2022.09.01更新

 

室内で必要? 日焼け止め

 

室内で過ごすときも、肌の老化や皮膚がんのリスクを考えて「日焼け止めは必要なのか?」と疑問に思う方は少なくありません。インターネットやメディアでも「室内でも紫外線を浴びるから日焼け止めを塗ったほうがいい」という情報が多く見られます。では、本当に「日焼け止めは室内でも必要」なのでしょうか?室内用に肌に優しい日焼け止めを探す前にお読み下さい。


日光、特に紫外線について

日光に含まれる紫外線は、大きくUVA(波長320~400nm)とUVB(波長280~320nm)に分けられます。UVBは主に表皮に作用し、日焼けや皮膚がんの原因になる強いエネルギーを持っています。炎症や赤みを引き起こしやすい特徴があります。一方、UVAは波長が長く、真皮にまで到達してコラーゲンやエラスチンを損傷し、皮膚の弾力低下やしわ、たるみなどの「光老化」を進める原因になります。

注目すべきは、UVAの多くは窓ガラスを透過し、室内にいても皮膚に到達する可能性がある点です。


窓ガラスはどれくらい紫外線を通すのか?

私たちが日常的に使用している建築用のガラスでは、UVBのほとんどはカットできます。しかし、古い単板ガラスや一般的な複層ガラスの住宅ではUVAの透過率は50%を超えます。

最近普及している高機能ガラスではUVA透過率が低下し、防犯対策に用いられる合わせガラスでは、UVAもほぼ遮断できます。しかし、いずれの場合も完全にゼロにはならないため、「室内だから安全」とは一概に言えません。そのため「日焼け止めは室内でもおすすめ」といった情報がよく見られますが、この問題はもう少し詳細に検討する必要があります。


窓からの距離と紫外線量の関係

見落とされがちな重要な要素は「窓からの距離」です。

紫外線は窓際に近いほど多く浴びることになりますが、窓から1メートル以上離れるだけでも、その量は急激に減少することが研究でわかっています。「日焼け止めは室内でも必要」という結論に飛びつく前に、まずは自分の行動パターンを確認することが大切です。


車内と室内は同じ状況ではない

有名な例として、トラックドライバーの顔の片側だけが著しく光老化している写真があります。これはガラスがあってもUVケアにならない例としてしばしば取り上げられます。しかし、車内と一般的な室内環境を同一視するのは適切ではありません。

車内は、ガラスと人の位置が数十センチの距離に固定されている特殊な状況です。それに対し一般的な室内生活で窓ガラスに長時間密着して過ごす人はほとんどいないでしょう。 したがって、トラックドライバーのような状態が、そのまま「室内の日常生活」で起こる可能性は低いと考えられます。


世界の専門機関の見解

米国皮膚科学会(AAD)の公式サイトでは、「日焼け止めは毎日使いましょう」と推奨していますが、それはあくまで「外出前に塗る」ことを指しています。さらに、オーストラリアがん協議会(Cancer Council Australia)や英国皮膚科学会(BAD)などは、「室内にいる場合は日焼け止めは不要である」と明確に示しています。

総合的なリサーチを行っても、「日焼け止めは室内でも積極的に塗るべき」と推奨している国際的な専門機関は見当たりません。 結論として、世界的なスタンダードは「屋外活動時に日焼け止めをしっかり塗る」ことであり、室内で過ごす場合にまで塗るのは過剰と言えるかもしれません。


日焼け止めを塗るデメリットも考慮しよう

「室内でも日焼け止めは必要か?」を考えるうえで、日焼け止めを塗るデメリットにも注目する必要があります。日焼け止めは肌への刺激やアレルギー反応を引き起こす可能性があります。また、室内にいるときも日焼け止めを塗ったり、塗り直したりすればコストや手間もかかります。 したがって、日焼け止めの使用は、「リスク(デメリット)とベネフィット」を天秤にかけて判断することが重要です。


まとめ~室内で日焼け止めが推奨されるケース

以上を踏まえると、一般的な室内生活では必ずしも「日焼け止めは室内でも必要」とは言い切れません。しかし、以下のような状況に当てはまる方には、室内で過ごす際も日焼け止めの使用が勧められます。

1 窓のすぐそば(1メートル以内)で毎日長時間(合計数時間以上)過ごす習慣がある方
◦ 特に使用している窓ガラスのUVカット性能が不明、あるいは古い単板ガラスなどが使われている場合

