ダイエット

ダイエットについて

永遠の挫折ビジネス!?

 ダイエットの基本は言うまでもなく、食事のカロリーを減らし、運動すること。これに尽きますが、実践しつづけることは、まず不可能です。そこで、ないのがわかっていながら、「何かいい方法はない?」と探し求めてしまいます。そうした人の弱みにつけ込むのが一大ダイエット産業です。必ず(?)失敗する方法でも、最新の広告手法を駆使して、効果的な最新ダイエット法に仕立てて、悩めるダイエッターを煽ります。ひとつのブームが過ぎれば、また新しいブームが作り出され、ダイエット産業が廃ることはありません。ダイエット産業が、「挫折ビジネス」と揶揄される所以です。

しかし、いつまでも「挫折ビジネス」をのさばらせておくわけにはいきません。世界的にも肥満が問題になっている昨今、肥満防止に向けた医学研究も数多く発表されています。そうした最新の学術研究から、ダイエットのヒントをご紹介します。

*基本的にはエビデンス(科学的根拠)を最重視し、それが不十分な部分では、自分の中にある医師としての「良心」に従いました。

 

ダイエットの成功とは

ダイエットの成功には2段階あります。

まず減量できることが一つ目の成功、そして減量した状態を維持できたときが2つ目の、そして最終的な成功です。維持できたとする判断の目安は1年。多くの学術論文で1年を追跡調査の時期としています。


ダイエット成功の秘訣!?

ダイエットとは生活習慣の変更を迫るものです。「挫折」してしまうのは、人間には慣れ親しんだ生活習慣への「執着」があるからです。ダイエット成功の秘訣は、とにかく「無理のない」、決して「我慢しない」、「頑張らない」方法で、少しずつ生活習慣を変えること。そうして太らない生活習慣を構築できれば、今度はその習慣に「執着」がわきますから、1年と言わず、ずっと続けていくことができるようになります。

ヒント1 腸内細菌を変える!

■腸内細菌叢は現代医学のトピックスのひとつ。2016年12月ニューイングランドジャーナル誌の総説に取り上げられました。腸内細菌叢と肥満、発癌、免疫などとの関係について研究が進んでいることが紹介されています。

 

■肥満と腸内細菌の関連を示した最初の論文は、2013年にサイエンスに掲載されました。太っている人、痩せている人の腸内細菌を無菌マウスに移植し同じエサを与えたところ、太った人の腸内細菌を移植されたマウスは太りましたが、痩せた人の腸内細菌を移植されたマウスは太りませんでした。太るかどうかは、腸内細菌で決まっていたのです。

 

■現状では特定の菌種を摂取すれば減量できると言える十分なエビデンスはありません。腸内細菌叢でもっとも重要な特質は多様性、つまりいろいろな細菌が存在することなのです。腸内細菌叢の菌の種類は1,000とも言われています。たかだか数種類の細菌だけでその性質を変えられるものではないのかもしれません。

 

■さまざまなダイエット目的の乳酸菌サプリメントが発売されています。その中に自分に合ったものがあるかどうかは、試しに内服してみないとわかりません。もし効果的なサプリメントが見つかれば、ただ内服するだけでいいので、最高のダイエット法となるでしょう。

 

(参考文献)
1) The Human Intestinal Microbiome in Health and Disease.
Susan VL,et al.
N ENGL J MED 2016;375:2369-2379
2) Gut microbiota from twins discordant for obesity modulate metabolism in mice.
Ridaura VK,et al.
Science 2013 Sep6;341(6150)

 



《余話》
■腸内細菌叢が肥満になるかどうか決めているという論文で一世を風靡した医学者が次に立ち向かったのは、アフリカ最貧国の飢餓でした。一人でも多くの幼い命を救おうと挑戦する医学者の感動のストーリーです。

■舞台はアフリカ南東部のマラウイ。世界最貧国のこの国では飢餓により、生まれる子供の50%は命を失うか、重大な栄養障害に苦しめられています。そんな惨状の地でつぶさに観察すると、同じような食事内容なのに死んでしまう子もいれば、少数ながら発育する子がいました。

■貧しい食事でも命をつなげられる子とつなげられない子・・医学者は両者の腸内細菌叢を徹底的に調べあげ、わずかながら違いがあることを発見します。乳児の腸内細菌叢は母乳の影響が大きい。そこで次に母親の母乳の違いを調べました。そうしてついにある種のオリゴ糖(シアル酸含有オリゴ糖)を探し当てました。さっそく動物で実験すると、同じようにカロリーを制限した食事でも、そのオリゴ糖を添加したグループでは、すくすくと成長しました。母乳に含まれるある種のオリゴ糖が腸内細菌叢を変えて、貧しい食事でも命をつなぐことを可能にしていたのです。

■マラウイに限らず世界では9人に1人が飢餓に苦しめられています。栄養不良に苦しむ子供のすべてに十分な栄養を与えることは夢物語かもしれません。しかし、たかだかオリゴ糖のひとつを配るだけでいいのなら、今にも消えそうな幼い命が救えるはず・・

■こうした研究が実って、子供たちの笑顔が少しでも増えますように。


(参考文献)
Sialylated milk oligosaccharides promote microbiota-dependent growth in models of infant undernutrition.
Charbonneau MR,et al.
Cell. 2016;164(5):859-871.

