頬や鼻のまわりが一日中赤い。寒暖差や、緊張ですぐにほてる。皮膚科で「酒さ(しゅさ)」と言われたけれど、保険で出せる薬がないと言われた──。
日本では、赤ら顔のなかでも最も多い「酒さの紅斑型(持続する赤み・ほてりが主体のタイプ)」に対して、保険診療で使える薬がほとんどありません。
当院は、この"保険診療の空白"にある赤ら顔に対して、海外の臨床研究で赤み改善が報告されている外用薬・注入療法を、エビデンスの確かさと安全性の順に段階的に組み合わせる自由診療プログラムをご用意しています。
赤ら顔でお悩みの方へ ── こんな症状はありませんか?
以下のようなお悩みをお持ちの方は、当院の赤ら顔治療プログラムが適している可能性があります。
- 1.頬・鼻・額・あごなど、顔の中心部の赤みが何か月も続いている
- 2.暑さ・寒さ・暖房・飲酒・辛い食べ物・運動・緊張で顔がカッと赤くなり、なかなか引かない
- 3.赤みと一緒に、ほてり・ヒリヒリ・チクチク・乾燥を感じる
- 4.化粧品や日焼け止めがしみやすく、使える製品が限られている
- 5.ファンデーションで赤みを隠しきれず、厚塗りになる
- 6.「お酒を飲んだ?」「怒っているの?」と聞かれる
- 7.レーザーやIPL(光治療)を受けたが、赤みが戻ってきた
- 8.皮膚科で「酒さ」と言われたが、使える薬がないと説明された
赤ら顔には「一時的な赤み」と「慢性的な赤み」があり、それぞれ原因が異なります。慢性的な赤みの多くは、皮膚の内側で起きている炎症が深く関わっています。
※ 赤ら顔の原因は多岐にわたります。全身性疾患や膠原病などが原因の場合もあるため、皮膚科での診察をお勧めする場合があります。当院では診察の上、美容皮膚科での治療が適切かどうかを判断し、ご案内いたします。
赤ら顔の原因 ── 赤みが続くワケ
酒さの紅斑型でまず起こるのは、皮膚内部で慢性的に炎症がくすぶり、そのたびに血管が拡張を繰り返す「炎症性の赤み」です。頬や鼻を中心にびまん性(境界のはっきりしない面状)に広がり、温度変化・紫外線・ストレス・飲酒・辛い食べ物・花粉などで悪化します。
この段階では、赤みの主因は「炎症と神経血管の過敏」であり、血管そのものの構造はまだ大きく変わっていません。レーザーやIPLは拡張した血管を光のエネルギーで物理的に処理する治療であり、炎症が続いている限り、新たな血管拡張が起きて赤みが戻る可能性があります。
炎症が年単位で続くと、血管新生が進んで毛細血管が太く・多くなり、肉眼で見える「毛細血管拡張」へ移行します。ここまで固定した血管にはレーザー・IPLが有効な選択肢になります(日本皮膚科学会のガイドライン2023でも、紅斑毛細血管拡張型酒さに対してパルス色素レーザー・ロングパルスNd:YAGレーザー・IPLが選択肢の一つとして推奨されています。ただし酒さに対しては保険適用外です)。
当院の治療の目的は、炎症が主体の段階で赤みの"発生源"を鎮め、毛細血管拡張への進行を抑えることです。これを当院では「蛇口を壊すのではなく、蛇口を閉める」治療と説明しています。
赤ら顔の鑑別診断
「赤ら顔」は病名ではなく症状です。
酒さ以外にも顔が赤くなる病気は多く、治療法が全く異なるため、最初の診察で赤みのタイプを見きわめることが欠かせません。
酒さの紅斑型は、「顔の中心部に持続する赤み」と「刺激で周期的に悪化するほてり」が手がかりになります。
| 鑑別すべき状態 | 酒さと区別するポイント |
|---|---|
| ニキビ(尋常性ざ瘡) | 白ニキビ・黒ニキビ(面皰)がある。胸・背中にも出やすい。酒さでは通常、面皰を伴わない |
| ニキビ後の赤み(炎症後紅斑) | 赤みがニキビ跡の部位に点状・斑状に残る。酒さと合併することも多い |
| 脂漏性皮膚炎 | 眉間・眉・小鼻のわき・頭皮に脂っぽいフケ状の鱗屑。かゆみが多い |
| 接触皮膚炎(かぶれ) | 新しい化粧品・日焼け止め・外用薬との時間的関係。かゆみ、境界明瞭な湿疹 |
| ステロイド酒さ様皮膚炎 | 顔へのステロイド外用歴。中止後に急に悪化、皮膚が薄く血管が目立つ |
