2022.06.25更新

 

皮膚科でニキビが治らない原因は間違った「薬をやめるタイミング」にあります。アダパレンやエピデュオの副作用を乗り越え、ニキビ治療後の再発防止に不可欠な「維持療法」の重要性を医師が徹底解説します。


ニキビ治療は長い付き合い

1 ニキビ治療の落とし穴:間違った「薬をやめるタイミング」と高い再発リスク

当院は美容皮膚科ですから、ニキビ診療は行っていません。ニキビ診療は基本的には一般皮膚科でガイドラインに基づいて行われるべきです。

そんなニキビですが、普段クリニックで美肌治療を行う際に、しばしば障害となる困りもの。

せっかく表面のブツブツが消えても、赤い炎症が長引いたり、茶色い色素沈着が残ったりして、それまでの美肌治療を台無しにしてしまうことがよくあります。

そんなニキビですが、驚くべきことに、多くの方が皮膚科でのニキビ治療を受けていません。

さらには皮膚科で治療を受けていたとしても、「見た目が良くなったら終了」という誤った認識による早期中断が問題として指摘されています(文献1)。

「表面的な症状が改善したから」という理由で自己判断で治療を中止したら、待ち受けているのは残念ながらニキビの再発です。

ニキビができやすい肌質は簡単には変わりません。「再発リスク(relapse risk)」を減らすためには、症状が完全に治まった後も少なくとも2ヶ月間は治療を継続することが推奨されています(文献2)。


2 皮膚科でニキビが治らない原因?医師が指摘する「治療が続かない3つの課題」

「治療を続けましょう」と言うのは簡単ですが、実際にはそう簡単ではありません。この「続かない問題」の深刻さは、日本の皮膚科医自身の手による調査で明確に示されています。

日本のニキビ患者428名を対象とした多施設研究では、皮膚科医の診療下にあるにもかかわらず、ニキビ治療には以下の3つの深刻な課題があることが報告されました(文献1)。


課題①:そもそも薬をきちんと使えていない(アドヒアランス不良)

最も深刻な課題がこれです。この研究では、全体の76%が治療アドヒアランス不良....つまり、皮膚科を受診して処方してもらった薬を、4人に3人がきちんと使えていなかったのです。

さらに詳しく見ると、状況はもっと深刻です。塗り薬だけの治療でも52%が不十分な遵守。飲み薬に至っては単独で93%、塗り薬との併用でも86%が遵守不良という結果でした。

皮膚科医の立場から言えば、「処方しても使ってもらえない」という、非常にもどかしい現実です。これは日本のニキビ診療における最大のボトルネックと言えるでしょう。


課題②:副作用がつらくて続けられない

同研究のアンケート解析では、治療が続かなくなる原因として「副作用の経験」と「治療満足度の低さ」が有意に関連していました。

これは臨床の現場でもよく目にする悪循環です。外用レチノイド(アダパレンなど)やBPO(過酸化ベンゾイル)といったニキビ治療薬は、使い始めに乾燥・紅斑・刺激感といった副反応が起こることがあります。この不快感に耐えきれず患者さんが使用を中断してしまうと、当然ながら治療効果は得られません。

ここで重要なのは、薬そのものの有効性には問題がないという点です。問題は薬の効き目ではなく、薬を「使い続けられるかどうか」にあるのです。


課題③:ニキビ治療への理解が足りない

この研究で特に注目すべき発見があります。それは「ニキビという疾患と治療の内容をよく理解している患者ほど、アドヒアランスが良好だった」という点です。

逆に言えば、なぜこの薬を使うのか、副作用が出ても続けるべき理由は何か、どのくらいの期間が必要なのか....こうした基本的な情報が十分に伝わっていないと、患者さんは少しの変化や不安で治療を中断してしまいやすいのです。

まとめると、日本のニキビ治療が「うまくいかない」最大の原因は、薬の有効性の問題ではなく、①使われない、②続けられない、③理解されない....という「使用継続性の問題」です。

この事実は、医師がもっと丁寧に説明し、患者さんと一緒に治療を続けていく姿勢の大切さを示しています。


3 ニキビ再発防止のために治療を継続する科学的根拠

ニキビ再発防止を目指した治療の継続には、明確な科学的根拠があります。

それはエピデュオ・フォルテ(アダパレン0.3%+過酸化ベンゾイル2.5%)を用いて、患者に6ヶ月間この薬剤を塗布した研究報告です(文献3)。

この報告の特筆すべき点は、塗り薬を続けることで、ニキビ跡(萎縮性瘢痕)の数を減少させたことですが、もう一つ注目すべきは治療が3ヶ月、6ヶ月と継続するにつれて効果が向上していたこと。これは、治療を継続することで、ニキビの再発防止だけでなく、ニキビ跡(萎縮性瘢痕)の減少にもつながる可能性を示唆しています。

先ほどご紹介した日本の調査では76%もの患者さんが治療を十分に続けられていませんでした。この「継続する」という一見シンプルなことが、実はニキビ治療の成否を分ける最大の鍵なのです。


4 アダパレンやエピデュオの副作用対策と日本でできるニキビ再発防止策

残念ながら日本ではエピデュオ・フォルテは未承認ですが、類似製剤であるエピデュオゲル(アダパレンの濃度が0.1%と低い)においても、半年間の継続使用で:

◎ 新たなニキビ発生の防止(ニキビ再発防止)
◎ 既存のニキビ跡の改善

という二重の効果が確認されています(文献4)。やはりニキビ再発を防ぐための維持療法が、肌質そのものの改善につながる可能性が示唆されています。

ニキビ再発防止の観点からは、先に述べたように症状が完全に治まった後も少なくとも2ヶ月間は治療を継続することをお勧めします。

副作用が気になる場合は、自己判断で中止するのではなく、使用量や頻度の調整について担当医にご相談ください。副作用への不安から自己判断で中断してしまうことこそが、ニキビ治療における落とし穴なのです。


5 本当のニキビ治療とは?再発を防ぐ最後の仕上げ「維持療法」

日本皮膚科学会のガイドライン(文献5)でも明記されていますが、真のニキビ治療には2つのステップがあります:

◉ 急性期の炎症を抑える「急性期治療」
◉ニキビが落ち着いた後の「維持療法」

多くの方が見落としているのは、この2番目のステップです。ニキビ再発防止のための「維持療法」は、ニキビ治療に欠かせない最後の仕上げなのです。

具体的には、アダパレン(ディフェリン)やBPO製剤などの外用薬を継続的に使用することが推奨されています。つまり、「ブツブツが消えたら終わり」ではなく、その後もニキビ再発させないための「維持療法」を続けることが正しいニキビ治療です。

日本の皮膚科医自身の調査が突きつけた3つの壁....アドヒアランス不良(76%)・副作用による中断・患者教育不足....を乗り越えるためには、治療の意味をしっかり理解し、副作用とうまく付き合いながら、医師と二人三脚で根気よく続けることが何より大切です。

この維持療法の考え方はガイドラインで示されているにもかかわらず、一般には十分に浸透していません。もしかすると医療費増加への懸念から積極的な周知が控えられているのではと疑いたくもなりますが、維持療法の重要性は、皆さんの肌の健康のためにもっと広く認識されるべきです。皮膚科ドクターと相談しながら、あなたに最適な維持療法を見つけて下さい。

