皮膚科でニキビが治らない原因は間違った「薬をやめるタイミング」にあります。アダパレンやエピデュオの副作用を乗り越え、ニキビ治療後の再発防止に不可欠な「維持療法」の重要性を医師が徹底解説します。

1 ニキビ治療の落とし穴:間違った「薬をやめるタイミング」と高い再発リスク
当院は美容皮膚科ですから、ニキビ診療は行っていません。ニキビ診療は基本的には一般皮膚科でガイドラインに基づいて行われるべきです。
そんなニキビですが、普段クリニックで美肌治療を行う際に、しばしば障害となる困りもの。
せっかく表面のブツブツが消えても、赤い炎症が長引いたり、茶色い色素沈着が残ったりして、それまでの美肌治療を台無しにしてしまうことがよくあります。
そんなニキビですが、驚くべきことに、多くの方が皮膚科でのニキビ治療を受けていません。
さらには皮膚科で治療を受けていたとしても、「見た目が良くなったら終了」という誤った認識による早期中断が問題として指摘されています(文献1)。
「表面的な症状が改善したから」という理由で自己判断で治療を中止したら、待ち受けているのは残念ながらニキビの再発です。
ニキビができやすい肌質は簡単には変わりません。「再発リスク(relapse risk)」を減らすためには、症状が完全に治まった後も少なくとも2ヶ月間は治療を継続することが推奨されています(文献2)。
2 皮膚科でニキビが治らない原因?医師が指摘する「治療が続かない3つの課題」
「治療を続けましょう」と言うのは簡単ですが、実際にはそう簡単ではありません。この「続かない問題」の深刻さは、日本の皮膚科医自身の手による調査で明確に示されています。
日本のニキビ患者428名を対象とした多施設研究では、皮膚科医の診療下にあるにもかかわらず、ニキビ治療には以下の3つの深刻な課題があることが報告されました(文献1)。
課題①:そもそも薬をきちんと使えていない(アドヒアランス不良)
最も深刻な課題がこれです。この研究では、全体の76%が治療アドヒアランス不良....つまり、皮膚科を受診して処方してもらった薬を、4人に3人がきちんと使えていなかったのです。
さらに詳しく見ると、状況はもっと深刻です。塗り薬だけの治療でも52%が不十分な遵守。飲み薬に至っては単独で93%、塗り薬との併用でも86%が遵守不良という結果でした。
皮膚科医の立場から言えば、「処方しても使ってもらえない」という、非常にもどかしい現実です。これは日本のニキビ診療における最大のボトルネックと言えるでしょう。
課題②:副作用がつらくて続けられない
同研究のアンケート解析では、治療が続かなくなる原因として「副作用の経験」と「治療満足度の低さ」が有意に関連していました。
これは臨床の現場でもよく目にする悪循環です。外用レチノイド(アダパレンなど)やBPO(過酸化ベンゾイル)といったニキビ治療薬は、使い始めに乾燥・紅斑・刺激感といった副反応が起こることがあります。この不快感に耐えきれず患者さんが使用を中断してしまうと、当然ながら治療効果は得られません。
ここで重要なのは、薬そのものの有効性には問題がないという点です。問題は薬の効き目ではなく、薬を「使い続けられるかどうか」にあるのです。
課題③:ニキビ治療への理解が足りない
この研究で特に注目すべき発見があります。それは「ニキビという疾患と治療の内容をよく理解している患者ほど、アドヒアランスが良好だった」という点です。
逆に言えば、なぜこの薬を使うのか、副作用が出ても続けるべき理由は何か、どのくらいの期間が必要なのか....こうした基本的な情報が十分に伝わっていないと、患者さんは少しの変化や不安で治療を中断してしまいやすいのです。
まとめると、日本のニキビ治療が「うまくいかない」最大の原因は、薬の有効性の問題ではなく、①使われない、②続けられない、③理解されない....という「使用継続性の問題」です。
この事実は、医師がもっと丁寧に説明し、患者さんと一緒に治療を続けていく姿勢の大切さを示しています。
3 ニキビ再発防止のために治療を継続する科学的根拠
ニキビ再発防止を目指した治療の継続には、明確な科学的根拠があります。
それはエピデュオ・フォルテ(アダパレン0.3%+過酸化ベンゾイル2.5%)を用いて、患者に6ヶ月間この薬剤を塗布した研究報告です(文献3)。
この報告の特筆すべき点は、塗り薬を続けることで、ニキビ跡(萎縮性瘢痕)の数を減少させたことですが、もう一つ注目すべきは治療が3ヶ月、6ヶ月と継続するにつれて効果が向上していたこと。これは、治療を継続することで、ニキビの再発防止だけでなく、ニキビ跡(萎縮性瘢痕)の減少にもつながる可能性を示唆しています。
先ほどご紹介した日本の調査では76%もの患者さんが治療を十分に続けられていませんでした。この「継続する」という一見シンプルなことが、実はニキビ治療の成否を分ける最大の鍵なのです。
4 アダパレンやエピデュオの副作用対策と日本でできるニキビ再発防止策
