2021.11.09更新

「洗顔しすぎると、かえって皮脂が増える」

洗顔でかえって皮脂は増えるのか!?

このような話を聞いたことはありませんか?実際、AI検索でも「洗顔のしすぎは皮脂の過剰分泌を招く」という回答が返ってくることがあります。

しかし、医学的にはこれは誤解です。

とはいえ、「洗顔しても皮脂がすぐに浮いてくる」と感じる方が多いのも事実。今回は、顔の皮脂が多いと悩む方へ、皮脂分泌の本当のメカニズムを医学的根拠とともに解説します。

皮脂分泌の真実:ホルモンが司る精密なシステム

皮脂の役割は、皮膚表面の保護ですが、その分泌量は、肌表面がオイリーだろうとドライだろうと変わるものではありません。皮脂分泌は皮脂腺内の細胞の分化、脂質の蓄積、そしてホルモンや環境要因など様々な要素によって複雑に調節されています(文献1)。

つまり、洗顔でたとえ皮脂を取りすぎたとしても、皮脂腺での「生産量」が増えることはないのです(文献1)。

なぜ「洗顔しすぎると皮脂が増える」説が生まれたのか?

もうずいぶん前の話ですが、興味深い実験結果が報告されました。同じ時間内で皮脂を採取する際、1回で拭き取るより複数回に分けた方が、より多くの皮脂が採取されたのです(文献2)。

この結果から「洗顔しすぎは皮脂の分泌量を増やす」という説が支持されました。しかし、これには別の理由があります。


皮脂の「貯蔵庫」システムが鍵

顔の皮脂には、巧妙な貯蔵システムが存在します。

2つの貯蔵庫の役割
1)皮脂腺の導管:Tゾーンなどでは、皮脂腺から皮膚表面へつながる管が巨大な貯蔵庫として機能
2)角質層:スポンジのように皮脂を蓄える第二の貯蔵庫

洗顔で表面の皮脂を取り除くと、毛細管現象により貯蔵庫から新しい皮脂が自動的に補充されます。これが「洗顔しても皮脂がすぐ出てくる」と感じる正体であり、また「1回で拭き取るより複数回に分けた方が、より多くの皮脂が採取された」理由だったのです(文献2)。


顔を洗いすぎるとどうなる?3つのポイント

1. 皮脂の生産量は変わらない
洗顔しすぎても、皮脂腺での生産量が増えることはありません。

2. 表面の皮脂は増えたように感じることも
貯蔵庫からの補充により、肌表面に出てくる皮脂の総量は一時的に増えたように感じられます。

3. 過度な洗顔は肌トラブルの原因に
肌に必要な保湿因子が奪われ、皮膚のバリア機能がダメージを受け、肌トラブルの原因となります。


まとめ:美肌のための正しい洗顔法

◉洗顔によって一時的に皮脂によるテカリやベタつきは抑えることができますが、過剰な洗顔、頻回な洗顔では肌がもちません。

◉ただ、洗顔が皮脂の分泌を刺激するというのは間違いです。


【参考文献】

1. Oily skin: an overview
Sakuma TH, Maibach HI
Skin Pharmacol Physiol
2012;25(5):227-235

2. An investigation of the human sebaceous gland
Kligman AM, Shelly WB
J Invest Dermatol
1958;30:99-125

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年7月7日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.10.20更新


美容皮膚科にはサイエンスとビジネスの2つの側面がありますが、サイエンスの側から見たとき、美白剤のNo.1といえば、ここ数十年ハイドロキノンの王座は揺るぎないものがあります。美白剤のNo.2と目されていたロドデノールは、白斑症で大問題を引き起こし失脚しましたので、No.2は空席のまま。


美白剤の王座:イメージイラスト


No.1をハッキリさせることにどんな意義があるのか、No.2でもいいじゃないかという意見もあるでしょう。しかし、学問の世界では、No.1を越える結果を出すことが、学問の進歩を証明することになります。実はNo.2以下こそどうでもいい存在なのです。


ところで驚くことに、美容皮膚科のビジネスサイドに目をやると、美白剤の王者であるハイドロキノンの4倍とか17倍と謳われている美白剤が存在します。

「ハイドロキノンの4倍!」と謳っているのは、シスペラ(一般名システアミン)

最初に美白効果が報告されたのは1960年代。強いイオウ臭があり、長らく商品化を見送られてきましたが、2010年に臭いを抑制する技術開発があり、ようやく日の目を見ました(文献1)。

