2022.09.14更新

ついに決着!日焼け止め30分前説


前回の記事でご紹介した、「日焼け止めは外に出る30分前に塗るべき!」というネットニュースと、それに対する「すぐに効果があるはず!」というTwitterでの反論。実は米国皮膚科学会など、世界的権威のある団体も「15〜30分前に塗るべき」と推奨しています。しかし、その根拠や背景がよくわからないことから、多くの人が「日焼け止め 30分前」説をめぐって混乱しているのが現状です。今回は、この「日焼け止め 30分前」は本当なのか嘘なのか、なぜそう言われるのか、その理由を探った結果をわかりやすくまとめてみました。


【30分前説に異議あり?SNSから巻き起こった議論】

以前のブログ記事でも触れましたが、SNS上では「日焼け止めは30分前に塗らなくても、塗った瞬間から効果があるはず」という声が大多数でした。「日焼け止め 30分前 嘘」というキーワードが拡散されるほどで、実際、多くの化粧品メーカーも「塗ったらすぐに有効」と回答しています。

しかし一方で、米国皮膚科学会をはじめ、WHO(世界保健機関)やいくつもの一流医学誌、さらにはカナダ皮膚科学会の公式ジャーナルも「日焼け止めは日光を浴びる15分前~30分前に塗ることを推奨」と明示。こうした権威ある機関がそろって「15分~30分前説」を唱える理由はいったい何なのでしょうか? 


【「日焼け止め 30分前」説が生まれた理由】

調べを進めていくと、根底には「SPFなど日焼け止めの効果を測定する際の試験条件」があることがわかりました。日焼け止めは、肌に塗った直後から紫外線を反射・吸収しそうに思えますが、国際的な試験プロトコルでは、水分の影響や肌への定着などのばらつきを排除するため、日焼け止めを塗ってから一定時間(15分~30分)おいて測定を開始します。

つまり、測定条件として“塗布後15分~30分経過”が前提になっているため、権威ある学会は「証明されている使用方法」=「日焼け止めを塗ってから15~30分後に効果が発揮される」と表記せざるを得ないのです。それこそが、「日焼け止め 30分前」説が世界中で使われている背景・理由だといえます。


【「日焼け止め 30分前」は嘘?それとも正解?】

では、実際には「日焼け止め 30分前」は本当に嘘なのでしょうか? カナダ皮膚科学会の公式ジャーナルでは、日焼け止めを塗布するタイミングについて、次のように説明しています。

(15分~30分前に塗るべきという)推奨を支持するエビデンスはまったくない(a complete lack of evidence)。
実際には、日光を浴びる直前に塗っても問題なく、ただし水に濡れる場合は15~30分前に塗ったほうが望ましい

ここからわかる通り、「日焼け止め 30分前 なぜ?」という問いに対しては、「試験条件と実生活は少し異なる」というのが結論のひとつ。測定上は15~30分待つことが前提ですが、現実には塗布直後からある程度の効果を期待できるので、「日焼け止め 30分前 嘘」という見方もあながち間違いではないのです。


【実際の生活ではどうすればいいの?】

1. 外出直前でも塗らないよりはずっとよい
たとえ出かけるギリギリに塗ったとしても、日焼け止めは確実に紫外線をブロックしてくれます。塗らないよりは塗るほうが圧倒的に効果的です。

2. 水に濡れる予定があるなら早めがおすすめ
プールや海水浴などで水に入る直前の塗布は、まだ肌に定着していない分流れ落ちやすくなります。水分の影響を考慮して、15~30分前に塗っておくと安心です。

3. 塗り直しが大切
どんなにSPFが高くても、時間や汗、水などで落ちてしまうことがあります。屋外では適度に塗り直して、常にしっかりとしたカバー力をキープしましょう。


【まとめ:30分前推奨に振り回されず、賢く使おう】

結局、日焼け止めを30分前に塗ることを勧める理由は、日焼け止めの効果を測定する際の国際的ルールに基づいていることが最大の根拠でした。

しかし「塗った直後にはまったく効かない」というわけではなく、直前に塗っても十分に効果は期待できるというのが実用的な見解です。世界的権威はあくまでも「証明されている手順」を推奨する立場なので、実生活とは少しズレが生じてしまうのですね。

これからも「日焼け止めは外に出る30分前に塗るべき!」というニュースを見かけるかもしれませんが、理由を知った今なら、必要以上に神経質になることはないでしょう。大事なのは、外出のタイミングやシーンに応じて賢く塗ること。あなたの肌を守る最適な方法で、今年も紫外線対策をしっかり行ってください。