| アトピー性皮膚炎 | 顔以外にも湿疹、強いかゆみ、乾燥、アレルギー歴 |
| 全身性エリテマトーデス | 光で悪化する蝶形紅斑、発熱・関節痛・口内炎などの全身症状。血液検査が必要 |
| 皮膚筋炎 | 上まぶたの紫がかった発疹、手指関節の発疹、筋力低下 |
| 顔面白癬 | 輪状に広がる赤み、縁に鱗屑。顕微鏡検査で確定 |
| 更年期・薬剤・内分泌/腫瘍性の紅潮 | 持続する赤みより発作性の全身的なほてりが中心。動悸・発汗・下痢・体重減少などを伴う場合は内科的検査が必要 |
当院では、問診(経過・悪化因子・使用中の化粧品や薬)、視診、必要に応じてダーモスコピーで赤みのタイプを判断します。
強いかゆみや鱗屑、片側だけの進行、全身症状、治りにくいしこりや潰瘍など「酒さらしくない」所見がある場合は、保険診療の皮膚科での検査(真菌検査、血液検査、皮膚生検など)を優先してご案内します。
また、目の充血・乾燥・異物感・まぶたの炎症がある場合は「眼型酒さ」の可能性があり、眼科受診をおすすめします。
当院の赤ら顔治療コンセプト ── ターゲットは酒さの紅斑型
日本の保険診療には「紅斑型の酒さ」の治療がほとんどない
日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」は、酒さをタイプ別に評価し、次のように整理しています。
• 丘疹膿疱型(ブツブツが主体):0.75%メトロニダゾールゲル(ロゼックスゲル)の外用を強く推奨(推奨度A)。2022年に酒さの保険適用が追加されました。
• 紅斑毛細血管拡張型(赤み・ほてりが主体):本邦の薬剤承認状況から「一様に推奨できる外用薬はない」「一様に推奨できる内服薬はない」(推奨度C2)。選択肢として推奨されるのはパルス色素レーザー・ロングパルスNd:YAGレーザー・IPLですが、酒さに対しては保険適用外です。
つまり、最も患者数が多いとされる"赤み主体"のタイプに対して、保険診療で処方できる薬はなく、推奨されるレーザー治療も保険が使えません。海外で持続性紅斑の第一選択とされる外用血管収縮薬(ブリモニジン、オキシメタゾリン)は日本では未承認、アゼライン酸も医薬品としては未承認です。
紅斑型の赤ら顔は、日本の医療制度の"空白地帯"に置かれています。
当院のアプローチ:「炎症」と「神経血管の過敏」に働きかけ、段階的に組み立てる
当院の赤ら顔治療は、酒さの紅斑型をターゲットに、次の3つの原則で設計しています。
1. エビデンスのある治療だけを使う
無作為化比較試験やシステマティックレビューで、酒さの紅斑(赤み)に対する改善が報告されている治療に限定しています。各治療の根拠は、このページの該当箇所に出典とともに記載しています。
2. 負担の少ない治療から段階的に
まず外用薬とホームケアで8〜12週間赤みをコントロールし、効果が不十分な場合や早い改善を希望される場合に、注入療法(ボツリヌス療法など)など院内施術へ進みます。
3. "赤みの発生源"を鎮める
拡張した血管を壊す(レーザー・IPL)のではなく、血管を拡張させている炎症と神経血管の過敏を鎮めることで、赤みを出している"蛇口を閉める"ことを目指します。
*固定した毛細血管拡張が主体の方には、レーザー・IPLを使った治療が適しています。その際は率直にお伝えします。
酒さは「完治」よりも「コントロール」を目指す慢性の症状です。治療とあわせて、悪化因子(トリガー)の回避・遮光・低刺激スキンケアを一体で行うことが、長期的な安定のカギになります。
当院の赤ら顔治療メニュー
当院の赤ら顔治療はすべて自由診療(保険適用外)です。料金はすべて税込表示で、初診料3,300円が別途かかります。
外用剤
毎日のホームケアの中心となる外用薬です。
「炎症を抑える薬(アゼライン酸)」と「血管の拡張を抑える薬(チモロール / ブリモニジン)」を組み合わせ、炎症と血管の両面から赤みをコントロールします。
アゼライン酸20%クリーム(AZAクリア)
【作用】