「ハイドロキノンの4倍の美白作用」などと宣伝されていますが、それを裏付ける臨床試験は存在しません。

美容皮膚科学的には、美白剤の優劣は肝斑に対する有効性で競われ、その肝斑の最新のレビュー論文にどう書かれるかで、その美白剤の評価がわかりますが、実はシスペラはひと言も触れられていません。

最新のレビュー論文(文献2)に登場する美白剤は、ハイドロキノン、アゼライン酸、ビタミンC、それからポーラが開発したルシノールです。

**追加補足2025年9月**
2024年のレビュー論文(文献3)には登場しましたが、「システアミンは、ハイドロキノンに比べて有効性が劣る可能性があるものの、軽度から中等度の肝斑に対してハイドロキノンに替わる治療の選択肢となりえる。」と書かれています。

 


「ハイドロキノンの17倍!」と謳われているのは、ルミキシル。これにいたっては、もうハイドロキノンとの比較試験も見当たりません。

しかし、17倍の根拠は見つけることができました。ルミキシルはハイドロキノンより17倍強力にマッシュルームのチロシナーゼ(メラニン色素を生成する反応の中で重要な酵素)を抑制したというデータが根拠です(文献4)。「17倍強力」の根拠は、なんと!マッシュルームだったのです。

こうしたチロシナーゼの実験では、マッシュルームのチロシナーゼが使われることが多いのは理解するにしても、それが実験と臨床効果の乖離を生んでいるという批判もあるので、ぜひヒトのチロシナーゼを使っていただきたい。

ルミキシルに必要なのは、マッシュルームを相手にするのではなく、人を対象にしてハイドロキノンと正々堂々勝負して、有効性を実証すること。


**追加補足2025年9月**

「17倍」と言い過ぎたからではないでしょうが、ルミキシルは、2024年に世界的に製造・販売が中止されています。

 

ハイドロキノンの王座を狙う新参者からは、しばしばハイドロキノンのリスクが言及されますが、何十年にもわたり、リスクを回避する使用法が模索されています。

使い方を知っている「医師」の指導の元で使えば安全な製剤です。

私もその「医師」の一人ですと最後に付け加えておきます。他の医師より10倍詳しいと言いたいところですが、それはやめておきます。



【参考文献】
1)Clinical evaluation of efficacy,safety and tolerabirity of cysteamine 5% cream in comparison with modified Kligman's formula in subjects with epidermal melasma: A randomized, double-blind clinical trial study
Karrabi M, et al.
Skin Res Technol
2021;27:24-31


2) Melasma treatment: An Evidence-based review
McKesey J, et al.
2020;21:173-225

3) An Update on New and Existing Treatments for the Management of Melasma
Christian Gan, Michelle Rodrigues
Am J Clin Dermatol
2024 Sep;25(5):717-733

4) Short-sequence oligopeptides with inhibitory activity against mushroom and human tyrosinase
Anan Abu Ubeid,et al.
J Invest Dermatol.
2009;129(9):2242-2249

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年9月16日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.08.31更新

 

「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」――この衝撃的なフレーズを耳にしたことがある方は多いでしょう。

しかし、この「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」説、その根拠は一体どこにあるのでしょうか?長年、多くの専門家が引用しながらも、出典が不明確だったこの説。

本記事では、その起源を巡る探求の物語と、紫外線が皮膚の老化に与える影響、そして皮膚の老化防止のために私たちができることについて解説します。

肌の老化の8割は紫外線が原因


紫外線が引き起こす「光老化」とは

まず基本的な事実として、紫外線が皮膚の老化の主要な原因であることは広く知られています。太陽光に含まれる紫外線(特にUVAとUVB)は、皮膚の深層部にまで到達し、コラーゲンやエラスチンといった肌のハリや弾力を保つ線維を破壊・変性させます。これにより、シワ、たるみ、シミといった皮膚の老化のサインが現れます。この紫外線による老化現象は「光老化」と呼ばれ、加齢による自然な老化とは区別されます。日常的に紫外線を浴びることで、光老化は着実に進行していくのです。

「皮膚老化の8割は紫外線」説の起源を探る旅

ある高名な皮膚科教授の講演で、よく学術論文で引用される「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」というフレーズに話が及びました。

教授が疑問に思ったのは、多くの文献では明確な出典が示されていないこと。そこで教授は自分で調査したのですが、見つかったのは、皮膚ガンの原因の8割が紫外線という文献で、もしかしたらこれが皮膚の老化の話にすり替わったのではないかと推測されていました。