【参考文献】
Sunscreen application, safety, and sun protection: the evidence
Li H, et al.
Journal of Cutaneous Medicine and Surgery 2019;23(4):357-369


How to apply sunscreen
米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology)公式サイト
https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen

 

 

関連ブログもお楽しみ下さい

 

 

 この記事以外の人気記事ベスト5

 LINEバナー300225

 

バナー1

 

バナー2

 

 

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月4日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.09.06更新


30分前に塗る?日焼け止め

■Twitterから
最近、Twitterで議論を呼んだのが、ネットに出た「日焼け止めは、外に出る30分前に塗るべき」という記事。批判の嵐が巻き起こり、中にはメーカー各社に確認を取る方もいて、結局、質問した10社ほどのすべてが、「塗ればすぐに有効」と返答したとか。

こんな都市伝説まだ生き残っていたのか!という意見もあったから、以前からときおり蒸し返される問題なのでしょう。今回は、少なくともTwitter上では「即効説」の圧勝となり、「30分前説」は瞬殺された格好。


■米国皮膚科学会は「15分前説」
確かに塗った瞬間から肌に到達する紫外線を反射、吸収するはずだから、「即効説」が当然に思えるのですが、ちょっと引っかかる点があります。

実は、米国皮膚科学会は日焼け止めの使い方について「15分前説」をとっているのです。これが単なる医師の利益を死守するためだけの日本の医学会ならともかく、国民に正確な医療情報を提供することを使命とする米国の医学会の言っていることとなると無視しにくい。

米国皮膚科学会の看板を背負って、見え透いたウソ情報を流すとはとても思えないのです。しかも学会サイトに掲載されているから、世界中の人が見ていて、間違いはすぐに指摘され訂正されるはず。そうなってないということは、それ相当の根拠があるに違いありません


■もしかしたら・・
「即効説」だろうが、「15分前説」だとうが、たとえ「30分前説」だろうが、現実にはメイクの手順や外出の準備を考えれば、日焼け止めを塗ってから、実際に外に出て日光を浴びるまでには時間もかかるだろうから、大きな違いはないでしょうが、何とも人騒がせな問題です。

もしかしたら・・日焼け止めが市場に出回りだした頃に、「日焼け止めは塗ってから何分で有効になるのか?」というような形で議論になっていたのかも。時間とともにそうした議論の存在すら忘れ去られてしまったのかもしれません。

もしかしたら・・「30分前説」は、日本人らしい奥ゆかしさから「15分説」を倍にして、より安全確実にしたものかもしれません。

もしかしたら・・長年、化粧品とくに日焼け止めの研究開発に携わっている方にお聞きしたら即答していただけることなのかもしれません。


(参考文献)
1) How to apply sunscreen(米国皮膚科学会サイト)
https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen

 

 

 LINEバナー300225

 

 twitterへ

 

自由が丘ブログバナー  

 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.09.01更新

 

室内で必要? 日焼け止め

 

室内で過ごすときも、肌の老化や皮膚がんのリスクを考えて「日焼け止めは必要なのか?」と疑問に思う方は少なくありません。インターネットやメディアでも「室内でも紫外線を浴びるから日焼け止めを塗ったほうがいい」という情報が多く見られます。では、本当に「日焼け止めは室内でも必要」なのでしょうか?室内用に肌に優しい日焼け止めを探す前にお読み下さい。


日光、特に紫外線について

日光に含まれる紫外線は、大きくUVA(波長320~400nm)とUVB(波長280~320nm)に分けられます。UVBは主に表皮に作用し、日焼けや皮膚がんの原因になる強いエネルギーを持っています。炎症や赤みを引き起こしやすい特徴があります。一方、UVAは波長が長く、真皮にまで到達してコラーゲンやエラスチンを損傷し、皮膚の弾力低下やしわ、たるみなどの「光老化」を進める原因になります。

注目すべきは、UVAの多くは窓ガラスを透過し、室内にいても皮膚に到達する可能性がある点です。


窓ガラスはどれくらい紫外線を通すのか?