アゼライン酸は、皮膚の内側で起きている「炎症という赤みの蛇口」を閉める薬剤です。そのため、炎症に伴う赤みやブツブツ(丘疹・膿疱)に効果が期待できます。
一方で、すでに長期間の炎症によって物理的に固定化・変形してしまった「毛細血管拡張(見えている血管)」そのものを収縮・消去する作用はありません。
血管そのものの変化にはレーザーや光治療、あるいは血管収縮薬が用いられ、アゼライン酸は根底にある炎症をコントロールする役割を担います。
【エビデンス】
7つの無作為化比較試験のメタ解析で紅斑の有意な軽減が確認されています(文献1)。
【使い方】
1日1〜2回、洗顔・保湿のあと赤みのある部位に薄く塗布。効果の実感までの目安は4〜8週間です。
【副作用】
使い始めの一時的なピリピリ感・ほてり・乾燥。多くは数週間で慣れますが、刺激が続く場合は1日1回に減らします。妊娠・授乳中も比較的使いやすい成分とされています。
【価格】
1本(15g)1,980円
アゼライン酸についての詳しい解説は、AZAクリア(アゼライン酸20%配合)をご覧下さい。
• 注記:日本では化粧品として流通しており、医薬品としては未承認です。
チモロール0.5%点眼液(顔面への外用)
【作用】
チモロールはもともと目薬(点眼液)などとして使われてきた「β(ベータ)遮断薬」という種類のお薬です。皮膚の赤みに対しては、主に「血管を直接縮める」「無駄な血管が増えるのを防ぐ」「炎症を抑える」という作用で赤みを改善します。
アゼライン酸が「皮膚内部の炎症(火元)を消す」アプローチであるのに対し、チモロールは「開いてしまった血管を直接細く閉じて、赤みを物理的に目立たなくする」という異なるアプローチをとります。
【エビデンス】
紅斑毛細血管拡張型酒さ42例の三重盲検プラセボ対照試験(1日1回・4週間)で、機器計測による紅斑指数と医師・患者評価がいずれも有意に改善し、有害事象は報告されませんでした(文献2)。
【使い方】
1日1〜2回、点眼液を赤みのある部位に薄く塗布します。効果の実感までの目安は4〜8週間です。
注1)チモロールは、長期連用により効果の減弱や中止後のリバウンドが知られており、当院ではアゼライン酸の併用のもとにチモロールとプリモニジンの交互使用をおすすめしています。
注2)報告されている多くの臨床試験でも、0.5%チモロール点眼液を使用して、効果や安全性が検証されています。
【副作用】
局所の刺激感、乾燥。顔面への外用でも微量が吸収されるため、気管支喘息・COPD、徐脈・心不全・低血圧のある方には使用できない場合があります。
【価格】
チモロール点眼液 1本(5mL)550円
• 注記:緑内障治療薬として承認された点眼液を、医師の判断で赤ら顔に適応外使用します。
ブリモニジン0.1%点眼液(アイファガン/顔面への外用)
【作用】
ブリモニジンは「α2(アルファツー)アドレナリン受容体作動薬」という種類のお薬です。赤ら顔の原因である広がりっぱなしの血管に直接はたらきかけ、速効性に血管を細く閉じることで赤みを軽減します。
最大の特徴は効き目の早さで、塗ってから30分〜1時間ほどで赤みが引き始め、その効果が約9〜12時間持続します。
ブリモニジンは血管を急激かつ強力に収縮させるため、薬の効果が切れた際に血管が反動で大きく広がり、一時的に塗る前より赤くなってしまう「リバウンド現象」が生じることがあります。
その対策として、チモロールとの交互使用、ベースにアゼライン酸使用、トリガーの回避、適切なスキンケアがすすめられています。
【エビデンス】
システマティックレビューでは一時的な紅斑軽減に対して「エビデンスの確実性が高い」と評価されています(文献1)。
【使い方】
赤みのある部位に1日1回、薄く塗布します。
注1)プリモニジンはリバウンド現象が知られており、当院ではアゼライン酸の併用のもとにチモロールとプリモニジンの交互使用をおすすめしています。
注2)当院で用いる点眼液(0.1%)は海外のゲル製剤(0.33%)より低濃度であり、点眼液の顔面外用そのものを検証した大規模試験はありません。
【副作用】