この話が妙に心に残り、私も文献を読んでいて「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」というフレーズを見つけるたびに、参考文献まで辿ることが習慣になりました。

そして、数年かかって、ついに「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」の出典は、医学界のトップジャーナルである ニューイングランドジャーナル (NEJM) であることを発見したのでした。


「皮膚の老化の80%は紫外線が原因」という記述は、臨床研究の結果ではなく、この権威あるジャーナルのエディトリアルで "anecdotally"(経験的に、逸話として)という断り書き付きで述べられていました。

エディトリアルというのは、同じ号に掲載されている医学研究に関連して、編集部からその分野を代表する専門家にお願いして書いてもらう解説記事。

つまり、「皮膚の老化の80%は紫外線が原因」は、厳密な研究データに基づく数値ではなく、その方面の世界の第一人者の「見識」だったのです。(*文末に紹介あり)



データはなくとも無視できない紫外線対策の重要性

「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」における8割という具体的な数値に厳密な科学的データがないとしても、紫外線が皮膚の老化の最大の外的要因であることに変わりはないでしょう。多くの皮膚科学的研究が、紫外線暴露とシワ、シミ、たるみなどの皮膚の老化との強い関連を示しています。

したがって、「8割」という数字の真偽はさておき、皮膚の老化防止のためには、紫外線対策が極めて重要であるという事実は揺るぎません。日焼け止めの使用、帽子や日傘の活用、紫外線が強い時間帯の外出を避けるなど、日常的なケアが将来の肌を守る鍵となるのです。

また、もう一つ強調したいのは、皮膚の老化の「8割」は予防可能だと言うこと。しかも、美容医療に頼ることなく、自分のケアでコントロールできると言うことにぜひ皆さんも勇気づけられて下さい。


まとめ

◉「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」という説は、厳密な研究データではなく、権威ある医学誌の論説における経験的な見解として広まったものでした。しかし、この説の起源がどうであれ、紫外線が皮膚の老化(光老化)の主要な原因であることは広く認められています。

◉皮膚の老化防止のためには、紫外線対策の重要性を理解し、日々のUVケアを実践することが何よりも大切です。日焼け止めを塗る、帽子をかぶるなどの基本的な対策が、健やかで若々しい肌を長く保つための最も効果的な方法と言えるのです。

◉皮膚の老化は、スキンケアで予防できるのです。



(参考文献)
Understanding Premature Skin Aging
Uitto J.
N Engl J Med.
1997;337(20):1463-1465


*「皮膚老化の8割は紫外線」の発信源ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授について
ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授(1943年9月15日 – 2022年12月17/19日)は、1997年の ニューイングランドジャーナル (NEJM) 論説発表当時、ジェファーソン医科大学(トーマス・ジェファーソン大学)の皮膚科学・皮膚生物学科教授兼学科長、および生化学・分子生物学教授。結合組織生物学、分子遺伝学、そして皮膚老化の研究において国際的に認知された第一人者であり、コラーゲンやエラスチンなど皮膚の結合組織生化学と分子生物学の分野で業績を残し、特に遺伝性皮膚疾患や皮膚の老化に関する研究で世界的に著名でした。生涯で1,100編以上の学術論文(査読付き論文776編を含む)を発表し、総被引用数は7万件を超えるとも推定される非常に影響力の大きい科学者でした。

1997年に ニューイングランドジャーナル (NEJM) に寄稿した総説「Understanding premature skin aging(皮膚の早期老化の理解)」では、紫外線による真皮コラーゲン線維の損傷や異常なエラスチン蓄積(いわゆる日光弾性変性)が、自然老化とは異なる皮膚老化像をもたらすことを解説しました。この論考は、同号に掲載されたG.J.Fisherらの研究(紫外線による皮膚の分子病理pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)を踏まえ、光老化の分子基盤を総括したもので、美容皮膚科学の観点からも極めて示唆に富む内容でした。

ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授は2022年12月、79歳で逝去されましたが、晩年まで研究と教育への情熱は衰えず、亡くなる年まで継続して論文を発表し続けていました。教授の死に際し、各国の皮膚科学会からは追悼記事が発表されました。

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.06.30更新

レーザーを使うのではなく、薬を飲んで治療するシミとして有名な肝斑ですが、このときの薬、トラネキサム酸が肝斑に有効であることを初めて報告したのは、紛れもなく日本人。ただし、その論文は日本語で書かれているため、世界的にはまったく認知されていません。