一般皮膚科での維持療法を終え、ニキビができにくい健康な肌の土台が整った後、ニキビ跡の赤みや色素沈着、さらなる美肌を目指す段階になれば、当院の美容皮膚科治療が効果を発揮します。

 

▶当院のニキビ跡治療:


ニキビ後の赤み治療 トラネキサム酸注射

軽症〜中等症のクレーター治療 リジュラン

重症のクレーター治療 フラクショナルレーザー



おすすめのニキビ関連記事

 

 

【参考文献】


1) Acne management in Japan: study of patient adherence
Yoshiki Miyachi, et al.
Dermatology
2011;223(2):174-81

2) Exploring acne treatments: from pathophysiological mechanisms to emerging therapies
Hyun Jee Kim, Yeong Ho Kim
Int J Mol Sci
2024 May 13;25(10):5302

3) Prevention and reduction of atrophic acne scars with adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in subjects with moderate or severe facial acne: results of a 6-month randomized, vehicle-controlled trial using intra-individual comparison
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2018;19:275-286

4) Adapalene 0.1%/benzoyl peroxide 2.5% gel reduces the risk of atrophic scar formation in moderate inflammatory acne: a split-face randomized control trial
Dréno B,et al.
JEADV
2017;31:737-742

5) 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023(改訂版)
日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/zasou2023.pdf
(最終閲覧日:2026年3月2日)

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年3月2日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.18更新

1. ニキビ跡(萎縮性瘢痕)を治療する美容皮膚科が、一般皮膚科での「ニキビ早期治療」を勧める理由


当院では美容皮膚科として、ニキビ治療の中でも「ニキビ跡(特にクレーターなどの萎縮性瘢痕)」の治療を行っています。現在進行形で炎症を起こしている「ニキビそのもの」の治療は行っておらず、保険診療のガイドラインに基づいた一般皮膚科での受診をお勧めしています。

それなのに「なぜ自分のところでは診ないのに、ニキビの話をするの?」

そう思われるかもしれません。しかし、「ニキビ跡」の診療をしている医師だからこそ、強くお伝えしたいことがあるのです。

それは、「ニキビ跡を作らないためには、一般皮膚科での早期治療に勝るものはない」という事実です。

この記事では、最新の医学論文のデータを交えながら、その理由を解説します。




ニキビは早期治療



2. ニキビ放置は跡になる!皮膚科での早期治療がもたらす4つのメリットとクレーター予防効果

「たかがニキビ」と様子を見ている間に、肌の内部ではダメージが進行しています。最新の研究では、早期介入によって以下のメリットが得られることが報告されています。

2-1. 「一生残る傷跡(瘢痕)」のリスクを減らせる

これが最も強調したい点です。早期に炎症性ニキビをコントロールすることは、クレーター(陥凹性瘢痕)や色素沈着といった「物理的・心理的な傷跡」のリスクを低減させると報告されています(文献1)。

特にトレチノインやアダパレン(ディフェリン)などのレチノイドは、ニキビの予防だけでなく、すでに生じた色素沈着の改善にも効果が期待されており、早期からの導入が推奨されています(文献1)。

2-2. 早期に「目に見える変化」が期待できる

「皮膚科の薬は時間がかかる」というイメージがあるかもしれません。しかし、近年の配合外用薬(アダパレン/過酸化ベンゾイル等)を用いた研究では、治療開始4週の時点で炎症性ニキビが30〜50%以上減少したというデータがあります(文献2)。

こうした早い段階での目に見える改善は、患者さんの満足度を高め、治療を続けるモチベーション(アドヒアランス)につながります。治療を継続すればするほど効果は積み重なるため、最初の数週間の実感が長期的な治療成績を左右するといっても過言ではありません。



2-3. 「治りにくいニキビ」への進行を食い止める

ニキビは慢性的な炎症性疾患です。適切な治療が遅れると炎症が長引き、再発を繰り返す「難治化」のリスクが高まります (文献3)。
重症化してから慌てて治療を始めるのではなく、軽症のうちに標準治療(レチノイドや過酸化ベンゾイルなど)で難治化、重症化を防ぐことが、結果的にトータルの治療負担を減らすことにつながります。


2-4. 心の負担(QOL)を軽くする

ニキビは単なる「肌の問題」ではありません。特に思春期の若い方にとって、自己評価や対人関係に大きな影響を与えることが知られています(文献4)。

早期のニキビ(学童期〜軽症段階)をきちんと治療・モニタリングすることで、より速やかに良好な臨床経過とQOLの改善が得られるとされています(文献4)。

「たかがニキビ」と放置せず、早い段階から適切なケアを受けることが、精神的な健康を守るうえでも重要なのです。




3. 早期治療がニキビ跡予防に重要なのに、なぜ皮膚科受診は遅れてしまうのか?

皮膚科医は一生懸命「ニキビ早期治療」の重要性を説いているわけですが、実はそれを妨げる要因が、皮膚科の診療現場にあるという矛盾を抱えています。

日頃、ニキビのある方に皮膚科受診をお勧めしていますが、「時間がかかりすぎる」、「ちゃんと診てくれない」、「話を聞いてくれない」などという声をよく耳にします。

こうした意見を聞くたびに「今の保険制度では、たくさんの患者さんを診ないと経営的に成り立たないから、皮膚科の先生も大変なのです」とフォローしますが、実際のところ、皮膚科受診のハードルの高さが、日本の「ニキビ診療」の足を引っ張っているという現実があります。




4. まとめ

私たちのような「ニキビ跡治療」を行うクリニックの出番がないこと、それが本来の理想です。

もし今、赤いニキビや白いニキビができているなら、「跡になってから美容皮膚科」へ行くのではなく、まずはお近くの一般皮膚科を受診して下さい。それが、将来的なクレーターや色素沈着を防ぐための最善かつ最短のルートです。


ニキビがクレーター(萎縮性瘢痕)などのニキビ跡になるリスク要因の中でも、『治療の遅れ』は『ニキビをいじる、潰す』行為とともに、自分でコントロールできる重要なリスク要因なのです。(文献5)。

それでも、もし不幸にも「跡」が残ってしまった場合は、当院が全力でサポートさせていただきます。

 

▶当院のニキビ跡治療:


ニキビ後の赤み治療 トラネキサム酸注射

軽症〜中等症のクレーター治療 リジュラン

重症のクレーター治療 フラクショナルレーザー




おすすめのニキビ関連記事

 

 

【参考文献】

1) Recommendations to Improve Outcomes in Acne and Acne Sequelae: A Focus on Trifarotene and Other Retinoids.
Naiem Issa, et al.
Dermatol Ther
025 Mar;15(3):563-577

2) Early Acne Improvements With Fixed-Combination Topical Therapy: Analysis of the First 4 Weeks of Treatment
Steven R Feldman, et al.
J Drugs Dermatol
2025 Jan 1;24(1):79-87

3) Exploring acne treatments: from pathophysiological mechanisms to emerging therapies
Hyun Jee Kim, Yeong Ho Kim
Int J Mol Sci
2024 May 13;25(10):5302

4) Making the case for early treatment of acne
Andrea L Zaenglein
Clin Pediatr
2010 Jan;49(1):54-9

5) Acne Scarring: Why We Should Act Sooner Rather Than Later
Brigitte Dréno, Linda Stein Gold
Dermatol Ther
2021 Aug;11(4):1075-1078



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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年3月1日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.09更新


