2025.12.30更新

1 はじめに

「昨日けっこう飲んだのに、今朝なんか肌がきれい…?」

そんな経験はありませんか。ただし、その"きれい"は肌そのものが良くなったわけではなく、見え方のトリックであることがほとんどです。

結論を先に言うと、翌朝のツヤっぽさは「血行促進(血色アップ)」か「むくみ」のどちらか。 本当に気にすべきは、この短期の錯覚よりも、飲酒習慣が続いたときに現れる"顔つきの変化"と肌荒れのほうです。

今回は、飲酒と肌の関係を医学的にかみ砕いて整理します。


2 二日酔いなのに「肌の調子がいい」のはなぜ?翌朝のツヤとむくみの正体


飲んだ翌朝、肌がきれいに見える理由


パターン1:血管拡張で血色がよく見える

アルコールは血管を拡張させるため、顔色が明るく見えることがあります。いわゆる"血色がいい"状態ですが、これは赤みと紙一重。赤ら顔の傾向がある方や、ほてり・紅潮が出やすい体質では、「健康的」というより「炎症っぽく見える」方向に振れやすいので注意が必要です。繰り返す赤みには、アゼライン酸高濃度配合クリームダームエデン美容液で普段から抗炎症ケアをしておくのも一案です。


パターン2:むくみでハリが出たように見える

飲酒の翌朝、目の下や頬がパンと張って見えることがあります。これが「ツヤ」「ハリ」の錯覚を生みますが、実態はむくみ。時間が経って引いてくると、元のコンディション──ときに乾燥や赤み──が顔を出します。翌朝だけ"盛れている"のに昼から崩れるのは、このためです。


3 アルコールが肌へ与える影響|飲み続けると顔つきが変わる?


過度な飲酒は、皮膚や顔貌に影響を及ぼす


過度な飲酒は、皮膚や顔貌に影響が出やすいことが報告されています(文献1)。ここでは目安として週8杯以上を「多量飲酒」とします。

*ここでの「1杯」とは純アルコール量で14グラム。一般的なワイングラスで言うと、なみなみと注いだ量ではなく、グラスの膨らんでいる部分(ボウル)のあたりまで注いだ、いわゆる「レストランでの標準的な1杯(グラスワイン)」の量になります。


多量飲酒(週8杯以上)で出やすい4つの変化

1️⃣中顔面のボリューム減少と目の下の膨らみ
2️⃣血管拡張と赤み(ほてり・紅潮が続きやすい)
3️⃣顔の上部および口元のシワ(乾燥・炎症・表情筋の影響も絡む)
4️⃣皮膚バリア機能の低下(乾燥、刺激感、肌荒れを繰り返しやすい)

中等度(週1〜7杯)は「ボリューム領域」に限定されやすい

週1〜7杯程度の飲酒では、影響が「中顔面のボリューム減少」「目の下の膨らみ」といったボリューム領域に限定される傾向が示されています。

(減少したボリュームには、それを補うヒアルロン酸注入が適応となります)

もちろん個人差はありますが、量が増えるほど、赤み・しわ・バリア低下のリスクが上がりやすいという整理が実務的です。


4 お酒で肌荒れが生じる3つのメカニズム


飲酒で肌荒れが生じるメカニズム


1. 酸化ストレスと炎症


アルコール代謝で活性酸素が発生し、抗酸化防御を圧倒して細胞傷害・慢性炎症・皮膚老化を促進します(文献2)。肌の"元気のなさ"、"荒れやすさ"、"老け見え"は、ここが起点になることが少なくありません。

2. 皮膚バリアとマイクロバイオームの乱れ

バリア機能低下と皮膚表面にいて皮膚を守る常在菌の変化が乾燥、刺激感、炎症を悪化させます(文献2)。ここに「落としすぎ」、「こすりすぎ」が重なると、悪循環に陥りがちです。

3. 血管への影響(赤ら顔の原因)

アルコールは微少血管の透過性を高め、飲酒後の皮膚の紅潮や浮腫の直接的な原因になるばかりか、組織の炎症を誘発します(文献3)。


5 日本酒やワインは肌にいい?お酒の種類と美容効果について


ワイン・ビール・日本酒──種類で美容効果は変わる?


結論から言えば、種類よりも「アルコール共通の悪影響」が問題になります。


日本酒とコラーゲンの話

日本酒に含まれるエチル-α-D-グルコシド(α-EG)について、皮膚コラーゲンに関する報告があるのは事実です(文献4)。ただし、これは日本酒メーカーの絡んだ研究報告であり、追加検証が必要です。

ワイン・ビールの美容イメージと現実

ワインのポリフェノール、ビールのホップ由来のポリフェノールなど"美容イメージ"は根強いものの、飲酒としての美容効果には確立した強いエビデンスが不足しています。

結論:美容目的の飲酒は推奨されない

脱水、炎症、赤み、バリア低下など、アルコールそのものが持つ悪影響は種類を問わず共通です。特定成分の潜在的メリットを上回る可能性が高いため、「美容のために飲む」は医学的に推奨されません。飲むなら"嗜好として"、量と頻度を管理するのが現実的な落としどころです。


6 飲み会後のスキンケア|メイクを落とさず寝た翌日の対処法


酒飲みのスキンケア


どんなに酔ってもメイクは落とすべき?


原則はシンプルです。丁寧に落とせるなら、落としてから寝るのがベター。でも、眠すぎて雑にこすってしまうくらいなら、無理に落とさず寝て、翌朝(昼でも)落ち着いてから丁寧に落とすほうが肌に優しいこともあります。

「メイクは必ず落として寝なければ」という強迫観念で、摩擦だらけのクレンジングをするくらいなら、回復を邪魔しない選択を。


飲みすぎた翌日のスキンケア4原則


1️⃣ 洗顔は「落としすぎない」──低刺激、こすらない
2️⃣ 保湿は「肌が少し湿っているうちに」──低刺激な保湿剤で
バリア機能が低下している時は、ADパーフェクトバリアのような低刺激・高保湿なアイテムで保護膜を作ることが回復への近道です。

3️⃣ 日中は「必ず日焼け止め」──曇りでも。赤みが出やすい人はSPF30以上。刺激になりにくい酸化亜鉛・酸化チタン系も選択肢
4️⃣ むくみ(特に目の下)は「冷やす」──冷罨法で腫れが引きやすい


飲みすぎた翌日は避けたいこと(ピーリング・サウナ等)

☑️スクラブ、ピーリング、強い角質ケア(赤み・乾燥の日は刺激になりやすい)
☑️熱いシャワー、サウナ(赤み体質では悪化要因に)
☑️アルコール配合のスキンケア
☑️レチノイドなど刺激になり得る成分(翌日は休む判断が安全)


