2025.05.20更新

 

【目次】

1: そもそも「美白」とは?人はどこまで「白く」なれるのか?
2: 肌が黒くなる主な原因を理解しよう
3: 【今日からできる】肌を白くするための具体的な方法
4: 【より効果を実感したい】美容内服薬・美容施術
5: 【Q&A】肌を白くする方法に関するよくある疑問


人は白くなければ気が済まないのか?

有色人種が抱く白い肌への憧れは、時に常軌を逸した行動に走らせます。美白剤を使いすぎて肌に障害を来たしたり、意味のない美白点滴に群がったり・・人の「美白」への渇望を表す例は世界中に転がっています。

つくづく「美白」とは呪われた言葉だと思います。


今回はそんな呪いの言葉「美白」に科学的に迫ります。



1:そもそも「美白」とは?人はどこまで「白く」なれるのか?


「美白」という言葉を聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?透き通るような白い肌、シミやくすみのない均一な肌色など、多くの方が憧れる肌の状態かもしれません。

しかし、実は「美白」という言葉には、私たちが普段イメージするものとは少し異なる意味合いや、長い歴史的背景、そして肌の色に関する基本的な知識が関わっています。

この記事では、まず「美白」という言葉の成り立ちから、まず「美白」という言葉の成り立ちから、現代における定義、そして人はどこまで「白く」なれるかについて、詳しく掘り下げます。


1-1. 「美白」という言葉の歴史:古くから続く美への探求

「美白」という言葉の歴史は意外と古く、江戸時代には「美白散」という名の化粧品が存在していた記録があります。これは、当時から白い肌が美しいとされ、人々がそのための努力をしていたことを示唆しています。

さらに明治時代に入ると、「美白」は美容業界の専門用語として使われるようになり、より一般的な美意識として定着していったと考えられます。

このように、白い肌への憧れは一朝一夕に生まれたものではなく、日本の文化の中で長い時間をかけて育まれてきた価値観の一つと言えるでしょう。


1-2. 厚生労働省が定める「美白」の効能とは?:誤解されやすい本来の意味

現代において「美白化粧品」や「美白ケア」といった言葉をよく耳にしますが、実は「美白」という言葉は、厚生労働省が医薬部外品の効能として認めているものです(文献1)。

そして、その本来の意味は「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」というもの。つまり、今ある肌の色を白くするのではなく、将来的にシミやそばかすができるのを予防するという意味合いが強いのです。

もちろん、メラニンの生成が抑制されれば、結果的に肌の透明感が上がったり、トーンが明るく感じられたりすることは期待できます。しかし、「肌を漂白して真っ白にする」といった変化をもたらすものではないという点は、正しく理解しておく必要があります。


1-3. 海外での「美白」表現について:whitening だけじゃない?

日本で「美白」というと、英語では whitening という単語が思い浮かぶかもしれません。しかし、欧米諸国、特に多民族国家においては、 whitening という言葉は肌の色に関する差別的な意味合いを含む可能性があり、使用には注意が必要です。

そのため、海外の化粧品などでは、肌のトーンを明るく見せる、輝かせる、といったニュアンスで lightening(ライトニング)や brightening(ブライトニング)といった言葉が使われることが一般的です。

これは、肌の色そのものを変えるのではなく、肌の質感や透明感を高めることで、より健康的で明るい印象の肌を目指すという考え方に基づいています。


1-4. 人種による肌の色の違い:一番肌が白い人種は?

ご存知の通り、人の肌の色は人種によって様々です。この違いは、主に皮膚に含まれるメラニン色素の量によって決まります。

メラニン色素は、紫外線から肌細胞を守る役割があり、日差しの強い地域に住む人々はメラニン色素が多く、肌の色が濃くなる傾向があります。逆に、日差しの弱い地域に住む人々はメラニン色素が少なく、肌の色が薄くなる傾向にあります。

一般的に、世界で最も肌の色が白いとされるのは、北ヨーロッパの民族です。具体的には、スカンジナビア半島(ノルウェー、スウェーデン、デンマークなど)やバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、アイルランド、スコットランドなどに住む人々が挙げられます。


北欧の女性
画像:世界で最も肌の色が白いとされる北欧の女性

これらの地域は高緯度に位置し、一年を通して日照時間が短く、紫外線量も少ないため、メラニン色素を多く生成する必要がありませんでした。むしろ、少ない紫外線でも効率よく体内でビタミンDを生成するために、明るい肌の色が適応的な形質として進化してきたと考えられています。

このように、肌の色は単なる見た目の問題ではなく、人類がそれぞれの環境に適応してきた結果であり、非常に多様性に富んでいます。


1-5. 人はどこまで白くなれる?自分の本来の肌色を知る方法

「美白ケアを頑張れば、どこまでも肌は白くなるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、残念ながら私たちの肌の色には、遺伝的に決まった限界があります。

自分の本来の肌色、つまり努力によって目指せる白さの限界とは、紫外線をほとんど浴びていない体の部分の肌色のこと。例えば、二の腕の内側や太ももの内側などは、日常的に衣服で覆われており、太陽光の影響を受けにくいため、その人の遺伝的な肌色に近いと言われています。お風呂に入る際などに、全身を鏡で見て、最も白い部分の色が、あなたが目指せる肌の白さの目安となります。


この記事の目的は、どうすれば自分の限界の「白さ」に近づけるか?です。その前に、次章ではまず肌が黒くなる主な原因について詳しく見ていきます。

 





メラニンを生成する刺激
イラスト:メラニン生成を刺激する要因


2:肌が黒くなる主な原因を理解しよう



今度は、多くの方が美白ケアを始めるきっかけとなる「肌が黒くなる、あるいは黒く見える」主な原因について、詳しく解説していきます。原因を正しく理解することが、効果的な対策への第一歩です。


2-1. 肌が黒くなるメカニズム:メラニンの生成と蓄積

私たちの肌が黒くなる最も大きな要因は、「メラニン」という色素です。メラニンは、肌の表皮の最下層にあるメラノサイト(色素細胞)という細胞で作られます。

実は、メラニンは私たちの肌を様々な外部刺激、特に紫外線によるダメージから守るために生成される防御物質です。メラニンが生成されることで、紫外線が肌の奥深くまで侵入し、細胞の核の中にあるDNAを傷つけるのを防いでいます。いわば、肌の天然の日傘のような役割を果たしているのです。

しかし、過剰な刺激を受け続けると、メラノサイトはメラニンを大量に作り出し、それが肌の細胞に蓄積されていきます。この蓄積されたメラニンが、シミやそばかす、そして肌全体の色が濃くなる原因となるのです。


2-2. 肌を黒くする最大の原因~紫外線~

肌を黒くする最大の外的要因は、太陽光に含まれる「紫外線」です。紫外線には主にUVA(紫外線A波)とUVB(紫外線B波)の2種類があり、それぞれ肌への影響が異なります。

UVB(紫外線B波): 肌の表面に強く作用し、短時間で赤みやヒリヒリとした炎症(サンバーン)を引き起こします。メラノサイトを直接刺激し、メラニンの生成を活発化させるため、シミやそばかすの主な原因となります。エネルギーが強く、細胞のDNAを傷つける作用も強いため、皮膚がんのリスクを高めることも知られています。

UVA(紫外線A波): (UVBほど急激な変化は引き起こしませんが、波長が長く、肌の奥深く(真皮層)まで到達します。じわじわと肌にダメージを与え(サンタン)、メラニンの生成を促進するだけでなく、肌のハリや弾力を保つコラーゲンやエラスチンを変性させ、シワやたるみといった肌老化(光老化)の原因にもなります。UVAは雲や窓ガラスも透過するため、曇りの日や室内でも対策が必要です。

これらの紫外線によるダメージが長年にわたって蓄積されると、肌は黒くなるだけでなく、様々な肌トラブルを引き起こしやすくなります。


2-3. 紫外線以外にメラニン合成を促進する要因

紫外線以外にも、メラノサイトを刺激し、メラニンの合成を促す要因があります。これらには、活性酸素種、一酸化窒素、過酸化脂質などが挙げられます。
大気汚染物質(PM2.5、排気ガスなど)や精神的なストレスなども活性酸素種を発生させ、酸化ストレスを引き起こす要因となり得ます。つまり、現代社会の生活環境そのものが、肌を黒くするリスクと隣り合わせであると言えるでしょう。特に、酸化ストレスはメラニン生成を促すだけでなく、肌のくすみや老化も加速させます。


2-4. メラニン以外に肌が暗く見える原因:

肌が暗く見える原因は、メラニンの増加だけではありません。様々な要因で生じる肌のトーンダウンも、肌を暗い印象に見せる要因となります。
角質の蓄積による肌表面のごわつき: 肌のターンオーバーが乱れると、古い角質が剥がれ落ちずに肌表面に蓄積し、厚くなります。これにより、肌の透明感が失われ、ごわついてくすんで見えます。

血行不良による顔色の悪さ: 冷えや睡眠不足、ストレスなどにより血行が悪くなると、肌に十分な酸素や栄養が届かず、顔色が悪く見えたり、青黒くくすんだりします。

乾燥による肌のバリア機能低下とキメの乱れ: 肌が乾燥すると、キメが乱れて光が均一に反射しなくなり、影ができてくすんで見えます。また、バリア機能が低下し、外部刺激を受けやすくなることで、さらなる肌トラブルを招く可能性もあります。

巡りの滞りによる影響と透明感の低下: 例えば、リンパの流れや血行が滞ると、体内の不要な水分や細胞活動に伴う代謝産物などがスムーズに排出されにくくなることがあります。このような状態は、肌のすっきりとした印象を損ない、透明感が失われてどんよりとくすんで見える一因となる可能性があります。


2-5. 肌への摩擦や刺激による色素沈着

洗顔時のゴシゴシ洗い、タオルでの強い摩擦、無意識にニキビや肌荒れを触る癖なども、肌への慢性的な刺激となります。このような刺激は、肌内部で炎症を引き起こし、その結果としてメラノサイトを活性化させ、炎症後の色素沈着を招き、肌を部分的に黒ずませる原因となることがあります。特に、ニキビ跡の色素沈着などが代表的です。


2-6. 生活習慣の乱れとターンオーバーの乱れ

健康的な肌を保つためには、規則正しい生活習慣が欠かせません。睡眠不足、栄養バランスの偏った食事、過度なストレス、喫煙、運動不足といった生活習慣の乱れは、ホルモンバランスの乱れや血行不良、免疫力の低下などを引き起こします。

これらの影響は、肌の「ターンオーバー」の乱れに直結します。肌は、約28日周期(年齢や肌状態により変動)で新しい細胞に生まれ変わる仕組みを持っています。このターンオーバーが正常に機能していれば、生成されたメラニンや古い角質は自然に排出されます。しかし、生活習慣の乱れによってターンオーバーが滞ると、メラニンや古い角質が排出されずに肌内部に蓄積し、シミやくすみ、肌のごわつきの原因となるのです。また、肌のバリア機能が低下し、乾燥や外部刺激に対しても弱くなってしまいます。


2-7. 糖化とカルボニル化による黄ぐすみ

肌の「黄ぐすみ」も、肌全体を暗く見せ、疲れた印象を与える要因の一つです。これは主に「糖化」や「カルボニル化」といった体内の化学反応が関わっています(文献2)。


糖化: 食事などから摂取した余分な糖分が、体内のタンパク質(コラーゲンなど)と結びつき、AGEs(糖化最終生成物)という茶褐色の老化物質を生成する反応です。AGEsが肌のコラーゲンなどに蓄積すると、肌が黄色くくすみ、ハリや弾力も失われます。

カルボニル化: 脂質の酸化によって生じるアルデヒドなどがタンパク質と反応し、ALEs(カルボニル化最終生成物)という物質を生成する反応です。これも肌の黄ぐすみや弾力低下の原因となります。
パンや甘いものの過剰な摂取、揚げ物などの酸化した脂質の摂取といった食生活の乱れは、これらの反応を促進する可能性があります。


2-8. 遺伝的要因(地黒)

生まれつき肌の色が濃い、いわゆる「地黒」の方もいます。これは、遺伝的にメラニンを生成する能力が高い、あるいはメラニンの量が多い体質であるためです。この場合、美白ケアで目指せる白さには限界がありますが、紫外線対策や適切なスキンケアによって、シミやそばかすを防ぎ、肌の透明感を高めることは可能です。

これらの原因を理解することで、日々の生活の中でどのような点に注意し、どのようなケアを行えば良いのかが見えてくるはずです。次回は、これらの原因を踏まえた上で、今日から実践できる具体的な美白方法についてご紹介します。


一家で日焼け止め
画像:一家で日焼け止め!

 

3:【今日からできる】肌を白くするための具体的な方法



ここでは、毎日のスキンケアと生活習慣の見直しによって、今日から取り組める肌を白くするための方法をご紹介します。


3-1. スキンケア編:正しいケアで肌の透明感を引き出す

毎日のスキンケアは、美しく健やかな肌を目指す上での基本です。特に洗顔と保湿、そして目的に合った成分の活用が鍵となります。


3-1-1. 洗顔:基本は朝と夜の2回、優しく丁寧に

米国皮膚科学会(AAD)は、肌のタイプや状態に応じた洗顔を推奨しており、一般的には1日2回(朝と夜)および汗をかいた後の洗顔を基本としています(文献3)。


洗顔料の選び方: 自分の肌質(乾燥肌、脂性肌、混合肌、敏感肌など)に合った、マイルドで低刺激性の洗顔料を選びましょう。アルコールフリーや無香料の製品も、肌への負担を軽減する選択肢となります。

洗い方のポイント
摩擦レス洗顔: 洗顔料をしっかりと泡立て、泡をクッションにして肌の上を滑らせるように優しく洗います。ゴシゴシこする行為は、肌への刺激となり、色素沈着の原因にもなりかねません。

ぬるま湯で: 熱すぎるお湯は肌の必要な皮脂まで奪い乾燥を招き、冷たすぎる水は毛穴の汚れが落ちにくいことがあります。32~34℃程度のぬるま湯が推奨されます。

すすぎは丁寧に: 洗顔料が残らないよう、フェイスラインや髪の生え際まで丁寧にすすぎます。

清潔なタオルで優しく押さえる: 清潔なタオルを使い、水分を吸い取るように優しく押さえます。ここでも摩擦は禁物です。


3-1-2. 保湿:洗顔後はすぐに、たっぷりと

洗顔後の肌は水分が蒸発しやすいため、すぐに保湿ケアを行うことが重要です。

基本的なステップ
化粧水(ローション): まずは化粧水で肌に水分を補給し、肌を柔らかく整えます。コットンまたは清潔な手で、優しくパッティングするようになじませましょう。

美容液(セラム): 美白有効成分など、目的に合わせた美容液を使用する場合は、化粧水の後に使います。

乳液(ミルク)・クリーム: 最後に乳液やクリームで油分を補い、水分の蒸発を防ぎ、肌のバリア機能をサポートします。乾燥が気になる場合は、より保湿力の高いクリームを選びましょう。

乾燥対策アイテム: 冬場やエアコンの効いた部屋など、特に乾燥が気になる場合は、保湿クリームを重ね付けしたり、加湿器を使用して室内の湿度を適切に保つ(一般的に40~60%が目安)ことも効果的です。


3-1-3. 美白有効成分配合のスキンケアアイテムを取り入れる

厚生労働省が承認した「美白有効成分」を配合した医薬部外品(薬用化粧品)は、「メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ」効果が期待できます。

ビタミンC誘導体: メラニンの生成を抑制する作用や抗酸化作用が期待されます。多くの研究でその効果が示唆されていますが、製品の濃度や安定性、肌への浸透性によって効果は異なります(文献4)。

アルブチントラネキサム酸: これらも代表的な美白有効成分です。アルブチンはメラニン合成酵素であるチロシナーゼの働きを阻害する作用が、トラネキサム酸はメラノサイトの活性化を抑える作用や抗炎症作用が知られています。これらの成分についても、その効果を示唆する研究報告がありますが、効果には個人差があります(文献5,6)。

フラーレン: 強力な抗酸化作用を持つ成分として知られ、肌の酸化ストレスを軽減することで間接的にメラニン生成を抑制する効果が期待されています。ただし、美白有効成分として医薬部外品の承認を得ているものではなく、化粧品成分としての配合となります。その効果については、基礎研究レベルでの報告はありますが、ヒトでのエビデンスはまだ十分とは言えません。

