2024.07.29更新

1 はじめに

紫外線対策への意識が世界的に高まる中、日焼け止めは現代のスキンケアに欠かせないアイテムとなりました。世界の日焼け止め市場は2017年の15.5億ドルから、2029年には53.4億ドルに達すると予測されており(文献1)、驚異的な成長を続けています。

しかし、この市場拡大とともに「SPFは高ければ高いほど良いのか?」という疑問も浮上しています。

SPF100の日焼け止めは本当に必要なのでしょうか?そして、高SPF製品による肌荒れのリスクはどの程度なのでしょうか?


本記事では、SPFの最高値に関する国際的な規制状況と、日焼け止めによる肌荒れの関係について、最新の皮膚科学的エビデンスに基づいて詳しく解説します。


2 SPFの最高値と日本の規制:なぜ最大は50+なのか


日本におけるSPF戦争

2-1 日本におけるSPF規制の歴史と「SPF戦争」

かつて日本では「SPF戦争」と呼ばれる時代がありました。各メーカーが競ってSPF値を高め、ついにはSPF100を超える日焼け止めまで登場したのです。しかし、この競争には大きな落とし穴がありました。

高SPF製品の使用者から肌荒れの報告が相次いだことを受け、1999年に日本化粧品工業連合会(粧工連)は自主規制を導入。SPFの最大値を50+と定め、2025年現在もこの基準が継続されています。この決定は、効果と安全性のバランスを重視した結果でした。

2-2 世界と日本の違い:SPF100が存在する国と規制

興味深いことに、SPFの最大値に関する規制は国によって大きく異なります。
アメリカでは現在もSPF値に上限規制がありません。市場にはSPF100の日焼け止めも流通していますが、FDA(米国食品医薬品局)は将来的にSPF60+を上限とする新規制を提案しています。

一方、EUでは公式な上限値は設定されていないものの、SPFが50を超える製品はSPF 50+と表示しなければならないという表示規制があるため、実質的にSPF50+が最大値として機能しています。


3 SPF100の日焼け止めは必要?SPF50との違いと効果

3-1 理論値と実際の効果:SPF50と100の差

理論的には、SPF50の日焼け止めは紫外線の98%をカットし、SPF100は99%をカットします。わずか1%の差に思えますが、2018年の米国皮膚科学会誌に掲載された研究では興味深い結果が示されました(文献2)。

199名を対象とした比較試験において、SPF100+製品はSPF50+製品より有意に高い日焼け防止効果を示したのです。これは、実際の使用条件下では理論値以上の差が生じることを示唆しています。


3-2 なぜ表示通りの効果が出ないのか

多くの人は推奨量(2mg/cm²)よりも少ない量の日焼け止めしか塗りません。塗布量が不足すると、実際のSPF値は表示値を大きく下回ります。このため、高SPF製品を使用することで、塗布量不足による防御力低下をある程度カバーできる可能性があります。


4 日焼け止めで肌荒れする原因|高SPFと成分の関係

4-1 SPF値が高いほど肌荒れリスクが上がる理由

SPFが上昇するにつれて、紫外線フィルターの成分濃度も必然的に増加します。一つのフィルター成分には配合上限があるため、SPFの高い日焼け止めでは複数のフィルターを組み合わせる必要があります。

その結果、高SPF製品は
●よりオイリーな使用感になりやすい
●複数の化学フィルターによる刺激リスクが上昇
●アレルギー反応や接触性皮膚炎の可能性が高まる
ことになります。

もし日焼け止めで肌が荒れてしまった場合や、もともとバリア機能が低下している場合は、保湿による保護が最優先です。
▶︎▶︎乾燥・肌荒れから肌を守る高保湿クリーム「ADパーフェクトバリア


4-2 注意すべき成分と肌への負担

最も刺激性が報告される成分として、以下の3つが挙げられます:

⚫️アボベンゾン(高SPF製品の79%に含有)
⚫️オクトクリレン(77%)
⚫️オキシベンゾン(69%)
これらの成分は高SPF製品ほど高濃度で配合される傾向があり、肌荒れのリスクを高める可能性があります。


5 規制のない米国でもSPF100は少数派?消費者の動向

5-1 アメリカ市場から見える消費者心理

規制のないアメリカ市場のデータは非常に興味深い示唆を与えてくれます。2024年の調査(文献1)によると、アメリカの消費者のSPF選択は:
●SPF50:25%
●SPF30:23%
●SPF15:6%
●SPF100:3%

注目すべきは、規制がないにも関わらず、SPF100の日焼け止めを選ぶ人はわずか3%という点です。消費者は本能的に「効果と安全性のバランス」を求めていることがわかります。


5-2 日本市場の特徴

日本では、SPF50+/PA++++製品がプレミアムセグメントを形成しています。日本のサンケア製品市場規模は2024年に約1,242億円、2033年には約2,044億円に達すると予測されており(文献3)、特に「軽い使用感」と「化粧下地との相性」を重視した製品開発が進んでいます。


6 【医師推奨】日焼け止めSPFの正しい選び方

6-1 医学的コンセンサスに基づく選択

米国皮膚科学会(AAD)をはじめとする主要な皮膚科学会は、SPF30以上の広域スペクトラム日焼け止めを推奨しています。SPF30-50の範囲が「防御効果と刺激リスクのバランスが最適」という医学的コンセンサスが形成されています。


▼当院おすすめの日焼け止めはこちら
敏感肌の方にも安心。クリニック推奨の医療機関専売の日焼け止め「UVプロテクトミルク」。 肌への負担を抑えつつ、日常の紫外線をしっかりカットします。


6-2 シーン別・肌質別の最適なSPF値

日常使い(▶︎おすすめはUVプロテクトミルクN
⚪️SPF30、PA+++以上
⚪️軽い使用感の製品
⚪️毎日継続できる快適さを重視

屋外活動・レジャー(▶︎おすすめはUVプロテクトミルクS
⚪️SPF50+、PA++++
⚪️耐水性のある製品
⚪️2-3時間ごとの塗り直しが重要

敏感肌・肌荒れが心配な方(▶︎おすすめはUVプロテクトミルクN
⚪️酸化亜鉛・酸化チタン配合のノンケミカル製剤
⚪️SPF30程度でも十分な効果
⚪️パッチテストを行ってから使用


7 最後に:SPFの最高値より大切なこと


SPF最高値より大切なこと

日焼け止めのSPF最大値は、各国の規制や市場の自主規制により異なりますが、重要なのは「高ければ良い」という単純な話ではありません。

SPF100の日焼け止めには確かに高い防御効果がありますが、同時に肌荒れのリスクも上昇します。日本でSPFの最高値が50+に規制されているのは、この効果とリスクのバランスを考慮した結果なのです。

最も大切なのは
◉適切なSPF値(30-50)の製品を選ぶ
◉十分な量を塗布する(顔全体で小さじ1/2程度)
◉外にいる間は2-3時間ごとに塗り直す
◉自分の肌質に合った製品を選ぶ


これらの基本を守ることで、肌荒れのリスクを最小限に抑えながら、効果的な紫外線対策が可能になります。日焼け止めは毎日使うものだからこそ、「続けられる」製品選びが何より重要なのです。


【シミが気になり始めた方へ】
適切な紫外線対策をしていても、過去の蓄積でシミができてしまうことがあります。当院では、できてしまったシミに対する専門的なレーザー治療も行っています。
▶︎▶︎気になるシミをピンポイントで治療「Qスイッチルビーレーザー」について詳しく見る


【参考文献】
1) Market.us "Sunscreen Industry Statistics and Facts (2025)"
https://media.market.us/sunscreen-industry-statistics/

2) SPF 100+ sunscreen is more protective against sunburn than SPF 50+ in actual use: Results of a randomized, double-blind, split-face, natural sunlight exposure clinical trial. Williams JD, et al.
J Am Acad Dermatol
2018;78(5):902-910

3) IMARC Group "Japan Sun Care Products Market Price Trends, Report 2033" https://www.imarcgroup.com/japan-sun-care-products-market

 

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年7月20日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.10.02更新

