施術に至るまで、透明感あふれる白い肌を目指すための情報を網羅的にお伝えしました。

美白への道は、正しい知識を身につけ、日々の地道なケアを継続することが何よりも大切です。紫外線対策の徹底、バランスの取れた食事、質の高い睡眠といった基本的な生活習慣の見直しは、健やかで美しい肌の土台となります。
しかし、「セルフケアだけではなかなか効果を実感できない」「もっと早く、確実に理想の肌に近づきたい」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。また、ご自身の肌質やシミの種類に合った最適なケア方法が分からず、お困りの方もいるでしょう。

そのような時は、ぜひ一度、美容皮膚科クリニックでご相談ください。当クリニックでは、お一人おひとりの肌状態を丁寧に診察し、医学的根拠に基づいたカウンセリングを通して、あなたに最適な美白プランをご提案します。あなたの「なりたい肌」の実現を力強くサポートいたします。クリニックへのご来院を心よりお待ちしております。


 

クリニックでの美白治療

 


【参考文献】
1) 厚生労働省:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf

2) Advanced lipoxidation end-products (ALEs) and advanced glycation end-products (AGEs) in aging and age-related diseases
Moldogazieva NT, et al.
Oxid Med Cell Longev.
2019:3085756

3) 米国皮膚科学会(AAD)公式サイト
"Face washing 101"
https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-basics/care/face-washing-101

4) Topical Vitamin C and the Skin: Mechanisms of Action and Clinical Applications
Firas Al-Niaimi, et al.
J Clin Aesthet Dermatol.
2017;10(7):14-17

5) Arbutin as a Skin Depigmenting Agent with Antimelanogenic and Antioxidant Properties
Yong Chool Boo
Antioxidants
2021;10(7):1129

6) Tranexamic acid in melasma: A focused review on drug administration routes
Konisky H, et al.
J Cosmet Dermatol.
2023;22(4):1197-1206

7) WHO
Radiation: Protecting against skin cancer
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/radiation-protecting-against-skin-cancer

8) 米国皮膚科学会(AAD)公式サイト
Sunscreen FAQs
https://www.aad.org/media/stats-sunscreen

9) エスエス製薬:L-システインの研究
https://www.ssp.co.jp/research/keytech/l-cysteine/

10) ポーラ化成工業:プレスリリース
https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20211130_02.pdf

11) Glutathione as a skin-lightening agent and in melasma: a systematic review
Rashmi Sarkar, et al.
Int J Dermatol.
2025;64(6):992-1004

12) Glutathione for skin lightening: a regnant myth or evidence-based verity?
Sidharth Sonthalia, et al.
Dermatol Pract Concept.
2018;8(1):15-21


 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月21日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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