7 まとめ:お酒による肌荒れ・赤ら顔を防ぐために

お酒をゼロにできなくても、肌は守れます。翌朝のツヤに騙されず、長期の変化に目を向ける。そして翌日は「刺激を減らす」──それだけで肌の安定度は確実に上がります。
美容の勝ち筋は、派手な一手より"崩れない習慣"です。

まとめ(箇条書き)

✅翌朝の「ツヤ」は主に血行促進 or むくみの錯覚
✅多量飲酒(目安:週8杯以上)では、ボリューム低下・赤み・しわ・バリア低下が起きやすい
✅肌荒れは酸化ストレス、炎症、バリア破綻、血管反応が複合的に絡む
✅種類別の"美容効果"は限定的で、アルコール共通の悪影響が上回りやすい → 美容目的の飲酒は推奨されない
✅飲みすぎた翌日のスキンケアは摩擦を減らし回復優先:落としすぎない洗顔、即保湿、日焼け止め、冷やす
✅飲みすぎた翌日はピーリング、サウナ、アルコール化粧品、刺激成分(レチノイド等)を避ける判断が安全



酒飲みの肌を救う美肌術

 


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【参考文献】

1) Impact of Smoking and Alcohol Use on Facial Aging in Women: Results of a Large Multinational, Multiracial, Cross-sectional Survey
Greg D Goodman, et al.
J Clin Aesthet Dermatol
2019 Aug 1;12(8):28–39

2) The Role of Oxidative Stress in Skin Disorders Associated with Alcohol Dependency and Antioxidant Therapies
Joanna Wróblewska, et al.
Molecules
Jul 25;30(15):3111

3) Advances in Relationship Between Alcohol Consumption and Skin Diseases.
Lin Liu, Jin Chen
Clin Cosmet Investig Dermatol
2023 Dec 29:16:3785-3791

4) The effect of ingestion of an ethyl α-D-glucoside, a fermented product, on human skin The effect of ingestion of an ethyl α-D-glucoside on human skin
M Masaki, et al.
J Biol Macromol
2021;21(2):75-87

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月31日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.12.29更新

はじめに

冬になると「粉ふき・つっぱり・かゆみ」といった肌トラブルが一気に増えます。高保湿なスキンケアに切り替えても改善しない場合、見落とされがちなのが「室内の湿度」です。

本記事では、皮膚のバリア機能を守る視点から、理想とされる湿度40–60%の医学的根拠と、生活に取り入れるための具体的な実践法を解説します。


1 冬の乾燥肌・かゆみの原因は「室内の低湿度」?皮膚バリア機能への影響

カサつきや赤みは、肌の水分が逃げやすくなっているサインです。乾燥肌の原因には、体質だけでなく「周囲の低湿度」という環境要因が大きく関わっています。

保湿の目的は、単に見た目を整えることではなく、過酷な環境下で皮膚のバリア機能を維持・回復させることにあります。


2 乾燥肌に理想の室内湿度は40〜60パーセント!その医学的根拠


最適な室内湿度 40〜60%

最適な室内湿度として40〜60%が推奨されるのは、単なる感覚的なものではありません。これは、低すぎても高すぎても健康リスクが高まるという研究データ(文献1)に基づいた「悪影響を最小化できる範囲」です。


湿度の下限40%:インフルエンザ対策と肌の水分蒸発防止

厚生労働省の基準でも、湿度の下限は40%とされています(文献2)。湿度が40%を下回るとインフルエンザ等のウイルス生存率が上がり、呼吸器感染症のリスクが高まります。

皮膚にとっても、40%を境に急激に変化するわけではありませんが、これ以下になると水分蒸発が加速し、バリア機能が低下しやすくなる一つの目安となります。


湿度の上限60%:カビ・ダニ予防とアレルギー対策

一方で、湿度は高ければ良いというわけでもありません。上限を60%に抑えるべき理由は主に3つあります。

カビの抑制:多くの真菌(カビ)は湿度が60%を超えると増殖しやすくなります。
ダニの繁殖抑制:アレルギーの原因となるダニも、湿度60%を超えると繁殖が活発になります。
化学物質の放出抑制:高湿度下では建材からのホルムアルデヒド等の放散速度が上がることが知られています。

これらを総合すると、「ウイルス・カビ・ダニ・化学物質」のすべてをコントロールできる最適解が40〜60%なのです。


3 実践!乾燥肌対策のための正しい湿度管理術と加湿器の使い方


乾燥肌から守る湿度管理術

数値を理解したら、次は実践です。効率よく肌を守るためのポイントをまとめました。

3-1 加湿器の置き場所は?

「加湿器を使っているのに肌が乾く」という方の多くは、実際の湿度が40%に届いていない「加湿しているつもり」の状態にあります。

設置場所:床から1.0〜1.5メートル、または生活している高さに合わせた位置に設置することが重要です。窓際や加湿器の真横は数値が極端に出るため避けてください。

確認のタイミング:起床時・帰宅後・就寝前の3回チェックする習慣をつけると、肌の調子と数値の相関が見えてきます。


3-2 最優先は「寝室」の乾燥対策!就寝中の肌を守るコツ

家の中でも特に重点的に管理したいのが寝室です。睡眠中は乾燥に気づきにくいうえ、滞在時間が長く、暖房による乾燥の影響を強く受けます。

リビングの湿度が適切でも、寝室が乾いていると「朝のつっぱり感」は解消されません。まずは寝室を40〜60%に整えるだけで、翌朝の肌体感が劇的に変わる方も少なくありません。


3-3 暖房と換気はどうする?冬の室内湿度を維持する方法

冬の乾燥肌対策では、暖房と換気が重なると湿度が想像以上に落ちやすい点が盲点です。「加湿しているのに肌がつっぱる」「朝だけ粉ふきが強い」場合、加湿器の性能よりも室温と空気の流れが原因になっていることがあります。

暖房で室温が上がると、同じ水分量でも相対湿度は下がりやすく、肌は乾きやすい環境になります。つまり乾燥肌の方にとっては、暖房+加湿のセットが基本です。

換気は必要ですが、冬は乾いた外気が入るため湿度が一気に低下しがちです。さらに気流(エアコンの風やサーキュレーター、ドアの開閉)があると、肌表面の水分が蒸発しやすくなり、数値以上に乾きを感じることもあります。

