2025.12.12更新

はじめに

「シミの原因」「美白の敵」——メラニン色素というと、美容の観点からはネガティブなイメージを持たれがちです。しかし、このメラニンこそが、私たち人類が太古の昔から紫外線と闘い、生き延びてきた証なのです。

本記事では、メラニン色素の起源から、肌の色が決まるメカニズム、そして進化から見た肌色の意味まで、科学的な視点で解説します。メラニンを正しく理解することで、より効果的なスキンケアや美容医療の選択につなげていただければ幸いです。

メラニン色素の起源


メラニン色素の起源

メラニン色素の歴史は、生命誕生の太古の海にまで遡ります。驚くべきことに、メラニンは細菌、真菌、植物、昆虫、魚類、爬虫類、哺乳類に至るまで、ほぼ全ての生物に存在する色素です。

原始の単細胞生物は、有害な紫外線から身を守るためにこの色素を発達させました。メラニンには紫外線を吸収する能力があり、細胞内のDNAへのダメージを防ぐ「天然のUVカット剤」として機能します。

生物が陸上に進出すると、この防御機構はさらに重要性を増しました。強い太陽光にさらされる環境では、メラニンを効率的に生成できる個体が生存に有利だったのです。動物界でも、メラニン量の調節は環境適応の要となっています。熱帯の動物は紫外線から身を守るためにメラニンを多く生成し、暗い毛色や肌色を持ちます。一方、寒冷地の動物は季節に応じてメラニン生成を抑え、白い体色で雪景色に溶け込みます。

2つのメラニン

ユーメラニンとフェオメラニン

メラニンには主に2種類あることをご存知でしょうか。

ユーメラニン(真性メラニン)

褐色〜黒色の色素で、紫外線から肌を守る力が強いのが特徴です。黒髪の主成分であり、アフリカ系の人々の肌にも豊富に含まれています。ユーメラニンは紫外線を吸収し、紫外線によって発生する活性酸素を消去する働きがあります。そのため、ユーメラニンが多い肌は紫外線にあたっても赤くなりにくく、皮膚がんのリスクも低くなります。

フェオメラニン(亜メラニン)

黄色〜赤色の色素で、ユーメラニンに比べて紫外線に対する保護効果が低いのが特徴です。金髪や赤毛の人に多く含まれ、白人の肌色を決定づける主要な色素です。注意が必要なのは、フェオメラニンは紫外線を浴びると逆に活性酸素を発生させてしまう点です。これが、白人に皮膚がんが多い理由の一つとされています。

生成のメカニズム

どちらのメラニンも、チロシンというアミノ酸から作られます。チロシンがチロシナーゼという酵素の働きでドーパキノンに変化するところまでは同じですが、その後の経路が分かれます。システインというアミノ酸が結合するとフェオメラニンに、結合しないとユーメラニンになります。この分岐点は、チロシナーゼの活性とシステイン濃度のバランスによって決まると考えられています。


ヒトの肌の色はこうして決まる


ヒトの肌の色はこうして決まる

私たちの肌の色は、ユーメラニンとフェオメラニンの量と比率によって決まります。

メラニンを作り出すのは、表皮の最下層(基底層)にある「メラノサイト(色素細胞)」です。興味深いことに、人種が違ってもメラノサイトの数自体はほぼ同じです。違いを生むのは、メラノサイトがどれだけ活発にメラニンを作るか、そして作られたメラニンがどのように分布するかという点なのです。

紫外線を浴びると、周囲の角化細胞(ケラチノサイト)がメラノサイトに「メラニンを作りなさい」という信号を送ります。メラノサイトは活性化してメラニンを生成し、樹枝状の突起を通じて周囲のケラチノサイトにメラニンを受け渡します。ケラチノサイトに取り込まれたメラニンは、細胞の核の上に傘のように集まり(核帽形成)、紫外線からDNAを守るのです。

通常、メラニンは肌のターンオーバー(約28日周期)とともに垢として排出されます。しかし、過剰に紫外線を浴びたり、加齢でターンオーバーが乱れたりすると、メラニンが排出しきれずに蓄積し、シミやくすみとなって残ってしまうのです。


