若々しい素肌の源泉。肌の「ハリ」とは?
⚪️ふとした瞬間に鏡を見て、「なんだか肌に元気がない…」、「目尻や口元の小ジワが目立ってきた気がする」、「指で押したときの、跳ね返すような弾力がなくなった」、「頬全体がふっくら感を失って肌痩せしてしまった」と以前との違いに気づく・・
⚪️多くの方が抱えるこれらのお悩みは、肌の「ハリ」が失われ始めているサインかもしれません。
⚪️そもそも、私たちが「ハリがある」と感じる肌とは、一体どのような状態なのでしょうか。
⚪️医学の世界では、肌の「ハリ」は「粘弾性(ねんだんせい)」という言葉で説明されます。
⚪️これは、肌に加わった力に対して「元に戻ろうとする弾力(弾性)」と、「形を保とうとする張り(粘性)」を合わせた性質のことです。小ジワや肌痩せは、まさにこの粘弾性が低下することで現れる典型的な症状といえるでしょう。
⚪️例えば、みずみずしい赤ちゃんの肌を指でそっと押すと、ぷるんと押し返し、すぐに元の状態に戻ります。このしなやかな力が、まさに「粘弾性」であり、ハリの正体なのです。
ハリの本質 細胞外マトリックス(ECM)
肌のハリの本質は、「細胞外マトリックス(Extracellular Matrix, ECM)」と呼ばれる緻密なネットワーク構造です。
主に以下の要素によって構成されています。
⚪️コラーゲン(構造を支える鉄骨): 強靭な線維で、鉄骨のように肌全体の構造を支え、強度と安定性を与えます。
⚪️ エラスチン(弾力性を生むバネ): コラーゲン線維を束ねる伸縮性に富んだ線維です。表情の変化などに合わせてしなやかに伸び縮みし、元の形に戻るためのバネの役割を果たします。
⚪️ヒアルロン酸(空間を満たす保水クッション): コラーゲンやエラスチンの隙間を埋めるゼリー状の物質。驚異的な保水力で組織の水分量を維持し、内側から肌をふっくらと持ち上げるクッションとして機能します。
⚪️線維芽細胞(ECMを作り維持する): コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といったECMの構成成分をすべて作り出します。古くなったECMを分解し、新しいものを作り出す新陳代謝をコントロールします。
⚪️皮膚幹細胞(線維芽細胞を生み出す): ECMを作る線維芽細胞を生み出しているのは、皮膚幹細胞です。この細胞こそが、肌が自ら生まれ変わり、長期的に健やかな状態を保つための鍵を握っています。
これらすべての要素が完璧なバランスで連携し、機能することで、私たちは「ハリのある肌」を実感できるのです。
こうして「ハリ」は失われる
年齢とともにハリが失われるとは、この緻密で精巧な細胞外マトリックスの構造が、内外からの様々な要因によって崩壊していく現象に他なりません。その原因は、大きく2つに分けられます。
1. 内側からの変化(内因性老化)
加齢による避けられない変化で、ECMの「生産能力の低下」と言い換えることができます。
◉細胞機能の衰え: 年齢を重ねると、ECMを作り出す「線維芽細胞」や、その源となる「皮膚幹細胞」の働きが鈍くなります。新しいECMの生産量が減少し、古くなったECMの分解と再生のサイクルも滞るため、徐々に構造が弱体化していきます。
◉ホルモンバランスの変化: 特に女性の場合、閉経期に女性ホルモン(エストロゲン)が急減します。エストロゲンはコラーゲンの産生を促進する働きがあるため、その減少はECMの主成分であるコラーゲンの質の低下と量の減少に直結し、ハリの急激な喪失につながります。
2. 外側からのダメージ(外因性老化)
生活習慣や環境要因が、ECM構造を直接的に「破壊・変質」させてしまうプロセスです。
◉紫外線(光老化): ECMにとって最大の敵です。紫外線は、コラーゲン線維を直接切断・分解してしまう酵素(MMP)の産生を促します。これは、建築物の鉄骨を無理やり破壊するような行為であり、ハリの喪失を劇的に加速させます。
◉ 糖化: 過剰な糖がECMの主成分であるコラーゲンなどのタンパク質と結びつき、「糖化最終産物(AGEs)」を生成します。AGEsが蓄積すると、コラーゲンやエラスチンは本来のしなやかさを失い、硬くもろいものに変質してしまいます。これは、鉄骨やバネがサビついて劣化するようなものです。
◉ 酸化ストレス(喫煙・大気汚染など): 喫煙や大気汚染物質は、体内に活性酸素を発生させ「酸化ストレス」を引き起こします。この酸化ストレスは、ECMの構成成分だけでなく、線維芽細胞や皮膚幹細胞そのものにもダメージを与え、ECMの生産から維持、再生に至るすべてのプロセスを妨害します。
