抗加齢美容医学の扉

医学的証拠はないが・・

便秘するとお肌が荒れる!?

当たり前に聞こえますが、医学的には実証されていません。しかし、学会などではしばしば「腸内環境を整えると、シミが消える!」、「お肌がキレイになる!」などと言われているのも事実です。

そこで「便秘するとお肌が荒れる」と実感されている方のために、腸内環境の整え方を紹介します。


(参考文献)
Myths and misconceptions about chronic constipation.
Müller-Lissner SA, et.al
Am J Gastroenterol
2005;100:232-242

 

 

お肌のための腸内環境整備

腸内環境を整えるには、
1)乳酸菌、ビフィズス菌など有用菌を摂取する
または
2)有用菌のエサとなる食物繊維を摂取する
が考えられますが、有用菌の発酵作用で腸内で産生される短鎖脂肪酸が注目されており、有用菌を取り込むだけでなく、発酵の元となる食物繊維の摂取は欠かせません。


減り続ける食物繊維摂取量

食物繊維の摂取量は一貫して減り続けています。1日20グラムが推奨されていますが、今では14グラムほどしか摂れていません。

1日20グラムは正常な排便に必要な量ですから、現状それにはるかに届かないということは、食物繊維の不足から便秘になっている方がたくさんいるということになります。

その原因として、特に穀物摂取量の減少が指摘されています。実は単品別では「米」が最大の食物繊維の摂取源です。お米の消費量が減り続けていることが、食物繊維の摂取量低下と合致しています。とくに炭水化物制限食では、どう食物繊維を摂取するかが課題でしょう。

なお、食物繊維には、水溶性と不溶性の区別があり、
不溶性食物繊維には

  • 1.排便・便性の改善
  • 2.大腸癌リスク低下
  • 3.ポリープ、憩室症の予防

水溶性食物繊維には

  • 1.排便・便性の改善
  • 2.腸内細菌叢の改善(短鎖脂肪酸の生成)
  • 3.糖尿病予防

の効果があります。


(参考)
日本抗加齢医学会研修会(2018年2月25日)
「食物繊維はサプリメントでもとれるのか」
青江誠一郎先生

一般的アドバイス

 

  • 1.海藻・キノコ類・イモ類・豆類を1日1回食べる
  • 2.果物を1日1個食べる
  • 3.野菜は毎食食べる
  • 3.ヨーグルトを毎日食べる
  • 4.納豆・キムチなど発酵食品を積極的に食べる



このアドバイスはもちろん「正道」ですが、これを毎日続けるのはなかなかに大変です。「正道」であればあるほど、歩きにくいものです。




(参考文献)
食事へのアプローチ〜管理栄養士の視点から〜
宮内眞弓
総合診療のGノート
2017;4(4):718-724

水溶性食物繊維サプリで環境整備


入手しやすい粉末状のサプリとして、グァー豆酵素分解物やグレープフルーツペクチンなどありますが、無味無臭でさまざまな飲み物、料理に加えやすいグァー豆酵素分解物をオススメします。


*グァー豆酵素分解物摂取例
標準量1日10〜15グラム
これをコーヒー、紅茶などに入れたり、スープ、味噌汁に加えたり、またはお料理に加えたりして摂取します。単独でも摂取できますが、無味無臭で粘り気だけあって続けにくいかもしれません。

便秘の方は、たとえば3日お通じがなければ、1日の摂取量を標準量から毎日5グラムずつ増量し(最大1日35グラムまで)、お通じがあれば標準量に戻して下さい。

(参考文献)
人生を変える賢い腸のつくり方
内藤裕二
2016年
ダイヤモンド社

 

 


歳をとっても若い頃の体型を保てている方はおよそ2割。8割の方は、体型にエイジングが表れます。

痩身治療においては、こうした「ボディエイジング」を踏まえて治療を組み立てることができれば、体型の若返りに向けた痩身になります。


 

腹部の加齢変化

腹部の形の変化は
ステップ1:へそまわりが出てくる
ステップ2:下腹全体が出てくる
ステップ3:上腹部まで出てくる
のように進行します。


ヒップの加齢変化

ヒップの形の変化は
ステップ1:ヒップ下部がたわむ
ステップ2:ヒップの頂点が下がる
ステップ3:ヒップが中央に流れる
のように進行します。


腹部にしてもヒップにしても、こうした加齢性の変化は同じように進行し、後戻りすることはありません。



(参考文献)
1 ボディエイジング〜加齢による女性の体型変化〜
岸本泰蔵
日皮協ジャーナル
2011;33(2):278-286

2 日本女性の加齢による体型変化

坂本晶子
アンチ・エイジング医学
2014;10(6):910-915

3 加齢による体型変化の実態

篠崎彰大
日本アンチエイジング歯科学会誌
2014;7:140-144

 

 

 

「表情」が「感情」を左右する!?