肌の色の意味


肌の色が意味するもの

人類の進化の歴史は、紫外線とビタミンDとの絶妙なバランスを取る闘いの歴史でもありました。

約200万年前、アフリカのサバンナで体毛を失った初期人類は、強烈な紫外線から裸の皮膚を守るために、メラノサイトが活発にメラニンを生成する方向に進化しました。濃い肌の色は「天然の日焼け止め」として機能し、紫外線によるDNA損傷や皮膚がんから身を守ったのです。

しかし約6万年前、一部の人類がアフリカを出て北方のヨーロッパへと移住します。日照量の少ない高緯度地域では、紫外線を遮る黒い肌はむしろ不利に働きました。なぜなら、ビタミンDは紫外線を浴びることで体内で合成される栄養素だからです。ビタミンD不足は骨の形成に支障をきたし、くる病などの原因となります。そこで北方に移住した人類は、弱い紫外線でも効率的にビタミンDを合成できるよう、メラニン生成能力を低下させる方向に進化しました。これが、ヨーロッパ系の人々の白い肌の起源です。

つまり、「色が白い=紫外線防御力は弱いが、ビタミンD合成に有利」「色が濃い=紫外線防御力が強いが、低日照地域ではビタミンD不足のリスク」という、進化の過程で獲得されたトレードオフが、世界の多様な肌色を生み出しているのです。

そこに『優劣』はありません。それぞれの肌の色は、その土地で生きるための「最適解」として選ばれたものなのです。

現代では、人類は世界中を移動して暮らすようになりました。紫外線の強い地域に住む白人は皮膚がんのリスクが高まり、日照量の少ない地域に住む黒人はビタミンD欠乏症にかかりやすくなります。だからこそ、自分の肌タイプを正しく理解し、住んでいる環境に応じた適切なケアを行うことが大切なのです。


まとめ

メラニン色素は、単なる「シミの原因物質」ではありません。太古の昔から生物を紫外線から守り、人類が地球のあらゆる環境に適応するために進化してきた、生命の知恵そのものです。

ユーメラニンとフェオメラニンという2種類のメラニンのバランスが、私たちの肌の色を決め、紫外線への反応の仕方を左右します。適切な紫外線対策を行えば、健やかで美しい肌を保つことができます。

しかし現代では、過剰な紫外線曝露やホルモンバランスの乱れ、加齢によるターンオーバーの遅延などにより、メラニンが過剰に生成・蓄積し、シミや色素沈着といった美容上の問題を引き起こすこともあります。

メラニンの役割を正しく理解し、自分の肌タイプに合った紫外線対策を行うこと。そして、できてしまったシミには美容医療の力を借りて適切にケアすること。この両輪で、進化が私たちに与えてくれた「肌を守る力」を最大限に活かしながら、健康で美しい肌を目指していきましょう。


自分の肌の色を取り戻す施術


自分の肌を取り戻すスキンケア

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.12.09更新

はじめに

この文章は、私にシフトワーカーの健康問題を考えるきっかけをくださった、あるお客様に捧げます。

看護師をされていたそのお客様と、この話題になった時、何もアドバイスできないばかりか、冗談めかして「早く婦長さんになって(通常、看護師長は日勤のみです)、この状況から脱却するしかないですよ!」としか言えなかったことが、今も痛恨の思いとして心に残っています。

答えとしてまだまだ不十分ですが、今も考え続けていることをお伝えしたい。

シフトワーカー(Shift Worker)とは、通常の朝から夕方までの日中勤務ではなく、シフト制(交代勤務制)で働く人々を指します。

時間医学がシフトワーカーを守る


シフトワーカーの現実


シフトワークが睡眠障害をはじめ、肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病など生活習慣病や心筋梗塞、脳卒中、乳がん、前立腺がんなどの疾患リスクを上昇させることがさまざまな疫学研究から示されています。

具体的な数字を見ると、その深刻さがわかります。

☑️心筋梗塞リスク:23%上昇(文献1)
☑️2型糖尿病リスク:30%上昇(文献2)
☑️うつ病リスク:33%上昇(女性では73%上昇)(文献3)

さらに、国際がん研究機関(IARC)は2019年、夜間シフトワークを「グループ2A(おそらく発がん性あり)」に分類しました(文献4)。これはホルムアルデヒドやグリホサート(除草剤)と同じ分類であり、無視できないリスクレベルです。

しかし悲観する必要はありません。時間医学の進歩により、体内時計のメカニズムを理解し、科学的根拠に基づいた対策を講じることで、リスクを大幅に軽減できることがわかっています。

なぜシフトワークは身体に悪い!?