2 皮膚の色が白い(Fitzpatrick I–II型)方、皮膚がんの既往歴や家族歴がある方
◦ 皮膚がんのリスクが高い人では、日常的にUVAケアを意識したほうが安心です


追加:日焼け止め以外の対策も有効

室内での紫外線対策は、日焼け止めだけに頼る必要はありません。たとえば、次のような方法も効果的です。

窓から離れた場所で過ごす
◦ デスクやソファの位置を少し窓から離すだけでも、紫外線量は大幅に減少します

UVカットフィルムを貼る
◦ 窓ガラスに後付けで貼れるUVカットフィルムがあります。比較的安価で手軽に導入できるため、「室内でも日焼け止めは必要?」と悩む前に検討する価値があります

カーテンやブラインドの活用
◦ 日差しが強い時間帯だけ閉めるなど、窓からの紫外線を遮断できます

衣類で肌を覆う
◦ 長袖のシャツやUPF(紫外線保護指数)表示のある衣類を着用することで、肌への直接的な紫外線曝露を抑えられます

 

 

(参考文献)

1) How to apply sunscreen
https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen

2) Photoprotetion: clothing and glass
Almutawa F, et al.
Dermatol Clin.
2014;32(3):439-448

3) Photoprotection by window glass, automobile glass, and sunglasses
Tuchinda C, et al.
J Am Acad Dermatol.
2006;54(5):845-854

4) The role of glasses as a barrier against the transmission of ultraviolet radiation: an experimental study
Duarte I, et al.
Photoimmunol Photomed.
2009;25(4):181-184

5) Visible light Part II: Photoprotection against visible and ultraviolet light
Geisler AN, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1233-1244


 

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月5日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.08.15更新

正直に白状すれば、私は有酸素運動が好きではありません。ジムでバイクをこいだり、ランニングマシンで走っていると、ハムスターになったようで人間性を否定された気分になるし、単調さに耐えかねて「この時間を本や論文を読む時間に使った方が、自分の残された人生において有益ではないだろうか・・」というバカげた疑問に真剣に悩むことになります。

しかし、それでも有酸素運動には同情(?)するところもあって、それはほんとうのスゴさが十分に知れ渡っていないこと。有酸素運動のメリットというとたいてい心肺機能を強化できるとか、インスリン抵抗性や動脈硬化が改善するというのですが、そんな説明では人の心に響くわけがない。

有酸素運動のほんとうのスゴさは、今が健康だろうが、闘病中だろうが、長生きできるようになること。


米国には身体活動のガイドラインがあって、成人では週に有酸素運動を中強度(ウォーキングなど)なら150分以上、高強度(ランニングなど)なら75分以上、加えて筋トレを週2回以上することが推奨されています。

米国人はネコも杓子もランニングしている印象がありますが、実際にガイドラインを満たす身体活動をしているのは、成人全体の16%。有酸素運動だけ満たしたのは24%、筋トレだけは4.5%だとか。

そしてここからがスゴいのですが、50万人の成人米国人を対象に調査したところ、ガイドラインを満たす運動をしていた人は、全ての死亡原因をまとめた比較で、運動をしていない人に比べ、死亡率が40%、有酸素運動だけでもしていれば29%も減少していたのです。

死因を癌、心血管系、事故・ケガなどと8つの原因別に分けたとき、有酸素運動はすべての原因別死亡率を減少させていました。

そして、付け加えればこの効果は、健康人より基礎疾患のある人でより大きかったのです。


日本人でのデータもあります。それは糖尿病患者を対象にした研究ですが、1日30分程度のウォーキングで、なんと死亡率はほぼ半減しました。

この研究では、当初は心臓病による死亡率が減ることで、全体の死亡率を減少させるだろうと予想を立てていたようですが、実際は心臓病での死亡はそんなに減っていなくて、それではなぜ死亡率が半減までしたのかよくわからないという、何とも締まらない結末になるのですが、それにしても半減とはスゴい。

日頃、医者というのは、わずかな人数を対象にした研究で、吹けば飛ぶような数値の差を、統計式をこねくりまわして有意差があるとかないとかで大騒ぎしているのですが、それを思えば、何千、何万人単位で30%とか50%の差なんて、開いた口がふさがりません。

ここまで来ても、意気地のない私なんか「あまり膝に負担をかけると、膝関節症になるから・・」と駄々をこねたくなるのですが、最近講演で聞いた話では、ランニングしている人の方が、何もしていない人より膝関節症になりにくいとのことなので、残念ながら心配無用のようです。

「あんまり時間が・・」という最後の粘りにも、それなら筋トレは置いといて、まずは有酸素運動だけでもすべきというのが、エビデンスに基づく冷徹な結論。文献を読み過ぎたせいか、どうにも逃げ場がなくなって困ってしまいます。あとは朝の犬の散歩を何とか有酸素運動と呼べないかと、どこまでも図々しく考えているのですが、チンタラ歩いているだけなので、呼べるワケがない・・・。


有酸素運動とはいえないか!?


