ヒアルロン酸

制作・執筆:坂田修治(医師:美容外科・美容皮膚科 青い鳥 院長)
(最終更新日:2025年6月8日)

徹底したリスク管理でヒアルロン酸注入の魅力を最大化


しわやたるみの改善、顔のボリュームアップをご希望なら、美容医療の中でも人気の高いヒアルロン酸注入をご検討ください。ヒアルロン酸注入は、リスクに配慮した適切な施術を行うことで、はじめてその魅力を最大限に引き出すことができます。


ヒアルロン酸注入とは?

ヒアルロン酸注入とは、もともと体内に存在する保湿成分のヒアルロン酸を皮膚に補うことで、しわやたるみの改善、ボリュームアップなどを図る施術です。加齢による変化を和らげ、お顔のバランスを整えて自然な若々しさを取り戻します。注入直後から効果を実感できることや、ダウンタイムがほとんどないことから、美容医療の中心となる施術の一つです。


ヒアルロン酸注入のメリット


◎即効性:注入直後から、しわの改善やボリュームアップの効果を実感できます。

◎ダウンタイムの短さ:腫れや内出血などの症状が出ても、数日~数週間程度で治まるため、日常生活への影響が少なく済みます。
◎効果の調整が可能:注入量を細かく調整できるため、希望の仕上がりに合わせた治療が行えます。また、溶解剤を使用すれば、ヒアルロン酸を溶かすことも可能です。
◎さまざまな部位への施術:ほうれい線、目元、小じわ、唇、顎など、さまざまな部位の治療が可能です。
◎安全性が高い:ヒアルロン酸は体内にもともと存在する成分なので、アレルギーが起こりにくいとされています。


ヒアルロン酸注入のデメリットとリスク

ヒアルロン酸注入はメリットが多い反面、いくつかのリスクやデメリットも存在します。

⚫️持続期間に限りがある:**ヒアルロン酸は体内に吸収されるため、効果は永続的ではなく、一般的に6ヶ月~2年程度です。
⚫️コスト:自由診療のため、全額自己負担となります。
⚫️副作用・リスク:注入部位の腫れ、むくみ、内出血、痛み、違和感などが起こる場合があります。まれに感染症やアレルギー反応、塞栓症が発生することもあります。
⚫️医師の技術力への依存:医師の経験と技量が不足していると、合併症や不自然な仕上がりのリスクが高まります。港区にも多くのクリニックがありますが、信頼できる医師選びが重要です。


当院のヒアルロン酸注入の特徴


自由が丘から港区エリアに移転した当院では、20年以上の経験をもつ院長が、培った技量とセンスを活かして丁寧にヒアルロン酸を注入いたします。注入後のアフターケアも徹底し、万一の内出血やむくみなどが起こった際の対処や、施術後の経過観察にも力を入れています。港区の皆様に安心して施術を受けていただけるよう、以下の点にこだわっています。

◯入念なカウンセリング:お悩みやご希望を詳しくお伺いし、最適な施術プランをご提案します。
◯適切なリスク管理:血管の走行や注入層を正確に把握し、血管塞栓などの重大なリスクを最小限に抑えるよう配慮します。
◯アフターケアの充実:術後のダウンタイムを軽減するための対策や、必要に応じた追加ケアを行います。


まとめ:安心・安全を第一に、理想の仕上がりをサポート

▶︎港区でヒアルロン酸注入をご検討なら、ぜひ当院にご相談ください。
▶︎当院では、ヒアルロン酸注入による美容効果を存分に引き出すとともに、施術に伴うあらゆるリスクを最小化するため、専門知識と長年の経験を活かして丁寧な施術を行っています。

▶︎しわやたるみのお悩み、顔の印象を若々しく保ちたいといったご希望をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
▶︎皆様に「満足の笑顔」をお届けするために、スタッフ一同、心をこめてサポートいたします。


**お知らせ**
当院は2003年に自由が丘から港区浜松町(最寄駅:JR/東京モノレール 浜松町駅、都営浅草線/大江戸線 大門駅、都営三田線 芝公園駅)に移転して診療しています。




当院の注入ポリシー


「美容外科・美容皮膚科 青い鳥」では、お客様お一人おひとりの「美しさ」を最大限に引き出すヒアルロン酸注入を追求しています。

最小の使用量で、最大の「笑顔」を
当院は、ヒアルロン酸の量を最小限に抑えつつ、最大限の「笑顔」を引き出すことを最も大切にしています。過度な注入はせず、患者様本来の魅力を活かした、自然で若々しい印象を目指します。

ナチュラルな仕上がりへのこだわり
「いかにも注入した」という不自然な仕上がりではなく、あくまでナチュラルな変化を重視しています。周囲に気づかれにくいけれど、確かな効果を実感できる。そんな繊細な技術で、あなたの理想を形にします。

経験に基づく徹底したリスク管理
長年の経験と深い知識に基づき、ヒアルロン酸注入のリスクを徹底的に管理します。カウンセリングにて丁寧に説明し、ご納得いただいた上で、安全・安心な施術を第一に心がけています。

あなたの「もっと輝きたい」という想いに、確かな技術と真心で応えます。






院長コラム 〜満足の笑顔を注入〜


ヒアルロン酸は、ボツリヌス療法とともに美容医療の“車の両輪”として、かつては日陰の存在だった美容医療を陽の当たる場所へと導く大きな原動力になりました。

当院も、自由が丘から港区浜松町・大門エリアへ移転しましたが、より多くの皆様に身近な施術としてヒアルロン酸を受けていただけるよう、引き続き努めてまいります。

いつまでも気軽に受けられる日常的な施術であって欲しいという想いと、皆様の期待に応えられるよう技術をさらに発展させたいという願いを胸に、今後も患者様に寄り添った治療を提供していきたいと考えています。



オリジナル美容モデル

1-施術前

目の下の「ハ」の字型に溝ができていることを気にされていました。

2-施術後

ヒアルロン酸の注入で「ハ」の字が解消され、目の下の「くま」も改善されました。

2-施術前

手の甲が痩せて、血管や筋が浮き彫りになっていました。

2-施術後

片側に1ccずつ注入しました。痩せ感が改善しています。

3-前

50代女性
顎の梅干しジワ、オトガイ唇溝(下唇の下方のシワ)が目立ちます。
*オトガイ唇溝に注入しました。

3-注入直後

顎が伸びた印象で、梅干しジワも改善しています。フィラーで筋肉の動きをコントロールした結果で、これを
「myomodulation」と呼びます。

医療広告ガイドライン・限定解除要件

通常必要とされる治療内容:ヒアルロン酸(ジュビダーム・プラスまたはジュビダーム・ボリフト)を先端の丸い特殊な針、カニューレを使用して、ヒアルロン酸でボリュームをつけたい皮下組織の中にゆっくりと注入します。
・カウンセリングから治療終了までの時間:30〜45分

標準的な費用: 63,800〜99,000円
(ヒアルロン酸1本の費用+注入手技料+初診料)
【手の甲】118,250円
(ヒアルロン酸2本の費用+注入手技料+麻酔料+初診料)

標準的な治療期間及び回数:通院は1回で、経過に問題が生じなければ、その後に通院治療の必要はありません。

デメリット・リスク・副作用: ヒアルロン酸注入はメリットが多い反面、いくつかのリスクやデメリットも存在します。

●持続期間に限りがある:ヒアルロン酸は体内に吸収されるため、効果は永続的ではなく、一般的に6ヶ月~2年程度です。

●コスト:自由診療のため、全額自己負担となります。

●副作用・リスク:注入部位の腫れ、むくみ、内出血、痛み、違和感などが起こる場合があります。まれに感染症やアレルギー反応、塞栓症が発生することもあります。

●医師の技術力への依存:医師の経験と技量が不足していると、合併症や不自然な仕上がりのリスクが高まります。



ヒアルロン酸リフト

院長コラム


ヒアルロン酸でほんとうにリフトアップできるのか?