効果消失時のリバウンド紅斑・一過性のほてり、皮膚の蒼白、刺激感、かゆみ、接触皮膚炎。皮膚から微量が吸収されるため、低血圧・起立性低血圧、重い心血管疾患、脳血管障害、うつ病のある方、MAO阻害薬を服用中の方は使用できない場合があります。
【価格】
アイファガン点眼液 1本(5mL)1,100円
• 注記:緑内障治療薬として承認された点眼液を、医師の判断で赤ら顔に適応外使用します。海外で承認されているブリモニジンゲル(Mirvaso)は日本では未承認です。
注射
外用・内服(保存的治療)で効果が不十分な場合、内服薬が体質・持病により使えない場合、または早い改善を希望される場合に行う院内施術です。
当院では、作用の異なる2つの注入療法を別々にご用意しており、赤みのタイプ・体質・ご希望に応じて医師がどちらか(または順に両方)をご提案します。いずれも表面麻酔のうえ、極細の針で皮膚の浅い層(皮内)に少量ずつ注入します。
ゼオミン(ボツリヌス療法)
【作用】
ボツリヌストキシンA製剤を皮膚の浅い層にごく少量ずつ広く分散して注入することで、神経終末からのアセチルコリンの放出を抑えて血管の拡張反応を鎮めるとともに、炎症性の神経ペプチド(サブスタンスP、CGRP)の放出を抑制し、刺激で赤くなる「神経原性炎症」と紅潮(フラッシング)に働きかけます。表情筋への注入とは量も深さも異なり、表情を動かす目的ではありません。
【エビデンス】
酒さの持続性紅斑・紅潮に対する皮内微量注入を評価したメタ解析では、3件のRCT解析により、生理食塩水(プラセボ)と比較して赤み・ほてりの有意な改善(P < 0.05〜0.001)が示され、全試験で高い患者満足度とQOL向上が一貫して実証されています(文献3)。
従来治療に反応しにくい紅斑・紅潮に対する選択肢として複数の総説で位置づけられていますが、大規模試験はまだなく、各国ガイドラインの標準治療には含まれていません。
【施術方法】
当院ではゼオミンを使用した皮内微量注入法をスキンボトックスと呼んでいます。
施術内容の詳細、リスク、価格などについてはスキンボトックスをご覧下さい。
【副作用・禁忌】
注入部位の赤み・一時的な膨隆・内出血・針穴(多くは数時間から数日で、内出血は長くて2週間で軽快)。まれに一時的な表情の左右差。
【価格】
スキンボトックス(30単位) 88,000円
*麻酔料2,750円別途
トラネキサム酸注入療法
【作用】
赤ら顔に対して「炎症を抑える」「不要な血管が増えるのを防ぐ」「皮膚のバリア機能を整える」という3つのアプローチで効果を発揮します。内服と異なり全身への移行がごくわずかで、血栓リスクを伴わない点が利点です。
【エビデンス】
酒さの紅斑(赤み)の改善に対して、新しい治療選択肢として有望視されていますが、現時点では小規模な報告に限られています(文献4)。
【施術方法】
赤みの強い部位に少量ずつ5%トラネキサム酸を皮内注入します。月1回、5回程度を1クールとし、クール終了1か月後に効果を評価します。
【副作用・禁忌】
注入部位の赤み・一時的な膨隆・内出血・針穴(多くは数時間から数日で、内出血は長くて2週間で軽快)。皮内注入は内服より全身への影響が少ないものの、血栓症(脳梗塞・心筋梗塞・深部静脈血栓症など)の既往がある方、妊娠・授乳中の方は安全性が確立していないため行いません。
【価格】
トラネキサム酸 2mL(両頬相当) 33,000円
*麻酔料2,750円別途
エビデンスに基づくホームケア指導
トリガー回避
米国酒さ協会(National Rosacea Society)が酒さ患者1,066人を対象に行ったアンケートでは、症状の悪化・赤みを誘発する要因として次の項目が報告されています(文献7)。
| 順位 | トリガー | 該当した患者 |
|---|---|---|
| 1 | 日光露出(Sun exposure) | 81% |
| 2 | 精神的ストレス(Emotional stress) | 79% |
| 3 | 暑い天候(Hot weather) | 75% |
| 4 | 風(Wind) | 57% |
