2025.11.18更新

1 はじめに

「ランニングやジョギングをすると、バストの形が崩れて垂れてしまうのでは?」――こうした不安から、本来は健康に良いはずの運動をためらっている女性は少なくありません。

美容医療の専門家として、エビデンスに基づいた正確な情報をお伝えすることで、こうした不安を少しでも軽くし、安心して健康的なライフスタイルを送っていただきたいと考えています。

そこで今回は、「運動とバストの下垂」の関係について、現在わかっている科学的知見を整理しながら解説します。




ランニングでバストは垂れる?


2 ランニングでバストが垂れる?胸の揺れと「クーパー靭帯」の関係

まず、なぜ「運動するとバストが垂れるのでは」と心配されるのでしょうか。

乳房は主に乳腺組織と脂肪組織で構成されており、それらを「クーパー靭帯」と呼ばれる結合組織が支えています。このクーパー靭帯は線維性の組織で、一度伸びたり切れたりしてしまうと、元通りに回復することはほとんどありません。

そのため、「ランニングなどでバストが大きく揺れるとクーパー靭帯が伸びてしまい、それが結果としてバストの下垂につながるのではないか」と考えられているのです。



3 医学的に見るバスト下垂の原因|運動はリスク要因になる?

では、実際にバストの下垂にはどのような要因が関わっているのでしょうか。

米国の形成外科医による大規模研究では、バストの下垂に影響を与える要因として、次のような項目が挙げられています(文献1)。



主要なリスク要因:
✅加齢
✅22.7キロ以上の大幅な体重減少
✅肥満
✅大きなブラサイズ
✅妊娠回数が多い
✅喫煙歴

この研究では、「上半身の筋トレをしているかどうか」については、バストの下垂のリスク要因にはならないと明確に述べられています。一方で、「ランニングなどの有酸素運動が下垂の直接的な原因となるかどうか」については、はっきりした結論は示されていません。

重力や加齢による「たるみ」は、バストだけでなくお顔や首元でも進行します。当院では、お肌の奥にあるコラーゲン線維を引き締める[サーマクール]や[ハイフ(ウルトラフォーマー)]など、メスを使わないたるみ治療も行っています。全身のエイジングケアが気になる方はご相談ください。


現時点では、ランニングのような活動が乳房の下垂を引き起こすことを、直接的に実証したエビデンスは存在していません。

本来であれば、「ランニングをしている女性」と「していない女性」を長期的に追跡し、乳房の下垂の程度を比較するような縦断研究が必要です。しかし、そうした研究は行われておらず、そのため「ランニングが原因でバストが垂れる」といった因果関係を断定することはできないのが現状です。


一方で、「運動中にバストにどのくらいの力やひずみがかかっているか」を調べた生体力学的な研究は少しずつ蓄積されてきています。次に、その内容を見ていきましょう。


4 クーパー靭帯は伸びる・切れると戻らない?運動による衝撃とリスク


最近の生体力学研究によると、ランニング時のバストへの機械的ストレスは、バストの体積と強い相関関係があることが分かっています。

具体的な研究データ(文献2)
◉多くの女性:ランニング時のバストの皮膚のひずみは60%未満
◉バストが大きい女性:最大93%のひずみが発生する可能性

この数値が示しているのは、バストが大きい女性の場合、ランニング中に皮膚組織が理論的な耐性限界に近いレベルのストレスを受ける可能性があるということです。

したがって、適切なサポートなしで激しい運動を続けると、クーパー靭帯や皮膚への負担が増え、長期的には下垂のリスクを高める可能性があることは否定できません。

しかし、ここで誤解してはいけないのは、
「リスクがある可能性がある=必ず問題が起こる」
という意味ではない、という点です。

実際には、後述するように適切なスポーツブラを着用することで、これらのリスクを大幅に軽減できることが示されています。


5 ランニングで胸を揺らさない!スポーツブラの効果と選び方

そこで鍵となるのが、「どのような状態で運動するか」、つまりスポーツブラによるサポートです。

適切なスポーツブラを着用することで、運動時にバストへかかる負担を劇的に軽減できることが、研究によって明らかになっています。スポーツブラは、単なるおしゃれアイテムではなく、女性が安心して運動習慣を続けるため機能性下着”と言ってよい存在です。

研究データが示すスポーツブラの効果:
◉バストの伸展を約80%削減(文献3)
◉85%のケースで運動時の胸部の不快感を軽減(文献4)