たぶん多くの方が半信半疑でしょうし、私自身も最初は懐疑的に見ていました。

2015年頃アラガン社が開催したワークショップでのブラジル人医師Dr.デマイオのヒアルロン酸注入でのリフトアップ術の実演(実際の注入はDr.デマイオの指示通りに日本人医師が施行)を目の当たりにしたときは、なんだか信じられないものを見せられたような、催眠術にでもかかっているのかと思ったほどでした。

最初は、なぜリフトアップできるのか作用機序の説明がありませんでしたが、その後支持靱帯をヒアルロン酸のボリュームで支えることでリフトアップ効果が生じることが明らかにされました。



人の顔では、支持靱帯という顔面骨と皮膚表面を結びつけている組織があり、これが顔の形態を支えていますが、加齢とともに支持靱帯周囲の脂肪組織が減少する(痩せる)ことが「たるみ」の一因になっています。そこでヒアルロン酸で支持靱帯を支えることで、リフトアップ効果が生まれるというわけです(図1)。



アラガン社のライバルであるガルデルマ社も支持靱帯をメルクマールにした注入法TrueLiftメソッドを提唱しています。昨今のヒアルロン酸注入は、支持靱帯とは切っても切れない関係にあります(図2)。


 

(図1) 注入でリフトアップするワケ

(図2)頬骨周囲の支持靱帯と注入ポイント



オリジナル美容モデル

注入前

(50代女性)
目周りの痩せ、頬のたるみが目立ちます。
*目周りに両側でボリューマ1本注入

注入直後

若々しい頬の上縁を形成することで、ほうれい線も少しですが改善して見えます。
*ほうれい線には注入はしていません

医療広告ガイドライン・限定解除要件

通常必要とされる治療内容:ヒアルロン酸(ボリューマ)をヒアルロン酸メーカーの推奨するプロトコールにしたがって注入します。 カウンセリングから治療終了までの時間:30〜45分

◉標準的な費用: 99,000円
(ボリューマ1本の費用+注入手技料+初診料)

◉標準的な治療期間及び回数:通院は1回で、経過に問題が生じなければ、その後に通院治療の必要はありません。

◉デメリット・リスク・副作用: ヒアルロン酸注入はメリットが多い反面、いくつかのリスクやデメリットも存在します。

●持続期間に限りがある:ヒアルロン酸は体内に吸収されるため、効果は永続的ではなく、一般的に6ヶ月~2年程度です。

●コスト:自由診療のため、全額自己負担となります。

●副作用・リスク:注入部位の腫れ、むくみ、内出血、痛み、違和感などが起こる場合があります。まれに感染症やアレルギー反応、塞栓症が発生することもあります。

●医師の技術力への依存:医師の経験と技量が不足していると、合併症や不自然な仕上がりのリスクが高まります。




こんな方におすすめ

 

  • 1.若々しい顔立ちを取り戻したい
  • 2.輪郭の痩せを改善したい
  • 3.ほうれい線が気になる
  • 4.目の下の凹み(やせ)を改善させたい





プレミアム・ヒアルロン酸の紹介

ボルベラXC


プレミアムシリーズはいずれも、アラガン社のVYCROSS技術に基づいて作られたヒアルロン酸です。

ボルベラは、とても柔らかな材質で、滑らかに仕上がります。それでいて9ヶ月から1年という長期間効果が持続します。

*ジュビダームシリーズは厚生労働省承認製剤です。

《注入に適した部位》
  • 涙袋
  • 目まわりの小ジワ
  • 目の下
  • 口唇

ボリフトXC


ボリフトXCは、ジュビダーム・ウルトラXCよりワンランク上位に位置づけられた製剤です。

施術者からすると、ほんとうに注入しやすいヒアルロン酸。滑らかで周囲になじみやすく、それでいて効果がわかりやすい。アラガン社のVYCROSS技術を一番実感させられる製剤です

*ジュビダームシリーズは厚生労働省承認製剤です。

《注入に適した部位》
  • ほうれい線
  • マリオネットライン
  • 目の下


ボリューマは、中顔面(頬)、顎、コメカミのボリュームを増大する目的での使用で、初めて厚生労働省から承認されました。

ヒアルロン酸でありながら、2年の持続とは驚きです。未承認製剤ならハッタリで何年とでも言えますが、ボリューマはれっきとした厚生労働省承認製剤。製造元のアラガン社には素直に敬意を表したいと思います。


*ジュビダームシリーズは厚生労働省承認製剤です。

《注入に適した部位》
  • 頬(ゴルゴライン)
  • 輪郭(横顔の痩せ)
  • コメカミ

 

 

施術について

施術について


施術時間  : カウンセリングを含め約30分
麻  酔  : なし
術後診察  : 不要

注意事項


入浴・洗髪  : 当日から可能

洗顔・化粧  : 当日から可能

飲酒・運動  : 当日から可能

治療スケジュール


美容効果を持続させるために、6ヶ月〜1年毎の継続的な注入をおすすめします。


ヒアルロン酸注入を受けられない方


妊娠、授乳中の方

施術手順

1 カウンセリング


初めて施術を受ける方には、ご不明、ご不安な点を徹底的にカウンセリングで解消するよう心がけています。安心して施術を受けていただくことは、最も有効な痛み対策です。

2 注入部位を冷却


定期的に続けていただく施術だからこそ、痛みを軽くする工夫が欠かせません。注入前には冷却装置でクーリングを行っています。

3 ヒアルロン酸注入


ヒアルロン酸注入でもっとも多いトラブルは内出血で腫れや青アザの原因になります。またもっとも重症なトラブルは非常にまれですが、ヒアルロン酸が血管が詰まる塞栓症です。どちらにも血管を傷つけないよう先端が丸くなったカニューレを使うことが有効な対策です。当院では可能なかぎりカニューレを使用して注入しています。

4 施術終了後


施術後、メイクも可能です。
気になる事があれば何でもご相談下さい。



価格表

ベーシック・ヒアルロン酸
価格(税込)
ジュビダーム・ウルトラXC
ほうれい線、目の下、額
1本(1.0ml)57,200円
ジュビダーム・ウルトラプラスXC
頬、横顔の痩せ、顎
1本(1.0ml)57,200円

 

プレミアム・ヒアルロン酸
価格(税込)
ジュビダーム・ボルベラXC
口唇、涙袋、目周りの小ジワ
1本(1.0ml)92,400円
ジュビダーム・ボリフトXC
ほうれい線、目の下、額
1本(1.0ml)92,400円
ジュビダーム・ボリューマXC
頬、横顔の痩せ、顎
1本(1.0ml)92,400円

 

ヒアルロン酸その他
価格(税込)
手の甲ヒアルロン酸(2ml) 107,800円
ヒアルロニダーゼ 1部位
(ヒアルロン酸分解注射)
*注入手技料はかかりません
41,800円


■注入手技料別途  3,300円

■手の甲ヒアルロン酸注入は麻酔料 3,850円別途

*本施術は、自由診療に基づき全額自己負担になります。




若いドクター向け「塞栓症」解説

ヒアルロン酸注入における塞栓症について(文献1)

 

注入療法の歴史的経緯

注入療法の歴史は1890年代に始まります。当時、顔の変形に対してパラフィンとワセリンの混合物を注入する治療法が行われていました。注入物が移動しやすく慢性炎症を引き起こすという問題はありましたが、非手術的な治療法としての道を切り拓く画期的な手法でした。

しかし、当初賞賛されたパラフィン注入も、1903年頃から深刻な合併症が報告されるようになりました。注入後の失明、脳梗塞、肺塞栓といった重篤な症状が相次いで発生し、これらがパラフィンの血管内注入によって引き起こされることが推測されました。これこそが、現在につながるフィラー塞栓症のはじまりでした。

パラフィン注入療法は、塞栓症と肉芽腫を形成しやすいという重大な問題から、1920年代までには使用されなくなりました。


注入材料の発展と塞栓症の再燃

パラフィンに代わる注入材料として、液状シリコン(1950年代)、コラーゲン(1980年代)、そしてヒアルロン酸(2000年代)が順次登場しました。2002年にはFDAが初めてヒアルロン酸製剤「レスチレン」を承認し、美容医療における注入療法の新時代が始まりました。


ヒアルロン酸の登場により美容医療における注入療法の件数が急激に増加し、それに伴って塞栓症が再びクローズアップされるようになりました。FDA承認から20年間で施術件数は大幅に拡大し、2005年と2020年の比較では売上高が7倍に達しています。


現在の市場規模と今後の予測

美容医療におけるフィラー注入市場は今後も拡大が予想されており、2022年から2030年までにさらに65%の成長が見込まれています。


現在、米国では年間340万件のフィラー注入が実施されており、そのうち80%でヒアルロン酸が使用されています。この膨大な施術件数に比例して、合併症の報告も増加しています。


塞栓症の現状と深刻化

2015年から2018年の3年間で、フィラー注入を原因とする失明がおよそ50件発生しています。また、フィラー注入による皮膚壊死は2000年から2020年にかけて30倍に増加し、脳梗塞も3倍に増えています。

この深刻な状況を受けて、2015年には米国FDAがフィラー製品に動脈塞栓のリスクがあるとする警告を明記するよう、メーカーに命じました。


塞栓症の症状と発生部位

フィラーによる塞栓症では、以下のような症状が報告されています:


●失明
●眼筋麻痺
●脳梗塞
●皮膚壊死
●肺塞栓

2021年のFDAの発表によると、2015年から2020年の5年間に470例の塞栓症が報告されています。これらの症例の91%は顔面で発生しており、特に口周囲、鼻、ほうれい線への注入で全体の68%を占めています。

さらに深刻なことに、報告された470例のうち約20%で視力障害が生じ、85%で後遺障害が残っています。動脈塞栓の報告によれば、皮膚壊死が特に生じやすいのは眉間、鼻、上唇の部位です。


実態把握の困難性

塞栓症の発症頻度については、必ずしも全ての症例が報告されるわけではないため、実際の発生件数は過小評価されている可能性があり、真の実態を把握することは困難な状況にあります。



このような歴史的背景と現状を踏まえ、ヒアルロン酸注入において塞栓症のリスクを十分に理解し、適切な予防策と対処法を身につけることが、現代の美容医療従事者にとって不可欠な課題となっています。


【参考文献】

1) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions

Danny J Soares MD

Molecules

2022;27(17):539

 