日焼け止めの課題

それは、もっと長波長側への防御能の拡大。

現在米国では、紫外線のUVBの防御能の目安には日本と同様にSPFがありますが、UVBより波長の長いUVAについては、“broad spectrum”というちょっとわかりにくい表現を採用しています。

そして、日焼け止めというのは波長が長いほど防御は難しくなるわけですが、少なくとも370nmまでの波長までは90%以上をブロックできる日焼け止めだけが“broad-spectrum”と表記できることになっています。ただし370nmは320~400nmのUVA領域。つまり長波長のUVAは十分ブロックできなくても仕方ないと認めた基準なのです。

このように現状では、紫外線のUVA領域ですら、全体をカバーできていないのが現状なのに、ここにきて、さらに長波長の可視光線の問題が話題になっています。

従来は可視光線(人が目で光、色として捉えることができる波長の光線)は皮膚には無害とされていたのですが、可視光線の中でも特にブルーライトは、肌の色の濃いタイプの人では日焼けの原因になることが確定的になってきました(色白の人では赤くなるだけ)。


可視光線の防ぎ方

では可視光線対策にはどうすればいいの!とすぐに心が騒ぐ気持ちもわかりますが、実は可視光線は目に見えるので、その防御能もある程度見た目からも判断できます。

まず透明な日焼け止めはまったく無力。可視光線を吸収も反射もしないからこそ透明なのですから。

塗って白くなる日焼け止めはある程度有効。白く見えるということは可視光線全域を表面で反射しています。当然ブルーライトもある程度反射しています。

可視光線対策としてもっと優れているのが、黄色や赤や黒の色素でブルーライトを吸収してしまう方法。たとえば黄色に見えるのは黄色だけを反射してそれ以外の色を吸収しているから黄色に見えるわけで、ブルーライトも吸収しています。黒はすべての可視光線を吸収しているからそう見えるので、これが一番強力。ただし、黒の日焼けめでは売れそうにありません。

実際には、黒、赤、黄色をした酸化鉄を白の酸化チタンと合わせることで、肌の色味に合わせて調整した日焼け止めがあります。これが米国で販売されているtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)


「色付き」にしてくれ


次世代の標準日焼け止めか!?

これが現状では、可視光線対策としての日焼け止めの決定版。tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を使用すれば可視光線の浸透を93~98%防げるとか。最近の日焼け止めの文献では、肌の色の濃いタイプの方には、tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を推奨しています。


tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なのは?

「次世代の」と大げさに書きましたが、全員にtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なわけではありません。

tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)が必要なのは、
1)光線過敏症状のある方
2)肝斑や色素沈着で治療している方
3)肌の色の濃いタイプで日焼けを避けたい方
に限られます。

「限られます」としたものの、3)を入れたら、結構な割合の人が当てはまりそう。

日本でtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)はどう手に入れたらいい?

では、日本で市場に出回っている製品にもtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)に該当する日焼け止めはあるのでしょうか?それとも海外のサイトから購入するしかないのでしょうか?

もっと時代の先端を走って!NAVISION

当院でも取り扱っているナビジョンを見ていると、「色つき」の日焼け止めがあって、それには見分けるポイントになる「酸化鉄」が含まれています。もしかしてtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)?とさっそく問い合わせてみましたが、「この製品は可視光線対策として設計されていません。」だって。「今後も研究を継続していきます」って、もっと自分から道を切り開いていかなかったら、永遠にラロッシュ・ポゼに勝てないよ!


とぼけるな、ラロッシュ・ポゼ!

世界的に美容皮膚科御用達の日焼け止めの感もあるラロッシュ・ポゼの製品の中から、米国ではtinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)として販売しているものなら間違いないと思い、問い合わせたところ「日本で販売されている製品の中で、どれが米国ではtinted sunscreenと表記しているか、こちらでは把握しておりません!」とまさかのすっとぼけた回答。製品の中には酸化鉄を含む「色つき」があって怪しいが・・・。どうもラロッシュ・ポゼは米国で出している製品と日本を含むアジアで出している製品は違うらしい。

最後は米国頼みか・・

最大の問題は、tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)の決め手になる成分の酸化鉄が、実は米国FDAのリストでは無効(!)な成分に分類されていたり、紫外線のSPFに相当する防御能の表記も定まっていないなど、とにかく制度が時代遅れになっていること。

tinted sunscreen(「色つき」日焼け止め)を名乗るルールもないから、悪意を持ったメーカーの登場を防げません。

米国FDAが動けば、世界が動くわけですから、どうしても期待してしまうのですが、FDAは日焼け止めについては、有効成分の承認が遅れていることも長らく批判されていて、日焼け止め部門(そんなのあるか知らんけど)の動きの遅いのが気になります。

結論

可視光線からの保護:

⚪️最新の研究では、可視光線も肝斑の悪化に関与する可能性が示唆されています。
⚪️酸化鉄を含む色付きの日焼け止めは、可視光線からも保護する効果がありますが、日本で製造販売される日焼け止めは酸化鉄を含んでいても可視光線防御には十分ではなく、この意味で推奨できる日焼け止めはありません。
⚪️可視光線からの保護のためには、抗酸化療法(ビタミンE+Cなど)を推奨します。


 追加)ようやく国内の製品で、(色味の調整ではなく)フィルターとして酸化鉄を含む製品を見つけました!ロート製薬のDRX UVプロテクトミルクSです。


1)光線過敏症状のある方
2)肝斑や色素沈着で治療している方
3)肌の色の濃いタイプで日焼けを避けたい方
4)美白ケアのレベルを上げたい方
に強く推薦します。

当院で販売を開始しました。
DRX UVプロテクトミルクS 1本(40ml)2,310円(税込)



DRX UVプロテクトミルクS

 

 関連サイト

 

(参考文献)
1) Photoprotection beyond ultraviolet radiation: A review of tinted sunscreens
Lyons AB, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1393-1397

2) Practical guide to tinted sunscreens
Torres AE, et al.
J Am Acad Dermatol.
2022;87(3):656-657

5) Visible light Part II: Photoprotection against visible and ultraviolet light
Geisler AN, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1233-1244


 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年7月25日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.09.14更新

日焼け止め30分前問題


夏になると決まってネットに「日焼け止めは、外に出る30分前に塗るべき」というネット記事が流れ、ときにはX(旧Twitter)で議論を巻き起こします。

先日もネット記事にX上で批判の嵐が巻き起こり、中にはメーカー各社に確認を取る方も現れて、結局、質問した10社ほどのすべて
「塗ればすぐに有効」と返答したと投稿されていました。そのときXでは「即効説」の圧勝となり、「30分前説」は瞬殺されました。

確かに塗った瞬間から肌に到達する紫外線を反射・吸収するはずですから、「即効説」が当然に思えます。しかし医師としては、「即効説」を声高に叫ぶのはちょっと気が引けるのです。


日焼け止めを塗るタイミングは「30分前」が正解?ネットの議論を検証

ネット上では「日焼け止めは塗ってすぐ効く」という主張と、「30分前に塗らないと意味がない」という主張が対立しています。化粧品メーカー各社への問い合わせ結果を見る限り、業界の見解は「塗布直後から効果がある」で一致しているようです。

では、なぜ「30分前説」がこれほど広まっているのでしょうか。実はこの説、単なる都市伝説ではなく、れっきとした国際機関の推奨に基づいているのです。


なぜWHOや医学文献は「15~30分前」を推奨するのか

「即効説」に気が引ける理由は、外出時の日焼け止めを塗るタイミングとして、米国皮膚科学会は15分前(文献1)、WHO(世界保健機関)は20〜30分前(文献2)を推奨しているからです。普段目にする医学文献でもほとんどが、外出の15〜30分前に塗るようにと書かれています。

「なぜ外出の15〜30分前でなければならないのか?」——この疑問に答えるため、私は基礎的な日焼け止めの文献を手当たり次第に読むことにしました。最も愚直で遠回りに思えましたが、案外あっけなく答えを見つけることができました。

教えてくれたのは、カナダ皮膚科学会の公式ジャーナルでした。そこには「日焼け止めの試験方法に基づいて、日光を浴びる15~30分前に露出部位に日焼け止めを塗るべきと言われるが、この使用法を支持する証拠は完全に欠如している」と明確に述べられていました(文献3)。

