1 はじめに
「ディフェリンはニキビ治療薬」というイメージが強いかもしれませんが、実はアンチエイジングにも効果が期待できる薬剤であることをご存知でしょうか?
本記事では、ニキビ治療薬として有名なディフェリンが、なぜエイジングケアの有力な選択肢となり得るのか、そのメカニズムや使用方法、そして最新のレチノイド事情までを詳しく解説します。
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2 ディフェリン(アダパレン)はアンチエイジング・シミに効果がある?
ディフェリン(一般名:アダパレン)は、「第3世代」に分類される合成レチノイドです。日本では主にニキビ治療薬として承認・使用されており、10代や20代で使った経験がある方も多いでしょう。
レチノイドはビタミンA誘導体の総称で、肌のターンオーバー(細胞の生まれ変わり)を促進したり、皮脂分泌を抑制したり、コラーゲン生成を促したりする作用があることで知られています。この「ターンオーバー促進」や「コラーゲン生成促進」といった働きが、ニキビだけでなく、シミ、しわ、ハリ不足といったエイジングサインにもアプローチできる理由です。
つまり、ディフェリンが持つレチノイドとしての基本的な作用機序が、エイジングケアにも応用できる可能性をもたらすのです。
3 ディフェリンの医学的検証とトレチノインやレチノールとの違い
米国FDAが老化(光老化)治療として正式に承認しているレチノイドは、現時点ではトレチノインとタザロテンのみです。しかし、ディフェリンを光老化治療に使う臨床試験も存在し、その効果が示唆されています。
3-1 FDA承認がすべてではない理由
医薬品の承認は、有効性だけでなく、製薬会社の開発・申請戦略や費用対効果なども考慮されるため、「承認がない=効果がない」と直結するわけではありません。ディフェリンが持つレチノイドとしての作用や、後述する臨床研究の結果から、エイジングケアへの効果は十分に期待できると考えられます。
3-2 ディフェリンの医学的検証:シミ・しわへのアプローチ
ディフェリンが、ニキビ治療だけでなく光老化(フォトエイジング)に有効とされる理由は以下の通り(文献1)。
▶️作用機序: アダパレンはレチノイン酸受容体(RAR)に選択的に結合し、特に表皮に存在するRAR-γと、真皮線維芽細胞に存在するRAR-βに対して高い親和性を持ちます。これにより、トレチノインと同様に細胞の増殖と分化を調節します。
▶️具体的な効果:
✔️メラニン生成(メラノジェネシス)の抑制
✔️メラニンの除去
✔️コラーゲン合成を促進
▶️臨床的証拠: 臨床研究において、0.3%アダパレンゲルは皮膚の光老化に対する有効かつ安全な治療として推奨されています(文献2)。
▶️利点: 他のレチノイド(トレチノインなど)と比較して、アダパレンは光や酸化に対して安定しており、皮膚への刺激性(副作用)が少ない優れた特性を持ちます。
3-3 ディフェリンとトレチノインの違い|レチノイド反応(A反応)の比較
◎比較的マイルドな刺激: 他のレチノイド(特にトレチノイン)と比較して、赤みや皮むけといった刺激反応(いわゆるA反応、レチノイド反応)が軽い傾向があります。これにより、レチノイド初心者でも始めやすい可能性があります。
◎光感受性のリスクが低い: トレチノインほど紫外線に対する感受性を高めにくいとされていますが、日中の紫外線対策は必須です。
日本での承認: ニキビ治療薬として厚生労働省に承認されており、医師の診察のもと処方を受けやすい環境にあります。(ただし、エイジングケア目的での使用は保険適用外となるのが一般的です)
3-4 ディフェリンとレチノールの違い|「ドラッグストアのレチノール」でエイジングケアは十分?