 

(参考文献)

1) Physical Activity Guidelines for Americans 2nd edition
https://health.gov/sites/default/files/2019-09/Physical_Activity_Guidelines_2nd_edition.pdf

2) Recommended physical activity and all cause and cause specific mortality in US adults: prospective cohort study
Zhao M, et al.
BMJ
2020;370:m2031

3) Leisure-time physical activity is a significant predictor of stroke and total mortality in Japanese patients with type 2 diabetes: analysis from the Japan Diabetes Complications Study(JDCS)
Sone H, et al.
Diabetologia
2013;56:1021-1030

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.07.31更新

大局観

 

日頃、こうしてブログや様々なSNSを通じて美容情報、とくに皮膚科学、美容医学、抗加齢医学に関連した医学文献から情報を紹介することが多いのですが、たとえ学術文献といってもピンきりで、怪しげなものはいくらでもあります。

最近は生成AIを活用した医学文献検索ツールがあるので、イカサマ情報に引っかかる可能性は相当低くなりましたが、それでもリスクはゼロでないといつも自分を戒めています。結局、最後は長年の経験に基づく「大局観」で何をどう発信するか決めるしかありません。

本記事では、最近あった事例をもとに、専門家として発信することの難しさ、問題になったパルミチン酸レチノールの安全性の真実に迫ります。


拡散された専門家からの情報

先日、大学人としての華々しい経歴を掲載している先生が「レチノールを夏に使うのは控えた方がいい。皮膚癌のリスクが高くなるから。」とSNSに投稿したことが騒動の発端となりました。これに対し、別の皮膚科専門医は「デマに騙されないように!レチノールやディフェリンではなく、それはパルミチン酸レチノールの問題。」と指摘し、事態の沈静化を図りました。

しかし、「パルミチン酸レチノールの問題」であれば安心というわけではありません。パルミチン酸レチノールは、日本国内だけでなく世界中の多くの化粧品に配合されている一般的な成分です。この成分の安全性については、正確な情報に基づいて理解する必要があります。


パルミチン酸レチノールと紫外線の関係:研究報告の背景

騒動の根底には、遺伝子操作された特殊なマウスにパルミチン酸レチノールを塗布し、紫外線を照射したところ皮膚腫瘍が増加したという研究報告があります。これは、米国のFDA内部の毒性研究機関によって約10年前から散発的に発表されてきました。
この情報だけを見ると、パルミチン酸レチノールの紫外線下での使用に不安を感じるかもしれません。しかし、重要なのは、これが特殊な条件下での動物実験の結果であるという点です。

美容医師としての「大局観」
そもそも、パルミチン酸レチノールが多くの化粧品に使用されているのは、FDAをはじめとする各国の規制当局が人間に対する安全性を評価し、使用を認めているからです。もしFDA自身がその安全性に重大な懸念を抱いているのであれば、10年もの間、この問題が放置されるとは考えにくいでしょう。長年の経験に基づく「大局観」からは、このマウス実験の結果をもって直ちに人間の安全性を問題視するのはやりすぎと考えられます。


皮膚科学のジャーナルの見解
さらに信頼性の高い情報として、皮膚科領域で権威のある学術雑誌「American Journal of Clinical Dermatology」が2021年に発表した総説を紹介します。この総説では、パルミチン酸レチノールと皮膚腫瘍リスクに関する問題について、「十分に立証されておらず、(マウスの実験のみで)人間においては報告されていない。さらなる研究が必要である」と結論づけ、それ以上議論すらしていません。

やはり現時点においてパルミチン酸レチノールの安全性を過度に問題視する必要はないと結論づけることができるでしょう。


専門家が専門領域で発信することの難しさ

投稿を見てくださる人に少しでも有益な情報を提供したいという気持ちは誰でもあるため、勇み足で投稿した先生を非難する気にはとうていなりません。しいて反省点を探せば、情報の重大さに気づいて、情報の裏を取る努力をしてほしかったと思います。現代医学においては、専門家であっても、専門領域のすべてを知り尽くすことはとてもできないのですから。


