2022.10.02更新

■日焼け止めの課題
それは、もっと長波長側への防御能の拡大。

現在米国では、紫外線のUVBの防御能の目安には日本と同様にSPFがありますが、UVBより波長の長いUVAについては、“broad spectrum”というちょっとわかりにくい表現を採用しています。

そして、日焼け止めというのは波長が長いほど防御は難しくなるわけですが、少なくとも370nmまでの波長までは90%以上をブロックできる日焼け止めだけが“broad-spectrum”と表記できることになっています。ただし370nmは320~400nmのUVA領域。つまり長波長のUVAは十分ブロックできなくても仕方ないと認めた基準なのです。

このように現状では、紫外線のUVA領域ですら、全体をカバーできていないのが現状なのに、ここにきて、さらに長波長の可視光線の問題が話題になっています。

従来は可視光線(人が目で光、色として捉えることができる波長の光線)は皮膚には無害とされていたのですが、可視光線の中でも特にブルーライトは、肌の色の濃いタイプの人では日焼けの原因になることが確定的になってきました(色白の人では赤くなるだけ)。


■可視光線の防ぎ方
では可視光線対策にはどうすればいいの!とすぐに心が騒ぐ気持ちもわかりますが、実は可視光線は目に見えるので、その防御能もある程度見た目からも判断できます。

まず透明な日焼け止めはまったく無力。可視光線を吸収も反射もしないからこそ透明なのですから。

塗って白くなる日焼け止めはある程度有効。白く見えるということは可視光線全域を表面で反射しています。当然ブルーライトもある程度反射しています。

可視光線対策としてもっと優れているのが、黄色や赤や黒の色素でブルーライトを吸収してしまう方法。たとえば黄色に見えるのは黄色だけを反射してそれ以外の色を吸収しているから黄色に見えるわけで、ブルーライトも吸収しています。黒はすべての可視光線を吸収しているからそう見えるので、これが一番強力。ただし、黒の日焼けめでは売れそうにありません。

実際には、黒、赤、黄色をした酸化鉄を白の酸化チタンと合わせることで、肌の色味に合わせて調整した日焼け止めがあります。これが米国で販売されているtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)。


「色付き」にしてくれ


■次世代の標準日焼け止めか!?
これが現状では、可視光線対策としての日焼け止めの決定版。tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を使用すれば可視光線の浸透を93~98%防げるとか。最近の日焼け止めの文献では、肌の色の濃いタイプの方には、tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を推奨しています。

■tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なのは?
「次世代の」と大げさに書きましたが、全員にtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なわけではありません。

tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なのは、
1)光線過敏症状のある方
2)肝斑や色素沈着で治療している方
3)肌の色の濃いタイプで日焼けを避けたい方
に限られます。

「限られます」としたものの、3)を入れたら、結構な割合の人が当てはまりそう。

■日本でtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)はどう手に入れたらいい?
では、日本で市場に出回っている製品にもtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)に該当する日焼け止めはあるのでしょうか?それとも海外のサイトから購入するしかないのでしょうか?

■もっと時代の先端を走って!NAVISION
当院でも取り扱っているナビジョンを見ていると、「色つき」の日焼け止めがあって、それには見分けるポイントになる「酸化鉄」が含まれています。もしかしてtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)?とさっそく問い合わせてみましたが、「この製品は可視光線対策として設計されていません。」だって。「今後も研究を継続していきます」って、もっと自分から道を切り開いていかなかったら、永遠にラロッシュ・ポゼに勝てないよ!

■とぼけるな、ラロッシュ・ポゼ!
世界的に美容皮膚科御用達の日焼け止めの感もあるラロッシュ・ポゼの製品の中から、米国ではtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)として販売しているものなら間違いないと思い、問い合わせたところ「日本で販売されている製品の中で、どれが米国ではtinted sunscreenと表記しているか、こちらでは把握しておりません!」とまさかのすっとぼけた回答。製品の中には酸化鉄を含む「色つき」があって怪しいが・・・。

■最後は米国頼みか・・
最大の問題は、tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)の決め手になる成分の酸化鉄が、実は米国FDAのリストでは無効(!)な成分に分類されていたり、紫外線のSPFに相当する防御能の表記も定まっていないなど、とにかく制度が時代遅れになっていること。

tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を名乗るルールもないから、悪意を持ったメーカーの登場を防げません。

米国FDAが動けば、世界が動くわけですから、どうしても期待してしまうのですが、FDAは日焼け止めについては、有効成分の承認が遅れていることも長らく批判されていて、日焼け止め部門(そんなのあるか知らんけど)の動きの遅いのが気になります。


 

 

(参考文献)
1) Photoprotection beyond ultraviolet radiation: A review of tinted sunscreens
Lyons AB, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1393-1397

2) Practical guide to tinted sunscreens
Torres AE, et al.
J Am Acad Dermatol.
2022;87(3):656-657

5) Visible light Part II: Photoprotection against visible and ultraviolet light
Geisler AN, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1233-1244


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