「レチノール配合」と謳うスキンケア製品はドラッグストアやネット通販で数多く販売されており、レチノイドの中でもっとも身近な存在といえるでしょう。では、こうした市販のレチノール製品と、医療機関で処方されるディフェリン(アダパレン)では、エイジングケアの効果にどのような違いがあるのでしょうか。
◎レチノールの作用メカニズムと限界
レチノールは皮膚に塗布された後、酵素反応によって「レチノール → レチナール → トレチノイン(レチノイン酸)」と2段階で変換され、最終的に活性型であるトレチノインになって初めてレチノイド受容体に結合し、肌に作用します。
この変換過程のうち、最初の「レチノール → レチナール」のステップが律速段階(もっとも時間がかかるボトルネック)であるため、実際にトレチノインに変換される量はごくわずかです。つまり、レチノールを塗っても、肌の中で十分な量の活性型レチノイドが生まれにくいという構造的な弱点があります。
◎ドラッグストアで買える=治療目的には穏やかすぎる
レチノール配合化粧品が処方箋なしで購入できるのは、裏を返せば、それだけ作用が穏やかであり、医薬品レベルの効果は期待しにくいということです。
日本の薬機法上、化粧品として販売できる成分には安全性の観点から配合濃度や効能表示に制限があり、シミやしわに対して医学的に有意な改善をもたらすほどの効力は担保されていません。
医学的には通常、レチノールでは本格的なエイジングケアとしては不十分と考えられています。
◎ディフェリン(アダパレン)との違い
ディフェリンは合成レチノイドであり、レチノールのように体内での多段階変換を必要としません。レチノイン酸受容体(RAR)に直接的かつ選択的に結合し、ターンオーバー促進やコラーゲン合成促進といった作用を発揮します。この「直接結合」というメカニズムにより、レチノールに比べて効率的に肌へアプローチできるのが大きな違いです。
さらに、トレチノインと比較しても刺激反応(A反応)が穏やかであるため、レチノイド初心者からエイジングケアを始めやすいという利点があります。
◎レチノールとレチナールの違いにも注意
名前が似ているため混同されがちですが、「レチノール」と「レチナール」は別の物質です。レチナールはレチノールの代謝産物であり、律速段階をバイパスしてトレチノインに変換されるため、レチノールよりも効率的にエイジングケア効果を発揮できます。
当院で取り扱っているレチナールアクティブは、この「レチナール(レチナールデヒド)」を配合した医療用外用薬であり、市販のレチノール化粧品とは作用の質が異なります。
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レチナールアクティブ
以下に、ディフェリン・レチノール・レチナール・トレチノインの違いを整理します。

4 美容目的でのディフェリンの使い方と塗り方
4-1 基本の塗り方(洗顔後・頻度など)
・夜1回、洗顔後に豆粒大(a pea-sized)を顔全体に塗布
・1ヶ月後に刺激反応が落ち着いてきたら、朝にも塗布
4-2 刺激症状(A反応)に注意
レチノイド全般にいえることですが、肌が赤くなったり、ヒリヒリとした刺激感が出る「A反応」と呼ばれる副作用が生じることがあります。ディフェリンはトレチノインに比べると刺激が穏やかですが、初期はとくに慎重に様子をみましょう。
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ディフェリンA反応対策
4-3 妊娠・授乳中の使用は避ける
レチノイドには胎児に悪影響を及ぼすリスクがあるため、妊娠中や授乳中、あるいは妊娠を希望している方は使用を控えましょう。
4-4 注意点|使用できない人と紫外線対策
◉使用できない人: 妊娠中・授乳中の方、妊娠を希望している方は使用できません。
◉刺激反応: 比較的マイルドとはいえ、乾燥、赤み、ヒリヒリ感、皮むけなどの刺激反応が出る可能性があります。少量から、頻度を少なく(例:隔日など)始めるのがおすすめです。
◉保湿と紫外線対策: 使用中は肌が乾燥しやすくなるため、十分な保湿が重要です。また、日中は必ず日焼け止めを使用してください。当院では肌に優しいUVプロテクトミルクを取り扱っています。
◉医師への相談: エイジングケア目的で使用する場合でも、必ず医師に相談し、適切な指導のもとで使用を開始してください。自己判断での使用は避けましょう。
5 まとめ
▶︎ニキビ治療薬として広く知られるディフェリンは、そのレチノイドとしての作用機序から、エイジングケア(アンチエイジング)にも効果が期待できる薬剤です。シミや肌の質感改善など、実際の臨床研究でもその可能性が示唆されています。
▶︎他のレチノイドに比べて刺激がマイルドな傾向があり、エイジングケア初心者にも比較的取り入れやすい選択肢と言えるでしょう。ただし、妊娠中など使用できないケースや、乾燥・刺激感といった注意点もあります。
▶︎30代、40代から本格的なエイジングケアを始めたいと考えている方にとって、ディフェリンは有力な選択肢の一つです。興味のある方は、まずは皮膚科医に相談し、ご自身の肌に合った使い方のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
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【参考文献】
1 Recent Advances Regarding the Therapeutic Potential of Adapalene.
Aura Rusu, et al.
Pharmaceuticals
2020 Aug 28;13(9):217
2 Clinical Efficacy of Adapalene (Differin(®)) 0.3% Gel in Chilean Women with Cutaneous Photoaging
María Isabel Herane, et al.
J Dermatolog Treat
2012 Feb;23(1):57-64

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年2月14日)