1 はじめに ―「すべてのニキビにはニキビ跡になるリスクがある」


ニキビは誰にとっても身近な肌トラブルですが、本当に怖いのは「ニキビ跡」になってしまうことです。ですから、皮膚科でのニキビ治療の原則は『たとえ軽いニキビであっても、早い段階から正しくケアして、ニキビ跡を残さないようにすること』です。

とはいえ、「どんなニキビがニキビ跡になりやすいのか」という疑問に対して、これまで明確な答えがありませんでした。「重いニキビほど跡になりやすい」というのは感覚的に理解できても、具体的にどんな特徴に注目すればいいのかがわからなかったのです。

ところが近年、ニキビ一つひとつを2週間ごと・6ヶ月間にわたって追跡するという非常に緻密な臨床研究が報告され、ニキビ跡になりやすいニキビの正体がかなり明確になってきました(文献1)。

この記事では、その研究結果をもとに「どんなニキビに注意すべきか」を解説するとともに、最新の医学文献に基づくニキビ跡の赤み(炎症後紅斑)の予防と治療のポイントについてもご紹介します。


2 ニキビ跡の8割以上は「治った後の赤み」から生まれていた


ニキビ跡の8割は赤みから

研究の結論は、多くの方にとって意外なものかもしれません。

ニキビ跡(瘢痕)の実に83%は、ニキビが治った後に残る「赤み」や「色素沈着」から進行してできていたのです。

特に多かったのが、赤く腫れたニキビ(赤ニキビ)がいったん治まったあと、赤みだけがいつまでも残り、そこからニキビ跡へと変わっていくというパターンでした。

さらに注目すべきデータがあります。将来的にニキビ跡になったニキビは、跡にならなかったニキビに比べて治るまでの期間が明らかに長かった(平均10.5日 vs 6.6日)のです。

つまり、以下の2つがニキビ跡になる危険信号です。
• ニキビが1週間以上経っても治らない
• ニキビ自体は平らになったのに、赤みがなかなか引かない

これらに当てはまる場合は、「そのうち消えるだろう」と放置せず、早めに皮膚科を受診した方が良さそうです。


3 消えないニキビ跡の赤み(炎症後紅斑)を放置してはいけない理由とクレーター化のリスク

ニキビが治った後に残る赤みは、医学的には「炎症後紅斑(macular erythema)」と呼ばれます。これは見た目には「ニキビの名残」程度に思えますが、実は肌の中でまだ炎症が続いているサインです(文献2)。

この炎症が長引くと、皮膚の組織が破壊されてクレーター状のニキビ跡(萎縮性瘢痕)に進行してしまう恐れがあります。逆に言えば、この「赤みの段階」で適切に治療を行えば、ニキビ跡への進行を食い止められる可能性があります。


4 ニキビ跡の赤みを防ぐための治療戦略

■ もっとも大切なのは「ニキビそのものを早く治す」こと

ニキビ跡の赤みを防ぐにはニキビは早期から継続的な治療で治すことです。

日本で保険適用のあるニキビ治療薬の代表は以下の2つです。

✔️アダパレン(ディフェリンゲル)
は、毛穴のつまりを改善し、ニキビの発生と炎症の両方に働きかける外用レチノイドです。外用レチノイドは、ニキビの治療だけでなく、赤みや色素沈着、さらには瘢痕の改善にも効果があるとされています(文献3)。

✔️過酸化ベンゾイル(BPO/ベピオゲル等)は、抗菌作用と角質剥離作用をもつ外用薬で、アダパレンとの併用(エピデュオゲル等)が推奨されています。

これらの外用薬をニキビの初期段階から継続的に使用することが、ニキビ跡の赤みを予防するうえでもっとも基本的かつ重要な戦略です。


■ 治らないニキビ跡の赤みを消すための美容皮膚科での最新治療

ニキビ自体は落ち着いたのに赤みだけが残っている….日本では保険診療の範囲外になりますが、そんなときは、以下のような治療が研究で報告されています。

トラネキサム酸皮内注射は、近年注目されている治療法です。トラネキサム酸を赤みのある部位に直接注射することで、短期間で赤みの改善が得られたと報告されています(文献4)。トラネキサム酸はもともと止血剤・抗炎症薬として日本でもなじみのある成分であり、コストを抑えた赤みの治療法として今後の展開が期待されます。

▶当院のトラネキサム酸注射:


ニキビ跡のクレーター予防のために トラネキサム酸注射

スキンケアとして高濃度トラネキサム酸 ダームエデン美容液



このほか海外では、タクロリムス外用(文献2)やチモロール点眼液外用(文献5)といった、本来の適応外の薬を赤みに使用する試みも報告されていますが、いずれもまだ研究段階であり、日本ではニキビ後の赤みへの保険適用はありません。


■ 日常のケアも忘れずに

どのような治療を行う場合でも、紫外線対策と肌のバリア機能を守るスキンケアの併用が欠かせません。紫外線は赤みを悪化させ、色素沈着を引き起こす要因になります。日焼け止めの毎日の使用と、肌に負担をかけない保湿ケアを継続することが、治療効果を最大限に活かすカギとなります(文献6)。


5 まとめ:ニキビ跡は「予防」がもっとも効果的

ニキビ跡は一度できてしまうと、セルフケアだけでの改善は難しいのが現実です。しかし、最新の研究が示しているのは、ニキビ跡は「運が悪かったから」できるものではなく、適切なタイミングで適切な治療を行えば防げる可能性があるということです。

覚えておきたいポイントは3つです。
1. 「治りが遅いニキビ」「赤みが長引くニキビ」は危険信号 .... 1週間以上改善しないニキビや、平らになっても赤みが引かないニキビは要注意です。

2. ニキビ後の赤み(炎症後紅斑)は“まだ炎症が続いているサイン” .... 放置するとクレーター状のニキビ跡に進行するリスクがあります。

3. アダパレンやBPOなどの外用薬を早期から継続使用することが、もっとも確実な予防策 ....
「たかがニキビの赤み」と軽視せず、気になったら早めに皮膚科医にご相談ください。早期からの正しいケアで、ニキビ跡に悩まされない健やかな肌を目指しましょう。

 

 

 おすすめのニキビ関連ブログ記事

 

【参考文献】

1)Prospective study of pathogenesis of atrophic acne scars and role of macular erythema
Tan J,et al.
J Drugs Dermatol.
2017;16(6)567

2) Topical tacrolimus for acne-related macular erythema to prevent atrophic scarring
Madhulika Mhatre, et al.
J Am Acad Dermatol
2022 Jun;86(6):e253-e254

3) Recommendations to Improve Outcomes in Acne and Acne Sequelae: A Focus on Trifarotene and Other Retinoids
Naiem Issa, et al.
Dermatol Ther
2025 Mar;15(3):563-577

4) The Comparable Efficacy Between Tranexamic Acid Intradermal Injection and Pulsed Dye Laser for Treatment of Post-Acne Erythema
Kartika Ruchiatan, et al.
Clin Cosmet Investig Dermatol

5) Topical TimololinDermatology:ApplicationsandAdvances
Wang Yu, et al.
Dermatol Ther
2025;2025(1):5812080

6) A Real-World Approach to Trifarotene Treatment in Patients with Acne and Acne Sequelae
Maria Carmela Annunziata, et al.
Dermatol Ther
2025;15:245-264



 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年2月25日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.13更新

「ニキビには保湿が大切」——この言葉、どこかで聞いたことはありませんか?

