肌のエイジング対策

I'm possible.(私にはできる)


世界的な流れとして、「老化」を疾患、つまり大胆に言えば可逆的、少なくとも治療可能な病態として捉えようとしています。

その流れに沿って、暦年齢ではなく、生物学的な年齢で老化を測るモノサシといえるエピジェネティック・クロックをどう決めるか、癌と同様に老化をどうステージ分類するかという準備段階が動き出しています。

「老化」が可逆的といったら、さすがにそれは妄想と思うかもしれませんが、人類はすでに個々の細胞を初期化する方法を手に入れています(それが山中伸弥先生がノーベル賞を受賞したiPS細胞に関する業績)。妄想と片付けるほど夢物語ではありません。

各臓器の「老化」の治療を考えるとき、もっとも現実的なのが皮膚の老化治療でしょう。すでにレチノイド(トレチノイン)という米国FDAの承認製剤があり、しかもそれが一般に入手可能なのですから。

「老化」のサイエンスは、まだまだ未知の部分を多く残していますが、わかってきたことを実践するだけでも、十分に効果的なエイジングケアになります。

冒頭にかかげた「Impossible(不可能)という言葉の中にI'm possible(私にはできる)と書いてある」は、オードリー・ヘプバーンの言葉です。

女性のライフステージ別エイジング治療



エイジングのリテラシーを高める





プレ更年期:40代前半まで

先を見据えた肌計画

 
皮膚の老化の中心は、「真皮」でおこる劣化です。

ということは、劣化した真皮を再構築することが、エイジングケア。これは年代に関係なく、変わらない基本的な考え方になります。

プレ更年期の方におすすめしたいのは、
1)肌年齢に合わせて、スキンケアでの肌負担を軽減する( とくに洗顔、クレンジング)
2)日焼け対策を最新にアップデート
3)レチノイドをスキンケアに取り入れる

レチノイドにはさまざまな選択肢がありますが、使わないという選択肢はエイジングケアにおいて有り得ないと思って下さい。

*ただし、妊娠可能年齢の方では、妊娠したり、または疑われるときには、レチノイドの使用は中止して下さい。



プレ更年期世代の方におすすめ




院長コラム 〜ニキビ〜


このステージで注意したいのはニキビ。

「またできた!」くらいに軽く捉えている人もいますが、ニキビを繰り返す人は必ず皮膚科で治療を受けましょう。ニキビが治ったら、それで通院をやめる人がほとんどですが、ほんとうは新しいニキビができないように治療を続けるのが正解。ガイドラインではそれを維持療法と呼んでいます。

個人的には第2次性徴をすぎたあたりから学校検診に皮膚科診察も入れて、虫歯があったら歯科に通院するように、ニキビがあったら皮膚科に通院して、ニキビケアの意識付けをすれば、日本人の肌は大きく変わるのではないかと妄想を抱いています。

院長コラム 〜女性ホルモン補充療法〜


更年期に入る前に、女性ホルモン補充療法について情報を集め、知識を身につけておきましょう。

人生100年時代では、人生の後半生を女性ホルモン欠乏状態で生きることになります。メリット、デメリットを考えて、補充療法を受けるか、受けないかご自身でお決め下さい。




更年期:40代後半~50代前半

肌の「後半生」が決まるとき


更年期、このおよそ10年間に肌は急速に劣化が進行します。いかに女性ホルモンが皮膚を支えていたかをイヤでも思い知ることになります。

この時期の劣化を最小限にとどめることが、その後の肌半生を決めると言っても過言ではありません。

失われた女性ホルモンの代わりに何で肌を支えるか、そこがポイントになります。

 

更年期世代の方におすすめ

院長コラム 〜ヒアルロン酸充填療法〜


更年期に多くの女性が実感する肌の急激な劣化。そこから脱出する方法がヒアルロン酸充填療法。 


皮膚にはつねに十分量のヒアルロン酸を蓄えておくこと。それが皮膚におけるヒアルロン酸代謝を回転させ続け、再生機能を維持することにつながります。失われた女性ホルモンの代わりに、ヒアルロン酸で皮膚をサポートするのです。

メンテナンスにはレチノイド(ディフェリン)を使ったスキンケアが欠かせません。レチノイドには皮膚中のヒアルロン酸やその受容体を増やす作用があり、まさに皮膚を再生するヒアルロン酸代謝の駆動する役割を果たします。

 

 




ポスト更年期:50代後半以降

肌の「老化」は治療できる


更年期には老化のスピードが急加速します。それを過ぎれば、老化のスピードは減速するので、更年期の老化を最小限にとどめて、次のステージ、人生100年時代では後半生のスタート地点、にソフトランディングすることが、美容戦略上きわめて重要になります。

このステージからは、レチノイドだけでは不十分。老化が顕著に現れる皮膚の土台・真皮層に、マイクロニードリング(ダーマペン)でしっかり刺激することが必要になります。

また、「肌痩せ」や小ジワが増えてきたなと思ったら、適宜ヒアルロン酸充填療法をお考え下さい。

 