| 5 | 運動(Exercise) | 56% |
| 6 | アルコール(Alcohol) | 52% |
| 7 | 長風呂・温浴(Hot baths) | 51% |
| 8 | 寒い天候(Cold weather) | 46% |
| 9 | 辛い食べ物(Spicy foods) | 45% |
| 10 | 湿度(Humidity) | 44% |
| 11 | 室内の暖気・暖まりすぎた室内(Indoor heat) | 41% |
| 11 | スキンケア用品(Skin-care products) | 41% |
| 13 | 温かい飲み物(Heated beverages) | 36% |
| 14 | 化粧品(Cosmetics) | 27% |
| 15 | 医薬品(Medications) | 15% |
| 15 | 病状・体調(Medical conditions) | 15% |
| 17 | 特定の果物(Certain fruits) | 13% |
| 18 | マリネ肉・漬け込み肉(Marinated meats) | 10% |
| 19 | 特定の野菜(Certain vegetables) | 9% |
| 20 | 乳製品(Dairy products) | 8% |
*数値として提示されたもののほか、ホルモン関連の要因(閉経や月経周期)や感情の変化(怒り、興奮、羞恥心、抑うつ)なども悪化因子として報告されています。
この調査からも、酒さの赤みは単に「肌に触れる刺激」だけでなく、温度変化、紫外線、運動、飲酒、精神的ストレスなど、体温や血流に影響するさまざまな要因によって悪化することが分かります。
特に注意したい刺激〜紫外線
日光曝露は、調査で最も多く挙げられたトリガーでした。
酒さのある方では、紫外線によって赤みや炎症が悪化することがあります。日常的な紫外線対策は、酒さのスキンケアにおいて重要です。
酒さの管理における日光対策は、肝斑治療と共通です。詳しい解説は、光防御(UVケア)をご覧下さい。
*肝斑を酒さと読み替えてご覧下さい。
特に注意したい刺激〜暑さ・寒さ・温度変化
暑い気候、寒い気候、室内暖房、熱い風呂なども多く挙げられています。
酒さでは、急激な温度変化によって顔の血管が拡張し、ほてりや赤みが目立ちやすくなることがあります。
特に注意したい刺激〜精神的ストレス
精神的ストレスは79%と、日光に次いで多くの患者さんが挙げています。
緊張したときや感情が大きく動いたときに顔が赤くなる「フラッシング」は、酒さでよくみられる症状の一つです。
*更年期症状にも「ホットフラッシュ」があり、40〜50代の女性では両者が併発するケースも少なくありません。酒さの「フラッシング」は、顔面中央部のみで発汗を伴わず長引く傾向がありますが、更年期症状の「ホットフラッシュ」では上半身がカッと熱くなって汗が噴き出し、数分で冷えるのが特徴的です。
特に注意したい刺激〜運動
運動は56%の患者さんがトリガーとして回答しています。
運動そのものが悪いわけではありませんが、体温が急激に上がるような激しい運動では、赤みやほてりが一時的に強くなることがあります。
特に注意したい刺激〜飲酒・辛い食べ物・温かい飲み物
飲酒52%、辛い食べ物45%、温かい飲み物36%という結果でした。
「遺伝的な飲酒時の赤み」と、「アルコールがトリガーとなった酒さの赤み」は、赤みが出る範囲、持続時間、付随症状に注目することで明瞭に鑑別できます。
若い頃から毎回赤くなるという再現性と動悸などの全身症状は「遺伝的な飲酒時の赤み」を示唆します。また赤みが頬や鼻だけにとどまり、翌日も引かない場合はアルコールが酒さのトリガーとなった結果です。
唐辛子に含まれるカプサイシンなどの香辛料は、血管拡張や体温上昇を通じて、顔のほてりや赤みを誘発することがあります(文献8)。またトマト、柑橘類、チョコレート、シナモンなどシンナムアルデヒドを含む食品や熟成チーズ(Aged cheese)、ワイン、加工肉(ハム、サラミ、ソーセージなど)、ザワークラウト(Sauerkraut)など高ヒスタミン食品も悪化要因として報告されています(文献9)。