美容雑誌やSNSでは当たり前のように語られているこの考え方。しかし、皮膚科学の世界では、この「ニキビ 保湿」神話に対して警鐘が鳴らされています。

今回は、日本で広まった「ニキビの保湿」信仰の背景と、本当に正しいスキンケアについてお伝えします。

ニキビが保湿が足りないのか?


なぜ「ニキビには保湿」が広まったのか?

ニキビと敏感肌の違いとは?よくある混同

皮膚科学において、「ニキビ」と「敏感肌」は本来まったく別の概念です。ニキビは毛穴の炎症性疾患であり、敏感肌は肌のバリア機能低下による過敏状態を指します。

しかし、美容雑誌やSNSでは事情が異なります。

「敏感肌がゆらぐとニキビが出やすくなる」「バリア機能低下で赤み・乾燥・吹き出物が増える」——こうした表現が繰り返されるうちに、読者の間では「敏感肌=ニキビが出やすい肌」という認識が定着してしまいました。

*注意:ニキビ患者ではバリア障害があることが示されていますが、バリア障害はニキビの炎症により二次的に生じている可能性があり、必ずしもバリア障害がニキビの原因とは言えません(文献1)


「ニキビにも保湿クリーム」という誤解を生んだマーケティング

敏感肌向けブランドの多くが「敏感肌でも使えるニキビケア」というPRを展開していることも、この混同を助長しています。敏感肌ケアの基本は「保湿」ですから、「ニキビにも保湿クリームが効く」という連想が生まれるのは自然な流れだったのかもしれません。

結果として、ニキビで保湿クリームを求める方、ニキビの保湿ケアに熱心に取り組む方が増えました。


皮膚科の大家が警鐘!ニキビ治療における保湿指導の真実

2021年、日本美容皮膚科学会誌に、ニキビとスキンケアに関する重要な論文が掲載されました(文献1)。

第一線で活躍する皮膚科の先生が、「ニキビには保湿」という考え方が一人歩きしている現状に対して、注意喚起を行っています。

この論文では、近年「乾燥がニキビを悪化させる」「保湿すればニキビが良くなる」といったメッセージが、メディアや美容雑誌を通じて広く拡散し、あたかも“常識”のように受け止められていることが指摘されています。そして、そのような情報をそのまま信じてしまうことには十分な注意が必要だ、という趣旨が述べられています。


保湿のやりすぎ・しすぎがニキビ悪化の原因に?逆効果になる可能性

論文ではさらに踏み込んだ論点として、「保湿をすると毛穴の入り口の閉塞が防げて、ニキビの発症を抑えられる」という“説”についても触れられています。

しかし現時点では、「保湿ケアそのものがニキビを直接改善させる」と明確に示した臨床エビデンスはありません。

むしろ、保湿剤の使用がニキビを悪化させている可能性すらある、と論文では懸念が示されています。

つまり、「ニキビにはとにかく保湿をすれば良い」と思い込んで行っているスキンケアが、実は逆効果になっているケースもあり得るのです。


ニキビか乾燥かどっちをケアすべき?ノンコメドジェニックと保湿の目的 

では、ニキビ肌に保湿は一切不要なのでしょうか。

もちろん、そういうわけではありません。論文では、保湿の位置づけについても整理されています。

本来、保湿の主な役割は
⭐️肌の乾燥に対するスキンケア
⭐️ニキビ治療薬による乾燥や刺激といった副作用の軽減
といった点にあり、ニキビそのものを治す「主役の治療」ではない、とされています。

そのうえで、ニキビに保湿を行う場合には、「ノンコメドジェニックな製品を、必要最小限にとどめること」が望ましいとされています。


自分の肌を見極めることが美肌への近道

この論文から私たちが学べる一番大きなメッセージは、自分の肌の状態を正しく理解することの大切さです。

「ニキビには保湿が良い」「保湿クリームでニキビが改善する」といった、根拠があいまいな情報に振り回されるのではなく、

✅自分のニキビはどの程度の炎症なのか
✅どの治療薬を使っていて、どんな副作用が出やすいのか
✅どの範囲・どの頻度で保湿が本当に必要なのか

といった点を、一人ひとりの肌の状況に応じて見極めていくことが重要です。

それこそが、遠回りに見えて実は一番の「美肌への近道」と言えるでしょう。



【参考文献】

1 痤瘡外用療法の副作用への対処とスキンケア
林 伸和、佐々木 優
Aesthetic Dermatology
2021;31(1):7-14






 おすすめの関連ニキビ記事

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.06更新

コロナ禍で診療所の多くの診療科で患者数は減少しましたが、皮膚科では減少しておらず、マスク生活によって、新たな肌トラブルが起こっていることがうかがえます。それがマスクによる肌荒れ、ニキビ。

マスクを装着することで、肌にどんな悪影響を与えるか?結論から言うと、バリア機能崩壊による「乾燥」。

マスクで崩壊

マスクを着用すると、マスクにおおわれた肌では、皮膚温と湿度が上昇します。蒸れ蒸れになるわけですが、これが肌のバリア機能を低下させます。

なぜかというと、皮膚表面では、細胞同士がピタッとくっついてバリアを形成しているのに、過湿により表面の細胞が膨張すると、細胞間の接着が弛んでしまうから。

長時間のマスクパックでも同じことが言えます。保湿は大切ですが、過湿には要注意なのです。

ここでひとつ訂正があります。私はメルマガで「マスクをしているときは蒸れているというのに、それがバリア機能を崩壊させ、マスクを外したら、一気に乾燥する・・。」と書きました。

しかし、韓国の研究者が発表した論文によると、とくに口まわりの皮膚では、マスクの装着中から保水量は減少していました。蒸れているようで、皮膚は乾燥しているらしい。ここにお詫びして訂正させていただきます。


さて、もうひとつの問題「ニキビ」。

マスクを着用すると、皮膚温が上昇するため、皮脂の分泌が亢進して、これがニキビの原因になります。しかもマスク内だけでなく、おおわれていない額でも皮脂が増えるため、ニキビができてしまいます。

マスクでできたニキビの治療も従来のニキビ治療と変わりありませんが、以前は使用できた薬剤に刺激を感じる患者さんが増えているとか。皮膚のバリア機能が低下して、「敏感肌」になっているのです。

マスクの肌荒れ対策としては、保湿が重要とされていますが、同時にマスクで密封された状態では、かぶれが誘導されやすいことも指摘されています。またウレタンマスクの方が肌にやさしいようですが、感染効果が落ちないようにその上から不織布マスクをすると、ますます蒸れ蒸れになってバリア機能が壊れそう・・

人前に出るときは社会規範としてマスクが必要ですが、近くに人がいない中で仕事しているときなど、マスクが本当は意味のないシチュエーションも多いはず。そういうときは肌をいたわるためにも外して、お肌を休ませてあげてはいかがでしょうか。


(参考文献)

1)Effect of face mask on skin characteristics changes during the COVID-19 pandemic
Park SR,et al.
Skin Res Tcchnol
2021;27(4):554-559

2)Long-term effects of face masks on skin characteristics during the COVID-19 pandemic
Park SR,et al.
Skin Res Tcchnol
2022;28(1):153-161

3)新しい生活様式 スキンケアはどう変わる
川島眞、他
ベラペレ
2022;7(1):69-72





 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.03.20更新

1 はじめに

「ディフェリンはニキビ治療薬」というイメージが強いかもしれませんが、実はアンチエイジングにも効果が期待できる薬剤であることをご存知でしょうか? 