つまり、バストサイズに関わらず、自分に合ったスポーツブラを正しく着用すれば、バストへの負担を抑えながら安心して運動を楽しむことができるということです。


6 バストケアに運動は逆効果?体型維持に欠かせない習慣

一方で、「バストが垂れるのが怖いから運動をしない」という選択は、体型維持という観点から見ると、むしろ逆効果になる可能性があります。

下着メーカーのワコールは、40年以上にわたり日本人女性の体型データ(延べ4万人以上)を収集・分析しています。その中で、歳を重ねても体型を維持している女性が約25%存在し、その共通点として「たくさん歩くなどの運動習慣を持つ」ことが報告されています(文献5)。

つまり、有酸素運動を避けることは、バストを含めた全身の体型維持にはマイナスに働く可能性が高いのです。

「揺れが怖いから動かない」のではなく、“適切なサポートをしながら動く”ことこそが、長い目で見たときのバストと体型の味方と言えます。

また、運動だけではどうしても落ちにくい部分的な脂肪が気になる方には、寝ているだけで広範囲の脂肪減少を目指せる医療痩身機器[ヴァンキッシュ]などの併用もおすすめします。


7 まとめ:正しい知識とバストケアでランニングを楽しもう

最後にポイントを整理します。

⚪️「バストが垂れるから有酸素運動は避けるべき」という考えを裏付ける、直接的な科学的証拠は現時点では存在しません。

⚪️バストが大きい女性では、ランニング時に皮膚やクーパー靭帯へのストレスが高くなる可能性がありますが、適切なスポーツブラを着用することで、その負担を大きく軽減できることが研究で示されています。

⚪️ワコールの長期データからも、体型を維持している女性ほど「よく歩く」「運動習慣がある」と報告されており、運動を避けることはかえって体型悪化やバストの下垂につながりうると考えられます。

⚪️ウォーキング、ジョギング、ランニングなど、できる範囲で身体を動かす習慣を持つことは、健康面だけでなく、長期的なボディラインの維持にも大きなプラスになります。

バストへの不安から運動をあきらめてしまうのではなく、「正しい知識」と「適切なサポート下着」を味方につけて、楽しく体を動かすこと。それこそが、美しく健康的な体型を保つためのいちばん現実的で、科学的なアプローチだと考えています。

 

 


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【参考文献】

1. Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584


2. Do static and dynamic activities induce potentially damaging breast skin strain?
Michelle Norris, et al.
BMJ Open Sport Exerc Med
2020;Jul 14;6(1):e000770

3. Vertical breast extension during treadmill running
J Scurr, et al.
ISBS-Conference Proceedings Archive
2011

4.The Impact of Breasts and Bras on Physical Activity Amongst Women and Girls: A Systematic Review and Meta-Analysis
G Gilmer, et al.
Journal of Women's Sports Medicine
2024;4(1):39-54

5. 日本女性の加齢による体型変化
坂本 晶子
アンチ・エイジング医学
2014;10(6):78-83

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月18日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.16更新


1 はじめに

「筋トレでバストの下垂を予防できる」という考えは、美容・フィットネス業界で広く信じられています。 SNSやフィットネス雑誌では、「バストアップエクササイズ」や「美バストを作る筋トレ」といった情報が溢れています。

しかし、この考えは医学的に正しいのでしょうか。 筋トレの効果について、最新の医学研究をもとに検証していきます



筋トレでバストの下垂は防げるか?


2 バストの下垂予防と筋トレの関係:医学的エビデンスの有無


バストの下垂と筋トレの関係について、医学的なエビデンスは非常に限られています。

いきなり結論から言えば、健康な女性における胸部筋力トレーニングが将来のバスト下垂を予防するかどうかを直接検証した研究は、現時点では存在しません。

美容の予防医学において重要な課題でありながら、科学的に未解明の領域となっています。


3 バストアップ筋トレの効果を検証した唯一の研究

バストの下垂に対する筋トレの効果を直接測定した唯一の研究は、2016年に発表された減量手術を受けた女性75名を対象とした無作為化試験です(文献1)。

減量手術を受けた女性75名を対象とし a) 経皮的電気刺激と胸筋トレーニングの併用群 b) 胸筋トレーニングのみの群 c) 何もしない群 の3つにグループに分けて、乳房下垂の改善について検証したところ、経皮的電気刺激と胸筋トレーニングの併用群では乳房下垂は改善しましたが、胸筋トレーニングのみの群では改善は認められませんでした。