なぜシフトワークは体に悪いのか

人に限らず、地球上の生物には、体内時計が備わっています。地球の自転によって、およそ24時間周期で昼夜の環境が変化する地球上で生存競争に勝ち抜くために不可欠なシステムです。

体内時計を調整するメラトニンというホルモンは、驚くべきことにヒトはもちろん動物でも植物でも微生物でも共通。いかに生命にとって根源的なシステムであるかがわかります。体内時計は地球上の生命体全般において、普遍で不変!な進化をとげたのです。

そして、そのシステムに従って、睡眠覚醒、代謝、ホルモン分泌などさまざまな生理現象が調節されています。

だから人はシフトワークのように地球の自転を無視した生活に適応することは難しいのです。これが体内時計を研究する医学分野である「時間医学」の答えになります。


シフトワークのコツ

時間医学が教える健康的なシフトワークのコツ

不規則な生活を強いられるシフトワーカーですが、「規則的に不規則な生活」なら、まだ健康を害するリスクは小さくできる可能性があります。以下に、科学的根拠に基づいた具体的な対策をご紹介します。

シフトスケジュールの原則

正循環シフトを守る

日勤→準夜勤→深夜勤の方向へ回す「正循環(時計回り)シフト」が推奨されます(文献5)。

人間の体内時計(概日リズム)の固有周期は約24.2時間です。このように地球の自転周期(24時間)よりもわずかに長いため、調整しなければ、体内時計は自然に毎日少しずつ遅れていきます。この「遅れる傾向」により、時間を後ろにずらす(夜更かし方向)調整は、体内時計の自然な傾向に沿っているため容易です。

逆循環(深夜勤→準夜勤→日勤)は体内時計を前倒しする方向への調整となり、極めて困難です。睡眠の質低下や疲労感増大と強く相関しています(文献5)。


勤務間インターバルと連続夜勤の制限

✅勤務間インターバル11時間以上を確保(EU労働時間指令の基準)(文献6)
✅連続夜勤は3回まで(3連続後で労働災害や事故のリスクが17%増加、4連続で36%増加)(文献7)
✅「準夜勤(深夜0時終了)」の翌朝に「日勤(8時開始)」を入れるようなシフトは絶対に避ける(文献8)

光のマネージメント


光のマネジメント


光は体内時計を動かす最強のスイッチです。その「量(照度)」と「質(波長)」、そして「タイミング」を管理することが、シフトワーク対策の核心です。

夜勤中の照明戦略(ライトセラピー)

夜勤前半(〜午前2時):高照度(1,000ルクス以上、理想的には2,500〜10,000ルクス)の白色LED照明で覚醒度とパフォーマンスを維持

*高照度光が夜勤中の覚醒度とパフォーマンスを維持することは科学的に確認されています(文献9)が、具体的な照度レベルには研究によって幅があります。

夜勤後半(午前3時〜):徐々に照度を落とし、暖色系の照明に切り替えてメラトニン分泌を促します。

*一般的には、最低体温時刻(多くの人で午前3〜5時頃)の前後が切り替えの目安となります。
*青色光は夜間のメラトニン産生を抑制しますが、赤色光は抑制しません(文献10)


退勤後の遮光戦略(ダークセラピー)

帰宅時:濃い色のサングラス(ブルーライトカット機能付き)を着用し、朝日を遮断(文献11)

*夜勤後に眠い場合、暗いサングラスは眠気を増加させ、居眠り運転のリスクを高める可能性があります。最も安全な方法は、他の誰かに運転してもらえる場合のみ、夜勤後に暗いサングラスを使用することです。外に出る前にサングラスをかけ、暗い部屋に戻るまで着用し続けてください

寝室:遮光等級1級のカーテン、完全遮光のアイマスクで真っ暗に

*医学的には「できるだけ暗い環境(8ルクス以下)」が推奨されています(文献12)。


時間栄養学

時間栄養学(クロノニュートリション)