トリガーとの「向き合い方」
すべてのトリガーを一律に制限していては、生活が成り立ちません。一人一人トリガーは異なるので、何がトリガーになっているか見極めることが(実際には難しいのですが)重要です。
1)代表的なトリガーの把握
上記のように日常生活の中にさまざまなリスクが潜んでいるいることを知ることが第一歩です。
2)トリガーの重要性を認識
赤みの固定化を防ぐ: 反復する赤み(フラッシング、フレアアップ)を放置すると、血管拡張が持続して赤みが定着し、治療が難しくなるリスクがあります。
治療の基盤: 薬物療法(アゼライン酸や血管収縮薬など)や院内施術を行っていても、トリガーに曝露され続けると効果が相殺されてしまいます。トリガー管理は「薬物療法と並ぶ治療の不可欠な柱」として位置づけられます。
3)トリガー日記による相関確認(確定する)
日記(Symptom Diary)の活用: 少なくとも2週間〜数ヶ月間、食事内容・天候・行動・使用したスキンケアと、赤みやほてりの出方(スコア)を記録します。
客観的な分析: 「何をしたときに、どの程度赤くなったか」を可視化することで、漠然とした不安を軽減し、真の原因の特定に近づけます。
肌にやさしいスキンケア
酒さの肌は角層の水分が逃げやすく(経表皮水分蒸散量の上昇)、刺激に対して非常に敏感です。「こすらない・熱を与えない・刺激成分を入れない」が原則です。
酒さの肌の皮膚バリア破壊や発症・悪化に強く関与する「避けるべき(悪影響のある)スキンケア行為」と「推奨ケア」として、以下のポイントが明らかにされています(文献10)。
1. 避けるべきスキンケア行為
下記はいずれも、角質層のバリアを傷つけたり皮膚を過敏にしたりして、酒さの発症・悪化リスクを高める行為です。
| 行為 | リスク(目安) | 主な理由 |
|---|---|---|
| 洗顔料の使用が1日2回以上 | 約2.1倍 | 機械的・化学的ダメージで角質層のpHとバリア機能が乱れる |
| 泡立ちの強い洗顔料(フォーミングクレンザー) | 約1.5倍 | 界面活性剤が天然保湿因子(NMF)や保護脂質を奪い、つっぱりやバリア損傷を招く |
| シートマスクを週4回以上 | 約2.5〜3倍 | 角質層の過水和(ふやけ)、香料・防腐剤による刺激・感作 |
| メイクを週6回以上 | 約2.8倍 | 落とすためのクレンジング・洗顔の回数と摩擦が増える |
| エステでのフェイシャルを週1回以上 | 約4.9倍 | 刺激や摩擦の積み重ね |
| 多機能・多成分の化粧品の重ね使い | (数値の記載なし) | 美白・皮脂コントロール・エイジングケアなど複数の活性成分が皮膚を過敏にする |
2. 推奨されるスキンケア
洗顔
◉洗顔料の使用は1日1回以下にとどめ、ぬるま湯洗顔も活用する(洗顔料は週1〜3回程度でも可)。
◉泡立ちが強すぎない、低刺激でマイルドな洗顔料(エマルジョン/乳液タイプなど)を選ぶ。
◉指の腹でやさしく洗い、摩擦を避ける。
保湿
◉毎日の保湿は発症リスクを下げる保護因子(OR = 0.602)で、特に乾燥肌タイプで効果が大きい。
◉保湿により、水分量と脂質が保たれてバリア障害が軽減され、洗顔によるダメージも和らぐ。
◉無香料、アルコール(エタノール)、脱脂力の強い洗浄剤(界面活性剤)を避ける(保湿剤に必要な乳化剤まで否定するものではありません)。
UVケア
◉乾燥肌・脂性肌・混合肌を問わず、日焼け止めを毎日使う(OR = 0.303〜0.507)。
◉刺激やアレルギーを避けるため、酸化亜鉛や酸化チタンを用いたミネラル系日焼け止めで、成分数の少ないシンプルなものを選ぶ。
3. 全体の要点
酒さのケアは、洗いすぎ・こすりすぎ・成分の盛りすぎをやめて、「やさしく洗う → しっかり保湿 → 毎日UVケア」というシンプルな構成に絞ることです。
当院での治療の流れ
Step 1:カウンセリング・診察(医師が担当)
