コロナ禍で多少の時間の余裕もできたため、Amazonや神田神保町の大型書店で手当たり次第に美容関連の本を買い求めひたすら読み倒しています。そうした中で、肝斑のことを、「もやっと」とか「ぼんやりと」したシミと説明してある本が多いことに気づきました。
肝斑は決してそんな霞や雲のようなものではなく、むしろ境界はハッキリしていることが多いもの。もし、ほんとうに「もやっと」とか「ぼんやりと」したシミが頬にあったとしたら、肝斑というより、何らかの、おそらくコスメによる接触性皮膚炎やスキンケアでの擦りすぎで生じる色素沈着の可能性が高いでしょう。
だいたい本当に「もやっと」、「ぼんやりと」しているのなら、何のために治療するのかわかりません。大きさ、範囲がハッキリしないと、効果の判定ができないからです。効いているのか、いないのか後で判断できない治療は最初からするべきでない。
もしかしたら、美容業界全体で、肝斑の診断基準が甘くなっているのでしょうか?
3年ぶりに当院の肝斑の治療方針をブラッシュアップする作業に取りかかっています。肝斑は美容皮膚科医にとって難関ですから、気合いを入れて最近の主要文献を読み込んでいます。
1)日本人の特殊性を考慮しつつも、世界の標準治療に準拠する。
2)レーザートーニングに否定的なスタンスは変わらない。
3)これまでは1日3回のトランサミン内服が続けられない方には、「肝斑治療はあきらめましょう」と突き放してきましたが、それでは冷たすぎると反省して、手を取って導くほどでなくても、行く手を指し示してあげられるほどには優しい肝斑治療を目指す。
以上が改正の要点になります。