2022.05.18更新

骨粗鬆症は知っていても皮膚粗鬆症は知らない人の方が多いに違いない。でもご安心(?)下さい。きっとあなたも身につまされるときがやってきます。

みんなの皮膚粗鬆症


皮膚粗鬆症とは、究極の皮膚の老化症状のこと。皮膚がペラペラにうすくなって脆弱になり、裂けたり、剥けやすくなります。ご高齢の方がケアされている施設にいくと、手足に包帯している方がたくさんいることに気づくことでしょう。


典型的な症状を紹介します。
①皮膚萎縮
皮膚がペラペラにうすく、透けて見えるようになること。日光に暴露されていた部分に生じます。

皮膚萎縮


②偽瘢痕
傷つけた覚えがなくても、自然に真皮に亀裂が生じて瘢痕化します。70歳以上の20~40%に見られ、女性に多いとされます。

偽瘢痕

③老人性紫斑
わずかな外傷でも、また外傷の覚えがなくても生じます。血管が破れてできることもありますが、血管から血液が漏れ出て生じるとも言われます。

老人性紫斑



こうした皮膚粗鬆症の根本原因は加齢。60歳前後から見られるようになり、70歳以上では多くの人で認められるようになります。ということは、人生100年時代にはきわめてありふれた、みんなに共通した肌トラブルになるはずです。

「皮膚粗鬆症」という言葉が生まれたのは2007年。まだ疾患名とは認められていませんが、
その存在が知られるようになり、予防することが一般的になれば、それはきっとご高齢の方のQOLの改善につながります。自分の肌がどうなるかということだから、誰にとっても人ごとではありません。

50歳をすぎたら、顔のスキンケアにかける熱意をぜひボディ(特に前腕、下腿)にも分けて下さい。乾燥とそれによるかゆみを防ぐ保湿ケアにとどめず、一歩すすめて皮膚粗鬆症ケアにしましょう。いつまでもピチピチの肌でいられるように。


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.05.12更新

「誰が何を言っても許される・・・サイエンスの匂いさえしない・・」

皮膚科学会の重鎮が、学術誌で美容医療の現状をこう表現されています。

自分が足を踏み入れた頃に比べると、ずいぶんましになったと思うのですが、それでもまだ「サイエンスの匂いさえしない」施術が残っています。

例えば「脂肪代謝を高めて脂肪を減らす」注射。典型的には、メソセラピーと称される施術法で見られます。


メソセラピー

メソセラピーはヨーロッパで行われている代替医療のひとつ。たとえば膝の痛みに苦しむ人に対し、膝関節の周囲の皮膚に鎮痛剤をまんべんなく少量ずつ皮内注射します。

痩身を目的とするときも、脂肪の代謝を亢進させるという多くの植物由来の成分を、痩せたい部位に少量ずつ多数カ所注入するのです。

最大の疑問点は、たとえ一時的には脂肪代謝を亢進させることができたとしても、持続的な痩身効果が得られるのか(得られるとはとても思えない)?ということ。

残念ながら、メソセラピーはあまりに施術者ごとに施術方法が違いすぎて(いい加減すぎて)、痩身効果があるのか検証できません。

かつて、メソセラピーとは違う流れで脂肪代謝を高めて脂肪を減らすとする製剤(成分的には喘息の吸入治療薬)で、有効性・安全性を評価する治験がスタートしたことはありました。しかしいつの間にかその後の消息を聞かなくなりました。

現状では、脂肪の代謝を高めることで痩身効果が得られるというエビデンスはありません。「脂肪代謝を高めて脂肪を減らす」注射は消え去るべき。

「誰が何を言っても許される・・・サイエンスの匂いさえしない・・」

こうした評価が、一日も早く昔話になりますように。

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.05.04更新

脂肪溶解注射の深層

2015年の米国FDAによる二重顎治療としてのデオキシコール酸の承認は画期的な出来事でした。

実はそれまで脂肪溶解注射には暗雲が立ちこめていたのです。

そもそも脂肪溶解注射が美容施術としてはじまったのは1980年代。

使われたのは、ドイツなどで高脂肪血症や肺塞栓(肺の動脈に脂肪が詰まる病気)の治療薬として承認されていたフォスファチジルコリン製剤でした。

しかし、この施術が広まるにつれ不適切な使用から健康被害も散見されるようになり、各国が規制に乗りだし、米国では医薬品を取り締まるFDAから警告が出され、ブラジルではフォスファチジルコリン製剤を使うことは禁止されてしまいました。

