「誰が何を言っても許される・・・サイエンスの匂いさえしない・・」
皮膚科学会の重鎮が、学術誌で美容医療の現状をこう表現されています。
自分が足を踏み入れた頃に比べると、ずいぶんましになったと思うのですが、それでもまだ「サイエンスの匂いさえしない」施術が残っています。
例えば「脂肪代謝を高めて脂肪を減らす」注射。典型的には、メソセラピーと称される施術法で見られます。
メソセラピーはヨーロッパで行われている代替医療のひとつ。たとえば膝の痛みに苦しむ人に対し、膝関節の周囲の皮膚に鎮痛剤をまんべんなく少量ずつ皮内注射します。
痩身を目的とするときも、脂肪の代謝を亢進させるという多くの植物由来の成分を、痩せたい部位に少量ずつ多数カ所注入するのです。
最大の疑問点は、たとえ一時的には脂肪代謝を亢進させることができたとしても、持続的な痩身効果が得られるのか(得られるとはとても思えない)?ということ。
残念ながら、メソセラピーはあまりに施術者ごとに施術方法が違いすぎて(いい加減すぎて)、痩身効果があるのか検証できません。
かつて、メソセラピーとは違う流れで脂肪代謝を高めて脂肪を減らすとする製剤(成分的には喘息の吸入治療薬)で、有効性・安全性を評価する治験がスタートしたことはありました。しかしいつの間にかその後の消息を聞かなくなりました。
現状では、脂肪の代謝を高めることで痩身効果が得られるというエビデンスはありません。「脂肪代謝を高めて脂肪を減らす」注射は消え去るべき。
「誰が何を言っても許される・・・サイエンスの匂いさえしない・・」
こうした評価が、一日も早く昔話になりますように。
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