つまり、世界の権威ある機関が「15〜30分前説」を取る理由は、国際的な試験プロトコルにあったのです。日焼け止めの効果を測定する際、水分の影響や肌への定着などのばらつきを排除するため、塗布後一定時間(15分~30分)を置いてから測定を開始することになっています。

公式には日焼け止めを塗ってすぐに効果を発揮することは「証明されていない」——あくまで一定時間を置いた後の効果が「証明されている」だけ。それが「日焼け止め15〜30分前」説の本当の理由なのです。


医学的根拠が示す真実:日焼け止めは直前でも効果がある

同じ文献に、「即効説」を裏付ける根拠も示されています。UV写真技術を用いて、日焼け止めが実際にいつから保護効果を発揮するかを視覚的に評価した研究によれば、日焼け止めの保護効果は塗布直後から始まり、その効果は最長でも10分後には最適化されることが実証されました(文献4)。

現代の医学的コンセンサスとしては、日焼け止めは塗布直後から効果があり、水に入る場合を除いて15〜30分待つ必要はないというのが最新の見解と言えるでしょう。

世界的権威はあくまでも「試験で証明された効果」を推奨する立場を取ります。そのため、実生活での使い方とは少しズレが生じているのです。


外出直前や水に入る時など、シーン別日焼け止めの正しい使い方

では、実際の生活ではどうすればよいのでしょうか。シーン別にポイントをお伝えします。

外出直前でも塗らないよりはずっとよい
たとえ出かけるギリギリに塗ったとしても、日焼け止めは確実に紫外線をブロックしてくれます。「30分前に塗れなかったから今日は諦めよう」と考える必要はありません。塗らないよりは塗るほうが圧倒的に効果的です。


水に濡れる予定があるなら早めに塗る
プールや海水浴など水に入る直前の塗布は、まだ肌に定着していない分、流れ落ちやすくなります。その場合は少なくとも10分前に塗っておくと安心です。ウォータープルーフタイプでも、肌になじませる時間を確保したほうが効果を発揮しやすくなります。


こまめな塗り直しを心がける
どんなにSPFが高くても、時間の経過や汗、水などで落ちてしまうことがあります。屋外で長時間過ごす場合は2〜3時間おきを目安に塗り直して、しっかりとした保護効果をキープしましょう。


まとめ

✅日焼け止めを30分前に塗ることを推奨する理由は、日焼け止めの効果を測定する際の国際的ルール(試験プロトコル)に基づいていることが最大の根拠でした。「塗った直後にはまったく効かない」というわけではなく、外出直前に塗っても十分に効果は期待できます。

✅これからも「日焼け止めは外に出る30分前に塗るべき!」というニュースを見かけるかもしれませんが、その理由を知った今なら、必要以上に神経質になることはないでしょう。

✅大事なのは、外出のタイミングやシーンに応じて賢く塗ること。あなたの肌を守る最適な方法で、今年も紫外線対策をしっかり行ってください。

当院では、肌への負担を抑えつつ高い遮光効果を持つ医療機関専売の日焼け止めを取り扱っています。市販品で肌荒れしてしまう方や、より確実な対策をしたい方はぜひご相談ください。

▶ 当院取り扱いの「UVプロテクトミルク」詳細はこちら

+αのアドバイス:紫外線を浴びてしまったら 日焼け止めで防ぎきれなかった紫外線ダメージには、抗酸化作用のあるビタミンCでのケアが有効です。塗るタイミングと合わせて、日々のスキンケアも見直してみましょう。

▶ 紫外線ダメージのケアに「高濃度ビタミンCジェル

 

▶すでにできてしまったシミが気になる方へ


強力な美白剤 ハイドロキノン

シミ取りレーザーなら Qスイッチレーザー





【参考文献】

1) How to apply sunscreen(米国皮膚科学会サイト)https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen

2) 世界保健機関 (WHO). “Radiation: Protecting against skin cancer”. 2024-07-16.
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/radiation-protecting-against-skin-cancer
(参照 2026-01-08)

3) Sunscreen application, safety, and sun protection: the evidence
Heidi Li, et al.
J Cutan Med Surg
2019;23(4):357-369

4) Time required for a standard sunscreen to become effective following application: a UV photography study
M V de Gálvez, et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol
2018 Apr;32(4):e123-e124

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月9日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.09.01更新


室内で過ごすときも、肌の老化や皮膚がんのリスクを考えて「日焼け止めは必要なのか?」と疑問に思う方は少なくありません。インターネットやメディアでも「室内でも紫外線を浴びるから日焼け止めを塗ったほうがいい」という情報が多く見られます。

では、本当に「日焼け止めは室内でも必要」なのでしょうか?室内用に肌に優しい日焼け止めを探す前にお読み下さい。



1 室内での光老化リスク|UVAとUVBの違いとは


窓ガラスと紫外線

日光に含まれる紫外線は、大きくUVA(波長320~400nm)とUVB(波長280~320nm)に分けられます。

UVBは主に表皮に作用し、日焼けや皮膚がんの原因になる強いエネルギーを持っています。炎症や赤みを引き起こしやすい特徴があります。一方、UVAは波長が長く、真皮にまで到達してコラーゲンやエラスチンを損傷し、皮膚の弾力低下やしわ、たるみなどの「光老化」を進める原因になります。(追記:もし、紫外線による[たるみが気になる場合は、ハイフ(ウルトラフォーマー)などの医療機器による引き締め治療が有効です。)

注目すべきは、UVAの多くは窓ガラスを透過し、室内にいても皮膚に到達する可能性がある点です。


2 窓ガラスの紫外線透過率は?家の中で日焼けする「窓際」のリスク

私たちが日常的に使用している建築用のガラスでは、UVBのほとんどはカットできます。しかし、古い単板ガラスや一般的な複層ガラスの住宅ではUVAの透過率は50%を超えます。

最近普及している高機能ガラスではUVA透過率が低下し、防犯対策に用いられる合わせガラスでは、UVAもほぼ遮断できます。しかし、いずれの場合も完全にゼロにはならないため、「室内だから安全」とは一概に言えません。そのため「日焼け止めは室内でもおすすめ」といった情報がよく見られますが、この問題はもう少し詳細に検討する必要があります。


3 窓からの距離と紫外線量の関係

見落とされがちな重要な要素は「窓からの距離」です。

紫外線は窓際に近いほど多く浴びることになりますが、窓から1メートル以上離れるだけでも、その量は急激に減少することが研究でわかっています(資料1)。「日焼け止めは室内でも必要」という結論に飛びつく前に、まずは自分の行動パターンを確認することが大切です。


4 車内と家の中は違う?室内紫外線における誤解

有名な例として、トラックドライバーの顔の片側だけが著しく光老化している写真があります(資料2)。これはガラスがあってもUVケアにならない例としてしばしば取り上げられます。しかし、車内と一般的な室内環境を同一視するのは適切ではありません。

車内は、ガラスと人の位置が数十センチの距離に固定されている特殊な状況です。それに対し一般的な室内生活で窓ガラスに長時間密着して過ごす人はほとんどいないでしょう。 したがって、トラックドライバーのような状態が、そのまま「室内の日常生活」で起こる可能性は低いと考えられます。


5 「室内で日焼け止めは不要」とする世界の専門機関の見解

米国皮膚科学会(AAD)の公式サイトでは、「日焼け止めは毎日使いましょう」と推奨していますが、それはあくまで「外出前に塗る」ことを指しています。さらに、オーストラリアがん協議会(Cancer Council Australia)は、「室内にいる場合は日焼け止めは不要である」と明確に示しています(資料3)。

総合的なリサーチを行っても、「日焼け止めは室内でも積極的に塗るべき」と推奨している国際的な専門機関は見当たりません。 結論として、世界的なスタンダードは「屋外活動時に日焼け止めをしっかり塗る」ことであり、室内で過ごす場合にまで塗るのは過剰と言えるかもしれません。


6 日焼け止めのデメリットと肌負担|あえて「塗らない日」を作るメリット

「室内でも日焼け止めは必要か?」を考えるうえで、日焼け止めを塗るデメリットにも注目する必要があります。

日焼け止めは肌への刺激やアレルギー反応を引き起こす可能性があります。(追記:当院では、敏感肌の方でも毎日安心してご使用いただける医療機関専売のUVプロテクトミルクNをご用意しております。)