この状況を直接的に打破したのが冒頭に書いた2015年の米国FDAによる承認でしたが、その前に脂肪を溶かしているのはフォスファチジルコリンではなくデオキシコール酸であるという「主役」の交代劇がありました。

交代劇の第1幕は2006年。
フォスファチジルコリン製剤には、デオキシコール酸が配合されていました。デオキシコール酸は生体の消化管内にある天然の界面活性剤で、フォスファチジルコリンを水に溶かすための乳化剤として使われていました。

2006年の告発論文では、そのデオキシコール酸が単独でフォスファチジルコリン製剤と同程度の脂肪溶解作用を持つことから、脂肪を溶かしていたのはデオキシコール酸であって、フォスファチジルコリンではないと結論づけました。

交代劇の第2幕は2010年。
ついに技術的困難を克服して完成させたフォスファチジルコリン単独製剤を使って、フォスファチジルコリンには脂肪を溶かす作用がないことが報告されました。

単なる添加物と思われていたデオキシコール酸が実は脂肪溶解注射の主成分だと明らかにされたことは、美容医療業界にとってはショッキングな出来事でしたが、脂肪溶解注射に科学的なメスが入ったことは幸運でした。


注射だけで痩せられる、細くなれる!という、夢というかわがままを叶えてくれる脂肪溶解注射。最近はデオキシコール酸を主成分にしつつ、炎症作用を抑える成分を加えた製剤がトレンドになっています。

しかし、いまだにフォスファチジルコリンの「呪縛」がはびこっていて、「脂肪を溶かす最新のフォスファチジルコリン製剤」なるものも登場します。今、美容医療に携わり、とくに施術として脂肪溶解注射を行っている医師には、この施術を正常進化させる責務があると痛切に思います。

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.13更新

乾燥するとニキビができやすくなるので、特に大人ニキビ対策として保湿は重要。これ美容外科・美容皮膚科向けの医学雑誌でもよく見かけますし、実際診療において、私自身もそう説明したことがあります。

だから、今回の記事には反省の意味も含まれています。


ニキビと保湿


昨年出された日本美容皮膚科学会誌という、その名の通り美容皮膚科医向けの学会誌に皮膚科の大先生が、敢えて言えば「怒り」の投稿をされています。


「最近、乾燥がニキビを悪化させ、保湿がニキビを改善するという考え方が、メディア、美
容雑誌などで拡散され都市伝説のようになっているため、十分注意する必要がある。」

さすが大先生になると、あからさまに怒りを表現することはせず、あくまで控え目に書いていますが、ほんとうは「ちゃんとやれよ、注意しろよ!」と後輩を叱咤しているように読めます。

深読みすると、本来なら「美容雑誌などで拡散され・・」のところ、学術文献としては例として参考文献を上げるべきところですが、あえて(?)スルーしています。おそらくそれを書いたら、後輩に恥をかかせることになるし、それも一人、二人ではすまなくなるので、ここは大先生のお慈悲かもしれません。


「保湿をすることで、ニキビを発症させる毛穴の入り口の閉塞が防げるという「説」があるが、保湿でニキビが改善したというエビデンスはない。むしろコメド形成性のある保湿剤で悪化させている可能性がある。」

おそらく大先生がこれを書いたのは、過剰な保湿でニキビを悪化させているニキビの患者さんをよく見かけるからなのでしょう。


「保湿の本来の目的は、肌の乾燥に対するスキンケア、ニキビ治療薬の副作用軽減であり、ノンコメドジェニックなものを必要最小限使用するにとどめるべき。」

論文の全体を通して伝わってくるのは、自身の肌の状態に合わせてコスメを選び、スキンケアしなさいという大先生の教えです。

格言としてまとめれば、
「汝自身の肌を知れ!」

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.06更新

コロナ禍で診療所の多くの診療科で患者数は減少しましたが、皮膚科では減少しておらず、マスク生活によって、新たな肌トラブルが起こっていることがうかがえます。それがマスクによる肌荒れ、ニキビ。