ただ、この研究は大幅な減量後のバストの下垂に対する治療であり、将来のバスト下垂を予防できるかどうかを検証したものではありません。


4 なぜ胸の筋トレは意味ないのか?「大胸筋でバストアップ」の嘘と真実

では、なぜ一般的に「筋トレでバストアップする」と言われているにも関わらず、医学的には効果が限定的なのでしょうか。 その理由は、バストの形状を維持している主要な構造が筋肉ではないからです。バストを支えているのは「クーパー靭帯(Cooper’s ligament)」と呼ばれる繊維組織です。


4-1 胸が垂れる原因は筋肉ではない?クーパー靭帯と筋トレの関係

クーパー靭帯は、乳腺組織を皮膚や胸筋膜につなぎ止める役割を果たしており、バスト全体に網目状に張り巡らされています。 胸が垂れる主な原因は筋肉の衰えではなく、この靭帯が伸びたり損傷したりすることにあります。

米国の形成外科医は、乳房の下垂をテーマにした論文の中で、筋トレがバストの下垂予防に役立たない理由を的確に説明しています。

「バストは皮膚とは強く結合していますが、筋肉(胸壁)とはゆるくつながっているだけです。筋トレをしても、バストは筋肉とともに上がる以上に、皮膚とともに落ちていくものなのです(文献2)」


4-2 一度伸びたクーパー靭帯は復活しない

残念ながら、一度伸びたクーパー靭帯は元に戻ることはありません。 大胸筋はバストの土台となる位置にありますが、バスト自体(乳腺組織と脂肪)とは直接的な構造的つながりはありません。つまり、どれだけ大胸筋を鍛えても、伸びてしまったクーパー靭帯を復活させたり、バストそのものを持ち上げたりする効果は期待できないのです。



5 まとめ:バスト下垂を治す方法は筋トレ以外にある

バストの下垂予防における筋トレの効果について、医学的には「見た目の補正には役立つが、構造的な下垂の予防・改善を裏付ける証拠はない」という位置づけが適切です。

筋トレによって期待できる効果
✅胸部全体のボリュームアップによる見た目の改善
✅姿勢の改善によるバストラインの印象向上
✅上半身の筋力向上による全体的な体型改善

筋トレでは期待できない効果
✅クーパー靭帯の強化
✅構造的な下垂の予防
✅すでに下垂したバストの根本的な改善

バストの下垂を予防したい場合は、適切なブラジャーの着用、急激な体重変動の回避、禁煙などの生活習慣の改善が重要です。

筋トレは健康維持やボディメイクには有効ですが、バストの下垂予防に関しては過度な期待を持たず、現実的な効果を理解した上で取り組みましょう。


【参考文献】

1. Ruiz-Tovar J, Llavero C. Effect of Pectoral Electrostimulation on Reduction of Mammary Ptosis After Bariatric Surgery. Surg Laparosc Endosc Percutan Tech. 2016 Dec;26(6):459-464.​​​​​​​​

2. Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

 

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月16日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.15更新


1 はじめに

判断の誤りの典型に「単なる前後関係なのに因果関係があると判断してしまう」というのがあります。

たとえば洗車をしたら雨が降ってすぐ汚れた経験をしたことから、「洗車をすると雨が降る!」と洗車が原因、雨が結果と思い込むこと。

これくらいバカバカしいとすぐに見透かすことができますが、では「授乳するとバストが垂れる」はどうでしょう?


授乳は乳房下垂の原因にはなりません

2 「授乳すると胸が垂れる」は本当?バスト下垂にまつわる誤解

実際、世界中に「授乳するとバストが垂れる」伝説はひろまっています。

イタリアの女子高生の30%はそう信じていると回答していますし、ドミニカの女性が早めに母乳育児を切り上げる理由にもなっています(文献1)。

このように「授乳するとバストが垂れる」伝説は、世界中の育児に影響を与えているわけですが、医学的に見て、その伝説はほんとうに正しいのでしょうか?