また、室内にいるときも日焼け止めを塗ったり、塗り直したりすればコストや手間もかかります。 したがって、日焼け止めの使用は、「リスク(デメリット)とベネフィット」を天秤にかけて判断することが重要です。


7 【結論】室内で日焼け止めが必要な人とおすすめの対策

室内でも日焼け止めを使用した方がいい場合


これまでの解説を踏まえると、一般的な日本の住宅環境において、「日焼け止めは室内でも必要か」という問いに対する答えは、必ずしも「イエス」ではありません。

しかし、生活環境や肌質によっては、室内であっても紫外線対策を推奨するケースがあります。ご自身が以下の条件に当てはまるかどうか、まずはチェックしてみてください。

✔️窓際(1メートル以内)や車内で毎日長時間過ごす方
特に、窓ガラスのUVカット性能が不明な場合や、古い単板ガラスの環境では注意が必要です。

✔️肌の色が白い方(スキンタイプI–II型)、皮膚がんのリスクが高い方
日焼けをすると赤くなりやすく黒くなりにくい方や、ご家族に皮膚がんの既往歴がある方は、日常的にUVAケアを意識したほうが安心です。


室内で使うなら?肌に優しく塗り直しが楽なものを

「私は窓際で仕事をすることが多いから、やっぱり室内でも日焼け止めを塗っておきたい」 そう判断された場合でも、屋外レジャー用の強力な日焼け止めを使う必要はありません。

室内用の日焼け止め選びで重要なのは、以下のポイントです。

✔️日焼け止め 室内 肌に優しい処方であること(紫外線吸収剤フリーや低刺激性など)

✔️石鹸で落とせる、または日焼け止め 室内 塗り直しが苦にならない軽いテクスチャー

毎日肌に乗せるものだからこそ、肌負担(デメリット)を最小限に抑えることが大切です。当院では、敏感肌の方でも毎日安心してご使用いただける、医療機関専売の「UVプロテクトミルクN」をご用意しております。肌への優しさとUVA防御効果を両立しており、室内用としても非常におすすめです。


日焼け止め以外の室内紫外線対策(フィルム・カーテン)

室内での紫外線対策は、必ずしも日焼け止めクリームだけに頼る必要はありません。物理的に紫外線を遮断する方法も非常に効果的です。

窓から離れる:デスクやソファを窓から1メートル以上離すだけでも、紫外線量は大幅に減少します。
UVカットフィルム:窓ガラスに後付けできるフィルムは比較的安価です。「室内でも塗るべき?」と悩む前に、環境側でカットしてしまうのも賢い選択です。
カーテンやブラインド:日差しが強い時間帯はこれらを活用しましょう。
衣類での保護:長袖やUPF表示のある衣類で肌を覆えば、薬剤による肌負担はゼロです。

(追記)
浴びてしまった紫外線のケアについて 万が一、室内でうっかり日焼けをしてしまった場合や、蓄積した光老化(シミ・小じわ)が気になる場合は、光老化に対する塗り薬レチノイド療法(CDトレチノインなど)など「浴びた後の医療ケア」もぜひ選択肢に入れて下さい。

 

【参考資料】

1 The role of glass as a barrier against the transmission of ultraviolet radiation: an experimental study
Ida Duarte, et al.
Photodermatol Photoimmunol Photomed
2009 Aug;25(4):181-4

2 Images in Clinical Medicine: Unilateral Dermatoheliosis
Jennifer R S Gordon, Joaquin C Brieva
N Engl J Med
2012 Apr 19;366(16):e25

3 Claire Wharton. "Should I wear sunscreen when indoors?". Cancer Council Australia. 2025年4月17日更新
[https://www.cancer.org.au/iheard/should-i-wear-sunscreen-when-indoors]

4 The Minor Surgery Center. "Understanding Your Fitzpatrick Skin Type: A Complete Guide to Sun Safety and Skin Cancer Prevention". 2025年12月18日
[https://www.theminorsurgerycenter.com/blog/fitzpatrick-skin-type-a-complete-guide]

 


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 *2025年12月31日調べ

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月1日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.07.31更新

日頃、ネット上に流れる美容情報には、人を不安にさせるような情報があります。

「パルミチン酸レチニル(パルミチン酸レチノール)が入った化粧品を朝使うと、紫外線で皮膚がんになる」 、「朝レチノールは危険」などというのもその一つ。

パルミチン酸レチニル(パルミチン酸レチノール)は生体内におけるレチノールの貯蔵形態ですから、それと発がんが結びつくとは信じられませんが、一度と言わずに二度三度と目にすると不安になります。

以前、このブログでも「パルミチン酸レチニル(パルミチン酸レチノール)問題」について触れましたが、リライトするにあたり、改めて最新文献まで含めて調査しました。

結論を言えば、パルミチン酸レチニル(パルミチン酸レチノール)には、発がん性を心配する必要はなく、むしろ紫外線で傷ついたDNAを修復する「守護神」になり得るのです。

本記事では、ネット上で拡散されてきた「不安の根拠」である動物実験の意外な真実と、最新科学が明らかにした「DNAの修復」について解説します。

*パルミチン酸レチニルは慣習上パルミチン酸レチノールとも呼称されますが、以後は正式名である「パルミチン酸レチニル」で記載を統一します。

パルミチン酸レチニル問題


【発がん性の真相】パルミチン酸レチノールが危険と言われたマウス実験の誤解


「レチノールを塗って紫外線を浴びると腫瘍ができる」という説の根拠は、実は古い報告書に由来しています。それは、2012年に米国国家毒性プログラム(NTP)が発表した「TR 568」という報告書です(文献1)。

この実験では、ヘアレスマウスにパルミチン酸レチニル入りのクリームを塗り、紫外線を当て続けたところ、皮膚腫瘍が増えたという結果が示されました。これだけ聞くと確かに不安になりますが、この実験には「重大な欠陥」がありました。


比較用の「ただのクリーム」でも腫瘍ができていた

科学実験では、薬効成分が入っていない「基剤(コントロールクリーム)」を塗ったグループと比較を行います。驚くべきことに、この実験では「パルミチン酸レチニルが入っていないただのクリーム」を塗っただけでも、何もしなかったマウスに比べて腫瘍の発生が早まり、数も増えてしまっていたのです。

後の検証により、クリームの材料として使われていた「アジピン酸ジイソプロピル」などの成分が、マウスの皮膚バリアを壊し、紫外線の害を増幅させていた可能性が高いことが判明しました。つまり、犯人はパルミチン酸レチニルではなく、「実験に使われたクリームそのもの」だった可能性が極めて高いのです(文献2)。

マウスとヒトの決定的な違い

さらに、実験に使われた「SKH-1ヘアレスマウス」は、人間と比べて皮膚が非常に薄く、紫外線による酸化ストレスを防御する能力が著しく低いことが分かっています。

欧州の安全性評価機関(SCCS)や米国の化粧品原料安全性評価委員会(CIR)は、この実験結果を精査した上で、「この結果を人間にそのまま当てはめることはできない」と結論付けました(文献3)。もし本当に危険なら、世界中の規制当局が日焼け止めへの配合を禁止しているはずですが、そのような規制は行われていません。


パラダイムシフト:2025年最新研究が示す「DNA修復」の力

これまでの議論は「パルミチン酸レチニルは危険ではない」という「守り」の姿勢でした。しかし、最新の研究はもっとアグレッシブです。「むしろ日中も塗るべきである」という強力な根拠が出てきています。

それは2025年に発表されたZhongらの最新研究です(文献4)。この研究では、パルミチン酸レチニルとレチノールの組み合わせが、紫外線(UVB)によって損傷したDNAを修復するメカニズムが解明されました。

具体的には、これらの成分が細胞内の「ATM-CHK2-p53」というシグナル伝達経路を活性化させ、壊れたDNAを修理する遺伝子(相同組換え修復遺伝子)のスイッチを入れることが分かったのです。 つまり、パルミチン酸レチニルは発がんを促すどころか、「がん化を防ぐための修復部隊」を指揮している可能性があるのです。