⚪️赤みの範囲・持続期間・悪化因子・使用中の化粧品や薬・既往歴をお伺いし、視診(必要に応じてダーモスコピー)で赤みのタイプを判断します。
⚪️酒さ以外の疾患が疑われる場合は、保険診療の皮膚科・内科をご案内します。
⚪️治療の対象となる方には、基準となる写真を撮影し、治療計画・費用・リスクをご説明します。
Step 2:保存的治療(外用、ホームケア)
まず負担の少ない治療から始めます。
〇 外用:アゼライン酸+チモロール / プリモニジン(医師の指示に従った用法)
〇 ホームケア:トリガー日記、遮光、低刺激スキンケア、生活指導
1〜2か月ごとに外来通院し、症状の経過、日常生活指導を行います。赤みが十分にコントロールできている場合は、外用薬とホームケアで維持します。
Step 3:積極的アプローチ(注入)
◉ガイドラインに掲載される標準的な治療ではありませんが、当院では次のような場合には、注入療法(ボツリヌス療法またはトラネキサム酸注入療法)をご提案しています。
〇 保存的治療を2〜3か月行っても赤みに変化が見られない
〇結婚式などの予定に向けて、より早い改善を希望される
◉2つの注入療法は組み合わせたセットではなく、別々の治療としてご用意しています。
トラネキサム酸の皮内注入療法はまだエビデンスが少ないので、最初はゼオミンの皮内注入療法(スキンボトックス)をおすすめします。
効果が不十分な場合に、トラネキサム酸の皮内注入療法への切り替えを提案します。
ボツリヌス療法は施術1か月後、トラネキサム酸注入療法は1クール(月1回×5回)終了1か月後に写真撮影を行って効果を評価し、その後はホームケアを続けながら6〜12か月ごとの再施術を検討します。
◉評価の結果、炎症性の赤みよりも固定した毛細血管拡張が主体と判断した場合は、パルス色素レーザーやIPLの方が適している可能性をお伝えします。
美容モニター
*効果には個人差があり、同様の効果を保証するものではありません
施術前:60代女性
1回目治療:ゼオミン+トラネキサム酸注入
2回目治療:トラネキサム酸注入
2回施術1ヶ月後
赤みが軽減していることを実感されています。
施術に関する詳細情報
◉通常必要とされる治療内容:皮内注入用の特殊な針を使用して、ゼオミンやトラネキサム酸を皮内注入します。
*画像のモニター症例においては、初回にゼオミンとトラネキサム酸、2回目はトラネキサム酸のみを皮内注入しています。
・カウンセリングから治療終了までの時間:1時間半
◉標準的な費用:168,430円
*以下の費用を含みます
初回治療:初診料+ゼオミン注入(スキンボトックス)+トラネキサム酸注射+麻酔料+薬剤費(アゼライン酸、チモロール / プリモニジン)
2回目治療:トラネキサム酸注射+麻酔料
◉標準的な治療期間及び回数:1〜2か月ごとに外来通院が必要です。
*画像の治療期間は、約1か月半です。
◉デメリット・リスク・副作用:
●ホームケアが必須: クリニックの施術だけでは十分な効果は期待できません。
●施術に関すること: 注入時にチクチクとした痛みを感じることがあります。施術後数日間は針穴が目立つことがあります。
●ダウンタイム: 注入部位に赤み、腫れ、内出血、軽い膨らみ(凹凸感)が出ることがありますが、通常は数日~1週間程度で自然に治まります。メイクは翌日から可能です。
●コスト: 美容目的の治療のため、保険適用外となり、全額自己負担となります。
●医師の技術力への依存: 皮内注入は注入する深さや間隔を見極める技術が不可欠です。経験や知識が不足していると、効果が不十分であったり、内出血などのリスクが高まる可能性があります。
よくいただくご質問
赤ら顔はレーザーでないと治らないのですか?
⚪️いいえ。
⚪️赤みの主体が炎症と神経血管の過敏にある段階では、外用・内服・注入による抗炎症アプローチが適していることがあります。
⚪️一方、固定した毛細血管拡張が主体の場合はレーザー・IPLの方が有効なことが多く、その場合は率直にお伝えします。
皮膚科で「酒さ」と診断され、保険で使える薬がないと言われました。本当ですか?