(注意点) これらの成分は、あくまでメラニンの生成を「抑える」ものであり、肌の色そのものを漂白するものではありません。また、効果の現れ方には個人差があります。


3-1-4. 徹底的な紫外線対策を一年中行う

紫外線はシミやそばかす、肌の黒化の最大の原因です。WHOや米国皮膚科学会(AAD)などの専門機関は、季節や天候に関わらず、年間を通じた紫外線対策の重要性を強調しています(文献7,8)。

日焼け止めは毎日塗る習慣を

SPF/PA値の目安と使い分け

SPF:UVBを防ぐ効果の指標。日常生活ではSPF15~30程度、屋外での軽いスポーツやレジャーではSPF30~50、炎天下でのマリンスポーツなどではSPF50+が目安です。

PA:UVAを防ぐ効果の指標。「+」の数が多いほど効果が高く、日常生活ではPA+~++、屋外活動ではPA+++~++++が推奨されます。

こまめな塗り直しが重要: 汗や摩擦で落ちてしまうため、2~3時間おきを目安に塗り直しましょう。

十分な量を使用する: 顔全体であれば、ティースプーン1杯程度が目安です。

物理的な防御も併用: 帽子(つばの広いもの)、長袖・長ズボンの衣服(色の濃いもの、目の詰まった生地が効果的)、日傘、UVカット機能のあるサングラスなどで肌の露出を極力避けましょう。

紫外線の強い時間帯を避ける: 一般的に午前10時~午後2時頃は紫外線量が多いため、この時間帯の長時間の外出は可能な範囲で避けるのが賢明です。

※紫外線を全く浴びないことのリスク: 紫外線は体内でビタミンDを合成するために必要です。過度な紫外線対策はビタミンD不足を招く可能性もあるため、食事からの摂取や、必要に応じてサプリメントの利用も考慮し、バランスを考えることが大切です。


3-2. 生活習慣編:体の内側から肌をケア

美しい肌は、外側からのケアだけでなく、内側からのアプローチも不可欠です。


3-2-1. 栄養バランスの取れた食事を心がける

肌の健康を維持し、透明感を引き出すためには、バランスの取れた食事が基本です。

美白効果が期待できるとされる栄養素と食品(エビデンスについて)

ビタミンC、E、A、B群: これらは肌の健康維持に不可欠なビタミンです。ビタミンCやEには抗酸化作用があり、メラニン生成の抑制や肌のダメージ軽減に関与するとされています。多くの研究で皮膚への有益性が示唆されていますが、特定の食品を摂取することで「直接的に肌が白くなる」というハッキリしたエビデンスはありません。バランス良く摂取することが重要です。
(例:ビタミンCはパプリカ・ブロッコリー・柑橘類、ビタミンEはナッツ類・植物油、ビタミンA(βカロテン)は緑黄色野菜、B群は肉類・魚介類・豆類など)

ポリフェノール、リコピン: これらも強力な抗酸化作用を持つ成分で、紫外線によるダメージから肌を守る効果が期待されています。
(例:ポリフェノールは緑茶・赤ワイン・カカオ、リコピンはトマトなど)

これらの成分の経口摂取による美白効果に関するヒトでの臨床研究は存在しますが、結果は様々であり、さらなる研究が必要です。

L-システイン: メラニンの生成を抑制する効果や抗酸化作用が期待され、医薬品やサプリメントに利用されています。一部の研究では有効性が示唆されています(文献9)が、食事から大量に摂取することは難しく、サプリメント等での摂取においても効果や安全性については専門家への相談が推奨されます。

亜鉛: 皮膚のターンオーバーをサポートするミネラルです。

発酵食品: 腸内環境を整えることで、間接的に肌の健康に寄与する可能性がありますが、直接的な美白効果に関するエビデンスは十分ではありません。

抗酸化作用の高い食品を積極的に: 上記のビタミンC、E、ポリフェノール、リコピンなどを含む野菜や果物を積極的に摂りましょう。

コラーゲンを増やすとされる食品: コラーゲンを多く含む食品(手羽先、牛すじなど)や、体内でコラーゲン合成を助けるビタミンCを一緒に摂ることが推奨されることがありますが、美白効果の明確なエビデンスは確立されていません。

糖化を防ぐ食事法: 急激な血糖値の上昇を抑える低GI食品を選んだり、野菜から先に食べる「ベジファースト」を心がけたりすることは、AGEs(糖化最終生成物)の生成を抑え、黄ぐすみを防ぐのに役立つと考えられています。この分野の研究は進んでいますが、直接的な美白効果としてのエビデンスはまだ構築中です。

脂質の多い食べ物を制限する: 過剰な脂質、特に酸化した脂質の摂取は、肌の炎症やくすみの原因となる可能性があります。

水分をしっかり摂取する:体内の水分が不足すると肌も乾燥しやすくなります。しかし、水分摂取が直接的に肌を白くするというエビデンスはありません。


3-2-2. 質の高い睡眠を確保する

睡眠中に分泌される成長ホルモンは、肌のターンオーバー(新陳代謝)を促し、日中に受けたダメージを修復するのに役立ちます。

睡眠とターンオーバーの関係: 質の高い睡眠は、正常なターンオーバーを維持し、メラニン色素の排出をスムーズにするために重要です。

効果的な睡眠: 一般的に6~8時間の睡眠が推奨されますが、必要な睡眠時間には個人差があります。就寝前のカフェイン摂取を避ける、寝室の環境を整える(静かで暗い、快適な温度・湿度)など、睡眠の質を高める工夫をしましょう。睡眠と美白効果の直接的な関連を示す強固なエビデンスはありませんが、肌の健康維持に睡眠が不可欠であることは広く認識されています。


3-2-3. 適度な運動を取り入れる

適度な運動は血行を促進し、肌の隅々まで栄養と酸素を届け、くすみの改善やターンオーバーの正常化に繋がります。

血行促進とくすみ改善: ウォーキングやストレッチ、ヨガなど、無理のない範囲で続けられる運動を取り入れましょう。

マイオネクチンとメラニン生成抑制の関係: 近年、運動によって筋肉から分泌される「マイオカイン」という物質群の中に、メラニンの生成を抑制する可能性のある「マイオネクチン」などが含まれるという基礎研究の報告があります(文献10)。しかし、これがヒトにおいてどの程度の美白効果をもたらすかについては、まだ研究段階であり、エビデンスは十分ではありません。


3-2-4. ストレスを上手に管理する

過度なストレスはホルモンバランスを乱し、自律神経の不調を引き起こし、肌のターンオーバーの乱れや皮脂の過剰分泌、バリア機能の低下などを招くことがあります。これらが間接的にくすみや肌荒れの原因となることがあります。

リラックスできる時間を作る: 趣味の時間を持つ、深呼吸をする、瞑想する、自然に触れるなど、自分に合ったリラックス方法を見つけて実践しましょう。ストレス管理と美白効果の直接的なエビデンスは限定的ですが、肌の健康全般に良い影響を与えると考えられます。


3-2-5. 喫煙や過度な飲酒を控える

喫煙: 血管を収縮させて血行を悪化させ、肌に必要な酸素や栄養素の供給を妨げます。また、大量の活性酸素を発生させ、ビタミンCを破壊し、メラニンの生成を促進する可能性も指摘されています。

過度な飲酒: 脱水状態を引き起こし肌を乾燥させたり、肝機能に負担をかけて体内の解毒作用を低下させたりすることで、間接的に肌の状態を悪化させる可能性があります。


これらの方法は、一朝一夕に効果が出るものではありませんが、根気強く続けることで、肌本来の透明感を引き出し、健やかで明るい印象の肌へと導いてくれるでしょう。次回は、より効果を実感したい方向けの美容内服薬や美容施術について解説します。


近未来の美容クリニックでの肌治療
画像:近未来の美容クリニックでの肌治療

 

4:【より効果を実感したい】美容内服薬・美容施術



日々のスキンケアや生活習慣の改善に加えて、「もっと積極的に美白を目指したい」、「より確かな効果を実感したい」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。そのような方々に向けて、ここでは美容内服薬による内側からのケアと、美容クリニックで受けられる専門的な施術についてご紹介します。

4-1. 美容内服薬で内側からアプローチ

体の内側から美白にアプローチする方法として、美容内服薬の活用があります。これらは、肌の健康をサポートし、シミやそばかすの原因となるメラニンの生成を抑制したり、肌のターンオーバーを整えたりする効果が期待される成分を含んでいます。


4-1-1. 市販のビタミン剤と皮膚科処方薬の違い

まず、市販のビタミン剤と美容皮膚科などで処方される医薬品には違いがあることを理解しておきましょう。

市販のビタミン剤(医薬部外品や栄養機能食品など)

比較的広範囲な方を対象としており、安全性が重視されているため、有効成分の含有量が処方薬に比べて少ない場合があります。
ドラッグストアなどで手軽に購入できます。
効能・効果の表現が医薬品に比べて穏やかです。

皮膚科処方薬(医療用医薬品)

医師の診断に基づいて、個々の症状や体質に合わせて処方されます。
有効成分の含有量が多く、より高い効果が期待できる一方、副作用のリスクも考慮する必要があります。
医師の管理下で使用されるため、安全かつ効果的な治療が期待できます。

美白を目的とした内服薬に関しても、自己判断で市販薬を長期的に使用するよりも、一度医師に相談し、ご自身の肌状態や体質に合ったものを処方してもらう方が、より安全で効果的です。


4-1-2. 主な内服薬成分とその効果

美容皮膚科で美白目的に処方される主な内服薬の成分と、期待される効果について解説します。

シナール(アスコルビン酸・パントテン酸カルシウム配合剤)

⚪️主成分と働き:アスコルビン酸(ビタミンC)とパントテン酸カルシウム(ビタミンB5)を配合した薬です。ビタミンCには、メラニン色素の生成を抑制する作用、できてしまったメラニンを還元(薄くする)する作用、コラーゲンの生成を助ける作用、抗酸化作用などがあります。ビタミンB5は、ビタミンCの働きを助けるほか、皮膚や粘膜の健康維持、ストレスへの抵抗力を高める効果が期待されます。

⚪️期待される効果:シミ・そばかすの改善、色素沈着の予防、肌のハリ向上、抗酸化による肌老化の抑制。

⚪️エビデンスについて:ビタミンCの経口摂取による美白効果(メラニン抑制、色素沈着改善)については、多くの基礎研究や一部の臨床研究でその有効性が示唆されています(文献4)。

パントテン酸も皮膚の健康維持に重要ですが、美白への直接的な強いエビデンスはビタミンCほど多くはありません。

これらは皮膚科診療において広く用いられており、一般的に推奨される治療法の一つです。


ハイチオール(L-システイン)

⚪️主成分と働き:L-システインはアミノ酸の一種で、体内で代謝されると抗酸化物質であるグルタチオンの生成を促進します。また、メラニン生成に関わる酵素チロシナーゼの活性を阻害する作用や、肌のターンオーバーを正常化する働き、過剰なメラニンの排出を促す効果が期待されます。

⚪️待される効果:シミ・そばかす・日やけなどの色素沈着症の改善、肌荒れ、ニキビの改善。

⚪️エビデンスについて:L-システインの経口摂取によるシミ・そばかすへの効果については、日本国内で医薬品として承認されており、臨床試験においても一定の有効性が示されています。肌のターンオーバーを整えることによる間接的な美白効果も期待できます(文献9)。


グルタチオン

⚪️主成分と働き:グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンの3つのアミノ酸からなるペプチドで、私たちの体内に広く分布し、強力な抗酸化作用を持つ成分です。肝臓の解毒作用を高める働きや、メラニン生成抑制作用が注目されています。

⚪️期待される効果(内服・点滴):美白効果、シミ・くすみの改善、肝機能改善、抗酸化作用によるアンチエイジング効果などが謳われています。

⚪️エビデンスについて(特に美白効果):
内服薬:グルタチオンの経口摂取による美白効果については、いくつかの小規模な臨床研究で肌のトーン改善を示唆する報告がありますが、現時点ではエビデンスは十分とは言えません。経口摂取されたグルタチオンの多くは消化管でアミノ酸に分解されるため、そのままの形で吸収されて効果を発揮するかどうかについては議論があります。一般的に美白効果を期待して推奨されることがありますが、確立された治療法とまでは言えません。

点滴・注射:点滴による投与は経口摂取よりも血中濃度を高く上げることができます。しかし、グルタチオン点滴による美白効果を裏付ける質の高い大規模な臨床研究は依然として不足しており、医学的エビデンスは確立されていません。一部のクリニックでは人気の施術ですが、効果の持続性や最適な投与量、長期的な安全性についてはさらなる検証が必要です。副作用として、稀に発疹、食欲不振、吐き気などが報告されています。また、アナフィラキシーショックのような重篤な副作用のリスクもゼロではありません(文献11,12)。
肝機能改善薬としては医薬品として承認されていますが、美白目的での使用は適応外使用です。


ユベラ(トコフェロール酢酸エステル)

⚪️主成分と働き:トコフェロール酢酸エステルはビタミンEの一種です。強力な抗酸化作用を持ち、血行を促進する働きがあります。活性酸素による細胞のダメージを防ぎ、肌のバリア機能をサポートします。

⚪️期待される効果:血行促進によるくすみの改善、肌荒れの改善、抗酸化作用による肌老化の予防。シミやそばかすを直接的に薄くする効果よりも、肌全体のコンディションを整えることで美白をサポートする役割が期待されます。

⚪️エビデンスについて:ビタミンEの抗酸化作用や血行促進作用は広く知られており、皮膚の健康維持に貢献します。他の美白成分と併用することで、相乗効果が期待されることもあります。単独での強力な美白効果を示すエビデンスは限定的ですが、肌の保護や老化予防の観点から有用と考えられています。

これらの内服薬は、単独で用いるよりも、個々の肌状態や目的に合わせて複数を組み合わせて処方されることが一般的です。必ず医師の診察を受け、適切な指導のもとで使用するようにしましょう。


4-2.美容クリニックでの施術

よりスピーディーに、そして目に見える効果を実感したい場合には、美容クリニックでの専門的な施術が選択肢となります。ここでは代表的な美白治療をご紹介します。


4-2-1.ケミカルピーリング:古い角質除去とターンオーバー促進

◉施術内容:肌の表面に専用の薬剤(グリコール酸、サリチル酸、乳酸など)を塗布し、古くなった角質や毛穴の汚れを優しく取り除く治療です。これにより、乱れた肌のターンオーバーを整え、新しい皮膚の再生を促します。

◉期待される効果:くすみの改善、肌の透明感アップ、ごわつきの改善、ニキビ・ニキビ跡の改善、毛穴の開きの改善、小じわの改善など。メラニンを含む古い角質が剥がれ落ちることで、肌のトーンが明るくなる効果も期待できます。


4-2-2. レーザー治療

◉施術内容:特定の波長のレーザー光を照射し、シミやそばかすの原因となるメラニン色素を選択的に破壊したり、肌の深層に働きかけてコラーゲンの生成を促したりする治療です。シミの種類や深さ、肌質によって様々な種類のレーザー(Qスイッチレーザー、ピコレーザーなど)が使い分けられます。

◉期待される効果:ピンポイントのシミ・そばかす・あざの除去、肝斑の改善(レーザートーニングなど)、肌全体のトーンアップ、毛穴の引き締め、肌のハリ感アップなど。


4-2-3. 光治療(IPL):シミやくすみにアプローチ

◉施術内容:IPL(Intense Pulsed Light)という幅広い波長の光を肌に照射する治療です。レーザーのように単一の波長ではなく、複数の波長の光を組み合わせることで、シミ・そばかす、赤ら顔、くすみ、小じわ、毛穴の開きなど、様々な肌トラブルに同時にアプローチできます。

◉期待される効果:シミ・そばかす・くすみの改善、肌全体のトーンアップ、赤ら顔の改善、毛穴の引き締め、肌のハリ・ツヤ感アップなど。比較的ダウンタイムが少なく、マイルドな治療法です。


4-3. 美容施術を検討する際の注意点やクリニック選びについて

美容内服薬や美容施術は、セルフケアだけでは得られにくい効果が期待できる一方で、いくつかの注意点があります。

◎効果の個人差と限界:肌質や症状、生活習慣などにより、効果の現れ方や程度には個人差があります。また、どんな治療法でも万能ではなく、限界があることを理解しておきましょう。

◎リスク・副作用:全ての医療行為には、何らかのリスクや副作用の可能性があります。施術前に医師から十分な説明を受け、理解・納得した上で治療を選択することが大切です。

◎ダウンタイム:施術によっては、赤み、腫れ、かさぶた、内出血などが生じ、日常生活に一時的な制約が出る「ダウンタイム」が必要な場合があります。

◎費用:美容医療は自由診療が基本となるため、保険適用外で費用が高額になることがあります。治療内容、回数、費用について事前にしっかりと確認しましょう。

◎継続の必要性:一度の治療で永続的な効果が得られるとは限りません。効果を維持するためには、定期的な治療やメンテナンスが必要となる場合があります。


美容内服薬や美容施術は、正しく理解し、適切に活用することで、あなたの美白ケアを力強くサポートしてくれるでしょう。しかし、最も大切なのは、ご自身の肌としっかり向き合い、専門家とよく相談しながら、納得のいく方法を選ぶことです。


完璧なUVケア
画像:完璧なUVケア

 

5:【Q&A】肌を白くする方法に関するよくある疑問




美白ケアを始めると、「本当に効果があるの?」、「どれくらいで白くなるの?」など、様々な疑問が浮かんできますよね。ここでは、お客様からよくいただくご質問とその回答をご紹介します。

Q1. 地黒でも肌は白くなりますか?