結論はシンプルです。換気はする。その後に湿度を40〜60%へ戻す。暖房と換気で揺れる湿度を「帯」に戻し続ける運用が、つっぱり・粉ふき・かゆみを減らす近道です。


4 乾燥肌におすすめの加湿器の選び方と加湿がない場合の代用アイデア

加湿手段の選び方

乾燥肌の視点では、手段そのものよりも「理想の範囲(40〜60%)を、生活の中で維持できるか」が重要です。加湿は〝勢い〟より〝運用〟で差が出ます。ポイントは ①測る → ②40%未満を減らす → ③60%超を作らない の3つです。

加湿器は「湿度設定」と「衛生管理」

乾燥が強い日でも湿度を短時間で40%台に戻しやすいのが最大の利点。とくに暖房を使う冬は、乾燥肌の人ほど加湿器が「主役」になります。一方で、運用を誤ると過加湿になり、結露→カビ→かゆみ悪化という逆方向に振れます。

乾燥肌向けの選び方

湿度設定(自動)がある機種が扱いやすい(目標45〜55%が現実的)
寝室なら静音性・タイマーが重要(就寝前〜起床時の乾燥を潰す)
部屋の広さに対して能力が足りないと「やってるのに上がらない」原因に

置き方のコツ

床から40〜100cmの高さに置く(床置きだと湿気が偏りやすい)
壁・カーテン・家具から少し離す(結露やカビの温床を作らない)

衛生管理

水はできれば毎日入れ替え、タンク・吹出口は定期洗浄。手入れが面倒だと、結果的に使わなくなり「続かない」原因になります。乾燥肌対策は継続です。


加湿器がない時は?濡れタオルや置き水など8つの加湿テクニック

コストが低く、湿度が上がりすぎにくいのが利点。乾燥がそこまで強くない日や、加湿器がない環境では現実的な選択肢です。ただし真冬の暖房環境では、部屋条件によって40%まで押し上げきれないことがあります。

効かせるコツ

1枚より2枚、小さいタオルより大判(水分量が違う)
風の通り道(ドア付近やエアコン下)に置くと蒸発が進みやすい

注意点
乾きにくい場所での室内干しは、におい・カビの原因になりやすいです。乾燥肌のためにやったのに、空気環境が悪化して肌が荒れるのは避けたいところです。

その他の室内加湿アイデア

室内加湿アイデア

1)洗面器・ボウルに水を張る(超ローコストの〝置き水〟)
コップより表面積が大きい容器に水を張って置くだけでも、ゆっくり蒸発して湿度の底上げになります。表面積が広いほど効果が出やすいため、浅めの容器が有利です。転倒・こぼれには注意が必要で、小さなお子さんやペットがいる家庭では置き場所を工夫してください。

2)水を含ませたスポンジ/吸水性素材を使う
容器に水+大きめスポンジ(または吸水性の高い素材)を入れると、表面積が増えて蒸発が進みやすくなります。寝室など「静かに少しだけ上げたい」場所と相性が良い方法です。ぬめり・カビが出たら交換するなど衛生管理が重要で、こまめに洗浄できない人には不向きです。

3)浴室の〝残り湯の湿気〟を利用
入浴後しばらく浴室ドアを開け、浴室の湿気を廊下や隣室へ流す方法です。乾燥が強い夜に「寝る前だけ底上げ」したいときに便利。結露しやすい家ではやりすぎに注意し、浴室・脱衣所にカビが出やすい人は控えめにしましょう。

4)浴槽にお湯を張って〝フタを開けたまま〟短時間置く
追い焚き後や入浴前後に、浴槽のフタを少し開けて湯気を出すと室内湿度が上がりやすいです。長時間は結露リスクがあるため、湿度計で60%超になったら中止してください。

5)鍋・やかんで湯を沸かす(短時間で上げたいときの即効策)
料理中の湯気は加湿効果が高く、乾燥がひどい日の〝立て直し〟に役立ちます。火災・やけどリスクがあるため就寝中の運用は不可。換気扇を強く回しすぎると湿気が外に逃げてしまいます。

6)電気ケトルの湯気を活用
やかんより手軽で、短時間の加湿には便利です。就寝中は不向きで、湿度が上がったら止めて過加湿を作らないようにしましょう。

7)観葉植物(蒸散による〝じわじわ加湿〟)
植物は蒸散で少量ずつ水分を放出するため、極端な乾燥をやわらげる補助になります。即効性は低く、水やり過多は土のカビやコバエの原因になるので、空気環境が悪化しない範囲で管理してください。

8)暖房方式の見直し
エアコン暖房は体感として乾燥を訴える人が多い一方、床暖房やオイルヒーターは気流が少なく、乾燥感が強く出にくいことがあります(湿度そのものを上げるというより、乾燥〝体感〟を悪化させにくい)。どの暖房でも湿度は下がり得るので、湿度計で40〜60%管理は継続してください。


使い分けの目安(乾燥肌向け)

主役:加湿器(40%未満が続く家・寝室で必須になりやすい)
補助:置き水/スポンジ/植物(〝少しだけ底上げ〟)
即効:料理の湯気・ケトル・浴室の湿気(〝一時的に戻す〟)
注意して使う:浴槽の湯気(結露・カビが出やすい家は控えめ)


5 湿度は「外からの守り」!スキンケア(内からの守り)との相乗効果


乾燥肌から守るスキンケア

湿度は「環境側の守り」、スキンケアは「肌側の守り」です。室内湿度を整えたうえで、以下の3要素を意識したケアを行うと効果的です(文献3)。

◉引き寄せる(ヒューメクタント):グリセリンやヒアルロン酸で水分を補給。(塗るケアだけでなく、肌内部に直接水分を蓄えるボライトXCのような治療も有効です)

◉逃がさない(オクルーシブ)
:ワセリン(ペトロラタム)・ミネラルオイル・ジメチコンなどで「フタ」をする(油分多めのクリームや軟膏ほどこの役割が強い)。

◉整える(エモリエント)
:セラミド等でバリア機能を補う。

※ 日本では〝エモリエント〟にフタ(閉塞)の意味合いまで含めて説明されることがあります。ここでは海外文献での用法に基づいて、フタ役をオクルーシブとして別立てにしています。

乾燥肌で特に重要なのは、水分を足す(ヒューメクタント)だけで終わらず、逃がさない(オクルーシブ)を加えることです。

当院では、高い保湿力で水分の蒸発を防ぐWiQo保湿クリームや、敏感肌の方のバリア機能を守るADパーフェクトバリアなどを推奨しています。


水分を足すと角層の水分量は速く増える一方で、それは必ずしも経表皮水分蒸散(TEWL)の低下(=バリア機能の回復)につながるわけではないと指摘されています。要するに「しっとりした感じは出ても、長持ちしない」ことが起こり得るのです。乾燥肌の人ほど、最後の〝フタ〟(→ADパーフェクトバリア)が効きます。