つい最近まで、肝斑にトラネキサム酸を使うのも日本だけの話で、アジアの美容皮膚科医からも不思議がられていたほど。ところが日本独自の風習(?)と思われていたそのトラネキサム酸の内服療法も少しずつ世界に知られるようになり、システマティック・レビューにも大きく取り上げられるまでになりました。ようやく日の目を見たことに、道を拓かれた先人には素直に敬意を表したいと思います。

ところが、そのシステマティック・レビューでも、よく見ると、日本人の論文はごく初期の研究として紹介されるだけ。現在この領域を牽引しているのは、韓国人やインド人の研究者で、この分野ですら、もう完全に日本は先を越されて、その姿が見えなくなってしまいました。

日本にも美容の専門医も多くいれば、大学にも美容の講座もありますが、世界的に見たとき、美容医学にまったく貢献できていません。学問的なレベルが、日本の美容医療のレベルを正直に物語ってしまっているようで残念でなりません。

以前、韓国と日本の美容関連の医師が集う合同のシンポジウムがあったとき、合同とは名ばかりで、実際には韓国の先生方の貴重なお話しを、日本人医師たちが、ただただありがたく拝聴する、一方的な会になったことを悪夢のように思い出しました。

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.06.24更新

レーザートーニングは、日本美容医療業界の看板施術といってもいいでしょう。何しろ世界の趨勢から大きくズレていても、国内では相変わらず肝斑の標準治療として堂々君臨しているのですから。

でも、忖度なしにハッキリ言って、「レーザートーニングは質の悪い対症療法に過ぎない」。「質(しつ)の悪い」と読むか、「質(たち)の悪い」と読むかは読者におまかせします。

最近のレビュー論文では、レーザートーニングの問題点として、再発率の高さ、白斑の発生リスク、肝斑の特徴的所見である表皮基底膜の破綻をさらに悪化させかねないという懸念を挙げています。

日本の肝斑治療におけるレーザートーニングへの偏重は異様です。

先駆的な業績を残された先生には敬意を表しますし、真面目に取り組んでおられる先生もいらっしゃることは承知していますが、私からすれば、トーニングは「アリ地獄」のように見えて仕方ありません。レーザーでメラニンを叩くのだから一時的には効果が現れることはあります。しかし肝斑の本質に効いてないから、再発が避けられません。

続けていれば効果は続くかもしれないが白斑のリスクが高まる、やめたら再発が待っている、もがけばもがくほど治療費がかさんでいく。こうした「アリ地獄」の構図が透けて見えるから、トーニングは「質の悪い対症療法」としか言いようがありません。


最新のシステマティック・レビューで、レーザートーニングが、third-lineの治療と評価されたことは真剣に受け止めるべきでしょう。世界の潮流から外れるのは一向に構いませんが、世界から嘲笑の的にされるのは勘弁して欲しいと切実に思います。



(参考文献)

1) Melasma Treatment: An Evidence-Based Review.
McKesey J,et al
Am J Clin Dermatol
2020;21(2):173-225

2) Melasma: Updates and perspectives.
Kwon SH,et al
Exp Dermatol
2019;28(6):704-708

3) Melasma pathogenesis: a review of the latest research, pathological findings, and investigational therapies.
Rajanala S,et al
Dermatol Online J
2019;25(10):1-6

 

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.06.15更新

肝斑の原因としては、日光、女性ホルモン、遺伝的素因を挙げるのが一般的ですが、日本では、以前からスキンケアでの「擦りすぎ」が肝斑の原因であると、高名な医師が主張されていて、その迫力に押し流されたのか、日本では、ほとんどの美容皮膚科医は、「擦りすぎ」が肝斑の原因、少なくとも悪化させる要因と考えるようになっています。

しかし、「擦りすぎ」が肝斑の原因というなら、色素沈着と同じになってしまいます。「擦りすぎ」でできるのは色素沈着であって、肝斑ではないという素朴な意見が、なぜ広がらないのか、長年この業界にいてもよくわかりません。

今回、クリニックでの肝斑治療の方針を改正するにあたり、ここ数年の主要な論文に目を通しましたが、大変不思議なことに、「擦りすぎ」を議論しているのは日本だけ。世界では誰も「擦る」ことなんて問題にしていません。


でも、確かに日本女性が「擦りすぎ」ていることは認めざるを得ません。スコープで肌理の状態を観察するようになってから、肝斑の好発部位である頬骨のあたりで、まともに肌理が残っている人にはほとんどお目にかかれません。実は日本女性の過剰なスキンケアは、世界的にも有名なのだとか。