パルミチン酸レチノールと純粋レチノールの違い・使い分け

では、私たちは明日からどうすれば良いのでしょうか? 最新の製剤学および皮膚科学の知見に基づき、レチノイドの特性に応じた正しい使い分けを提案します。

朝は「守り」のパルミチン酸レチニル

パルミチン酸レチニルは、純粋なレチノールと比較して分子構造が安定しており、皮膚への刺激性が極めて低いという特性があります。そのため、日中の紫外線下でも安定して機能します。

夜は「攻め」の純粋レチノール / トレチノイン

一方で、純粋レチノールや医薬品であるトレチノインは、強力なターンオーバー促進作用を持ちますが、光や熱に対して不安定であり、分解されやすい性質を持ちます。そのため「夜のみ」の使用が原則となります。

院長からのアドバイス:朝のルーティーン「朝レチノール」

「朝レチノール」を実践する場合は、以下の科学的根拠に基づいたルールを守ってください。

1️⃣ 成分を確認する: 朝使う製品には、安定性の高い「パルミチン酸レチニル(Retinyl Palmitate)」が配合されているものを選びましょう。

2️⃣ 日焼け止めは必須: パルミチン酸レチニルが紫外線を吸収しますが、それだけで全ての紫外線を防げるわけではありません。必ずSPF30以上の日焼け止めを併用してください。

▶おすすめの日焼け止め


医療機関専売 UVプロテクトミルク


まとめ

⭐️ネット上の古い情報や、不安を煽るだけの発信に惑わされないで下さい。パルミチン酸レチニルは、正しく使えば日中の過酷な環境からあなたの肌を守り、未来の美しさを育む頼もしい味方です。

⭐️当院では、最新の知見に基づき、科学的に理にかなったスキンケア指導を行っています。不安な点があれば、いつでも診察室でご相談ください。


▶クリニックで取り扱うレチノイド


ニキビ痕、毛穴、深いシワへのアプローチ タザロテン

シクロデキストリンで包んで低刺激を実現 CDトレチノイン

ニキビ治療のスタンダード ディフェリン

レチノールより変換効率が高いレチノイド レチナール



▶関連するクリニックでの施術


施術としてのレチノール レチノールピール

ダーマペンでレチナール レチナールトリートメント

 

【参考文献】

1 Photocarcinogenesis study of retinoic acid and retinyl palmitate [CAS Nos. 302-79-4 (All-trans-retinoic acid) and 79-81-2 (All-trans-retinyl palmitate)] in SKH-1 mice (Simulated Solar Light and Topical Application Study)
National Toxicology Program
Natl Toxicol Program Tech Rep Ser
2012 Jul:(568):1-352

2 Safety Assessment of Retinol, Retinoic Acid, and Retinyl Esters as used in cosmetics
CIR EXPERT PANEL MEETING JUNE 10-11,2013
https://www.cir-safety.org/sites/default/files/rp_buff_092012.pdf

3 SCCS (Scientific Committee on Consumer Safety), revision of the scientific Opinion (SCCS/1576/16) on vitamin A (Retinol, Retinyl Acetate, Retinyl Palmitate), preliminary version of 10 December 2021, final version of 24-25 October 2022, SCCS/1639/21

4 Synergistic effects of retinol and retinyl palmitate in alleviating UVB-induced DNA damage and promoting the homologous recombination repair in keratinocytes
Jiangming Zhong, et al.
Front Pharmacol
2025 Apr 24:16:1562244




 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月1日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.25更新

 

皮膚科でニキビが治らない原因は間違った「薬をやめるタイミング」にあります。アダパレンやエピデュオの副作用を乗り越え、ニキビ治療後の再発防止に不可欠な「維持療法」の重要性を医師が徹底解説します。


ニキビ治療は長い付き合い

1 ニキビ治療の落とし穴:間違った「薬をやめるタイミング」と高い再発リスク

当院は美容皮膚科ですから、ニキビ診療は行っていません。ニキビ診療は基本的には一般皮膚科でガイドラインに基づいて行われるべきです。

そんなニキビですが、普段クリニックで美肌治療を行う際に、しばしば障害となる困りもの。

せっかく表面のブツブツが消えても、赤い炎症が長引いたり、茶色い色素沈着が残ったりして、それまでの美肌治療を台無しにしてしまうことがよくあります。

そんなニキビですが、驚くべきことに、多くの方が皮膚科でのニキビ治療を受けていません。

さらには皮膚科で治療を受けていたとしても、「見た目が良くなったら終了」という誤った認識による早期中断が問題として指摘されています(文献1)。

「表面的な症状が改善したから」という理由で自己判断で治療を中止したら、待ち受けているのは残念ながらニキビの再発です。

ニキビができやすい肌質は簡単には変わりません。「再発リスク(relapse risk)」を減らすためには、症状が完全に治まった後も少なくとも2ヶ月間は治療を継続することが推奨されています(文献2)。


2 皮膚科でニキビが治らない原因?医師が指摘する「治療が続かない3つの課題」

「治療を続けましょう」と言うのは簡単ですが、実際にはそう簡単ではありません。この「続かない問題」の深刻さは、日本の皮膚科医自身の手による調査で明確に示されています。

日本のニキビ患者428名を対象とした多施設研究では、皮膚科医の診療下にあるにもかかわらず、ニキビ治療には以下の3つの深刻な課題があることが報告されました(文献1)。


課題①:そもそも薬をきちんと使えていない(アドヒアランス不良)

最も深刻な課題がこれです。この研究では、全体の76%が治療アドヒアランス不良....つまり、皮膚科を受診して処方してもらった薬を、4人に3人がきちんと使えていなかったのです。

さらに詳しく見ると、状況はもっと深刻です。塗り薬だけの治療でも52%が不十分な遵守。飲み薬に至っては単独で93%、塗り薬との併用でも86%が遵守不良という結果でした。

皮膚科医の立場から言えば、「処方しても使ってもらえない」という、非常にもどかしい現実です。これは日本のニキビ診療における最大のボトルネックと言えるでしょう。


課題②:副作用がつらくて続けられない

同研究のアンケート解析では、治療が続かなくなる原因として「副作用の経験」と「治療満足度の低さ」が有意に関連していました。

これは臨床の現場でもよく目にする悪循環です。外用レチノイド(アダパレンなど)やBPO(過酸化ベンゾイル)といったニキビ治療薬は、使い始めに乾燥・紅斑・刺激感といった副反応が起こることがあります。この不快感に耐えきれず患者さんが使用を中断してしまうと、当然ながら治療効果は得られません。

ここで重要なのは、薬そのものの有効性には問題がないという点です。問題は薬の効き目ではなく、薬を「使い続けられるかどうか」にあるのです。


課題③:ニキビ治療への理解が足りない

この研究で特に注目すべき発見があります。それは「ニキビという疾患と治療の内容をよく理解している患者ほど、アドヒアランスが良好だった」という点です。

逆に言えば、なぜこの薬を使うのか、副作用が出ても続けるべき理由は何か、どのくらいの期間が必要なのか....こうした基本的な情報が十分に伝わっていないと、患者さんは少しの変化や不安で治療を中断してしまいやすいのです。

まとめると、日本のニキビ治療が「うまくいかない」最大の原因は、薬の有効性の問題ではなく、①使われない、②続けられない、③理解されない....という「使用継続性の問題」です。

この事実は、医師がもっと丁寧に説明し、患者さんと一緒に治療を続けていく姿勢の大切さを示しています。


3 ニキビ再発防止のために治療を継続する科学的根拠

ニキビ再発防止を目指した治療の継続には、明確な科学的根拠があります。

それはエピデュオ・フォルテ(アダパレン0.3%+過酸化ベンゾイル2.5%)を用いて、患者に6ヶ月間この薬剤を塗布した研究報告です(文献3)。

この報告の特筆すべき点は、塗り薬を続けることで、ニキビ跡(萎縮性瘢痕)の数を減少させたことですが、もう一つ注目すべきは治療が3ヶ月、6ヶ月と継続するにつれて効果が向上していたこと。これは、治療を継続することで、ニキビの再発防止だけでなく、ニキビ跡(萎縮性瘢痕)の減少にもつながる可能性を示唆しています。