シフトワークを乗り切るためには、光の管理と共に食事のコントロールも欠かせません。「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」が代謝に決定的な影響を与えます(文献13)。

夜食は脂肪蓄積と糖・脂質代謝の障害を引き起こします(文献14)。

夜勤時の食事戦略

1️⃣ 夜勤時でも、できるだけ夜勤前の夕方〜夜にメインの食事を摂る(文献15)
2️⃣ 深夜(特に午前0時〜6時)の食事摂取は最小限にする
3️⃣ 深夜に食事をとる場合は、低カロリー・低脂肪・低GI食品を選ぶ
推奨食品:野菜スープ、無糖ヨーグルト、ナッツ、全粒穀物、果物


夜勤明けに推奨される食事は?

夜勤明けは
✅帰宅後すぐ〜1時間以内に
✅軽め〜普通量の「朝食スタイル」の食事(炭水化物+たんぱく質中心)

*揚げ物・こってりラーメン・甘いスイーツ・アルコールはルーティーンから外す。
*カフェインは「夜勤中の前半」で使い切るイメージで、それ以降は控える。


戦略的仮眠の活用

身体の負担を軽減するためにも、上手に仮眠をとることは大切です。

夜勤前:90分程度の予防的仮眠で睡眠の「貯金」を(文献16)

夜勤中(2〜4時):眠気のピークに合わせて20〜30分のパワーナップ(文献17)
⚠️注意:30分超の仮眠は深い睡眠に入り、覚醒後に強い睡眠慣性(ボーッとする状態)が生じるため避ける(文献17)


カフェインの利用法

徹夜のためにコンビニでカフェインドリンクを買って飲んだ経験がある方もいらっしゃるでしょう。カフェインをうまく活用すれば、眠気を抑えることができます。

1 )カフェインナップ

200mgのカフェイン(約350mlのコーヒー1杯、またはエスプレッソ2ショットに相当)を摂取した直後に20分仮眠を取ると、仮眠後1時間を通じて注意力と主観的疲労が有意に改善することが実証されています(文献18)。ただし、就寝予定の8時間以内には行わないでください。

2)少量・頻回摂取

☑️シフト開始時から使用開始
☑️就寝予定の4〜6時間前に停止
☑️「少量を頻繁に」(1〜2時間ごとに50mg程度)
☑️1日上限300〜400mg(文献19)


まとめ:自分の体を守る「戦略」を持ちましょう

シフトワークは、私たちの遺伝子に刻まれた体内時計に逆らう過酷な働き方です。しかし、医療や介護、インフラを支える現場において、夜勤はなくてはならないものです。

だからこそ、精神論で乗り切るのではなく、「時間医学」という科学の力を借りてください。

今回ご紹介した対策は、決して難しいことではありません。ポイントは「光」と「食事」のコントロールです。それにより体内時計をうまく調整することで、生活習慣病や発がんリスク、そして疲労感を軽減できる可能性があります。

冒頭でお話しした看護師のお客様に、当時の私は何も言えませんでした。しかし今の私なら、こうお伝えします。

「患者様を守るのと同じくらい、ご自身の体も大切に守ってください。そのための具体的な方法が、ここにあります」と。

この記事が、昼夜を問わず社会のために働く皆様の、健やかな毎日のヒントになれば幸いです。





シフトワークに負けない肌を作る!

 

【参考文献】

1 Shift work and vascular events: systematic review and meta-analysis
Manav V Vyas, et al.
BMJ
2012 Jul 26:345:e4800

2 Association between night shift work and the risk of type 2 diabetes mellitus: a cohort-based meta-analysis
Fei Xie, et al.
BMC Endocr Disord
2024 Dec 18;24:268

3 Shift Work and Poor Mental Health: A Meta-Analysis of Longitudinal Studies
Luciana Torquati, et al.
Am J Public Health
2019 Nov;109(11):e13-e20

4 International Agency for Research on Cancer. (2020, June 2). IARC Monographs Volume 124: Night Shift Work. https://www.iarc.who.int/news-events/iarc-monographs-volume-124-night-shift-work/

5 Comparison of Sleep and Attention Metrics Among Nurses Working Shifts on a Forward- vs Backward-Rotating Schedule
Marco Di Muzio, et al.
JAMA Netw Open
2021 Oct 1;4(10):e2129906