マスクを装着することで、肌にどんな悪影響を与えるか?結論から言うと、バリア機能崩壊による「乾燥」。

マスクで崩壊

マスクを着用すると、マスクにおおわれた肌では、皮膚温と湿度が上昇します。蒸れ蒸れになるわけですが、これが肌のバリア機能を低下させます。

なぜかというと、皮膚表面では、細胞同士がピタッとくっついてバリアを形成しているのに、過湿により表面の細胞が膨張すると、細胞間の接着が弛んでしまうから。

長時間のマスクパックでも同じことが言えます。保湿は大切ですが、過湿には要注意なのです。

ここでひとつ訂正があります。私はメルマガで「マスクをしているときは蒸れているというのに、それがバリア機能を崩壊させ、マスクを外したら、一気に乾燥する・・。」と書きました。

しかし、韓国の研究者が発表した論文によると、とくに口まわりの皮膚では、マスクの装着中から保水量は減少していました。蒸れているようで、皮膚は乾燥しているらしい。ここにお詫びして訂正させていただきます。


さて、もうひとつの問題「ニキビ」。

マスクを着用すると、皮膚温が上昇するため、皮脂の分泌が亢進して、これがニキビの原因になります。しかもマスク内だけでなく、おおわれていない額でも皮脂が増えるため、ニキビができてしまいます。

マスクでできたニキビの治療も従来のニキビ治療と変わりありませんが、以前は使用できた薬剤に刺激を感じる患者さんが増えているとか。皮膚のバリア機能が低下して、「敏感肌」になっているのです。

マスクの肌荒れ対策としては、保湿が重要とされていますが、同時にマスクで密封された状態では、かぶれが誘導されやすいことも指摘されています。またウレタンマスクの方が肌にやさしいようですが、感染効果が落ちないようにその上から不織布マスクをすると、ますます蒸れ蒸れになってバリア機能が壊れそう・・

人前に出るときは社会規範としてマスクが必要ですが、近くに人がいない中で仕事しているときなど、マスクが本当は意味のないシチュエーションも多いはず。そういうときは肌をいたわるためにも外して、お肌を休ませてあげてはいかがでしょうか。


(参考文献)

1)Effect of face mask on skin characteristics changes during the COVID-19 pandemic
Park SR,et al.
Skin Res Tcchnol
2021;27(4):554-559

2)Long-term effects of face masks on skin characteristics during the COVID-19 pandemic
Park SR,et al.
Skin Res Tcchnol
2022;28(1):153-161

3)新しい生活様式 スキンケアはどう変わる
川島眞、他
ベラペレ
2022;7(1):69-72





 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.01更新

数年前から植物由来のバクチオールというコスメ成分が話題です。「次世代レチノール」、「第二のレチノール」、「レチノールに代わる・・」などと、キャッチフレーズにはいつもレチノールがついています。

この場合、レチノイドの中でも「レチノール」を相手に選んだのがニクい。これがレチナールだと知名度が低いので、消費者の心に響かないし、トレチノインを選ぶとただではすまない。レチノイドはトレチノインを中心に学問的に発展してきました。「トレチノインに代わる・・」などと言われたら、いきなり本丸に土足で踏み込まれたようで、皮膚科医、美容皮膚科医が騒ぎます。

そこで、「レチノール」。これが感心するほどにちょうどよい。これだとたいていの医師からしたら、騒ぐのも大人気ないかなと思ってしまいます。そして、私がそうであったように、とくに調べることもしないで、バクチオール=レチノールで納得してしまいます。

レチノールのイメージを刷り込ませることで、説明するまでもなく、どんな効果か消費者に勝手に想像させますし、さらには効果のほどまで納得させてしまうのですから、メーカーのマーケティング戦略は見事です。

逆に決してほめられないのが、皮膚科領域では指折りのブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ダーマトロジー(BJD)誌。バクチオールがレチノールと同程度の効果とした臨床研究は、BJD誌に掲載されています。

しかし、私ですら一読して、アレ?と思う箇所に気づきます。バクチオールとレチノールの比較試験ですが、バクチオールは1日2回塗るのに、レチノールは1日1回だけで、これでまともな比較試験になるのか?