まとめ

◆パルミチン酸レチノールの安全性について、SNS上で勃発した騒動について解説しました。現時点での科学的根拠に基づけば、パルミチン酸レチノールを含む化粧品の使用を恐れる必要はありません。


◆今回の騒動は、専門家であっても情報発信の難しさに直面するという教訓を与えてくれました。特に健康や美容に関する情報は、その重大性を認識し、発信する前に多角的な視点から情報の裏付けを取る努力が不可欠です。


◆パルミチン酸レチノールに関するFDAの動向や新たな研究報告には引き続き注意を払う必要がありますが、現時点ではその安全性について心配は不要と言えるでしょう。

 

(参考文献)
1) Sunscreens and photoaging: a review of current literature
Guan LL, et al.
Am J Clin Dermatol.
2021;22:819-828

2) Photo-co-carcinogenesis of topically applied retinyl palmitate in SKH-1 hairless mice
Boudreau MD, et al.
Photochem photobiol.
2017;93:1096-1114

3) Vitamin A and its derivatives in experimental photocarcinogenesis: preventive effects and relevance to humans
Shapiro SS, et al.
J Drugs Dermatol.
2013;12(4):458-463

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月14日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.07.18更新

前回書いたようにバストを下垂させる要素として
・加齢
・22.7キロ(50ポンド)を越える体重減少
・肥満
・大きなブラサイズ
・妊娠回数が多い
・喫煙
を指摘した報告の中で、強調されていたのは、ひとつは「母乳育児は下垂の原因ではない」であり、もうひとつが、「筋トレしても下垂の予防や改善にはならない」ということ。

バストの下垂に関して、問題があると思うのは「クーパー靱帯が伸びてバストがたれてしまう」という説明。

あたかもクーパー靭帯が胸壁から伸びて乳房全体を支えているように誤解されやすいのですが、実はクーパー靱帯は乳腺組織と皮膚をつなぐ靭帯です。

バストの下垂を報告した米国の形成外科医は、筋トレが役に立たない理由をうまく説明してします。

「バストは皮膚とは強く、筋肉(胸壁)とはゆるくつながっています。(筋トレをしても)バストは筋肉とともに上がる以上に、皮膚とともに落ちるものなのです。」

これだけでは希望を打ち砕くだけですが、希望の灯として、ワコールからの発表を紹介しておきます。

ワコールが集積している日本人女性の体型計測のデータ解析によると、加齢による体型の変化は誰でも同じように進むのですが、進み方には個人差があって、40代、50代になっても20代の体型を維持している女性が2割ほどいるそうです。その人たちの特徴として以下の3つが挙げられています。

1)運動
特別ハードなトレーニングというわけではなく、美しい姿勢を意識していたり、たくさん歩いたり、身体をよく動かすことを心がけている。
2)食事
規則正しい食生活をしている。
3)下着
正しいサイズの下着を着用している。

ワコールの悪いクセ(?)は最後は必ずサイズの合った下着が大切と話をまとめようとするところ。まあそれは民間営利企業だから仕方ないと大目に見ることにするとして、注目すべきは「たくさん歩いたり」が挙げられていること。


揺らした方が

「バストが垂れるから有酸素運動はしない方がよい、筋トレだけしてればいい!」という見解があるのを知って、それに反論しようと、ここ数ヶ月バストや有酸素運動について文献を読みあさったのですが、「たとえバストを揺らすとしても、ウォーキングやジョギングなど積極的に身体を動かして健康的な生活を送ることが、結局は体型維持の秘訣である!」を結論とさせていただきます。

 



(参考文献)
1) Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

2) 日本女性の加齢による体型変化
坂本 晶子
アンチ・エイジング医学
2014;10(6):78-83

3) ボディエイジング〜加齢による女性の体型変化〜
岸本 泰蔵
日皮協ジャーナル
No.65(2011.2):278-286

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.07.03更新

論理の誤りの典型に「単なる前後関係を因果関係と見誤る」というのがあります。たとえば洗車をしたら雨が降ってすぐ汚れたことから、「洗車をしたから雨が降った!」と洗車が原因、雨が結果と思い込むこと。

これくらいバカバカしいとすぐに見透かすことができますが、では「授乳するとバストが垂れる」はどうでしょう?