本記事では、ニキビ治療薬として有名なディフェリンが、なぜエイジングケアの有力な選択肢となり得るのか、そのメカニズムや使用方法、そして最新のレチノイド事情までを詳しく解説します。

▶当院のディフェリン(アダパレン)処方について詳しく見る


ディフェリン(アダパレン)


ディフェリンでエイジングケア


2 ディフェリン(アダパレン)はアンチエイジング・シミに効果がある?


ディフェリン(一般名:アダパレン)は、「第3世代」に分類される合成レチノイドです。日本では主にニキビ治療薬として承認・使用されており、10代や20代で使った経験がある方も多いでしょう。

レチノイドはビタミンA誘導体の総称で、肌のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)を促進したり、皮脂分泌を抑制したり、コラーゲン生成を促したりする作用があることで知られています。この「ターンオーバー促進」や「コラーゲン生成促進」といった働きが、ニキビだけでなく、シミ、しわ、ハリ不足といったエイジングサインにもアプローチできる理由です。

つまり、ディフェリンが持つレチノイドとしての基本的な作用機序が、エイジングケアにも応用できる可能性をもたらすのです。


3 ディフェリンの医学的検証とトレチノインやレチノールとの違い

米国FDAが老化(光老化)治療として正式に承認しているレチノイドは、現時点ではトレチノインタザロテンのみです。しかし、ディフェリンを光老化治療に使う臨床試験も存在し、その効果が示唆されています。


3-1 FDA承認がすべてではない理由

医薬品の承認は、有効性だけでなく、製薬会社の開発・申請戦略や費用対効果なども考慮されるため、「承認がない=効果がない」と直結するわけではありません。ディフェリンが持つレチノイドとしての作用や、後述する臨床研究の結果から、エイジングケアへの効果は十分に期待できると考えられます。


3-2 ディフェリンの医学的検証:シミ・しわへのアプローチ

ディフェリンが、ニキビ治療だけでなく光老化(フォトエイジング)に有効とされる理由は以下の通り(文献1)。

▶️作用機序: アダパレンはレチノイン酸受容体(RAR)に選択的に結合し、特に表皮に存在するRAR-γと、真皮線維芽細胞に存在するRAR-βに対して高い親和性を持ちます。これにより、トレチノインと同様に細胞の増殖と分化を調節します。

▶️具体的な効果:
✔️メラニン生成(メラノジェネシス)の抑制
✔️メラニンの除去
✔️コラーゲン合成を促進

▶️臨床的証拠: 臨床研究において、0.3%アダパレンゲルは皮膚の光老化に対する有効かつ安全な治療として推奨されています(文献2)。

▶️利点: 他のレチノイド(トレチノインなど)と比較して、アダパレンは光や酸化に対して安定しており、皮膚への刺激性(副作用)が少ない優れた特性を持ちます。


3-3 ディフェリンとトレチノインの違い|レチノイド反応(A反応)の比較


比較的マイルドな刺激: 他のレチノイド(特にトレチノイン)と比較して、赤みや皮むけといった刺激反応(いわゆるA反応、レチノイド反応)が軽い傾向があります。これにより、レチノイド初心者でも始めやすい可能性があります。

光感受性のリスクが低い: トレチノインほど紫外線に対する感受性を高めにくいとされていますが、日中の紫外線対策は必須です。
日本での承認: ニキビ治療薬として厚生労働省に承認されており、医師の診察のもと処方を受けやすい環境にあります。(ただし、エイジングケア目的での使用は保険適用外となるのが一般的です)


3-4 ディフェリンとレチノールの違い|「ドラッグストアのレチノール」でエイジングケアは十分?

「レチノール配合」と謳うスキンケア製品はドラッグストアやネット通販で数多く販売されており、レチノイドの中でもっとも身近な存在といえるでしょう。では、こうした市販のレチノール製品と、医療機関で処方されるディフェリン(アダパレン)では、エイジングケアの効果にどのような違いがあるのでしょうか。

レチノールの作用メカニズムと限界

内因性レチノイドの代謝と合成レチノイド:ディフェリン

レチノールは皮膚に塗布された後、酵素反応によって「レチノール → レチナール → トレチノイン(レチノイン酸)」と2段階で変換され、最終的に活性型であるトレチノインになって初めてレチノイド受容体に結合し、肌に作用します。

この変換過程のうち、最初の「レチノール → レチナール」のステップが律速段階(もっとも時間がかかるボトルネック)であるため、実際にトレチノインに変換される量はごくわずかです。つまり、レチノールを塗っても、肌の中で十分な量の活性型レチノイドが生まれにくいという構造的な弱点があります。


◎ドラッグストアで買える=治療目的には穏やかすぎる

レチノール配合化粧品が処方箋なしで購入できるのは、裏を返せば、それだけ作用が穏やかであり、医薬品レベルの効果は期待しにくいということです。

日本の薬機法上、化粧品として販売できる成分には安全性の観点から配合濃度や効能表示に制限があり、シミやしわに対して医学的に有意な改善をもたらすほどの効力は担保されていません。

医学的には通常、レチノールでは本格的なエイジングケアとしては不十分と考えられています。


◎ディフェリン(アダパレン)との違い

ディフェリンは合成レチノイドであり、レチノールのように体内での多段階変換を必要としません。レチノイン酸受容体(RAR)に直接的かつ選択的に結合し、ターンオーバー促進やコラーゲン合成促進といった作用を発揮します。この「直接結合」というメカニズムにより、レチノールに比べて効率的に肌へアプローチできるのが大きな違いです。

さらに、トレチノインと比較しても刺激反応(A反応)が穏やかであるため、レチノイド初心者からエイジングケアを始めやすいという利点があります。


◎レチノールとレチナールの違いにも注意

名前が似ているため混同されがちですが、「レチノール」と「レチナール」は別の物質です。レチナールはレチノールの代謝産物であり、律速段階をバイパスしてトレチノインに変換されるため、レチノールよりも効率的にエイジングケア効果を発揮できます。

当院で取り扱っているレチナールアクティブは、この「レチナール(レチナールデヒド)」を配合した医療用外用薬であり、市販のレチノール化粧品とは作用の質が異なります。

▶レチナールアクティブについて詳しく見る


レチナールアクティブ



以下に、ディフェリン・レチノール・レチナール・トレチノインの違いを整理します。


レチノール・レチナール・ディフェリン・トレチノインの違い




4 美容目的でのディフェリンの使い方と塗り方

4-1 基本の塗り方(洗顔後・頻度など)

・夜1回、洗顔後に豆粒大(a pea-sized)を顔全体に塗布
・1ヶ月後に刺激反応が落ち着いてきたら、朝にも塗布


4-2 刺激症状(A反応)に注意

レチノイド全般にいえることですが、肌が赤くなったり、ヒリヒリとした刺激感が出る「A反応」と呼ばれる副作用が生じることがあります。ディフェリンはトレチノインに比べると刺激が穏やかですが、初期はとくに慎重に様子をみましょう。

▶A反応対策について詳しく見る


ディフェリンA反応対策


4-3 妊娠・授乳中の使用は避ける


レチノイドには胎児に悪影響を及ぼすリスクがあるため、妊娠中や授乳中、あるいは妊娠を希望している方は使用を控えましょう。


4-4 注意点|使用できない人と紫外線対策

使用できない人: 妊娠中・授乳中の方、妊娠を希望している方は使用できません。

◉刺激反応: 比較的マイルドとはいえ、乾燥、赤み、ヒリヒリ感、皮むけなどの刺激反応が出る可能性があります。少量から、頻度を少なく(例:隔日など)始めるのがおすすめです。