皮膚塞栓症

皮膚塞栓症総論


ヒアルロン酸注入における皮膚塞栓症は、ヒアルロン酸によって皮膚の血流が阻害され、皮膚の虚血から組織壊死に至る可能性のある重篤な状態を指します。

皮膚塞栓症は、フィラー塞栓症の臨床症状の約80%を占める、最も一般的な合併症であり、その発生率は2000年から2020年の間に30倍に増加していると報告されています(文献2)。ヒアルロン酸フィラーは全体的に良好な安全プロファイルを持っていますが、治療の適応範囲の拡大や注入量の増加に伴い、有害反応の発生数が増加する可能性があります。


原因

皮膚塞栓症の主な原因は、以下の通りです。
• 血管内注入(vaso-inoculation): フィラー物質が誤って血管内に直接注入されることによって引き起こされます。
• 外部圧迫: フィラーが血管の近くに過剰に蓄積し、外部から血管を圧迫することによっても血流障害が引き起こされることがあります。

顔面の複雑な血管系、特に内頚動脈系と外頚動脈系との間には多数の吻合(動脈同士の連結)が存在します。そのため、一見安全に見える部位への注入であっても、フィラーがこれらの吻合を介して血流に乗り、遠隔の部位(例えば眼動脈系)まで逆行性に広がることで、皮膚塞栓症を含む重篤な合併症のリスクを伴うことが示唆されています。ヒアルロン酸の粒子サイズが網膜細動脈径と類似していることも、微小循環での詰まりを引き起こす可能性が指摘されています(文献3)。


好発部位

重篤な皮膚合併症、特に皮膚壊死は、顔の特定の解剖学的領域への注入と強く関連しています。
鼻および鼻唇溝(nasolabial fold): 合併症報告が最も多く、全合併症の53%がこの領域で発生しています(文献4)。鼻の血管系は眼動脈と吻合しているため、特にリスクが高くなります。
眉間(glabella)、額(forehead)、眉(eyebrows): これらの領域も、血管合併症、特に皮膚壊死のリスクが高いことが知られています。滑車上動脈や眼窩上動脈が眼動脈と分岐していることがリスクを高めます。
口周囲(perioral)および上唇(upper lip)
顎部(chin region): 皮膚壊死や舌の単側性錯感覚などの重篤な合併症が報告されています。
側頭部(temporal region): 皮膚虚血の症例も報告されています。


予防

塞栓症の発生は、適切な計画と手技によってほとんどが回避可能であるとされています。
推奨される予防戦略は以下の通りです。

⚪️ 注入解剖学の熟知と危険部位への注意: 注入解剖学を熟知し、特に血管合併症のリスクが高い「危険な」領域に細心の注意を払うことが重要です。

⚪️注入前の吸引: 注入前に針またはカニューレで吸引を行い、血管内注入を避けることが強く推奨されます(文献5)。特に高リスク領域(例:眉間)では不可欠です。ただし、陰性吸引(吸引しても血液が逆流しないこと)だけで血管内注入のリスクがないとは断定できない点に留意が必要です。針を用いた施術の場合、注入する前に少なくとも0.1~0.2 cc吸引し、少なくとも4秒間待つことが推奨されています(文献6)。

⚪️ ゆっくりと、可能な限り少ない圧力で注入する: あらゆる有害反応を特定し、それに対応するために、注入はゆっくりと慎重に行う必要があります(文献5)。

⚪️ 段階的注入: 0.1~0.2 mlの製品を段階的に注入し、過剰注入を避けるために少量を複数箇所に注入します(文献5)。

⚪️適切な器具の使用(文献5):
◦ 正確な量を送達するために小さなシリンジを使用する。
◦ 注入速度を遅くするために小さな針を使用する。
◦ 適切な場合、鈍針カニューレを使用する。血管合併症の発生しやすい領域では、鈍針カニューレの使用がより適切であると推奨されていますが、いかなる注入技術も完全な安全性を保証するものではありません。

⚪️注入中の操作:

◦ 製品の送達中に針またはカニューレの先端を動かし続けること(文献5)。
◦ 注入中に用手的圧迫(digital compression)を適用し、血管を圧迫する(文献4)。

⚪️ 患者の監視と反応への対応: 常に患者を監視し、抵抗に遭遇した場合、または患者が痛みや不快感を感じた場合は直ちに注入を中止するべきです。

⚪️患者の病歴の慎重な考慮: 正確な病歴の取得が潜在的な合併症を防ぐ上で不可欠です。

⚪️ 溶解剤のあるフィラーの使用: ヒアルロン酸に対するヒアルロニダーゼのように、溶解剤が存在するフィラーの使用が好ましいとされています。

⚪️ドップラー超音波(US)の使用: 注入前に血管構造を特定し、偶発的な血管穿刺を避けるための有効な手段として普及が進んでいます。

⚪️ 注入量の制限: 1回あたりの注入量を制限すること自体が、この合併症のリスクを減らすための簡素な予防戦略となり得ます。



【参考文献】

2) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions

Danny J Soares MD

Molecules

2022;27(17):539

3) Vision loss associated with hyaluronic acid fillers: A systematic review of literature


Kapoor KM, et al.

Aesthetic Plast Surg

2020;44(3):929-944

4) Complications of nonpermanent facial fillers: A systemic review

Carlo M Oranges, et al.

Plast Reconstr Surg Glob Open

2021;9(10):e3851

5) Global Aesthetics Consensus: Avoidance and Management of Complications from Hyaluronic Acid Fillers—Evidence- and Opinion-Based Review and Consensus Recommendations
Massimo Signorini 
Plast Reconstr Surg
2016;137(6):961e-971e

6) Preventing the complications associated with the use of dermal fillers in facial aesthetic procedures: An expert group consensus report

Fernando Urdiales-Gálvez

Aesthetic Plast Surg

2017;41(3):667-677




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どのような症状があれば皮膚塞栓を疑うか?


皮膚塞栓症を疑う主な症状は、通常、注入後数時間以内に現れる皮膚の虚血症状であり、時間の経過とともに段階的に進行します。

具体的な症状は以下の通りです。


◉痛み:

◦ 注入時または数日後の痛み、特に不相応な(異常に強い)痛みが80%の症例で特徴的に見られます(文献7)。
◦ 動脈閉塞の場合、即時性で重度の不釣り合いな痛みが典型的です


◉ 皮膚の色の変化(変色): 70%の症例で見られます(文献7)。

⚫️初期症状(注入後数時間以内):
▪ 蒼白(skin blanching)または脱色。注入部位が白くなることがあります(文献7)。
▪ 毛細血管再充満の遅延が顕著になります(文献7)。これは、圧迫した皮膚が元の色に戻るのに時間がかかることで確認されます。

⚫️進行期(最初の72時間以内):
▪ 網状赤斑(livedo reticularis)様の発疹または網状皮斑のような暗色、紫がかった斑点状の変色が現れます(文献7)。これは、動脈閉塞によって脱酸素化された血液が毛細血管後細静脈に蓄積することで生じます(文献7)。
▪ 境界が明確な紅斑(文献8): 顔面腫脹と紅斑を呈することもあります。

⚫️ 末期(注入後数日〜数週間):

▪ 小水疱や膿疱の形成(文献8)
▪ 潰瘍形成(文献8)
▪ 最終的に凝固壊死が起こり、痂皮形成(escharification)へと至ります(文献7)。
▪ 皮膚壊死は最も重篤な合併症の一つです。


◉ 浮腫(腫脹): 注入部位の浮腫が見られることがあります(文献8)。

これらの症状は、組織への血流が途絶え、虚血が生じていることを示しています。網膜や脳組織と比較して、皮膚組織の虚血耐性時間は12〜24時間とされています。早期発見と迅速な医療介入が非常に重要です。



【参考文献】

7) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions

Danny J Soares MD

Molecules

2022;27(17):539


8) Complications of nonpermanent facial fillers: A systemic review
Carlo M Oranges, et al.
Plast Reconstr Surg Glob Open
2021;9(10):e3851

皮膚塞栓症の治療


皮膚塞栓症が疑われる場合の治療は、注入を直ちに中止し、速やかに血流を回復させることを目的としています。早期発見と迅速な医療介入が極めて重要です。

治療プロトコル

皮膚塞栓症が疑われる場合、以下の治療法を迅速かつ総合的に実施することが、患者の皮膚予後を左右する重要な要素となります。

1 直ちに注入を中止する: 血管内注入が疑われる場合、直ちに注入を中止します。

2 ヒアルロニダーゼの注入: ヒアルロン酸フィラーが原因である場合、ヒアルロニダーゼは血管閉塞を逆転させるための第一選択薬であり、直ちに注入するべきです(文献9)。

◦ 投与部位と範囲: 注入部位だけでなく、血管が障害されている領域全体に「field flood(広範囲に注入)」するべきです(文献10)。患部への局所注入により、フィラーの過剰充填を解消し、皮膚壊死を回避できる可能性があります。