このように、私たちの肌のハリは、細胞外マトリックスという精巧なシステムによって支えられています。その構造がなぜ損なわれるのかを深く理解することは、失われたハリを取り戻し、未来の肌を守るための、最も確かな一歩となるのです。
肌の「ハリ」をとり戻す治療
ECM治療(細胞外マトリックス治療)
当院が力を入れているECM治療は、肌の土台である細胞外マトリックスを直接的に再生・増強する治療法です。
ボライトXC、スネコス、ジャルプロ・スーパーハイドロの3つの製剤を用いることで、皆様のお悩みに最適な治療をご提案できます。
これらのECM治療は、従来のボトックスやヒアルロン酸注射とは異なり、肌細胞そのものにはたらきかけ、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸の産生を促進します。その結果、表面的なエイジングケアではなく、肌の本質的な若返りが期待できます。
以下で、3つのECM製剤の特徴と、あなたのお悩みに合った治療法を詳しくご紹介いたします。
その他のハリ改善治療
◉ 1. 炭酸ガスフラクショナルレーザー
◎推奨理由: レーザーで皮膚に微細な穴を開け、意図的に傷を作ることで、肌本来が持つ創傷治癒能力を引き出します。この過程で、真皮層の線維芽細胞が活性化され、肌のハリを支える細胞外マトリックス(コラーゲンやエラスチン)の産生が強力に促進されます。肌が内側から再構築され、ハリと弾力が回復します。
◎期待される効果:
•小ジワ、ちりめんジワの改善
•肌のハリ、弾力アップ
•毛穴の引き締め
•ニキビ跡の改善
◎特徴: ダウンタイムは赤みが数日、ザラつきが1週間程度続きます。治療は1〜2ヶ月ごとの間隔を推奨します。特に目元のたるみやシワに特化した「マドンナリフト」としても知られる施術です。
◉ 2. リジュラン
◎推奨理由: サーモン由来のポリヌクレオチド(PN)を有効成分とし、皮膚に直接注入します。このポリヌクレオチドが線維芽細胞を直接活性化させ、細胞外マトリックス(コラーゲン、エラスチン)の産生を促進します。肌細胞の成長をサポートし、ダメージを受けた皮膚を修復することで、根本的な肌質の改善を目指します。
◎期待される効果:
•目元や口元の小ジワ改善
•肌のハリと弾力の回復
•肌の保水力向上、乾燥改善
•皮脂バランスの正常化
◎特徴: 自身の肌細胞を活性化させるため、効果の持続性が高く、自然な仕上がりが期待できます。2〜3週間おきに3〜4回の治療が推奨されます。
◉ 3. ダーマペン・プライム
◎推奨理由: 細胞間の情報伝達物質であるエクソソームをダーマペンを使って肌に導入する治療法です。エクソソームには細胞の修復や再生を促す多くの成長因子などが含まれており、老化した線維芽細胞を活性化させます。これにより、新しい細胞外マトリックス(コラーゲンやエラスチン)の産生が強力にサポートされ、肌の若返りを根本から促します。
◎期待される効果:
•総合的なエイジングケア(シワ、ハリ、弾力)
•肌の再生能力の向上
•肌荒れ、アトピー性皮膚炎の改善
•くすみの改善、透明感アップ
◎特徴: 細胞レベルでの若返りを図る次世代の再生医療です。他の施術との組み合わせで、相乗効果も期待できます。
◉ 4. リジェニン・スキンブースター
◎推奨理由: ペプチドは、私たちの体内に存在するアミノ酸が結合した成分で、細胞の働きをサポートする重要な役割を担っています。このペプチドを肌に補うことで、肌のハリや弾力を支える細胞外マトリックスの再生を促します。
◎期待される効果:
ペプチドは、皮膚の真皮層にある線維芽細胞に働きかけ、コラーゲンやエラスチンの産生を促す信号を送ります。細胞外マトリックスの主成分であるこれらの物質が増えることで、肌の密度が高まり、内側から押し上げるようなハリと弾力の回復が期待できます。これにより、小ジワの軽減や肌質の改善に繋がります。
◎特徴:
ペプチドは分子量が小さいため、
1) アレルギーリスクが少なく、安全性が高い
2) 皮膚への浸透性が優れているため、注入する必要がない
ことが特徴です。お悩みに合わせ、3〜4週ごとに数回の治療を推奨しており、目元などのデリケートな部位へのアプローチも可能です。
細胞外マトリックス(ECM)治療について
「細胞外マトリックス(ECM)治療」という言葉を耳にしたことはありますか?