先ほどご紹介した日本の調査では76%もの患者さんが治療を十分に続けられていませんでした。この「継続する」という一見シンプルなことが、実はニキビ治療の成否を分ける最大の鍵なのです。


4 アダパレンやエピデュオの副作用対策と日本でできるニキビ再発防止策

残念ながら日本ではエピデュオ・フォルテは未承認ですが、類似製剤であるエピデュオゲル(アダパレンの濃度が0.1%と低い)においても、半年間の継続使用で:

◎ 新たなニキビ発生の防止(ニキビ再発防止)
◎ 既存のニキビ跡の改善

という二重の効果が確認されています(文献4)。やはりニキビ再発を防ぐための維持療法が、肌質そのものの改善につながる可能性が示唆されています。

ニキビ再発防止の観点からは、先に述べたように症状が完全に治まった後も少なくとも2ヶ月間は治療を継続することをお勧めします。

副作用が気になる場合は、自己判断で中止するのではなく、使用量や頻度の調整について担当医にご相談ください。副作用への不安から自己判断で中断してしまうことこそが、ニキビ治療における落とし穴なのです。


5 本当のニキビ治療とは?再発を防ぐ最後の仕上げ「維持療法」

日本皮膚科学会のガイドライン(文献5)でも明記されていますが、真のニキビ治療には2つのステップがあります:

◉ 急性期の炎症を抑える「急性期治療」
◉ニキビが落ち着いた後の「維持療法」

多くの方が見落としているのは、この2番目のステップです。ニキビ再発防止のための「維持療法」は、ニキビ治療に欠かせない最後の仕上げなのです。

具体的には、アダパレン(ディフェリン)やBPO製剤などの外用薬を継続的に使用することが推奨されています。つまり、「ブツブツが消えたら終わり」ではなく、その後もニキビ再発させないための「維持療法」を続けることが正しいニキビ治療です。

日本の皮膚科医自身の調査が突きつけた3つの壁....アドヒアランス不良(76%)・副作用による中断・患者教育不足....を乗り越えるためには、治療の意味をしっかり理解し、副作用とうまく付き合いながら、医師と二人三脚で根気よく続けることが何より大切です。

この維持療法の考え方はガイドラインで示されているにもかかわらず、一般には十分に浸透していません。もしかすると医療費増加への懸念から積極的な周知が控えられているのではと疑いたくもなりますが、維持療法の重要性は、皆さんの肌の健康のためにもっと広く認識されるべきです。皮膚科ドクターと相談しながら、あなたに最適な維持療法を見つけて下さい。

一般皮膚科での維持療法を終え、ニキビができにくい健康な肌の土台が整った後、ニキビ跡の赤みや色素沈着、さらなる美肌を目指す段階になれば、当院の美容皮膚科治療が効果を発揮します。

 

▶当院のニキビ跡治療:


ニキビ後の赤み治療 トラネキサム酸注射

軽症〜中等症のクレーター治療 リジュラン

重症のクレーター治療 フラクショナルレーザー



おすすめのニキビ関連記事

 

 

【参考文献】


1) Acne management in Japan: study of patient adherence
Yoshiki Miyachi, et al.
Dermatology
2011;223(2):174-81

2) Exploring acne treatments: from pathophysiological mechanisms to emerging therapies
Hyun Jee Kim, Yeong Ho Kim
Int J Mol Sci
2024 May 13;25(10):5302

3) Prevention and reduction of atrophic acne scars with adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in subjects with moderate or severe facial acne: results of a 6-month randomized, vehicle-controlled trial using intra-individual comparison
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2018;19:275-286

4) Adapalene 0.1%/benzoyl peroxide 2.5% gel reduces the risk of atrophic scar formation in moderate inflammatory acne: a split-face randomized control trial
Dréno B,et al.
JEADV
2017;31:737-742

5) 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023(改訂版)
日本皮膚科学会
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/zasou2023.pdf
(最終閲覧日:2026年3月2日)

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年3月2日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.18更新

1. ニキビ跡(萎縮性瘢痕)を治療する美容皮膚科が、一般皮膚科での「ニキビ早期治療」を勧める理由


当院では美容皮膚科として、ニキビ治療の中でも「ニキビ跡(特にクレーターなどの萎縮性瘢痕)」の治療を行っています。現在進行形で炎症を起こしている「ニキビそのもの」の治療は行っておらず、保険診療のガイドラインに基づいた一般皮膚科での受診をお勧めしています。

それなのに「なぜ自分のところでは診ないのに、ニキビの話をするの?」

そう思われるかもしれません。しかし、「ニキビ跡」の診療をしている医師だからこそ、強くお伝えしたいことがあるのです。

それは、「ニキビ跡を作らないためには、一般皮膚科での早期治療に勝るものはない」という事実です。

この記事では、最新の医学論文のデータを交えながら、その理由を解説します。




ニキビは早期治療



2. ニキビ放置は跡になる!皮膚科での早期治療がもたらす4つのメリットとクレーター予防効果

「たかがニキビ」と様子を見ている間に、肌の内部ではダメージが進行しています。最新の研究では、早期介入によって以下のメリットが得られることが報告されています。

2-1. 「一生残る傷跡(瘢痕)」のリスクを減らせる

これが最も強調したい点です。早期に炎症性ニキビをコントロールすることは、クレーター(陥凹性瘢痕)や色素沈着といった「物理的・心理的な傷跡」のリスクを低減させると報告されています(文献1)。

特にトレチノインやアダパレン(ディフェリン)などのレチノイドは、ニキビの予防だけでなく、すでに生じた色素沈着の改善にも効果が期待されており、早期からの導入が推奨されています(文献1)。

2-2. 早期に「目に見える変化」が期待できる

「皮膚科の薬は時間がかかる」というイメージがあるかもしれません。しかし、近年の配合外用薬(アダパレン/過酸化ベンゾイル等)を用いた研究では、治療開始4週の時点で炎症性ニキビが30〜50%以上減少したというデータがあります(文献2)。

こうした早い段階での目に見える改善は、患者さんの満足度を高め、治療を続けるモチベーション(アドヒアランス)につながります。治療を継続すればするほど効果は積み重なるため、最初の数週間の実感が長期的な治療成績を左右するといっても過言ではありません。



2-3. 「治りにくいニキビ」への進行を食い止める

ニキビは慢性的な炎症性疾患です。適切な治療が遅れると炎症が長引き、再発を繰り返す「難治化」のリスクが高まります (文献3)。
重症化してから慌てて治療を始めるのではなく、軽症のうちに標準治療(レチノイドや過酸化ベンゾイルなど)で難治化、重症化を防ぐことが、結果的にトータルの治療負担を減らすことにつながります。


2-4. 心の負担(QOL)を軽くする

ニキビは単なる「肌の問題」ではありません。特に思春期の若い方にとって、自己評価や対人関係に大きな影響を与えることが知られています(文献4)。

早期のニキビ(学童期〜軽症段階)をきちんと治療・モニタリングすることで、より速やかに良好な臨床経過とQOLの改善が得られるとされています(文献4)。

「たかがニキビ」と放置せず、早い段階から適切なケアを受けることが、精神的な健康を守るうえでも重要なのです。




3. 早期治療がニキビ跡予防に重要なのに、なぜ皮膚科受診は遅れてしまうのか?