◉用量と頻度:
▪ 血管内閉塞には、**高用量(最低200~300単位)が推奨されており、必要に応じてより多くの用量(500~1500単位)が示唆されています(文献11)。
▪ 壊死の危険性がある患者には500~1,000 IUが推奨されます(文献11)。
▪ 高用量プロトコルが推奨されており、損傷後理想的には4時間以内に、複数回にわたって投与されるべきです(文献9)。
◉ 患者の再評価: 患者は24時間ごとに再評価する必要があります。
◉注意点: ヒアルロニダーゼの使用には、アレルギー反応の可能性に常に留意すべきです。


3 温湿布とマッサージ:

◉ 温かいガーゼを適用し、患部をタッピングして血管拡張を促し、マッサージを行います(文献11)。
◦血流を刺激したりフィラーの分散を助けると考えられていますが、現時点では支持する証拠が不足しています(文献9)。


4 局所ニトログリセリンペースト:

◉ 1%または2%ニトログリセリン軟膏を患部に塗布し、血管拡張を促します(文献11)。
◦ 動脈閉塞の場合に有効な場合があります。
◦ フィラー塞栓症での効果はまだ示されていません(文献9)。


5 アスピリン(アセチルサリチル酸):

◦ 血小板凝集を抑制するために投与されます。
◦ 500mgを8時間ごと、24~48時間投与することが助けになる可能性があるとされていますが、絶対的な証明はされていません(文献11)。
◦ 直接的な治療効果の証拠は不足していますが、他の動脈閉塞性疾患では有効な介入とされています(文献9)。


6 全身性または局所ステロイド(プレドニゾンなど)(文献11):

◦ 腫れや炎症を軽減するために投与されます。
◦ 20~40mgを3~5日間毎日投与が提案されています。


予防の重要性

この合併症の重篤性を考慮すると、顔の血管解剖学の十分な理解と適切な注入技術による予防が極めて重要であり、フィラー注入を行う全ての医療従事者が徹底すべき点です。




【参考文献】

9) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions

Danny J Soares MD

Molecules

2022;27(17):539

10) Global Aesthetics Consensus: Avoidance and Management of Complications from Hyaluronic Acid Fillers—Evidence- and Opinion-Based Review and Consensus Recommendations
Massimo Signorini 
Plast Reconstr Surg
2016;137(6):961e-971e

11) Treatment of soft tissue filler complications: Expert consensus recommendations

Fernando Urdiales-Gálvez

Aesthetic Plast Surg

2018;42:498-510

 

 

若きドクターへ 〜皮膚塞栓症〜

 

「皮膚塞栓症を防ぐ注入法はなくても、皮膚壊死は最小化できる」

 

#皮膚塞栓症を防ぐ注入法はない
動脈の走行を考えてとか少量ずつ注入するとか逆流のないことを確認してから注入するとか、さまざまにアドバイスされますが、解剖には個人差が大きすぎて平均的な走行を語ることはできても、目の前のお客様でもそうなっている保証はありません。

 

少量ずつといっても実は0.1ml以下の注入量でも皮膚塞栓症どころかもっと恐ろしい眼塞栓症が報告されています。

 

逆流の確認はそもそも本当にそれが有効かどうかも議論があります。また針を止めて注入するボーラス注入ならまだしも針を動かしながら(引きながら)注入することの方が多いのでその場合はまったく無力です。

 

注入法に絶対安全な方法がない以上、リスクを避けるためにできるのは「塞栓症リスクの高い部位への注入は避ける」ことです。個人的にはほうれい線基部や鼻根部への注入は取りやめています。ただしリスクの高い部位は、お客様から要望の多い部位でもあるので、勤務医の場合はドクター会議や院長など責任者との話し合いの中で相談されることをお勧めします。

 

#皮膚壊死は最小化できる
眼塞栓症と皮膚塞栓症との決定的な違いはここで、網膜は虚血に弱いですが皮膚は虚血に耐えられる時間が長く、また塞栓が溶けなくても側副血行路を開かせることで血流の復活が期待できるので皮膚壊死を防ぐことを可能にしています。

 

何よりも「すべてのヒアルロン酸注入の施術にさいして、塞栓症を疑う」ことに尽きます。皮膚壊死を防ぐためには、注入中または直後に気づくことが不可欠で、クリニックを離れてからお客様自身が異常に気づく状況では皮膚壊死は避けられません。

 

ポイントは皮膚の変色です。皮膚塞栓症では血流が途絶するため最初期の症状は皮膚の蒼白化になります。絶対をこれを見逃してはいけません。

 

「塞栓症を疑う」気持ちがないと見えていても気づかないので、つねに疑っていることが必要。それが可能なら注入前に洗顔をお願いするか、広い範囲でメイクを落としてもらうこと。お客様の便宜を図るつもりで注入ポイントだけメイクを落とすのでは蒼白化は見逃します。なぜなら蒼白化それ自体で気づくというより正常部とのコントラスト、境界ができていることで気づくからです。

 

#皮膚壊死をどう防ぐ
ヒアルロニダーゼ注入は必ず行いましょう。医師からすると血管内に詰まっているヒアアルロン酸を溶解するには動脈内注入でなければ意味がないのではと疑問に思う方もいるでしょうが、そもそもそれは技術的に不可能で(だからそうした報告もない)、また血管外組織への投与でも血管内の塞栓が溶解したとする報告があります。ヒアルロニダーゼ注入を躊躇する理由はありません。

 

一番重要なのは、「温熱療法」です。根拠は皮膚の血管は本来「終動脈ではない」から。心臓や脳と異なり皮膚は側副血行路が発達しているはず。それなのになぜ皮膚壊死が起こるかというと、皮膚は外気温にさらされているため体温を保持するために網目状にあるはずの側副血行路がほとんど閉鎖されているから。たとえ塞栓を溶かすことができなくても側副血行路を開くことができれば皮膚壊死は防ぐことができるはず。

 

どうすれば側副血行路が開けるか?たとえばお風呂上がりなど顔がほてって赤くなっているはず。体温を上げれば熱を発散させる必要が生じて側副血行路が開きます。

 

具体的にはいろいろあるでしょうが、たとえば皮膚の虚血に対する耐久時間を考慮して1日2回以上たとえば温めたタオルで患部を中心に顔を広く温めること。加えて朝晩ゆっくりと湯船につかること。ただし、やりすぎて熱傷にならないように注意させましょう。

 

いつまで温熱療法を続けるかは塞栓が溶解するまで、または側副血行路が常時開通するようになるまでですが、必ず再診して皮膚の状態を見てから解除する時期を決めることです。

 

皮膚塞栓症の発症をゼロにすることはできませんが、温熱療法を徹底することで、皮膚壊死を防ぐ、ないし壊死する面積を最小にできるはずなので、その努力を怠ってはいけません。





眼塞栓症

眼塞栓症とは(文献12)


眼塞栓症は、フィラー注入時に起こりうる重篤な合併症の一つです。この症状は、注入針が誤って血管を穿刺し、フィラーが血管内に直接注入されることで発生します。

発症のメカニズム

血管への影響
顔面の血管は非常に細いため、少量のフィラーでも血管を完全に閉塞させてしまう可能性があります。フィラーが血管内に入ると、注入部位から遠い方向だけでなく、血管の起始部に向かって逆流することがあります。

視力への深刻な影響
この逆流したフィラーが中心網膜動脈を閉塞すると、網膜への血液供給が完全に停止し、急激な視力低下や失明を引き起こします。中心網膜動脈は、高解像度の視覚を担う黄斑部を含む網膜内側の唯一の栄養血管であるため、この閉塞は極めて深刻な結果をもたらします。

緊急性の高い症状
網膜組織は代謝が非常に活発で、血流不足に対する耐性が極めて低い特徴があります。そのため、血流が途絶えてから90分以内、場合によってはそれより早い段階で不可逆的な損傷が発生する可能性があります。



【参考文献】

12) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions

Danny J Soares MD

Molecules

2022;27(17):539

眼塞栓症が生じるリスクがある注入部位は?


眼塞栓症が生じるリスクが高いとされる注入部位は、主に顔面の特定の領域であり、これは血管の走行や吻合の複雑さに起因します。

リスクの高い領域(文献13):
鼻(40.9%):眼塞栓症が報告された注入部位として最も多く報告されています。
眉間(11.4%)
額(11.4%):滑車上動脈や眼窩上動脈が眼動脈と分岐しているため、フィラーの眼動脈への逆流が視力喪失の主な原因となる可能性が示唆されています。
鼻唇溝(4.5%):鼻と同様に高リスク部位とされています。


• その他眼塞栓症が報告されている注入部位
◦ 眉・側頭部(文献14)、上眼瞼・眼窩周囲(文献13)


◉ リスク要因となる解剖学的特性:
◦ 顔面には内頸動脈系と外頸動脈系の間に多数の吻合(動脈同士の連結)が存在するため、一見安全に見える部位への注入でも、フィラーがこれらの吻合を介して血流に乗り、眼動脈系まで逆行性に広がることで、眼塞栓症を含む脳網膜損傷(CRI)のリスクを伴うことが示唆されています(文献15)。

◦ 鼻の血管系は眼動脈とつながっており、この部位への注入は眼の損傷のリスクが特に高いです(文献14)。


◦ 中心網膜動脈塞栓症(CRAO)を引き起こすのに十分なHAの最小量は、顔面枝への注入でわずか0.08 mLであると計算されています(文献16)。



◉ 視力喪失の報告がない部位:下顔面(唇、顎、顎線)からの視力喪失の報告は皆無です(文献13)。



【参考文献】

13) Vision loss associated with hyaluronic acid fillers: A systematic review of literature

Kapoor KM, et al.