A1. 生まれ持った肌の色(スキンタイプ)を遺伝的な限界以上に白くすることは難しいと言えます。しかし、ご自身が本来持っている肌の明るさまでトーンアップすることは十分に可能です。

多くの方が「地黒」と感じている肌の色は、実は日常的に浴びる紫外線による日焼けや、摩擦などの刺激による色素沈着が影響している場合があります。

【地黒か日焼けかを見分けるポイント】
紫外線をほとんど浴びていない二の腕の内側やお腹、太ももの内側などの肌の色と、顔や腕など露出部の肌の色を比べてみましょう。もし内側の肌の方が明るい場合は、日焼けによる影響で肌が暗く見えている可能性が高く、適切な紫外線対策や美白ケアによって、その明るさに近づける可能性があります。


Q2. 生まれつき肌が黒いのはなぜですか?

A2. 肌の色は、主に皮膚に含まれる「メラニン色素」の量と種類によって決まります。このメラニンを生成する能力や量は、ご両親から受け継いだ遺伝的な要因によって大きく左右されます。

メラニン色素には、紫外線から肌細胞を守るという重要な役割があります。日差しの強い地域にルーツを持つ人種は、肌を守るためにメラニンを多く生成する遺伝的特徴を持っている傾向があります。つまり、生まれつき肌が黒い、あるいは褐色が濃いというのは、紫外線に対する防御機能が高いとも言えるのです。


Q3. 1週間で肌を白くする方法はありますか?

A3. 残念ながら、1週間という非常に短い期間で肌の色を劇的に白くする、あるいは目に見えて明るくトーンアップさせることは医学的に難しいと言えます。

肌には「ターンオーバー」という新陳代謝のサイクルがあり、新しい皮膚細胞が生まれてから古い角質となって剥がれ落ちるまでには、健康な肌でも約28日程度の期間が必要です(年齢や肌の状態によってこの期間は変動します)。メラニン色素もこのターンオーバーの過程で徐々に排出されていきます。

そのため、美白ケアの効果を実感するには、このターンオーバーのサイクルを考慮した、ある程度の継続期間が必要となります。


Q4. 美白ケアの効果はどのくらいで実感できますか?

A4. 美白ケアの効果を実感できるまでの期間は、肌のターンオーバーの周期が一つの目安となります。一般的には、ターンオーバーの1サイクル以上、つまり1ヶ月~3ヶ月程度の継続的なケアで、肌の明るさや透明感の変化を感じ始める方が多いようです。

しかし、効果の現れ方には個人差が大きく、使用する美白有効成分の種類、濃度、スキンケア製品の浸透技術、ご自身の肌質、生活習慣(特に紫外線対策の徹底度)、そして目指す肌の状態によっても異なります。


大切なのは、焦らずに正しい方法でケアを継続することです。すぐに結果が出なくても、地道な努力が数ヶ月後の肌に繋がっていきます。もし効果実感が乏しい場合は、一度医師にご相談いただくと良いでしょう。



伝統的UVケア
伝統的UVケア?

まとめ:正しい知識とケアで、理想の透明美肌へ

この記事では、「美白」の正しい知識から、肌が黒くなる様々な原因、今日から実践できるスキンケアや生活習慣の改善策、そしてより高い効果を求める方への美容内服薬や美容施術に至るまで、透明感あふれる白い肌を目指すための情報を網羅的にお伝えしました。

美白への道は、正しい知識を身につけ、日々の地道なケアを継続することが何よりも大切です。紫外線対策の徹底、バランスの取れた食事、質の高い睡眠といった基本的な生活習慣の見直しは、健やかで美しい肌の土台となります。
しかし、「セルフケアだけではなかなか効果を実感できない」「もっと早く、確実に理想の肌に近づきたい」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。また、ご自身の肌質やシミの種類に合った最適なケア方法が分からず、お困りの方もいるでしょう。

そのような時は、ぜひ一度、美容皮膚科クリニックでご相談ください。当クリニックでは、お一人おひとりの肌状態を丁寧に診察し、医学的根拠に基づいたカウンセリングを通して、あなたに最適な美白プランをご提案します。あなたの「なりたい肌」の実現を力強くサポートいたします。クリニックへのご来院を心よりお待ちしております。


 

クリニックでの美白治療

 


【参考文献】
1) 厚生労働省:医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000179263.pdf

2) Advanced lipoxidation end-products (ALEs) and advanced glycation end-products (AGEs) in aging and age-related diseases
Moldogazieva NT, et al.
Oxid Med Cell Longev.
2019:3085756

3) 米国皮膚科学会(AAD)公式サイト
"Face washing 101"
https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-basics/care/face-washing-101

4) Topical Vitamin C and the Skin: Mechanisms of Action and Clinical Applications
Firas Al-Niaimi, et al.
J Clin Aesthet Dermatol.
2017;10(7):14-17

5) Arbutin as a Skin Depigmenting Agent with Antimelanogenic and Antioxidant Properties
Yong Chool Boo
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2021;10(7):1129

6) Tranexamic acid in melasma: A focused review on drug administration routes
Konisky H, et al.
J Cosmet Dermatol.
2023;22(4):1197-1206

7) WHO
Radiation: Protecting against skin cancer
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/radiation-protecting-against-skin-cancer

8) 米国皮膚科学会(AAD)公式サイト
Sunscreen FAQs
https://www.aad.org/media/stats-sunscreen

9) エスエス製薬:L-システインの研究
https://www.ssp.co.jp/research/keytech/l-cysteine/

10) ポーラ化成工業:プレスリリース
https://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20211130_02.pdf

11) Glutathione as a skin-lightening agent and in melasma: a systematic review
Rashmi Sarkar, et al.
Int J Dermatol.
2025;64(6):992-1004

12) Glutathione for skin lightening: a regnant myth or evidence-based verity?
Sidharth Sonthalia, et al.
Dermatol Pract Concept.
2018;8(1):15-21


 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月21日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.05.18更新

 

【目次】

1: 「コラーゲンは飲んでも肌に届かない」?
2: 経口コラーゲン摂取、肌への効果は?
3: そもそも「コラーゲン」とは?
4: なぜコラーゲンは減ってしまうの?
5: コラーゲンを効果的に「摂る」「増やす」方法
6: コラーゲン摂取に関する注意点
7: コラーゲンと美容医療





「コラーゲン、飲んでも意味ないってホント?」、「肌のハリ不足、どうにかしたい…」そんなお悩み、ありませんか?その肌の悩み、もしかしたらコラーゲンについての誤解や知識不足が原因かもしれません。「結局どうすればいいの?」この記事がその疑問に答えます。

最新の科学的知見に基づき、コラーゲンの「真実」と効果的な活用法を徹底解説、この記事では、コラーゲン摂取の新常識から、驚きの肌効果、賢い増やし方、日々の注意点、さらに進んだ最新美容医療アプローチまで、あなたが知りたいコラーゲンの全てをギュッと凝縮してお届けします。

これを読めば、もうコラーゲン情報に迷うことはありません。あなたに最適な具体的なケア方法が見つかり、内側から輝くようなハリとツヤのある肌を目指せます。

コラーゲンを正しく理解し、賢く活用して、自信あふれる若々しい肌を手に入れましょう。さあ、一緒に「コラーゲン」の扉を開きましょう。

コラーゲンを「飲む」


1: 「コラーゲンは飲んでも肌に届かない」は過去の話?最新の科学的知見



「コラーゲンをサプリで飲んでも、どうせ胃腸でアミノ酸に分解されちゃうんでしょ?直接肌に届くわけじゃないから意味ないって聞いたけど…」美容に関心のある方なら、一度はこんな話を聞いたことがあるかもしれません。

確かに、かつては、食事やサプリで摂ったコラーゲンは、消化管でアミノ酸に完全に分解されるため、そのままの形で体内で利用されたり肌に直接届いたりしないと考えられていました。 鳥の手羽先料理や参鶏湯などコラーゲンが豊富な食事をすると肌がプルプルになるという話を「そんなことは医学的にあり得ない!」と、美容皮膚科医である私自身も過去には口にしていた記憶があります。

しかし、近年の研究によって、その常識は大きく変わりつつあります。今回は、コラーゲン経口摂取に関する最新の科学的知見について、詳しく解説していきましょう。


1-1. かつての常識:「タンパク質はアミノ酸に分解されて吸収される」という壁

私たちの体は、食事から摂取したタンパク質をそのままの形で吸収することはできません。タンパク質は非常に大きな分子であるため、消化管内でアミノ酸まで分解されてから、初めて吸収・利用されるというのは、中学校の理科で教わる消化・吸収の基本です。

コラーゲンもタンパク質の一種ですから、当然このルールに従うと考えられていました。

つまり、コラーゲンを摂取しても、それは一旦バラバラのアミノ酸になるので、そのアミノ酸が体内で再びタンパク質に再合成される過程で、必ずしも肌のコラーゲンとして使われるとは限らない、というわけです。これが、「コラーゲンを飲んでも肌には届かない」と言われていた主な理由です。


1-2. 常識を覆した発見:「コラーゲンペプチド」の吸収と機能性

しかし、研究が進むにつれて、この常識に疑問符が投げかけられるようになります。特に注目されたのが、「コラーゲンペプチド」の存在です。コラーゲンペプチドとは、コラーゲンが酵素で細かく分解され、アミノ酸が数個つながった状態のものを指します。

近年の研究により、摂取したコラーゲンの一部は、アミノ酸まで完全に分解されるのではなく、この「コラーゲンペプチド」という形で消化管から吸収され、血中を介して皮膚を含む全身の組織に運ばれることが分かってきました。 これは、従来の「全てアミノ酸に分解される」という考えを覆す、非常に重要な知見です。


1-3. コラーゲンペプチドは肌のコラーゲン産生を促す?

そして、さらに重要なのは、これらのコラーゲンペプチドが、単に体を作る材料となるだけでなく、体に様々な指令を出す「シグナル分子」として機能する可能性が示唆されてきたことです。

具体的には、特定の構造を持つコラーゲンペプチドが皮膚の線維芽細胞(コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸などを作り出す細胞)に働きかけ、新たなコラーゲンの産生を促すというメカニズムが提唱されています。

つまり、摂取したコラーゲンが直接組織になるのではなく、体内で新しく作られる力を高める存在となりうる と考えられるようになってきたのです。

これは、コラーゲン摂取に対する考え方を大きく転換させる発見でした。


1-4. 京都大学 佐藤健司名誉教授の功績:コラーゲンペプチド研究のパイオニア

この分野における重要な貢献として、京都大学の佐藤健司名誉教授(研究当時は教授)の研究が挙げられます。

佐藤教授は、特定の構造(Pro-Hyp)を持つコラーゲンペプチドが消化管から吸収され、血流に乗って皮膚に到達し、線維芽細胞を刺激してコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進することを実証しました。

それ以前は、摂取されたタンパク質は、個々のアミノ酸に分解されるという常識が主流でしたが、佐藤教授は「ペプチドのまま吸収され、生理的機能を発揮する」という概念を確立しました。

佐藤教授の研究は、その後の機能性ペプチド研究を加速させる大きな転機となったのでした。


1-5. ペプチド研究の広がり:美容・健康分野への応用

佐藤教授の研究を皮切りに、様々な機能を持つペプチドの研究が世界中で活発に行われるようになりました。

その結果、現在では、コラーゲンペプチドだけでなく、様々な種類のペプチドが、美肌効果(ハリ、弾力、保湿など)、痩身効果、育毛効果、さらには疲労回復や関節機能の改善など、多岐にわたる美容・健康効果を持つことが期待され、サプリメントや機能性表示食品、化粧品に応用されています。

かつての「コラーゲンは飲んでも意味がない」という説は、科学の進歩とともにアップデートされつつあります。

もちろん、コラーゲンペプチドを摂取すれば誰もが必ず劇的な効果を実感できるというわけではありませんし、効果には個人差があります。しかし、最新の研究は、コラーゲン摂取が私たちの肌や体に良い影響を与える可能性を強く示唆しているのです。

次に、経口コラーゲン摂取が実際に肌にどのような効果をもたらすのか、最新の医学的結論についてさらに詳しく見ていきましょう。


コラーゲンの効果検証


2: 経口コラーゲン摂取、肌への効果は?最新の医学的結論



前章では、「コラーゲンは飲んでも意味がない」というかつての常識が、コラーゲンペプチドの発見と研究によって覆されつつあることをお話ししました。

特定のコラーゲンペプチドが消化管から吸収され、肌の線維芽細胞を刺激してコラーゲン産生を促す可能性があるという、まさに目から鱗の発見だったわけです。

では、実際にコラーゲンを経口摂取することで、私たちの肌にはどのような効果が期待できるのでしょうか?ここでは、最新の医学的研究に基づいた結論を、複数の視点から詳しく解説していきます。


2-1. 近年注目される経口コラーゲンの有効性を示唆する研究結果

近年、経口コラーゲンサプリメントの有効性を示唆する研究結果が、世界中から数多く報告されるようになってきました。特に信頼性が高いとされる無作為化二重盲検プラセボ対照試験(研究者も被験者も、誰が本物のコラーゲンを摂取し、誰が偽薬(プラセボ)を摂取しているか分からないようにして行う試験方法)において、注目すべき結果が得られています。

複数の研究を統合的に分析した報告(メタアナリシス)によれば、コラーゲンペプチドを毎日摂取することで、肌の弾力性が有意に向上したという結果が示されています。驚くべきことに、これらの改善効果は、サプリメントの摂取開始からわずか4週間から12週間程度という比較的短期間で観察されたと報告されています。

肌の弾力性だけでなく、皮膚の水分量増加(保湿効果)、しわの深さの軽減、さらには皮膚の密度(真皮のコラーゲン量などを示す指標)の改善といった効果も報告されています。

これらの効果は、コラーゲンペプチドが線維芽細胞を刺激し、新たなコラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進するという前章でお話ししたメカニズムによってもたらされると考えられています。

さらに興味深いのは、これらの効果が、コラーゲンサプリメントの摂取を中止した後もある程度持続する可能性を示唆する研究結果も存在する点です。これは、単に一時的に補給されただけでなく、肌自体のコラーゲン産生能力が高まった結果である可能性を示しており、今後の研究が待たれるところです。

実際に、多数のランダム化比較試験を対象としたシステマティックレビューとメタアナリシス(質の高い複数の研究結果を収集・吟味し、統計学的に統合して分析する手法)では、加水分解コラーゲン(コラーゲンペプチドのこと)の摂取が、皮膚の保湿と弾力性に対してプラスの効果をもたらすことが確認されています。これは、経口コラーゲン摂取の有効性を支持する、非常に重要なエビデンスと言えるでしょう。


2-2. 一方で、「効果は限定的」「明確な結論はまだ」という意見も

ここまで、経口コラーゲン摂取の肯定的な研究結果を中心にご紹介してきましたが、美容皮膚科医として、多角的な情報を提供することも重要だと考えています。

現状では、「コラーゲンサプリメントの効果は限定的である」あるいは「明確な結論はまだ出ていない」とする意見や研究報告も存在することを無視できません。これは、研究デザイン(対象者の年齢層、人種、摂取するコラーゲンペプチドの種類や量、摂取期間など)の違いによって、結果にばらつきが出ることが一因と考えられます。

また、市販されているコラーゲンサプリメントの種類は非常に多く、どの製品でも同様の効果が得られるとは限りません。コラーゲンペプチドの種類や分子量、吸収効率を高めるための工夫など、製品によって品質に差がある可能性も考慮する必要があります。

