2025.11.29更新

【はじめに】冬の不調、実は「暖房病」かも?

暖房の効いたオフィスにいると、頭がぼーっとしたり、肌が粉を吹いたりしていませんか?

その症状、医学的な診断名ではありませんが、通称「暖房病」と呼ばれるものかもしれません。暖房病とは、暖房による「乾燥」と「頭寒足熱の逆転(のぼせ)」によって生じる不調の総称です(文献1)。

この記事では、多くの方が悩む「暖房病」の正体と、砂漠レベル(湿度30%以下)の過酷な環境から肌を守る「医学的な解決策」を、美容皮膚科医の視点から解説します。


【基礎知識】「暖房病」とは?肌と体に起きるSOS

暖房病とは


暖房病は正式な疾患名ではありませんが、冬季に室内暖房の使用によって生じるさまざまな体調不良の総称として広く知られています。

暖房病の主な症状
⚫️皮膚の乾燥・かゆみ(最も多い)
⚫️鼻・喉の乾燥
⚫️頭痛・めまい・吐き気
⚫️倦怠感・集中力の低下

皮膚症状は、呼吸器症状と並んで最も多く見られる症状です。

医学的視点
冬季には乾燥性皮膚炎(皮脂欠乏性湿疹)の患者が増加し、皮膚科外来で多く見られる疾患の一つとなります。特に高齢者では70%以上に皮膚乾燥が認められており(文献2)、加齢に伴い皮膚科を受診する患者数も増加傾向にあります。

呼吸器症状と並んで、乾燥性皮膚炎や「肌枯れ」リスクが急増する季節といえます。


なぜ暖房で肌がボロボロに?恐怖のメカニズム

オフィスの現実は砂漠以上
冬の空気はもともと含有できる水分量が少なく乾燥しがちですが、暖房によって空気を温めると相対湿度はさらに低下します。暖房使用時の室内湿度は20〜30%まで低下することも珍しくありません。これはサハラ砂漠並みの乾燥度です。

肌内部で起きていること
乾燥肌のケアは単なる美容の問題ではなく、炎症性皮膚疾患の予防という意味において重要な医学的意義を持ちます(文献2)。

適切な保湿ケアとスキンケアにより、皮膚バリア機能を維持することが、炎症の予防に直結します。

乾燥肌を放置すると、「乾燥→微小亀裂→炎症→かゆみ→掻破→さらなるバリア破綻」という「かゆみ‐掻破(そうは)サイクル」の悪循環に突入し、肌のダメージが進行してしまいます。

特にアトピー性皮膚炎や敏感肌の方、50代以降の女性(皮脂量低下)は、暖房環境下での肌ダメージを受けやすい傾向があります。


あなたは大丈夫?「暖房病」肌リスクチェック

暖房病チェック

以下の項目に当てはまるものはありませんか?

✅夕方になるとファンデーションが粉を吹く
✅室内に入ると顔がほてる(赤ら顔予備軍)
✅いつもの化粧水がしみる(敏感肌化のサイン)
✅唇が常に乾いている
✅水分をあまり摂らない(隠れ脱水のリスク)

複数当てはまる方は、暖房病による「肌枯れ」リスクが高い状態かもしれません。


【実践編】自分でできる「暖房病」の治し方・対策

環境対策

理想の湿度は40〜60%です(文献3)。この範囲は単なる快適性の問題ではなく、感染症予防や皮膚バリア機能の維持に重要な医学的意義を持ちます。

◉加湿器の活用:自動湿度制御機能付きがおすすめ。週1〜2回の清掃で雑菌繁殖を防止しましょう。
◉加湿器がない場合の裏技:濡れタオルをデスク近くに干す、デスクに水の入ったコップを置く、観葉植物を配置するなどの方法も効果的です。
◉換気も忘れずに:30分に1回程度、2方向の窓を数分全開にすることで、CO₂濃度を下げて倦怠感を軽減できます(文献4)。室内のCO₂濃度が1000ppmを超えると眠気や注意力低下が起こりやすくなります(文献5)。