Aesthetic Plast Surg

2020;44(3):929-944

14) Complications of nonpermanent facial fillers: A systemic review

Carlo M Oranges, et al.

Plast Reconstr Surg Glob Open

2021;9(10):e3851

15) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions

Danny J Soares MD

Molecules

2022;27(17):539

16) Clinical observations and the anatomical basis of blindness after facial hyaluronic acid injection

Zhang L, et al.

Aesthetic Plast Surg

2019;43(4):1054-1060


眼塞栓症を疑う症状は?


顔面へのヒアルロン酸(HA)注入後に眼塞栓症が発生した場合、視力障害は注入直後に現れるとされています(文献17)。

視力症状

完全な視野喪失(Complete visual field loss)中心網膜動脈塞栓症(CRAO)は通常、完全な視野喪失を引き起こします(文献18)。
●部分的視野喪失(Partial visual field loss)後部毛様体動脈塞栓症(PCAO)は通常、側副循環があるため部分的な視野障害を引き起こします(文献18)。
●光覚消失(No light perception)(文献18)
●複視(Diplopia)(文献19)


その他の眼の症状

●眼痛(Ophthalmodynia):注入時または数日後の痛みとして現れることがあります(文献20)。
●眼瞼下垂(Blepharoptosis/ptosis)(文献19)
●眼球運動制限(Limitation of medial motion)(文献21)
●網膜蒼白浮腫(Retinal pale edema)(文献18)
●網膜浮腫(Retinal edema)(文献18)
●視神経乳頭浮腫(Optic disk edema/hyperemia/edema)(文献18)
●黄斑チェリーレッドスポット(Macular cherry red spot)(文献18)


随伴する中枢神経系合併症(Cerebroretinal Injuries, CRI)

脳梗塞・出血(18.2%で合併)(文献17)
めまい、失神、意識障害(文献21)
片麻痺(Hemiplegia)、失語症(Aphasia)、顔面麻痺(Facial palsy)(文献21)


報告されたフィラー関連の血管有害事象のうち、約20%が視覚関連の後遺症を伴い、そのうち85%の患者が持続的な視力低下をきたしていました(文献21)。


【参考文献】

17) Vision loss associated with hyaluronic acid fillers: A systematic review of literature

Kapoor KM, et al.

Aesthetic Plast Surg

2020;44(3):929-944

18) Clinical observations and the anatomical basis of blindness after facial hyaluronic acid injection

Zhang L, et al.

Aesthetic Plast Surg

2019;43(4):1054-1060

19) Complications of nonpermanent facial fillers: A systemic review

Carlo M Oranges, et al.

Plast Reconstr Surg Glob Open

2021;9(10):e3851

20) Global Aesthetics Consensus: Avoidance and Management of Complications from Hyaluronic Acid Fillers-Evidence- and Opinion-Based Review and Consensus Recommendations
Massimo Signorini
Plast Reconstr Surg
2016;137(6):961e-971e.

21) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions

Danny J Soares MD

Molecules

2022;27(17):539

眼塞栓症を疑った場合の初期対応は?


眼塞栓症が疑われた場合、網膜の光受容細胞は虚血に対する耐容時間が非常に短いため、塞栓症の治療は緊急事態です。塞栓による閉塞が除去されない限り、90分以内に不可逆的な虚血性壊死が発生すると考えられています。

◉直ちに注入を中止する。
◉直ちに眼科医へ緊急紹介する。
◉視力検査と記録: 簡単な方法(指の数え上げ、手の動き、光覚の有無)で視力を検査し記録する。これは引き継ぎ時に眼科医に有用な情報となります。

ヒアルロニダーゼの注入

⚪️ヒアルロニダーゼは第一選択薬として推奨されますが(文献22)、視力改善に対する効果は限定的で、一貫した有効性は示されていません。

⚪️注入方法としては、影響を受けた軟部組織への局所注入、患部を供給する動脈への注入、そして眼球後腔への直接注入(retrobulbar injection)が挙げられます(文献23)

⚪️しかし、ある研究観察では、緊急のヒアルロニダーゼ注入(注入部位および球後注入を含む)にもかかわらず、患者の視力改善は観察されませんでした(文献24)。

⚪️動脈内ヒアルロニダーゼ投与についても、ある文献で分析された全6例で無効であったとの報告もあります(文献25)。


視力回復が困難な理由として、網膜の虚血耐容時間が非常に短いこと(90分以内)、および網膜の特定の解剖学的特性が挙げられています。これは皮膚壊死の場合と比べて、視力障害の改善がより困難であると考えられています(文献24)。

薬物療法
◦ 点眼薬:眼圧を下げる目的でチモロール0.5%を1滴投与します(文献26)。
アスピリン:血小板凝集を抑制するため、300mgを投与します(文献26)。
◦ 舌下錠: 医学的禁忌がなければ、血管拡張を促進するためにニトログリセリン0.6mgの舌下錠を投与します(文献26)。


◉ その他の対策

眼球マッサージ(文献26):
患者を仰向け(セミファウラー体位、頭を15〜45度挙上)にし、閉じたまぶたの上から患眼に5秒間直接圧迫を加え、10秒間解放するという操作を繰り返します。これを5分間行い、視力を確認します。必要に応じて合計15分間(3セット)実施します。眼球マッサージは、網膜動脈を拡張するとともに眼内圧を変動させることで塞栓が外れることを促します。

紙袋呼吸法(文献26): 患者に紙袋で口、鼻を覆い約10分間呼吸させるように指示し、30分ごとに繰り返します。これは二酸化炭素の増加が細動脈の拡張を促進すると考えられています。


現在、フィラーによる視力喪失に際して、国際的に合意された標準的な管理治療法はありません。


【参考文献】

22) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions

Danny J Soares MD

Molecules

2022;27(17):539

23) Complications of nonpermanent facial fillers: A systemic review

Carlo M Oranges, et al.

Plast Reconstr Surg Glob Open

2021;9(10):e3851

24) Clinical observations and the anatomical basis of blindness after facial hyaluronic acid injection

Zhang L, et al.

Aesthetic Plast Surg

2019;43(4):1054-1060

25) Vision loss associated with hyaluronic acid fillers: A systematic review of literature

Kapoor KM, et al.

Aesthetic Plast Surg

2020;44(3):929-944

26) Consensus opinion for The management of soft tissue filler induced vision loss

Lee Walker, et al.

J Clin Aesthetic Dermatol

2021;14(12):E84-E9


 

球後へのヒアルロニダーゼ注入について


1. 目的

- ヒアルロン酸フィラー注入後の視力喪失や眼動脈閉塞を治療するための緊急処置として提案されています。


2. 理論的根拠

- 球後に注入されたヒアルロニダーゼが血管壁を通過し、血管内のヒアルロン酸フィラーを分解することを期待しています。


3. 効果の不確実性

⚪️複数の研究や症例報告がありますが、一貫した有効性は示されていません(文献27)。

⚪️ 一部の症例で視力回復が報告されていますが、多くの場合で効果が限定的または無効とされています。
●視力障害を経験した3名の患者のうち、2名は病院に搬送後、罹患眼に合計1500 IUのヒアルロニダーゼからなる球後注入を受けていますが、患者の視力改善は観察されませんでした(文献28)
●完全視力喪失例では、注入後4~34時間という比較的早期に球後ヒアルロニダーゼ投与が行われたにも関わらず、改善は認められていません(文献27)。
●眼動脈閉塞や中心網膜動脈閉塞パターンでは、球後注入を含む様々な治療にも関わらず回復例は皆無でした(文献27)。



4. リスク

- 網膜出血
- 眼球穿孔
- 網膜血管閉塞
- 局所および全身的な副作用

球後へのヒアルロニダーゼ注入は重篤な有害事象のリスクが増加する可能性から、眼科医以外の臨床医にとっては問題を悪化させる可能性さえあります(文献29)。


5. 技術的課題

- 緊急時に適切に実施するには高度な専門技術が必要です。
- 美容医療を行うほとんどの医師にとって、この処置を行う十分な訓練や経験がありません。


6. タイミング

- 効果があるとすれば、発症後できるだけ早く(理想的には60-90分以内)実施する必要があります。


7. ガイドライン

- 現在、この処置に関する明確な国際的コンセンサスはありません。


結論として、球後へのヒアルロニダーゼ注入は理論的には魅力的ですが、その有効性は確立されておらず、重大なリスクを伴う可能性があります。そのため、十分な訓練を受けた専門家のみが、他の治療選択肢と併せて慎重に検討すべき処置と言えます。

日本では、ヒアルロン酸の解説書の中には、眼塞栓症の治療として、球後へのヒアルロニダーゼ注入を紹介したものがありますが、眼科の専門トレーニングを受けた医師でない限り行うべきではありません。




【参考文献】

27) Vision loss associated with hyaluronic acid fillers: A systematic review of literature

Kapoor KM, et al.

