1 はじめに
「洗顔しすぎると、かえって皮脂が増える」
このような話を聞いたことはありませんか? 実際、AI検索でも「洗顔のしすぎは皮脂の過剰分泌を招く」という回答が返ってくることがあります。
しかし、医学的にはこれは誤解です。
とはいえ、「洗顔しても皮脂がすぐに浮いてくる」と感じる方が多いのも事実。今回は、オイリースキン(脂性肌)でお悩みの方へ、皮脂分泌の本当のメカニズムとオイリースキンの方に適したスキンケアを詳しく解説します。
2 洗顔しすぎると皮脂は増える?医学的な「皮脂分泌メカニズム」
2-1 顔のテカリ・オイリー肌になる原因とは
皮脂分泌はアンドロゲンがメインの調節因子で思春期以降に活性化されます。食事に関しては、インスリン・IGF-1が脂質生成を促進し、高GI食や乳製品で増加します。さらには遺伝的要因(一卵性双生児で均一)、年齢(15-35歳がピーク)、性別(男性>女性)、温度(1°C上昇で10%増加)、発汗(油性外観を増強)が影響する多因子調節系です(文献1)。
これを見ればわかるように、皮膚表面がオイリーであるとか乾燥しているとかは皮脂分泌には影響を与えません。洗顔でたとえ皮脂を取りすぎたとしても、皮脂腺での「生産量」が増えることはないのです。
2-2 なぜ「洗顔しすぎで皮脂が増える」という説が生まれたのか
かなり前の話になりますが、興味深い実験結果が報告されました。同じ時間内に皮脂を採取するなら、1回で拭き取るより複数回に分けたほうが、より多くの皮脂が採取されたのです(文献2)。
この結果から「洗顔しすぎは皮脂の分泌量を増やす」という説が支持されました。しかし、これには別の理由があったのです。
2-3 洗顔しても皮脂が出るのは「皮脂貯蔵庫」のせいだった
顔の皮脂には、巧妙な貯蔵システムが存在します。
2つの貯蔵庫の役割
皮脂腺の導管:Tゾーンなどでは、皮脂腺から皮膚表面へつながる管が巨大な貯蔵庫として機能
角質層:スポンジのように皮脂を蓄える第二の貯蔵庫
洗顔で表面の皮脂を取り除くと、毛細管現象により貯蔵庫から新しい皮脂が自動的に補充されます。これが「洗顔しても皮脂がすぐ出てくる」と感じる正体であり、「1回で拭き取るより複数回に分けたほうが多くの皮脂が採取された」理由でもあったのです(文献2)。
皮脂の「貯蔵庫」はカラにできるか?
皮脂の「貯蔵庫」をカラにできるか挑戦したことも報告されています(文献2)。
ボランティアの額に吸収紙を6時間にわたり10分ごとに貼付した後でも、圧迫すると大きな油球がまだ出てきました。また皮脂を溶解するエーテルを使った実験も行われましたが、やはり「貯蔵庫」を枯渇させることはできませんでした。
著者らは、皮脂の「貯蔵庫」を空にする生理学的な方法はないと結論づけています。
2-4 【結論】顔を洗いすぎるとどうなる?3つの真実
1️⃣皮脂の生産量は変わらない:洗顔しすぎても、皮脂腺での生産量が増えることはありません
2️⃣表面の皮脂は増えたように感じることも:貯蔵庫からの補充により、肌表面に出てくる皮脂の総量は一時的に増えたように感じられます
3️⃣過度な洗顔は肌トラブルの原因に:肌に必要な保湿因子が奪われ、皮膚のバリア機能がダメージを受け、肌トラブルの原因となります
3 脂性肌の正しいスキンケア|洗顔・保湿・成分選び
ポイント1:やさしい洗顔・洗浄しすぎを避ける
1日2回程度の適度な洗顔が勧められます(朝と夜、および汗をかいた後)。洗顔料は低刺激で肌を乾燥させすぎないものを用い、洗顔時にこすりすぎないよう注意しましょう。固形石鹸やスクラブ洗顔は肌を刺激するため、避けるのが賢明です。
大切なことは、皮脂を洗い流そうと一生懸命に洗いすぎないこと。洗顔は2〜3時間ほど皮膚表面の皮脂量を減少させますが、一生懸命に洗ってもその時間は延長しません。かえって肌への負担が増え、皮膚表面に炎症が生じれば、それによって皮脂分泌を増やしかねません。
ポイント2:保湿は必須
脂性肌でも保湿することは必要です。洗顔後や入浴後には軽いテクスチャーの保湿剤、たとえばジェルやローションタイプの保湿剤で肌を整えましょう。Tゾーンにはそれらを薄く塗布する程度で十分です。Uゾーンには皮膚の乾燥程度に応じて適切な保湿を行って下さい。
*インナードライという美容用語をよく耳にしますが、行うべきスキンケアに変わりはありません。皮膚バリアの機能が低下していると言いたいのでしょうが、適切な保湿こそが皮膚バリア機能を回復させます。肌が求めているのは特別なものではなく“地味に効く基本”です。