皮膚の究極に老化した状態に「皮膚粗鬆症」があります。ですが、そうした状態ですら治療法が用意され、実際に改善することが示されています。

皮膚の老化に治療不能な末期症状などないのです。

年齢を重ねるほどに個人差が大きくなって、暦年齢が当てにならなくなります。「見た目」で元気そうに、健康そうに、美しく見えることこそ、かけがえのない有形資産になるのです。

冒頭でもご紹介した「Impossible(不可能)という言葉の中にI'm possible(私にはできる)と書いてある」というオードリー・ヘプバーンの言葉は、こんな年代の方々にこそ、かみしめていただきたい言葉です。

 

ポスト更年期世代の方におすすめ



院長コラム 〜エイジングケアの切り札!?〜


近未来的な話で、皮膚のエイジングケアとしてもっとも有望な治療法をひとつ上げろと言われたら、それは「脂肪幹細胞注入療法」。

間違っても、繊維芽細胞やPRPの注入ではありません。なぜなら線維芽細胞やPRPに含まれる生理活性因子は「老化」のメインプレーヤーではないから。サブプレーヤーかどうかも怪しい。

「老化」については、幹細胞の老化が組織、ひいては個体を老化させるとする説が有力です。 ですから、幹細胞を補充したり、活性化させる施術が、エイジングケアとして有力視されているのです。

現時点では「脂肪幹細胞注入療法」は高いコストに効果が見合っていませんので、当院では低コストで幹細胞療法の恩恵が受けられる臍帯幹細胞再生療法を採用しています。

「恩恵」と書きましたが、幹細胞そのものではなく培養上清液を使うことは必ずしもセカンドベストを意味しません。

実は、皮膚の幹細胞は数としては加齢で減少しないため、その機能低下がエイジングを招いていると考えられています。したがって幹細胞の機能を回復させる生理活性因子が、エイジングケアとしてベストかもしれません。

培養上清液には、幹細胞のネットワークを調整する因子が含まれており、これが幹細胞の機能を回復させる可能性があります。

院長コラム 〜レーザーは不要!?〜


真皮の再構築というこのステージの至上命題に対し、レーザーリサーフェシングを外しました。

レーザーリサーフェシングがもたらす「若返り効果」は、ここ20年くらいの美容医療の成果ですが、そろそろその「呪縛」から脱することが、これからの美容医療にとって大切なことだと思います。

多くの人が選択しないレーザーリサーフェシングにいつまでもしがみつくのは、これからの美容医療の進展を阻害しかねません。

真皮の再構築には、マイクロニードリングとレチノイドを標準治療とし、オプションとしてヒアルロン酸充填療法を加えることを提唱しています。




皮膚粗鬆症に備えるボディケア


究極の皮膚の老化である「皮膚粗鬆症」は顔よりもボディ、とくに手足に現れるので、ボディケアは重要です。


ボディにはじめから下記外用剤を使用することは、コスト的な負担が大きすぎるため、レチノール、ビタミンCが配合された保湿剤を1日2回たっぷりと使用(塗ったあとティッシュが貼り付くくらい)することとし、皮膚粗鬆症の症状がハッキリしてきたら、治療外用剤を使うことをおすすめします。

 
(皮膚粗鬆症の治療外用剤)

  • 1.中分子ヒアルロン酸(1%)
  • 2.レチナール(0.05%)
  • 3.ビタミンC(5%)





院長コラム 〜ファイナル・メッセージ〜


皮膚の老化の最終到達点である「皮膚粗鬆症」にも治療法がすでに用意されていて、他の臓器なら移植以外にないとなるのに、自分の肌を甦らせることができるほど、皮膚の老化治療は進んでいます。

老化のメカニズムの解明がすすみ、老化を病気として治療することが現実的になっていますが、急速に進歩発展する抗加齢医学の恩恵をもっとも受けるのはこのステージでしょう。

肌に関しては、エイジングは決して悲観するものではなく、むしろ楽しみながら過ごしていただきたい。それが美容医学と抗加齢医学に等しく軸足を置く私からみなさんへの「ファイナル・メッセージ」です。

肌の老化 〜内的老化と外的老化(光老化)〜

内的老化


内的老化とは、年齢に基づく老化であり、まさに加齢性変化。身体の中で日光のあたらない部位では、肌の老化はこの内的老化がメインになります。

内的老化は、ひと言で言うと「皮膚がしぼむ」老化。くすんだ皮膚はうすくなり、細かなシワが目立つようになります。

外的老化(光老化)