Aesthetic Plast Surg

2020;44(3):929-944

28) Clinical observations and the anatomical basis of blindness after facial hyaluronic acid injection

Zhang L, et al.

Aesthetic Plast Surg

2019;43(4):1054-1060

29) Consensus opinion for The management of soft tissue filler induced vision loss

Lee Walker, et al.

J Clin Aesthetic Dermatol

2021;14(12):E84-E9


 

ヒアルロン酸注入による「失明」


発生頻度

「失明の発症率」については、正確な全体的な発生率(例えば、施術件数あたりの割合)は情報源では示されていませんが、極めて稀であると強調されています(文献30、31)

報告されたフィラー関連の血管性有害事象のうち、約20%が視覚関連の後遺症を伴い、そのうち85%の患者が持続的な視力低下を経験しました(文献32)。

2015年から2018年の約3年間で50件近くのフィラーによる失明が報告されており、これは過去1世紀の報告件数98件と比べても著しい増加であるとされています。これは、HAフィラーの普及に伴う血管閉塞事例の急増を反映していると考えられます(文献32)。


予後

治療の有効性は重症度や閉塞パターンに強く依存し、特に完全な視力喪失を伴う重篤な血管閉塞(OAO、CRAO)においては、視力改善を達成するのは極めて困難であると認識されています(文献32)。

この合併症の重篤性を考慮すると、予防が極めて重要であるとされます(文献33)。


予防

1. 解剖学的知識の徹底的な理解とリスク部位の認識

• 顔面解剖学の徹底的な理解
• 「危険な」領域に特に注意を払うことが重要です。特に、眉間、鼻、額、こめかみ、鼻唇溝などの部位は、血管合併症のリスクが高いことを認識する(文献33)。


2. 適切な注入手技の実施

適切な計画と手技によって、塞栓症の発生はほとんどが回避可能であるとされています。

◉ 注入前に吸引する(陰圧テスト):特に高リスク領域(例:眉間)では強く推奨されます(文献33)。

針での注入の場合、少なくとも0.1~0.2ccの空気を吸引し、4秒間待つことが推奨されています。ただし、陰性吸引だけで血管内注入のリスクがないとは断定できません。


◉ ゆっくりと、可能な限り少ない圧力で注入する(文献33)。:あらゆる有害反応を特定し、それに対応するために重要です。

◉製品の送達中に針またはカニューレの先端を動かし続ける(文献33)。。

◉ 少量(0.1~0.2 ml)を段階的に注入する(文献33)。:過剰注入を避け、正確な量を送達するために、小さなシリンジを使用することが推奨されます。

わずか0.08 mLのヒアルロン酸注入でも中心網膜動脈塞栓症を引き起こす可能性があると計算されており、1回あたりの注入量を制限することは簡素な予防戦略となります。


◉ 適切な場合、鈍針カニューレを使用する(文献33)。:血管合併症の発生しやすい領域ではより適切とされています。ただし、いかなる注入技術も完全な安全性を保証するものではありません。

◉ 抵抗に遭遇した場合、または患者が痛みや不快感を感じた場合は注入を中止する(文献33)。

◉注入中に用手的圧迫(デジタル圧迫)を適用し、血管を圧迫する(文献33)。

◉ドップラー超音波(US)の使用(文献32):注入前に血管構造を特定し、偶発的な血管穿刺を避けるための有効な手段として普及が進んでいます。


これらの予防策を遵守することは、ヒアルロン酸注入による重篤な合併症、特に失明のリスクを最小限に抑えるために不可欠です。



【参考文献】

30) Vision loss associated with hyaluronic acid fillers: A systematic review of literature

Kapoor KM, et al.

Aesthetic Plast Surg

2020;44(3):929-944

31) Vascular compromise after soft tissue facial fillers: Case Report and review of current treatment protocols

Steven Halepas, et al.

J Oral Maxillofac Surg

2020;78(3):440-445

32) Bridging a century-old problem: The pathophysiology and molecular mechanisms of HA filler-induced vascular occlusion (FIVO)—Implications for therapeutic interventions
Danny J Soares MD
Molecules
2022;27(17):539

33) Global Aesthetics Consensus: Avoidance and Management of Complications from Hyaluronic Acid Fillers—Evidence- and Opinion-Based Review and Consensus Recommendations

Massimo Signorini 
Plast Reconstr Surg
2016;137(6):961e-971e

 



若きドクターへ 〜眼塞栓症〜


塞栓症についてネットで情報を求めると、びっくりするほと詳細に解剖学知見やら、施術方法について、専門医資格がどうのだとか書かれていたりします。しかし、そんなに時間をかけて記述する暇があるなら、もう少し丁寧に文献にあたれば、結局のところそんなものは何の役にも立たず、ただ「顔の上半分へのヒアルロン酸注入では眼塞栓症のリスクがある」と覚悟した方が実態に近いことがわかるはず。


この眼塞栓症の難しさは、実際にはきわめてまれなのに発症すれば結果がきわめて重篤であることに尽きます。どのくらいまれかと言えば、私自身で言えば、20年以上美容医療に携わっていて経験したこともなければ、自分のまわりで話を聞いたこともない。そのくらいまれな話ではあります。


怖がりすぎてはヒアルロン酸を注入できなくなり、ひいては美容医療そのものを否定することになってしまいます。交通事故に遭うのが怖いから自宅に閉じこもるようなもの。


現実的に可能な対策としては、「顔の上半分へのヒアルロン酸注入」をやめることではなく、特にハイリスクな部位(眉間から鼻根にかけての領域)へのヒアルロン酸注入を避けることではないでしょうか。現状では一度発症した場合、確実に回復させる治療法はないので、何より発症リスクを下げることが最善。


また現状での問題点としては、もし眼塞栓症が発症したとき、搬送先を見つけるのがきわめて難しいだろうこと。


この高いハードルを少しでも下げるには、すぐに実現する話ではありませんが、厚労省や学会レベルへの働きかけが必要。日本においてヒアルロン酸後の失明がどの程度発生しているか調査して必要性を確認した上で、眼塞栓症が発症した場合の最善の処置についてガイドラインを策定し、それを救急医療機関に周知して速やかに対応してもらえるような整備が必要だと思います。


 



よくいただくご質問

Q

ヒアルロン酸とは何ですか?どのような効果が期待できますか?

A

ヒアルロン酸(Hyaluronic Acid, HA)は、N-アセチル-D-グルコサミン(N-acetyl-D-glucosamine)とD-グルクロン酸(D-glucuronic acid)という2種類の糖が交互に連結した直線上の高分子化合物です。

皮膚や関節などに自然に存在して、優れた保水力を持つ成分です。生体内では最終的に二酸化炭素と水に分解されます。

美容医療分野では、主にヒアルロン酸フィラーとして使用されています。

ヒアルロン酸の特徴

◉保水力
- 自分の重量の約1000倍の水分を保持できる
- 肌の潤いとハリを保つ重要な成分

◉生体適合性
- もともと体内に存在する成分のため、アレルギー反応が起こりにくい
- 時間とともに体内で自然に分解される


美容医療でのヒアルロン酸フィラーの用途

◎ボリューム補充
- 加齢によって失われた顔の容積を回復
- ほうれい線、マリオネットライン、頬のくぼみの改善

◎輪郭形成
- 輪郭の痩せの改善
◎しわ・たるみ改善
- 深いしわの軽減


アジア人における特徴的な使用法(*文献)

アジア人の美容治療では:
- ボリューム改善が重視される(特に若い患者)
- 鼻筋、顎、頬の中央部分などの前方へボリュームを増加させる用途が多い-- 西洋人と異なり、顔を小さく見せる効果を狙った使用が特徴的です。


安全性と注意点

- 厚生労働省、FDA承認済みの製剤

- 施術は必ず資格を持った医師による実施が必要

- 効果は6ヶ月〜2年程度持続(製品や部位により異なる)

- まれに血管閉塞などの重篤な合併症のリスクあり


ヒアルロン酸フィラーは、適切に使用されれば安全で効果的な美容治療選択肢の一つですが、施術前には必ず医師との十分な相談が重要です。


(参考文献)
Consensus on Current Injectable Treatment Strategies in the Asian Face
Wu WT, Liew S
Aesthetic Plast Surg
2016;40(2):202-14

Q

ヒアルロン酸注入のリスクについて

A



リスク・副作用について
1)内出血(腫れ、青アザ)
2)凹凸
3)腫れ、むくみ
4)チンダル現象
5)かゆみ
6)痛み、圧痛、違和感
7)しこり(血腫や異物肉芽種など)
8)感染症(まれ)
9)アレルギー:即時型・遅発性(まれ)
10)動脈塞栓症(まれ)

もっとも多いトラブルは内出血です。


腫れや青アザの原因になります。冷却してからカニューレを使用して注入することで内出血対策としています。内出血してもたいていの場合メイクでカバーすることができます。ただし青アザとなって広がることもありますので大切なご用事が控えているさいは、ご用事がすんでから施術をお受け下さい。

その他、ごくまれですがアレルギーのリスクがあります。アレルギーが疑われる場合には、ヒアルロン酸を溶解するなど処置をすることがあります。

Q

施術後、腫れや内出血はどのくらい続きますか?