スキンケア対策(保湿):医学的に正しい「守り」のケア
ただ漫然と保湿剤を塗るだけでは効果が半減してしまいます。医学的根拠に基づいた「成分・量・回数・タイミング」で、肌のバリア機能を再構築しましょう。

1. 成分選び:バリア機能を修復するものを選ぶ 暖房による過乾燥から肌を守るには、単なる水分補給ではなく「肌を育てる」成分が不可欠です。

ワセリン:肌表面に膜を作り、水分の蒸発を強力に防ぎます(エモリエント効果)。
• セラミド:細胞間の隙間を埋める、バリア機能の主役となる成分です。
ナイアシンアミド:セラミドの産生を促し、バリア機能を内側から強化します。

2. 適切な量:「ティッシュペーパー法」でチェック 
「500円玉大」といった曖昧な目安よりも、実際の肌状態で判断しましょう。おすすめは「ティッシュペーパー法」です。 保湿剤を塗った後、ティッシュを肌に軽く当ててみてください。「ふわりと張り付き、落ちない」程度が適量です。すぐに落ちてしまうなら量が不足しており、逆にべったりと張り付く場合は塗りすぎのサインです。

3. 回数:1日2回が医学的推奨 
一度に大量に塗るよりも、回数を分けて塗る方が保湿効果が高まります。朝の着替え時と、夜の入浴後の「1日2回」をルーティーンにすることで、肌のバリア機能は改善します。

4. 乾燥からかゆみが生じやすい部位をしっかり保湿
冬の乾燥肌では、乾燥からかゆみが生じやすく、掻くうちに湿疹(赤み・カサつき・ひび割れ・細かいブツブツ)になってくることがあります(皮脂欠乏性湿疹・乾燥性湿疹・乾燥性皮膚炎)。


冬にかゆみが出やすい部位


かゆみが生じやすい
✔前腕(手首〜肘)
✔下腿(すね〜ふくらはぎ)
✔腰まわり
✔背中の肩甲骨まわり
は症状が出ないようにしっかり保湿しましょう。


5. タイミング:焦らず「湿り気があるうち」に 
「入浴後◯分以内に塗らなければならない」という説に、厳密な医学的根拠はありません。秒単位で焦る必要はありませんが、ベストなのは「肌がつっぱる前」かつ「肌に湿り気が残っている状態」で塗ること。水分を逃さず、効率よく閉じ込めることができます。
※ただし、アトピー性皮膚炎などバリア機能が著しく低下している方は水分が逃げやすいため、入浴直後の早めのケアが有効です。

6. 日中のケア 
オフィスで乾燥を感じたら、目元や口元などにこまめに「追い保湿」を追加しましょう。

▶ホームケアで改善しないお顔の重症乾燥への「医療的解決策」


肌の「貯水タンク」を作る ボライトXC

乾燥肌の定番 フィロルガ水光注射

肌を育てる スネコス



インナーケア

冬は「喉が渇きにくい」のに「水分は失われやすい」ため、医学的にも隠れ脱水が増える季節です。特に暖房の効いた室内は湿度が20〜30%まで下がることもあり、皮膚や呼吸からの水分蒸散が進みます。

喉の渇きは脱水が始まった後に現れるため、"口渇前のこまめな飲水"は医学的にも推奨されます。ただし1日の必要量は個人差があり、目安は1.2〜1.5L前後が一般的です。


暖房病インフォグラフィック


【まとめ】「暖房病」から肌を守るために

暖房病はただの乾燥ではありません。肌のバリア破壊です。
「たかが乾燥」と放置せず、以下のポイントを意識しましょう。

⭐️室内湿度40〜60%を維持する
⭐️バリア修復成分(ワセリン、セラミド、ナイアシンアミドなど)を含む保湿剤を使う
⭐️こまめな水分補給で「隠れ脱水」を防ぐ
⭐️肌とは直接関係ありませんが、換気してCO₂濃度を下げ、倦怠感を予防することも忘れずに
どうしても辛い症状が続く場合は、早めに医療機関でご相談ください。適切なケアで、冬の肌を守り抜きましょう。