はじめに脳で「感情」が生じ、それが顔で表現されて「表情」となる、どなたもそう信じて疑わないでしょうが、「感情」と「表情」には双方向性があると言われたら信じられますか? それを最初に指摘したのは「種の起源」を著したダーウィンだとしたら、ちょっと耳を傾けたくなりませんか?

面白い実験結果があります。口に鉛筆を横にくわえて(つまり口角が挙がった状態で)アニメを見せると、くわえないときに比べ、より面白いと評価するようになります。「表情」が「感情」に影響を及ぼすのです。

ボトックスで「幸せ」になれる!?

人はネガティブな感情を持つと、よく眉間にシワを寄せる表情を見せます。そこであらかじめ眉間にシワを寄せられないようボトックスを注入しておくと、ネガティブな感情が生じにくくなります。

いつも眉間を寄せて難しい顔をされている中年男性に、眉間のボトックス治療をしたところ、「会社でにらみが効かなくなった!」と感想をいただいたことがありますが、表情が丸くなっただけではなく、おそらく性格も丸くなったのかもしれません。


ボトックスは表情ジワを目立たなくするための美容施術ですが、いずれは「気分がすぐれないから」、「気が重いから」という理由でも適応になるかもしれません。実際、うつ症状を緩和する目的でボトックスを使用する臨床試験が数多く報告されるようになっています。


(参考文献)
1 Botulinum toxin and the facial feedback hypothesis: can looking better make you feel happier?
Alam M, et.al
J Am Acad Dermatol
2008;58(6):1061-1072

2 Botulinum toxin type-A injections of the corrugator muscles for aesthetics and depression?
Brennan C, et.al
Plast Surg Nurs
2016;36(4):167-169

3 Depression--An emerging indication for botulinum toxin treatment.

Kruger TH, et.al
Toxicon
2015;107:154-157



 

 

シワを見れば骨密度がわかる!?

2011年にエール大学の研究者が米国内分泌学会で行った「シワで女性の骨折リスクが予想できるかもしれない」という発表は、日本でも話題になりました。

閉経後の女性では、シワの程度と骨密度が相関関係にあり、通常骨密度の測定にはコストのかかる検査が必要になりますが、シワを見るだけなら「一目」でわかります。


(参考)
YaleNews
Not Just Skin and Bones:Wrinkles Could Predict Women's Bone Fracture Risk
https://news.yale.edu/2011/06/06/not-just-skin-and-bones-wrinkles-could-predict-women-s-bone-fracture-risk


鍵は「コラーゲン」

皮膚でのコラーゲンの役割は有名でしょう。真皮層のおよそ70%はコラーゲンでできていて、お肌にハリと弾力をもたらしています。

一方、骨というとカルシウムが有名ですが、体積では骨のおよそ半分はコラーゲンからできています。コラーゲンは線維成分として骨にしなやかさを与え、ポキッと折れるのを防ぎます。

皮膚と骨、一見遠い関係のようですが、コラーゲンの新陳代謝という点でパラレルの関係にあります。一方のコラーゲンの状態を判断できれば、もう一方の状態も推測できるというわけです。

海外では皮膚の厚みなどから骨密度を推定しようとする臨床試験が行われています。



(参考文献)
Association between skin thickness and bone density in adult women.
Yoneda PP, et.al
An Bras Dermatol
2011;86(5):878-884



 

《ワンポイント・アドバイス》
顔にシワがあれば、それだけで骨粗鬆症というわけではありませんが、まだ一度も検診を受診したことがなければ、ぜひ次の機会には受けて下さい。骨粗鬆症の治療は急速に進歩していて、骨密度の改善も十分期待できます。






ボトックスは美容領域で表情ジワに対する治療薬として使われ始めましたが、今では保険適応に、多汗症、眼瞼けいれん、痙性斜頚、四肢の痙縮などが含まれるようになっています。さらにそれにとどまらず、さまざまな分野で研究が続いています。

はたしてボトックス・ワールドはどこまで広がるのでしょうか? 最新情報をお伝えします。

ボトックスと創傷治癒

外科手術の跡が目立つことがあります。皮膚を切開して手術を行い、最後に皮膚を引き寄せて縫い合わせるわけですが、手術創には周囲組織から引っ張る力が働くことが大きな原因とされています。