3 大幅な減量で胸が垂れる?形成外科・美容外科から見たバストの変化

バストは形成外科・美容外科における診療分野の大きな柱のひとつ。日本では圧倒的に胸を大きくする豊胸術が行われますが、米国では逆に大きく、垂れた胸を小さく、引き上げる手術がよく行われています。

肥満が社会問題になっている米国では、胃を小さくしたりする肥満に対する手術がよく行われますが、その結果大幅に減量してバストが垂れて、今度はバストの下垂の美容手術を受ける女性も多いそうです。


4 医学的に証明された「胸が垂れる原因」とは?喫煙や加齢の影響

そんなバストの下垂と日々向かいあう米国の形成外科医から、「何がバストを下垂させているか?」を検討した報告が出されました(文献1)。

それによるとバストを下垂させる原因とされたのは
加齢:皮膚の弾力低下によるもの
22.7キロ(50ポンド)を越える体重減少:22.7キロ(50ポンド)を越えるダイエットなど
肥満:BMIが高いことによる負担
大きなブラサイズ:重力の影響を受けやすいため
妊娠回数が多い:授乳ではなく、妊娠そのものによるホルモンや体型の変化
喫煙:タバコは皮膚のハリ成分を破壊するため
でした。


5 授乳ではなく「妊娠」が胸の変化の原因?医学的根拠による結論


この報告は、「妊娠することで下垂したのであって、授乳したからではない」と、前後関係はあっても、原因と結果の因果関係にはないとしています。

報告した医師は、「授乳でバストが崩れる」ことへの懸念が、先進国で母乳育児する率が高まらない一因になっていると憂慮していますが、「妊娠回数が多いとバストが崩れる」なら、ますます少子化に拍車がかかるのではないかと私は憂慮しています。



(参考文献)
Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月15日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.03.17更新

「ハイフ(HIFU)」は、いまや“切らないリフトアップ”の代名詞のように語られることもありますが、本来のHIFUは、流行から生まれた技術ではありません。

音(超音波)を一点に集め、皮膚表面を大きく傷つけずに、体内の“狙った場所”だけに作用させる・・・その発想は、長い医療の挑戦の延長線上にあります。

この記事では、HIFUが「医療の夢」から「美容の選択肢」へ育ってきた道のりと、普及した今だからこそ大切な安全性、そして未来の方向性を、できるだけ分かりやすく整理します。


HIFUの原点は「切らずに治療する」医療の挑戦

HIFUのメカニズム


HIFUはHigh-Intensity Focused Ultrasound(高密度焦点式超音波)の略で、超音波エネルギーを焦点(フォーカス)に集めて、体内の一点で熱を発生させる技術です。

イメージとしては、虫眼鏡で光を集めて紙の一点だけを熱くするのに近い発想です。この「体の外から、体内の一点だけを変える」という考え方は、20世紀中頃から研究されてきました。ただ当時の最大の壁は、身体の中のターゲットが見えないことでした。


画像診断の進歩が、HIFUを“実用技術”に変えた

ハイフの美容への応用


HIFUが再び大きく前進した背景には、超音波(エコー)やMRIなど、画像診断・画像ガイドの進歩があります。狙う部位を確認しながら照射を設計できるようになったことで、HIFUは「理論として面白い」から「医療として使える」へ近づきました。

医療の世界で評価されたのは、単に“切らない”という点だけではありません。出血や術後の腫れ・回復期間といった負担を抑えつつ、ターゲットにピンポイントにエネルギーを届けられる可能性が示されたことが大きいのです。

この成功が、「メスを使わずに熱エネルギーを届けるなら、美容にも応用できるのでは?」という発想につながっていきます。


美容への決定打は「顔の層構造」との出会い(SMASをどう考えるか)

顔の層構造

美容領域でHIFUが注目された理由は、「熱を入れられる」からだけではありません。もう一つの鍵が、顔の“層構造”の理解です。

顔は、表面から見える皮膚(表皮・真皮)だけでできているわけではありません。皮下脂肪、線維性の層、表情筋やその周辺構造など、いくつもの層が重なっており、たるみやもたつきの原因も人によって異なります。

そこで美容HIFUでは、どの層に、どの深さで、どれくらいの密度で当てるかを設計していきます。言い換えると、同じ「たるみ」という言葉でも、原因の層が違えば“答え”も変わるということです。

ここで重要なのは、深く当てれば良いわけではない点です。脂肪量が少ない方、輪郭が細い方に同じ設計を当てると、引き締まりより先に“ボリューム変化”が目立ってしまう場合があります。美容HIFUは、機器名よりも「診断と設計」が結果を左右します。


第2世代以降の進化は「痛み・時間・ムラ」を減らす競争

「痛み・時間・ムラ」を減らす競争


美容HIFUの普及期には、痛みや施術時間、照射のムラ、コストなど、いくつもの課題がありました。2010年代以降の進化は、簡単に言えば“患者体験を良くする方向”に進んできた歴史でもあります。

照射効率を上げる工夫(例:複数ライン照射の発想)、施術プロトコルの洗練、エネルギー設計の改善などにより、同じ「HIFU」という言葉でも、体感や仕上がりの安定性は変わってきました。

ただし、ここでも本質は同じです。速さは価値になり得ますが、雑さは価値になりません。“強い一発”より、“狙った小さな点の積み重ね”。この設計思想が、現代のHIFUの基本です。


普及と同時に増えた課題——火傷・神経・“こけ”はなぜ起こる?