残念ながら日本ではエピデュオ・フォルテは未承認ですが、類似製剤であるエピデュオゲル(アダパレンの濃度が0.1%と低い)においても、半年間の継続使用で:
◎ 新たなニキビ発生の防止(ニキビ再発防止)
◎ 既存のニキビ跡の改善
という二重の効果が確認されています(文献4)。やはりニキビ再発を防ぐための維持療法が、肌質そのものの改善につながる可能性が示唆されています。
ニキビ再発防止の観点からは、先に述べたように症状が完全に治まった後も少なくとも2ヶ月間は治療を継続することをお勧めします。
副作用が気になる場合は、自己判断で中止するのではなく、使用量や頻度の調整について担当医にご相談ください。副作用への不安から自己判断で中断してしまうことこそが、ニキビ治療における落とし穴なのです。
5 本当のニキビ治療とは?再発を防ぐ最後の仕上げ「維持療法」
日本皮膚科学会のガイドライン(文献5)でも明記されていますが、真のニキビ治療には2つのステップがあります:
◉ 急性期の炎症を抑える「急性期治療」
◉ニキビが落ち着いた後の「維持療法」
多くの方が見落としているのは、この2番目のステップです。ニキビ再発防止のための「維持療法」は、ニキビ治療に欠かせない最後の仕上げなのです。
具体的には、アダパレン(ディフェリン)やBPO製剤などの外用薬を継続的に使用することが推奨されています。つまり、「ブツブツが消えたら終わり」ではなく、その後もニキビ再発させないための「維持療法」を続けることが正しいニキビ治療です。
日本の皮膚科医自身の調査が突きつけた3つの壁....アドヒアランス不良(76%)・副作用による中断・患者教育不足....を乗り越えるためには、治療の意味をしっかり理解し、副作用とうまく付き合いながら、医師と二人三脚で根気よく続けることが何より大切です。
この維持療法の考え方はガイドラインで示されているにもかかわらず、一般には十分に浸透していません。もしかすると医療費増加への懸念から積極的な周知が控えられているのではと疑いたくもなりますが、維持療法の重要性は、皆さんの肌の健康のためにもっと広く認識されるべきです。皮膚科ドクターと相談しながら、あなたに最適な維持療法を見つけて下さい。
一般皮膚科での維持療法を終え、ニキビができにくい健康な肌の土台が整った後、ニキビ跡の赤みや色素沈着、さらなる美肌を目指す段階になれば、当院の美容皮膚科治療が効果を発揮します。
▶当院のニキビ跡治療:
ニキビ後の赤み治療 トラネキサム酸注射
軽症〜中等症のクレーター治療 リジュラン
重症のクレーター治療 フラクショナルレーザー
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【参考文献】
1) Acne management in Japan: study of patient adherence
Yoshiki Miyachi, et al.
Dermatology
2011;223(2):174-81
2) Exploring acne treatments: from pathophysiological mechanisms to emerging therapies
Hyun Jee Kim, Yeong Ho Kim
Int J Mol Sci
2024 May 13;25(10):5302
3) Prevention and reduction of atrophic acne scars with adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in subjects with moderate or severe facial acne: results of a 6-month randomized, vehicle-controlled trial using intra-individual comparison
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2018;19:275-286
4) Adapalene 0.1%/benzoyl peroxide 2.5% gel reduces the risk of atrophic scar formation in moderate inflammatory acne: a split-face randomized control trial
Dréno B,et al.
JEADV
2017;31:737-742
5) 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023(改訂版)
日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/zasou2023.pdf
(最終閲覧日:2026年3月2日)

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年3月2日)




