6 おわりに:湿度対策でも治らない乾燥肌は美容皮膚科で相談を

冬の乾燥肌対策は、保湿剤を塗るだけでは完結しません。肌を取り巻く「空気」を湿度40〜60%という適切な状態に設計することで、初めてスキンケアはその真価を発揮します。

まずは今晩、寝室に湿度計を置くことから始めてみてください。環境という土台を整えることが、乾燥に振り回されない健やかな肌への近道となります。

【どうしても乾燥が改善しない方へ】
湿度管理や保湿ケアを徹底しても「乾燥・つっぱり」が治らない場合、肌自体の保水力が低下している可能性があります。

当院では、コラーゲンやエラスチンを増やし、自らの肌で潤いを作り出す「細胞外マトリックス治療」を行っています。

肌の基礎力を底上げする:スネコス
滑らかなみずみずしさ:プロファイロ
強力な保水とリフトアップ:ジャルプロ・スーパーハイドロ

お悩みの方は、ぜひ一度カウンセリングにてご相談ください。

 


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【参考文献】

1 Indirect health effects of relative humidity in indoor environments.
A V Arundel,et al.
Environ Health Perspect
1986 Mar:65:351-61

2 建築物環境衛生管理基準について
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/

3 Moisturizers
Harwood A, et al.
StatPearls [Internet]
Treasure Island (FL): StatPearls Publishing
2025 Jan-
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK545171/




 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月29日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.12.23更新

突然ですが、みなさんはお風呂上がり、どのように過ごしていますか?

「お風呂から出たら3分以内に保湿しないと肌が砂漠化する!」
「5分以内が勝負!」

そんな都市伝説のような強迫観念に駆られて、びしょ濡れのまま裸で化粧水ボトルへダイブしていませんか?

今日は、そんな「入浴後の保湿タイミング」について、最新の医学論文やガイドラインを紐解きながら、白黒はっきりつけていきたいと思います。


風呂上がり保湿のタイミングは3分以内?|慌てて塗るバカと塗らない大バカ


1 入浴後の保湿は何分以内?「お風呂上がり3分以内」説の医学的根拠

「入浴後、肌の水分は急速に蒸散する」

これは事実です。だからこそ、「肌に水分が残っているうちに保湿剤で蓋をしよう」という理論は理にかなっています。

しかし、「それが3分以内なのか?5分以内なのか?」という時間の数字に関しては、実は明確な決まりはありません。いくつかの興味深い研究結果をご紹介しましょう。

健康な肌なら、30分遅れても結果は変わらない(文献1)
2022年の研究(Nguyenら)では、健康な成人において「入浴直後」に保湿した場合と、30分後」に保湿した場合を比較しました。結果はなんと、「統計的に有意な差はなし」。

つまり、健康な肌であれば、バスローブを羽織って少し涼んでから塗っても、保湿効果に大きな違いはないのです。

さすがに「塗らない!」はNG(文献2)
一方で、別の研究(Uedaら 2022)では、入浴直後(5分以内)に塗った場合と「塗らない」場合を比較しています。これに関しては、やはり直後に塗った方が肌の水分量が高かったという結果が出ています。

アトピー・乾燥肌の方は「風呂上がり直後」の保湿が必須
ここが重要なポイントですが、アトピー性皮膚炎のお子さんを対象にした研究(Wulandariら 2021)では、30分待つよりも「直後」に塗った方が明確に皮膚水分量が高かったというデータがあります(文献3)。重度の乾燥肌の場合は、水分が逃げるスピードが速いため、早めのケアが有効であることが示唆されます。


2 入浴後の乾燥対策に「塗らない」はNG!お風呂での保湿の重要性

ここでタイトルの「大バカ」の話に戻ります。

タイミング云々の前に、「保湿剤を塗るか、塗らないか」で言えば、圧倒的に「塗った方がいい」のです。

入浴中、肌の天然保湿因子(NMF)や皮脂はお湯に溶け出してしまいます。無防備になった肌を放置すれば、当然乾燥し、小じわや肌荒れの原因になります。

もし、「普段のケアだけでは乾燥が改善しない」「もっと内側から潤わせたい」と感じている場合は、クリニックの肌に潤いをもたらす[ボライトフィロルガ水光注射]などのスペシャルケアも選択肢の一つです。

「慌てなくていいなら、後でいいや」と思ってそのまま寝てしまうのが、一番のNG行為です。


3 美容皮膚科医が指導する「正しい保湿剤の塗り方」とスキンケアの順番

日本皮膚科学会のガイドラインでも、入浴後の保湿については「◯分以内」と断定せず、「できるだけ速やかに」という表現にとどめています(文献4)。これは、万人に当てはまる厳密なタイムリミットのエビデンスがないからです。

私からの提案はこうです。

1️⃣秒単位で焦る必要はない

お子さんを着替えさせたり、自分の髪を拭いたりする時間は十分あります。リラックスタイムを犠牲にしてまでパニックになる必要はありません。

2️⃣「つっぱり感」が出る前が目安

乾燥して皮膚が「つっぱる」と感じるのは、すでに角層が収縮し始めているサイン(不快感)です。この不快感が出る前に塗るのが、精神衛生的にも肌感覚的にもベストです。

3️⃣キーワードは「湿っているうちに」

時間が経って乾ききった肌に塗るよりも、少し湿り気が残っている肌に塗る方が、薬剤の伸びも良く、水分を封じ込める効果(occlusive効果)が期待できます。


【まとめ】

☑️慌てて塗るバカ:そこまで焦らなくても、30分以内なら結果はほぼ同じ(健康肌の場合)。

☑️塗らない大バカ:乾燥・老化へ一直線。

☑️賢い人:焦らず、でも肌が湿っているうちに、確実に塗る。

美容は「継続」が全てです。毎日「急がなきゃ!」とストレスを感じるよりも、ゆったりとした気持ちで、丁寧に保湿ケアを行って下さい。

ただ、どうしても乾燥による小じわが気になる場合は、肌の保水力を直接高める[ボライトフィロルガ水光注射プロファイロ]などで土台を整えてあげるのも近道になります。

乾燥や肌トラブルでお悩みの方は、いつでも当院にご相談ください。あなたの肌質に合った最適な保湿剤とケア方法をご提案します。


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【参考文献】

1) Moisturizing effectiveness of immediate compared with delayed moisturization
Kim Han Nguyen, et al.
J Cosmet Dermatol
2022 Oct;21(10):5134-5140

2) Optimal application method of a moisturizer on the basis of skin physiological functions
Yukiko Ueda, et al.
J Cosmet Dermatol
2022 Jul;21(7):3095-3101