「擦りすぎ」たら、色素沈着になるのは当たり前(もともとメラニン色素を多めに含む東洋人の肌は、炎症から色素沈着をきたしやすい)。おそらく日本女性では、肝斑と色素沈着は混在していることが多いのでしょう。

実際のシミ診療では、厳密に組織診断することはなく、見た目で判断して、治療をすすめます。そうなら日本の肝斑治療は、肝斑と色素沈着の「両面攻撃」でなければならない。今回の治療指針の改訂では、これまでのトラネキサム酸内服への偏重を改め、美白剤(ハイドロキノンなど)を早い段階から使用するようにしました。

 

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.06.08更新

 

コロナ禍で多少の時間の余裕もできたため、Amazonや神田神保町の大型書店で手当たり次第に美容関連の本を買い求めひたすら読み倒しています。そうした中で、肝斑のことを、「もやっと」とか「ぼんやりと」したシミと説明してある本が多いことに気づきました。

肝斑は決してそんな霞や雲のようなものではなく、むしろ境界はハッキリしていることが多いもの。もし、ほんとうに「もやっと」とか「ぼんやりと」したシミが頬にあったとしたら、肝斑というより、何らかの、おそらくコスメによる接触性皮膚炎やスキンケアでの擦りすぎで生じる色素沈着の可能性が高いでしょう。

だいたい本当に「もやっと」、「ぼんやりと」しているのなら、何のために治療するのかわかりません。大きさ、範囲がハッキリしないと、効果の判定ができないからです。効いているのか、いないのか後で判断できない治療は最初からするべきでない。

もしかしたら、美容業界全体で、肝斑の診断基準が甘くなっているのでしょうか?

3年ぶりに当院の肝斑の治療方針をブラッシュアップする作業に取りかかっています。肝斑は美容皮膚科医にとって難関ですから、気合いを入れて最近の主要文献を読み込んでいます。

1)日本人の特殊性を考慮しつつも、世界の標準治療に準拠する。
2)レーザートーニングに否定的なスタンスは変わらない。
3)これまでは1日3回のトランサミン内服が続けられない方には、「肝斑治療はあきらめましょう」と突き放してきましたが、それでは冷たすぎると反省して、手を取って導くほどでなくても、行く手を指し示してあげられるほどには優しい肝斑治療を目指す。

以上が改正の要点になります。

 

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.06.04更新


2017年に発表されたオイリースキンの総説(まとめ的論文)では、皮脂分泌を抑えるコスメ成分も出てきます。手元にオイリースキン向けのコスメがあったら、成分を照らし合わせてみて下さい。

取り上げられていたのは、
・ナイアシンアミド(ニコチン酸アミド)
・グリーンティー
・Lカルニチン
の3つ。

なお、日本では皮脂を抑制する効能があるとして、「米エキス」が、この効能では初めて医薬部外品として承認されています。現在は製品化されているようです。

ビタミンCは?と思う方は相当の美容通。確かに、日本では「ビタミンCは皮脂を抑える」とよく言われています。しかし、どんなに調べてもその根拠が見つからないし、だいたい英語の文献ではそんなこと書かれていません。

日本語の文献もよくよく観察すると、皮膚科寄りの「硬派」な本で書かれることはなく、もっぱら美容寄りの「軟派」な本での定番表現のようです。


もしかしたら、偉い先生が、個人的見解として口にしたことが、いつのまにやら美容業界では医学的事実のようになったのかもしれません。ありがちな話です。


(参考文献)
1)Oily skin:A review of treatment options
Endly DC,Miller RA
J Clin Aesthet Dermatol
2017;10(8):49-55

2)ニキビや毛穴の開きが気になるひとへの化粧品
小林美和
美容皮膚医学BEAUTY
2019;2(7):50-58

3)Meeting the Challenges of Acne Treatment in Asian Patients:A Review of the Role of Dermocosmetics as Adjunctive Therapy.
Goh CL,et.al
J Cutan Aesthet Surg
2016;9(2):85-92

 

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.05.21更新

オイリースキンについは、皮膚科の領域では、ニキビや脂漏性皮膚炎と関わりがあり、それぞれ患者数は多いはずですが、学問的に興味を持たれないらしく、文献は多くありません。

それでも比較的新しい総説(医学雑誌に掲載された「まとめ」のような論文)を中心に、現状をまとめてみました。はたしてオイリースキンは治療で改善できるのでしょうか?