▶おすすめする保湿剤


 

医療機関専売の進化系ワセリン保湿剤です。高い保湿力がありながらベタつかず、乾燥で敏感になった肌のバリア機能をサポートします。

リッチなテクスチャーで肌の水分蒸発を防ぎ、乾燥によるダメージから肌を守ります。冬の過酷なオフィス環境に最適です。

 

ブログ人気記事ランキング

 *2025年12月31日調べ

 

【参考文献】
1  広報いけだ 2024年12月号
https://mykoho.jp/koho/272043/9031882/page/3

2 皮脂欠乏症診療の手引き (2021)
皮脂欠乏症診療の手引き作成委員会
日本皮膚科学会誌
2021;131(10):2255-2270

3 Indirect health effects of relative humidity in indoor environments
A V Arundel, et al.
Environ Health Perspect
1986 Mar:65:351-61

4 換気の悪い密閉空間を改善するための換気の方法
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf

5 建築物環境衛生管理基準の検討について
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000771215.pdf

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年1月12日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.23更新

はじめに

1970年代から80年代にかけて、日本中を席巻した「小麦色の肌」ブームをご存じでしょうか。あるいは、懐かしく思い出される方もいらっしゃるかもしれません。こんがりと焼けた肌は、健康的でアクティブなライフスタイルの象徴として、多くの若者の憧れでした。

しかし、このブームの終焉は、単なる流行の移り変わりではありませんでした。それは、私たち日本人が科学的な知見に基づき、「太陽(紫外線)との付き合い方」を変化させてきた歴史の表れでもあったのです。


欧米文化への憧れと「小麦色の肌」の時代

そもそも、なぜあの時代にこれほどまで日焼けが礼賛されたのでしょうか。

1970年代から80年代にかけて、日本で「小麦色の肌」が流行した理由の一つは、欧米の文化の影響でした。海外旅行が一般的になり、アメリカやヨーロッパの健康的でアクティブなライフスタイルが注目され、日焼けした肌がその象徴として受け止められました。

特にファッション誌や広告では、日焼けしたモデルが登場し、サーフィンやテニスといったアウトドアスポーツも人気を博しました。これにより、日焼けは「健康的」「活発的」といったポジティブなイメージを持たれるようになったのです。

かつての「小麦色の肌」ブーム 


「日光浴」から「外気浴」へ:母子手帳が語る変遷

その後、私たちの日光に対する認識がどのように変化したのか、その歴史を端的に物語っているのが「母子手帳(母子健康手帳)」の記述です。

かつて、母子手帳には「日光浴」を推奨する項目がありました。「赤ちゃんは日光に当てて丈夫に育てよう」というのが、当時の常識だったのです。しかし、オゾン層の破壊や紫外線による皮膚がん、そして美容医療の分野でも重視される「光老化(シミ・シワ)」のリスクが科学的に明らかになるにつれ、この常識は覆されます。

そして1998年(平成10年)、母子手帳からついに「日光浴」という言葉が消え、代わりに「外気浴」という言葉が使われるようになりました(文献1)。「直射日光に当たる」ことではなく、「外の空気に触れる」ことへと推奨が変わったことは、日本人が「日焼け=健康」という認識を改め、紫外線防御へと大きく舵を切った好例と言えるでしょう。


2025年、再び見直される「適度な日光」の重要性

それから四半世紀以上が経ち、「徹底した美白・紫外線対策」が定着した現在、再びその揺り戻しとも言える動きが出てきています。過度な紫外線対策による「ビタミンD不足」が、新たな健康リスクとして懸念され始めたのです。