⚪️日本皮膚科学会のガイドライン2023では、赤み・ほてりが主体の紅斑毛細血管拡張型酒さに「一様に推奨できる外用薬・内服薬はない」とされています。
⚪️保険適用のある0.75%メトロニダゾールゲル(ロゼックスゲル)は丘疹膿疱型(ブツブツが主体)が対象で、血管拡張に伴う赤みへの有効性のエビデンスはありません。
⚪️当院の治療は、この保険診療の空白を補う自由診療です。
どのくらいで効果を実感できますか?
⚪️保存的治療は1〜2か月で変化が現れ始めることが多く、2〜3か月で評価します。
⚪️ボツリヌス療法は施術1か月後、トラネキサム酸注入療法は1クール(5回)終了1か月後に評価します。ただし効果には個人差があり、効果をお約束することはできません。
まず外用だけ試すことはできますか?
⚪️はい。
⚪️当院の治療は段階的に設計しており、診察のうえで外用薬とホームケア指導のみから始めることができます。
治療をやめると赤みは戻りますか?
⚪️酒さは慢性的な経過をたどるため、治療をやめると徐々に戻る可能性があります。そのため、院内施術の有無にかかわらず、外用薬によるホームケアとトリガー回避・遮光は長期間続けていただくことをおすすめしています。
⚪️最終的な目標は、ホームケアだけで赤みをコントロールできる状態です。
施術に痛みはありますか?
⚪️皮内注入は表面麻酔のうえで極細の針を使用し、チクチクとした痛みを和らげています。注入中にわずかな痛みを感じることはありますが、多くの方が我慢できる程度です。
ダウンタイムはありますか?
⚪️注入後は赤み・腫れ・内出血・針穴が数日(長くて1〜2週間)見えることがあります。
⚪️メイクは翌日から可能で、当日から入浴・洗髪・飲酒・運動も可能です。
敏感肌ですが、治療を受けられますか?
⚪️酒さの肌はもともと敏感であることが多く、治療はそれを前提に組み立てています。
⚪️アゼライン酸は比較的刺激が少なく、刺激が出る場合は回数や使い方を調整します。
妊娠中・授乳中でも受けられますか?
⚪️注入、内服、外用は妊娠・授乳中には行いません。
⚪️スキンケア・生活指導は可能ですので、ご相談ください。
ゼオミンとは何ですか?
⚪️ドイツ・メルツ社製のボツリヌストキシン製剤です。複合タンパク質を含まない純粋な製剤で、神経原性炎症を抑制する作用を利用して赤みにアプローチします。
ゼオミン(ボツリヌス療法)が赤ら顔に効果を発揮するメカニズムは、現在も研究が進められている段階ですが、主に「神経血管の調節(血管拡張シグナルの遮断)」と「抗炎症作用」の2つの側面からいくつかの機序が提唱されています。
ボツリヌス療法とトラネキサム酸注入療法は、どちらを受ければよいですか? 両方受けられますか?
⚪️最初はよりエビデンスのあるボツリヌス療法(スキンボトックス)をお受け下さい。
⚪️2つは別々の治療として行っており、一方で効果が不十分な場合に、もう一方へ切り替える、または順に行うことも可能です。
他院でレーザーやIPLを受けています。併用できますか?
⚪️治療内容やタイミングによります。他院での治療内容をお伝えいただければ、医師がアドバイスいたします。外用薬の継続はレーザー後の再発予防にもつながるとされています。
ニキビ跡の赤み(炎症後紅斑)にも使えますか?
⚪️ニキビの炎症後紅斑に対する対策は、ニキビ瘢痕、いわゆるクレーターを予防する意味でも重要です。
⚪️いまだ確立された治療法はありませんが、トラネキサム酸注入療法が候補に挙がります。診察のうえでご提案します。
治療中に他の化粧品は使えますか?
⚪️基本的に使用できますが、アルコール・香料・メントール・ピーリング成分を含む製品は控えてください。診察時にお使いの製品をご持参いただければ確認します。
参考文献
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(最終更新:2024年4月3日)
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(参照日:2026年10月14日)
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https://www.rosacea.org/rosacea-review/2002/summer/new-survey-pinpoints-leading-factors-that-trigger-symptoms (参照日:2026年10月14日)
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2020 Apr 27;15(4):e0231078
制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2026年10月22日)




