2022.04.27更新

診療をしていて、ときどきレチノイドはコスメの「食わず嫌い王」なのか!と嘆きたくなることがあります。

レチノイドをすすめても、「私、アレ無理です!」と何度即答されたことか。世間のレチノイドの印象は、「肌が乾燥する」、「荒れる」、「皮むけして使えない」とさんざん。

さらに悪いことに、日本を含め世界的に敏感肌を訴える方が増加しています。レチノイドにとって逆風が吹き荒れているのです。敏感肌、乾燥肌の人に刺激的なレチノイドが使えるわけがない!、そうした罵声、悲鳴が聞こえてくるようです。

しかし・・、それは誤解もはなはだしい!

本来、レチノイドを使うことで、皮膚のバリア機能、保水力は高まります。それなのに、なぜ誤解が生じるかというとレチノイド本来の効能とレチノイド反応が混同されているから。

レチノイドは使用をスタートすると多くの方が、皮膚の乾燥、赤み、ヒリヒリ感などに悩まされます。それがレチノイド反応。でも、それはレチノイド本来の効能ではありません。当たり前です。それが本来の効能だとしたら誰も使うわけがない。

残念ながら、多くの方が十分な説明を受けることなく、またフォローもなく使用しているため、レチノイド反応が出ると、途端にモチベーションが下がり、「自分には合わない」と決めつけてやめてしまいます。

その結果、残るのは「レチノイドは合わない」という累々たる不平不満の山。

この現状は何とか変えていかないといけないとは痛切に思いながら、自分の発信力、影響力のなさはどうにもならず、急な好転は望むべくもありません。それでも、まずは自分の足元からコツコツと西川きよし師匠のように頑張るつもり。

敏感肌、乾燥肌で悩まされている方でも、いや、そういう方にこそ使っていただきたいし、使える使用法を広めていきたい。

チャレンジ・アゲイン


(追伸)
世間ではレチノイド反応のことを「A反応」と呼ぶようです。AはビタミンAのことだとか。でもそうなら呼称としてふさわしくない。ビタミンAはレチノールなので、レチノールを使ったときの反応になってしまう。レチノールだけではなく、レチナールでもトレチノインでもディフェリンでも生じるわけで、これはレチノイド(retinoid)反応、つまりは「R反応」とするのが適切だと思います。相変わらず自分の発信力、影響力のなさを顧みず言ってますけど。


 

関連サイトもお楽しみ下さい

 

 LINEバナー300225

 

 twitterへ

 

自由が丘ブログバナー  

 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.20更新


人生100年時代は、「見た目」の時代。そう予言します。年齢が上がれば上がるほど、個人差が大きくなり、実年齢はまったくあてにならなくなります。その結果、「見た目」の元気さ、若々しさで、その人が信用できるかどうか、大げさに言えば社会的信用度が判断されるのです。

「見た目」の時代

いつ「見た目」の時代が到来しても慌てないように、肌のエイジングケアをおすすめします。この頃「老化は病気」という見方も出てきていますが、実際にもっとも「老化」を治療しやすい臓器は皮膚に違いありません。しかも再生医療とかおおがかりなことをしなくても、自分のスキンケアの範囲で十分できるのですから、しない手はありません。

具体的には、今より光老化をすすめないよう日焼け止めを使うなど日光対策を尽くすことと、自分に合ったレチノイドを使いこなすこと、さしあたりこの2つで十分です。

ただ、レチノイドについて自分の診療で痛切に反省しているのは、ただすすめるだけで、どうしたら使い続けられるかまでの説明が不十分だったこと。レチノイド反応が出たら、こうしましょうではなく、ほとんどレチノイド反応が出ないような使用法を説明すべきではなかったか。続けられなければ、エイジングケアなんて絵に描いた餅なのだから。


レチノイド反応を抑え込む使用法は、大きく分けて2つの方法
1)レチノイドを塗る時間を短縮(ショートコンタクト法)
2)レチノイドを塗る間隔をあける(隔日、3日に1度など)
があります。

こうした使用法でレチノイド反応が出る最初の1~2ヶ月を乗り切ることが、レチノイド脱落者を出さないために必要なのです。

大まかな方針としては、タザロテンはショートコンタクト法、ディフェリン、レチナールは間隔をあける方法が適していると思います。

ディフェリンは日本でもニキビ治療薬として使われているので、もしかしたら頭の硬い(心の狭い、口の悪い)皮膚科の先生からは、エイジングケアとして使用することにエビデンスがあるのかとお叱りを受けるかも。

確かにエビデンスは不十分かもしれません。しかし、レチノイドとして同じカテゴリーのトレチノインとタザロテンは、光老化の症状への使用が米国FDAに承認されています。

ほとんどの日本人にとって使いやすいのはトレチノインやタザロテンよりディフェリンなのです。そのエビデンスが揃うのを待っていたら、今レチノイドが必要な人を見捨てることになってしまいます。