 

 

ヒント2 時間栄養学から〜「時間」を制限する〜

食事の内容や量ではなく、時間を制限する

■「時間を制限する」という新しい「生活習慣の変更」の先駆けとなった論文を紹介します。

■実験マウスは通常のエサで飼育すると、夜行性のマウスは主に夜間に食事をします。ここで高脂肪食のエサに変えると、マウスは昼、夜という日内リズムが崩れ、一日中食べるようになり、肥満、糖尿病を発症しました。

■ところが同じ高脂肪食を与えながら、エサが食べられる時間を8時間に制限すると、トータルの摂取量は時間制限のある、なしに関わらず同じでしたが、肥満になることはなく健康が保たれたのです。


(解説)
■あくまでマウスの実験ではありますが、たとえ高脂肪食を続けたとしても、食事時間さえ制限すれば、肥満を防ぐことができることが示されました。

■ダイエットするには、生活習慣を変えなければなりません。それは食事を変えるか、運動するかしかないと思われていました。この論文以来、食事の内容や量を変えるのではなく、食事の「時間」を制限するという新しい生活習慣の改善方法が注目されるようになりました。

 

 

 

(参考文献)
Time restricted feeding without reducing caloric intake prevents metabolic diseases in mice fed a high fat diet.
Megumi H,et al.
Cell Metabolism. 2012;15(6):848-860.

 

食事時間を制限する(続報)

■先に紹介した論文と同じ研究グループからの続報です。さらに細かく飼育環境を変えて実験が行われました。

■食事摂取時間の制限と体重増加については、9時間制限と12時間制限ではほとんど同じように体重の増加が抑制されました。また緩い制限になる15時間制限でも自由摂取よりは体重の増加が防げました。

■5日間(weekdays)時間制限し、2日間(weekends)は自由摂取という食事パターンでも体重増加を抑制できました。しかも毎日時間制限したときにほとんど劣らない効果でした。

■高脂肪食で肥満になってしまったマウスでも、その後時間制限することで体重を減少させることができました。


(解説)
■あくまでマウスの実験ですが、「人」を意識した実験設定になっています。

■少なくともマウスでは12時間の食事制限(一日の中で12時間だけ食事できる)で肥満は予防できること、また12時間が守れなくても少しでも制限することで、それだけ体重増加が防げることが示されています。また食事時間制限は平日の5日間だけという食事パターンでも有効なこと、さらには、すでに肥満してからでも時間制限すればダイエットできることが示されました。

■ここまでくると、あとは人でも時間制限が有効なのか、マウスの12時間が人では何時間に相当するかに焦点になります。

 

(参考文献)
Time-restricted feeding is a preventative and therapeutic intervention against diverse nutritional challenges.
Amandine C,et al.
Cell Metabolism. 2014;20(6):991-1105.

 

人での時間制限〜答えは12時間〜

■スマートフォンアプリを活用して、人の摂食行動を解析した報告があります。

■「食事期間(1日の中で最初にカロリーあるものを摂取してから最後に摂取するまでの時間)」が14時間を越える肥満者を、4か月間「食事期間」を10〜12時間に制限することで、それ以上は食事の量や内容を制限しなくても、体重を減少させることができました。

(解説)
■追跡調査の結果は、驚くべきものでした。なんと!1年後もほとんどの人で体重が維持されていました。理由は「続けるのが楽だから」でした。

■ダイエットのために何を食べるべきとか、避けるべきとかいった食事内容についての議論は、なかなか結論が出ませんが、それに比べると、何時間制限したらいいのかの方が、答えが出やすいようです。


(参考文献)
A Smartphone App Reveals Erratic Diurnal Eating Patterns in Humans that Can Be Modulated for Health Benefits.
Shubhroz G,Satchidananda P
Cell Metab. 2015 Nov 3;22(5):789-98.



《まとめ》
時間栄養学は「時間を制限する」ことで、ダイエットできることを教えてくれました。
1日の中でカロリーのあるもの(食事、間食、飲料)の摂取は12時間以内に制限しましょう。マウスを使った実験結果と合わせれば、たとえ12時間が無理だとしても、少しでもカロリー摂取時間を短くできれば、それだけの効果が期待できます。また平日だけでも制限できれば、週末は羽目を外しても大丈夫そうです。



ヒント3 時間栄養学から〜王様のような朝食!〜

王様のような朝食、王子様のような昼食、そして貧民のような夕食を・・

■この西洋のことわざには、ダイエットのヒントが詰まっています。そして、決め手となるのが「体内時計」。体内時計には脳の中にある中枢性の時計と体のあちこちにある末梢性の2種類ありますが、その体内時計は1日24時間ではなく、25時間周期になっています。つまり人は毎日が時差ボケ状態なので、毎日リセットしないと体調が崩れてしまいます。

■体内時計は2種類なので、リセット方法も2つ。中枢性の時計のリセットには、朝起きて日光(ブルーライト)を浴びること。末梢性の時計のリセットには、起床して2時間以内に朝食を食べることが必要です。

■体内時計を持つ身体は、朝と夜を区別します。朝に摂る食事は、これからの生活のエネルギー源として使われやすく(蓄積しにくく)、夜に摂る食事は、明日へのエネルギーとして蓄積されやすく(消費されにくく)なります。また、朝食を抜くとその分摂取カロリーが減って、ダイエットになると思われがちですが、実は、たとえトータルとして摂取カロリーが増えても朝食を食べた方が太りにくく、朝食を抜いた方が肥満傾向になることがわかっています。さらに時計のリセットには、栄養バランスの取れた朝食が必要で、バナナ1本とか食パン1枚では時計のリセットはできません。おすすめは「王様のような朝食」です。

《まとめ》
ほとんどの方で、1日の中で夜がもっとも豪華な食事になっていることでしょう。ことわざにならってその比重を変える、つまりしっかりした朝食を摂り、夕食はあっさりすませること。そして、間違っても朝食を抜かないこと。これが時間栄養学からのアドバイスです。



詳しいお問い合わせ・ご予約はこちらから