◉保湿と紫外線対策: 使用中は肌が乾燥しやすくなるため、十分な保湿が重要です。また、日中は必ず日焼け止めを使用してください。当院では肌に優しいUVプロテクトミルクを取り扱っています。

◉医師への相談: エイジングケア目的で使用する場合でも、必ず医師に相談し、適切な指導のもとで使用を開始してください。自己判断での使用は避けましょう。


5 まとめ

▶︎ニキビ治療薬として広く知られるディフェリンは、そのレチノイドとしての作用機序から、エイジングケア(アンチエイジング)にも効果が期待できる薬剤です。シミや肌の質感改善など、実際の臨床研究でもその可能性が示唆されています。

▶︎他のレチノイドに比べて刺激がマイルドな傾向があり、エイジングケア初心者にも比較的取り入れやすい選択肢と言えるでしょう。ただし、妊娠中など使用できないケースや、乾燥・刺激感といった注意点もあります。

▶︎30代、40代から本格的なエイジングケアを始めたいと考えている方にとって、ディフェリンは有力な選択肢の一つです。興味のある方は、まずは皮膚科医に相談し、ご自身の肌に合った使い方のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

 

 こちらのクリニックのサイトもご覧下さい

 

【参考文献】

1 Recent Advances Regarding the Therapeutic Potential of Adapalene.
Aura Rusu, et al.
Pharmaceuticals
2020 Aug 28;13(9):217


2 Clinical Efficacy of Adapalene (Differin(®)) 0.3% Gel in Chilean Women with Cutaneous Photoaging
María Isabel Herane, et al.
J Dermatolog Treat
2012 Feb;23(1):57-64

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年2月14日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.11.09更新

 

【目次】

1. はじめに
2. 医学的な「皮脂分泌メカニズム」
3. 脂性肌の正しいスキンケア
4. まとめ


1 はじめに



「洗顔しすぎると、かえって皮脂が増える」

このような話を聞いたことはありませんか? 実際、AI検索でも「洗顔のしすぎは皮脂の過剰分泌を招く」という回答が返ってくることがあります。

しかし、医学的にはこれは誤解です。

とはいえ、「洗顔しても皮脂がすぐに浮いてくる」と感じる方が多いのも事実。今回は、オイリースキン(脂性肌)でお悩みの方へ、皮脂分泌の本当のメカニズムとオイリースキンの方に適したスキンケアを詳しく解説します。




2 洗顔しすぎると皮脂は増える?医学的な「皮脂分泌メカニズム」




皮脂分泌のメカニズム

2-1 顔のテカリ・オイリー肌になる原因とは

皮脂分泌はアンドロゲンがメインの調節因子で思春期以降に活性化されます。食事に関しては、インスリン・IGF-1が脂質生成を促進し、高GI食や乳製品で増加します。さらには遺伝的要因(一卵性双生児で均一)、年齢(15-35歳がピーク)、性別(男性>女性)、温度(1°C上昇で10%増加)、発汗(油性外観を増強)が影響する多因子調節系です(文献1)。

これを見ればわかるように、皮膚表面がオイリーであるとか乾燥しているとかは皮脂分泌には影響を与えません。洗顔でたとえ皮脂を取りすぎたとしても、皮脂腺での「生産量」が増えることはないのです。


2-2 なぜ「洗顔しすぎで皮脂が増える」という説が生まれたのか 

かなり前の話になりますが、興味深い実験結果が報告されました。同じ時間内に皮脂を採取するなら、1回で拭き取るより複数回に分けたほうが、より多くの皮脂が採取されたのです(文献2)。

この結果から「洗顔しすぎは皮脂の分泌量を増やす」という説が支持されました。しかし、これには別の理由があったのです。


2-3 洗顔しても皮脂が出るのは「皮脂貯蔵庫」のせいだった

皮脂の貯蔵システム

顔の皮脂には、巧妙な貯蔵システムが存在します。

2つの貯蔵庫の役割

皮脂腺の導管:Tゾーンなどでは、皮脂腺から皮膚表面へつながる管が巨大な貯蔵庫として機能
角質層:スポンジのように皮脂を蓄える第二の貯蔵庫

洗顔で表面の皮脂を取り除くと、毛細管現象により貯蔵庫から新しい皮脂が自動的に補充されます。これが「洗顔しても皮脂がすぐ出てくる」と感じる正体であり、「1回で拭き取るより複数回に分けたほうが多くの皮脂が採取された」理由でもあったのです(文献2)。


皮脂の「貯蔵庫」はカラにできるか?

皮脂の「貯蔵庫」をカラにできるか挑戦したことも報告されています(文献2)。

ボランティアの額に吸収紙を6時間にわたり10分ごとに貼付した後でも、圧迫すると大きな油球がまだ出てきました。また皮脂を溶解するエーテルを使った実験も行われましたが、やはり「貯蔵庫」を枯渇させることはできませんでした。

著者らは、皮脂の「貯蔵庫」を空にする生理学的な方法はないと結論づけています。


2-4 【結論】顔を洗いすぎるとどうなる?3つの真実

1️⃣皮脂の生産量は変わらない:洗顔しすぎても、皮脂腺での生産量が増えることはありません
2️⃣表面の皮脂は増えたように感じることも:貯蔵庫からの補充により、肌表面に出てくる皮脂の総量は一時的に増えたように感じられます
3️⃣過度な洗顔は肌トラブルの原因に:肌に必要な保湿因子が奪われ、皮膚のバリア機能がダメージを受け、肌トラブルの原因となります





3 脂性肌の正しいスキンケア|洗顔・保湿・成分選び



ポイント1:やさしい洗顔・洗浄しすぎを避ける
1日2回程度の適度な洗顔が勧められます(朝と夜、および汗をかいた後)。洗顔料は低刺激で肌を乾燥させすぎないものを用い、洗顔時にこすりすぎないよう注意しましょう。固形石鹸やスクラブ洗顔は肌を刺激するため、避けるのが賢明です。

大切なことは、皮脂を洗い流そうと一生懸命に洗いすぎないこと。洗顔は2〜3時間ほど皮膚表面の皮脂量を減少させますが、一生懸命に洗ってもその時間は延長しません。かえって肌への負担が増え、皮膚表面に炎症が生じれば、それによって皮脂分泌を増やしかねません。


ポイント2:保湿は必須
脂性肌でも保湿することは必要です。洗顔後や入浴後には軽いテクスチャーの保湿剤、たとえばジェルやローションタイプの保湿剤で肌を整えましょう。Tゾーンにはそれらを薄く塗布する程度で十分です。Uゾーンには皮膚の乾燥程度に応じて適切な保湿を行って下さい。

*インナードライという美容用語をよく耳にしますが、行うべきスキンケアに変わりはありません。皮膚バリアの機能が低下していると言いたいのでしょうが、適切な保湿こそが皮膚バリア機能を回復させます。肌が求めているのは特別なものではなく“地味に効く基本”です。


ポイント3:ノンコメドジェニック製品を選ぶ
毛穴づまりやニキビを防ぐため、スキンケア用品からメイク用品まで、すべて油分の少ないノンコメドジェニック処方のものを使いましょう。