これは、肌のハリや弾力を司る細胞外マトリックス(ECM)という、肌の土台を注射によって再生・活性化させる、新しい美容医療のアプローチです。
従来の美容治療とは異なり、単にシワや凹みを一時的に埋めるだけでなく、肌そのものが持つ再生能力を引き出し、肌を内側から若返らせることを目指します。エイジングケアの新たなスタンダードとして注目を集めています。
従来の美容治療との違い
従来の美容皮膚科治療は、加齢に伴う肌の変化に対して、表面的なアプローチに留まることがほとんどでした。
例えば、ボトックスは筋肉の動きを制限してシワを目立たなくさせ、一般的なヒアルロン酸注射はボリューム補充のみに主眼を置いています。
一方、ECM治療は根本的に異なるアプローチを取ります。肌の土台である細胞外マトリックス—つまりコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸のネットワーク—に直接作用し、肌細胞に対してこれらの物質を産生するよう働きかけるのです。
その結果、肌自体が「若返る」のではなく「生まれ変わる」体験が得られます。効果の発現は注射系治療では比較的緩やかですが、3~6ヶ月かけて段階的に改善していく過程で、自然で持続性の高い肌の再生が期待できるのです。
イタリアでの誕生と科学的根拠
イタリアは、注射による肌再生治療のパイオニアとして知られています。
「バイオリバイタリゼーション」の誕生
1990年代末から2000年代初頭にかけて、イタリア人科学者によって純粋なヒアルロン酸を少量ずつ肌に注入する「バイオリバイタリゼーション」という技術が発見され、実用化されました。これは、肌の水分補給と潤いを取り戻すことを目的とした治療法でした。
アミノ酸の重要性の発見
しかし、イタリアの美容医療の専門家たちは、単に水分を補給するだけでなく、肌のハリや弾力の源であるコラーゲンやエラスチンを根本から増やせないかと考えました。そこで注目されたのがアミノ酸の力です。「必要なアミノ酸を肌に補給すれば、弱った線維芽細胞を活性化し、コラーゲンを再生できるのではないか」というアイデアが提唱され、2004年には世界初のアミノ酸とヒアルロン酸を組み合わせた注射によるスキンブースター「Jalupro(ジャルプロ)」がイタリアで誕生しました。
ヒアルロン酸の分子量による作用の違いの解明
さらにイタリアの研究者たちは、ヒアルロン酸は分子量の違いによって肌への作用が異なるという重要な点にも気づきました。
◎高分子量のヒアルロン酸(HMWHA)は、主に肌の表面で水分保持や組織の構造維持に寄与し、潤いを与えてバリア機能をサポートします。
◎低分子量のヒアルロン酸(LMWHA)は、肌の奥深くまで浸透しやすく、細胞シグナル伝達や炎症反応の調節に関与し、線維芽細胞を刺激してコラーゲンやエラスチンの産生を促す効果が示唆されています。
*ヒアルロン酸の分子量による分類は研究者によって異なり、ここでは高・低分子量に分けていますが、さらに細かく高・中・低分子量に分けることもあります。
このように、アミノ酸によるコラーゲン産生のサポートに加え、ヒアルロン酸の分子量を使い分けることで、より効率的に肌の再生を促せるという考え方が確立されました。
当院で取り扱う主要製剤
| 製剤名 | 主成分 | 特徴 | こんな方に |
|---|---|---|---|
| ボライトXC | 架橋HA | 保湿・肌痩せ改善 | 乾燥肌・部分的な小ジワ改善 |
| スネコス | 非架橋HA+6種アミノ酸 | 目元の小ジワ・肌質改善 | 目元のお悩み・全体的な肌質改善 |
| ジャルプロスーパーハイドロ | 高低2種HA+7種アミノ酸+3種ペプチド | リガメント再生 | たるみが気になる |