これほどのジャーナルになれば、偉すぎるほどの専門家が複数で審査しているはずですが、きちんとした専門家からもきちんとした、そもそも研究デザインから間違っていて、結論をミスリーディングしていると批判される始末で、こんな臨床研究の根幹に関わるところで批判を受けるなんて、一流誌として恥ずかしいこと。

ただ、レチノールとの類似性を打ちだしたマーケティング戦略も見事なら、ついには世界で指折りのジャーナルまで巻き添えにしたという意味では、メーカーの努力は素直に賞賛すべきと言えるでしょう。

さて、肝心のバクチオールですが、言うほどにはレチノールに似ていません。そもそもバクチオールはレチノイド受容体には結合しないので、レチノイドとは言えない。まったくのニセモノ、いや、別物。

まったくの別物をレチノールに仕立て上げるわけですから、そこにはメーカーの涙ぐましい努力があります。近頃は「エビデンス」という言葉も一般的になり、コスメにもエビデンスが求められるわけですが、それを自作自演で自分たちの販売戦略に忠実に作り上げてしまいます。

バクチオールの光老化皮膚への有効性を論じた最初の論文は、メーカーの研究員が書いています。冒頭からバクチオールではなく、ひたらすらレチノイドの話が展開され、全体的にもレチノールとの類似性をこれでもかと強調しています。最初これを読み終えたとき、レチノールとの類似性を強制的に理解させられただけで、バクチオールの全体像はさっぱりわからないという、不思議な気分になりました。

バクチオールには、抗酸化や抗炎症作用があり、心臓や肝臓の臓器保護に有用ではないかという基礎系の論文もありますが、臨床的に使われる段階にはないので、まだまだ未知数。「美容には夢が必要」という持論を持っている私ですが、さすがにバクチオールは夢というよりまだまだ「幻」に近い。

コスメとしてのバクチオールは、レチノイドではないので当たり前ですが、刺激反応もなく使いやすいようです。現在気に入って使用しているなら、あえてやめることもありません。ただ、もし「使いやすい」レチノールをお探しなら、バクチオールに手を出すのではなく、あくまでレチノールで、ただその使い方を工夫すべきでしょう。


 

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(参考文献)

1)Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing
Dhaliwal S,et al.
Br J Dermatol.
2019;180(2):289-296

2)Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects
Chaudhuri RK,et al.
Int J Cosmet Sci.
2014;36(3):221-230

3)Cosmetic commentary: Is bakuchiol the new skincare hero?
Spierings NMK
J Costet Dermatol.
2020;19:3208-3209

4)Bakuchiol: A new discovered warrior against organ damage
Xin Z,et al.
Pharm Res.
2019;141:208-213



 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.03.20更新

「ディフェリンはニキビ治療薬」というイメージが強いかもしれませんが、実はアンチエイジングにも効果が期待できる薬剤であることをご存知でしょうか? 

本記事では、ニキビ治療薬として有名なディフェリンが、なぜエイジングケアの有力な選択肢となり得るのか、そのメカニズムや使用方法、そして最新のレチノイド事情までを詳しく解説します。


ディフェリンでエイジングケア


1.ディフェリンはアンチエイジングにも使える?


ディフェリン(一般名:アダパレン)は、「第3世代」に分類される合成レチノイドです。日本では主にニキビ治療薬として承認・使用されており、10代や20代で使った経験がある方も多いでしょう。

レチノイドはビタミンA誘導体の総称で、肌のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)を促進したり、皮脂分泌を抑制したり、コラーゲン生成を促したりする作用があることで知られています。この「ターンオーバー促進」や「コラーゲン生成促進」といった働きが、ニキビだけでなく、シミ、しわ、ハリ不足といったエイジングサインにもアプローチできる理由です。

つまり、ディフェリンが持つレチノイドとしての基本的な作用機序が、エイジングケアにも応用できる可能性をもたらすのです。


2.ディフェリンがエイジングケアに有効な理由

米国FDAが老化(光老化)治療として正式に承認しているレチノイドは、現時点ではトレチノインとタザロテンのみです。しかし、ディフェリンを光老化治療に使う臨床試験も存在し、その効果が示唆されています。

3-1. FDA承認がすべてではない理由

医薬品の承認は、有効性だけでなく、製薬会社の開発・申請戦略や費用対効果なども考慮されるため、「承認がない=効果がない」と直結するわけではありません。ディフェリンが持つレチノイドとしての作用や、後述する臨床研究の結果から、エイジングケアへの効果は十分に期待できると考えられます。

3-2. ディフェリンの臨床試験

ディフェリンがニキビだけでなく、肌の老化にも効果を発揮する可能性は、実際の臨床研究でも示唆されています。

米国皮膚科学会の公式ジャーナルに掲載された研究では、ディフェリンを光老化の症状である「シミ」と「前がん病変(日光角化症など)」に絞って、その効果を検証し、これらの症状に対する改善効果が認められています。これは、ディフェリンが肌のエイジングサインに対して有効であることの間接的な証拠と言えるでしょう。