2025年3月、日本小児科学会誌において「乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言」が発表されました(文献2)。この提言の中では、現代の子供たちのビタミンD欠乏が深刻化している現状を踏まえ、食事やサプリメントでの補給に加え、適度な紫外線を浴びることの重要性があらためて強調されています。

かつての「無防備に焼く」時代から、「徹底的に避ける」時代を経て、現在は「害(光老化)を防ぎつつ、恩恵(ビタミンD)を得る」という、より賢くバランスの取れた付き合い方が求められる時代に入ったのです。


サプリメントだけでは代替できない「太陽の恩恵」

これまで美容医療の現場でも「紫外線は徹底的に避け、ビタミンDはサプリメントで補う」という指導が主流でした。しかし、最新の研究からは疑問が投げかけられています。

2025年の専門家のレビュー(文献3)によれば、日光を浴びることで皮膚で生成されるビタミンDやその関連物質の健康効果は、サプリメントでは完全には再現できないことが示唆されています。

さらに太陽光はビタミンD合成以外にも、以下のような複合的な恩恵をもたらすことがわかってきています。

皮膚からの一酸化窒素(NO)放出による血圧低下作用
免疫系の調整
◉メンタルヘルスへの好影響

実際、紫外線対策の先進国であるオーストラリアでは、単なる「日光回避」から方針を転換しています。UVインデックス(紫外線指数)に基づき、紫外線が強い時は防御しつつ、弱い時は適度に浴びることを推奨する、リスクとベネフィットのバランスを重視したガイドラインが定着し始めています。


まとめ:美容医療の視点から考える「攻めと守り」のバランス

⭐️かつての「小麦色ブーム」から「徹底美白」へ、そして今は「賢い共存」へと、太陽との距離感は進化しています。

⭐️美肌を守るためには紫外線からの「完全防御」という古い考え方を変えることが必要です。そもそも健康な身体こそが「美しい肌」の前提であるということは忘れてはいけません。

⭐️紫外線対策の先進国であるオーストラリアと日本とでは、紫外線の強さや環境も異なるため、日本の気候や日本人の肌質に合わせた、日本独自の「太陽との付き合い方」のガイドラインが必要です。

⭐️ただ避けるだけではなく、光老化のリスクをコントロールしながら、太陽の恵みも賢く取り入れる。それが、これからの時代の美容医療が提案すべき「最適解」なのかもしれません。


おすすめの日焼け止め

 

 

 

 

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 *2025年12月31日調べ

 

【参考文献】

1)国民のビタミンD不足を補うための日光照射の勧め(2017年4月10日)
国立環境研究所
https://www.nies.go.jp/whatsnew/20170410/20170410.html

2)日本小児医療保健協議会栄養委員会 "乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言"
日本小児科学会雑誌
2025;129(3):494-496

3)Beneficial health effects of ultraviolet radiation: expert review and conference report
Uwe Riedmann, et al.
Photochem Photobiol Sci
2025 Jun;24(6):867-893

 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月23日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.13更新

1:はじめに

日本国内での美白スキンケア市場は 2,000〜3,000億円規模と言われますが、さまざまな製品であふれかえっていて、何を選んだらいいか皆様もお悩みではないでしょうか。

そこでエビデンスという視点から見ることで、皆さんの選択をサポートできればという思いで「美白成分ランキング2025」というブログ記事を書きました。

それはかなりの時間と手間暇をかけた労作でしたが、その予備調査の中で最終的にはランキングから漏れたものの、将来有望と思われる成分もありましたので、今回はそれを紹介します。
*ただし、当院では取り扱っていません。宣伝広告の意図はありません。


2:次世代の美白成分Melasyl(メラジル)とは?

今回ご紹介するのは、ロレアル社が18年もの研究を経て開発した独自の美白成分Melasyl(メラジル)です。

これまでの美白成分と何が違う?