◉ 1. ボライトXC(Volite XC)
◎推奨理由: ボライトXCは、Allergan(アラガン、現AbbVie)が開発した唯一の厚生労働省承認のECM製剤です。架橋ヒアルロン酸(VYCROSS/バイクロス技術)とリドカインを配合し、優れた保湿効果と即時の肌表面改善が特徴です。乾燥肌がベースにある肌症状の緩和に最適です。
◎期待される効果:
•小ジワ、ちりめんジワの改善
•乾燥肌の改善
◎施術: 最大9ヶ月の効果持続が認められており、3~6ヶ月ごとのメンテナンスが目安となります。
詳細は 「ボライトXC」ページ(/volite/)をご参照ください。
◉ 2. スネコス
◎推奨理由: スネコスは、Professional Dietetics社(イタリア)による非架橋ヒアルロン酸と6種のアミノ酸(HY6AAフォーミュラ、特許取得)の配合製剤です。単なる保湿ではなく、コラーゲンとエラスチンの同時産生を促進する独自メカニズムを有しています。
◎期待される効果:
•目元の小ジワやクマの改善
•顔全体の肌質改善
◎施術: 効果実感には複数回施術(2~3週間隔×4回)が推奨されており、その後は6ヶ月ごとのメンテナンスで効果を維持します。
詳細は 「スネコス」ページ(/sunekos/)をご参照ください。
◉ 3. ジャルプロスーパーハイドロ
◎推奨理由: Professional Derma SA社(スイス/イタリア)の最新世代ECM製剤です。高低2種の非架橋ヒアルロン酸に加え、7種のアミノ酸と3種のペプチドを配合しており、靭帯(リガメント)の再生メカニズムに作用します。
◎期待される効果:
•肌質改善
•引き締め・リフトアップ
◎施術: 1か月間隔×2~3回の施術後、効果は6ヶ月~1年継続するため、メンテナンスは3~6ヶ月ごとで十分です。
詳細は「ジャルプロ・スーパーハイドロ」ページ(/jaluprosh/)をご参照ください。
あなたに合うECM治療は?|お悩み別・選び方ガイド
目元の小ジワ・クマが気になる方 → スネコス
◎目元は顔の中でも最も皮膚が薄く、デリケートな部位です。加齢とともに、目の周囲の細胞外マトリックスが急速に減少し、小ジワやクマが深刻化します。
◎スネコスは、このデリケートな目元エリアのお悩みに適した処方設計となっており、コラーゲンとエラスチンの産生を同時に促進します。
◎目の下のクマ(血行不全型、色素沈着型)の改善にも効果が報告されており、肌のターンオーバー促進によってメラニン排出も加速します。複数回の施術を行うことで、目元の肌質が段階的に改善され、メイクのりも向上します。
◎スネコスは目元以外の顔全体にも使用でき、全体の肌質改善とともに目元の悩みを重点的にアプローチすることも可能です。
◎定期的なメンテナンスにより、若々しい目元を長期間維持できます。
▶目元の小ジワ・クマが気になる方
顔全体のたるみ・フェイスライン改善 → ジャルプロ・スーパーハイドロ
◎年を重ねるにつれて、顔全体にたるみが生じ、フェイスラインがぼやけてしまうのは、深層の支持靱帯が弱化することも一因です。ジャルプロ・スーパーハイドロは、この支持靱帯を再生・強化するメカニズムを持つことが特徴です。
◎複数回の施術により効果が重積し、通常2〜3回の施術後にはリフトアップの実感が得られるケースが多くみられます。効果の持続期間は6ヶ月〜1年程度と比較的長く、メンテナンスの間隔にも余裕を持ちやすい点が特長です。
◎フェイスラインの引き締め、頬のハリ感の回復、口周りのたるみ改善など、加齢にともなう変化の総合的なケアが期待できる、リフトアップ効果に優れたECM製剤です。
▶顔全体のたるみ・フェイスライン改善
乾燥・肌質改善・承認製剤で安心 → ボライトXC