この研究で興味深いのは、さすがに米国皮膚科学会の公式ジャーナルともなると厳格で、光老化全体ではなく、その症状である前がん病変、シミの2つに対象を絞ってディフェリンの効果をみた臨床研究としていること。世間にいくらでもある安っぽい(?)ジャーナルみたいに、すぐに光老化に有効とは言わない!というプライドを感じさせます。

3-3. ディフェリンの使用上のメリット

比較的マイルドな刺激: 他のレチノイド(特にトレチノイン)と比較して、赤みや皮むけといった刺激反応(いわゆるA反応、レチノイド反応)が軽い傾向があります。これにより、レチノイド初心者でも始めやすい可能性があります。

光感受性のリスクが低い: トレチノインほど紫外線に対する感受性を高めにくいとされていますが、日中の紫外線対策は必須です。
日本での承認: ニキビ治療薬として厚生労働省に承認されており、医師の診察のもと処方を受けやすい環境にあります。(ただし、エイジングケア目的での使用は保険適用外となるのが一般的です)


4. ディフェリンの使用法と注意点

4-1. 基本の使用方法

・夜1回、洗顔後に豆粒大(a pea-sized)を顔全体に塗布
・1ヶ月後に刺激反応が落ち着いてきたら、朝にも塗布

4-2. 刺激症状(A反応)に注意

レチノイド全般にいえることですが、肌が赤くなったり、ヒリヒリとした刺激感が出る「A反応」と呼ばれる副作用が生じることがあります。ディフェリンはトレチノインに比べると刺激が穏やかですが、初期はとくに慎重に様子をみましょう。

4-3. 妊娠・授乳中の使用は避ける

レチノイドには胎児に悪影響を及ぼすリスクがあるため、妊娠中や授乳中、あるいは妊娠を希望している方は使用を控えましょう。

4-4.注意点

使用できない人: 妊娠中・授乳中の方、妊娠を希望している方は使用できません。
◉刺激反応: 比較的マイルドとはいえ、乾燥、赤み、ヒリヒリ感、皮むけなどの刺激反応が出る可能性があります。少量から、頻度を少なく(例:隔日など)始めるのがおすすめです。
◉保湿と紫外線対策: 使用中は肌が乾燥しやすくなるため、十分な保湿が重要です。また、日中は必ず日焼け止めを使用してください。
◉医師への相談: エイジングケア目的で使用する場合でも、必ず医師に相談し、適切な指導のもとで使用を開始してください。自己判断での使用は避けましょう。


まとめ

▶︎ニキビ治療薬として広く知られるディフェリンは、そのレチノイドとしての作用機序から、エイジングケア(アンチエイジング)にも効果が期待できる薬剤です。シミや肌の質感改善など、実際の臨床研究でもその可能性が示唆されています。

▶︎他のレチノイドに比べて刺激がマイルドな傾向があり、エイジングケア初心者にも比較的取り入れやすい選択肢と言えるでしょう。ただし、妊娠中など使用できないケースや、乾燥・刺激感といった注意点もあります。

▶︎30代、40代から本格的なエイジングケアを始めたいと考えている方にとって、ディフェリンは有力な選択肢の一つです。興味のある方は、まずは皮膚科医に相談し、ご自身の肌に合った使い方のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月14日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.11.09更新

「洗顔しすぎると、かえって皮脂が増える」

洗顔でかえって皮脂は増えるのか!?

このような話を聞いたことはありませんか?実際、AI検索でも「洗顔のしすぎは皮脂の過剰分泌を招く」という回答が返ってくることがあります。

しかし、医学的にはこれは誤解です。

とはいえ、「洗顔しても皮脂がすぐに浮いてくる」と感じる方が多いのも事実。今回は、顔の皮脂が多いと悩む方へ、皮脂分泌の本当のメカニズムを医学的根拠とともに解説します。

皮脂分泌の真実:ホルモンが司る精密なシステム

皮脂の役割は、皮膚表面の保護ですが、その分泌量は、肌表面がオイリーだろうとドライだろうと変わるものではありません。皮脂分泌は皮脂腺内の細胞の分化、脂質の蓄積、そしてホルモンや環境要因など様々な要素によって複雑に調節されています(文献1)。

つまり、洗顔でたとえ皮脂を取りすぎたとしても、皮脂腺での「生産量」が増えることはないのです(文献1)。

なぜ「洗顔しすぎると皮脂が増える」説が生まれたのか?