6 Directive 2003/88/EC concerning certain aspects of the organisation of Working Timehttps://employment-social-affairs.ec.europa.eu/policies-and-activities/rights-work/labour-law/working-conditions/working-time-directive_en

7 Modeling the Impact of the Components of Long Work Hours on Injuries and ''Accidents''
Simon Folkard, David A Lombardi
Am J Ind Med
2006 Nov;49(11):953-63

8 Systematic review of the relationship between quick returns in rotating shift work and health-related outcomes
Øystein Vedaa, et al.
Ergonomics
2016;59(1):1-14

9 Working Time Society consensus statements: Evidence based interventions using light to improve circadian adaptation to working hours
Arne Lowden, et al.
Ind Health
2019 Apr 1;57(2):213-227

10 Lighting Interventions to Reduce Circadian Disruption in Rotating Shift Workers.
Mariana G. Figueiro, David Pedler
NIOSH Science Blog. 2020-12-18.
https://blogs.cdc.gov/niosh-science-blog/2020/12/18/lighting-shift-work/
(参照 2025-12-08)

11 The Effectiveness of Light/Dark Exposure to Treat Insomnia in Female Nurses Undertaking Shift Work during the Evening/Night Shift
Li-Bi Huang, et al.
J Clin Sleep Med
2013 Jul 15;9(7):641-6

12 米国国立労働安全衛生研究所 (NIOSH). "Improve Sleep by Avoiding Light (Module 6)." NIOSH Training for Nurses on Shift Work and Long Work Hours. CDC, 2020年3月31日更新https://www.cdc.gov/niosh/work-hour-training-for-nurses/longhours/mod6/07.html
(参照 2025-12-08)

13 Daytime eating prevents internal circadian misalignment and glucose intolerance in night work
Sarah L Chellappa, et al.
Sci Adv
2021 Dec 3;7(49):eabg9910

14 Association of night eating habits with metabolic syndrome and its components: a longitudinal study
Junko Yoshida, et al.
BMC Public Health
2018 Dec 11;18(1):1366

15 交代制勤務者の食生活に関する留意点
健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~
厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-04-004
(参照 2025-12-08)

16 UCLA Health. "Coping with Shift Work Sleep Disorder". Sleep Medicine.https://www.uclahealth.org/medical-services/sleep-medicine/patient-resources/patient-education/coping-with-shift-work
(参照 2025-12-08)

17 Can a quick snooze help with energy and focus?
Restivo, J. (2024, December 4).
The science behind power naps (S. Javaheri, Rev.)
Harvard Health Publishing
https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/can-a-quick-snooze-help-with-energy-and-focus-the-science-behind-power-naps
(参照 2025-12-08)

18 The alerting effects of caffeine, bright light and face washing after a short daytime nap
Mitsuo Hayashi, et al.
Clin Neurophysiol
2003 Dec;114(12):2268-78

19 "Sleep and Caffeine." Sleep Education
American Academy of Sleep Medicine.
https://sleepeducation.org/sleep-caffeine/
2018年1月29日更新
(参照 2025-12-08)

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月9日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.12.02更新

はじめに

医療による処置のことを、日本語では昔から「手当て」と言います。

薬や高度な医療機器がなかった時代から、人は痛む場所や患部に「手を当てる」ことで、苦痛や不安が和らぐことを本能的に知っていたのでしょう。

今回は、 手という「愛」を伝える最高の医療器具について、少し科学的な視点からお話ししたいと思います。


大切な人に「愛」を伝える方法


皮膚は「第2の脳」。癒やしのスイッチ「C触覚線維」とは

受精卵がお母さんのお腹の中で成長していくとき、皮膚と脳は「外胚葉(がいはいよう)」という同じ細胞層から生まれます。つまり、皮膚と脳は兄弟のような関係であり、生物学的に「皮膚は露出した脳である」とも言われます。

私たちの皮膚には、痛みや温度を感じるセンサーとは別に、「優しく触れられることを専門に感知するセンサー」が存在することをご存知でしょうか?

