1 はじめに ―「すべてのニキビにはニキビ跡になるリスクがある」
ニキビは誰にとっても身近な肌トラブルですが、本当に怖いのは「ニキビ跡」になってしまうことです。ですから、皮膚科でのニキビ治療の原則は『たとえ軽いニキビであっても、早い段階から正しくケアして、ニキビ跡を残さないようにすること』です。
とはいえ、「どんなニキビがニキビ跡になりやすいのか」という疑問に対して、これまで明確な答えがありませんでした。「重いニキビほど跡になりやすい」というのは感覚的に理解できても、具体的にどんな特徴に注目すればいいのかがわからなかったのです。
ところが近年、ニキビ一つひとつを2週間ごと・6ヶ月間にわたって追跡するという非常に緻密な臨床研究が報告され、ニキビ跡になりやすいニキビの正体がかなり明確になってきました(文献1)。
この記事では、その研究結果をもとに「どんなニキビに注意すべきか」を解説するとともに、最新の医学文献に基づくニキビ跡の赤み(炎症後紅斑)の予防と治療のポイントについてもご紹介します。
2 ニキビ跡の8割以上は「治った後の赤み」から生まれていた
研究の結論は、多くの方にとって意外なものかもしれません。
ニキビ跡(瘢痕)の実に83%は、ニキビが治った後に残る「赤み」や「色素沈着」から進行してできていたのです。
特に多かったのが、赤く腫れたニキビ(赤ニキビ)がいったん治まったあと、赤みだけがいつまでも残り、そこからニキビ跡へと変わっていくというパターンでした。
さらに注目すべきデータがあります。将来的にニキビ跡になったニキビは、跡にならなかったニキビに比べて治るまでの期間が明らかに長かった(平均10.5日 vs 6.6日)のです。
つまり、以下の2つがニキビ跡になる危険信号です。
• ニキビが1週間以上経っても治らない
• ニキビ自体は平らになったのに、赤みがなかなか引かない
これらに当てはまる場合は、「そのうち消えるだろう」と放置せず、早めに皮膚科を受診した方が良さそうです。
3 消えないニキビ跡の赤み(炎症後紅斑)を放置してはいけない理由とクレーター化のリスク
ニキビが治った後に残る赤みは、医学的には「炎症後紅斑(macular erythema)」と呼ばれます。これは見た目には「ニキビの名残」程度に思えますが、実は肌の中でまだ炎症が続いているサインです(文献2)。
この炎症が長引くと、皮膚の組織が破壊されてクレーター状のニキビ跡(萎縮性瘢痕)に進行してしまう恐れがあります。逆に言えば、この「赤みの段階」で適切に治療を行えば、ニキビ跡への進行を食い止められる可能性があります。
4 ニキビ跡の赤みを防ぐための治療戦略
■ もっとも大切なのは「ニキビそのものを早く治す」こと
ニキビ跡の赤みを防ぐにはニキビは早期から継続的な治療で治すことです。
日本で保険適用のあるニキビ治療薬の代表は以下の2つです。
✔️アダパレン(ディフェリンゲル)は、毛穴のつまりを改善し、ニキビの発生と炎症の両方に働きかける外用レチノイドです。外用レチノイドは、ニキビの治療だけでなく、赤みや色素沈着、さらには瘢痕の改善にも効果があるとされています(文献3)。
✔️過酸化ベンゾイル(BPO/ベピオゲル等)は、抗菌作用と角質剥離作用をもつ外用薬で、アダパレンとの併用(エピデュオゲル等)が推奨されています。
これらの外用薬をニキビの初期段階から継続的に使用することが、ニキビ跡の赤みを予防するうえでもっとも基本的かつ重要な戦略です。
■ 治らないニキビ跡の赤みを消すための美容皮膚科での最新治療
ニキビ自体は落ち着いたのに赤みだけが残っている….日本では保険診療の範囲外になりますが、そんなときは、以下のような治療が研究で報告されています。
トラネキサム酸皮内注射は、近年注目されている治療法です。トラネキサム酸を赤みのある部位に直接注射することで、短期間で赤みの改善が得られたと報告されています(文献4)。トラネキサム酸はもともと止血剤・抗炎症薬として日本でもなじみのある成分であり、コストを抑えた赤みの治療法として今後の展開が期待されます。
▶当院のトラネキサム酸注射:
ニキビ跡のクレーター予防のために トラネキサム酸注射
スキンケアとして高濃度トラネキサム酸 ダームエデン美容液
このほか海外では、タクロリムス外用(文献2)やチモロール点眼液外用(文献5)といった、本来の適応外の薬を赤みに使用する試みも報告されていますが、いずれもまだ研究段階であり、日本ではニキビ後の赤みへの保険適用はありません。
■ 日常のケアも忘れずに
どのような治療を行う場合でも、紫外線対策と肌のバリア機能を守るスキンケアの併用が欠かせません。紫外線は赤みを悪化させ、色素沈着を引き起こす要因になります。日焼け止めの毎日の使用と、肌に負担をかけない保湿ケアを継続することが、治療効果を最大限に活かすカギとなります(文献6)。
5 まとめ:ニキビ跡は「予防」がもっとも効果的
ニキビ跡は一度できてしまうと、セルフケアだけでの改善は難しいのが現実です。しかし、最新の研究が示しているのは、ニキビ跡は「運が悪かったから」できるものではなく、適切なタイミングで適切な治療を行えば防げる可能性があるということです。
覚えておきたいポイントは3つです。
1. 「治りが遅いニキビ」「赤みが長引くニキビ」は危険信号 .... 1週間以上改善しないニキビや、平らになっても赤みが引かないニキビは要注意です。
2. ニキビ後の赤み(炎症後紅斑)は“まだ炎症が続いているサイン” .... 放置するとクレーター状のニキビ跡に進行するリスクがあります。
3. アダパレンやBPOなどの外用薬を早期から継続使用することが、もっとも確実な予防策 ....
「たかがニキビの赤み」と軽視せず、気になったら早めに皮膚科医にご相談ください。早期からの正しいケアで、ニキビ跡に悩まされない健やかな肌を目指しましょう。
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【参考文献】
1)Prospective study of pathogenesis of atrophic acne scars and role of macular erythema
Tan J,et al.
J Drugs Dermatol.
2017;16(6)567
2) Topical tacrolimus for acne-related macular erythema to prevent atrophic scarring
Madhulika Mhatre, et al.
J Am Acad Dermatol
2022 Jun;86(6):e253-e254
3) Recommendations to Improve Outcomes in Acne and Acne Sequelae: A Focus on Trifarotene and Other Retinoids
Naiem Issa, et al.
Dermatol Ther
2025 Mar;15(3):563-577
4) The Comparable Efficacy Between Tranexamic Acid Intradermal Injection and Pulsed Dye Laser for Treatment of Post-Acne Erythema
Kartika Ruchiatan, et al.
Clin Cosmet Investig Dermatol
5) Topical TimololinDermatology:ApplicationsandAdvances
Wang Yu, et al.
Dermatol Ther
2025;2025(1):5812080
6) A Real-World Approach to Trifarotene Treatment in Patients with Acne and Acne Sequelae
Maria Carmela Annunziata, et al.
Dermatol Ther
2025;15:245-264

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年2月25日)