ポイント3:ノンコメドジェニック製品を選ぶ
毛穴づまりやニキビを防ぐため、スキンケア用品からメイク用品まで、すべて油分の少ないノンコメドジェニック処方のものを使いましょう。
ただし、「ノンコメドジェニック」にも落とし穴があります。それは一つ一つの製品が「ノンコメドジェニック」だとしても、重ねて使った場合に「ノンコメドジェニック」である保証はないということ。保湿のために化粧水、乳液、美容液、クリームと重ねて使うのではなく、シンプルな構成にすることです。
ポイント4:有効成分を活用
皮脂の分泌を抑制する成分をスキンケアに取り入れることも効果的です。
◉ナイアシンアミド(→高濃度ナイアシンアミド美容液)
◉アゼライン酸(→医療機関専売アゼライン酸)
◉レチノイド(トレチノインなど)(→レチノイド療法)
ポイント5:汗をかきやすい環境を避ける
夏に肌がテカりやすいのは汗の分泌が増えるからです。汗をかきやすい環境ではこまめに汗を拭き取り、肌を清潔に保ちましょう。
ポイント6:日焼け止めを忘れない
SPF30、PA+++以上の日焼け止めを使いましょう。(→医療機関専売の日焼け止め)酸化亜鉛・酸化チタン配合製品は毛穴を塞ぎにくいとされています。日焼け止めは直接的に皮脂分泌を抑制するわけではありませんが、紫外線ダメージによる間接的な皮脂分泌亢進を予防します。
ポイント7:顔に触らない
洗顔、スキンケア、メイクアップ以外では顔に触れないようにしましょう。手の汚れや油が毛穴を詰まらせる原因になります。
ポイント8:あぶら取り紙を効果的に使う(テカリ対策)
こすらず、数秒当てて皮脂を吸収させます。手元にあぶら取り紙がなければ、ティッシュで皮脂を軽く押さえてティッシュオフしましょう。
ポイント9:「メイク崩れ」対策
対策1:スキンケアが肌に定着してからメイクアップへ
①化粧水・美容液・乳液で保湿
②数分待つ
③余分な油分を軽くティッシュオフ
対策2:崩れにくいベースメイク
④皮脂吸着成分(シリカなど)配合の化粧下地をTゾーンや小鼻周りにしっかり塗布。それ以外は薄く伸ばして塗る。
⑤数分待つ
⑥リキッドファンデを使う場合は薄く伸ばし、仕上げにルースパウダーを軽くのせます。パウダーファンデを使う場合も、オイリーな部分には先にルースパウダーを薄くつけておくことが効果的です。
⑦ファンデーションを塗ったら、さらに数分待ちます。
このように肌に定着させてから次のステップに進むことで、メイクの密着が向上し、化粧崩れの予防につながります。
対策3:お直しは「足す」より「戻す」
☑️テカり → いきなりパウダー追加はNG
まずあぶら取り紙/ティッシュで「押さえる」→ 必要ならごく薄くパウダー
☑️ムラ崩れ → 綿棒/スポンジで境目をなじませる
4 まとめ:美肌のための正しいアプローチ
◎洗顔によって一時的に皮脂によるテカリやベタつきは抑えることができますが、過剰な洗顔、頻回な洗顔では肌がもちません。
◎洗顔が皮脂の分泌を刺激するというのは医学的には誤りです。洗顔後すぐに皮脂が出てくるのは、皮脂の「貯蔵庫」から補充されているだけであり、皮脂腺での生産量が増えているわけではありません。
◎大切なのは「皮脂をゼロにする」のではなく「皮脂が暴れない肌に整える」ことなのです。
オイリースキン・毛穴のベタつきを根本から改善したい方へ
正しいスキンケアに加えて、クリニックでの専門的な治療を組み合わせることで、より効率的に「皮脂が暴れない肌」を目指すことができます。当院では以下のメニューが人気です。
皮脂腺に直接働きかけ、テカリや毛穴の開きを抑えます。
古い角質と過剰な皮脂を取り除き、ニキビのできにくい肌へ導きます。
レチノイドのピーリング効果で肌のターンオーバーを正常化します。
【参考文献】
1. Oily skin: an overview
Sakuma TH, Maibach HI
Skin Pharmacol Physiol
2012;25(5):227-235
2. An investigation of the human sebaceous gland
Kligman AM, Shelly WB
J Invest Dermatol
1958;30:99-125

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月3日)