それがC触覚線維(シーしょっかくせんい)と呼ばれる特殊な神経です。

このセンサーは、ただ触れるだけでは反応しません。スイッチが入る条件はとても繊細です。

⭐️柔らかいタッチであること(文献1)
⭐️毎秒1〜10cm程度の、ゆっくりとした速度であること(文献1)

例えば、泣いている赤ちゃんの背中をさするときや、愛しい人の頭を撫でるとき、私たちは無意識にこの「ゆっくりとした速度」になっていないでしょうか?

この条件で肌に触れられると、その信号は、通常の触覚とは異なる特別な経路を通って、情動を処理する脳の領域へ届き、深い幸福感や安心感がもたらされるのです。(文献2)。


オキシトシンは「愛情」ホルモン

C触覚線維というスイッチが入ると、脳内では「オキシトシン」というホルモンが分泌されます(文献3)。

オキシトシンは別名「愛情ホルモン」とも呼ばれ、ストレスを軽減し、情緒を安定させるために非常に重要な役割を果たします(文献4)。

現代社会で私たちは日々、多くのストレスにさらされ、知らず知らずのうちに「コルチゾール」というストレスホルモンが過剰になっています。 しかし、大切な人と触れ合い、オキシトシンが分泌されると、このコルチゾールの働きが抑えられることが医学的にわかっています(文献5)。

誰かに背中をさすってもらうだけで、張り詰めていた気が緩んで涙が出たり、肩の荷が降りたように感じたりするのは、決して気のせいではありません。「触れる」という行為そのものが、脳に対する抗ストレス薬のような働きをしてくれるのです。

年齢を重ねても衰えない「触れ合い」の感覚

医師として、私が特に感動を覚える人体の不思議があります。

それは、視力や聴力が加齢とともに低下していくのに対し、この「C触覚線維」の感度は、高齢になっても衰えにくいという研究結果があることです(文献6)。

さらに、年齢とともに皮膚に対する柔らかいタッチへの反応性が高まる(より心地よく感じられるようになる)とも報告されています(文献6)。

目が悪くなっても、耳が遠くなっても、「優しく触れられる心地よさ」や、それによって「愛されていると感じる能力」は、最期まで失われないと言えるでしょう。

これは、人間が社会的な生き物として、人生を通じて「他者との温かいつながり」を必要としているから……神様が私たちの身体をそのようにプログラムしたのではないか、とさえ思えます。


大切な人へ、言葉を超えた「手当て」を

ご家族やパートナーが、言葉によるコミュニケーションが難しい状況に——例えば、認知症が進んでしまったり、病気で会話がままならなくなったりすることもあるかもしれません。

そんな時、「言葉が届かないから」と諦めないでください。

ゆっくり背中をさする・・手を握って、じっと温かさを伝える・・その毎秒数センチの優しいタッチ(医学的に最適は毎秒3センチ)は、C触覚線維を通じて、言葉よりも確実なメッセージとして相手の脳に届いています。あなたが伝えたい「愛」や「感謝」の気持ちは、間違いなく伝わっています。


まとめ

私たちは医師として、薬を処方したり手術をしたりすることはできますが、ご家庭の中で皆様が大切な人にできる「手当て」の効果には及ばないと感じることも数多く経験しています。

マッサージの特別な技術は必要ありません。 ただ、あなたの想いを込めて、ゆっくりと手を当ててさすってあげましょう。


高齢者の肌を守る!

 


関連サイト

 

【参考文献】

1 CT afferents
Morrison I
Curr Biol
2012 Feb 7;22(3):R77-8

2 C-tactile afferent stimulating touch carries a positive affective value
R Pawling, et al.
PloS one
2017: e0173457

3 C-tactile afferents: Cutaneous mediators of oxytocin release during affiliative tactile interactions?Susannah C Walker, et al.
Neuropeptides
2017 Aug:64:27-38

4 Oxytocin: The love hormone
Harvard Health Publishing
Harvard Medical School, 2025.

5 The Yin and Yang of the oxytocin and stress systems: opposites, yet interdependent and intertwined determinants of lifelong health trajectories
Kerstin Uvnäs-Moberg, et al.
Front Endocrinol
2024 Apr 16:15:1272270

6 Evaluation of Affective Touch: A Comparison Between Two Groups of Younger and Older Females
Carina Schlintl, Anne Schienle
Exp Aging Res
2024 Oct-Dec;50(5):568-576





 

 


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 *2025年10月1日調べ

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月3日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