もうずいぶん前の話ですが、興味深い実験結果が報告されました。同じ時間内で皮脂を採取する際、1回で拭き取るより複数回に分けた方が、より多くの皮脂が採取されたのです(文献2)。

この結果から「洗顔しすぎは皮脂の分泌量を増やす」という説が支持されました。しかし、これには別の理由があります。


皮脂の「貯蔵庫」システムが鍵

顔の皮脂には、巧妙な貯蔵システムが存在します。

2つの貯蔵庫の役割
1)皮脂腺の導管:Tゾーンなどでは、皮脂腺から皮膚表面へつながる管が巨大な貯蔵庫として機能
2)角質層:スポンジのように皮脂を蓄える第二の貯蔵庫

洗顔で表面の皮脂を取り除くと、毛細管現象により貯蔵庫から新しい皮脂が自動的に補充されます。これが「洗顔しても皮脂がすぐ出てくる」と感じる正体であり、また「1回で拭き取るより複数回に分けた方が、より多くの皮脂が採取された」理由だったのです(文献2)。


顔を洗いすぎるとどうなる?3つのポイント

1. 皮脂の生産量は変わらない
洗顔しすぎても、皮脂腺での生産量が増えることはありません。

2. 表面の皮脂は増えたように感じることも
貯蔵庫からの補充により、肌表面に出てくる皮脂の総量は一時的に増えたように感じられます。

3. 過度な洗顔は肌トラブルの原因に
肌に必要な保湿因子が奪われ、皮膚のバリア機能がダメージを受け、肌トラブルの原因となります。


まとめ:美肌のための正しい洗顔法

◉洗顔によって一時的に皮脂によるテカリやベタつきは抑えることができますが、過剰な洗顔、頻回な洗顔では肌がもちません。

◉ただ、洗顔が皮脂の分泌を刺激するというのは間違いです。


【参考文献】

1. Oily skin: an overview
Sakuma TH, Maibach HI
Skin Pharmacol Physiol
2012;25(5):227-235

2. An investigation of the human sebaceous gland
Kligman AM, Shelly WB
J Invest Dermatol
1958;30:99-125

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年7月7日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.10.20更新

美容皮膚科にはサイエンスとビジネスの2つの側面がありますが、サイエンスの側から見たとき、美白剤のNo.1といえば、ここ数十年ハイドロキノンの王座は揺るぎないものがあります。美白剤のNo.2と目されていたロドデノールは、白斑症で大問題を引き起こし失脚しましたので、No.2は空席のまま。

No.1をハッキリさせることにどんな意義があるのか、No.2でもいいじゃないかという意見もあるでしょう。しかし、学問の世界では、No.1を越える結果を出すことが、その領域の進歩を証明することになります。実はNo.2以下こそどうでもよい存在なのです。

ところが驚くなかれ、美容皮膚科のビジネスサイドでは、「ハイドロキノンの4倍!」とか「ハイドロキノンの17倍!」という美白剤が存在します。


「ハイドロキノンの4倍!」と謳っているのは、シスペラ(一般名システアミン)。
最初に美白効果が報告されたのは1966年。強いイオウ臭があり、長らく商品化を見送られてきましたが、2010年に臭いを抑制する技術開発があり、ようやく日の目を見ました。

シスペラの問題は何より高すぎること。ハイドロキノンより10倍高い。高額な理由が効果があるからではなく、一社の独占販売だからとしかいいようがないことに「胡散臭さ」を感じます。

シスペラを取り扱うクリニックは、「世界的に権威のある学会で発表されている」と自慢していますが、学会発表はエビデンスのうちに入りません。美白剤の優劣は、ほとんどの場合、肝斑に対する有効性で競われ、その肝斑の最新の総説にどう記載されるかで、その美白剤の学問的評価がわかりますが、実はシスペラはひと言も触れられていません。

(余談ですが、最新の総説に登場する美白剤は、ハイドロキノン、アゼライン酸、ビタミンC、それから日本人にとって誇らしいルシノール。ポーラの関係者は喜んでいることでしょう。)