そのため、すべての人に、あるいはすべての製品で同様の顕著な効果が保証されているわけではない、というのが現時点でのバランスの取れた見方と言えるでしょう。効果の感じ方には個人差があることも忘れてはいけません。


2-3. 美容医師としての見解と今後の展望

私自身、美容医師として多くの方のお肌の悩みに向き合う中で、コラーゲンに関するご質問は頻繁に受けます。最新の研究動向を踏まえると、かつてのように「飲んでも全く意味がない」と一蹴するどころではなく、コラーゲンペプチドを適切に摂取することで、肌のハリや潤いをサポートする可能性は十分にあると考えています。

しかし、サプリメントはあくまで「補助」であり、日々のスキンケア、バランスの取れた食事、十分な睡眠、紫外線対策といった基本的な生活習慣が最も重要であることは言うまでもありません。その上で、より積極的に肌の健康を目指したい方にとって、コラーゲンサプリメントは選択肢の一つとなり得るでしょう。

今後、さらに質の高い臨床研究が進み、どのような種類のコラーゲンペプチドを、どのくらいの量、どのくらいの期間摂取すれば、どのような効果が期待できるのか、より詳細な情報が明らかになることを期待しています。

次の章では、そもそも私たちの美肌に欠かせない「コラーゲン」とは一体何なのか、その基本的な役割について、改めて詳しく解説していきます。


コラーゲンとは


3: そもそも「コラーゲン」とは?美肌における大切な役割



では、そもそも私たちの美肌にとって、そして健康にとっても非常に重要な「コラーゲン」とは、一体どのような物質なのでしょうか?コラーゲンの基本的な知識と、特に美肌における大切な役割について、改めて詳しく解説していきます。


3-1. コラーゲンは体を作る「柱」であり「接着剤」

コラーゲンは、私たちの体を構成する主要なタンパク質の一種です。具体的には、体内の様々な組織を構成する繊維状のタンパク質で、皮膚、骨、軟骨、腱、靭帯、血管など、体のあらゆる場所に存在しています。

驚くべきことに、人間の体内に存在するタンパク質の約30%をコラーゲンが占めていると言われており、これは私たちの体を形作り、支える上でいかにコラーゲンが不可欠であるかを示しています。

よく例えられるのは、建物の鉄骨やセメントのような役割です。細胞と細胞を繋ぎ合わせ、組織に強度や弾力性を与えることで、私たちの体は形を保ち、スムーズに機能することができます。つまり、コラーゲンは単に肌の成分というだけでなく、体の構造を支える「柱」であり、組織同士を繋ぎとめる「接着剤」のような働きをしているのです。


3-2. 肌だけじゃない!全身の健康と若々しさに関わるコラーゲン

コラーゲンと聞くと、多くの方が「肌のハリや弾力」をイメージされると思いますが、その働きは美肌効果だけに留まりません。

前述の通り、コラーゲンは皮膚だけでなく、粘膜、骨、靭帯、血管などにも豊富に含まれています。例えば、骨においては、カルシウムが付着する土台となり、骨の強度やしなやかさを保つのに役立っています。関節では、軟骨の主成分としてクッションの役割を果たし、スムーズな動きをサポートします。また、血管においては、血管壁の弾力性を維持し、しなやかな血管を保つことにも貢献しています。


3-3. 美肌の鍵を握る!真皮の主役「コラーゲン」

私たちの皮膚は、外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」という三層構造になっています。このうち、肌のハリや弾力、潤いを保つ上で最も重要な役割を担っているのが、表皮の下に位置する「真皮」です。

そして、この真皮の主成分こそがコラーゲンであり、その構成比はなんと約70%にも及びます。真皮は、例えるなら肌のベッドのスプリングやマットレスのようなもので、肌全体の弾力やボリュームを支えています。コラーゲンは、この真皮内で網目状のネットワーク構造を作り、肌の土台としての強度としなやかさを生み出しています。

具体的には、真皮内に存在する「線維芽細胞」という細胞が、コラーゲンをはじめ、エラスチン(肌に弾力を与える弾性線維)やヒアルロン酸(水分を保持する物質)などを産生しています。コラーゲンがしっかりと存在することで、肌は内側から持ち上げられ、パンとしたハリが保たれます。また、エラスチンがそのコラーゲン線維同士をしっかりと束ね、ヒアルロン酸がその隙間を水分で満たすことで、肌の弾力と潤いが維持されるのです。

コラーゲンの量が減少したり、質が低下したりすると、この肌の土台が弱くなり、スプリングがへたったベッドのように、肌は弾力を失い、ハリがなくなり、シワやたるみといったエイジングサインが現れやすくなってしまいます。


このように、コラーゲンは私たちの肌の美しさと若々しさを保つために、なくてはならない存在です。しかし、残念ながら体内のコラーゲンは年齢とともに自然と減少していってしまいます。次の章では、なぜコラーゲンが減ってしまうのか、その原因について詳しく解説していきます。


なぜコラーゲンは減るのか?


4: なぜコラーゲンは減ってしまうの?



「最近、肌のハリがなくなってきた気がする…」「以前はなかったシワやたるみが気になる…」そう感じている方もいらっしゃるかもしれません。その原因の一つとして、体内のコラーゲンが減少している可能性が考えられます。

では、なぜ私たちの体内のコラーゲンは減ってしまうのでしょうか?この章では、コラーゲン減少の主な原因について、詳しく解説していきます。


4-1. 避けては通れない「加齢」という現実

まず、最も大きな原因として挙げられるのが「加齢」です。悲しい現実ではありますが、体内のコラーゲンは年齢と共に減少傾向にあります。 一般的に、コラーゲンの量は20代をピークに徐々に減少し始め、40代以降になるとその減少スピードはさらに加速すると言われています。

この主な理由は、加齢により、コラーゲンを作り出す工場である「線維芽細胞(せんいがさいぼう)」の数自体が減少したり、その働きが衰えてしまったりするためです。

若い頃は活発に新しいコラーゲンを生み出していた線維芽細胞も、年齢を重ねるにつれて元気がなくなり、コラーゲンを合成する力が弱まってしまうのです。その結果、古いコラーゲンが分解されるスピードに新しいコラーゲンの生成が追いつかなくなり、肌全体のコラーゲン量が徐々に減ってしまう、というわけです。

これは、いわば自然な老化現象の一つであり、誰にでも起こりうることです。


4-2. 肌老化の最大の原因?!「紫外線」によるダメージ

加齢による自然なコラーゲン減少に加えて、私たちの肌にとって非常に深刻なダメージを与え、コラーゲン減少を加速させる最大の外的要因が「紫外線」です。

太陽光に含まれる紫外線、特にUV-A波は、肌の奥深く、真皮層にまで到達し、コラーゲンに様々な悪影響を及ぼします。具体的には、紫外線が皮膚に当たると、コラゲナーゼなどの「コラーゲン分解酵素」が過剰に作り出されてしまいます。 この酵素は、文字通りコラーゲン線維をバラバラに分解し、破壊してしまう働きがあります。

さらに厄介なことに、紫外線はコラーゲンを分解するだけでなく、線維芽細胞そのものにもダメージを与え、正常なコラーゲンを新たに作り出す能力(コラーゲン生成能力)をも低下させてしまうのです。つまり、紫外線はコラーゲンを「壊す」と同時に「作らせない」という、ダブルの攻撃を仕掛けてくるのです。

このように紫外線によって引き起こされる肌の老化は「光老化(ひかりろうか)」と呼ばれ、非常に重要なポイントです。実は、肌の老化の約8割は、この紫外線による光老化が原因であるとまで言われています。加齢による自然な老化よりも、紫外線による光老化の方が、肌への影響はより激しく、深刻な場合が多いのです。

シワ、たるみ、シミといった肌のエイジングサインの多くは、長年浴び続けてきた紫外線の蓄積によるものと言っても過言ではありません。日頃からの紫外線対策がいかに重要であるか、お分かりいただけるかと思います。


4-3. 肌のコゲつき?「糖化」によるコラーゲンの質の低下

そしてもう一つ、近年注目されているコラーゲン劣化の原因が「糖化(とうか)」です。

糖化とは、食事などから摂取した余分な糖質が、体内のタンパク質(コラーゲンもタンパク質の一種です)と結びついて変性し、「AGEs(最終糖化産物)」という老化物質を生成する反応のことを指します。

このAGEsがコラーゲンに蓄積すると、コラーゲン線維は硬く、もろくなってしまいます。例えるなら、コラーゲンが「焦げ付いた」ような状態になるイメージです。糖化によって変性したコラーゲンは、本来のしなやかさや弾力性を失い、肌のハリや弾力を著しく低下させる原因となります。

糖化が進むと、肌はゴワゴワと硬くなり、黄ぐすみも現れやすくなります。また、糖化したコラーゲンは分解されにくく、新しいコラーゲンの生成も阻害するため、肌のターンオーバーも乱れがちになります。

甘いものの食べ過ぎや、血糖値が急上昇しやすい食生活は、この糖化を進行させる大きな要因となります。


4-4. その他のコラーゲン減少・劣化要因

加齢、紫外線、糖化の他にも、私たちの生活習慣の中にはコラーゲンを減少させたり、質を低下させたりする要因が潜んでいます。

栄養バランスの偏り: コラーゲンの合成には、タンパク質だけでなく、ビタミンCや鉄分なども必要です。これらの栄養素が不足すると、コラーゲンの生成がスムーズに行われなくなります。

睡眠不足: 睡眠中には成長ホルモンが分泌され、肌の修復や再生が促されます。睡眠不足は、このプロセスを妨げ、コラーゲンの再構築にも影響を与えます。

ストレス: 過度なストレスは活性酸素を増やし、細胞にダメージを与えます。これは線維芽細胞の働きを弱め、コラーゲン産生能力の低下につながる可能性があります。

喫煙: 喫煙はビタミンCを大量に消費し、活性酸素を増やしてコラーゲンを破壊するだけでなく、血管を収縮させて肌への栄養供給を滞らせるなど、肌にとって百害あって一利なしです。

これらの要因が複雑に絡み合い、私たちの肌のコラーゲンは日々少しずつ失われ、質も変化していってしまうのです。


しかし、原因が分かれば対策も見えてきます。次の章では、これらの原因を踏まえた上で、コラーゲンを効果的に「摂る」そして「増やす」ための具体的な方法について、詳しく解説していきます。

 



コラーゲンを摂る


5: コラーゲンを効果的に「摂る」「増やす」方法



では、具体的にどのような方法でコラーゲンを効果的に摂取し、体内で増やすことができるのでしょうか?ここでは、食事やサプリメントによる摂取方法から、日々の生活習慣で見直すべきポイントまで、幅広くご紹介します。


5-1. 食事からコラーゲンを摂る

まず基本となるのは、日々の食事です。コラーゲンは様々な食品に含まれています。

コラーゲンが多く含まれる食品の例としては、以下のようなものが挙げられます。
動物性食品: 牛すじ、豚足、鶏手羽先、鶏皮、軟骨、豚バラ肉、フカヒレ、うなぎ、カレイ、エビなど
その他: ゼラチン(ゼリーやマシュマロなど)

これらの食品を意識して食事に取り入れることで、コラーゲンを摂取することができます。身近で調理しやすい食品もありますが、うなぎやフカヒレなどは、コラーゲンが豊富でも日常的に摂るのは難しい食品もあります。

日本でコラーゲンの1日の推奨摂取量は定められていません。実際の摂取量については、20〜50代の日本人女性を対象にした調査で、日常の食事から摂取しているコラーゲン量は平均約1.9 g/日とする報告があります。

美容目的での臨床研究では、1日5~10g/日のコラーゲンが使われていますから、食品からだけでは、この量を毎日継続的に摂るのは難しいかもしれません。


5-2. コラーゲンサプリメントの活用

そこで便利なのが、コラーゲンサプリメントです。食事で不足する場合や、手軽に効率よくコラーゲンを摂取したい場合にサプリメントは便利であると言えるでしょう。

最近のサプリメントは、特に「コラーゲンペプチド」の形で配合されているものが主流です。コラーゲンペプチドは、通常のコラーゲンよりも分子が小さく分解されているため、体内で吸収されやすいというメリットがあります。 第1章でも解説したように、このコラーゲンペプチドが線維芽細胞を刺激する可能性が研究されています。

サプリメントを選ぶ際は、コラーゲンペプチドの種類や含有量を確認しましょう。1日あたり5~10gの摂取を推奨している製品が多いですが、製品ごとの推奨量を守って摂取することが大切です。


5-3. コラーゲンの合成をサポートする栄養素も一緒に摂るべき?

コラーゲンを摂取するだけでなく、体内で効率よくコラーゲンが作られるようにサポートすることも重要です。体内でコラーゲンが作られる際には、特定の栄養素が必要となります。特に重要なのが、ビタミンCと鉄分です。

ビタミンC: コラーゲン線維を合成する過程で必須の補酵素として働きます。不足すると、正常なコラーゲンの生成が妨げられてしまいます。
鉄分: コラーゲンの合成に必須ではありませんが、合成後の構造の安定化に欠かせません。

サプリメントの中にはこうした栄養素を配合してある製品もありますが、ビタミンCや鉄を一緒に摂った方が効果的という証拠はありません。何よりこれまでの臨床研究はほとんどがコラーゲン単独で摂取していますので、これらの栄養素を気にする必要はありません。


5-4. 摂取のタイミングは?

コラーゲンサプリメントの摂取のタイミングについては

・朝の空腹時
・トレーニング前後
・就寝前
・食後

など、さまざまなタイミングが推奨されていますが、明確に「この時間帯がより有効」とするエビデンスはありません。

これまで行われてきた臨床試験でも、摂取のタイミングについては言及していませんので、「忘れずに摂取する」ことを優先して、忘れにくい、習慣化しやすいタイミングを選べばいいでしょう。


コラーゲンを効果的に「摂る」ことと「増やす(守る・育む)」こと、この両輪でアプローチしていくことが、ハリと弾力のある美しい肌を目指す上で非常に大切です。次の章では、コラーゲン摂取に関する注意点について詳しく見ていきましょう。


6: コラーゲン摂取に関する注意点



6-1. 食品からのコラーゲン摂取:脂質やカロリーに注意

コラーゲンを多く含むとされる手羽先や豚足、鶏皮といった食品は、確かにコラーゲンの供給源となります。しかし、これらの食品はコラーゲンと同時に脂質も多く含んでいる場合があります。美味しくてつい食べ過ぎてしまうと、脂質の摂りすぎからカロリーオーバーにつながり、体重増加の原因になったり、皮脂の過剰な分泌を招いてニキビなどの肌トラブルを引き起こしたりする可能性も否定できません。バランスの取れた食事を心がけ、特定の食品に偏らないように注意しましょう。


6-2. サプリメントの過剰摂取は禁物!

