
夏になると決まってネットに「日焼け止めは、外に出る30分前に塗るべき」というネット記事が流れ、ときにはX(旧Twitter)で議論を巻き起こします。
先日もネット記事にX上で批判の嵐が巻き起こり、中にはメーカー各社に確認を取る方も現れて、結局、質問した10社ほどのすべて
「塗ればすぐに有効」と返答したと投稿されていました。そのときXでは「即効説」の圧勝となり、「30分前説」は瞬殺されました。
確かに塗った瞬間から肌に到達する紫外線を反射・吸収するはずですから、「即効説」が当然に思えます。しかし医師としては、「即効説」を声高に叫ぶのはちょっと気が引けるのです。
日焼け止めを塗るタイミングは「30分前」が正解?ネットの議論を検証
ネット上では「日焼け止めは塗ってすぐ効く」という主張と、「30分前に塗らないと意味がない」という主張が対立しています。化粧品メーカー各社への問い合わせ結果を見る限り、業界の見解は「塗布直後から効果がある」で一致しているようです。
では、なぜ「30分前説」がこれほど広まっているのでしょうか。実はこの説、単なる都市伝説ではなく、れっきとした国際機関の推奨に基づいているのです。
なぜWHOや医学文献は「15~30分前」を推奨するのか
「即効説」に気が引ける理由は、外出時の日焼け止めを塗るタイミングとして、米国皮膚科学会は15分前(文献1)、WHO(世界保健機関)は20〜30分前(文献2)を推奨しているからです。普段目にする医学文献でもほとんどが、外出の15〜30分前に塗るようにと書かれています。
「なぜ外出の15〜30分前でなければならないのか?」——この疑問に答えるため、私は基礎的な日焼け止めの文献を手当たり次第に読むことにしました。最も愚直で遠回りに思えましたが、案外あっけなく答えを見つけることができました。
教えてくれたのは、カナダ皮膚科学会の公式ジャーナルでした。そこには「日焼け止めの試験方法に基づいて、日光を浴びる15~30分前に露出部位に日焼け止めを塗るべきと言われるが、この使用法を支持する証拠は完全に欠如している」と明確に述べられていました(文献3)。
つまり、世界の権威ある機関が「15〜30分前説」を取る理由は、国際的な試験プロトコルにあったのです。日焼け止めの効果を測定する際、水分の影響や肌への定着などのばらつきを排除するため、塗布後一定時間(15分~30分)を置いてから測定を開始することになっています。
公式には日焼け止めを塗ってすぐに効果を発揮することは「証明されていない」——あくまで一定時間を置いた後の効果が「証明されている」だけ。それが「日焼け止め15〜30分前」説の本当の理由なのです。
医学的根拠が示す真実:日焼け止めは直前でも効果がある
同じ文献に、「即効説」を裏付ける根拠も示されています。UV写真技術を用いて、日焼け止めが実際にいつから保護効果を発揮するかを視覚的に評価した研究によれば、日焼け止めの保護効果は塗布直後から始まり、その効果は最長でも10分後には最適化されることが実証されました(文献4)。
現代の医学的コンセンサスとしては、日焼け止めは塗布直後から効果があり、水に入る場合を除いて15〜30分待つ必要はないというのが最新の見解と言えるでしょう。
世界的権威はあくまでも「試験で証明された効果」を推奨する立場を取ります。そのため、実生活での使い方とは少しズレが生じているのです。
外出直前や水に入る時など、シーン別日焼け止めの正しい使い方
では、実際の生活ではどうすればよいのでしょうか。シーン別にポイントをお伝えします。
外出直前でも塗らないよりはずっとよい
たとえ出かけるギリギリに塗ったとしても、日焼け止めは確実に紫外線をブロックしてくれます。「30分前に塗れなかったから今日は諦めよう」と考える必要はありません。塗らないよりは塗るほうが圧倒的に効果的です。
水に濡れる予定があるなら早めに塗る
プールや海水浴など水に入る直前の塗布は、まだ肌に定着していない分、流れ落ちやすくなります。その場合は少なくとも10分前に塗っておくと安心です。ウォータープルーフタイプでも、肌になじませる時間を確保したほうが効果を発揮しやすくなります。
こまめな塗り直しを心がける
どんなにSPFが高くても、時間の経過や汗、水などで落ちてしまうことがあります。屋外で長時間過ごす場合は2〜3時間おきを目安に塗り直して、しっかりとした保護効果をキープしましょう。
まとめ
✅日焼け止めを30分前に塗ることを推奨する理由は、日焼け止めの効果を測定する際の国際的ルール(試験プロトコル)に基づいていることが最大の根拠でした。「塗った直後にはまったく効かない」というわけではなく、外出直前に塗っても十分に効果は期待できます。
✅これからも「日焼け止めは外に出る30分前に塗るべき!」というニュースを見かけるかもしれませんが、その理由を知った今なら、必要以上に神経質になることはないでしょう。
✅大事なのは、外出のタイミングやシーンに応じて賢く塗ること。あなたの肌を守る最適な方法で、今年も紫外線対策をしっかり行ってください。
当院では、肌への負担を抑えつつ高い遮光効果を持つ医療機関専売の日焼け止めを取り扱っています。市販品で肌荒れしてしまう方や、より確実な対策をしたい方はぜひご相談ください。
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+αのアドバイス:紫外線を浴びてしまったら 日焼け止めで防ぎきれなかった紫外線ダメージには、抗酸化作用のあるビタミンCでのケアが有効です。塗るタイミングと合わせて、日々のスキンケアも見直してみましょう。
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【参考文献】
1) How to apply sunscreen(米国皮膚科学会サイト)https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen
2) 世界保健機関 (WHO). “Radiation: Protecting against skin cancer”. 2024-07-16.
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/radiation-protecting-against-skin-cancer
(参照 2026-01-08)
3) Sunscreen application, safety, and sun protection: the evidence
Heidi Li, et al.
J Cutan Med Surg
2019;23(4):357-369
4) Time required for a standard sunscreen to become effective following application: a UV photography study
M V de Gálvez, et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol
2018 Apr;32(4):e123-e124
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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月9日)