シスペラが本気で美白剤の王座を狙うのであれば、ケチのつけようのない競争の中で奪い取ってみせなければなりません。ただ、独占的に一社が供給する今の状況ではそれは難しいと言わざる得ません。


「ハイドロキノンの17倍!」と(恥も外聞もなく)謳うのは、ルミキシル。これにいたっては、もうハイドロキノンとの比較試験も見当たりませんでした。真面目に文献検索していて、ほとんど発狂しそうになりました。

でも、17倍の根拠は見つけることができました。実験で、ルミキシルはハイドロキノンより17倍強力にキノコのチロシナーゼを抑制したというもの。「17倍強力」の根拠は、なんと!キノコだったのです。もう絶句しました。

ルミキシルに必要なのは、キノコを相手にするのではなく、人を対象にしてハイドロキノンと正々堂々勝負して、有効性を実証すること。

ハイドロキノンの王座を狙う新参者からは、しばしばハイドロキノンのリスクが言及されますが、何十年にもわたり、リスクを回避する使用法が模索されてきました。使い方を知っている「医師」の指導の元で使えば安全な製剤です。私もその「医師」の一人ですと最後に付け加えておきます。他の医師より10倍詳しいと言いたいところですが、それはやめておきましょう。

 

 
(参考文献)
(肝斑に関して)
1)Melasma treatment: An Evidence-based review
McKesey J, et al.
2020;21:173-225

(シスペラに関して)
2)Clinical evaluation of efficacy,safety and tolerabirity of cysteamine 5% cream in comparison with modified Kligman's formula in subjects with epidermal melasma: A randomized, double-blind clinical trial study
Karrabi M, et al.
Skin Res Technol.
2021;27:24-31

3)Cysteamine cream as a new skin depigmenting product
Hsu C, et al.
J Am Acad Dermatol.
2013;68:AB189

4)Evaluation of the efficacy of cysteamine 5% cream in the treatment of epidermal melasma: a randomized double-blind placebo-controlled trial
Mansouri P, et al.
Brit J Dermatol.
2015;173:209-217

5)Efficacy of cysteamine cream in the treatment of epidermal melasma, evaluating by Dermacatch as a new measurement method: a randomized double placebo controlled study
Farshi S, et al.
J Dermatolog Treat.
2018;29(2):182-189

6)Evaluation of the efficacy of cysteamine cream compared to hydroquinone in the treatment of melasma: a randomized, double-blinded trial
Australas J Dermatol.
Nguyen J, et al.
2021;62:e41-e46

7)Significant therapeutic response to cysteamine cream in a melasma patient resistant to Kligman's formula
Kasraee B, et al.
J Cosmet Dermatol.
2019;18:293-295

(ルミキシルに関して)
8)A split-face, double-blind, randomized and placebo-controlled pilot evaluation of a novel oligopeptide for the treatment of recalcitant melasma
Hantash BM,et al.
J Drugs Dermatol.
2009;8(8):732-735

9)Short-sequence oligopeptides with inhibitory activity against mushroom and human tyrosinase
Abu Ubeid A,et al.
J Invest Dermatol.
2009;129(9):2242-2249

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2021.08.31更新

 

「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」――この衝撃的なフレーズを耳にしたことがある方は多いでしょう。

しかし、この「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」説、その根拠は一体どこにあるのでしょうか?長年、多くの専門家が引用しながらも、出典が不明確だったこの説。

本記事では、その起源を巡る探求の物語と、紫外線が皮膚の老化に与える影響、そして皮膚の老化防止のために私たちができることについて解説します。

肌の老化の8割は紫外線が原因


紫外線が引き起こす「光老化」とは

まず基本的な事実として、紫外線が皮膚の老化の主要な原因であることは広く知られています。太陽光に含まれる紫外線(特にUVAとUVB)は、皮膚の深層部にまで到達し、コラーゲンやエラスチンといった肌のハリや弾力を保つ線維を破壊・変性させます。これにより、シワ、たるみ、シミといった皮膚の老化のサインが現れます。この紫外線による老化現象は「光老化」と呼ばれ、加齢による自然な老化とは区別されます。日常的に紫外線を浴びることで、光老化は着実に進行していくのです。

「皮膚老化の8割は紫外線」説の起源を探る旅

ある高名な皮膚科教授の講演で、よく学術論文で引用される「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」というフレーズに話が及びました。