次世代美白成分メラジル

従来の美白成分の多くは、メラニンを作る細胞(メラノサイト)にある「チロシナーゼ」という酵素の働きを阻害するものでした。

それに対してMelasyl(メラジル)は、メラニン色素の"材料"となる「メラニン前駆体」と結合して、メラニン色素になるのを妨害するという、新しいアプローチをとっています。これにより、メラニン色素を作る細胞にダメージを与えることなく、過剰な色素沈着だけを選択的に抑えることができます。

日本では「2-メルカプトニコチノイルグリシン」という化粧品表示名称で、整肌成分に分類されます。海外では、ラ ロッシュ ポゼの「メラ B3 セラム」などに配合されています。


3:Melasyl(メラジル)の成分特徴

この成分が注目される理由は、大きく分けて「有効性」と「安全性」の両立が期待できる点にあります。

a. 高い有効性

肝斑(かんぱん)治療において、ハイドロキノン4%との直接比較試験(3ヶ月)で同等(非劣性)の改善効果が示されました。さらに、肌への刺激反応はMelasyl(メラジル)群(6.0%)の方がハイドロキノン群(21.4%)より有意に少なかったと報告されています(文献1)。

近年注目されるブルーライト(HEVライト)による色素沈着モデルでも、ビタミンCでは効果が見られなかったのに対し、Melasyl(メラジル)は有意な改善を示しました(文献2)。

b. 非常に高い安全性・忍容性

Melasyl(メラジル)は、メラニンを作る機能を完全に止めてしまうわけではないため、肌への負担が少ない設計と考えられます。

臨床試験を通じて、強い刺激や有害事象の報告が目立たないのが大きな特徴です。特に、アジア人やラテン系、アフリカ系の肌(フィッツパトリックIV〜VI)を含む多様なスキントーンに対しても、良好な安全性と有効性が示されています(文献1〜3)

これにより、従来の成分で刺激を感じやすかった方や、長期間の継続使用(*)を目指す方にとって、現実的な選択肢となる可能性があります。
注意(*) ハイドロキノンには使用期間の制限があります。


4:Melasyl(メラジル)の課題・留意点

美白成分として高いポテンシャルを感じさせるMelasyl(メラジル)ですが、現時点での課題もあります。

a. 入手しにくさと価格
ロレアル社の独自特許成分であるため、2025年現在、配合されている製品はまだ限定的です。そのため、製品はプレミアム価格になりがちです。

b. 香りの問題は「製品次第」
Melasy (メラジル)が配合されたラ・ロッシュ・ポゼのメラ B3 セラムには特徴的な香料が配合されていて、香りに敏感な使用者にとっては強く感じられる可能性があります。ただし、これはMelasy (メラジル)の問題ではなく、製品の処方設計によるものです。

c. 長期的なデータの不足
これまでの試験成績は良好ですが、登場してからまだ日が浅いため、10年、20年といった超長期的な使用データはこれから蓄積されていく段階です。


5:まとめ

✅Melasyl(メラジル)は、従来とは異なるメカニズムで美白効果を発揮する新しい成分として、大きな可能性を秘めています。特に、ハイドロキノンと同等の効果を持ちながら、刺激が少なく、多様な肌質の方にも使用できる点は大きな魅力と言えるでしょう。

✅現時点では入手可能な製品が限られているものの、今後の製品展開次第では、敏感肌の方や長期的な美白ケアを望む方にとって、有力な選択肢となることが期待されます。

✅メラジルは素晴らしい成分ですが、もし既にあるシミや肝斑を『より早く、確実に』治療したい場合は、やはりハイドロキノントレチノインを用いた治療がゴールドスタンダードです。当院では医師の管理下で副作用をコントロールしながら処方を行っています。



クリニックで取り扱う美白関連製剤

 

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【参考文献】

1) Efficacy and tolerability of a new facial 2-mercaptonicotinoyl glycine-containing depigmenting serum versus hydroquinone 4% over 3-month treatment of facial melasma
Thierry Passeron, et al.
Dermatol Ther
2025;15:2379

