はじめに
人と話すとき、相手の目を見ますか?それとも少し視線をそらしますか?
実は「アイコンタクト」の取り方は、国や文化によって大きく異なります。最新の脳科学研究により、目と目を合わせることが私たちの脳に与える驚くべき影響も明らかになってきました。
アイコンタクトで脳がシンクロする!?
最新の研究で、とても興味深いことが分かってきました。fMRI(機能的磁気共鳴画像)という装置を使った実験では、相手の目を見つめているとき、脳の特定の部分が活発に働くことが確認されています(文献1)。
さらに驚くべきことに、二人がアイコンタクトをしているとき、お互いの脳波が同じリズムで動き始めるのです。まるで二人の脳が会話をしているかのように、同じパターンで活動することが分かりました(文献2)。
つまり、目と目を合わせることは、単に「見る」だけではなく、相手と深くつながる特別な行為なのです。
西洋では「しっかり目を見て」
アメリカやヨーロッパでは、相手の目をしっかり見ることが大切にされています。
◉信頼の証:目を見て話す人は誠実で信頼できると思われます
◉自信の表れ:ビジネスシーンでも積極的なアイコンタクトが評価されます
◉魅力度アップ:研究では、適度なアイコンタクトをする人の方が魅力的に見えるという結果も(文献3)
これらの特徴は、個人の意見や感情を重視する「個人主義的」な文化と深く関わっています。
東アジアでは「控えめに」
一方、日本や中国などでは、アイコンタクトの取り方がまったく違います。
◉礼儀として:目をじっと見つめることは失礼とされることがあります
◉上下関係:特に目上の人には、視線を少しそらすのがマナー
◉日本人はアイコンタクトをとられると、「近づきがたい」「怒っている」と感じやすい(文献4)
この違いは、集団の調和を大切にする文化的背景から生まれています。
中東・アフリカの独特なルール
中東やアフリカの一部では、さらに複雑なルールがあります。
◉同性同士:長めのアイコンタクトが友情や尊敬を表すことも
◉異性間:宗教的・文化的な理由から、視線を合わせないことがマナーの場合も
◉地位による違い:社会的立場によってアイコンタクトの取り方が変わります
文化の違いを理解することの大切さ
グローバル化が進む現代では、異なる文化背景を持つ人々と接する機会が増えています。
アイコンタクトの文化的な違いを理解することで:
◎誤解を防ぐことができます
◎より良い人間関係を築けます
◎相手の文化への敬意を示せます
まとめ
⚪️アイコンタクトは、文化によって「正解」が異なる奥深いコミュニケーション方法です。
⚪️科学的研究により、目と目を合わせることが脳レベルで人と人をつなぐ特別な行為であることが証明されました。同時に、その表現方法は文化によって多様であることも分かっています。
⚪️大切なのは、相手の文化的背景を理解し、尊重しながらコミュニケーションを取ること。この理解があってこそ、真の意味での「目と目で通じ合う」関係が築けるのではないでしょうか。
【参考文献】
1) Neural mechanisms of eye contact when listening to another person talking
Jing Jiang, et al.
Soc Cogn Affect Neurosci
2017;12(2):319-328
2) Real-Time Eye-to-Eye Contact Is Associated With Cross-Brain Neural Synchronization in Angular Gyrus
J Adam Noah, et al.
Front Hum Neurosci
2020:14:19
3) Predictive gaze cues and personality judgments: Should eye trust you?
Andrew P Bayliss, Steven P Tipper
Psychol Sci
2006;17(6):514-20
4) 日本人はアイコンタクトをとられると「近づきがたい」と感じる―より円滑な異文化コミュニケーションに向けて―
東京大学PRESS RELEASES
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/p01_250314.html
アイコンタクトのための治療
制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年8月3日)