皮脂の抑制に有効と認められているのは、

■内服薬
1)イソトレチノイン(アキュテイン)・・皮脂を80%抑えるというデータもあります。米国では重症のニキビに対する最後の切り札的な存在なのもうなずけます。しかし催奇形性、精神疾患のリスクがあり、軽々しく使える薬ではありません。米国では催奇形性への対策として厳格な避妊のプログラムが決められていて、それに基づいて使われています。薬剤のリスクに及び腰な日本で承認される見込みはありません。こうしたハイリスクな薬でも、一部のクリニックで販売されていますが、口先ばかりのリスク説明だけでいいのか、正直不安を覚えます。
2)スピノロラクトン
スピロノラクトンには抗男性ホルモン作用があり、美容医療においては、皮脂の抑制や女性の脱毛症、多毛症の治療として使われることがあります。
3)「経口避妊薬」
以前に比べ「経口避妊薬」は、生理に関連した病気や症状の緩和目的に積極的に使われているようです。単なる避妊目的というより、生理周期をしっかりコントロールしようということでしょうか。そうなると「経口避妊薬」という名称も、古くさく感じられます(しかし、英語もoral contraceptivesのままだから仕方ありませんか・・)。美容医療では、ガイドラインにはない使用法ですが、大人ニキビに使われることがあります。

注)当院では1)~3)のいずれも処方していません。

■外用剤
4)レチノイド(トレチノイン療法)・・意外なことに毛穴は縮小させるものの、皮脂を抑えるデータは不十分という評価でした。レチノイドは、当院ではメラフェードを取り扱っています。ゼオスキンの基本的なコンセプトもトレチノイン療法です。

■その他
5)光線力学療法
昔からニキビ治療として一部の施設で行われていますが、広まることもなく、大きな話題にもならずそのままですから、効果のほども推して知るべしかと。
6)ボツリヌストキシン(ボトックス)
promising treatment option(有望な治療選択肢)と評価されています。炎症を起こす神経伝達物質も抑え、敏感肌タイプのオイリースキンにも有用とか。この場合のボトックスは、当院でボトックスリフトと呼んでいますが、細かく皮内に注射するボトックスのこと。欠点としては、鼻に施術できないことが挙げられます。

このように並べると、美容クリニックにとって、オイリースキンに有効な施術は限られていて、事実上ボトックス一択のようです。

 

(参考文献)
1)Oily skin:A review of treatment options
Endly DC,Miller RA
J Clin Aesthet Dermatol
2017;10(8):49-55

2)Oily sensitive skin:A review of management options
Ji YH,et.al
J Cosmet Dermatol
2020;19:1016-1020

3)Oily skin:An overview
Sakuma TH,Maibach HI
Skin Pharmacol Physiol
2012;25:227-235

 

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.05.09更新

皮脂は、スキンケアの本の中では、「最高の天然クリーム」などと持ち上げられるかと思えば、オジサンの顔の上にあると、ギトギトして気持ち悪いと毛嫌いされる存在。

その皮脂の過剰な分泌で起こる「オイリースキン」、その対策といえば、ネットでも書籍でもさまざまに言い尽くされていますが、ほんとうのところ何が正解なのでしょう?

ここでは、米国皮膚科学会のサイトに掲載されているオイリースキン対策を紹介します。おそらく世界でもっとも信用できるアドバイスでしょう。


①洗顔は朝・晩、そして運動の後。
②スキンケア用品は、オイル・フリーまたはノンコメドジェニックと明記されているものを使う。
③低刺激性の洗顔料を泡立てて使う。
④油分、アルコール分をベースに作られたクレンジング料は使わない。
⑤毎日保湿剤を使う。
⑥日焼け止めを塗って外出する。
⑦化粧品はオイルフリー、ウォーターベースのものを選ぶ。
⑧メイクをしたまま寝ない。
⑨あぶらとり紙を上手に使う。ただし決して顔をこすらないように。
⑩普段顔を触らないように。触っていいのは、スキンケア、メイクアップのときだけ、もちろん、まずは手をキレイにしてから。

日々オイリースキンと悪戦苦闘している方からしたら、ありふれたアドバイスに思えるかもしれませんが、正しい方法というのは、目新しくはないものです。それでも、すべてを徹底することは、結構難しいのではないでしょうか。

あなたのお悩みが少しでも解消されますように。

 

 

 

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