火傷・神経・こけ


HIFUが広がるにつれて、トラブルの話も目にするようになりました。ここで大切なのは、恐怖心を煽ることではなく、「なぜ起きるか」を構造的に理解することです。トラブルの多くは、機器の善し悪しだけでなく、適応・設計・当て方の組み合わせで起こります。

火傷(やけど):表層に熱が偏る条件(密着不良、照射の重なり、冷却やジェルの扱いなど)


神経症状:深度選択や照射部位の設定が不適切な場合に、しびれや違和感などが出る可能性


“頬こけ”:脂肪が少ない方・輪郭が細い方に、脂肪層への影響が強く出る出力で照射を重ねた場合に起こり得る症状


これらは「出力を弱くすればゼロ」という単純な話ではありません。安全性は、出力よりも正確な施術の計画と実行に負うところが大きいのです。


効く人・効きにくい人——HIFUの適応は“期待値”で整える

HIFUが得意とするのは、一般に「軽〜中等度のたるみ」「輪郭のもたつき」「引き締めやハリ感の底上げ」といった領域です。一方で、皮膚の余りが大きい、脂肪が少ない痩せ型のお顔立ちの方では、HIFU単独に期待を寄せすぎると満足につながりにくいことがあります。

HIFUは「若返りを約束する魔法」ではなく、たるみの進行を賢く遅らせたり、輪郭の“印象”を整えたりする非外科的な選択肢です。現実的な期待値を共有することが、結果の満足度を大きく左右します。


当院のHIFU設計——「ドクター照射」で何が変わるのか

施術風景


当院ではHIFU施術を医師が担当し、診察で「どの層が主な原因か」「左右差」「脂肪量」「皮膚の張力」などを確認したうえで、深度・出力・ショット配置を施術計画を立てます。

同じ機器でも、同じ結果にはなりません。違いは、施術計画と施術の正確さです。

また、必要以上に当てない判断も重要です。こけが起こりやすい顔立ちや、HIFUより別のアプローチが合理的なケースでは、施術内容を調整したり、代替案を提案したりします。

“当てる技術”と同じくらい、“当てない選択”が安全性と美しさを守ります。

※HIFUは医療行為であり、効果の感じ方・経過には個人差があります。施術には痛み、赤み、腫れ、熱感、内出血、しびれ・違和感などのリスクが伴うことがあります。詳細は診察時にご説明します。


未来編——可視化×個別最適化×コンビネーションへ

これからのHIFUは、「より強く」ではなく「より精度高く」という方向に進むはずです。狙いを可視化し、個々の顔立ち・皮膚や脂肪の特性に合わせて設計する“個別最適化”が進めば、効果の再現性と安全性はさらに高まります。

また、HIFUが得意な領域と、他施術が得意な領域を整理して、必要に応じて組み合わせる“治療設計”も、より一般的になっていくでしょう。

未来のHIFUは、強さではなく精度で語られます。


まとめ

HIFUは、医療の「切らずに治す」という願いから育ち、画像技術の進歩と顔の層構造の理解によって、美容の実用技術へ進化してきました。そして普及した今こそ、最も重要なのは“機器名”ではなく、適応判断と施術計画です。

気になる方は、まず「自分はHIFUが向くのか」「どんな施術計画が安全か」を確認するところから始めてください。相談の段階で、やらない選択肢まで含めて検討できることが、納得できる結果への近道です。



ドクター施術のハイフをお試し下さい

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年12月13日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2023.05.12更新

美容クリニックでボツリヌス療法(ほんとうは製剤名で書いた方がわかりやすいですが)を続けていると、だんだん効きが悪くなったり、効果の持続時間が短くなったりすることがあります。それがボツリヌス療法の「耐性」問題。


この「耐性」については、以前から防ぐ方法はわかっていました。それはドイツのメルツ社が製造するゼオミンを使うこと。ゼオミンは神経毒素以外の余分なボツリヌス菌由来のタンパク質を含みません。そのため免疫を刺激して抗体を作ることがないとされ、実際ゼオミンのみを使用していて耐性が生じたとする報告はありません。