外的老化とは、日光、大気汚染など環境、気候、喫煙などの影響に長期にさらされる顔、首、手などに見られます。

ひと言で言えば、「皮膚が不揃いになる」老化。

色は黄色、茶色味をおびるようになり、シミ、深いシワができ、乾燥しやすくなります。またさまざまな腫瘍もできやすくなります。

「皮膚の老化の80%は光老化」


実際には、皮膚の老化は、内的(年齢的)老化と外的老化(光老化)はいっしょになって現れますから、両者を分けることはできません。

ただ、2つの老化プロセスのうち、外的老化(光老化)が、老化全体の80%を占めるというのが定説になっています。

このことが、皮膚の老化の80%は、現時点でも予防および治療可能であることの裏付けになっています。

こちらのブログ記事もご覧下さい



光老化の予防 〜日光からの防御〜


最近は、紫外線ばかりでなく、可視光(とくにブルーライト)、近赤外線も有害とされるため、紫外線対策ではなく、日光からの防御としました。


紫外線の強い時間帯(午前10時~午後2時)は外出しない

外出するときは、その前に日焼け止めを使う

身体の露出を防ぐ日傘、帽子、サングラス、衣服なども工夫する

日焼け止めの塗り直しができないなら「飲む日焼け止め」を


飲む日焼け止めの効果は、高くはありません。SPFで換算すればせいぜい5にも届きません。ただ、たとえばゴルフなど長時間外にいて、しても日焼け止めを塗りなおすことも難しい状況では、内服も有効と言えるでしょう。無防備になるよりはるかにマシです。

スキンケアに抗酸化剤を取り入れる


塗るべきは、ビタミンEまたはコエンザイムQ10またはその両方。

日光が皮膚に及ぼす害の多くは活性酸素がもたらします。活性酸素は皮膚を酸化しますが、このとき一度始まった酸化現象は「山火事」のように四方に広がります。この燃え盛る「山火事」を消火できる抗酸化剤は、ビタミンEとコエンザイムQ10だけ。しかもこの2つは皮脂にも含まれています。身体が自ら用意している抗酸化剤をスキンケアにも取り入れましょう。

光線過敏症状があるなら、DNA修復酵素(photoliase)入りの日焼け止めを使う




院長コラム 〜日光対策の是非〜


美容の世界にいる以上、「絶対に」日光はさけるべき!と声高に叫ぶべき立場なのでしょうが、「絶対」なのかと問われたら、「絶対」に悩みそう。

日光の健康面でのメリットとして

1)ビタミンD合成
2)体内時計の調節
3)抗うつ(心の健康)作用
があり、美容にとっては日光は悪でも、もし健康にとってとしたら、もう判断を投げ出したい気分になります。

たとえばビタミンDひとつとっても悩ましい問題で、今の日本人のほとんどがビタミンD欠乏の状態にあり、とくに若年女性は深刻で、新生児に「くる病」など、かつてはブラックジャックのマンガの中にしかなかった病気が増えています。

それを考えるとただ日光の害を声高に言うのは、日光よりも罪深いのではないかと自戒の念にかられます。

自分がとっている対応を明かすと、私は早朝の犬の散歩では、日焼け止めは使用していません。出勤で自宅を出るときは日焼け止めを塗っています。それからビタミンDはサプリで比較的多い量を摂っています。




皮膚の老化治療の「未来」


現状でも十分に光老化を予防し、またその症状を治療することは可能です。

さらに次の2つが光老化治療の「未来」を明るく照らしています。

 

新規合成レチノイドの開発


レチノイド治療は、あらゆる年代にとって有効な皮膚の老化治療のベース。

レチノイドはもともとビタミンA誘導体で天然成分ですが、今では次々と使いやすい合成レチノイドが生まれています。

幹細胞療法


「老化」のメカニズムが明らかになるにつれ、幹細胞の役割がクローズアップされています。

具体的には脂肪注入による皮膚の若返り効果は、注目を浴びていますし、幹細胞培養液上清液を使って、幹細胞を活性化することも模索されています。

 



「ピンピンコロリ」は抗加齢医学会も推奨するアンチエイジングのキャッチフレーズですが、最近は「コロリ」の語感が悪いとして、「ピンピンキラリ」という言葉も使われています。

私は、人生100年時代に最期までピチピチの肌で過ごす「ピチピチキラリ」を提唱したいと思います。




 



よくいただくご質問

Q

日焼け止めの使い方

A


実際に使われている日焼け止めは、量的に個人差が大きく、また多くの方ではまったく十分な量が使われていないことが報告されています。


顔全体に規定量を塗布するには、500円玉程度の量、乳液タイプの日焼け止めでは2回出す量が必要です。

Q

どうしてもレチノイドが使えない場合はどうしたらいいか?

A


レチノイドが使いにくいときは、アルファヒドロキシ酸(AHA)を活用します。


グリコール酸、乳酸などが使いやすいでしょう。

高濃度グリコール酸製剤はこちら

 

 


参考文献

 

1) Melasma Treatment: An Evidence-Based Review.
McKesey J,et al
Am J Clin Dermatol
2020;21(2):173-25





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