◎ボライトXCの最大の特徴は、日本の厚生労働省から医療機器として正式に承認を受けている点です。科学的根拠に基づいた安全性と有効性が公的に認められており、未承認製剤に抵抗がある方にも安心してお選びいただけます。
◎承認製剤であると同時に、保湿に特化した処方もボライトXCの大きな強みです。乾燥による肌トラブルやターンオーバーの低下、肌質の変化といった悩みに対し、架橋ヒアルロン酸が長期間肌内にとどまり、継続的な保湿効果を発揮します。効果の持続は最大9ヶ月程度とされており、年2回ほどのメンテナンスで良好な状態を維持しやすいのも魅力です。
◎「ECM治療に興味はあるけれど、未承認製剤には不安がある」という方にとって、ボライトXCは有力な選択肢となります。肌がデリケートな方や、保湿を最優先に考えたい方にもおすすめです。
▶乾燥・肌質改善・承認製剤で安心
3つのECM製剤、何が違う?
スネコスとジャルプロSHの違い
◉スネコスとジャルプロSHは、ともにイタリアに起源を持つECM製剤ですが、処方と作用メカニズムは大きく異なります。
◉スネコスは、非架橋ヒアルロン酸と6種のアミノ酸(HY6AAフォーミュラ)の軽量な配合が特徴で、注射部位での拡散性が高く、広範囲の肌質改善に向いています。特に目元などデリケートな部位への注射に適しており、コラーゲンとエラスチンの産生を促す働きが期待されます。効果の発現に複数回の施術(4回推奨)が必要ですが、その分、段階的で自然な肌質の変化を目指せるのが特長です。
◉一方、ジャルプロSHは、高濃度のヒアルロン酸(高低2種混合で計80mg)と7種のアミノ酸、さらに3種のペプチドを配合した、より濃厚な処方です。皮膚支帯(リガメント)へのアプローチに特化しており、注射後の滞留性が高く、注射部位での局所的な作用が強いのが特徴です。たるみやフェイスラインの引き締めを目的とした施術に用いられ、2~3回の施術で変化を実感しやすい傾向があります。
◉簡潔にいえば、スネコスは「広がりと肌質の総合的な改善」を、ジャルプロSHは「局所的なリフトアップ・引き締め」をそれぞれ得意とする製剤です。
◉目元や全体の質感改善が目的ならスネコス、たるみ・フェイスラインの引き締めが目的ならジャルプロSHという使い分けが基本となります。
スネコスとボライトXCの違い
◉スネコスとボライトXCは、ともに肌質改善を目的とした製剤ですが、成分構成と効果の性質が異なります。
◉スネコスは非架橋ヒアルロン酸とアミノ酸の組み合わせであり、肌細胞に働きかけてコラーゲンやエラスチンの産生を促すことが主な目的です。肌そのものの再生力にアプローチする製剤といえます。目元や頬など広い範囲に注射し、複数回の施術を通じて段階的に肌質の改善を目指します。
◉一方、ボライトXCは架橋ヒアルロン酸とリドカインの処方であり、保湿と肌のボリューム補充に主眼が置かれています。注射直後から肌のハリ感や潤い感の向上が期待でき、小ジワが目立ちにくくなるといった変化を比較的早期に実感しやすい製剤です。また、効果の持続期間が長めとされており、メンテナンスの間隔を空けやすいのも利点です。
◉どちらを選ぶかは、求める効果の優先順位によって変わります。「段階的な肌質改善、特に目元のケアを重視したい」という方にはスネコスが、「早期の保湿効果と、通院頻度の少なさを重視したい」という方にはボライトXCが向いています。もちろん、両製剤を併用して、それぞれの長所を活かすことも可能です。
ジャルプロスーパーハイドロとボライトXCの違い
◉ジャルプロSHとボライトXCは、いずれも実績のあるECM関連製剤ですが、作用の方向性と効果の現れ方が大きく異なります。