手軽にコラーゲンを補給できるサプリメントは非常に便利ですが、「たくさん飲めばもっと効果が出るはず」というのは大きな誤解です。

消化器系の不調など: コラーゲンサプリメントを過剰に摂取すると、げっぷ、お腹の張り、吐き気、下痢、胃もたれといった消化器系の不快な症状が出ることがあります。これらは比較的軽い症状であることが多いですが、推奨量を守ることが大切です。

「多ければ多いほど効く」わけではない: 多くの臨床研究では、1日に5~10g程度のコラーゲンペプチド摂取で効果が報告されています。これを超える量を摂取しても効果が比例して高まるという科学的根拠は乏しく、むしろ副作用のリスクを高めるだけになる可能性があります。製品に記載されている推奨目安量を守りましょう。


6-3. アレルギー反応に注意!原料の確認を

コラーゲンサプリメントの原料には、牛、豚、鶏、魚などが使われています。これらの原料に対してアレルギーをお持ちの方は、摂取することでアレルギー反応を引き起こす可能性があります。

症状: じんましん、かゆみ、赤みといった皮膚症状から、場合によっては呼吸困難などのアナフィラキシーショックといった重篤な症状に至るケースも報告されています。

対策: ご自身のアレルギーを把握し、サプリメントを購入する際には必ず原材料表示を確認しましょう。特に魚介類や鶏、卵などにアレルギーがある方は注意が必要です。不安な場合は、かかりつけ医にご相談ください。


6-4. 製品の品質と安全性もチェック

市場には様々な品質のサプリメントが出回っています。残念ながら、原料の汚染による重金属が含まれている可能性も指摘されています。信頼できるメーカーの製品を選ぶようにしましょう。



6-5. 特に注意が必要な方

以下に該当する方は、コラーゲンサプリメントの摂取に関して特に注意が必要です。

持病のある方: 腎機能に障害のある方や、過去に高カルシウム血症と診断されたことがある方などは、摂取前に必ず主治医にご相談ください。
妊娠中・授乳中の方: 妊娠中や授乳中の安全性に関する十分なデータはまだありません。美容目的での高用量のコラーゲン摂取は控えるようにしましょう。


6-6. 万が一、体調に異変を感じたら

コラーゲンサプリメントを摂取し始めてから、何らかの体調の変化を感じた場合は、すぐに摂取を中止してください。そして、摂取した製品名、ロット番号、摂取量、出現した症状などを記録しておきましょう。症状が重い場合や、改善しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。


コラーゲンは、適切に摂取すれば私たちの美容と健康をサポートしてくれる心強い味方です。しかし、やみくもに摂るのではなく、これらの注意点をしっかりと理解した上で、ご自身の体質やライフスタイルに合った方法で上手に取り入れていきましょう。もし不安な点や疑問点があれば、医師にご相談いただくと良いでしょう。


コラーゲンと美容医療


7: コラーゲンと美容医療



これまでコラーゲンの重要性や、食事やサプリメントによる摂取、そして日々のケアについてお話ししてきました。しかし、「もっと積極的に、効果的に肌のコラーゲンを増やしたい!」と考えたとき、心強い選択肢となるのが美容医療です。

美容皮膚科の領域では、肌のハリや弾力を取り戻し、若々しい印象を維持するために、皮膚内のコラーゲンをいかに効率よく増やすかということが、美肌治療における大きなテーマです。

そのために、様々なアプローチの治療法が開発され、日々進化しています。この章では、美容医療の現場で実際に行われている、コラーゲンを増やすための代表的な治療法について解説していきます。


7-1. 身体の治癒能力を利用する:創傷治癒反応と異物反応

美容医療でコラーゲン生成を促すための基本的な考え方の一つに、私たちの身体に本来備わっている「創傷治癒反応(そうしょうちゆはんのう)」を利用するというものがあります。これは、肌にあえて微細な傷や刺激を与えることで、その傷を修復しようとする過程でコラーゲンがたくさん作られる働きを活性化させるアプローチです。

代表的な治療法としては、以下のようなものがあります。

レーザー治療・高周波(RF)治療・HIFU(ハイフ)治療: これらの治療は、特定の波長のレーザー光や高周波の熱エネルギー、高密度焦点式超音波(HIFU)などを皮膚の真皮層に照射することで、微細な熱ダメージを与えます。この熱ダメージが刺激となり、線維芽細胞が活性化され、新たなコラーゲンの産生が強力に促進されます。シミや毛穴、ニキビ跡の改善など、目的に応じて様々な種類の機器が用いられます。熱エネルギーの加え方や深さをコントロールすることで、肌の引き締め効果やたるみ改善も期待できます。

マイクロニードリング(ダーマペン): 極めて細い多数の針(マイクロニードル)を使って、肌の表面に微細な穴をあける治療法です。この微小な傷を作ることで、創傷治癒反応が引き起こされ、コラーゲンやエラスチンの増生が促されます。ダーマペンが代表的です。薬剤を併用することで、さらなる効果も期待できます。

もう一つの生体反応を利用する方法として、「異物反応」を利用したものもあります。
吸収性の糸(スレッドリフト): 医療用の溶ける糸を皮膚の下に挿入する治療法で、一般的に「スレッドリフト」と呼ばれています。糸を挿入することによる物理的なリフトアップ効果に加え、挿入された糸が体内で「異物」として認識されることで、その周囲にコラーゲン線維が生成される反応(異物反応による線維化)が起こります。これにより、肌のハリや弾力が高まり、引き締め効果も期待できます。糸の素材や形状によって、持続期間や効果の出方が異なります。


7-2. 薬剤の力でコラーゲンを育む:スキンブースター

近年注目されているのが、「スキンブースター」や「バイオスティミュレーター」と呼ばれる薬剤を肌に直接注入する治療法です。これは、肌に有効な成分を細かく、広範囲に注入することで、皮膚そのものの質感を改善し、コラーゲン生成を長期的に促進させることを目的としています。

代表的なものには、リジュランや、PLLA(ポリ-L-乳酸)、PCL(ポリカプロラクトン)、CaHA(カルシウムハイドロキシアパタイト)といった成分を用いた製剤があります。これらの成分は、肌に注入されると線維芽細胞を刺激し、コラーゲンやエラスチンの産生を促す薬理作用を持っています。単にボリュームを補うヒアルロン酸注入とは異なり、肌自身の再生能力を高めることで、より自然で持続的なハリやツヤの改善が期待できます。

細胞外マトリックス治療


7-3. 最新の潮流:細胞外マトリックス治療という新発想

そして、美容医療のコラーゲン治療における最新の考え方として、「細胞外マトリックス治療」というアプローチが登場しています。これは、従来の「刺激を与えて作らせる」という発想から一歩進んで、コラーゲンを生み出す細胞(線維芽細胞)や、その細胞が存在する環境(細胞外マトリックス)そのものに着目する治療法です。

細胞外マトリックスとは、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などから構成される、細胞を取り囲む足場のようなものです。この環境が悪化すると、線維芽細胞の働きも低下してしまいます。そこで、この細胞外マトリックスの質を改善し、皮膚幹細胞や線維芽細胞が元気に活動できる最適な環境を整えることで、これらの細胞が持つコラーゲン産生能力を最大限に引き出そうというのが、この治療法の狙いです。

具体的な治療法としては、細胞外マトリックスの構成成分そのものや、その産生を促す成長因子などを肌に補給する治療などが研究・開発されています。これにより、より根本的な肌質の改善や、長期的なエイジングケア効果が期待されています。


7-4. 自分に合った治療法を見つけるために

このように、美容医療にはコラーゲンを増やすための様々な選択肢があります。それぞれの治療法にはメリット・デメリットがあり、期待できる効果やダウンタイム、費用なども異なります。

大切なのは、ご自身の肌の状態や悩み、ライフスタイル、そしてどのような結果を望むのかを医師としっかり共有し、最適な治療法を選択することです。場合によっては、これらの治療法を組み合わせることで、より高い効果が得られることもあります。

コラーゲンサプリメントや日々のスキンケアに加えて、美容医療という選択肢も視野に入れることで、より積極的に理想の肌を目指すことができるでしょう。まずは信頼できる美容皮膚科医に相談し、自分に合ったコラーゲンケアを見つけていきましょう。



8. まとめ

この記事では、コラーゲンに関する古い常識が覆り、「コラーゲンペプチド」の経口摂取が肌のハリや潤いをサポートする可能性が科学的に示されていることを解説しました。

しかし、効果には個人差があり、サプリメントだけに頼らず、バランスの取れた食事や紫外線対策などの基本的な生活習慣が重要であることもお伝えしました。


コラーゲンは加齢や紫外線、生活習慣によって失われるため、「守り」、「補い」、「育む」という視点からの積極的なケアが美肌への鍵となります。

「自分に合ったケアが分からない」「もっと効果を実感したい」と感じていらっしゃるなら、ぜひ美容皮膚科の専門家にご相談ください。

当クリニックでは、最新の知見に基づき、お一人おひとりの肌状態を丁寧に診察。食事指導からサプリメントの選び方、さらにはレーザー治療から細胞外マトリックス治療まで、あなたに最適なコラーゲンケアプランをご提案します。

まずはお気軽に当クリニックのカウンセリングへお越しください。

 

クリニックでのコラーゲン治療

 

 細胞外マトリックス治療

(参考文献)

1)Four-weeks daily intake of oral collagen hydrolysate results in improved skin elasticity, especially in sun-exposed areas: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial
Wich Sangsuwan, et al.
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2)Oral Intake of Low-Molecular-Weight Collagen Peptide Improves Hydration, Elasticity, and Wrinkling in Human Skin: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study
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3)Daily oral supplementation with collagen peptides combined with vitamins and other bioactive compounds improves skin elasticity and has a beneficial effect on joint and general wellbeing
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4)Oral Supplementation of Specific Collagen Peptides Has Beneficial Effects on Human Skin Physiology: A Double-Blind, Placebo-Controlled Study
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5)A Collagen Supplement Improves Skin Hydration, Elasticity, Roughness, and Density: Results of a Randomized, Placebo-Controlled, Blind Study
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6)Effects of Oral Collagen for Skin Anti-Aging: A Systematic Review and Meta-Analysis
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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月18日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.05.16更新

 

【目次】

1. 黄砂とは?いつ頃、どこから飛んでくる?
2. なぜただの「砂」が肌荒れや健康被害をもたらすのか?
3. 黄砂による肌荒れ・皮膚症状の具体的なサイン
4. 黄砂と花粉、肌荒れの症状や対策はどう違う?
5 黄砂による肌荒れを徹底的に防ぐ!今日からできる対策
6. 黄砂による肌荒れがひどい場合は専門家へ相談を



「春先になると、なんだか肌がかゆいし、赤みやブツブツが…」そんな経験はありませんか?もしかしたら、それは春の風物詩ともいえる「黄砂」が原因かもしれません。

単なる砂ボコリと甘く見ていると、あなたの肌は知らず知らずのうちに深刻なダメージを受る可能性があります。なぜ、ただの砂がこれほどまでに肌トラブルを引き起こすのでしょうか?

この記事は、近年その健康被害が問題視されている「黄砂」について、皮膚科学の観点や専門機関の報告を交えながら、その正体と肌荒れのメカニズム、具体的な対策までを徹底的に掘り下げています。

読み進めることで、黄砂の本当の危険性を理解し、今日から実践できる具体的な予防策やスキンケア方法、さらには花粉との違いや万が一悪化した場合の対処法まで、あなたの肌を黄砂の脅威から守り抜くための知識が身につきます。

この記事を読めば、もう黄砂の季節に怯える必要はありません。正しい知識と対策で、つらい肌荒れから解放され、健やかで快適な春を過ごしましょう。



黄砂とは

 

1. 黄砂とは?いつ頃、どこから飛んでくる?



1-1. 黄砂の正体:砂漠の土壌・鉱物粒子が風で舞い上がる現象

黄砂(こうさ)は、英語では「Asian Dust」や「Yellow Sand」とも呼ばれ、中国内陸部のタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原といった広大な乾燥・半乾燥地域から強風によって大気中に舞い上がった微細な土壌・鉱物粒子が、上空の風によって運ばれ、広範囲に降下する気象現象です。

黄砂の粒子は砂漠の土壌由来の鉱物粒子で、石英や長石、雲母、方解石など様々な成分からなりますが、日本まで到達する黄砂の粒子は非常に小さく、その直径は平均して 4μm(マイクロメートル)。これは、花粉(直径約30µm)よりも小さくPM2.5(直径2.5µm以下)よりはやや大きいサイズです。


1-2. 日本への飛来時期とピーク

黄砂が日本で最も多く観測されるのは春先で、具体的には3月から5月にかけてです 。特に3月と4月が飛来のピークとされます 。

なぜ春に多いのか?
黄砂の発生源である中国内陸部の砂漠地帯では、春になると冬の間に凍結していた地面が解け、植物が生育する前の乾燥した土壌からは、この時期に強風が吹きやすいこともあり、大量の砂塵が上空へと巻き上げられます。上空では偏西風のジェット気流がちょうど日本上空を通るため、舞い上がった砂塵が日本まで運ばれます。


1-3. 近年、黄砂が注目されるようになった背景

黄砂自体は古くから知られる自然現象ですが、近年、特にその健康への影響が懸念され、注目度が高まっています。

呼吸器疾患の悪化やアレルギー症状の誘発、特に肌のかゆみや湿疹といった皮膚への悪影響が報告されています。

その背景には、黄砂の粒子が単なる砂だけでなく、発生源や飛来する途中の工業地帯などで、PM2.5、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)といった大気汚染物質や、鉛、カドミウムなどの重金属、さらには細菌やカビ、花粉といったアレルゲンとなりうる物質を吸着して運んでくることがあります 。

また、地球規模の気候変動や発生源地域の砂漠化の進行といった環境問題としても注目されています 。

黄砂は汚染物質の「運び屋」


2. なぜただの「砂」が肌荒れや健康被害をもたらすのか?黄砂の本当の危険性



2-1. 黄砂粒子自体の物理的な刺激:チクチク・ゴワゴワは気のせいじゃなかった!

黄砂の粒子は鋭利な形状を持つ微粒子です。皮膚に付着するとちょうどヤスリでこすられるように私たちの肌は細かく傷ついてしまうのです。

特に、肌が乾燥していたり、もともと肌のバリア機能が弱い敏感肌の人の場合、この物理的な刺激の影響はより深刻になりがちです。

「なんだか最近、肌がゴワゴワする」、「洗顔の時にチクチクする感じがする」といった経験はありませんか?もしかしたら、それは黄砂の粒子による物理的な刺激が原因かもしれません。


2-2. 飛来中に黄砂に付着する有害物質の正体:ただの砂じゃない!恐怖の添加物リスト

黄砂が肌に悪い影響を与えるのは、粒子の物理的な刺激だけではありません。実は、黄砂が空を旅してくる間に、様々な“厄介者”を身にまとってしまうことが、より深刻な問題を引き起こすのです。

「ただの砂」だったはずの黄砂は、発生源の砂漠地帯を飛び立った後、数千キロもの長い道のりを経て日本にやってきます。その道中、工業地帯や都市部といった、大気汚染が進んでいるエリアの上空を通過することが少なくありません。すると、まるでスポンジのように、空気中に漂う様々な有害物質を吸着・付着させてしまうのです。


恐怖の添加物リスト

●PM2.5(微小粒子状物質)
●大気汚染物質(人為起源のものなど)
工場の煙や自動車の排気ガスなどに含まれる、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOCs)
細菌やカビなどの微生物
重金属や有害化学物質
鉛、カドミウム、ヒ素、水銀といった人体に有害な重金属類や、ダイオキシン類、農薬といった残留性の有機汚染物質までもが検出されることがあります

黄砂はもはや「自然の砂」というだけでは片付けられない、大陸の環境汚染物質の「運び屋」のような存在になっています。そうして私たちの健康への脅威となっているのです。


2-3. 肌のバリア機能低下と、有害物質の侵入:お肌の守りが崩れるとき

私たちの肌には、外部の刺激や乾燥から身を守るためのバリア機能が備わっています。しかし、黄砂のシーズンになると、このバリア機能が脅かされてしまうのです。

まず、黄砂の粒子そのものが持つ物理的な刺激により、バリア機能を担う角質層の表面が細かく傷つけられます。さらに、黄砂に付着しているPM2.5や大気汚染物質、化学物質なども、肌表面で刺激となり、炎症を引き起こすことでバリア機能を弱める原因となります。

このようにして肌のバリア機能が低下すると、一体何が起こるのでしょうか?

もっと深刻なのは、バリア機能が壊れた「無防備な肌」に、黄砂に付着した有害物質が侵入すること。その結果、赤み、かゆみ、ヒリヒリ感、湿疹、ニキビの悪化など、様々な肌トラブルが表面化してくるのです。

つまり、黄砂による肌荒れは、「①黄砂による刺激でバリア機能が低下する」→「②低下したバリアの隙間から有害物質が侵入する」→「③侵入した有害物質がさらなる炎症を引き起こす」という、負のスパイラルに陥りやすいのが特徴です。


2-4. 体の防御反応「活性酸素」の過剰発生と肌へのダメージ:良かれと思ったガードマンが暴走?