3) Comparison of skin hydration degrees based on moisturizing time in children’s atopic dermatitis
Puteri Wulandari, et al.
Bali Med J
2021;10(1):194-198

4) アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024
佐伯 秀久, et al.
日皮会誌
2024; 134(11): 2741-2843

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月23日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.12.12更新

はじめに

「シミの原因」「美白の敵」——メラニン色素というと、美容の観点からはネガティブなイメージを持たれがちです。しかし、このメラニンこそが、私たち人類が太古の昔から紫外線と闘い、生き延びてきた証なのです。

本記事では、メラニン色素の起源から、肌の色が決まるメカニズム、そして進化から見た肌色の意味まで、科学的な視点で解説します。メラニンを正しく理解することで、より効果的なスキンケアや美容医療の選択につなげていただければ幸いです。

メラニン色素の起源


メラニン色素の起源と役割

メラニン色素の歴史は、生命誕生の太古の海にまで遡ります。驚くべきことに、メラニンは細菌、真菌、植物、昆虫、魚類、爬虫類、哺乳類に至るまで、ほぼ全ての生物に存在する色素です。

原始の単細胞生物は、有害な紫外線から身を守るためにこの色素を発達させました。メラニンには紫外線を吸収する能力があり、細胞内のDNAへのダメージを防ぐ「天然のUVカット剤」として機能します。

生物が陸上に進出すると、この防御機構はさらに重要性を増しました。強い太陽光にさらされる環境では、メラニンを効率的に生成できる個体が生存に有利だったのです。動物界でも、メラニン量の調節は環境適応の要となっています。熱帯の動物は紫外線から身を守るためにメラニンを多く生成し、暗い毛色や肌色を持ちます。一方、寒冷地の動物は季節に応じてメラニン生成を抑え、白い体色で雪景色に溶け込みます。

2つのメラニン

2種類のメラニン:ユーメラニンとフェオメラニンの違い

メラニンには主に2種類あることをご存知でしょうか。

ユーメラニン(真性メラニン)

褐色〜黒色の色素で、紫外線から肌を守る力が強いのが特徴です。黒髪の主成分であり、アフリカ系の人々の肌にも豊富に含まれています。ユーメラニンは紫外線を吸収し、紫外線によって発生する活性酸素を消去する働きがあります。そのため、ユーメラニンが多い肌は紫外線にあたっても赤くなりにくく、皮膚がんのリスクも低くなります。

フェオメラニン(亜メラニン)

黄色〜赤色の色素で、ユーメラニンに比べて紫外線に対する保護効果が低いのが特徴です。金髪や赤毛の人に多く含まれ、白人の肌色を決定づける主要な色素です。注意が必要なのは、フェオメラニンは紫外線を浴びると逆に活性酸素を発生させてしまう点です。これが、白人に皮膚がんが多い理由の一つとされています。

生成のメカニズム

どちらのメラニンも、チロシンというアミノ酸から作られます。チロシンがチロシナーゼという酵素の働きでドーパキノンに変化するところまでは同じですが、その後の経路が分かれます。システインというアミノ酸が結合するとフェオメラニンに、結合しないとユーメラニンになります。この分岐点は、チロシナーゼの活性とシステイン濃度のバランスによって決まると考えられています。


ヒトの肌の色はこうして決まる


肌の色が決まる仕組みとメラノサイトの働き

私たちの肌の色は、ユーメラニンとフェオメラニンの量と比率によって決まります。

メラニンを作り出すのは、表皮の最下層(基底層)にある「メラノサイト(色素細胞)」です。興味深いことに、人種が違ってもメラノサイトの数自体はほぼ同じです。違いを生むのは、メラノサイトがどれだけ活発にメラニンを作るか、そして作られたメラニンがどのように分布するかという点なのです。

紫外線を浴びると、周囲の角化細胞(ケラチノサイト)がメラノサイトに「メラニンを作りなさい」という信号を送ります。メラノサイトは活性化してメラニンを生成し、樹枝状の突起を通じて周囲のケラチノサイトにメラニンを受け渡します。ケラチノサイトに取り込まれたメラニンは、細胞の核の上に傘のように集まり(核帽形成)、紫外線からDNAを守るのです。

通常、メラニンは肌のターンオーバー(約28日周期)とともに垢として排出されます(このサイクルを整え、メラニンの排出をスムーズにするのがケミカルピーリングレチノールピールなどのピーリング治療です)。しかし、過剰に紫外線を浴びたり、加齢でターンオーバーが乱れたりすると、メラニンが排出しきれずに蓄積し、シミやくすみとなって残ってしまうのです( 蓄積してしまったメラニンには、ルビーフラクショナルなどのレーザー治療で直接アプローチすることが有効です)




肌の色の意味


肌の色が意味するもの

人類の進化の歴史は、紫外線とビタミンDとの絶妙なバランスを取る闘いの歴史でもありました。

約200万年前、アフリカのサバンナで体毛を失った初期人類は、強烈な紫外線から裸の皮膚を守るために、メラノサイトが活発にメラニンを生成する方向に進化しました。濃い肌の色は「天然の日焼け止め」として機能し、紫外線によるDNA損傷や皮膚がんから身を守ったのです。

しかし約6万年前、一部の人類がアフリカを出て北方のヨーロッパへと移住します。日照量の少ない高緯度地域では、紫外線を遮る黒い肌はむしろ不利に働きました。なぜなら、ビタミンDは紫外線を浴びることで体内で合成される栄養素だからです。ビタミンD不足は骨の形成に支障をきたし、くる病などの原因となります。そこで北方に移住した人類は、弱い紫外線でも効率的にビタミンDを合成できるよう、メラニン生成能力を低下させる方向に進化しました。これが、ヨーロッパ系の人々の白い肌の起源です。

つまり、「色が白い=紫外線防御力は弱いが、ビタミンD合成に有利」「色が濃い=紫外線防御力が強いが、低日照地域ではビタミンD不足のリスク」という、進化の過程で獲得されたトレードオフが、世界の多様な肌色を生み出しているのです。

そこに『優劣』はありません。それぞれの肌の色は、その土地で生きるための「最適解」として選ばれたものなのです。

現代では、人類は世界中を移動して暮らすようになりました。紫外線の強い地域に住む白人は皮膚がんのリスクが高まり、日照量の少ない地域に住む黒人はビタミンD欠乏症にかかりやすくなります。だからこそ、自分の肌タイプを正しく理解し、住んでいる環境に応じた適切なケアを行うことが大切なのです。


