【はじめに】冬の不調、実は「暖房病」かも?
暖房の効いたオフィスにいると、頭がぼーっとしたり、肌が粉を吹いたりしていませんか?
その症状、医学的な診断名ではありませんが、通称「暖房病」と呼ばれるものかもしれません。暖房病とは、暖房による「乾燥」と「頭寒足熱の逆転(のぼせ)」によって生じる不調の総称です(文献1)。
この記事では、多くの方が悩む「暖房病」の正体と、砂漠レベル(湿度30%以下)の過酷な環境から肌を守る「医学的な解決策」を、美容皮膚科医の視点から解説します。
【基礎知識】「暖房病」とは?肌と体に起きるSOS

暖房病は正式な疾患名ではありませんが、冬季に室内暖房の使用によって生じるさまざまな体調不良の総称として広く知られています。
暖房病の主な症状
⚫️皮膚の乾燥・かゆみ(最も多い)
⚫️鼻・喉の乾燥
⚫️頭痛・めまい・吐き気
⚫️倦怠感・集中力の低下
皮膚症状は、呼吸器症状と並んで最も多く見られる症状です。
医学的視点
冬季には乾燥性皮膚炎(皮脂欠乏性湿疹)の患者が増加し、皮膚科外来で多く見られる疾患の一つとなります。特に高齢者では70%以上に皮膚乾燥が認められており(文献2)、加齢に伴い皮膚科を受診する患者数も増加傾向にあります。
呼吸器症状と並んで、乾燥性皮膚炎や「肌枯れ」リスクが急増する季節といえます。
なぜ暖房で肌がボロボロに?恐怖のメカニズム
オフィスの現実は砂漠以上
冬の空気はもともと含有できる水分量が少なく乾燥しがちですが、暖房によって空気を温めると相対湿度はさらに低下します。暖房使用時の室内湿度は20〜30%まで低下することも珍しくありません。これはサハラ砂漠並みの乾燥度です。
肌内部で起きていること
乾燥肌のケアは単なる美容の問題ではなく、炎症性皮膚疾患の予防という意味において重要な医学的意義を持ちます(文献2)。
適切な保湿ケアとスキンケアにより、皮膚バリア機能を維持することが、炎症の予防に直結します。
乾燥肌を放置すると、「乾燥→微小亀裂→炎症→かゆみ→掻破→さらなるバリア破綻」という「かゆみ‐掻破(そうは)サイクル」の悪循環に突入し、肌のダメージが進行してしまいます。
特にアトピー性皮膚炎や敏感肌の方、50代以降の女性(皮脂量低下)は、暖房環境下での肌ダメージを受けやすい傾向があります。
あなたは大丈夫?「暖房病」肌リスクチェック
以下の項目に当てはまるものはありませんか?
✅夕方になるとファンデーションが粉を吹く
✅室内に入ると顔がほてる(赤ら顔予備軍)
✅いつもの化粧水がしみる(敏感肌化のサイン)
✅唇が常に乾いている
✅水分をあまり摂らない(隠れ脱水のリスク)
複数当てはまる方は、暖房病による「肌枯れ」リスクが高い状態かもしれません。
【実践編】自分でできる「暖房病」の治し方・対策
環境対策
理想の湿度は40〜60%です(文献3)。この範囲は単なる快適性の問題ではなく、感染症予防や皮膚バリア機能の維持に重要な医学的意義を持ちます。
◉加湿器の活用:自動湿度制御機能付きがおすすめ。週1〜2回の清掃で雑菌繁殖を防止しましょう。
◉加湿器がない場合の裏技:濡れタオルをデスク近くに干す、デスクに水の入ったコップを置く、観葉植物を配置するなどの方法も効果的です。
◉換気も忘れずに:30分に1回程度、2方向の窓を数分全開にすることで、CO₂濃度を下げて倦怠感を軽減できます(文献4)。室内のCO₂濃度が1000ppmを超えると眠気や注意力低下が起こりやすくなります(文献5)。
スキンケア対策(保湿):医学的に正しい「守り」のケア
ただ漫然と保湿剤を塗るだけでは効果が半減してしまいます。医学的根拠に基づいた「成分・量・回数・タイミング」で、肌のバリア機能を再構築しましょう。
1. 成分選び:バリア機能を修復するものを選ぶ 暖房による過乾燥から肌を守るには、単なる水分補給ではなく「肌を育てる」成分が不可欠です。
• ワセリン:肌表面に膜を作り、水分の蒸発を強力に防ぎます(エモリエント効果)。
• セラミド:細胞間の隙間を埋める、バリア機能の主役となる成分です。
• ナイアシンアミド:セラミドの産生を促し、バリア機能を内側から強化します。
2. 適切な量:「ティッシュペーパー法」でチェック