黄砂に含まれる物質が肌に入り込むと、体はそれらを排除しようと活性酸素(ROS)を発生させます。活性酸素とは非常に強い酸化力を持つ酸素由来の分子で、本来は外敵から細胞を守るための防御物質です。

しかし、黄砂や大気汚染物質に常態的にさらされると、体は刺激から守ろうとして活性酸素を出し続けるため、皮膚では酸化ストレスによるダメージが蓄積しやすくなります。

過剰な活性酸素は皮膚にさまざまな悪影響を与えます。メラニン色素の産生を刺激してシミ(色素沈着)の原因になったり、皮脂の酸化による刺激でニキビなど炎症性皮膚疾患を悪化させたり、さらには、活性酸素が真皮のコラーゲンやエラスチンといった支持組織を劣化させ、シワやたるみなど肌老化を促進してしまいます。

黄砂対策においては、この酸化ストレスからいかに肌を守るか、という視点も非常に重要になります。


黄砂による肌荒れの症状


3. 黄砂による肌荒れ・皮膚症状の具体的なサイン



ここでは、黄砂によって現れやすい肌荒れや皮膚症状の具体的なサインについて、詳しく見ていきましょう。


3-1. 顔や首など、露出部分に現れやすい症状(かゆみ、赤み、ぶつぶつ、ヒリヒリ感、乾燥の悪化、バリア機能の低下、湿疹)

黄砂による肌荒れは、顔や首といった露出部分に起こりやすいことが知られています。特に肌が乾燥してバリア機能が低下していると黄砂の刺激に敏感になり、赤み、ぶつぶつ(小さな発疹)、かゆみ、ヒリヒリ感といった症状が出やすくなります。環境省によれば、黄砂の濃度が高い日に目や鼻、皮膚のアレルギー症状が増加することが示されており、黄砂飛来時には肌トラブルが起こりやすい状況です。


3-2. シミ、シワ、たるみなど、長期的な肌への影響

黄砂の影響は、一時的な肌荒れだけにとどまりません。実は、気づかないうちに肌の奥深くにダメージを与え、将来的なシミ、シワ、たるみといった肌の「老化」を早めてしまう可能性も指摘されています。

これは光老化に似たメカニズムで、大気汚染物質が肌に与える外的老化の一例です。実際、近年の研究でも大気中の粒子状物質への曝露が多い地域ほど、顔のシミやシワが増える傾向が報告されています。微粒子が皮膚に触れることで生じる酸化ストレスや炎症反応が、コラーゲン分解酵素の活性を高め、肌のハリを支えるエラスチンやコラーゲンを劣化させると考えられています。また、炎症に伴い皮膚の防御機能が乱れることで、慢性的な乾燥やくすみ、キメの低下なども生じやすくなります。

長期的な観点では、黄砂を含む大気汚染対策(洗顔や保湿、防護策など)を怠らず、肌の酸化ダメージを防ぐことが美容のためにも重要です。


3-3. アトピー性皮膚炎の悪化

アトピー性皮膚炎をお持ちの方は、黄砂の時期に症状が悪化しやすいことが指摘されています。黄砂が飛来すると、ぜんそくやアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎など既存のアレルギー疾患が悪化するケースが報告されています。

アトピー性皮膚炎の肌は元々バリア機能が弱く乾燥しがちなため、黄砂による物理的刺激や付着物による炎症の影響を受けやすくなります。環境省も「黄砂飛来日は皮膚症状の悪化が見られる場合があり注意が必要」と警鐘を鳴らしています。

黄砂がアトピー症状を悪化させるメカニズムとしては、いくつか考えられています。1つはアレルゲンの作用です。黄砂には花粉やカビ、ダニ由来物質などアレルギーを誘発しうる粒子が含まれており、皮膚に付着するとそれらが侵入して免疫反応を引き起こします

もう1つは炎症性物質の増加です。黄砂や花粉が付着すると皮膚でIL-33(インターロイキン33)というかゆみや炎症に関与する物質の産生が増加することが明らかになりました。IL-33はアトピー性皮膚炎の増悪因子の一つであり、黄砂によってこの物質が増えることで皮膚のかゆみや炎症反応がさらに促進されると考えられます。

さらに黄砂自体のアルカリ性が強いため、肌表面をアルカリ性に傾けて角質層を乱し、炎症を起こしやすくするという指摘もあります。

以上のように複数の経路で黄砂はアトピー肌に悪影響を及ぼすため、花粉症など他のアレルギーをお持ちの方や春先に調子が悪い方は特に用心しましょう。なお、黄砂シーズンはスギ花粉の飛散時期と重なるため、花粉症の人は症状が複合的に悪化する可能性があります。

黄砂の季節は、いつも以上に丁寧なスキンケアと黄砂対策を徹底しましょう。


3-4. 金属アレルギー傾向のある方は要注意

黄砂には大気中で付着したニッケルやアルミニウム、鉄などの金属微粒子が含まれており、これが肌に触れると金属アレルギーのある人では皮膚炎(かぶれ)を引き起こすことがあります。

実際、黄砂飛来日に肌トラブルを訴えた人の多くがニッケルによるアレルギー反応(パッチテスト陽性)を示したとのデータもあります。

黄砂による皮膚症状の背景には粒子に付着した金属への接触過敏症が関与している可能性が高いと考えられています。環境省も「黄砂飛来時に皮膚症状を示す方は金属アレルギーの傾向がある」と指摘しており、アクセサリー等で金属アレルギーを起こしやすい体質の方は特に注意が必要です。

黄砂シーズンには、金属アレルギー予防の観点からも肌を直接黄砂に触れさせない工夫が有効です。汗をかくと金属イオンが溶け出しやすいため、黄砂が付いた状態で長時間過ごさないことも大切です。

帰宅後は洗顔・シャワーで黄砂を洗い流し、その後しっかり保湿して肌のバリア機能を整えることで、金属アレルギー反応のリスク軽減につながります。


肌荒れの原因 黄砂?花粉?


4. 黄砂と花粉、肌荒れの症状や対策はどう違う?



春先になると、多くの方が悩まされる肌荒れ。その原因としてよく挙げられるのが「花粉」ですが、実は「黄砂」も肌に大きな影響を与えることをご存知でしょうか? しかも、これらの飛散時期が重なることもあり、症状を悪化させてしまうケースも少なくありません。

以下では黄砂と花粉による症状の違い、飛散時期の重複による症状悪化、さらに両者への対策の共通点と相違点について解説します。


4-1. 黄砂と花粉が引き起こす主な症状の比較(肌、目、鼻、喉など)

花粉症で出やすい症状

花粉症の場合、アレルゲンである花粉に反応して症状が出ます。特徴的なのは、
●くしゃみが止まらない、連発する
●水のようにサラサラした鼻水が大量に出る
●目のかゆみが非常に強い
といった点です。また、スギやヒノキなど、特定の花粉が飛散している間は症状が継続しやすく、特に朝方に症状が悪化する傾向があると言われています。

黄砂アレルギーで出やすい症状

一方、黄砂は中国大陸の砂漠地帯から飛んでくる微細な砂の粒子で、これ自体が物理的な刺激となるほか、大気中の汚染物質(PM2.5、細菌、カビ、化学物質など)を付着させて運んでくるため、より複雑な症状を引き起こすことがあります。

●肌症状が強く出る傾向:かゆみだけでなく、ヒリヒリとした刺激感、乾燥、湿疹などが顕著に現れることがあります。
●目の症状:かゆみに加え、「目がゴロゴロする」「異物が入ったような感じ」といった刺激による症状が強く出やすいです。
●喉の症状や咳:鼻の症状だけでなく、喉の痛みやイガイガ感、咳といった呼吸器系の症状が花粉症より目立つことがあります。
●全身症状:黄砂に付着した有害物質の影響で、頭痛や体のだるさ、集中力の低下といった全身の不調を感じる人もいます。


4-2. 症状が現れるタイミングの違い

症状が現れるタイミングも、見分けるヒントになります。

花粉症:特定の植物の花粉が飛ぶ季節(例えばスギ花粉なら2月から4月頃)に症状が続くのが一般的です。天候によって飛散量は変わりますが、基本的にはその期間中、継続的に注意が必要です。

黄砂:黄砂の飛来は、風向きや気象条件に大きく左右されるため、突発的に症状が出たり、急に悪化したりすることが特徴です。ニュースなどで黄砂情報を確認し、「今日は黄砂が多い」という日に症状が強まるようであれば、黄砂の影響を疑ってみましょう。特に風の強い日の昼過ぎから夕方にかけて症状が悪化しやすいとも言われます。

このように、黄砂と花粉では症状の出方に少し違いがあります。ご自身の症状をよく観察し、どちらの影響が強いのかを把握することが、適切な対策への第一歩となります。ただし、実際には両方の影響を同時に受けている場合も多いので、油断は禁物です。


4-3. 飛散時期が重なることによる症状の複合・悪化

花粉と黄砂の時期が重なると、症状が複合的に現れたり一段と悪化することがあります。同時曝露による相乗効果により、鼻や目だけでなく喉や肌に至るまで複数の症状が強まる恐れがあります。

実際、日本で行われた研究では、花粉シーズン中に黄砂濃度の高い日に花粉症患者のアレルギー症状が有意に増加することが報告されています。また中国疾病預防控制中心(中国CDC)も、黄砂がアレルギー性鼻炎や喘息の症状を悪化させる可能性に言及しています。

つまり花粉が飛ぶ時期に黄砂が重なると、鼻粘膜・眼・気道への刺激が増幅し、くしゃみ・鼻づまりがひどくなる、目の充血やかゆみが強まる、喘息発作を誘発するといった重い症状につながりやすくなるのです。

両者の複合による体調悪化を防ぐため、春先には花粉情報とともに黄砂予報にも注意を払う必要があります。


4-4. 黄砂と花粉、それぞれの対策の共通点と違い

共通する基本対策: 花粉対策も黄砂対策も、まずは原因物質を体に入れない・付着させないことが共通の予防原則です。

外出時はマスクやメガネ(ゴーグル)を着用して花粉や砂塵の吸入・目への侵入を防ぎ、衣服はこれらの粒子が付きにくい素材のものを選びましょう。春先は目に見えない微粒子が多く飛散する季節のため、帰宅したら家に入る前に衣服や髪をよく払って屋内に持ち込まないようにします。室内でも空気清浄機やエアコンの高性能フィルターを活用し、こまめな掃除で微粒子の蓄積を防ぐことが大切です。また帰宅後の洗顔・手洗い・うがいは花粉・黄砂の両方に有効な習慣で、顔や目、鼻腔に付着したアレルゲンや汚染物質を速やかに洗い流すよう心がけます。特に黄砂がひどい日はコンタクトレンズの使用を避け、メガネに切り替えることが目への直接的な刺激を減らす意味で推奨されています。


異なる対策・ケア: 花粉症の場合、飛散前からの医療的な対策が重要です。症状緩和のため抗ヒスタミン薬の内服やステロイド点鼻薬、抗アレルギー点眼薬などの薬物療法が一般的に行われ、シーズン前に開始する初期療法が効果的とされています。また、スギ花粉症などではアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法等)によって体質改善を図る根本治療も可能です。

一方、黄砂に対しては特定の抗原ではないため根本的な免疫療法はなく、暴露を避ける対策が中心です。
黄砂が予測される日は不要不急の外出を控え、外出する場合もできるだけ短時間に留めるなど曝露機会そのものを減らす工夫が有効です。持病のある方は黄砂飛来時に症状が悪化しないよう、予め医師と相談して吸入ステロイドや気管支拡張薬(喘息患者の場合)を準備する、あるいは抗アレルギー薬を服用しておくといった対処も考えられます。

肌荒れ対策という観点では、花粉・黄砂いずれの場合も保湿剤で肌のバリア機能を高めておくことや、刺激物質を落とす丁寧な洗顔が予防に役立ちます。総じて、花粉症と黄砂による影響のどちらに対しても「防ぐ+除去する+症状に応じた適切な治療」が基本ですが、花粉症では医療的アプローチが発達している点に対し、黄砂では環境要因としての予防と体調管理がより重視される点が大きな違いです。


黄砂対策


5 黄砂による肌荒れを徹底的に防ぐ!今日からできる対策

黄砂による肌荒れは、日々のちょっとした工夫と丁寧なケアで、症状を抑えることができます。外出時から帰宅後、さらには室内の環境整備や体の中からできることまで、黄砂からデリケートな肌を守り抜くための具体的な対策を徹底解説します。


5-1. 外出時の物理的な防御(マスク、メガネ、帽子、服装選び)

黄砂が舞う季節、肌荒れを防ぐための第一歩は、なんといっても「黄砂を肌に直接触れさせない」こと。外出時には、物理的なバリアをしっかりと作ることが重要です。

マスク: 顔にフィットするものが基本。黄砂は粒子が細かい場合があり、PM2.5が付着している可能性もあるため、フィルター性能の高いものが推奨される。不織布マスクを正しく着用し、顔とマスクの間に隙間を作らないことが重要。

メガネ・ゴーグル: 目を物理的に保護し、黄砂の侵入を防ぐ。普段コンタクトレンズを使用している人も、黄砂シーズンはメガネに切り替えるか、保護メガネを併用すると良い。

帽子: 髪や頭皮への黄砂の付着を防ぐ。つばの広い帽子は、顔への直接的な付着も軽減できる。

服装選び:
●素材: 黄砂が付着しにくく、付着しても落ちやすい、表面がツルツルした素材(ポリエステル、ナイロンなど)を選ぶ。ウールやフリースなどの起毛素材は黄砂を吸着しやすいので避けるのがベター。
●形状: 首元が詰まった服やタートルネック、スカーフなどで首周りを保護する。長袖・長ズボンで肌の露出を極力抑える。
●色: 淡色系の服は、黄砂が付着しても目立ちにくいというメリットがあるが、防御効果に直接的な差はない。


これらのアイテムを上手に活用し、黄砂の攻撃から肌をガードしましょう。少しの心がけで、外出時の肌への負担は大きく変わります。


5-2. 帰宅後の丁寧な洗浄で黄砂を洗い流す

黄砂が舞う中を外出したら、目には見えなくても、顔や髪、衣服にはたくさんの黄砂が付着しています。これらを放置しておくと、肌荒れやかゆみ、炎症などのトラブルを引き起こす大きな原因に。だからこそ、帰宅後の「洗い流すケア」が非常に重要になります。


黄砂対策の鉄則は、肌に付着した黄砂をできるだけ早く取り除くこと。玄関を入ったら、リビングでのんびりする前に、まずは洗面所へ直行しましょう。

1. 帰宅したら「すぐに」行動開始!


⚪️すぐに洗顔・手洗い・うがい: 帰宅したら、まず家の中に黄砂を持ち込まないように、玄関先で衣服や髪を払い、すぐに手や顔、露出していた部分を洗い流す。うがいは喉に付着した黄砂を除去するのに役立つ。鼻うがいも有効。

⚪️優しく洗うポイント:
●泡洗顔: 洗顔料はしっかりと泡立て、泡をクッションにして肌を直接こすらないようにする。
●摩擦を避ける: 指の腹で優しく撫でるように洗い、タオルで拭く際もゴシゴシこすらず、押さえるように水分を吸い取る。
●ぬるま湯: 熱すぎるお湯は肌の乾燥を招き、冷たすぎる水は毛穴の汚れが落ちにくい。32~34℃程度のぬるま湯が理想。

⚪️可能であればシャワーも: 顔や手だけでなく、髪や体全体に黄砂が付着している可能性があるため、帰宅後早めにシャワーを浴びて全身を洗い流すのが最も効果的。

これらの洗浄ケアを習慣にすることで、黄砂による肌への悪影響を大きく減らすことができます。面倒くさがらずに、毎日の丁寧なリセットケアを心がけて、健やかな肌を守りましょう。


2. 肌のバリア機能を高めるスキンケア(保湿が最重要)

黄砂や花粉、紫外線といった外的刺激から肌を守るためには、肌自身が持つ「バリア機能」を正常に保つことが大切です。そのバリア機能を支える上で重要な役割を果たすのが「保湿」です。

⚪️洗顔後はすぐに保湿: 洗顔後の肌は水分が蒸発しやすく、無防備な状態。肌がまだ少し湿っているうちに保湿剤を塗るのが効果的です。

⚪️敏感肌向けの製品選び: 香料、アルコール、着色料などが含まれていない、低刺激性で敏感肌向けの製品を選びましょう。成分表示を確認し、できるだけシンプルな処方のものが安心です。新しい製品を使う前には、必ず腕の内側などでパッチテストを行ってください。

⚪️摩擦を避ける塗り方: スキンケア製品を塗布する際も、肌を強くこすったり、叩き込んだりせず、手のひらで優しく押さえるように馴染ませて下さい。

毎日の丁寧な保湿ケアで肌のバリア機能を高め、黄砂の刺激にも揺らがない、うるおいに満ちた健やかな肌を目指しましょう。


3. 黄砂シーズンのメイクの工夫

黄砂シーズン特有の肌状態に合わせたメイクの工夫をすることで、肌への刺激を減らしつつ、黄砂の付着からも肌を守ることができます。

1) 「下地」で鉄壁の保護膜を!
黄砂シーズンのメイクで最も重要なのが、ファンデーションを塗る前の「化粧下地」です。下地には、肌の凹凸を整えてファンデーションのノリを良くするだけでなく、外的刺激から肌を守るという大切な役割があります。