まとめ

メラニン色素は、単なる「シミの原因物質」ではありません。太古の昔から生物を紫外線から守り、人類が地球のあらゆる環境に適応するために進化してきた、生命の知恵そのものです。

ユーメラニンとフェオメラニンという2種類のメラニンのバランスが、私たちの肌の色を決め、紫外線への反応の仕方を左右します。適切な紫外線対策を行えば、健やかで美しい肌を保つことができます。

しかし現代では、過剰な紫外線曝露やホルモンバランスの乱れ、加齢によるターンオーバーの遅延などにより、メラニンが過剰に生成・蓄積し、シミや色素沈着といった美容上の問題を引き起こすこともあります。

メラニンの役割を正しく理解し、自分の肌タイプに合った紫外線対策(▶︎医療機関専売の日焼け止めを行うこと。そして、できてしまったシミには美容医療の力を借りて適切にケアすること。この両輪で、進化が私たちに与えてくれた「肌を守る力」を最大限に活かしながら、健康で美しい肌を目指していきましょう。


自分の肌の色を取り戻す施術(クリニック治療)

▶️メラニンを直接壊して薄くする


▶️ターンオーバーを促しメラニンを排出する


自宅で肌を守り育てるスキンケア

▶️メラニン生成を抑える


▶️紫外線から肌を守る

 


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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.12.09更新

1 はじめに

この文章は、私にシフトワーカーの健康問題を考えるきっかけをくださった、一人のお客様に捧げます。

看護師をされていたそのお客様と、この話題になった時、何もアドバイスできないばかりか、冗談めかして「早く婦長さんになって(通常、看護師長は日勤のみです)、この状況から脱却するしかないですよ!」としか言えなかったことが、今も痛恨の思いとして心に残っています。

答えとしてまだまだ不十分ですが、今も考え続けていることをお伝えしたい。

シフトワーカー(Shift Worker)とは、通常の朝から夕方までの日中勤務ではなく、シフト制(交代勤務制)で働く人々を指します。

時間医学がシフトワーカーを守る


2 夜勤の健康リスクとは?生活習慣病や睡眠障害の実態


シフトワークが睡眠障害をはじめ、肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病など生活習慣病や心筋梗塞、脳卒中、乳がん、前立腺がんなどの疾患リスクを上昇させることがさまざまな疫学研究から示されています。

具体的な数字を見ると、その深刻さがわかります。

☑️心筋梗塞リスク:23%上昇(文献1)
☑️2型糖尿病リスク:30%上昇(文献2)
☑️うつ病リスク:33%上昇(女性では73%上昇)(文献3)

さらに、国際がん研究機関(IARC)は2019年、夜間シフトワークを「グループ2A(おそらく発がん性あり)」に分類しました(文献4)。これはホルムアルデヒドやグリホサート(除草剤)と同じ分類であり、無視できないリスクレベルです。

しかし悲観する必要はありません。時間医学の進歩により、体内時計のメカニズムを理解し、科学的根拠に基づいた対策を講じることで、リスクを大幅に軽減できることがわかっています。

なぜシフトワークは身体に悪い!?

3 なぜ夜勤で「太る」「老ける」のか?原因は体内時計のズレ

人に限らず、地球上の生物には、体内時計が備わっています。地球の自転によって、およそ24時間周期で昼夜の環境が変化する地球上で生存競争に勝ち抜くために不可欠なシステムです。

体内時計を調整するメラトニンというホルモンは、驚くべきことにヒトはもちろん動物でも植物でも微生物でも共通。いかに生命にとって根源的なシステムであるかがわかります。体内時計は地球上の生命体全般において、普遍で不変!な進化をとげたのです。

そして、そのシステムに従って、睡眠覚醒、代謝、ホルモン分泌などさまざまな生理現象が調節されています。

だから人はシフトワークのように地球の自転を無視した生活に適応することは難しいのです。これが体内時計を研究する医学分野である「時間医学」の答えになります。


シフトワークのコツ


4 時間医学に基づくシフトワーク対策!体内時計の整え方


不規則な生活を強いられるシフトワーカーですが、「規則的に不規則な生活」なら、まだ健康を害するリスクは小さくできる可能性があります。以下に、科学的根拠に基づいた具体的な対策をご紹介します。


4-1 看護師の夜勤連続はNG?体に優しいシフトスケジュールの原則

正循環シフトを守る

日勤→準夜勤→深夜勤の方向へ回す「正循環(時計回り)シフト」が推奨されます(文献5)。

人間の体内時計(概日リズム)の固有周期は約24.2時間です。このように地球の自転周期(24時間)よりもわずかに長いため、調整しなければ、体内時計は自然に毎日少しずつ遅れていきます。この「遅れる傾向」により、時間を後ろにずらす(夜更かし方向)調整は、体内時計の自然な傾向に沿っているため容易です。

逆循環(深夜勤→準夜勤→日勤)は体内時計を前倒しする方向への調整となり、極めて困難です。睡眠の質低下や疲労感増大と強く相関しています(文献5)。


勤務間インターバルと連続夜勤の制限

✅勤務間インターバル11時間以上を確保(EU労働時間指令の基準)(文献6)
✅連続夜勤は3回まで(3連続後で労働災害や事故のリスクが17%増加、4連続で36%増加)(文献7)
✅「準夜勤(深夜0時終了)」の翌朝に「日勤(8時開始)」を入れるようなシフトは絶対に避ける(文献8)

光のマネージメント

4-2 夜勤でも眠くない?「光」の調整と帰宅後のサングラス活用法

光は体内時計を動かす最強のスイッチです。その「量(照度)」と「質(波長)」、そして「タイミング」を管理することが、シフトワーク対策の核心です。

夜勤中の照明戦略(ライトセラピー)

夜勤前半(〜午前2時):高照度(1,000ルクス以上、理想的には2,500〜10,000ルクス)の白色LED照明で覚醒度とパフォーマンスを維持

*高照度光が夜勤中の覚醒度とパフォーマンスを維持することは科学的に確認されています(文献9)が、具体的な照度レベルには研究によって幅があります。

夜勤後半(午前3時〜):徐々に照度を落とし、暖色系の照明に切り替えてメラトニン分泌を促します。

*一般的には、最低体温時刻(多くの人で午前3〜5時頃)の前後が切り替えの目安となります。
*青色光は夜間のメラトニン産生を抑制しますが、赤色光は抑制しません(文献10)


退勤後の遮光戦略(ダークセラピー)

帰宅時:濃い色のサングラス(ブルーライトカット機能付き)を着用し、朝日を遮断(文献11)