A

ヒアルロン酸注入後には、個人差はありますが、腫れや内出血(青あざ)といった症状が出ることがあります。これらは一時的なもので、通常は時間と共に自然に軽快していきます。

腫れについて:
注入部位や使用したヒアルロン酸の量にもよりますが、軽い腫れやむくみは施術直後から数日間続くことがあります。特に注入量が多い場合や、皮膚の薄い部位では、2~3日程度膨らみが目立つこともありますが、徐々に落ち着いていきます。赤みに関しては、通常1~2時間程度で引くことが多いです。

内出血について:
内出血は、ヒアルロン酸注入で最も起こりやすい副作用の一つです。針を刺す際に細い血管に当たってしまうことで生じますが、当院では内出血のリスクを最小限に抑えるため、冷却やカニューレの使用といった対策を講じています。

もし内出血が出た場合、最初は赤紫色や青紫色になり、徐々に黄色っぽく変化しながら、通常1~2週間程度で自然に消えていきます。多くの場合、お化粧でカバーできる程度です。

大切なご予定がある場合は、念のため施術日を1~2週間前までに設定されることをお勧めします。

 

Q

アレルギー反応は起こりますか?

A

ヒアルロン酸は、もともと人間の体内に存在する成分であるため、ヒアルロン酸そのものに対するアレルギー反応は非常に起こりにくいとされています。

また、当院で使用しているヒアルロン酸製剤は、いずれも日本の厚生労働省の承認を受けた高品質なものであり、アレルギー反応を引き起こす可能性のある不純物は極力排除されています。

しかし、ごく稀に、ヒアルロン酸製剤に含まれる他の成分(例えば、痛みを和らげるために配合されている麻酔薬など)に対してアレルギー反応が起こる可能性は否定できません。もし、注入後に通常見られる腫れや赤みとは異なる、極端な腫れ、強い赤み、熱感、かゆみなどが現れた場合は、アレルギー反応の可能性も考えられますので、速やかに当院までご連絡ください。

Q

血管塞栓のリスクについてどのような対策をしていますか?

A

血管塞栓(けっかんそくせん)は、ヒアルロン酸注入を含む全ての注入治療において、発生率は0.001%(文献a)と頻度は非常に稀ではあるものの、最も注意すべき重篤な合併症です。

血管塞栓は、注入されたヒアルロン酸製剤が誤って血管内に入り込み、その先の血流を遮断してしまうことで発生します。血流が途絶えると、その血管が栄養していた組織(皮膚など)がダメージを受け、最悪の場合、皮膚壊死や瘢痕形成に至ることがあります。特に目の周りなど、特定の部位では視力低下や失明といった極めて深刻な結果を招く可能性も報告されています。

当院では、この血管塞栓のリスクを限りなくゼロに近づけるため、以下のような徹底した対策を講じています。

◉解剖学的知識や塞栓症の最新知識の習熟: このサイトでも紹介しているように塞栓症について最新の医学情報に基づき対策を講じています。

◉適切な注入テクニック(文献b): 注入時には、陰圧テストを行ったり、一度に大量のヒアルロン酸を注入するのではなく、カニューレを使用して少量ずつ段階的に、そしてゆっくりと注入するなど、血管内に入るリスクを低減しています。

◉ハイリスクの部位は注入しない: 現状では完全に塞栓症を避ける注入法は存在しないため、鼻、ほうれい線基部、眉間などハイリスクとして知られる部位は注入しないことを原則にしています。

◉院長の豊富な経験に基づくリスク管理: 20年以上にわたる注入治療の経験は、手技の正確性だけでなく、リスクを予見し回避する能力にも繋がっています。

さらに、万が一、血管塞栓が疑われる事態が発生した場合にも迅速に対応できるよう、ヒアルロン酸を溶解する薬剤である「ヒアルロニダーゼ」を常備し、血流を改善するための治療(血管拡張薬、抗凝固療法など)を迅速に行えるよう準備を整えています。

血管塞栓は確かに怖い合併症ですが、当院ではそのリスクを正面から受け止め、詳細な情報開示と具体的な予防策、そして緊急時対応の準備を徹底することで、お客様に最大限の安全を提供できるよう努めています。この透明性と具体的な対策こそが、患者様の信頼に繋がるものと確信しています。


【参考文献】

a) Vascular compromise after soft tissue facial fillers: Case Report and review of current treatment protocols
Steven Halepas, et al.

J Oral Maxillofac Surg

2020;78(3):440-445

b) Global Aesthetics Consensus: Avoidance and Management of Complications from Hyaluronic Acid Fillers—Evidence- and Opinion-Based Review and Consensus Recommendations
Massimo Signorini
Plast Reconstr Surg
2016;137(6):961e-971e

Q

効果はいつから実感できますか?

A

ヒアルロン酸注入の大きな特長の一つは、注入直後から効果を実感しやすいという「即効性」です。鏡を見て、シワが浅くなったり、ボリュームがアップしたりといった変化をその場でご確認いただける場合が多いでしょう。

ただし、注入直後はわずかな腫れや赤みが出ることがあり、また、ヒアルロン酸製剤が組織になじむまでには少し時間がかかります。触った際に皮下にやや硬い感じが残ることがありますが、これは一時的なものです。部位によっては2~3日間ほど膨らみが少し目立つこともありますが、徐々に落ち着いていき、通常1週間ほどでヒアルロン酸が周囲の組織とよくなじみ、より自然で最終的な仕上がりとなります。

「すぐに効果がわかる」という点は魅力的ですが、施術後数日間のわずかな変化も想定しておくことで、より安心して経過を見守ることができます。最終的な仕上がりまでのプロセスもご理解いただくことが、満足度に繋がると考えています。

Q

 効果はどのくらい持続しますか?

A

ヒアルロン酸注入の効果の持続期間は、使用するヒアルロン酸製剤の種類、注入した部位、そして体質(代謝の速さなど)やライフスタイルによって個人差があるとされます。

ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分で、時間と共に徐々に体内に吸収されていくため、残念ながら効果は永続的ではありません。一般的には、6ヶ月から2年程度持続すると言われています。

当院で使用している主なプレミアムヒアルロン酸製剤の持続期間の目安は以下の通りです。

◉ ボルベラXC: 9ヶ月から1年程度
◉ ボリフトXC:1年〜1年半程度
◉ ボリューマXC: 2年程度

カウンセリングで最適な製剤選びや治療計画についてご相談させていただきます。持続期間を具体的にお伝えすることで、患者様が次回のメンテナンス時期などを計画しやすくなると考えています。

 

Q

医師の経験や技術について教えてください。

A

ヒアルロン酸注入は、医師の経験と技術、そして美的センスが結果を大きく左右する繊細な治療です。注入量が適切でなかったり、注入する層や部位が的確でなかったりすると、期待した効果が得られないばかりか、不自然な仕上がりや合併症のリスクも高まります。

当院では、院長が20年以上の豊富な美容医療経験を有しており、その長年培ってきた熟練の技量と美的センスを活かして、お一人おひとりの患者様に丁寧にヒアルロン酸を注入いたします。単にシワを埋める、ボリュームを出すといったことだけでなく、お顔全体のバランスや調和を考慮し、患者様本来の美しさを引き出す自然な仕上がりを追求しています。

特に安全性に関しては、徹底したリスク管理を行っています。ヒアルロン酸注入における重大なリスクの一つに血管塞栓がありますが、これを回避するためには、血管の走行や注入すべき皮膚の層を解剖学的に正確に把握することが不可欠です。当院では、この解剖学的知識に基づき、危険な部位を避け、安全な層に適確に注入することで、血管塞栓などのリスクを最小限に抑えるよう細心の注意を払っています。

さらに、内出血や痛みを軽減し、血管損傷のリスクを低減するために、可能な限り先端が丸く加工された「カニューレ」という特殊な針を使用しています。これらの取り組みは、すべて患者様に安心して質の高い治療を受けていただくためのものです。

Q

施術中の痛み、痛み対策について

A

施術中の痛みについては、多くの方がご心配される点かと思います。

痛みの感じ方には個人差がありますが、当院では患者様の苦痛を最小限に抑えるため、さまざまな配慮を行っております。実際に、「思ったよりも痛みが少なかった」というお声をいただくこともあり、痛みの軽減には自信を持っています。

当院での主な痛み対策は以下の通りです。
⚪️カウンセリングで疑問・不安の解消
「カウンセリングが痛み対策?」と思われるかもしれませんが、疑問や不安を抱いたまま施術を受けると、痛みはより強く感じられるものです。実はカウンセリングは一番重要な痛み対策です。

⚪️注入前の冷却: 注入部位を事前に冷却装置でしっかりと冷やすことで、痛覚を鈍らせます。

⚪️極細針の使用: 針を刺す際の痛みをできるだけ少なくするため、非常に細い注射針を使用します。
カニューレの使用: 先端が丸く、横から薬剤が出る構造の「カニューレ」という特殊な針を可能な限り使用します。カニューレは血管や神経を傷つけにくいため、痛みだけでなく内出血のリスクも軽減できます。

⚪️麻酔入りヒアルロン酸製剤の使用: 当院で使用しているアラガン社のVYCROSSシリーズ(ボルベラXC、ボリフトXC、ボリューマXCなど)やジュビダーム ウルトラシリーズの「XC」と付く製剤には、局所麻酔薬であるリドカインが配合されています。これにより、注入中の痛みが緩和されます。多くのクリニックで麻酔入りのヒアルロン酸が主流となっています。

これらの多角的なアプローチにより、ほとんどの方が我慢できる程度の痛みで施術をお受けいただいています。

Q

凸凹になることがあると聞きました・・

A

注入直後にはなくてもあとで気づくこともあります。

原因としては体内で水分を吸収してヒアルロン酸のボリュームが増えたり、まばたきや表情によってヒアルロン酸が偏ることなどが考えられます。

ほとんどの場合マッサージすることで直せます。我慢されずにご連絡下さい。

Q

量り売りはしていますか?