ただし、「ノンコメドジェニック」にも落とし穴があります。それは一つ一つの製品が「ノンコメドジェニック」だとしても、重ねて使った場合に「ノンコメドジェニック」である保証はないということ。保湿のために化粧水、乳液、美容液、クリームと重ねて使うのではなく、シンプルな構成にすることです。


ポイント4:有効成分を活用
皮脂の分泌を抑制する成分をスキンケアに取り入れることも効果的です。
ナイアシンアミド(→高濃度ナイアシンアミド美容液
アゼライン酸(→医療機関専売アゼライン酸
レチノイド(トレチノインなど)(→レチノイド療法


ポイント5:汗をかきやすい環境を避ける
夏に肌がテカりやすいのは汗の分泌が増えるからです。汗をかきやすい環境ではこまめに汗を拭き取り、肌を清潔に保ちましょう。


ポイント6:日焼け止めを忘れない
SPF30、PA+++以上の日焼け止めを使いましょう。(→医療機関専売の日焼け止め)酸化亜鉛・酸化チタン配合製品は毛穴を塞ぎにくいとされています。日焼け止めは直接的に皮脂分泌を抑制するわけではありませんが、紫外線ダメージによる間接的な皮脂分泌亢進を予防します。


ポイント7:顔に触らない
洗顔、スキンケア、メイクアップ以外では顔に触れないようにしましょう。手の汚れや油が毛穴を詰まらせる原因になります。


ポイント8:あぶら取り紙を効果的に使う(テカリ対策)
こすらず、数秒当てて皮脂を吸収させます。手元にあぶら取り紙がなければ、ティッシュで皮脂を軽く押さえてティッシュオフしましょう。


ポイント9:「メイク崩れ」対策

対策1:スキンケアが肌に定着してからメイクアップへ
①化粧水・美容液・乳液で保湿
②数分待つ
③余分な油分を軽くティッシュオフ

対策2:崩れにくいベースメイク
④皮脂吸着成分(シリカなど)配合の化粧下地をTゾーンや小鼻周りにしっかり塗布。それ以外は薄く伸ばして塗る。
⑤数分待つ
⑥リキッドファンデを使う場合は薄く伸ばし、仕上げにルースパウダーを軽くのせます。パウダーファンデを使う場合も、オイリーな部分には先にルースパウダーを薄くつけておくことが効果的です。
⑦ファンデーションを塗ったら、さらに数分待ちます。

このように肌に定着させてから次のステップに進むことで、メイクの密着が向上し、化粧崩れの予防につながります。

対策3:お直しは「足す」より「戻す」

☑️テカり → いきなりパウダー追加はNG
まずあぶら取り紙/ティッシュで「押さえる」→ 必要ならごく薄くパウダー

☑️ムラ崩れ → 綿棒/スポンジで境目をなじませる





4 まとめ:美肌のための正しいアプローチ



◎洗顔によって一時的に皮脂によるテカリやベタつきは抑えることができますが、過剰な洗顔、頻回な洗顔では肌がもちません。

◎洗顔が皮脂の分泌を刺激するというのは医学的には誤りです。洗顔後すぐに皮脂が出てくるのは、皮脂の「貯蔵庫」から補充されているだけであり、皮脂腺での生産量が増えているわけではありません。

◎大切なのは「皮脂をゼロにする」のではなく「皮脂が暴れない肌に整える」ことなのです。


オイリースキン・毛穴のベタつきを根本から改善したい方へ

正しいスキンケアに加えて、クリニックでの専門的な治療を組み合わせることで、より効率的に「皮脂が暴れない肌」を目指すことができます。当院では以下のメニューが人気です。


スキンボトックス

皮脂腺に直接働きかけ、テカリや毛穴の開きを抑えます。

ケミカルピーリング

古い角質と過剰な皮脂を取り除き、ニキビのできにくい肌へ導きます。

レチノールピール

レチノイドのピーリング効果で肌のターンオーバーを正常化します。





【参考文献】

1. Oily skin: an overview
Sakuma TH, Maibach HI
Skin Pharmacol Physiol
2012;25(5):227-235

2. An investigation of the human sebaceous gland
Kligman AM, Shelly WB
J Invest Dermatol
1958;30:99-125

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月3日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.10.20更新


1 美白剤の「No.1」は科学的に決まっている

美容皮膚科にはサイエンスとビジネスの2つの側面がありますが、サイエンスの側から見たとき、美白剤のNo.1といえば、ここ数十年ハイドロキノンの王座は揺るぎないものがあります。美白剤のNo.2と目されていたロドデノールは、白斑症で大問題を引き起こし失脚しましたので、No.2は空席のまま。



美白剤の王座:イメージイラスト


No.1をハッキリさせることにどんな意義があるのか、No.2でもいいじゃないかという意見もあるでしょう。しかし、学問の世界では、No.1を越える結果を出すことが、学問の進歩を証明することになります。実はNo.2以下こそどうでもいい存在なのです。


ところで驚くことに、美容皮膚科のビジネスサイドに目をやると、美白剤の王者であるハイドロキノンの4倍とか17倍と謳われている美白剤が存在します。


2「ハイドロキノンの4倍」と謳うシスペラ(システアミン)の医学的評価

最初に美白効果が報告されたのは1960年代。強いイオウ臭があり、長らく商品化を見送られてきましたが、2010年に臭いを抑制する技術開発があり、ようやく日の目を見ました(文献1)。

「ハイドロキノンの4倍の美白作用」などと宣伝されていますが、それを裏付ける臨床試験は存在しません。

美容皮膚科学的には、美白剤の優劣は肝斑に対する有効性で競われ、その肝斑の最新のレビュー論文にどう書かれるかで、その美白剤の評価がわかりますが、実はシスペラはひと言も触れられていません。

最新のレビュー論文(文献2)に登場する美白剤は、ハイドロキノンアゼライン酸ビタミンC、それからポーラが開発したルシノールです。

**追加補足2025年9月**
2024年のレビュー論文(文献3)には登場しましたが、「システアミンは、ハイドロキノンに比べて有効性が劣る可能性があるものの、軽度から中等度の肝斑に対してハイドロキノンに替わる治療の選択肢となりえる。」と書かれています。

 

3 ルミキシル「17倍」の根拠はマッシュルームだった?販売中止の背景

「ハイドロキノンの17倍!」と謳われているのは、ルミキシル。これにいたっては、もうハイドロキノンとの比較試験も見当たりません。

しかし、17倍の根拠は見つけることができました。ルミキシルはハイドロキノンより17倍強力にマッシュルームのチロシナーゼ(メラニン色素を生成する反応の中で重要な酵素)を抑制したというデータが根拠です(文献4)。「17倍強力」の根拠は、なんと!マッシュルームだったのです。

こうしたチロシナーゼの実験では、マッシュルームのチロシナーゼが使われることが多いのは理解するにしても、それが実験と臨床効果の乖離を生んでいるという批判もあるので、ぜひヒトのチロシナーゼを使っていただきたい。

ルミキシルに必要なのは、マッシュルームを相手にするのではなく、人を対象にしてハイドロキノンと正々堂々勝負して、有効性を実証すること。


**追加補足2025年9月**

「17倍」と言い過ぎたからではないでしょうが、ルミキシルは、2024年に世界的に製造・販売が中止されています。

 