*夜勤後に眠い場合、暗いサングラスは眠気を増加させ、居眠り運転のリスクを高める可能性があります。最も安全な方法は、他の誰かに運転してもらえる場合のみ、夜勤後に暗いサングラスを使用することです。外に出る前にサングラスをかけ、暗い部屋に戻るまで着用し続けてください

寝室:遮光等級1級のカーテン、完全遮光のアイマスクで真っ暗に

*医学的には「できるだけ暗い環境(8ルクス以下)」が推奨されています(文献12)。


時間栄養学

4-3 時間栄養学で解決!夜勤明けの食事おすすめと太らない食べ方

シフトワークを乗り切るためには、光の管理と共に食事のコントロールも欠かせません。「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」が代謝に決定的な影響を与えます(文献13)。

夜食は脂肪蓄積と糖・脂質代謝の障害を引き起こします(文献14)。

夜勤時の食事戦略

1️⃣ 夜勤時でも、できるだけ夜勤前の夕方〜夜にメインの食事を摂る(文献15)
2️⃣ 深夜(特に午前0時〜6時)の食事摂取は最小限にする
3️⃣ 深夜に食事をとる場合は、低カロリー・低脂肪・低GI食品を選ぶ
推奨食品:野菜スープ、無糖ヨーグルト、ナッツ、全粒穀物、果物


夜勤明けに推奨される食事は?

夜勤明けは
✅帰宅後すぐ〜1時間以内に
✅軽め〜普通量の「朝食スタイル」の食事(炭水化物+たんぱく質中心)

*揚げ物・こってりラーメン・甘いスイーツ・アルコールはルーティーンから外す。
*カフェインは「夜勤中の前半」で使い切るイメージで、それ以降は控える。


4-4 夜勤中の仮眠タイミングと「カフェインナップ」の効果

身体の負担を軽減するためにも、上手に仮眠をとることは大切です。

夜勤前:90分程度の予防的仮眠で睡眠の「貯金」を(文献16)

夜勤中(2〜4時):眠気のピークに合わせて20〜30分のパワーナップ(文献17)
⚠️注意:30分超の仮眠は深い睡眠に入り、覚醒後に強い睡眠慣性(ボーッとする状態)が生じるため避ける(文献17)


カフェインの利用法

徹夜のためにコンビニでカフェインドリンクを買って飲んだ経験がある方もいらっしゃるでしょう。カフェインをうまく活用すれば、眠気を抑えることができます。

1 )カフェインナップ

200mgのカフェイン(約350mlのコーヒー1杯、またはエスプレッソ2ショットに相当)を摂取した直後に20分仮眠を取ると、仮眠後1時間を通じて注意力と主観的疲労が有意に改善することが実証されています(文献18)。ただし、就寝予定の8時間以内には行わないでください。

2)少量・頻回摂取

☑️シフト開始時から使用開始
☑️就寝予定の4〜6時間前に停止
☑️「少量を頻繁に」(1〜2時間ごとに50mg程度)
☑️1日上限300〜400mg(文献19)


5 まとめ:夜勤の健康被害を防ぎ、自分を守る戦略を

シフトワークは、私たちの遺伝子に刻まれた体内時計に逆らう過酷な働き方です。しかし、医療や介護、インフラを支える現場において、夜勤はなくてはならないものです。

だからこそ、精神論で乗り切るのではなく、「時間医学」という科学の力を借りてください。

今回ご紹介した対策は、決して難しいことではありません。ポイントは「光」と「食事」のコントロールです。それにより体内時計をうまく調整することで、生活習慣病や発がんリスク、そして疲労感を軽減できる可能性があります。

冒頭でお話しした看護師のお客様に、当時の私は何も言えませんでした。しかし今の私なら、こうお伝えします。

「患者様を守るのと同じくらい、ご自身の体も大切に守ってください。そのための具体的な方法が、ここにあります」と。

この記事が、昼夜を問わず社会のために働く皆様の、健やかな毎日のヒントになれば幸いです。





シフトワークに負けない肌を作る!

 

 


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【参考文献】

1 Shift work and vascular events: systematic review and meta-analysis
Manav V Vyas, et al.
BMJ
2012 Jul 26:345:e4800

2 Association between night shift work and the risk of type 2 diabetes mellitus: a cohort-based meta-analysis
Fei Xie, et al.
BMC Endocr Disord
2024 Dec 18;24:268

3 Shift Work and Poor Mental Health: A Meta-Analysis of Longitudinal Studies
Luciana Torquati, et al.
Am J Public Health
2019 Nov;109(11):e13-e20

4 International Agency for Research on Cancer. (2020, June 2). IARC Monographs Volume 124: Night Shift Work. https://www.iarc.who.int/news-events/iarc-monographs-volume-124-night-shift-work/

5 Comparison of Sleep and Attention Metrics Among Nurses Working Shifts on a Forward- vs Backward-Rotating Schedule
Marco Di Muzio, et al.
JAMA Netw Open
2021 Oct 1;4(10):e2129906

6 Directive 2003/88/EC concerning certain aspects of the organisation of Working Timehttps://employment-social-affairs.ec.europa.eu/policies-and-activities/rights-work/labour-law/working-conditions/working-time-directive_en

7 Modeling the Impact of the Components of Long Work Hours on Injuries and ''Accidents''
Simon Folkard, David A Lombardi
Am J Ind Med
2006 Nov;49(11):953-63

8 Systematic review of the relationship between quick returns in rotating shift work and health-related outcomes
Øystein Vedaa, et al.
Ergonomics
2016;59(1):1-14

9 Working Time Society consensus statements: Evidence based interventions using light to improve circadian adaptation to working hours
Arne Lowden, et al.
Ind Health
2019 Apr 1;57(2):213-227

10 Lighting Interventions to Reduce Circadian Disruption in Rotating Shift Workers.
Mariana G. Figueiro, David Pedler
NIOSH Science Blog. 2020-12-18.
https://blogs.cdc.gov/niosh-science-blog/2020/12/18/lighting-shift-work/
(参照 2025-12-08)

11 The Effectiveness of Light/Dark Exposure to Treat Insomnia in Female Nurses Undertaking Shift Work during the Evening/Night Shift
Li-Bi Huang, et al.
J Clin Sleep Med
2013 Jul 15;9(7):641-6

12 米国国立労働安全衛生研究所 (NIOSH). "Improve Sleep by Avoiding Light (Module 6)." NIOSH Training for Nurses on Shift Work and Long Work Hours. CDC, 2020年3月31日更新https://www.cdc.gov/niosh/work-hour-training-for-nurses/longhours/mod6/07.html
(参照 2025-12-08)