何がバストを下向きにするのか


実際、世界の文化圏をまたいで、「授乳はバストの形を崩す」伝説はひろまっています。イタリアの女子高生の30%はそう信じていると回答していますし、ドミニカの女性が早めに母乳育児を切り上げる理由にもなっています。

このように「授乳はバストの形を崩す」伝説は、世界中の育児に影響を与えているわけですが、実は授乳がバストの形態にどう影響するか医学的な検証は行われていません。

バストは美容外科における大きな柱のひとつ。日本では圧倒的に胸を大きくする豊胸術が行われますが、米国では逆に大きく、垂れた胸を小さく、引き上げる手術がよく行われます。

肥満が社会問題になっている米国では、胃を小さくしたりする肥満に対する手術がよく行われ、その結果大幅に減量してバストが垂れて、今度はバストの下垂に対する美容手術の件数も伸びているとか。

そんなバストの下垂と日々向かいあう米国の形成外科医から、「何がバストを下垂させているか?」を検討した報告が出されました。

それによるとバストを下垂させる原因とされたのは
・加齢
・22.7キロ(50ポンド)を越える体重減少
・肥満
・大きなブラサイズ
・妊娠回数が多い
・喫煙
でした。

この報告は、「授乳はバストの下垂の原因にはならない」と結論づけています。「妊娠することで下垂したのであって、授乳したからではない」と、前後関係はあっても、原因と結果の因果関係にはないとしています。

報告した医師は、「授乳でバストが崩れる」ことへの懸念が、先進国で母乳育児する率が高まらない一因になっていると憂慮していますが、「妊娠でバストが崩れる」としたら、ますます少子化に拍車がかかるのではないかと私は憂慮してしまいます。


(参考文献)
Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.25更新

 


ニキビ治療は長い付き合い

ニキビ治療の落とし穴:「治った」と思っても高いニキビ再発リスク


私が美肌治療を行う中でしばしば障害となるのが「ニキビ」です。


せっかく表面のブツブツが消えても、赤い炎症が長引いたり、茶色い色素沈着が残ったりして、それまでの美肌治療を台無しにしてしまうことがよくあります。

しかも驚くべきことに、大多数の方が皮膚科でのニキビ治療を受けていません。

日本の皮膚科診療における「ニキビ治療」には、以下の3つの大きな課題があります:
・受診率の低さ - 多くの方が自己治療に頼っている
・受診の遅れ - 症状が悪化してからようやく来院する
・治療の中断 - 「ブツブツが消えたら治療終了」という誤った認識


特に3つ目の「治療の中断」は深刻な問題です。「表面的な症状が改善したから」という理由で自己判断で治療を中止すると、待ち受けているのは残念ながらニキビの再発です。

ニキビができやすい肌質は簡単には変わりません。そのため、ニキビ再発防止には症状が落ち着いた後も長期的な治療継続が不可欠です。「ニキビがひどくなった時だけ皮膚科へ」という悪循環から抜け出すためには、この基本的な認識を改める必要があります。


ニキビ再発防止のために治療を継続する科学的根拠

ニキビ再発防止を目指した治療の継続には、明確な科学的根拠があります。エピデュオ・フォルテ(アダパレン0.3%+過酸化ベンゾイル2.5%)を用いて、患者に6ヶ月間この薬剤を塗布した研究報告があります。

この報告の特筆すべき点は、塗り薬を続けることで、ニキビ跡の数を減少させたことですが、もう一つ注目すべきは治療が3ヶ月、6ヶ月、1年と継続するにつれて効果が向上ていたこと。これは、治療を継続することで、ニキビの再発防止だけでなく、ニキビ跡の減少にもつながる可能性を示唆しています。


日本で実践できるニキビ再発防止対策

残念ながら日本ではエピデュオ・フォルテは未承認ですが、類似製剤であるエピデュオゲル(アダパレンの濃度が0.1%と低い)においても、半年間の継続使用で:

・新たなニキビ発生の防止(ニキビ再発防止)
・既存のニキビ跡の改善

という二重の効果が確認されています。やはりニキビ再発を防ぐための維持療法が、肌質そのものの改善につながる可能性が示唆されました。


ニキビ再発防止の観点からは、少なくとも1年間の治療継続を強くお勧めします。この期間を経て、中止する明確な理由がなければさらに継続することで、新規ニキビの予防と既存の瘢痕改善という二重のメリットが期待できます。