●保湿効果の高いものをチョイス:乾燥しがちな肌には、ヒアルロン酸やセラミドなどの保湿成分が配合された下地を選びましょう。
●バリア機能付き下地も活用:最近では、黄砂やPM2.5、花粉といった大気中の微粒子汚れの付着を防ぐ効果を謳った「バリア機能付き」の下地も増えています。黄砂が直接肌に触れるのを防ぎ、肌への刺激を軽減する効果が期待できます。
●日焼け止め効果も忘れずに:黄砂の時期は紫外線も強くなってくるため、SPF/PA値の入った日焼け止め効果のある下地を選ぶと、紫外線対策も同時にできて一石二鳥です。


2) ファンデーションは「薄付き」で負担を軽減
黄砂から肌を守りたいからといって、ファンデーションを厚塗りするのは逆効果。クレンジングの際に肌に余計な負担をかけたりする原因になります。

●軽いつけ心地のものを選ぶ:リキッドタイプよりもパウダーファンデーションやミネラルファンデーションの方が、比較的軽いつけ心地で、肌への密着度もコントロールしやすいためおすすめです。
●コンシーラーを部分使い:気になるシミやクマなどは、ファンデーションを重ね塗りするのではなく、コンシーラーをピンポイントで使いましょう。全体は薄付きに仕上げることで、肌への負担を最小限に抑えられます。


3) ポイントメイクで華やかさをプラス
ベースメイクはできるだけシンプルに、肌への負担を軽くすることを優先し、その分アイメイクやリップなどのポイントメイクで華やかさやおしゃれを楽しむのがおすすめです。

黄砂でくすみがちな顔色も、明るい色のリップやチークで血色感をプラスするだけで、ぐっと印象が変わります。


4) メイクの仕上げとクレンジングも重要

◉フィックスミストで密着度アップ:メイクの最後に、フィックスミスト(メイクキープスプレー)を顔全体に軽くスプレーすると、メイクの密着度が高まり、黄砂などの微粒子が付着しにくくなる効果が期待できます。


◉クレンジングは「優しく」丁寧に:肌荒れしている時は、肌のバリア機能が低下していて、いつも以上にデリケートな状態です。ですので、以下の点を特に意識してみてください。

クレンジング料の選び方
●濃いメイクの日:しっかりメイクやウォータープルーフの製品を使った日は、ある程度の洗浄力があるクレンジング料を選びましょう。ただし、その場合も肌に優しい成分でできているか、自分の肌に合うかを確認してください。オイルクレンジングやバームクレンジングなどが比較的メイクなじみが早く、短時間で落としやすい傾向があります。
●軽いメイクの日や日焼け止めだけの日:ミルククレンジングやジェルクレンジングなど、よりマイルドな洗浄力のもので十分な場合があります。
●肌荒れがひどい時:刺激の少ない敏感肌用の製品を選び、可能であればポイントメイクリムーバーを併用して、目元や口元の落ちにくいメイクは専用のリムーバーで優しく落としてから、顔全体のクレンジングを行いましょう。


クレンジング方法


●摩擦を避ける:クレンジング料を肌にのせたら、指の腹で優しくクルクルと馴染ませるようにしましょう。ゴシゴシ擦るのは絶対に避けてください。
●時間をかけすぎない:クレンジング料を肌にのせている時間が長すぎると、肌に必要なうるおいまで奪ってしまうことがあります。1分程度を目安に、手早く済ませるように心がけましょう。
●すすぎは丁寧に:ぬるま湯(32~34度くらいが目安です)で、クレンジング料が肌に残らないように、丁寧にすすぎましょう。熱いお湯は肌の乾燥を進めてしまうので避けてください。シャワーを直接顔に当てるのも、肌への刺激になることがあるので控えましょう。

これらのポイントを押さえて、黄砂の季節も賢くメイクを楽しみながら、大切な肌を守り抜きましょう。


5-3. 室内への黄砂侵入を防ぐ方法

黄砂の季節、いくら外出時に万全の対策をしても、知らず知らずのうちに室内に黄砂が侵入してしまっては元も子もありません。特に肌が敏感になっている時期は、家の中の空気環境をクリーンに保つことが、肌荒れを防ぐための重要なポイントになります。

1. 窓の開閉は賢くコントロール!

黄砂の飛散量が多い日には、当たり前ですが窓やドアを開けっ放しにしていてはいけません。

●飛散情報をチェック:テレビのニュースやインターネットなどで、黄砂の飛散情報をこまめに確認しましょう。飛散のピーク時は、窓をしっかりと閉めて外気の侵入を防ぎます。
●換気はタイミングと時間を考えて:それでも換気は必要です。換気を行う場合は、黄砂の飛散量が比較的少ないと言われる早朝や深夜、または雨上がりなどを選び、短時間で済ませるようにしましょう。窓を開ける幅も最小限にし、風上と風下の2ヶ所を開けると効率的に空気を入れ替えられます。レースのカーテンを閉めたまま行うだけでも、ある程度の黄砂の侵入を防ぐ効果が期待できます。


2. 空気清浄機をフル活用!

室内に侵入してしまった黄砂や、ハウスダストなどを除去するために、空気清浄機は非常に頼りになるアイテムです。

●フィルター性能を確認:黄砂のような微細な粒子をしっかりとキャッチするためには、HEPA(ヘパ)フィルターなど、高性能なフィルターを搭載した機種を選ぶのがおすすめです。製品の仕様を確認し、適用床面積に合ったものを選びましょう。
●置き場所も工夫:空気清浄機は、人がよく過ごすリビングや寝室、また空気の出入りが多い窓際や玄関付近に置くと効果的です。
●24時間運転が理想:可能であれば、黄砂のシーズンは24時間連続で運転させておくと、常に室内の空気をクリーンに保つことができます。
●フィルターのお手入れは忘れずに:フィルターが汚れていると、空気清浄能力が低下してしまいます。取扱説明書に従って、定期的なフィルターの掃除や交換を行いましょう。


3. こまめな「拭き掃除」で床の黄砂を撃退!

床に落ちた黄砂は、人の動きや空気の流れで舞い上がりやすく、再び空気中に漂ってしまいます。

●掃除機だけでは不十分な場合も:掃除機は排気で黄砂を舞い上げてしまう可能性もあるため、まずは濡らした雑巾やフローリングワイパーで床を拭き、黄砂を吸着させてから掃除機をかけるのが効果的です。
●上から下へが掃除の基本:棚の上や照明器具、カーテンレールなどに積もったホコリや黄砂も忘れずに。高い場所から低い場所へと順番に掃除していくと、効率よくきれいにできます。
●カーペットや布製品も要注意:カーペットやソファ、カーテンなどの布製品は黄砂が付着しやすいため、こまめに粘着クリーナーをかけたり、掃除機で吸い取ったりしましょう。洗えるものは定期的に洗濯するのも効果的です。


4. 洗濯物は「部屋干し」が安心

黄砂が多い日に洗濯物を外に干すと、せっかくきれいに洗った衣類やタオルに黄砂がびっしりと付着してしまいます。これでは肌に直接触れるものが黄砂まみれになり、肌荒れの原因にもなりかねません。

●できるだけ部屋干しを:黄砂シーズンは、できるだけ洗濯物は室内に干すようにしましょう。浴室乾燥機や除湿機を活用すると、乾きやすく生乾きの臭いも防げます。
●外干しした場合は取り込みに注意:どうしても外に干す場合は、黄砂の飛散量が少ない時間帯を選び、取り込む際には衣類を一枚一枚丁寧に振って黄砂を払い落としましょう。さらに、取り込んだ後に掃除機で軽く表面を吸うのも効果的です。

これらの対策を参考に、家の中を黄砂から守る工夫をしてみてください。室内の空気をきれいに保つことは、肌だけでなく、呼吸器系の健康を守るためにも非常に大切です。



6. 黄砂による肌荒れがひどい場合は専門家へ相談を



黄砂の季節に肌の調子が悪くなって、丁寧なセルフケアを心がけていても、なかなか改善しなかったり、症状が悪化してしまったりすることも。そんな時は、我慢せずに専門家である医師に相談しましょう。

ここでは、黄砂による肌荒れが悪化した場合に、専門医の受診を考えるべき目安や、病院で行われる治療法、診断方法、そして何科を受診すれば良いのかについて、詳しく解説していきます。


6-1. セルフケアで改善しない場合の目安

黄砂による肌荒れは、初期の段階であれば、丁寧な洗顔や保湿、低刺激性のスキンケア製品への切り替えといったセルフケアで症状が落ち着くこともあります。しかし、以下のような場合は、皮膚科などの専門医を受診することを検討しましょう。

◉症状が1週間以上続く、または悪化する: セルフケアを続けていても、赤み、かゆみ、湿疹、乾燥などが改善しない、あるいは範囲が広がったり、症状が強くなったりする場合は、炎症が進行している可能性があります。特に、じゅくじゅくとした滲出液が出てきたり、水ぶくれができたり、掻き壊して化膿してしまったりした場合は、早めの受診が必要です。

◉強いかゆみで日常生活に支障が出る: かゆみが我慢できず、仕事や勉強に集中できない、夜眠れないなど、日常生活に影響が出ている場合は、適切な治療で症状をコントロールする必要があります。掻き続けることで、さらに皮膚のバリア機能が低下し、症状が悪化するという悪循環に陥ることもあります。

◉市販薬を使用しても改善しない、または悪化する: 市販のかゆみ止めや保湿剤を試しても効果が見られない、あるいは逆に症状が悪化してしまった場合は、自己判断でのケアが合っていない可能性があります。医師の診断のもと、症状に合った適切な薬剤を選択することが重要です.

◉顔だけでなく、首や腕など広範囲に症状が出ている: 黄砂に触れやすい顔や首、手足などに症状が出ることが多いですが、広範囲に広がっている場合は、アレルギー反応が強く出ている可能性があります。

◉皮膚症状だけでなく、鼻水、くしゃみ、目の充血・かゆみ、喉のイガイガ感、咳などのアレルギー症状を伴う: 黄砂は肌だけでなく、呼吸器や粘膜にも影響を与えます。これらの症状が同時に現れている場合は、全身的なアレルギー反応の可能性も考えられるため、医師に相談しましょう。

◉過去に黄砂や他のアレルゲンで強い皮膚炎を起こしたことがある: アレルギー体質の方や、以前に同様の症状で悩まされた経験がある方は、症状が軽いうちでも早めに相談することで、悪化を防げる場合があります。

これらの目安はあくまで一般的なものです。ご自身で判断に迷う場合は、ためらわずに医師に相談することをおすすめします。早期に適切な対応をすることで、症状の悪化を防ぎ、早期回復につながります。



6-2. 何科を受診すれば良い?

黄砂による肌荒れやアレルギー症状で困ったとき、どの診療科を受診すれば良いのか迷うかもしれません。主に以下の診療科が選択肢となります。

1. 皮膚科
●主な症状: 肌の赤み、かゆみ、湿疹、乾燥、ヒリヒリ感、ニキビの悪化など、皮膚の症状が中心の場合は、まず皮膚科を受診しましょう。
●診療内容: 専門医が皮膚の状態を詳細に診察し、黄砂による影響なのか、他の皮膚疾患の可能性はないかなどを判断します。必要に応じてアレルギー検査(パッチテストなど)を行い、炎症を抑えるための塗り薬(ステロイド外用薬、保湿剤など)や、かゆみを抑えるための飲み薬(抗ヒスタミン薬など)を処方してくれます。正しいスキンケア方法や日常生活での注意点についてもアドバイスが受けられます。

2. アレルギー科
●主な症状: 皮膚症状に加えて、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみ・充血、咳、喉のイガイガ感など、複数のアレルギー症状(花粉症様症状や喘息様症状)を伴う場合や、過去にアレルギー疾患の診断・治療を受けたことがある場合は、アレルギー科の受診も検討しましょう。
●診療内容: アレルギー専門医が、皮膚症状だけでなく全身のアレルギー状態を評価します。血液検査(特異的IgE抗体検査など)によるアレルゲンの特定や、呼吸機能検査など、より専門的な検査が行われることもあります。内服薬や点鼻薬、点眼薬など、症状に応じた総合的なアレルギー治療を受けることができます。皮膚科と連携して治療を進めることもあります。

3. 内科・小児科
●主な症状: 発熱や倦怠感などの全身症状が強い場合や、かかりつけ医がいる場合は、まず内科(お子さんの場合は小児科)に相談するのも一つの方法です。
●診療内容: 全身状態のチェックや初期対応をしてもらえます。症状に応じて、皮膚科やアレルギー科などの専門医を紹介してくれることもあります。特に、呼吸器系の症状(咳が止まらない、息苦しいなど)が強い場合は、内科(呼吸器内科)の受診も考慮しましょう。


6-3. 何科を受診すれば良い?迷った場合のポイント

⚪️最も困っている症状が皮膚であれば、まずは皮膚科へ。
⚪️鼻炎や喘息など、他のアレルギー症状も併発している場合は、アレルギー科も視野に。
⚪️お子さんの場合は、まずかかりつけの小児科医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのがスムーズです。
⚪️どの科を受診すべきか迷う場合は、医療機関の受付や相談窓口、かかりつけ医に問い合わせてみるのも良いでしょう。


黄砂による肌トラブルは、適切な時期に医師に相談することで、症状の悪化を防ぎ、より効果的な治療を受けることができます。自己判断で悩まず、気になる症状があれば早めに医療機関を受診するようにしましょう。医師とよく相談し、自分に合った治療法を見つけて、つらい季節を乗り切りましょう。


黄砂イメージ画像


7. まとめ:春の肌荒れ、黄砂が原因かも?正しい知識と対策で健やかな肌を守ろう


春先になると気になる肌の不調。もしかしたら、その原因は花粉だけでなく「黄砂」かもしれません。この記事では、黄砂がなぜ肌荒れを引き起こすのか、そのメカニズムから具体的な症状、そして今日からできる徹底対策までを詳しく解説してきました。

7-1. 黄砂の正体と肌への脅威

黄砂は、中国大陸の砂漠から飛来する微細な土壌粒子です。しかし、ただの砂と侮ってはいけません。黄砂は飛来する過程で、PM2.5、排気ガス、細菌、カビ、重金属といった様々な大気汚染物質を吸着し、「汚染物質の運び屋」として私たちの肌に深刻な影響を与えるのです。

黄砂による肌荒れは、粒子の物理的な刺激で肌のバリア機能が低下し、そこに有害物質が侵入して炎症を引き起こすという負のスパイラルに陥りやすいのが特徴です。さらに、活性酸素を過剰に発生させ、シミやシワといった肌老化を早める可能性も指摘されています。

7-2. 黄砂による主な肌トラブル

●顔や首など露出部分のかゆみ、赤み、湿疹、ヒリヒリ感、乾燥の悪化
●長期的な影響としてのシミ、シワ、たるみ
●アトピー性皮膚炎の悪化
●ニッケルなどの付着による金属アレルギーの誘発

花粉症と症状が似ている部分もありますが、黄砂の場合は肌への刺激感や喉の症状が強く出やすい傾向があります。飛散時期が重なると症状が悪化することもあるため、両方への対策が重要です。


7-3. 今日からできる黄砂対策で肌を守る!