今ある限りのエビデンスから、ない頭をしぼって類推を働かせ、最適解に導くのが「臨床」だと批判には応えるつもりです。

 

 

関連サイトもお楽しみ下さい

 

 LINEバナー300225

 

 twitterへ

 

自由が丘ブログバナー  

 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.13更新

乾燥するとニキビができやすくなるので、特に大人ニキビ対策として保湿は重要。これ美容外科・美容皮膚科向けの医学雑誌でもよく見かけますし、実際診療において、私自身もそう説明したことがあります。

だから、今回の記事には反省の意味も含まれています。


ニキビと保湿


昨年出された日本美容皮膚科学会誌という、その名の通り美容皮膚科医向けの学会誌に皮膚科の大先生が、敢えて言えば「怒り」の投稿をされています。


「最近、乾燥がニキビを悪化させ、保湿がニキビを改善するという考え方が、メディア、美
容雑誌などで拡散され都市伝説のようになっているため、十分注意する必要がある。」

さすが大先生になると、あからさまに怒りを表現することはせず、あくまで控え目に書いていますが、ほんとうは「ちゃんとやれよ、注意しろよ!」と後輩を叱咤しているように読めます。

深読みすると、本来なら「美容雑誌などで拡散され・・」のところ、学術文献としては例として参考文献を上げるべきところですが、あえて(?)スルーしています。おそらくそれを書いたら、後輩に恥をかかせることになるし、それも一人、二人ではすまなくなるので、ここは大先生のお慈悲かもしれません。


「保湿をすることで、ニキビを発症させる毛穴の入り口の閉塞が防げるという「説」があるが、保湿でニキビが改善したというエビデンスはない。むしろコメド形成性のある保湿剤で悪化させている可能性がある。」

おそらく大先生がこれを書いたのは、過剰な保湿でニキビを悪化させているニキビの患者さんをよく見かけるからなのでしょう。


「保湿の本来の目的は、肌の乾燥に対するスキンケア、ニキビ治療薬の副作用軽減であり、ノンコメドジェニックなものを必要最小限使用するにとどめるべき。」

論文の全体を通して伝わってくるのは、自身の肌の状態に合わせてコスメを選び、スキンケアしなさいという大先生の教えです。

格言としてまとめれば、
「汝自身の肌を知れ!」

 

 LINEバナー300225

 

 twitterへ

 

自由が丘ブログバナー  

 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.06更新

コロナ禍で診療所の多くの診療科で患者数は減少しましたが、皮膚科では減少しておらず、マスク生活によって、新たな肌トラブルが起こっていることがうかがえます。それがマスクによる肌荒れ、ニキビ。

マスクを装着することで、肌にどんな悪影響を与えるか?結論から言うと、バリア機能崩壊による「乾燥」。

マスクで崩壊

マスクを着用すると、マスクにおおわれた肌では、皮膚温と湿度が上昇します。蒸れ蒸れになるわけですが、これが肌のバリア機能を低下させます。

なぜかというと、皮膚表面では、細胞同士がピタッとくっついてバリアを形成しているのに、過湿により表面の細胞が膨張すると、細胞間の接着が弛んでしまうから。

長時間のマスクパックでも同じことが言えます。保湿は大切ですが、過湿には要注意なのです。

ここでひとつ訂正があります。私はメルマガで「マスクをしているときは蒸れているというのに、それがバリア機能を崩壊させ、マスクを外したら、一気に乾燥する・・。」と書きました。

しかし、韓国の研究者が発表した論文によると、とくに口まわりの皮膚では、マスクの装着中から保水量は減少していました。蒸れているようで、皮膚は乾燥しているらしい。ここにお詫びして訂正させていただきます。


さて、もうひとつの問題「ニキビ」。

マスクを着用すると、皮膚温が上昇するため、皮脂の分泌が亢進して、これがニキビの原因になります。しかもマスク内だけでなく、おおわれていない額でも皮脂が増えるため、ニキビができてしまいます。

マスクでできたニキビの治療も従来のニキビ治療と変わりありませんが、以前は使用できた薬剤に刺激を感じる患者さんが増えているとか。皮膚のバリア機能が低下して、「敏感肌」になっているのです。

マスクの肌荒れ対策としては、保湿が重要とされていますが、同時にマスクで密封された状態では、かぶれが誘導されやすいことも指摘されています。またウレタンマスクの方が肌にやさしいようですが、感染効果が落ちないようにその上から不織布マスクをすると、ますます蒸れ蒸れになってバリア機能が壊れそう・・

人前に出るときは社会規範としてマスクが必要ですが、近くに人がいない中で仕事しているときなど、マスクが本当は意味のないシチュエーションも多いはず。そういうときは肌をいたわるためにも外して、お肌を休ませてあげてはいかがでしょうか。


(参考文献)