本当の「ニキビ治療」とは:再発防止のための維持療法が鍵

日本皮膚科学会のガイドラインでも明記されていますが、真のニキビ治療には2つのステップがあります:

⚪️急性期の炎症を抑える「急性期治療
⚪️ニキビが落ち着いた後の「維持療法

多くの方が見落としているのは、この2番目のステップです。ニキビ再発防止のための「維持療法」は、ニキビ治療に欠かせない最後の仕上げなのです。

具体的には、アダパレン(ディフェリン)やBPO製剤などの外用薬を継続的に使用することが推奨されています。つまり、「ブツブツが消えたら終わり」ではなく、その後もニキビ再発させないための「維持療法」を続けることが正しいニキビ治療です。

この維持療法の考え方はガイドラインで示されているにもかかわらず、一般には十分に浸透していません。もしかすると医療費増加への懸念から積極的な周知が控えられているのではと疑いたくもなりますが、維持療法の重要性は、皆さんの肌の健康のためにもっと広く認識されるべきではないでしょうか。皮膚科ドクターと相談しながら、あなたに最適な維持療法を見つけてください。

 




(参考文献)
1)Adapalene 0.1%/benzoyl peroxide 2.5% gel reduces the risk of atrophic scar formation in moderate inflammatory acne: a split-face randomized control trial
Dréno B,et al.
JEADV
2017;31:737-742

2)Prevention and reduction of atrophic acne scars with adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in subjects with moderate or severe facial acne: results of a 6-month randomized, vehicle-controlled trial using intra-individual comparison
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2018;19:275-286

3)Long-term effectiveness and safety of up to 48 weeks' treatment with topical adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in the prevention and reduction of atrophic acne scars in moderate and severe facial acne
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2019;20:725-732


 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月11日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.18更新

なぜ皮膚科医はニキビの早期治療にこだわるのか?

ニキビには「早期から治療を!」と皮膚科の先生は言いますが、ほんとうに早期から治療したらメリットがあるのでしょうか?


ニキビは早期治療



実はメリットはあります!「治療の遅れ」はニキビが瘢痕化(あとに跡が残ること)する有名なリスクファクターなのです。ニキビ治療において、このリスクファクターが特に重要視されるのは、これだけは患者さん自身の判断で改善できるから。


ニキビ治療を早期に始めるべき医学的根拠

ニキビのリスクファクターには様々なものがありますが、「家族歴の有無」は自分ではどうにも変えようがありません。また「重症ニキビ」になってからでは、効果的な治療が難しくなることもあります。ニキビ治療において「早期からの治療」が最も効果的であることは、多くの皮膚科医が同意する点です。


ニキビ早期治療の障壁とは?

しかし、皮膚科医が一生懸命「ニキビ早期治療」の重要性を説いても、実際に受診を妨げている要因が医療現場にも存在するようです。日頃、ニキビのある方に皮膚科受診をお勧めしていますが、「時間がかかりすぎる」、「行っても治らない」、「ろくに診てくれない」、「話を聞いてくれない」などという声をよく耳にします。

こうした意見を聞くと、同業者として「今の医療制度では、多くの患者さんを診ないと経営的に成り立たないから、皮膚科医も大変なのです」とフォローしたりしますが、実際のところは複雑な問題です。


まとめ:ニキビは早期治療

ニキビ治療は早期に適切な医学的アプローチで始めることが最も効果的です。
ニキビでお悩みの方は、適切な診療を受けられる皮膚科を見つけ、早期からの治療を始めることをお勧めします。それが最終的には肌トラブルの長期化を防ぎ、瘢痕などの後遺症リスクを減らす最善の方法なのです。



(参考文献)
1)Acne scarring: why we should act sooner rather than later
Dréno  B,et al.
Dermatol ther.
2021;11(4):1075-1078

2)Development of an atrophic acne scar risk assessment tool
Tan J,et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol.
2017;31(9):1547-1554

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月11日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.09更新

ニキビ跡ゼロを目指す!皮膚科医が警鐘を鳴らす「早期治療の重要性」


「すべてのニキビには瘢痕化するリスクがある。皮膚科医はたとえ軽症のニキビであっても、早期から継続的な治療で瘢痕形成を防がねばならない。」これは、ニキビ治療における皮膚科・美容皮膚科医の共通認識であり、究極の目標はニキビ跡を作らせないことです。