皮膚科医は一生懸命「ニキビ早期治療」の重要性を説いているわけですが、実はそれを妨げる要因が、皮膚科の診療現場にあるという矛盾を抱えています。

日頃、ニキビのある方に皮膚科受診をお勧めしていますが、「時間がかかりすぎる」、「ちゃんと診てくれない」、「話を聞いてくれない」などという声をよく耳にします。

こうした意見を聞くたびに「今の保険制度では、たくさんの患者さんを診ないと経営的に成り立たないから、皮膚科の先生も大変なのです」とフォローしますが、実際のところ、皮膚科受診のハードルの高さが、日本の「ニキビ診療」の足を引っ張っているという現実があります。




4. まとめ

私たちのような「ニキビ跡治療」を行うクリニックの出番がないこと、それが本来の理想です。

もし今、赤いニキビや白いニキビができているなら、「跡になってから美容皮膚科」へ行くのではなく、まずはお近くの一般皮膚科を受診して下さい。それが、将来的なクレーターや色素沈着を防ぐための最善かつ最短のルートです。


ニキビがクレーター(萎縮性瘢痕)などのニキビ跡になるリスク要因の中でも、『治療の遅れ』は『ニキビをいじる、潰す』行為とともに、自分でコントロールできる重要なリスク要因なのです。(文献5)。

それでも、もし不幸にも「跡」が残ってしまった場合は、当院が全力でサポートさせていただきます。

 

▶当院のニキビ跡治療:


ニキビ後の赤み治療 トラネキサム酸注射

軽症〜中等症のクレーター治療 リジュラン

重症のクレーター治療 フラクショナルレーザー




おすすめのニキビ関連記事

 

 

【参考文献】

1) Recommendations to Improve Outcomes in Acne and Acne Sequelae: A Focus on Trifarotene and Other Retinoids.
Naiem Issa, et al.
Dermatol Ther
025 Mar;15(3):563-577

2) Early Acne Improvements With Fixed-Combination Topical Therapy: Analysis of the First 4 Weeks of Treatment
Steven R Feldman, et al.
J Drugs Dermatol
2025 Jan 1;24(1):79-87

3) Exploring acne treatments: from pathophysiological mechanisms to emerging therapies
Hyun Jee Kim, Yeong Ho Kim
Int J Mol Sci
2024 May 13;25(10):5302

4) Making the case for early treatment of acne
Andrea L Zaenglein
Clin Pediatr
2010 Jan;49(1):54-9

5) Acne Scarring: Why We Should Act Sooner Rather Than Later
Brigitte Dréno, Linda Stein Gold
Dermatol Ther
2021 Aug;11(4):1075-1078



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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年3月1日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.09更新


1 はじめに ―「すべてのニキビにはニキビ跡になるリスクがある」


ニキビは誰にとっても身近な肌トラブルですが、本当に怖いのは「ニキビ跡」になってしまうことです。ですから、皮膚科でのニキビ治療の原則は『たとえ軽いニキビであっても、早い段階から正しくケアして、ニキビ跡を残さないようにすること』です。

とはいえ、「どんなニキビがニキビ跡になりやすいのか」という疑問に対して、これまで明確な答えがありませんでした。「重いニキビほど跡になりやすい」というのは感覚的に理解できても、具体的にどんな特徴に注目すればいいのかがわからなかったのです。

ところが近年、ニキビ一つひとつを2週間ごと・6ヶ月間にわたって追跡するという非常に緻密な臨床研究が報告され、ニキビ跡になりやすいニキビの正体がかなり明確になってきました(文献1)。

この記事では、その研究結果をもとに「どんなニキビに注意すべきか」を解説するとともに、最新の医学文献に基づくニキビ跡の赤み(炎症後紅斑)の予防と治療のポイントについてもご紹介します。


2 ニキビ跡の8割以上は「治った後の赤み」から生まれていた


ニキビ跡の8割は赤みから

研究の結論は、多くの方にとって意外なものかもしれません。

ニキビ跡(瘢痕)の実に83%は、ニキビが治った後に残る「赤み」や「色素沈着」から進行してできていたのです。

特に多かったのが、赤く腫れたニキビ(赤ニキビ)がいったん治まったあと、赤みだけがいつまでも残り、そこからニキビ跡へと変わっていくというパターンでした。

さらに注目すべきデータがあります。将来的にニキビ跡になったニキビは、跡にならなかったニキビに比べて治るまでの期間が明らかに長かった(平均10.5日 vs 6.6日)のです。

つまり、以下の2つがニキビ跡になる危険信号です。
• ニキビが1週間以上経っても治らない
• ニキビ自体は平らになったのに、赤みがなかなか引かない

これらに当てはまる場合は、「そのうち消えるだろう」と放置せず、早めに皮膚科を受診した方が良さそうです。


3 消えないニキビ跡の赤み(炎症後紅斑)を放置してはいけない理由とクレーター化のリスク

ニキビが治った後に残る赤みは、医学的には「炎症後紅斑(macular erythema)」と呼ばれます。これは見た目には「ニキビの名残」程度に思えますが、実は肌の中でまだ炎症が続いているサインです(文献2)。

この炎症が長引くと、皮膚の組織が破壊されてクレーター状のニキビ跡(萎縮性瘢痕)に進行してしまう恐れがあります。逆に言えば、この「赤みの段階」で適切に治療を行えば、ニキビ跡への進行を食い止められる可能性があります。


4 ニキビ跡の赤みを防ぐための治療戦略

■ もっとも大切なのは「ニキビそのものを早く治す」こと

ニキビ跡の赤みを防ぐにはニキビは早期から継続的な治療で治すことです。

日本で保険適用のあるニキビ治療薬の代表は以下の2つです。

✔️アダパレン(ディフェリンゲル)
は、毛穴のつまりを改善し、ニキビの発生と炎症の両方に働きかける外用レチノイドです。外用レチノイドは、ニキビの治療だけでなく、赤みや色素沈着、さらには瘢痕の改善にも効果があるとされています(文献3)。

✔️過酸化ベンゾイル(BPO/ベピオゲル等)は、抗菌作用と角質剥離作用をもつ外用薬で、アダパレンとの併用(エピデュオゲル等)が推奨されています。

これらの外用薬をニキビの初期段階から継続的に使用することが、ニキビ跡の赤みを予防するうえでもっとも基本的かつ重要な戦略です。


■ 治らないニキビ跡の赤みを消すための美容皮膚科での最新治療

ニキビ自体は落ち着いたのに赤みだけが残っている….日本では保険診療の範囲外になりますが、そんなときは、以下のような治療が研究で報告されています。

トラネキサム酸皮内注射は、近年注目されている治療法です。トラネキサム酸を赤みのある部位に直接注射することで、短期間で赤みの改善が得られたと報告されています(文献4)。トラネキサム酸はもともと止血剤・抗炎症薬として日本でもなじみのある成分であり、コストを抑えた赤みの治療法として今後の展開が期待されます。

▶当院のトラネキサム酸注射:


ニキビ跡のクレーター予防のために トラネキサム酸注射

スキンケアとして高濃度トラネキサム酸 ダームエデン美容液



このほか海外では、タクロリムス外用(文献2)やチモロール点眼液外用(文献5)といった、本来の適応外の薬を赤みに使用する試みも報告されていますが、いずれもまだ研究段階であり、日本ではニキビ後の赤みへの保険適用はありません。


■ 日常のケアも忘れずに

どのような治療を行う場合でも、紫外線対策と肌のバリア機能を守るスキンケアの併用が欠かせません。紫外線は赤みを悪化させ、色素沈着を引き起こす要因になります。日焼け止めの毎日の使用と、肌に負担をかけない保湿ケアを継続することが、治療効果を最大限に活かすカギとなります(文献6)。


5 まとめ:ニキビ跡は「予防」がもっとも効果的

ニキビ跡は一度できてしまうと、セルフケアだけでの改善は難しいのが現実です。しかし、最新の研究が示しているのは、ニキビ跡は「運が悪かったから」できるものではなく、適切なタイミングで適切な治療を行えば防げる可能性があるということです。

覚えておきたいポイントは3つです。
1. 「治りが遅いニキビ」「赤みが長引くニキビ」は危険信号 .... 1週間以上改善しないニキビや、平らになっても赤みが引かないニキビは要注意です。

2. ニキビ後の赤み(炎症後紅斑)は“まだ炎症が続いているサイン” .... 放置するとクレーター状のニキビ跡に進行するリスクがあります。

3. アダパレンやBPOなどの外用薬を早期から継続使用することが、もっとも確実な予防策 ....
「たかがニキビの赤み」と軽視せず、気になったら早めに皮膚科医にご相談ください。早期からの正しいケアで、ニキビ跡に悩まされない健やかな肌を目指しましょう。

 

 

 おすすめのニキビ関連ブログ記事

 

【参考文献】

1)Prospective study of pathogenesis of atrophic acne scars and role of macular erythema
Tan J,et al.
J Drugs Dermatol.
2017;16(6)567

2) Topical tacrolimus for acne-related macular erythema to prevent atrophic scarring
Madhulika Mhatre, et al.
J Am Acad Dermatol
2022 Jun;86(6):e253-e254

3) Recommendations to Improve Outcomes in Acne and Acne Sequelae: A Focus on Trifarotene and Other Retinoids
Naiem Issa, et al.
Dermatol Ther
2025 Mar;15(3):563-577

4) The Comparable Efficacy Between Tranexamic Acid Intradermal Injection and Pulsed Dye Laser for Treatment of Post-Acne Erythema
Kartika Ruchiatan, et al.
Clin Cosmet Investig Dermatol

5) Topical TimololinDermatology:ApplicationsandAdvances
Wang Yu, et al.
Dermatol Ther
2025;2025(1):5812080

6) A Real-World Approach to Trifarotene Treatment in Patients with Acne and Acne Sequelae
Maria Carmela Annunziata, et al.
Dermatol Ther
2025;15:245-264



 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年2月25日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.13更新

「ニキビには保湿が大切」——この言葉、どこかで聞いたことはありませんか?