教授が疑問に思ったのは、多くの文献では明確な出典が示されていないこと。そこで教授は自分で調査したのですが、見つかったのは、皮膚ガンの原因の8割が紫外線という文献で、もしかしたらこれが皮膚の老化の話にすり替わったのではないかと推測されていました。

この話が妙に心に残り、私も文献を読んでいて「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」というフレーズを見つけるたびに、参考文献まで辿ることが習慣になりました。

そして、数年かかって、ついに「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」の出典は、医学界のトップジャーナルである ニューイングランドジャーナル (NEJM) であることを発見したのでした。


「皮膚の老化の80%は紫外線が原因」という記述は、臨床研究の結果ではなく、この権威あるジャーナルのエディトリアルで "anecdotally"(経験的に、逸話として)という断り書き付きで述べられていました。

エディトリアルというのは、同じ号に掲載されている医学研究に関連して、編集部からその分野を代表する専門家にお願いして書いてもらう解説記事。

つまり、「皮膚の老化の80%は紫外線が原因」は、厳密な研究データに基づく数値ではなく、その方面の世界の第一人者の「見識」だったのです。(*文末に紹介あり)



データはなくとも無視できない紫外線対策の重要性

「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」における8割という具体的な数値に厳密な科学的データがないとしても、紫外線が皮膚の老化の最大の外的要因であることに変わりはないでしょう。多くの皮膚科学的研究が、紫外線暴露とシワ、シミ、たるみなどの皮膚の老化との強い関連を示しています。

したがって、「8割」という数字の真偽はさておき、皮膚の老化防止のためには、紫外線対策が極めて重要であるという事実は揺るぎません。日焼け止めの使用、帽子や日傘の活用、紫外線が強い時間帯の外出を避けるなど、日常的なケアが将来の肌を守る鍵となるのです。

また、もう一つ強調したいのは、皮膚の老化の「8割」は予防可能だと言うこと。しかも、美容医療に頼ることなく、自分のケアでコントロールできると言うことにぜひ皆さんも勇気づけられて下さい。


まとめ

◉「皮膚の老化の8割は紫外線が原因」という説は、厳密な研究データではなく、権威ある医学誌の論説における経験的な見解として広まったものでした。しかし、この説の起源がどうであれ、紫外線が皮膚の老化(光老化)の主要な原因であることは広く認められています。

◉皮膚の老化防止のためには、紫外線対策の重要性を理解し、日々のUVケアを実践することが何よりも大切です。日焼け止めを塗る、帽子をかぶるなどの基本的な対策が、健やかで若々しい肌を長く保つための最も効果的な方法と言えるのです。

◉皮膚の老化は、スキンケアで予防できるのです。



(参考文献)
Understanding Premature Skin Aging
Uitto J.
N Engl J Med.
1997;337(20):1463-1465


*「皮膚老化の8割は紫外線」の発信源ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授について
ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授(1943年9月15日 – 2022年12月17/19日)は、1997年の ニューイングランドジャーナル (NEJM) 論説発表当時、ジェファーソン医科大学(トーマス・ジェファーソン大学)の皮膚科学・皮膚生物学科教授兼学科長、および生化学・分子生物学教授。結合組織生物学、分子遺伝学、そして皮膚老化の研究において国際的に認知された第一人者であり、コラーゲンやエラスチンなど皮膚の結合組織生化学と分子生物学の分野で業績を残し、特に遺伝性皮膚疾患や皮膚の老化に関する研究で世界的に著名でした。生涯で1,100編以上の学術論文(査読付き論文776編を含む)を発表し、総被引用数は7万件を超えるとも推定される非常に影響力の大きい科学者でした。

1997年に ニューイングランドジャーナル (NEJM) に寄稿した総説「Understanding premature skin aging(皮膚の早期老化の理解)」では、紫外線による真皮コラーゲン線維の損傷や異常なエラスチン蓄積(いわゆる日光弾性変性)が、自然老化とは異なる皮膚老化像をもたらすことを解説しました。この論考は、同号に掲載されたG.J.Fisherらの研究(紫外線による皮膚の分子病理pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)を踏まえ、光老化の分子基盤を総括したもので、美容皮膚科学の観点からも極めて示唆に富む内容でした。

ヨーニ・ウイト(Jouni Uitto)教授は2022年12月、79歳で逝去されましたが、晩年まで研究と教育への情熱は衰えず、亡くなる年まで継続して論文を発表し続けていました。教授の死に際し、各国の皮膚科学会からは追悼記事が発表されました。

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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