肝斑

肝斑とは

どんなシミ?

 

肝斑は典型的には、顔の頬骨のあたりを中心に地図状に広がる褐色調のシミです。左右対称性に現れるとされますが、片側性のこともあります。

頬だけではなく、額や口周囲にもよく見られます。


思春期以降、30歳前後からできはじめ、高齢になると自然に消退すると言われます。

 

原因


A 紫外線
B 女性モルモン
C 遺伝的素因


A 紫外線
肝斑を光老化の一症状とする考え方もあります。

B 女性モルモン

妊娠、出産、また女性ホルモン製剤の内服を契機にできることがあります。

C 遺伝的素因
肝斑は家族内発生することが知られています。ただし、原因遺伝子は特定されていません。

どのような機序で肝斑はできるのか?

 

肝斑では、さまざまな経路からメラニン形成が刺激されます。少なくとも主要な経路が真皮由来であることは間違いありません。

真皮由来の経路として、
1)線維芽細胞
2)血管系
3)肥満細胞
4)女性ホルモン
5)酸化ストレス
を介した刺激でメラニンが形成されることが知られています。

問題は、この経路が複雑に絡み合って、一筋縄ではいかないこと。

現在の研究では、分子レベル、遺伝子レベルまでさかのぼっての反応経路の全容の解明に力が注がれている状況で、どうしたらこの刺激経路を全体的に抑え込むことができるかまでに至っていません。

 



治療戦略 〜日光からの防御〜

 

肝斑において、日光対策は治療の前提。

肝斑の発症・進展に、日光暴露が重要な役割を果たしていることは間違いありません。「肝斑は光老化のひとつの症状である」という見方すらあるほど。

現在の対策では足らないから、肝斑が発症しているという現実をまず認めたうえで、もう一段強化する必要があります。

日焼け止めを使ってない方はいないでしょうが、正しく使えている方もほとんどいません。どんなにSPFやPAの高いものを塗っても、時間がたてば効果は落ちます。2、3時間ごとに塗り直す必要があります。それが無理なら、日焼け止め以外にも日光対策が必要です。

最近の話題としては、紫外線だけでなく、可視光線、とくにブルーライトからもお肌を守る必要性が指摘されています。実際、紫外線防御だけの日焼け止め(多くの市販品がこれに該当します)と可視光線までを防御する日焼け止めの比較試験で、後者の方が治療成績が良かったことが示されています。最新のシステマティックレビューでは、可視光線からの防御成分として酸化鉄を推奨しています。



 

日光防御のポイント

 

  • 1.可視光線からの防御を明記している日焼け止めを使う(成分としては酸化鉄)
  • 2.日焼け止めの使い方を見直す(使用量が足りていない人が圧倒的!)
  • 3.日焼け止め以外の対策も(日傘、帽子、サングラスなど)
  • 4.紫外線の強い時間帯(10時~14時)には外に出ない




治療戦略 〜美白剤〜

外見の改善〜表皮の治療〜


外見的に肝斑をうすくする、もっとも有効な美白剤は、ハイドロキノンで、単独で使用するかトレチノインとコンビネーションで使用することが、世界基準に照らしてももっとも有効な治療法です。


ただハイドロキノンやトレチノインには、いずれも刺激性があります。そのため使用が続けられない場合には、第2選択としてアゼライン酸を使います。

肝斑治療において、美白剤の使用は対症療法にすぎません。病変の本質である真皮の「炎症」を改善させない限り、たとえ一時的にうすくなったとしても、すぐに再発することが避けられません。

 

美白剤



治療戦略 〜抗炎症剤〜

主病変の治療〜真皮の治療〜

 

 

最近の肝斑研究は、その発生機序の解明に力が注がれています。そして、多くの経路を介してメラニン産生が刺激されていることがわかってきています。

そうしたさまざまな刺激経路をまとめて、完全に鎮める特効薬は見つかっていません。

トラネキサム酸は、数ある刺激経路の中でも、肥満細胞、血管系を介した刺激経路を抑えることが期待されています。

トラネキサム酸の使用量は、世界で行われている臨床試験では1日500ミリグラムとするケースがもっとも多いため、当院も1回1錠(250ミリグラム)、1日2回を標準量としました。投与期間ですが、6ヶ月を一応の目安として、3~6ヶ月の休薬期間を置くこととします。

 

 価格(税込)
トラネキサム酸 28日分 1,320円
トラネキサム酸クリーム20g 2,200円

 

 

 

 価格(税込)
トランサミン 28日分 1,848円
シナール(ビタミンC)28日分 1,144円
ハイチオール(Lシステイン) 28日分 1,056円
肝斑セット(上記3剤)28日分 4,048円
トラネキサム酸クリーム20g 2,200円

 

 

 





治療戦略 〜肝斑治療の未来〜


疾患の治療において、

A 原因の治療
B 症状の治療
が必要です。

肝斑にあてはめると

A 真皮の「炎症」を抑え込む
B シミをうすくする
です。

現在、日本のクリニックで行われている肝斑治療を分類すると

A 日光からの防御、トラネキサム酸の内服
B ケミカルピーリング、レーザートーニング、ハイドロキノンなど美白剤の外用
に分けられます。

ただし、Aの日光からの防御は治療というより、これ以上悪化させないという意味合いが強いと言えます。

さらに、現行の治療の問題点として

A 「炎症」の原因が多岐に及ぶため、そのすべてを抑え込めない
B 単独では再発が避けられない、「炎症」を悪化させ、さらにシミが増悪するなどのリスクがある
が挙げられます。

現在、さまざまな試みがされていますが、現在世界的に肝斑の標準治療といえる3剤コンビネーション(ハイドロキノン・トレチノイン・ステロイド)治療に代わる新しい組み合わせ、例えばハイドロキノン・抗女性ホルモン剤・血管新生阻害剤といった新たな3剤コンビネーション治療が、もっとも現実的で有力な「肝斑治療の未来」かもしれません。

 

 


参考文献

 

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10) メラニンからみた美容皮膚科学 美白剤の展望
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