4 なぜ医師は今もハイドロキノンを選ぶのか?正しいリスク管理


ハイドロキノンの王座を狙う新参者からは、しばしばハイドロキノンのリスクが言及されますが、何十年にもわたり、リスクを回避する使用法が模索されています。

使い方を知っている「医師」の指導の元で使えば安全な製剤です。

私もその「医師」の一人ですと最後に付け加えておきます。他の医師より10倍詳しいと言いたいところですが、それはやめておきます。



▶当院のハイドロキノン処方(ナノHQ)について詳しく見る


 

 

【参考文献】
1)Clinical evaluation of efficacy,safety and tolerabirity of cysteamine 5% cream in comparison with modified Kligman's formula in subjects with epidermal melasma: A randomized, double-blind clinical trial study
Karrabi M, et al.
Skin Res Technol
2021;27:24-31


2) Melasma treatment: An Evidence-based review
McKesey J, et al.
2020;21:173-225

3) An Update on New and Existing Treatments for the Management of Melasma
Christian Gan, Michelle Rodrigues
Am J Clin Dermatol
2024 Sep;25(5):717-733

4) Short-sequence oligopeptides with inhibitory activity against mushroom and human tyrosinase
Anan Abu Ubeid,et al.
J Invest Dermatol.
2009;129(9):2242-2249

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年9月16日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.08.31更新

 

皮膚の老化の8割は紫外線が原因」――この衝撃的なフレーズを耳にしたことがある方は多いでしょう。

しかし、この「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」説、その根拠は一体どこにあるのでしょうか?長年、多くの専門家が引用しながらも、出典が不明確だったこの説。

本記事では、その起源を巡る探求の物語と、紫外線が皮膚の老化に与える影響、そして皮膚の老化防止のために私たちができることについて解説します。


肌の老化の80%は光老化

1 紫外線が引き起こす「光老化」とは?シワ・たるみ・シミの原因

まず基本的な事実として、紫外線が皮膚の老化の主要な原因であることは広く知られています。太陽光に含まれる紫外線(特にUVAとUVB)は、皮膚の深層部にまで到達し、コラーゲンやエラスチンといった肌のハリや弾力を保つ線維を破壊・変性させます。

▶ECM(細胞外マトリックス)製剤は、コラーゲン・エラスチンの合成促進を目的とした治療


スネコスプロファイロ



これにより、シワたるみシミといった皮膚の老化のサインが現れます。

▶シワ、たるみ、シミに対する標準治療


表情ジワ治療の代名詞 ボトックス・ゼオミン

切らないたるみ治療の王道 サーマクール

シミ取りの標準治療 Qスイッチレーザー



この紫外線による老化現象は「光老化」と呼ばれ、加齢による自然な老化とは区別されます。日常的に紫外線を浴びることで、光老化は着実に進行していくのです。


2 「皮膚老化の8割は紫外線」の根拠はどこから?出典を調査

ある高名な皮膚科教授の講演で、よく学術論文で引用される「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」というフレーズに話が及びました。

教授が疑問に思ったのは、多くの文献では明確な出典が示されていないこと。そこで教授は自分で調査したのですが、見つかったのは、皮膚ガンの原因の8割が紫外線という文献で、もしかしたらこれが皮膚の老化の話にすり替わったのではないかと推測されていました。

肌老化80%説の出典は医学誌「NEJM」

この話が妙に心に残り、私も文献を読んでいて「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」というフレーズを見つけるたびに、参考文献まで辿ることが習慣になりました。

そして、数年かかって、ついに「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」の出典は、医学界のトップジャーナルである ニューイングランドジャーナル (NEJM) であることを発見したのでした。

本当のところは?ヨーニ・ウイト教授の「見識」

「皮膚の老化の80%は紫外線が原因」という記述は、臨床研究の結果ではなく、この権威あるジャーナルのエディトリアルで "anecdotally"(科学的根拠は薄いが、経験上そう思われる)という断り書き付きで述べられていました。

エディトリアルというのは、同じ号に掲載されている医学研究に関連して、編集部からその分野を代表する専門家にお願いして書いてもらう解説記事。

つまり、「皮膚の老化の80%は紫外線が原因」は、厳密な研究データに基づく数値ではなく、その方面の世界の第一人者の「見識」だったのです。(*文末に紹介あり)



3 皮膚老化防止のために:データから見る紫外線対策と予防

皮膚の老化の80%は予防できる


「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」における8割という具体的な数値に厳密な科学的データがないとしても、紫外線が皮膚の老化の最大の外的要因であることに変わりはないでしょう。多くの皮膚科学的研究が、紫外線暴露とシワ、シミ、たるみなどの皮膚の老化との強い関連を示しています。

したがって、「8割」という数字の真偽はさておき、皮膚の老化防止のためには、紫外線対策が極めて重要であるという事実は揺るぎません。日焼け止めの使用、帽子や日傘の活用、紫外線が強い時間帯の外出を避けるなど、日常的なケアが将来の肌を守る鍵となるのです。

▶日常的なケア


クリニック専売の日焼け止め UVプロテクトミルク

光老化は治療できる トレチノイン



また、もう一つ強調したいのは、皮膚の老化の「8割」は予防可能だと言うこと。しかも、美容医療に頼ることなく、自分のケアでコントロールできると言うことにぜひ皆さんも勇気づけられて下さい。


4 まとめ

◉「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」という説は、厳密な研究データではなく、権威ある医学誌の論説における経験的な見解として広まったものでした。しかし、この説の起源がどうであれ、紫外線が皮膚の老化(光老化)の主要な原因であることは広く認められています。

◉皮膚の老化防止のためには、紫外線対策の重要性を理解し、日々のUVケアを実践することが何よりも大切です。日焼け止めを塗る、帽子をかぶるなどの基本的な対策が、健やかで若々しい肌を長く保つための最も効果的な方法と言えるのです。

◉皮膚の老化は、スキンケアで予防できるのです。



(参考文献)
Understanding Premature Skin Aging
Uitto J.
N Engl J Med.
1997;337(20):1463-1465


「皮膚老化の8割は紫外線」の発信源ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授について
ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授(1943年9月15日 – 2022年12月17/19日)は、1997年の ニューイングランドジャーナル (NEJM) 論説発表当時、ジェファーソン医科大学(トーマス・ジェファーソン大学)の皮膚科学・皮膚生物学科教授兼学科長、および生化学・分子生物学教授。結合組織生物学、分子遺伝学、そして皮膚老化の研究において国際的に認知された第一人者であり、コラーゲンやエラスチンなど皮膚の結合組織生化学と分子生物学の分野で業績を残し、特に遺伝性皮膚疾患や皮膚の老化に関する研究で世界的に著名でした。生涯で1,100編以上の学術論文(査読付き論文776編を含む)を発表し、総被引用数は7万件を超えるとも推定される非常に影響力の大きい科学者でした。

1997年に ニューイングランドジャーナル (NEJM) に寄稿した総説「Understanding premature skin aging(皮膚の早期老化の理解)」では、紫外線による真皮コラーゲン線維の損傷や異常なエラスチン蓄積(いわゆる日光弾性変性)が、自然老化とは異なる皮膚老化像をもたらすことを解説しました。この論考は、同号に掲載されたG.J.Fisherらの研究(紫外線による皮膚の分子病理pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)を踏まえ、光老化の分子基盤を総括したもので、美容皮膚科学の観点からも極めて示唆に富む内容でした。

ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授は2022年12月、79歳で逝去されましたが、晩年まで研究と教育への情熱は衰えず、亡くなる年まで継続して論文を発表し続けていました。教授の死に際し、各国の皮膚科学会からは追悼記事が発表されました。

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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