女性の脱毛症

頭髪の基礎知識

切らなければ伸び続ける?

髪の毛は1ヶ月におよそ1cm伸びます。1年で12cm、5年で60cm、10年で120cm・・・15年もすれば身長を越える・・・こんなことが起こるでしょうか?「5年で60cm」まではともかく、「10年で120cm・・」以降はあり得ない話です。何故か?それは毛には「寿命」があるからです。

1本の毛が伸び続けられるのは、およそ2〜6年です。2〜6年経つと、その毛は抜けて最初からやり直しとなりますから、単純計算で髪の毛はせいぜい70cmにしか伸びないことがわかります。

なお、伸びる速度は、頭頂部がもっとも速く、次が側頭部というように部位によって差があることも知られています。





毛周期


毛は一定の周期で生え替わります。これを「毛周期」といい、成長期、退行期、休止期の順で繰り返しています。

成長期は、毛の根元の毛母細胞が盛んに細胞分裂を繰り返し、毛が伸びている期間です。およそ2〜6年続き、髪の毛全体の90%が成長期の段階にあります。

退行期は、毛母細胞の分裂が急激に衰える時期で、およそ2〜3週間あり、髪の毛全体の約1%です。

休止期は、毛の成長もストップしている期間で、およそ3ヶ月くらい続き、髪の毛全体の約10%にあたります。その後、再び成長期に移行しますが、このとき古い毛が抜けます。

 

加齢性変化について

 
最初に現れる加齢性変化は、髪の密度と直径に現れます。密度は20代がピークで、その後減少に転じます。直径も女性では20代に最大径となり、その後は加齢とともに細くなっていきます。閉経期以後は、活動を休む毛根(休止期)の割合が増加するため、毛の密度はさらに低下します。

このように、休止期の割合が増え、成長期が短くなるために頭部全体に毛の数が減少します。長さも短くなり、地肌が見えやすくなります。加齢性変化は、頭部全体に及びますが、髪の分け目や側頭部の毛量の減量で気づかれるようになります。さらに加齢性変化として皮脂分泌も減少し、髪のつやも失われてしまいます。

 



女性の脱毛症

女性型脱毛症(女性の男性型脱毛症)

 

女性の脱毛症では最も多い原因です。

男性型脱毛症と同じく毛が細くなる軟毛化が見られ、成長期が短くなり、毛包のミニチュア化が生じています。異なるのは、発症年齢が男性より高く、40歳〜50歳代、閉経以後に多く認められるようになること、分布が頭頂部を中心に前頭部にかけてで、生え際は保たれることが多いことです。

最大の違いは、更年期以後の女性を対象に行われたフィナステリド(プロペシア)の内服治療で効果が認められないことです。このことから男性ホルモンの関与に疑問符が付きました。

 

FAGAからFPHLへ

かつては、男性型脱毛症(AGA)の女性版ということでFAGAと呼ばれていましたが、最近はFPHL(Female Pattern Hair Loss)という用語が使われます。これは女性では男性ホルモンの関与がハッキリせず、発症機序がいまだに不明だからです。症状として似ている点もあれば、明らかな相違点もあり、同一疾患と言いきれないことが名称変更の理由です。

 



休止期脱毛症


「休止期」とは、毛の成長が止まっている状態で、次の成長期に移行する際に、それまでの毛は抜け落ちます。通常3ヶ月程度続して、頭髪の5〜10%に相当しますが、
・休止期が延長したり
・成長期の途中で休止期に移行したり
・休止期から成長期に戻らなかったり
することで、休止期脱毛が発症します。

急性休止期脱毛症

成長期が急激に休止期に移行することで発症します。高熱、外科手術、大量出血、栄養不良などを誘因にして、2,3か月してから脱毛症が始まります。

「出産後脱毛」も急性休止期脱毛のひとつですが、たいていは半年程度で自然に回復します。また抗がん剤による脱毛症も急性休止期脱毛です。成長期にある毛母細胞は活発に細胞分裂を繰り返していているため抗がん剤で障害されやすく、急激に成長期が止められてしまいます。

慢性休止期脱毛症

6ヶ月以上かけて進行し、頭部全体に脱毛が及びます。甲状腺疾患、栄養障害、膠原病、慢性腎不全など内臓疾患が原因になります。

また、多くの薬剤が慢性休止期脱毛症の原因になります。

その他

医学的には脱毛症の分類は、まず瘢痕性と非瘢痕性に分け、非瘢痕性を成長期脱毛と休止期脱毛に分けるのが一般的です。ただし、非瘢痕性が大多数であり、ここでは非瘢痕性を中心に解説しています。

円形脱毛症

ストレスで発症するコイン状の脱毛症として知られていますが、実はさまざまなタイプがあり、頭髪がすべて抜けてしまったり、さらに重症型では、体毛まですべて抜けてしまいます。

円形脱毛症は、自己免疫疾患であり、ストレスをはじめ何らかの契機で自身の免疫システムが、毛母細胞を「異物」と認識して排除しようと攻撃することで発症します。橋本病、膠原病など他の自己免疫疾患を持つ患者さんでは、高い確率で円形脱毛症を発症します。

円形脱毛症では、軽症のものはとくに治療することもなく軽快しますし、ガイドラインが策定されていて、ステロイド療法、局所免疫療法などが行われます。円形脱毛症は皮膚科で保険診療として治療が行われます。



女性型脱毛治療の難しさ


男性のAGA(男性型脱毛症)治療に比べると、女性型脱毛症の治療に選択肢はほとんどありません。フィナステリド(プロペシア)は無効ですし、ミノキシジルの外用も男性で用いられる5%ではなく低濃度のものしか使えません。それでもミノキシジル外用が唯一の選択肢で、効果がなければ植毛術は選びにくいので、義髪(ウィッグ)でカムフラージュするしかない。