しかし、「すべてのニキビにリスクがある」という言葉は、裏を返せば、これまで具体的なニキビ跡化のメカニズムが明確でなかったことの現れでもありました。漠然と「重症のニキビほど、炎症が強いニキビほどニキビ跡になりやすい」と理解されてきたものの、具体的な指標は乏しかったのです。

そんな中、ニキビ跡に関する長年のモヤモヤを解消するような、執念とも言える詳細な臨床研究が報告されました。この記事では、その最新の研究結果を踏まえ、効果的なニキビ跡の予防とニキビ跡の治療のポイントについて解説します。


ニキビ瘢痕こうできる



ニキビ跡化の謎を解明!最新研究が示す「危険なニキビ」の見分け方

これまで「重症度」や「炎症の強さ」といった曖昧な指標で語られがちだったニキビ跡化のリスク。しかし、ある臨床研究が、顔のニキビ一つひとつを2週間ごとに6ヶ月間追跡するという徹底的な調査を行いました。この丹念な研究により、ニキビ跡になりやすいニキビの具体的な特徴が明らかになってきました。

研究によると、驚くべきことにニキビ跡(瘢痕)の実に83%が、ニキビが治った後の「炎症後の赤み」や「色素沈着」から生じていることが判明しました。特に多く見られたのが、「赤ニキビ」が発生し、それが「炎症後の赤み」として残り、最終的に「ニキビ跡」へと進行するケースです。

さらに、将来的にニキビ跡となったニキビは、そうならなかったニキビと比較して、症状が治まるまでの期間が明らかに長い(平均10.5日に対し6.6日)という事実も突き止められました。


「長引く赤み」がサイン!ニキビ跡 予防のカギは早期発見・早期治療

この研究結果は、従来の「重症のニキビ、炎症の強いニキビほど瘢痕化しやすい」という経験則を裏付けるものですが、さらに重要な示唆を与えてくれます。それは、「重症」や「炎症」といった多様な症状の中でも、特に「治癒までの期間が長いこと」そして「炎症後の赤みが続くこと」が、ニキビ跡化するリスクの高いニキビを見分けるための重要な指標になるということです。

つまり、ニキビができてから治るまでに時間がかかっているもの、そして一度落ち着いたように見えても赤みがなかなか引かないものは、ニキビ跡になる危険信号と捉えるべきなのです。

このことから、効果的なニキビ跡 予防のためには、ニキビの「長い経過」の途中、まだ「赤み」が目立つ段階で積極的にニキビ跡 治療を開始することが極めて重要であると言えます。具体的には、ディフェリンゲルや過酸化ベンゾイル(BPO)製剤といった外用薬による早期の治療介入が、その後のニキビ跡化を防ぐ可能性を高めます。

放置してはいけないのは、発生してから1週間以上経過しても改善しないニキビや、一度平らになった後も赤みが持続しているニキビです。これらはニキビ跡への危険なサインと認識し、速やかに皮膚科医に相談することが賢明です。


まとめ:ニキビ跡は予防できる!「赤み」を見逃さず、今日から始めるケア

ニキビ跡は、一度できてしまうとセルフケアでの改善が難しく、専門的なニキビ跡治療が必要となるケースも少なくありません。しかし、今回の研究結果が示すように、ニキビ跡は決して手の施しようがないものではなく、適切なニキビ跡 予防策を講じることで、その発生リスクを大幅に減らすことが可能です。

重要なのは、「たかがニキビ」と軽視せず、特に「治りが遅いニキビ」や「赤みが長引くニキビ」といった危険信号を見逃さないことです。これらのサインに気づいたら、自己判断で放置せず、できるだけ早い段階で皮膚科医に相談し、適切なニキビ跡治療(予防的治療を含む)を開始しましょう。

早期からの正しいケアと継続的な治療によって、ニキビ跡に悩まされることのない、健やかな肌を目指すことは十分に可能なのです。


(参考文献)
1)Acne scarring: why we should act sooner rather than later
Dréno  B,et al.
Dermatol ther.
2021;11(4):1075-1078

2)Prospective study of pathogenesis of atrophic acne scars and role of macular erythema
Tan J,et al.
J Drugs Dermatol.
2017;16(6)567-573