ボトックスを手術創の周囲に注入して筋線維を抑え、この引っ張る力を弱めれば、手術創もキレイに治るのではないかと期待されています。さらに、すでに出来上がってしまった盛り上がった手術創にも効果があるか検証が進められています。

こうした目立つ傷跡、手術創には、
・ケロイド
・肥厚性瘢痕
の2つがあり、どちらについても今後さらに臨床試験をすすめる必要があるものの、肥厚性瘢痕に対してはかなり有望視されています。ケロイドに対する効果は意見が割れています。

ボトックスと炎症性疾患

ボトックスに炎症を抑える作用があるとして、

・ニキビ

・酒皶(しゅさ)
への応用が模索されています。
とくに赤みを抑える作用が注目されています。




ボトックスと慢性疼痛

 

すでに頭痛、肩こりに対して、ボトックス治療を展開している美容クリニックがあるように、慢性疼痛に対するボトックスの有用性は以前から注目されています。

治療対象となっているのは
・偏頭痛

・慢性頭痛
・糖尿病性神経障害
・三叉神経痛
・慢性背部痛、肩痛
などです。

筋肉の過緊張が慢性疼痛のベースにあることから、ボトックスのメインの作用機序は、筋肉の過緊張を抑えることにあると考えられています。



 

《ワンポイント解説》
以前は慢性疼痛は痛む部位に問題があるとされていました。たとえば腰痛なら腰に問題があるはずだからと腰を精査し治療していたわけです。ただ、腰からの神経やさらにはそのシグナルを最終的に受け取る脳にも問題が生じている可能性が指摘されています。神経や脳の「感受性」を鎮めることができれば、慢性疼痛から解放されるかもしれないのです。たとえば瞑想が腰痛に有効とする研究結果も発表されています。

ボトックスの薬理作用は神経末端で神経伝達物質(アセチルコリン)の放出を阻害することですが、慢性疼痛に対してボトックスが効果的なのは、ボトックスが疼痛に関わる神経伝達物質も抑えているのではないかとも推定されています。


(参考文献)
1)New Uses of AbobotulinumA in Aesthetics.
Schlessinger J, et.al
Aesthet Surg J
2017;37(suppl_1):s45-s58

2)Botulinum Toxin Off-Label Use in Dermatology: A Review.
Campanati A, et.al
Skin Appendage Disord
2017;3(1):39-56



 

「午後10時から午前2時はお肌のゴールデンタイム」とよく言われます。その時間に寝ていると成長ホルモンが分泌され、新陳代謝がスムーズに行われ、お肌が美しくなるそうです。

 

この話には2つの疑問点が浮かび上がります。
1)成長ホルモンはそんなに重要か?
2)正確に午後10時から午前2時か?




成長ホルモンはそんなに重要か?

 

成長ホルモンが、成長期に欠かせないホルモンという認識からアンチエイジングに欠かせないホルモンという認識に代わったこと、それがアンチエイジングがサイエンスになったスタートでした。

お肌の味方といえるホルモンは、成長ホルモンと女性ホルモンの2つ。どちらも欠乏するとお肌の状態は確実に悪化しますから、重要であることは間違いありません。ただし、どちらの補充療法を行っても、現在までのところお肌の「若返り」までは証明されていません。

 



正確に午後10時から午前2時か?

 

人間には時計遺伝子があり、生体リズムが時を刻んでいます。しかし、成長ホルモンの分泌は時計遺伝子によって直接制御されているわけではありません。つまり午後10時から午前2時と決まってはいません。

成長ホルモンの分泌は、睡眠サイクルの影響を受けます。入眠して最初のノンレム睡眠がもっとも深い睡眠になりますが、このとき成長ホルモンが分泌されます。

したがって、成長ホルモンをしっかり分泌させるためには、最初のノンレム睡眠を深い睡眠にすること、つまり「深い入眠」こそがポイントです。

昼間や明け方に寝ても十分な深さの睡眠は得られません。時計遺伝子の働きで、昼は身体が活動モードですし、夜も深夜にはすでに昼に向けた準備が始まってしまうからです。

また、一番健康的な睡眠時間は7時間です。それらを総合すると・・やはり午後10時頃にはベッドに入り、朝は6時頃に起床するのがベストでしょう。

 



(参考文献)
1)Effects of human growth hormone in men over 60 years old.
Rudman D,et al.
N Eng J Med.1990;323(1):1-6

2)ホルモン補充療法ガイドライン2012年度版
日本産婦人科学会、日本女性医学学会編

3)スタンフォード式 最高の睡眠
西野精治(2017)
サンマーク出版

4)健康は「時間」で決まる
根来秀行(2013)
かんき出版