◉ジャルプロSHは、ヒアルロン酸・アミノ酸・ペプチドの3層構成により、肌のより深い層(真皮〜皮下組織境界)に作用し、皮膚支帯の再生を促すことを目的としています。たるみやフェイスラインの改善に特化しており、複数回の施術を重ねることで引き締め効果の積み重ねが期待できます。
◉ボライトXCは、架橋ヒアルロン酸による保湿とボリューム補充に特化した製剤です。深層への強い作用というよりも、肌表面から浅い層の乾燥改善や小ジワへのアプローチに力点が置かれています。また、厚生労働省の承認を受けた製剤であり、公的な安全性評価を重視される方にも選ばれやすい製剤です。効果の持続期間が長めとされるため、トータルのメンテナンス回数を抑えやすいのも特長です。
◉選択の基準としては、「顔全体のたるみ・引き締めを最優先にしたい」という方にはジャルプロSHが、「乾燥・小ジワの改善と承認製剤の安心感を重視し、メンテナンス間隔をなるべく空けたい」という方にはボライトXCが適しています。両製剤を異なる部位に併用することで、包括的なアプローチも可能です。
ハリを求める治療のメンテナンス 〜レチノイド療法〜
⚪️レチノイドは、ビタミンA誘導体の総称で、肌細胞のターンオーバー促進やコラーゲン産生のサポートなど、複数のアプローチからエイジングケアとして働きかけます。
⚪️ECM治療と組み合わせることで、肌再生における相乗的な効果が期待されるため、当院ではECM治療後のレチノイド併用を提案しています。
⚪️レチノイドは皮膚内でのヒアルロン酸の合成を促進する作用があります。ヒアルロン酸は細胞外マトリックス(ECM)の主要な構成成分であり、皮膚のハリの維持に不可欠です。
⚪️そればかりか、レチノイドはヒアルロン酸そのものと、それを受け取る受容体の両方を増やす(文献1)ことで細胞間の連携を密にし、細胞外マトリックス全体の機能を高め、治療効果をサポートします。
⚪️ヒアルロン酸受容体の発現は皮膚の再生や修復に寄与することが示唆されています(文献2)。
【参考文献】
1) UVA and UVB decrease the expression of CD44 and hyaluronate in mouse epidermis, which is counteracted by topical retinoids
Emel Calikoglu, et al.
Photochem Photobiol
2006 Sep-Oct;82(5):1342-7
2) Hyaluronic acid: redefining its role.
G Abatangelo, et al.
Cells
2020 Jul 21;9(7):1743
レチノイド療法の紹介
院長コラム 〜細胞外マトリックス(ECM)治療のメカニズム〜
ここのところ、「ジャルプロ」、「スネコス」、「ハイドロ」、「プロファイロ」と、いずれもヒアルロン酸を主成分とした製剤が、細胞外マトリックス(ECM)ブースターと称してしのぎを削っています。
細胞外マトリックス(ECM)とは、ヒアルロン酸の海の中をコラーゲンやエラスチンといった線維成分や線維芽細胞が漂っているようなもの。そのため細胞外マトリックス(ECM)ブースターの製剤でもヒアルロン酸が中心になっています。
ヒアルロン酸で美肌治療というのも不思議に思われるかもしれません。
実は皮膚ではヒアルロン酸が代謝されることで皮膚の再生を支えています。ヒアルロン酸代謝が止まると皮膚は急速にしぼんでしまいます(ステロイドを塗っていると、皮膚が萎縮するのがこの例)。
ただし、皮膚の再生に役立つヒアルロン酸は特定の分子量に限られます。中分子量のヒアルロン酸が、受容体と結合したときのみ、真皮でコラーゲンやヒアルロン酸の産生、さらには表皮の分化・増殖、つまりは皮膚の再生が起こるのです。
よくいただくご質問
肌の「ハリ」とは具体的にどのような状態を指しますか?