1)Effect of face mask on skin characteristics changes during the COVID-19 pandemic
Park SR,et al.
Skin Res Tcchnol
2021;27(4):554-559

2)Long-term effects of face masks on skin characteristics during the COVID-19 pandemic
Park SR,et al.
Skin Res Tcchnol
2022;28(1):153-161

3)新しい生活様式 スキンケアはどう変わる
川島眞、他
ベラペレ
2022;7(1):69-72





 

 LINEバナー300225

 

 twitterへ

 

自由が丘ブログバナー  

 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.04.01更新

数年前から植物由来のバクチオールというコスメ成分が話題です。「次世代レチノール」、「第二のレチノール」、「レチノールに代わる・・」などと、キャッチフレーズにはいつもレチノールがついています。

この場合、レチノイドの中でも「レチノール」を相手に選んだのがニクい。これがレチナールだと知名度が低いので、消費者の心に響かないし、トレチノインを選ぶとただではすまない。レチノイドはトレチノインを中心に学問的に発展してきました。「トレチノインに代わる・・」などと言われたら、いきなり本丸に土足で踏み込まれたようで、皮膚科医、美容皮膚科医が騒ぎます。

そこで、「レチノール」。これが感心するほどにちょうどよい。これだとたいていの医師からしたら、騒ぐのも大人気ないかなと思ってしまいます。そして、私がそうであったように、とくに調べることもしないで、バクチオール=レチノールで納得してしまいます。

レチノールのイメージを刷り込ませることで、説明するまでもなく、どんな効果か消費者に勝手に想像させますし、さらには効果のほどまで納得させてしまうのですから、メーカーのマーケティング戦略は見事です。

逆に決してほめられないのが、皮膚科領域では指折りのブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ダーマトロジー(BJD)誌。バクチオールがレチノールと同程度の効果とした臨床研究は、BJD誌に掲載されています。

しかし、私ですら一読して、アレ?と思う箇所に気づきます。バクチオールとレチノールの比較試験ですが、バクチオールは1日2回塗るのに、レチノールは1日1回だけで、これでまともな比較試験になるのか?

これほどのジャーナルになれば、偉すぎるほどの専門家が複数で審査しているはずですが、きちんとした専門家からもきちんとした、そもそも研究デザインから間違っていて、結論をミスリーディングしていると批判される始末で、こんな臨床研究の根幹に関わるところで批判を受けるなんて、一流誌として恥ずかしいこと。

ただ、レチノールとの類似性を打ちだしたマーケティング戦略も見事なら、ついには世界で指折りのジャーナルまで巻き添えにしたという意味では、メーカーの努力は素直に賞賛すべきと言えるでしょう。

さて、肝心のバクチオールですが、言うほどにはレチノールに似ていません。そもそもバクチオールはレチノイド受容体には結合しないので、レチノイドとは言えない。まったくのニセモノ、いや、別物。

まったくの別物をレチノールに仕立て上げるわけですから、そこにはメーカーの涙ぐましい努力があります。近頃は「エビデンス」という言葉も一般的になり、コスメにもエビデンスが求められるわけですが、それを自作自演で自分たちの販売戦略に忠実に作り上げてしまいます。

バクチオールの光老化皮膚への有効性を論じた最初の論文は、メーカーの研究員が書いています。冒頭からバクチオールではなく、ひたらすらレチノイドの話が展開され、全体的にもレチノールとの類似性をこれでもかと強調しています。最初これを読み終えたとき、レチノールとの類似性を強制的に理解させられただけで、バクチオールの全体像はさっぱりわからないという、不思議な気分になりました。

バクチオールには、抗酸化や抗炎症作用があり、心臓や肝臓の臓器保護に有用ではないかという基礎系の論文もありますが、臨床的に使われる段階にはないので、まだまだ未知数。「美容には夢が必要」という持論を持っている私ですが、さすがにバクチオールは夢というよりまだまだ「幻」に近い。

コスメとしてのバクチオールは、レチノイドではないので当たり前ですが、刺激反応もなく使いやすいようです。現在気に入って使用しているなら、あえてやめることもありません。ただ、もし「使いやすい」レチノールをお探しなら、バクチオールに手を出すのではなく、あくまでレチノールで、ただその使い方を工夫すべきでしょう。


 

関連サイトもお楽しみ下さい

 

(参考文献)

1)Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing
Dhaliwal S,et al.
Br J Dermatol.
2019;180(2):289-296

2)Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects
Chaudhuri RK,et al.
Int J Cosmet Sci.
2014;36(3):221-230

3)Cosmetic commentary: Is bakuchiol the new skincare hero?
Spierings NMK
J Costet Dermatol.
2020;19:3208-3209

4)Bakuchiol: A new discovered warrior against organ damage
Xin Z,et al.
Pharm Res.
2019;141:208-213



 

 LINEバナー300225

 

 twitterへ

 

自由が丘ブログバナー  

 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