ただし、実際に美容目的でボツリヌス療法を続けて、中和抗体ができてしまう確率は、0.2~0.4%と高くはありません。「美容医療でのボツリヌス療法で使われる量は少ないから心配しなくてもよい」という楽観論が支配的でした。


そのため、美容医療業界では、ボツリヌス療法でどの製剤を使うかは、「耐性」問題が表面化しない限りどれでもいいが、「耐性」が疑われ出したらゼオミンに変更するというのが、これまでの「常識」でした。


ゼオミン自体はかなり前から市場に出回っている製剤ですから、日本でも扱っているクリニックは数多くあります。その他の製剤とともに製剤選択肢のひとつとして位置付けられているに過ぎません。


ところが、これまでの「常識」を見直す動きが出始めました。この動きを牽引しているのは、なんと米国形成外科学会(正確には米国形成外科学会の関連オープンアクセス誌)です。


背景にあるのは、ひとつは「美容医療でのボツリヌス療法で使われる量は少ないから」を言い訳にしていたのに、美容医療でのボツリヌス療法の適応が広がり、使用量も増えていること。もうひとつは美容医療以外でもボツリヌス療法が使われる疾患の増加。


ボツリヌス療法を取り巻く状況は大きく様変わりしています。ボツリヌス療法で検索すると、驚くほど多くの一般診療の医療機関が引っかかるご時世になりました。今のところボツリヌス療法が使われるのは一部の神経疾患ですが、その中には脳卒中の後遺症も含まれ、決して珍しい疾患だけとは言い切れません。今後さらに多くの病気治療に使われるようになることも予想されます。将来的には誰でも病気の治療のためにボツリヌス療法が必要になるかもしれません。


「耐性」の何が問題かと言えば、将来ボツリヌス療法が適応となる疾患になったときに、耐性ができていたらボツリヌス療法が使えなくなることなのです。


個人的な見解ですが、米国形成外科学会はその公的な立場上、あからさまに一社の製剤を勧めるわけにはいかない。それでも重大な問題であるからメッセージは発する必要がある。そこで学会直属の機関誌ではなく、学術誌としては格下になるけれども、逆にオープンアクセス誌だから誰にも見てもらえる姉妹誌から、「耐性」を扱う文献を掲載することにしたのではないでしょうか。昨年2回も。


その中では、「耐性の症状が生じる前から」、「初めてボツリヌス療法を受ける人にも」、「できるだけ耐性を生じにくい製剤(つまりはゼオミン)」を使うべきと結論づけられています。ボツリヌス療法のスタンダードを、これまでのように耐性を疑ってからゼオミンに変更するのではなく、初めから(!)使う方向へと変わることを促す内容です。


こうした文献を読んで、当院ではボツリヌス療法で使う製剤をボトックスからゼオミンに変更しました。厚労省承認製剤のボトックスか、耐性を作らないゼオミンか相当悩みましたが、美容でのボツリヌス療法で「耐性」を生じさせることは、何としても防がなければならないという思いが決め手になりました。

 

未来につなげるボツリヌス療法


ゼオミン(BOCOUTURE)を取り扱う代理店に発注した時に聞いた話では、まだ国内の美容クリニックで明らかな動きはないということでした。米国形成外科学会の関連オープンアクセス誌上で展開される啓蒙活動に、日本の美容医療界がどう反応するのか、それとも気づかずにスルーするのか、既読スルーするのか興味深く見守りたいと思います。

 

 

(参考文献)
1) Neurotoxin Impurities: A Review of Threats to Efficacy
Je-Young Park, et al.
Plast ReconstrSurg Glob Open
2020;8(1):e2627

2) Immunogenicity Associated with Aesthetic Botulinumtoxin A: A Survey of Asia-Pacific Physicians' Experiences and Recommendations
Je-Young Park, et al.
Plast ReconstrSurg Glob Open
2022;10(4):e4217

3) Emerging Trends in Botulinum Neurotoxin A Resistance: An International Multidisciplinary Review and Consensus
Wilson W S Ho, et al.
Plast ReconstrSurg Glob Open
2022;10(6):e4407

4) Immunogenicity of Botulinum Toxin Formulations: Potential Therapeutic Implications
Warner W Carr, et al.
Adv Ther
2021;38(10):5046-5064




 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