⚪️医学的には、肌の「ハリ」は粘弾性(viscoelasticity)という複合的な特性を指します。
⚪️これは、肌に力が加わったときに変形に抵抗し、力が取り除かれると元の形に瞬時に戻ろうとする「弾力性(elasticity)」と、ゆっくりと形を保とうとする「粘性(viscosity)」を合わせた性質のことです。
⚪️小ジワや肌痩せは、この粘弾性の低下によって現れる典型的な症状と言えます。
肌の「ハリ」はどのように測定されるのですか?
⚪️肌のハリは、キュートメーター(Cutometer)と呼ばれる専門機器を用いて客観的に評価されます。
⚪️この機器は皮膚を吸引し、その変形量や回復速度を測定することで、皮膚の硬さや弾力性を数値化します。例えば、R0(皮膚の硬さや伸展性)、R2(総弾性率)、R7(純弾性率)といったパラメータが算出されます。
肌の「ハリ」は、皮膚のどのような構造によって生まれていますか?
⚪️肌のハリは、主に真皮層に存在する細胞外マトリックス(ECM)という緻密なネットワーク構造によって生み出されています。
⚪️ECMは主に以下の要素で構成されます:
• コラーゲン線維: 肌の構造を支え、強度と安定性を与える「鉄骨」のような役割を担います。
• エラスチン線維: コラーゲン線維を束ね、ゴムのように伸び縮みして弾力的な復元力を生む「バネ」の役割を担います。
• ヒアルロン酸: コラーゲンやエラスチンの隙間を埋めるゲル状の物質で、大量の水分を保持し、肌を内側からふっくらと持ち上げる「保水クッション」として機能します。
これらの成分はすべて、真皮に存在する線維芽細胞によって産生・維持されています。
肌の「ハリ」を保つ上で「細胞外マトリックス(ECM)」とは何ですか?
⚪️細胞外マトリックス(Extracellular Matrix; ECM)とは、皮膚の真皮層の構造で、組織の形を保ち、細胞同士のコミュニケーションの場ともなる重要な構造体です。
⚪️肌を建築物に例えるなら、ECMはその基礎、鉄骨、内装のすべてを担う存在と言えます。肌のハリ、弾力、潤いを維持する上で、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といったECMの主要成分のバランスが非常に重要です。
加齢とともに肌の「ハリ」が失われるのはなぜですか?
ハリが失われる現象は、「内因性老化」と「外因性老化」の二つのメカニズムが複合的に作用して起こります。
◉内因性老化(避けられない生理的衰退): 線維芽細胞の機能低下や数の減少により、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸といったECM成分の産生能力が著しく低下します。特に女性では、閉経後のエストロゲン減少がハリの低下を加速させます。
◉外因性老化(ダメージの加速因子): 紫外線(光老化)、喫煙、糖化、大気汚染などが原因で、既存のECMが破壊されたり変質したりします。
紫外線は肌の「ハリ」にどのように影響しますか?
⚪️紫外線は外因性老化の最大の原因であり、光老化を引き起こします。
⚪️紫外線は肌の奥深くの真皮層に到達し、活性酸素種(ROS)を大量に発生させます。これがマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)というコラーゲンやエラスチンを分解する酵素の産生を促進し、同時に新しいコラーゲン合成を抑制することで、真皮の構造を破壊し、ハリの喪失を加速させます。
喫煙や食生活も肌の「ハリ」に影響しますか?
