およそ6,000円もお金をかけて、ひとつの論文を入手しました。それが2020年に発表された肝斑のシステマティックレビュー。簡単に言えば肝斑の総まとめ論文。50ページにもなる大作ですが、レファレンス(参考文献)とまとめの表が多いので、私にも読み通すことができました。
およそ3年ぶりにクリニックの肝斑治療をブラッシュアップしようと、このシステマティックレビューを含め、2018年から2020年に発表された主要なレビュー(まとめ論文)を読みましたが、日本の現状と世界で議論されていることのギャップの大きさには、頭がクラクラしそうな衝撃を受けました。
1)日本では常識となっている「擦る」ことが肝斑の原因ないし、悪化する一因とする考え方は、世界的には問題とされていない。
2)日本で多くのクリニックが行っているレーザートーニングは、システマティックレビューでは、third-lineの治療と位置づけられ(ちなみにsecond-lineはピーリング)、治療の中心からほど遠い存在にすぎない。
3)日本人が発見し、日本ではじめて肝斑の標準治療となったトラネキサム酸の内服は、ようやく世界的にも認められるようになったのに、この分野でも日本はすっかり世界から置いてきぼりになっている。
4)従来からの3剤(レチノイド、ハイドロキノン、ステロイド)コンビネーション治療がベストと確認されている。
(参考文献)
1) Melasma Treatment: An Evidence-Based Review.
McKesey J,et al
Am J Clin Dermatol
2020;21(2):173-225