美容雑誌やSNSでは当たり前のように語られているこの考え方。しかし、皮膚科学の世界では、この「ニキビ 保湿」神話に対して警鐘が鳴らされています。

今回は、日本で広まった「ニキビの保湿」信仰の背景と、本当に正しいスキンケアについてお伝えします。

ニキビが保湿が足りないのか?


なぜ「ニキビには保湿」が広まったのか?

ニキビと敏感肌の違いとは?よくある混同

皮膚科学において、「ニキビ」と「敏感肌」は本来まったく別の概念です。ニキビは毛穴の炎症性疾患であり、敏感肌は肌のバリア機能低下による過敏状態を指します。

しかし、美容雑誌やSNSでは事情が異なります。

「敏感肌がゆらぐとニキビが出やすくなる」「バリア機能低下で赤み・乾燥・吹き出物が増える」——こうした表現が繰り返されるうちに、読者の間では「敏感肌=ニキビが出やすい肌」という認識が定着してしまいました。

*注意:ニキビ患者ではバリア障害があることが示されていますが、バリア障害はニキビの炎症により二次的に生じている可能性があり、必ずしもバリア障害がニキビの原因とは言えません(文献1)


「ニキビにも保湿クリーム」という誤解を生んだマーケティング

敏感肌向けブランドの多くが「敏感肌でも使えるニキビケア」というPRを展開していることも、この混同を助長しています。敏感肌ケアの基本は「保湿」ですから、「ニキビにも保湿クリームが効く」という連想が生まれるのは自然な流れだったのかもしれません。

結果として、ニキビで保湿クリームを求める方、ニキビの保湿ケアに熱心に取り組む方が増えました。


皮膚科の大家が警鐘!ニキビ治療における保湿指導の真実

2021年、日本美容皮膚科学会誌に、ニキビとスキンケアに関する重要な論文が掲載されました(文献1)。

第一線で活躍する皮膚科の先生が、「ニキビには保湿」という考え方が一人歩きしている現状に対して、注意喚起を行っています。

この論文では、近年「乾燥がニキビを悪化させる」「保湿すればニキビが良くなる」といったメッセージが、メディアや美容雑誌を通じて広く拡散し、あたかも“常識”のように受け止められていることが指摘されています。そして、そのような情報をそのまま信じてしまうことには十分な注意が必要だ、という趣旨が述べられています。


保湿のやりすぎ・しすぎがニキビ悪化の原因に?逆効果になる可能性

論文ではさらに踏み込んだ論点として、「保湿をすると毛穴の入り口の閉塞が防げて、ニキビの発症を抑えられる」という“説”についても触れられています。

しかし現時点では、「保湿ケアそのものがニキビを直接改善させる」と明確に示した臨床エビデンスはありません。

むしろ、保湿剤の使用がニキビを悪化させている可能性すらある、と論文では懸念が示されています。

つまり、「ニキビにはとにかく保湿をすれば良い」と思い込んで行っているスキンケアが、実は逆効果になっているケースもあり得るのです。


ニキビか乾燥かどっちをケアすべき?ノンコメドジェニックと保湿の目的 

では、ニキビ肌に保湿は一切不要なのでしょうか。

もちろん、そういうわけではありません。論文では、保湿の位置づけについても整理されています。

本来、保湿の主な役割は
⭐️肌の乾燥に対するスキンケア
⭐️ニキビ治療薬による乾燥や刺激といった副作用の軽減
といった点にあり、ニキビそのものを治す「主役の治療」ではない、とされています。

そのうえで、ニキビに保湿を行う場合には、「ノンコメドジェニックな製品を、必要最小限にとどめること」が望ましいとされています。


自分の肌を見極めることが美肌への近道

この論文から私たちが学べる一番大きなメッセージは、自分の肌の状態を正しく理解することの大切さです。

「ニキビには保湿が良い」「保湿クリームでニキビが改善する」といった、根拠があいまいな情報に振り回されるのではなく、

✅自分のニキビはどの程度の炎症なのか
✅どの治療薬を使っていて、どんな副作用が出やすいのか
✅どの範囲・どの頻度で保湿が本当に必要なのか

といった点を、一人ひとりの肌の状況に応じて見極めていくことが重要です。

それこそが、遠回りに見えて実は一番の「美肌への近道」と言えるでしょう。



【参考文献】

1 痤瘡外用療法の副作用への対処とスキンケア
林 伸和、佐々木 優
Aesthetic Dermatology
2021;31(1):7-14






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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.06更新

コロナ禍で診療所の多くの診療科で患者数は減少しましたが、皮膚科では減少しておらず、マスク生活によって、新たな肌トラブルが起こっていることがうかがえます。それがマスクによる肌荒れ、ニキビ。

マスクを装着することで、肌にどんな悪影響を与えるか?結論から言うと、バリア機能崩壊による「乾燥」。

マスクで崩壊

マスクを着用すると、マスクにおおわれた肌では、皮膚温と湿度が上昇します。蒸れ蒸れになるわけですが、これが肌のバリア機能を低下させます。

なぜかというと、皮膚表面では、細胞同士がピタッとくっついてバリアを形成しているのに、過湿により表面の細胞が膨張すると、細胞間の接着が弛んでしまうから。

長時間のマスクパックでも同じことが言えます。保湿は大切ですが、過湿には要注意なのです。

ここでひとつ訂正があります。私はメルマガで「マスクをしているときは蒸れているというのに、それがバリア機能を崩壊させ、マスクを外したら、一気に乾燥する・・。」と書きました。

しかし、韓国の研究者が発表した論文によると、とくに口まわりの皮膚では、マスクの装着中から保水量は減少していました。蒸れているようで、皮膚は乾燥しているらしい。ここにお詫びして訂正させていただきます。


さて、もうひとつの問題「ニキビ」。

マスクを着用すると、皮膚温が上昇するため、皮脂の分泌が亢進して、これがニキビの原因になります。しかもマスク内だけでなく、おおわれていない額でも皮脂が増えるため、ニキビができてしまいます。

マスクでできたニキビの治療も従来のニキビ治療と変わりありませんが、以前は使用できた薬剤に刺激を感じる患者さんが増えているとか。皮膚のバリア機能が低下して、「敏感肌」になっているのです。

マスクの肌荒れ対策としては、保湿が重要とされていますが、同時にマスクで密封された状態では、かぶれが誘導されやすいことも指摘されています。またウレタンマスクの方が肌にやさしいようですが、感染効果が落ちないようにその上から不織布マスクをすると、ますます蒸れ蒸れになってバリア機能が壊れそう・・

人前に出るときは社会規範としてマスクが必要ですが、近くに人がいない中で仕事しているときなど、マスクが本当は意味のないシチュエーションも多いはず。そういうときは肌をいたわるためにも外して、お肌を休ませてあげてはいかがでしょうか。


(参考文献)

1)Effect of face mask on skin characteristics changes during the COVID-19 pandemic
Park SR,et al.
Skin Res Tcchnol
2021;27(4):554-559

2)Long-term effects of face masks on skin characteristics during the COVID-19 pandemic
Park SR,et al.
Skin Res Tcchnol
2022;28(1):153-161

3)新しい生活様式 スキンケアはどう変わる
川島眞、他
ベラペレ
2022;7(1):69-72





 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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