13 Daytime eating prevents internal circadian misalignment and glucose intolerance in night work
Sarah L Chellappa, et al.
Sci Adv
2021 Dec 3;7(49):eabg9910

14 Association of night eating habits with metabolic syndrome and its components: a longitudinal study
Junko Yoshida, et al.
BMC Public Health
2018 Dec 11;18(1):1366

15 交代制勤務者の食生活に関する留意点
健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~
厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-04-004
(参照 2025-12-08)

16 UCLA Health. "Coping with Shift Work Sleep Disorder". Sleep Medicine.https://www.uclahealth.org/medical-services/sleep-medicine/patient-resources/patient-education/coping-with-shift-work
(参照 2025-12-08)

17 Can a quick snooze help with energy and focus?
Restivo, J. (2024, December 4).
The science behind power naps (S. Javaheri, Rev.)
Harvard Health Publishing
https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/can-a-quick-snooze-help-with-energy-and-focus-the-science-behind-power-naps
(参照 2025-12-08)

18 The alerting effects of caffeine, bright light and face washing after a short daytime nap
Mitsuo Hayashi, et al.
Clin Neurophysiol
2003 Dec;114(12):2268-78

19 "Sleep and Caffeine." Sleep Education
American Academy of Sleep Medicine.
https://sleepeducation.org/sleep-caffeine/
2018年1月29日更新
(参照 2025-12-08)

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月9日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.12.02更新

はじめに

医療による処置のことを、日本語では昔から「手当て」と言います。

薬や高度な医療機器がなかった時代から、人は痛む場所や患部に「手を当てる」ことで、苦痛や不安が和らぐことを本能的に知っていたのでしょう。

今回は、 手という「愛」を伝える最高の医療器具について、少し科学的な視点からお話ししたいと思います。


大切な人に「愛」を伝える方法


皮膚は「第2の脳」。癒やしのスイッチ「C触覚線維」とは

受精卵がお母さんのお腹の中で成長していくとき、皮膚と脳は「外胚葉(がいはいよう)」という同じ細胞層から生まれます。つまり、皮膚と脳は兄弟のような関係であり、生物学的に「皮膚は露出した脳である」とも言われます。

私たちの皮膚には、痛みや温度を感じるセンサーとは別に、「優しく触れられることを専門に感知するセンサー」が存在することをご存知でしょうか?

それがC触覚線維(シーしょっかくせんい)と呼ばれる特殊な神経です。

このセンサーは、ただ触れるだけでは反応しません。スイッチが入る条件はとても繊細です。

⭐️柔らかいタッチであること(文献1)
⭐️毎秒1〜10cm程度の、ゆっくりとした速度であること(文献1)

例えば、泣いている赤ちゃんの背中をさするときや、愛しい人の頭を撫でるとき、私たちは無意識にこの「ゆっくりとした速度」になっていないでしょうか?

この条件で肌に触れられると、その信号は、通常の触覚とは異なる特別な経路を通って、情動を処理する脳の領域へ届き、深い幸福感や安心感がもたらされるのです。(文献2)。


オキシトシンは「愛情」ホルモン

C触覚線維というスイッチが入ると、脳内では「オキシトシン」というホルモンが分泌されます(文献3)。

オキシトシンは別名「愛情ホルモン」とも呼ばれ、ストレスを軽減し、情緒を安定させるために非常に重要な役割を果たします(文献4)。

現代社会で私たちは日々、多くのストレスにさらされ、知らず知らずのうちに「コルチゾール」というストレスホルモンが過剰になっています。 しかし、大切な人と触れ合い、オキシトシンが分泌されると、このコルチゾールの働きが抑えられることが医学的にわかっています(文献5)。

誰かに背中をさすってもらうだけで、張り詰めていた気が緩んで涙が出たり、肩の荷が降りたように感じたりするのは、決して気のせいではありません。「触れる」という行為そのものが、脳に対する抗ストレス薬のような働きをしてくれるのです。

年齢を重ねても衰えない「触れ合い」の感覚

医師として、私が特に感動を覚える人体の不思議があります。

それは、視力や聴力が加齢とともに低下していくのに対し、この「C触覚線維」の感度は、高齢になっても衰えにくいという研究結果があることです(文献6)。

さらに、年齢とともに皮膚に対する柔らかいタッチへの反応性が高まる(より心地よく感じられるようになる)とも報告されています(文献6)。

目が悪くなっても、耳が遠くなっても、「優しく触れられる心地よさ」や、それによって「愛されていると感じる能力」は、最期まで失われないと言えるでしょう。

これは、人間が社会的な生き物として、人生を通じて「他者との温かいつながり」を必要としているから……神様が私たちの身体をそのようにプログラムしたのではないか、とさえ思えます。


大切な人へ、言葉を超えた「手当て」を

ご家族やパートナーが、言葉によるコミュニケーションが難しい状況に——例えば、認知症が進んでしまったり、病気で会話がままならなくなったりすることもあるかもしれません。

そんな時、「言葉が届かないから」と諦めないでください。

ゆっくり背中をさする・・手を握って、じっと温かさを伝える・・その毎秒数センチの優しいタッチ(医学的に最適は毎秒3センチ)は、C触覚線維を通じて、言葉よりも確実なメッセージとして相手の脳に届いています。あなたが伝えたい「愛」や「感謝」の気持ちは、間違いなく伝わっています。


まとめ

私たちは医師として、薬を処方したり手術をしたりすることはできますが、ご家庭の中で皆様が大切な人にできる「手当て」の効果には及ばないと感じることも数多く経験しています。

マッサージの特別な技術は必要ありません。 ただ、あなたの想いを込めて、ゆっくりと手を当ててさすってあげましょう。


高齢者の肌を守る!

 


関連サイト

 

【参考文献】

1 CT afferents
Morrison I
Curr Biol
2012 Feb 7;22(3):R77-8

2 C-tactile afferent stimulating touch carries a positive affective value
R Pawling, et al.
PloS one
2017: e0173457

3 C-tactile afferents: Cutaneous mediators of oxytocin release during affiliative tactile interactions?Susannah C Walker, et al.
Neuropeptides
2017 Aug:64:27-38

4 Oxytocin: The love hormone
Harvard Health Publishing
Harvard Medical School, 2025.

5 The Yin and Yang of the oxytocin and stress systems: opposites, yet interdependent and intertwined determinants of lifelong health trajectories
Kerstin Uvnäs-Moberg, et al.
Front Endocrinol
2024 Apr 16:15:1272270

6 Evaluation of Affective Touch: A Comparison Between Two Groups of Younger and Older Females
Carina Schlintl, Anne Schienle
Exp Aging Res
2024 Oct-Dec;50(5):568-576


 


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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月3日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