2) Topical prevention from high energy visible light-induced pigmentation by 2-mercaptonicotinoyl glycine, but not by ascorbic acid antioxidant: 2 randomized controlled trials
Virginie Piffaut, et al.
Front Pharmacol
202516:1651068

3) Efficacy of a 2-MNG-containing depigmenting serum in the treatment of post-Inflammatory hyperpigmentation
Ann Laure Demessant-Flavigny, et al.
J Cosmet Dermatol
2025;24(2):e16735


 

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2025.11.09更新

1 はじめに

「次世代レチノール」として注目を集めているバクチオール。今回は、バクチオールのマーケティング戦略から実際の効果まで、医学的な視点で客観的に解説します。レチノールが肌に合わなかった方、エイジングケアを始めたいけれど刺激が心配な方に、ぜひ知っていただきたい内容です。


2 「次世代レチノール」は嘘?バクチオールの仕組みとマーケティングの真実

「次世代レチノール」は嘘?バクチオールの仕組みとマーケティングの真実

「バクチオール」というコスメ成分には、「次世代レチノール」、「第二のレチノール」、「レチノールに代わる・・」などのキャッチフレーズがついています。

そのおかげで初めて「バクチオール」を目にした人にも、いかにも効果があるような期待感を与えることに成功しています。

たとえその人がレチノールを知らなくても、少なくとも「従来より進んだ新しい成分」というポジティブなイメージを植え付けることができるでしょう。

この場合、レチノイドの中でも「レチノール」を相手に選んだのがニクい。これがレチナールだと知名度が低いので、消費者の心に響かないし、トレチノインを選ぶとただではすみません。レチノイドはトレチノインを中心にエビデンスが積み重ねられてきているから、すぐに医学論争に発展します。

そこで、「レチノール」。これが感心するほどにちょうどよい。たいていの医師も、「まあ、コスメだから好きなように言わせておくか・・」とスルーしてくれます。

レチノールのイメージを消費者に刷り込ませることで、細かく説明するまでもなく、その効果を消費者に想像させることができます。

実に見事なマーケティング戦略です。

バクチオールの医学的裏付けとなる学術文献(文献1)はメーカーの研究員が書いています。

その題名は
Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects
で、タイトルでもレチノールに似た機能(retinol-like functional)を持つと強調しています。

本文に入ると冒頭からひたすらレチノイドの話が展開され、全体的にもレチノールとの類似性をこれでもかと強調しています。最初これを読み終えたとき、レチノールとの類似性を強制的に理解させられただけで、肝心のバクチオールについてはさっぱりわからないという、不思議な気分になりました。

この論文のタイトルにあるa retinol-like functional compoundから「次世代レチノール」、「第二のレチノール」、「レチノールに代わる・・」などのキャッチフレーズが生まれているのです。


3 バクチオールとレチノールの医学的な違い|構造・作用機序・エビデンス

論文では、バクチオールとレチノールは皮膚に作用した時の遺伝子応答で重なる部分があるとして、両者の類似性を主張しています。

ただし、バクチオールとレチノールは構造的に類似性がないし、レチノールを含むレチノイドの特徴であるレチノイン酸受容体との結合は示されていないことから、薬理学的にはまったくの別物です。せいぜい作用機序的に「重なる部分がある」と言えるくらい。

なのでretinol-likeと言えるかといえば、医学的には言い過ぎであり、広告的にはよくできたコピーとなります。


4 エビデンスに基づくバクチオールの効果

構造的、薬理学的にはバクチオールとレチノールは別物ですが、以下に挙げた臨床効果における、a. アンチエイジング効果、b. ニキビへの効果は共通しています。


4-1 小ジワなどのアンチエイジング効果

レチノールとの比較研究では、バクチオール0.5%クリーム(1日2回)とレチノール0.5%クリーム(1日1回)が12週間にわたって比較され、小ジワと色素沈着を同程度に減少させました(文献2)。