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.03更新

皮膚粗鬆症は、美容皮膚科の対象ではありません。しかし、それでは皮膚科領域かと言えばそうでもない。なぜなら皮膚粗鬆症というのは正式な病名とは認められていないから。

では、誰が診ているのか?誰も診ていません。

皮膚粗鬆症

実際に皮膚粗鬆症で皮膚が剥けたりして生活に支障をきたしているのは、ご高齢のとくに介護施設などでケアを受けている方々に多いと想像されます。そうした施設に行くと手足に痛々しく包帯を巻いている方をよく見かけます。

皮膚が剥けてしまうことが、どれだけ大変なことか。皆様の中にもヤケドを負ったりして、皮膚のありがたみを実体験した方もいらっしゃるでしょう。面倒でも毎日手当しないといけませんし、触るといたいし、入浴のさいにはさらにしみて痛い。

介護施設には痛くても、お世話をしてくれる方には気兼ねして正直に言えず、ただただ我慢している方がたくさんいらっしゃるに違いありません。

何もやりようがないなら、それは年をとることの「苦痛」のひとつとして割り切るしかありません。しかし、少しでも改善させる対処法があるなら、少しでも痛みがなく、穏やかに暮らせるようにしてあげたい。

理想的には1%中分子ヒアルロン酸、0.05%レチナールと5%ビタミンCを含んだ保湿クリームがあればベストですが、コストが高くなりすぎて現実味がありません。

もし、このブログがどなたか化粧品メーカーの方の目に触れることがあれば、せめて有効成分として中分子ヒアルロン酸とビタミンCがある程度含まれた保湿剤を作っていただけませんでしょうか。

それは決して大きな利益を稼ぐようなものではありませんが、現実に苦しまれている多くの高齢者の方に福音をもたらし、メーカーにとって会社としての存在価値は爆上がりするに違いありません。



 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.05.27更新

皮膚粗鬆症は、肌の「究極の老化」、ということは、皮膚粗鬆症に効果的な治療法こそが、ほんとうのエイジングケアといえるし、有効でない治療は、エイジングケアとして役立たずだということ。

皮膚粗鬆症の治療法が模索される中で明らかになったのは、ヒアルロン酸の重要性です。


美肌へのアプローチ


これまでの美肌術はコラーゲンをターゲットにすることが多く、バカのひとつ覚えみたいに「コラーゲンを増やします!」なんてアピールしていたわけですが、実はそんなことはそれほど大事じゃなかった。

ひとつの証拠になるのは、皮膚粗鬆症の治療において、いわゆる「コラーゲン」を増やす施術は結果を出せていないこと。

もうひとつの証拠は、ヒアルロン酸を使った美肌術で、たとえば厚労省御用達(?)アラガン社のボライトでは、1回注入して数週間で結果が出ていること。

「コラーゲンを増やす」施術では、その期間では顕微鏡で見たらコラーゲンが増えてるのがわかるくらいがせいぜい、肉眼的にはまだ効果が見えてくるはずがない。コラーゲンなんて増やそうとしなくても、ヒアルロン酸を増やすだけで十分に美肌効果は出るということがわかってしまった。

皮膚の老化において、確かにコラーゲンも減少しているのだけれど、一番本質的で、皮膚の萎縮に直接的に関与しているのはヒアルロン酸。だからこそヒアルロン酸を補充することで皮膚の萎縮は改善される。

これまでの美容業界全体で推進してきた「コラーゲン伝説(コラーゲンを増やせば肌にハリが戻る)」は誤りとまではいえないけれど、ずいぶんと本質を遠回りしている感が否めません。

美容医療業界は皮膚の「再構築」という言葉が好きですが、皮膚のヒアルロン酸が代謝される過程でのヒアルロン酸受容体の活性化が「再構築」のカギを握っています。皮膚のヒアルロン酸代謝を活発に、そして円滑に回し続けることが、皮膚の「再構築」、老化対策としてもっとも重要なポイントなのです。


レチノイドが皮膚の老化治療に有効な理由として、コラーゲンの分解を抑制し、生成を促進するという面が強調されますが、それももしかしたら本質を見誤っているかもしれない。レチノイドは、皮膚のヒアルロン酸量を増やし、またヒアルロン酸受容体も増やすので、そちらがレチノイドの抗老化作用として本質的なのかも。

ここ数年で美容医療業界にはヒアルロン酸を主成分とした美肌術が次々に登場していて、私はそれを「ヒアルロン酸充填療法」と勝手に分類しているのですが、ヒアルロン酸充填療法とレチノイドの組み合わせは、現状で最強のエイジング対策と確信しています。


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

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