これが2010年に日本皮膚科学会が出したガイドラインです。女性の育毛治療は、こうした閉塞状況に置かれています。

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女性育毛治療

外用剤


外用剤では、ミノキシジル溶液で発毛効果が実証されています。日本では「リアップ」の商品名で販売されています。

ミノキシジルには血管拡張作用があり、高血圧の治療薬として研究されていましたが、副作用として多毛症が生じることから、発毛の外用薬として使われるようになりました。頭皮の血行を改善して、発毛を促進させると説明されることが多いですが、実際は毛乳頭細胞に働きかけ、細胞増殖因子を放出させることで発毛を促します。

女性用「リアップ」は1%溶液ですが、海外では1日2回塗布する2%溶液が一般的で、1日1回塗布の5%溶液もあります。

 

 

 

 

 

内服

 

確立した内服療法はありません。

AGA治療薬フィナステリド(プロペシア)は、更年期の薄毛の女性への効果がなかったこと、妊娠可能年齢の女性では副作用(催奇形性)が強く懸念されることから推奨されていません。

抗男性ホルモン作用を有する薬剤が使われることもありますが、客観的な検証が不十分であること、女性では男性ホルモン過剰な例は少ないこと、健康被害が生じる可能性もあることからおすすめできません。多毛、難治性ニキビ、生理不順など男性ホルモン過剰が疑われるときには、まず内科での内分泌系の検査が必要になりです。

 

義髪(ウィッグ)


女性では、薄毛の変化が多様かつ将来の毛の分布予想が難しいため、外科的療法(植毛術)が選ばれることは少なく、ウィッグなどでのカモフラージュが望ましいとされています。



生活指導

 

育毛・発毛に関しては、さまざまな情報が溢れていますが、中には医学的根拠を欠いた、いわゆる根も葉もない「ウワサ」もたくさんあります。代表的な「ウワサ」を集めました。

食事

 

かつて「ワカメやヒジキなどの海藻が毛にいい!」とまことしやかに言われていました。それが最近では、毛髪はタンパク質で作られていることから、「ワカメやヒジキなんて迷信で、良質のタンパク質こそが必要!」と言われるようになりました。

しかし、「良質なタンパク質」の摂取で毛が生えることは実証されていません。要するに「ワカメやヒジキなどの海藻が毛にいい!」も「良質のタンパク質が必要!」もどちらもエビデンスに欠けている点で同レベルです。

「良質のタンパク質が必要!」というのは、極端なダイエットをすると、栄養障害から脱毛症になることから、極端なダイエットを行っている方にのみ当てはまります。一般的な話として、育毛の目的のために食事を変える必要はありません。

サプリメント


数多くのサプリメントが育毛効果を謳って販売されています。しかし、女性の脱毛症で効果が実証された内服薬もなけれが、もちろんサプリメントもありません。サプリメントに含まれているのは、その多くが発毛に必要とされる成分ですから、効果が出ても不思議ではないかもしれませんが、それはメーカー側の希望的憶測にすぎません。

現状、おすすめできるサプリメントはありません。



皮脂

 

頭皮を拡大鏡で示し、毛穴についている皮脂を「これが脱毛の原因です!」と指摘することが育毛ビジネスの常套手段ですが、「一般論」として皮脂は脱毛症の原因ではありません。

「一般論」として、としたのは、脂漏性皮膚炎という皮脂の分泌亢進をベースに真菌の感染症が関与して発症する皮膚炎では、脱毛症が生じるからです。ただ皮脂の分泌で誰もが脂漏性皮膚炎になるわけではなく、脂漏性皮膚炎でない大多数の方にとって「皮脂」は悪者ではありません。


 

ヘアケア製品(シャンプーなど)


エステ・サロンであれクリニックであれ、育毛を目的とする施術では、たいていシャンプーなどヘアケア製品がセット販売されています。しかしヘアケア製品の目的は、本来頭髪の清潔であったり、セットしやすいように整えることのはずです。

育毛、発毛効果が証明されいてるシャンプーなどあろうはずもなく、「この施術を受けるなら、このシャンプーも・・」などという、あたかも忠誠心を計る踏み絵のような誘いには乗らないようにしましょう。ヘアケア製品はお好きなものを適切に使えば、それで十分です。

 

頭皮への刺激(マッサージなど)


頭皮をマッサージしたり、簡単な器具で頭皮をトントン叩いたりして頭皮を刺激すると、血行が良くなって発毛につながると説明されることがあります。しかし、それにはまったく医学的根拠がありません。マッサージでのリラックス効果は否定しませんが、育毛目的にはする必要はありません。

 

 

よくあるご質問(Q&A)

Q

抜け毛は何本までが正常でしょうか?

A

1日に100本以内は正常範囲と考えられます。毎日洗髪しない方では、洗髪するに日は多く抜けます。また季節性の変動もあり、秋から冬にかけて脱毛数が増加することが知られていますから、正常範囲にはかなり幅があるとお考え下さい。

Q

タバコは禁煙すべきですか?

A

喫煙すると、血管が収縮し、血流が悪化するため脱毛症の原因になると言われています。しかし、それを裏付ける証拠はありません。喫煙は発毛にマイナスの影響を与える可能性がありますが、禁煙したからといって毛が生えることもありません。

Q

なぜ白髪になるのですか?

A

白髪は、毛母メラノサイトの機能低下により、メラニン色素を含まない毛になったものです。これは毛隆起(毛包の立毛筋付着部)にあるメラノサイト幹細胞がなくなり、毛母メラノサイトの機能低下を補えなくなって顕在化する老化現象といえます。遺伝的素因、体質もありますが、誰でも年齢とともに少しずつ黒髪から白髪に移行します。

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