4-2 ニキビ・ニキビ跡への効果

軽度から中等度のニキビ患者を対象とした0.5%バクチオールクリームを12週間使用するパイロットスタディでは、炎症性病変の数が有意に減少し、炎症後色素沈着(PIH)も改善しました(文献3)。


ニキビ治療はガイドラインに基づく皮膚科での治療が基本ですが、さらに治療を強化するなら美容皮膚科でのケミカルピーリングプラズマ治療をお勧めします。


4-3 皮脂抑制と抗アンドロゲン作用

ジヒドロテストステロン(DHT)への変換に関わる酵素を阻害することで、皮脂分泌の増加と微小コメドの形成を抑制できる可能性が示唆されています(文献4)。ただし、人でのエビデンスは十分とは言えません。


5 バクチオールの副作用は?妊娠中・授乳中の使用や「皮むけ」について

バクチオールとレチノールの比較試験では、レチノール群に皮むけ・ヒリヒリ感が多く、バクチオール群では問題は少なかったと報告されています。バクチオール群で4週時に一時的に赤みが見られた人も8〜12週時には軽快していました(文献2)。

まれな有害事象として、アレルギー性接触皮膚炎が挙げられます。

なお、レチノールなどレチノイドは妊娠中には使用することができません。バクチオールはレチノールとの類似性を強調されていますが、実際には別物なので話は違いますが、妊娠・授乳中のデータは不足しています。製品の注意書きの指示に従って下さい。


6 バクチオールとレチノールどっちを使う?敏感肌や合わない人への推奨

バクチオールは、レチノールの代替品というより、レチノールがどうしても肌に合わない方の「ひとつの選択肢」と位置付けるのが現実的です。

こんな方へ

  • 1.刺激反応のためどうしてもレチノールが使えない
  • 2.敏感肌で刺激を極力避けたい
  • 3.エイジングケアを始めたいが、まずは刺激の少ない製品から始めたい
    *ただし、「刺激の少ない」レチノールを求めてバクチオールに手を出すくらいなら、あくまでレチノールで、ただその使い方を工夫すべきです。


レチノールはエイジングケアとして使うには力不足であり当院では取り扱っていません。名前は似ていますが、レチナールCDトレチノインをお勧めします。レチノイドは使い慣れるのにコツが必要ですが、当院では皆様がトラブルなく使っていけるようメールでサポートしています。


7 まとめ:バクチオールはレチノールの完全な代わりにはならない

⭐️バクチオールは「次世代レチノール」という魅力的なキャッチフレーズで注目を集めていますが、その実態はレチノールとは構造的・薬理学的に異なる別の成分です。

⭐️しかし、臨床研究ではアンチエイジング効果やニキビへの効果が確認されており、レチノールと比較して刺激が少ないという大きなメリットがあります。朝晩使用でき、他の成分との併用制限も少ないため、使い勝手の良さも魅力です。

⭐️バクチオールは「レチノールの代替品」ではなく、「レチノールがどうしても合わない方にとっての一つの選択肢」として理解するのが適切でしょう。


ご自身の肌状態に合わせて、適切な成分を選択することが、効果的なスキンケアの第一歩です。



医師が選ぶ「結果が出る」レチノイド療法

 

【参考文献】

1 Bakuchiol: a retinol-like functional compound revealed by gene expression profiling and clinically proven to have anti-aging effects
Chaudhuri RK,et al.
Int J Cosmet Sci.
2014;36(3):221-230

2 Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing
S Dhaliwal,et al.
Br J Dermatol
2019;180(2):289-296

3 Applications of bakuchiol in dermatology: Systematic review of the literature
Carolina Puyana,et al.
J Cosmet Dermatol
2022;21(12):6636-6643

4 The Use of Bakuchiol in Dermatology: A Review of InVitro and InVivo Evidence
J Greenzaid,et al.
J Drugs Dermatol
2022;21(6):624-629


 

 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月9日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