突然ですが、みなさんはお風呂上がり、どのように過ごしていますか?
「お風呂から出たら3分以内に保湿しないと肌が砂漠化する!」
「5分以内が勝負!」
そんな都市伝説のような強迫観念に駆られて、びしょ濡れのまま裸で化粧水ボトルへダイブしていませんか?
今日は、そんな「入浴後の保湿タイミング」について、最新の医学論文やガイドラインを紐解きながら、白黒はっきりつけていきたいと思います。
■風呂上がりの保湿、タイムリミット(何分以内)に医学的根拠はあるのか?
「入浴後、肌の水分は急速に蒸散する」
これは事実です。だからこそ、「肌に水分が残っているうちに保湿剤で蓋をしよう」という理論は理にかなっています。
しかし、「それが3分以内なのか?5分以内なのか?」という時間の数字に関しては、実は明確な決まりはありません。いくつかの興味深い研究結果をご紹介しましょう。
✅ 健康な肌なら、30分遅れても結果は変わらない(文献1)
2022年の研究(Nguyenら)では、健康な成人において「入浴直後」に保湿した場合と、30分後」に保湿した場合を比較しました。結果はなんと、「統計的に有意な差はなし」。
つまり、健康な肌であれば、バスローブを羽織って少し涼んでから塗っても、保湿効果に大きな違いはないのです。
✅ さすがに「塗らない!」はNG(文献2)
一方で、別の研究(Uedaら 2022)では、入浴直後(5分以内)に塗った場合と「塗らない」場合を比較しています。これに関しては、やはり直後に塗った方が肌の水分量が高かったという結果が出ています。
✅ アトピー肌・乾燥肌の人は「急ぐ価値あり」(文献3)
ここが重要なポイントですが、アトピー性皮膚炎のお子さんを対象にした研究(Wulandariら 2021)では、30分待つよりも「直後」に塗った方が明確に皮膚水分量が高かったというデータがあります。バリア機能が低下している肌の場合は、水分が逃げるスピードが速いため、早めのケアが有効であることが示唆されます。
■「塗らない」という選択肢だけはない
ここでタイトルの「大バカ」の話に戻ります。
タイミング云々の前に、「保湿剤を塗るか、塗らないか」で言えば、圧倒的に「塗った方がいい」のです。
入浴中、肌の天然保湿因子(NMF)や皮脂はお湯に溶け出してしまいます。無防備になった肌を放置すれば、当然乾燥し、小じわや肌荒れの原因になります。
もし、「普段のケアだけでは乾燥が改善しない」「もっと内側から潤わせたい」と感じている場合は、クリニックの肌に潤いをもたらす[ボライト・フィロルガ水光注射]などのスペシャルケアも選択肢の一つです。
「慌てなくていいなら、後でいいや」と思ってそのまま寝てしまうのが、一番のNG行為です。
■結論:ベストな保湿タイミングは秒数よりも「湿っているうちに」
日本皮膚科学会のガイドラインでも、入浴後の保湿については「◯分以内」と断定せず、「できるだけ速やかに」という表現にとどめています(文献4)。これは、万人に当てはまる厳密なタイムリミットのエビデンスがないからです。
私からの提案はこうです。
1️⃣秒単位で焦る必要はない
お子さんを着替えさせたり、自分の髪を拭いたりする時間は十分あります。リラックスタイムを犠牲にしてまでパニックになる必要はありません。
2️⃣「つっぱり感」が出る前が目安
乾燥して皮膚が「つっぱる」と感じるのは、すでに角層が収縮し始めているサイン(不快感)です。この不快感が出る前に塗るのが、精神衛生的にも肌感覚的にもベストです。
3️⃣キーワードは「湿っているうちに」
時間が経って乾ききった肌に塗るよりも、少し湿り気が残っている肌に塗る方が、薬剤の伸びも良く、水分を封じ込める効果(occlusive効果)が期待できます。
【まとめ】
☑️慌てて塗るバカ:そこまで焦らなくても、30分以内なら結果はほぼ同じ(健康肌の場合)。
☑️塗らない大バカ:乾燥・老化へ一直線。
☑️賢い人:焦らず、でも肌が湿っているうちに、確実に塗る。
美容は「継続」が全てです。毎日「急がなきゃ!」とストレスを感じるよりも、ゆったりとした気持ちで、丁寧に保湿ケアを行って下さい。
ただ、どうしても乾燥による小じわが気になる場合は、肌の保水力を直接高める[ボライト、フィロルガ水光注射、プロファイロ]などで土台を整えてあげるのも近道になります。
乾燥や肌トラブルでお悩みの方は、いつでも当院にご相談ください。あなたの肌質に合った最適な保湿剤とケア方法をご提案します。
記事中で紹介した施術・製剤
【参考文献】
1) Moisturizing effectiveness of immediate compared with delayed moisturization
Kim Han Nguyen, et al.
J Cosmet Dermatol
2022 Oct;21(10):5134-5140
2) Optimal application method of a moisturizer on the basis of skin physiological functions
Yukiko Ueda, et al.
J Cosmet Dermatol
2022 Jul;21(7):3095-3101
3) Comparison of skin hydration degrees based on moisturizing time in children’s atopic dermatitis
Puteri Wulandari, et al.
Bali Med J
2021;10(1):194-198
4) アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024
佐伯 秀久, et al.
日皮会誌
2024; 134(11): 2741-2843

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月23日)