A

「量り売り」とはヒアルロン酸注入の料金を0.1mlあたりで決めることですが、当院では製剤1本をお買上いただき、施術に使用しています。「量り売り」は行っていません。


⚪️
衛生管理と安全性: 未開封の新しいシリンジ(注射器)をお客様お一人ごとに使用することで、細菌汚染などのリスクを排除し、最大限の安全性を確保します。
⚪️
製剤の品質保持: メーカーから供給された状態のまま使用することで、ヒアルロン酸の濃度や品質が損なわれることなく、最適な状態で注入できます。
⚪️
料金の透明性: 1本あたりの料金が明確であるため、費用についてもご理解いただきやすいと考えています。

「量り売り」の方が少量から試せて柔軟に感じるかもしれませんが、当院では上記の理由から、「量り売り」は行っていません。ご理解いただけますと幸いです。

Q

エステやマッサージ、他の美容医療はいつから受けられますか?

A


ヒアルロン酸注入後に、エステティックサロンでのフェイシャルトリートメントやマッサージ、あるいは他の美容医療(レーザー治療、HIFUなど)をお考えの場合、適切な間隔を空けることが必要になることがあります。

以下は当院の原則です。

原則1:ヒアルロン酸を注入した部位に痛みや違和感がある間(通常1〜2週間以内におさまります)は、スキンケア、メイクアップは構いませんが、それ以上の施術は避けた方が良いでしょう。

原則2:内出血で青アザなど皮膚に色の変化が生じた場合は、それが消えるまで((通常2〜4週間以内に消退します)光治療やレーザー治療など色に反応する治療は避けて下さい。*ただし色に影響されないレーザーもありますから、施術を受けるクリニックで医師にご確認下さい。

原則3:ヒアルロン酸を注入した部位には、時間をかけて強く押すような行為(小顔矯正など)は、ヒアルロン酸が動く可能性がありますが、通常のフェイシャルトリートメントやマッサージは問題はありません。

基本的にヒアルロン酸注入後に施術を受けられるかどうかは、施術を行うクリニックの医師の判断になります。決まったルールがあるわけではないので各クリニックの判断に従って下さい。

Q

カウンセリングではどのようなことを話しますか?

A

カウンセリングは、患者様とクリニックが信頼関係を築き、ご満足いただける治療結果を目指すための最初の、そして最も重要なステップです。当院では、患者様のお悩みやご希望を詳しくお伺いし、最適な施術プランをご提案することを何よりも大切にしています。

カウンセリングでは、主に以下のような内容についてお話しさせていただきます。

⚪️お悩みとご希望のヒアリング: 現在どのような点にお悩みで、ヒアルロン酸治療によってどのような状態になりたいか、具体的なご希望や、もしあれば不安な点などを詳しくお聞かせください。

⚪️診察と評価: 医師がお顔の状態(シワの深さ、たるみの程度、ボリュームのバランス、皮膚の状態など)を丁寧に診察し、医学的な観点から評価します。

⚪️治療法のご提案: 診察結果と患者様のご希望を踏まえ、最適なヒアルロン酸製剤の種類、注入部位、注入量など、具体的な治療プランをご提案します。なぜそのプランが推奨されるのか、理由も分かりやすくご説明します。

⚪️期待できる効果と限界: 治療によってどのような効果が期待できるか、また、現実的に難しい点や限界についても正直にお伝えします。

⚪️施術の流れ: 実際の施術がどのように進められるか、ステップごとにご説明します。

⚪️リスク・副作用、ダウンタイム: 起こりうるリスクや副作用、施術後のダウンタイム(腫れや内出血など)について、詳しくご説明します。

⚪️アフターケア: 施術後の過ごし方や注意点、ケア方法などについてご説明します。

⚪️費用: 治療にかかる費用について、明確にご提示します。

⚪️質疑応答: 患者様が抱える疑問や不安が解消されるまで、どのようなことでもご質問いただけます。

他のクリニックでも、もちろん注入前には丁寧なカウンセリングを行うことが一般的です。当院では特に、患者様が全ての情報を理解し、心から納得して治療に臨めるよう、十分な時間をかけてコミュニケーションを取ることを重視しています。このプロセスを通じて、患者様の不安を軽減し、安心して治療をお受けいただけるよう努めています。

Q

施術後すぐにメイクはできますか?

A

施術後のメイクについては、多くの方が気にされるポイントかと思います。

当院では、施術直後からメイクすることを許可していますが、その際は、清潔な手や道具を使用し、注入部位を強くこすったり刺激したりしないよう、優しく行ってください。

ヒアルロン酸注入による内出血が出た場合は、メイクでカバーして下さい。

Q

使用するヒアルロン酸製剤の使い分けについて

A

ヒアルロン酸注入は、お顔のさまざまなお悩みや部位に対応できる、非常に汎用性の高い治療法です。

どのような点にお悩みで、どのような改善を望まれているかによって、最適なヒアルロン酸製剤の種類が異なります。

当院で主に使用しているのは、アラガン社のVYCROSS(バイクロス)技術を用いて製造されたプレミアムヒアルロン酸製剤で、これらはすべて日本の厚生労働省の承認を得ているものです。VYCROSS技術により製造されたヒアルロン酸は、従来のヒアルロン酸に比べて注入後のなじみが良く、形を保つ力や持続性に優れているとされ、より自然で長持ちする仕上がりが期待できます。

製剤は、それぞれ硬さや粘度、リフト力、持続期間などが異なります。どの製剤を使用するかは、治療する部位、お肌の状態や骨格、そしてどのような仕上がりをご希望されるかによって、医師が診察の上で最適なものを提案します。

例えば、プレミアムヒアルロン酸製剤を使用して、以下のような部位への注入を行っています。

ボルベラXCが適した部位: 涙袋の形成、目元の浅いシワ、目の下のくぼみ、唇のボリュームアップなど、皮膚の薄いデリケートな部分の自然な仕上がりに。
ボリフトXCが適した部位: ほうれい線、マリオネットライン、目の下のくぼみ、額のシワや丸み形成など、ある程度のボリュームと滑らかさが求められる部位に。
ボリューマXCが適した部位: 頬(ゴルゴラインの改善やリフトアップ)、輪郭形成(コメカミや耳の前方のくぼみなど)、顎の形成など、しっかりとしたボリュームアップやリフトアップを目的とする場合に。

これらはあくまで一例であり、ご自身では「どの製剤が合うか」まで判断するのは難しいかと思います。「ここのシワが気になる」「頬がこけてきた気がする」といった具体的なお悩みや、「こうなりたい」というご希望をお伝えいただければ、専門の医師が診察の上、最適な治療プランをご提案いたします。まずはカウンセリングにて、お気軽にご相談ください。

Q

 施術当日の入浴や運動は可能ですか?

A

施術当日の過ごし方について、特に運動や入浴に関するご質問は多くいただきます。

当院では基本的にヒアルロン酸注入後の生活について、とくに制限を設けていません。

ただし、もし施術後に内出血や注入部位の痛みを感じる場合は、血行を促進する運動、長時間の入浴やサウナ、岩盤浴などは症状を悪化させる可能性があるため、当日は避けていただくようお願いしています。

Q

他院で注入したヒアルロン酸が残っていても治療できますか?

A


はい、他のクリニックでヒアルロン酸注入を受けられ、まだその効果が残っている状態であっても、当院で新たにヒアルロン酸注入をお受けいただくことは全く問題ありません。

以前に注入されたヒアルロン酸製剤の種類が当院で扱っているものと異なっていても、特に問題なく追加の注入が可能です。そのため、以前のクリニックに問い合わせて製剤の種類などを確認していただく必要も基本的にはございません。

もちろん、以前に使用された製剤名や注入時期、注入部位などがお分かりであれば、カウンセリングの際に医師にお伝えいただけると、よりスムーズな治療計画の立案に役立ちます。しかし、情報がなくても、現在の状態を的確に評価し、お顔全体のバランスを見ながら最適な注入プランをご提案いたしますのでご安心ください。

お客様がクリニックを変更される理由は様々かと存じます。当院では、以前の治療歴にかかわらず、全ての患者様にご満足いただけるよう、丁寧なカウンセリングと質の高い技術で対応させていただきます。どうぞお気軽にご相談ください。

Q

注入量の目安は?

A


原則としてヒアルロン酸製剤1本(1cc)でご満足いただける注入を心がけています。2本以上使う場合はあらかじめ十分にご説明いたします。