はじめに
首の横ジワは「年齢が出るサイン」と思われがちですが、実は20代でも一定割合で見られ、30代以降では多くの人に目立ってきます。
つまり首の横ジワは、“老化だけ”で片づけにくい変化です。
近年はスマホ姿勢による“Tech Neck”が注目されていますが、もう一つ見落とされやすいのが「睡眠習慣」。
寝ている間は姿勢を直しにくく、同じ首の角度が長時間続くことがあります。もし枕や寝姿勢で首が折れた状態が毎晩続けば、日中以上に“同じ折れ線”が固定される可能性も。
この記事では医学的に言える範囲を押さえつつ、原因の整理と、今日からできる現実的なケア(姿勢・紫外線・保湿・睡眠)をわかりやすくまとめます。
首の横ジワは“いつから”目立つ?──20代でも珍しくない
首の横ジワは、必ずしも「50代から急に出る」ものではありません。
医学文献では、20代でも半数程度に横ジワが見られ、30代ではほとんどの人に確認されるといった報告もあります(文献1)。
ここで大切なのは、横ジワを見つけた瞬間に「もう老けた」と結論づけないこと。首は顔よりケアが後回しになりやすく、さらに姿勢・紫外線・乾燥・寝方など複数の条件が重なって“折れ線”が定着しやすい部位です。
だからこそ、早い段階から“予防の積み上げ”を始める価値があります。
原因は単独では決め打ちできない

結論から言うと、「首の横ジワの原因はこれ」と単独犯のように断定できる研究はありません。現時点では、いくつかの要因が複合的に関与すると考えるのが自然です。
・内在性加齢と皮膚構造:コラーゲンや弾性線維の変化、皮膚の薄さ、乾燥しやすさなど
・反復する首の動き:同じ場所が何度も折れることで線が残りやすい
・紫外線:光老化の影響が首にも蓄積する
・生活習慣:喫煙、栄養、環境ストレスなど
・解剖学的・遺伝的要因:皮下脂肪のつき方、皮膚の厚み、局所の支持構造など
ポイントは「原因探し」より「積み上げを減らす」こと。首の横ジワは、生活の中で“折れやすい条件”が重なるほど目立ちやすくなる、と理解すると対策が組み立てやすくなります。
現代要因:Tech Neckを“ちゃんと”語る

Tech Neckは、スマホやPCをのぞき込む姿勢が続くことで首が前屈し、皮膚に同じ折れが入りやすくなる—という文脈で語られます。
大事なのは、これを都市伝説にも絶対原因にもせず、「起こりやすい条件」として扱うことです。
まず“頑張り方”を変えましょう。おすすめは、気合いで正すより「環境を整える」ことです。
①スマホの位置を少し上げる(胸の前→鼻の前へ)
②同じ角度を固定しない(30〜60分に1回、首を起こすだけでOK)
③PC環境を整える(画面を上げ、手元を下げる)
「ずっと正しい姿勢」を目指すより、うつむく時間を“こまめに途切れさせる”。それだけでも続けやすい対策です。
仮説:横ジワは“睡眠習慣”の影響がTech Neckを上回る可能性
ここは断定ではなく仮説です。首の横ジワと睡眠習慣の関係を直接証明した強いエビデンスはありません。
ただ臨床的に見落とされがちで、理屈として筋が通る点があります。
理由は3つ。
①睡眠は毎日6〜8時間と“時間が長い”。
②寝ている間は無意識で“修正が難しい”。
③人によっては同じ姿勢が続きやすい。
もし枕の高さや寝姿勢で首が折れた角度が長く続けば、日中のうつむき以上に“同じ折れ線”が固定される可能性があります。
チェックしたいのは次の条件です。
✅枕が高すぎて顎が胸側に寄りやすい
✅横向きで首が下に落ち、前面がねじれる
✅うつ伏せで首のねじれが強い(気になる人は頻度を減らすのも一案)
✅冬の乾燥や寝具の摩擦で折れ線が強調されやすい
枕選びは「高さの正解」探しではなく、「首も下から支えて折れにくい時間を増やす」方向で考えるのが現実的です。
睡眠習慣セルフチェック(30秒)
✅朝起きた時、首の前面に“くっきりした折れ跡”がある
✅起床時に顎が引けて首がつらい/肩がこる
✅仰向けより横向きが多いのに、枕の高さを変えたことがない
当てはまる場合は、いきなり買い替えより「タオルで微調整」がおすすめです。
枕の下に薄いタオルを1枚ずつ足し引きして、
①顎が上がりすぎない、
②首の下がすき間なく支えられる、
③横向きで首が下に落ちない
—この3点がラクに保てる範囲を探します。痛みやしびれが出る調整は中止してください。
まとめ
首の横ジワは加齢だけでは語れません。日中のTech Neckに加え、夜の睡眠習慣も“折れ線の固定”という観点では重要な可能性があります。
まずは紫外線と保湿、次に姿勢と睡眠。できることから積み上げていきましょう。
(文献1)
Characteristic features of neck skin aging in Chinese women
Xiaoyuan Xie, et al.
J Cosmet Dermatol
2018 Oct;17(5):935-944
首のシワに対する施術
首のスキンケア

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月15日)