⚪️はい、喫煙は強力な皮膚老化促進因子です。
⚪️喫煙は体内に酸化ストレスを誘導し、コラーゲン合成を阻害し、エラスチン線維を変性させます。また、血行不良を引き起こし、皮膚に必要な栄養素の供給を妨げます。
⚪️高糖質食による糖化(glycation)も重要な因子で、過剰な糖がコラーゲンなどのタンパク質と結合し、終末糖化産物(AGEs)を生成します。AGEsはコラーゲンネットワークを硬くし、弾力性を失わせ、肌の黄ぐすみの原因にもなります。
「細胞外マトリックス治療」とはどのような治療ですか?
⚪️細胞外マトリックス(ECM)治療は、肌のハリや弾力を支える細胞外マトリックス(ECM)という土台を、注射によって再生・活性化させる新しい美容医療のアプローチです。
⚪️従来のフィラーのように単にシワや凹みを一時的に埋めるだけでなく、肌が本来持つ再生能力を引き出し、肌を内側から若返らせることを目指す、エイジングケアの新たなスタンダードとして注目されています。
従来のヒアルロン酸フィラーとは何が違いますか?
ECM治療とフィラー治療の詳しい比較はこちら
従来のレーザー治療などの美肌術とは何が違いますか?
⚪️従来の美肌術では、レーザーなどで皮膚に侵襲を与え、創傷治癒反応を惹起させてコラーゲンを増やす、いわば「ムチ」のアプローチでした。
⚪️これに対し、細胞外マトリックス(ECM)治療は、皮膚幹細胞や線維芽細胞といった肌再生の主要な細胞の生存環境を整える「アメ」のアプローチを取ります。これにより、線維芽細胞の働きを最大限に発揮させ、コラーゲンだけでなくECMの構造そのものを再構築して「ECMリモデリング」を実現します。
3つのECM治療製剤は組み合わせて受けられますか?
⚪️はい、3つの製剤を組み合わせて受けることは可能です。
⚪️むしろ、複数のお悩みを持つ患者様にとっては、最適な結果を得るために推奨される選択肢です。
⚪️例えば、主施術としてジャルプロSHでたるみを改善しながら、同時に目元エリアにスネコスを追加するといった組み合わせが有効です。ただし、肌への刺激と回復を考慮し、施術計画は医師が慎重に設計します。
スネコスとジャルプロSHはどう使い分けますか?
⚪️スネコスは「目元・顔全体の肌質改善」に、ジャルプロSHは「たるみ・リフトアップ」に特化しています。
⚪️目元のクマや小ジワが主な悩みであればスネコス、顔全体のたるみやフェイスラインの引き締めが主な悩みであればジャルプロSHが第一選択肢となります。
⚪️複合的なお悩みがある場合は、両製剤の併用で相乗効果を狙うこともできます。
ボライトXCが厚労省承認というのはどういう意味ですか?
⚪️ボライトXCは、日本の厚生労働省から医療機器として正式に承認を受けています。これは、その安全性と有効性が公的に認定され、臨床試験データに基づいて承認されたことを意味します。
⚪️スネコスやジャルプロSHは、欧州ではCE認証を取得していますが、日本での薬機法承認はまだ取得していません。
⚪️承認製剤であることは、患者様にとって追加的な安心感につながります。ただし、未承認製剤が劣っているわけではなく、欧州での実績と有効性は十分に実証されています。
スネコスとジャルプロSHはどう使い分けますか?
⚪️スネコスは「目元・顔全体の肌質改善」に、ジャルプロSHは「たるみ・リフトアップ」に特化しています。
⚪️目元のクマや小ジワが主な悩みであればスネコス、顔全体のたるみやフェイスラインの引き締めが主な悩みであればジャルプロSHが第一選択肢となります。
⚪️複合的なお悩みがある場合は、両製剤の併用で相乗効果を狙うこともできます。
ECM治療は何歳から受けるのがいいですか?
⚪️ECM治療は、肌の老化が目に見え始める30代後半から、非常に効果的です。
⚪️ただし、肌質の改善や予防的なアプローチであれば、30代前半から始めることも推奨できます。
⚪️逆に、40代、50代以上の方でも、加齢によるダメージが蓄積していることから、ECM治療による肌の再生効果は顕著に現れることが多くなります。
制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年3月18日)