「500円玉大」といった曖昧な目安よりも、実際の肌状態で判断しましょう。おすすめは「ティッシュペーパー法」です。 保湿剤を塗った後、ティッシュを肌に軽く当ててみてください。「ふわりと張り付き、落ちない」程度が適量です。すぐに落ちてしまうなら量が不足しており、逆にべったりと張り付く場合は塗りすぎのサインです。
3. 回数:1日2回が医学的推奨
一度に大量に塗るよりも、回数を分けて塗る方が保湿効果が高まります。朝の着替え時と、夜の入浴後の「1日2回」をルーティーンにすることで、肌のバリア機能は改善します。
4. 乾燥からかゆみが生じやすい部位をしっかり保湿
冬の乾燥肌では、乾燥からかゆみが生じやすく、掻くうちに湿疹(赤み・カサつき・ひび割れ・細かいブツブツ)になってくることがあります(皮脂欠乏性湿疹・乾燥性湿疹・乾燥性皮膚炎)。
かゆみが生じやすい
✔前腕(手首〜肘)
✔下腿(すね〜ふくらはぎ)
✔腰まわり
✔背中の肩甲骨まわり
は症状が出ないようにしっかり保湿しましょう。
5. タイミング:焦らず「湿り気があるうち」に
「入浴後◯分以内に塗らなければならない」という説に、厳密な医学的根拠はありません。秒単位で焦る必要はありませんが、ベストなのは「肌がつっぱる前」かつ「肌に湿り気が残っている状態」で塗ること。水分を逃さず、効率よく閉じ込めることができます。
※ただし、アトピー性皮膚炎などバリア機能が著しく低下している方は水分が逃げやすいため、入浴直後の早めのケアが有効です。
6. 日中のケア
オフィスで乾燥を感じたら、目元や口元などにこまめに「追い保湿」を追加しましょう。
▶ホームケアで改善しないお顔の重症乾燥への「医療的解決策」
肌の「貯水タンク」を作る ボライトXC
乾燥肌の定番 フィロルガ水光注射
肌を育てる スネコス
インナーケア
冬は「喉が渇きにくい」のに「水分は失われやすい」ため、医学的にも隠れ脱水が増える季節です。特に暖房の効いた室内は湿度が20〜30%まで下がることもあり、皮膚や呼吸からの水分蒸散が進みます。
喉の渇きは脱水が始まった後に現れるため、"口渇前のこまめな飲水"は医学的にも推奨されます。ただし1日の必要量は個人差があり、目安は1.2〜1.5L前後が一般的です。
【まとめ】「暖房病」から肌を守るために
暖房病はただの乾燥ではありません。肌のバリア破壊です。
「たかが乾燥」と放置せず、以下のポイントを意識しましょう。
⭐️室内湿度40〜60%を維持する
⭐️バリア修復成分(ワセリン、セラミド、ナイアシンアミドなど)を含む保湿剤を使う
⭐️こまめな水分補給で「隠れ脱水」を防ぐ
⭐️肌とは直接関係ありませんが、換気してCO₂濃度を下げ、倦怠感を予防することも忘れずに
どうしても辛い症状が続く場合は、早めに医療機関でご相談ください。適切なケアで、冬の肌を守り抜きましょう。
▶おすすめする保湿剤
医療機関専売の進化系ワセリン保湿剤です。高い保湿力がありながらベタつかず、乾燥で敏感になった肌のバリア機能をサポートします。
リッチなテクスチャーで肌の水分蒸発を防ぎ、乾燥によるダメージから肌を守ります。冬の過酷なオフィス環境に最適です。
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*2025年12月31日調べ
【参考文献】
1 広報いけだ 2024年12月号
https://mykoho.jp/koho/272043/9031882/page/3
2 皮脂欠乏症診療の手引き (2021)
皮脂欠乏症診療の手引き作成委員会
日本皮膚科学会誌
2021;131(10):2255-2270
3 Indirect health effects of relative humidity in indoor environments
A V Arundel, et al.
Environ Health Perspect
1986 Mar:65:351-61
4 換気の悪い密閉空間を改善するための換気の方法
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf
5 建築物環境衛生管理基準の検討について
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000771215.pdf

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月12日)







