2025.01.17更新

 はじめに

「傷んだ髪を内側から修復」というキャッチコピーをよく目にしますが、本当にダメージを受けた髪は元通りになるのでしょうか。 美容皮膚科学の観点から結論をお伝えすると、頭皮から外に出ている髪を完全に再生させることはできません。しかし、見た目や手触りを大きく改善する「修復ケア」は十分に可能です。本記事では、広告でよく聞く「内側から修復」の正体について解説します。

髪の内側からの修復

髪の基本構造と「生きている部分」

髪は3層構造になっています。外側の「キューティクル」がツヤや手触りを左右し、中間層の「コルテックス」が髪の強度や弾力、色味を決め、中心部の「メデュラ」が太さやボリューム感に関係しています。

重要なのは、頭皮内の毛根や毛母細胞は細胞分裂を繰り返す"生きた組織"ですが、頭皮から外に出た髪は角化した"死んだ細胞"の集まりという点です。そのため、一度強いダメージを受けると皮膚のように自己再生することはなく、完全に元に戻すことは構造上不可能なのです。


髪の3層構造


「内側から修復」の正体

髪の修復ケアには2つのアプローチがあります。

1つ目は「内部補修」です。ダメージでコルテックス内部のたんぱく質や水分が流出した隙間を、加水分解ケラチンやアミノ酸などで一時的に埋めることで、ハリやコシを感じやすくします。あくまで"補う"ケアで、構造を作り直すわけではありませんが、見た目や触感は大きく変わります。

2つ目は「表面コーティング」です。シリコンやオイル成分で乱れたキューティクル表面をなめらかにコートし、ツヤと指通りを良くします。 つまり、「髪の修復」とは、内部を補強し表面をコーティングすることで見た目と感触を改善しているのが実際のところです。


現実的な髪の修復ケアのポイント

「頭皮から出た髪を完全再生させることはできない」という前提を理解することが大切です。そのうえで、内部補修と表面コーティングにより、ツヤや手触りなど見た目の印象は大幅に改善できます。

ただし、効果は一時的なため、シャンプーや摩擦で徐々に落ちていきます。良い状態をキープするには継続的なケアが欠かせません。

何より重要なのが「これ以上傷めない工夫」です。高温のヘアアイロンやブリーチを繰り返すと、修復ケアが追いつきません。熱の温度設定見直しや施術回数のコントロールなど、「ダメージを減らす工夫」と「修復ケア」を両輪で考えることが重要です。


まとめ:広告と現実のギャップを知ることが第一歩

「髪の修復」の現実的なゴールは、「ダメージを目立たなく整え、悪化を防ぎながら、見た目と触感をできる限り良い状態に保つこと」です。この前提を知っておくと、広告表現に振り回されず、自分に合ったケア製品を冷静に選べます。

一方で、抜け毛の増加、髪の細さ、地肌の目立ち、頭皮のかゆみや赤みなどは、頭皮や毛根のトラブルの可能性があります。市販品だけでの対処には限界があり、専門的な診察、診断が必要なケースでは皮膚科でご相談下さい。


 

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 *2025年10月1日調べ


 

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制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年11月24日)

投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