私たちが日常的に使用している建築用のガラスでは、UVBのほとんどはカットできます。しかし、古い単板ガラスや一般的な複層ガラスの住宅ではUVAの透過率は50%を超えます。

最近普及している高機能ガラスではUVA透過率が低下し、防犯対策に用いられる合わせガラスでは、UVAもほぼ遮断できます。しかし、いずれの場合も完全にゼロにはならないため、「室内だから安全」とは一概に言えません。そのため「日焼け止めは室内でもおすすめ」といった情報がよく見られますが、この問題はもう少し詳細に検討する必要があります。


窓からの距離と紫外線量の関係

見落とされがちな重要な要素は「窓からの距離」です。

紫外線は窓際に近いほど多く浴びることになりますが、窓から1メートル以上離れるだけでも、その量は急激に減少することが研究でわかっています。「日焼け止めは室内でも必要」という結論に飛びつく前に、まずは自分の行動パターンを確認することが大切です。


車内と室内は同じ状況ではない

有名な例として、トラックドライバーの顔の片側だけが著しく光老化している写真があります。これはガラスがあってもUVケアにならない例としてしばしば取り上げられます。しかし、車内と一般的な室内環境を同一視するのは適切ではありません。

車内は、ガラスと人の位置が数十センチの距離に固定されている特殊な状況です。それに対し一般的な室内生活で窓ガラスに長時間密着して過ごす人はほとんどいないでしょう。 したがって、トラックドライバーのような状態が、そのまま「室内の日常生活」で起こる可能性は低いと考えられます。


世界の専門機関の見解

米国皮膚科学会(AAD)の公式サイトでは、「日焼け止めは毎日使いましょう」と推奨していますが、それはあくまで「外出前に塗る」ことを指しています。さらに、オーストラリアがん協議会(Cancer Council Australia)や英国皮膚科学会(BAD)などは、「室内にいる場合は日焼け止めは不要である」と明確に示しています。

総合的なリサーチを行っても、「日焼け止めは室内でも積極的に塗るべき」と推奨している国際的な専門機関は見当たりません。 結論として、世界的なスタンダードは「屋外活動時に日焼け止めをしっかり塗る」ことであり、室内で過ごす場合にまで塗るのは過剰と言えるかもしれません。


日焼け止めを塗るデメリットも考慮しよう

「室内でも日焼け止めは必要か?」を考えるうえで、日焼け止めを塗るデメリットにも注目する必要があります。日焼け止めは肌への刺激やアレルギー反応を引き起こす可能性があります。また、室内にいるときも日焼け止めを塗ったり、塗り直したりすればコストや手間もかかります。 したがって、日焼け止めの使用は、「リスク(デメリット)とベネフィット」を天秤にかけて判断することが重要です。


まとめ~室内で日焼け止めが推奨されるケース

以上を踏まえると、一般的な室内生活では必ずしも「日焼け止めは室内でも必要」とは言い切れません。しかし、以下のような状況に当てはまる方には、室内で過ごす際も日焼け止めの使用が勧められます。

1 窓のすぐそば(1メートル以内)で毎日長時間(合計数時間以上)過ごす習慣がある方
◦ 特に使用している窓ガラスのUVカット性能が不明、あるいは古い単板ガラスなどが使われている場合

2 皮膚の色が白い(Fitzpatrick I–II型)方、皮膚がんの既往歴や家族歴がある方
◦ 皮膚がんのリスクが高い人では、日常的にUVAケアを意識したほうが安心です


追加:日焼け止め以外の対策も有効

室内での紫外線対策は、日焼け止めだけに頼る必要はありません。たとえば、次のような方法も効果的です。

窓から離れた場所で過ごす
◦ デスクやソファの位置を少し窓から離すだけでも、紫外線量は大幅に減少します

UVカットフィルムを貼る
◦ 窓ガラスに後付けで貼れるUVカットフィルムがあります。比較的安価で手軽に導入できるため、「室内でも日焼け止めは必要?」と悩む前に検討する価値があります

カーテンやブラインドの活用
◦ 日差しが強い時間帯だけ閉めるなど、窓からの紫外線を遮断できます

衣類で肌を覆う
◦ 長袖のシャツやUPF(紫外線保護指数)表示のある衣類を着用することで、肌への直接的な紫外線曝露を抑えられます

 

 

(参考文献)

1) How to apply sunscreen
https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen

2) Photoprotetion: clothing and glass
Almutawa F, et al.
Dermatol Clin.
2014;32(3):439-448

3) Photoprotection by window glass, automobile glass, and sunglasses
Tuchinda C, et al.
J Am Acad Dermatol.
2006;54(5):845-854

4) The role of glasses as a barrier against the transmission of ultraviolet radiation: an experimental study
Duarte I, et al.
Photoimmunol Photomed.
2009;25(4):181-184

5) Visible light Part II: Photoprotection against visible and ultraviolet light
Geisler AN, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1233-1244


 

 

 

 この記事以外の人気記事ベスト5

 LINEバナー300225

 

バナー1

 

バナー2

 

 

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月5日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