⚪️外出時の徹底ガード:高性能マスク、メガネ、帽子、ツルツルした素材の衣服で黄砂を物理的にブロックしましょう。
⚪️帰宅後の即時洗浄:すぐに洗顔、うがい、できればシャワーで、付着した黄砂を丁寧に洗い流します。
⚪️スキンケアでバリア機能強化:低刺激性のアイテムで「保湿」を最重視し、肌の守る力を高めます。
⚪️メイクの工夫で負担軽減:保護効果のある下地を使い、ファンデーションは薄付きに。優しいクレンジングを心がけましょう。
⚪️室内への侵入阻止:窓の開閉は最小限に、空気清浄機を活用し、こまめな拭き掃除と洗濯物の部屋干しを徹底します。


7-4. セルフケアで改善しない場合は医療機関へ

対策をしても肌荒れが続く、かゆみが強い、広範囲に症状が出ているなどの場合は、我慢せずに皮膚科やアレルギー科を受診しましょう。適切な診断と治療を受けることが、健やかな肌を取り戻すための近道です。
黄砂の季節は、正しい知識と対策で、肌トラブルを未然に防ぎ、快適に過ごしましょう。


(参考文献)
1) 環境省:黄砂とその健康影響について

2) 環境省:花粉症環境保健マニュアル2022

3) 気象庁:黄砂・エーロゾル
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/env/aerosolhp/index.html

4) 中国CDC:Health tips for sandy and dusty weather
https://en.chinacdc.cn/health_topics/environment_health/202303/t20230316_264326.html#:~:text=1,grade%20filters

5) Medical News Today:Dermatologist-recommended skin care routines and tips for different skin types
https://www.medicalnewstoday.com/articles/dermatologist-recommended-skin-care

6) Effect of desert dust exposure on allergic symptoms: A natural experiment in Japan
K T Kanatoni, et al.
Ann Allergy Asthma Immunol.
2016;116(5):425-430

7) A Systematic Review of Global Desert Dust and Associated Human Health Effects
Xuelei Zhang, et al.
Atmosphere
2016;7(12):158

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月16日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.05.11更新

 

【目次】

1: 日焼け止めに頼る前の基本のUV対策
2: 日焼け止めはいつから?
3: 結局、どうすればいいの?
4: 赤ちゃんのための日焼け止めの選び方
5: 日焼け止めの正しい使い方
6: 最新の動向:日本の専門機関からの提言
7: 0歳からの徹底UVケアとビタミンD対策





0歳からのUVケア


【美容医師が解説】赤ちゃんのUVケア、日焼け止めの選び方と使い方


皆さんもご存知の通り、赤ちゃんの肌は大人に比べて非常にデリケートです。表皮が薄く、バリア機能も未熟なため、紫外線に対する防御機能は十分ではありません。そのため、赤ちゃんの頃からの適切な紫外線対策は、将来の健やかで美しい肌を育むために、とても重要です。

「赤ちゃんに日焼け止めって本当に必要なの?」、「いつから、どんなものを使えばいいの?」、「日焼け止め以外にもできることは?」など、特に初めて育児をされる方にとっては、疑問や不安がたくさんあることでしょう。

この記事では、美容医学の視点から、赤ちゃんのデリケートな肌を紫外線ダメージから守り、未来の美肌へと繋げるためのUVケアについて、世界の最新情報や専門家の見解を基に、分かりやすく解説します。安心して赤ちゃんのUVケアに取り組めるよう、正しい知識を身につけましょう。


1. まずはここから!日焼け止めに頼る前の基本のUV対策:美肌作りの第一歩



赤ちゃんの紫外線対策で一番大切なのは、実は日焼け止めを塗ることだけではありません。まずは、物理的に日光から肌を守る対策をしっかりと行うことが、美肌を守るための基本です。

◎日陰の活用で肌負担を軽減: 米国では、生後6ヶ月未満の赤ちゃんは直射日光を避け、日陰で過ごさせることが強く推奨されています。これは、赤ちゃんの未熟な肌への負担を最小限に抑えるためです。お散歩の際は、木陰を選んだり、日傘やベビーカーのシェードを最大限に活用したりして、意識的に日陰を作りましょう。

◎賢い服装選びでUVブロック: 軽量で通気性の良い長袖の服、丈の長いパンツ、そして広いつばの帽子を着用させましょう。特に首の後ろまでしっかりと隠れるデザインの帽子は、うっかり日焼けを防ぐためにもおすすめです。衣類で肌を覆うことは、赤ちゃんの繊細な肌にとって最も負担の少ない、かつ効果的な紫外線対策と言えます。最近では、おしゃれでUVカット機能を備えたベビーウェアも増えています。

賢い服装選びでUVブロック


◎外出時間帯の工夫でダメージ回避
: 紫外線の強い時間帯、特に午前10時頃から午後2時頃まで(米国では太陽光が最も強い午後4時頃までとする場合も)の長時間の屋外活動はできるだけ避けるようにしましょう。赤ちゃんの生活リズムも考慮しつつ、比較的紫外線量の少ない朝夕の涼しい時間帯に外気浴を取り入れるのが賢明です。

これらの基本的な対策を徹底することで、日焼け止めに頼らずとも、かなりの紫外線を防ぐことができ、赤ちゃんの肌への刺激も最小限に抑えられます。


2. 日焼け止めはいつから?日本と米国の考え方の違いと、賢い選択



基本的な物理的防御に加えて、必要に応じて日焼け止めの使用を検討します。ここで多くの方が悩むのが、「生後何ヶ月から使っていいの?」という点でしょう。実はこの点について、日本と米国では推奨のニュアンスに少し違いがあります。

⚪️米国の見解:より慎重なアプローチ

米国食品医薬品局(FDA)や米国小児科学会(AAP)、米国疾病予防管理センター(CDC)は、原則として生後6ヶ月未満の乳児への日焼け止め使用を推奨していません。これは、赤ちゃんの皮膚は非常にデリケートで、化学物質に対する感受性が大人よりも高く、皮膚トラブルのリスクを考慮しているためです。まずは衣類や日陰での物理的な防護が最優先とされています。

ただし、これらの対策で十分に紫外線を防ぎきれない限定的な状況下(例:どうしても広範囲を覆えない顔や手の甲など)においては、ごく少量の物理的フィルター(紫外線散乱剤)タイプの日焼け止め(SPF15以上を推奨)を使用しても良い、としています。 生後6ヶ月を過ぎた乳児については、露出するすべての皮膚に日焼け止めを塗ることが推奨されています。

⚪️日本の見解:比較的柔軟な考え方

日本の専門機関の一つである日本小児皮膚科学会は、「サンスクリーンは、小さい赤ちゃんから使うことができます」との見解を示しており、低刺激性の製品を選べば、生後早い時期からの使用も可能としています。

⚪️考え方の違いの背景にあるもの

米国やカナダで生後6ヶ月以内の赤ちゃんに日焼け止めを使うことを推奨していないのは、「6ヶ月未満の小児における日焼け止めの安全性を調査した研究はない」ことを重視しているからです。

子供では身体の体積に対して、(日焼け止めを塗る)表面積が大きく、また皮膚のバリアが未発達であることから、日焼け止めの体内への吸収の問題は大人より子供で心配されているのです。


3. 結局、どうすればいいの? 美容的観点からのアドバイス



美容の観点からは、紫外線を浴びることによる肌へのダメージは、シミやそばかす、将来的な光老化(しわ、たるみなど)の原因となるため、可能な限り避けることが理想です。

米国の「6ヶ月未満は原則避ける」という厳格な方針と、日本の「必要なら低刺激なものを早期から使用可」という柔軟な方針も、まずは直射日光を避け、衣類や日陰で肌を守ることの重要性では一致しています。

保護者の方としては、生後6ヶ月未満の赤ちゃんに対しては、米国のガイドラインを参考に、可能な限り日焼け止めに頼らない物理的な紫外線対策を徹底することを基本とし、やむを得ない場合に限り、刺激の少ない日焼け止めを露出する最小限の部位に薄く塗布することを検討すると良いでしょう。生後6ヶ月を過ぎたら、より積極的に日焼け止めの使用を検討し、未来の美肌を守る習慣をスタートさせましょう。


4. 赤ちゃんのための日焼け止めの選び方:美肌への第一歩は製品選びから



日焼け止めの使い方

赤ちゃんのデリケートな肌に使用する日焼け止めは、肌への負担が少なく、安全性の高いものを選ぶことが非常に重要です。美容の観点からも、刺激の強い成分は避け、肌に優しい処方のものを選びましょう。

◉「ノンケミカル(物理系)」がおすすめ:
日焼け止めには、紫外線を吸収して化学的に熱などのエネルギーに変換する「紫外線吸収剤(ケミカルフィルター)」タイプと、紫外線を物理的に肌表面で反射・散乱させる「紫外線散乱剤(ノンケミカル/物理的フィルター)」タイプがあります。


紫外線吸収剤は白浮きしにくく、使用感が良いものが多いですが、まれにアレルギー反応や皮膚刺激の原因となることがあります。一方、酸化亜鉛(ZnO)や酸化チタン(TiO₂)といったミネラル成分を主成分とする紫外線散乱剤タイプの日焼け止めは、肌への負担が少なく、アレルギー反応も起こしにくいため、赤ちゃんのデリケートな肌に適しているとされています。製品表示に「紫外線吸収剤フリー」「ノンケミカル処方」「ミネラルベース」などと記載されているものがこれにあたります。


◉注意したい成分:オキシベンゾン
一部の紫外線吸収剤、特にオキシベンゾン(oxybenzone)については、微量ながら体内に吸収され、ホルモン様作用(内分泌かく乱作用)を引き起こす可能性への懸念が指摘されています。米国小児科学会(AAP)も、赤ちゃんへの使用は可能であれば避けるよう勧告しています。成分表示をよく確認しましょう。


◉SPF/PA値はシーンに合わせて:高ければ良いわけではない
日常的なお散歩や公園遊び程度であれば、SPF15~20、PA++程度で十分な効果が期待できます。米国小児科学会もSPF15以上を推奨しており、SPF15~30でほとんどの日常的な状況に対応できるとしています。

SPF値やPA値が高すぎると、その分肌への負担も増える傾向にあるため、炎天下での長時間のレジャーなど特別な場合を除き、必要以上に高い数値の製品を選ぶ必要はありません。

汗をかきやすい赤ちゃんには、水に強い「ウォーターレジスタント(耐水)」タイプも有効ですが、その分落としにくくなる場合もあるため、肌への優しさとバランスを考えましょう。


◉その他のチェックポイント:肌への優しさを追求
公式なガイドラインで明確に言及されているわけではありませんが、一般的に無香料・無着色、アルコール(エタノール)フリー、パラベンフリーなど、刺激となりうる成分を極力含まない処方のものが赤ちゃんには望ましいとされています。


5. 日焼け止めの正しい使い方:効果を最大限に引き出し、肌トラブルを防ぐ



安全な日焼け止めを選んだら、次は正しい使い方をマスターすることが大切です。間違った使い方では十分な効果が得られないばかりか、肌トラブルの原因にもなりかねません。

◎塗る量と範囲:ムラなく、たっぷりと
生後6ヶ月を過ぎて日焼け止めを使用する場合は、衣類で覆われていない、露出するすべての肌(顔、首、耳、手の甲、足の甲など)に、製品のラベルに記載された指示に従って十分な量を塗布してください。

塗る量が少ないと、表示されているSPF/PA値の効果が得られません。一般的に大人の顔でパール粒2個分程度が目安とされますが、赤ちゃんの体表面積に合わせて調整し、白くなるくらいを目安に、優しく、しかしムラなく丁寧に塗り広げましょう。

生後6ヶ月未満の赤ちゃんに例外的に少量使用する場合は、顔や手の甲など、衣類でどうしても隠せないごく狭い範囲に、最小限の量にとどめるようにしましょう。


◎塗り直しの頻度:こまめなケアが美肌の鍵
屋外にいる際は、約2~3時間ごとを目安に、または製品ラベルの指示に従ってこまめに塗り直すことが非常に大切です。汗をかいたり、水に濡れたり、タオルで拭いたりした後は、耐水性のタイプであっても効果が薄れてしまうため、より早めに塗り直すように心がけましょう。塗り直しを怠ると、せっかく日焼け止めを塗っていても紫外線の影響を受けてしまいます。


◎帰宅後のケア:優しく洗い流し、しっかり保湿
外から戻ったら、その日のうちに、塗った日焼け止めを丁寧に洗い流すことが重要です。赤ちゃん用の石鹸やボディソープをよく泡立て、ゴシゴシこすらずに優しく撫でるように洗い、ぬるま湯で丁寧にすすぎ流しましょう。日焼け止め成分が肌に残っていると、毛穴詰まりや肌荒れの原因になることがあります。

洗い流した後は、乾燥しやすい赤ちゃんの肌を保護するために、低刺激性の保湿剤でしっかりと保湿ケアを行うことも忘れずに行いましょう。紫外線対策と保湿は、健やかな肌を保つための両輪です。



6. 最新の動向:日本の専門機関からの提言



2025年3月日本小児科学会雑誌に「日本小児医療保健協議会栄養委員会報告:乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言」が発表されました。

この提言の中で特に注目されるのは、
1)適度の外気浴、外遊びを行い、紫外線防止のための過度の日焼け止めの使用を行わない
2)生活環境・食事環境の改善が困難な場合は、天然型ビタミンDの乳児用サプリメントの摂取を考慮する
と明言している点です。

小児において、かつては骨の成長に不可欠なビタミンD生成を促す目的で「日光浴」が盛んに奨励された時代がありました。しかしその後、紫外線の皮膚への有害性(皮膚がんリスクの上昇、免疫力低下など)が広く認識されるようになり、1998年以降、母子健康手帳の記載も「日光浴」から「外気浴(戸外の新鮮な空気に触れること)」へと変更されました。

それに伴い、「積極的に日光浴をさせる必要はない」、「ビタミンD不足を心配して無理に日光浴をさせる必要はない」といった意見が専門家からも聞かれるようになっていました。

それが今回、この新しい提言では、ある意味時代に逆行するかのように「適度の外気浴、外遊び」の重要性が改めて示唆され、同時に「過度の日焼け止めの使用を行わない」という文言が加わったのです。

これは、紫外線対策の重要性を認識しつつも、ビタミンD不足のリスクも考慮し、両者のバランスを取る必要性を示したものと考えられます。


7. 0歳からの徹底UVケアとビタミンD対策:賢い両立を目指して



美容医師としては、0歳からの徹底的なUVケアを推奨します。なぜなら、生涯に浴びる紫外線の多くは幼少期に集中すると言われ、この時期の紫外線対策が、将来のシミ、そばかす、しわ、たるみといった光老化を防ぎ、皮膚がんのリスクを低減するために非常に重要だからです。

しかし、過度な紫外線回避は、体内でビタミンDを生成する機会を減らすことにも繋がります。ビタミンDは、骨の健康維持だけでなく、免疫機能の調整など、体の様々な働きに不可欠な栄養素です。

そこで重要になるのが、ビタミンDサプリメントの活用です。

日本ではまだ一般的ではないかもしれませんが、欧米諸国では、母乳育児の赤ちゃんに対してビタミンDサプリメントの投与が標準的なケアとして推奨されています。母乳にはビタミンDがあまり多く含まれていないため、日光浴の機会が少ない赤ちゃんや、日焼け止めをしっかり塗っている赤ちゃんは、ビタミンDが不足しやすいためです。

実は、日本小児科学会も、母乳栄養児に対するビタミンDサプリメントの投与を推奨しています。今回の「日本小児医療保健協議会栄養委員会報告」でも、サプリメントの活用が選択肢として挙げられています。

米国流に「UVケアはしっかり行い、不足しがちなビタミンDはサプリメントで補う」という考え方が、赤ちゃんの健やかな成長と未来の美肌を守るための、最も賢明な方策と言えるでしょう。ただし、実際のサプリメントの摂取については、自己判断に任せず、必ずかかりつけの小児科医に相談してください。



まとめ:今日から始める、未来の美肌のためのUVケア習慣

▶︎赤ちゃんの肌は、私たちが思う以上に繊細で、紫外線の影響を受けやすいものです。0歳からの適切なUVケアは、目先の肌トラブルを防ぐだけでなく、将来のシミやしわ、皮膚がんのリスクを減らし、生涯にわたる健やかで美しい肌の基盤を作ります。

▶︎日焼け止めだけに頼るのではなく、日陰の活用、衣類での防御、外出時間の工夫といった基本的な対策をしっかりと行い、必要に応じて赤ちゃんに優しい日焼け止めを正しく使用することが大切です。そして、UVケアを徹底するからこそ、ビタミンD不足にも目を向け、必要であればサプリメントを上手に活用する視点も持ちましょう。


(参考文献)
1) Sunscreen application,safety, and sun protection: the evidence
Heidi Li, et al.
J Cutan Med Surg
2019;23(4):357-369

2)米国皮膚科学会:Infant sun protection: How parents can keep their baby safe
https://www.aad.org/public/diseases/skin-cancer/prevent/sun-babies#:~:text=3,such%20thing%20as%20%E2%80%9Cwaterproof%E2%80%9D%20sunscreen

3)米国食品医薬品局(FDA):Should You Put Sunscreen on Infants? Not Usually
https://www.fda.gov/consumers/consumer-updates/should-you-put-sunscreen-infants-not-usually#:~:text=rash

4)米国疾病予防管理センター(CDC):Sun Safety Facts
https://www.cdc.gov/skin-cancer/sun-safety/index.html#:~:text=your%20back,when%20combined%20with%20other%20options

5)日本小児皮膚科学会 お役立ちQ&A
https://jspd.umin.jp/qa/03_uv.html

6)環境省:紫外線環境保健マニュアル2020 
https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf

7)日本小児医療保健協議会栄養委員会報告
乳児期のビタミン D 欠乏の予防に関する提言
日本小児科学会雑誌
2025年 129巻3号 494-496
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250324_bitamin_D_teigen.pdf

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年5月11日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