男性スキンケア

男性の素肌事情

わかっているけど何もしない・・


男性では、肌が外部環境に無防備にさらされていること、ヒゲ剃りが習慣となっていること、この2つが男性の肌事情の特徴となっています。

アンケート調査によれば、スキンケアの重要性については半数以上の男性が認識しています。それにもかかわらずスキンケア製品の実際の使用率が低いばかりか、スキンケア製品への関心も年齢とともに低下し、40代以降では20%以下にすぎません。(参考文献1)



男性スキンケアの原則

 

■1 Tゾーンの余分な皮脂を洗顔で洗い流す

■2 できるだけお肌にやさしくヒゲを剃る

■3 Uゾーンをしっかり保湿する

■4 サンスクリーン剤を適切に使う



原則1 洗顔

Tゾーンで皮脂が多い


男性は女性と比べ皮脂の分泌量が多いと言われますが、全体に脂ぎっているわけではありません。多いのはTゾーン(額から鼻)で、しかも女性と異なり年齢が高くなっても分泌量が落ちません。それが男性肌の特徴です。


(グラフ:参考文献2)
曲線は上から、額、頬上部、頬下部の皮脂分泌量を表しています。横軸は左端が10歳、右端が60歳です。

Tゾーンの「余分な」皮脂を洗い流す


男性の顔面皮膚は、TゾーンとUゾーンの部位差が女性よりも大きく、Tゾーンでは年齢と関係なく皮脂の分泌量が多くても、Uゾーンでは水分量、バリア機能がともに低下しています。男性肌は極端な混合肌なのです。(参考文献3)


それなのに肌のべたつき・ギラつき・テカリを取り除こうと、顔全体を洗顔料を過剰に使用したり、強く擦ったり、洗顔回数も多くしたりと、「過剰」に洗顔することは、肌トラブルを生む原因になります。


洗顔のコツは、
1)洗顔料を泡立てて使用する
2)ぬるま湯で洗顔する
3)Tゾーン(額、鼻)では力を入れずやさしく泡を肌表面になじませるようにする
4)Tゾーン(額、鼻)以外、とくにヒゲ剃りの部位は洗顔料をつけなくてもよい
です。

泡立てて洗顔することのメリットは、肌を擦らずに洗顔できること、肌に接触する洗顔料の濃度を下げることができる(100分の1以下になる)こと。ただし、泡洗顔は実際には女性でも正しく行われていないことが多いことから(参考文献4)、面倒ならTゾーンだけを少量の洗顔料で洗うと覚えておきましょう。

 



原則2 ヒゲ剃り

できればレーザー脱毛する


レーザー脱毛を行えば、ときどき軽くヒゲ剃りをすれば十分な程度にはなるので、肌の負担は圧倒的に軽くなります。


しかし、問題はあとでヒゲを伸ばしたくなっても不可能だということ。

もし今後ヒゲを伸ばすことはないと判断できるならば、レーザー脱毛することをおすすめします。



脱毛しないなら、電動シェーバーで


男性の肌は、加齢とともに硬くなります。とくに頬下部、つまりヒゲ剃りの行われる部位が硬くなります。この皮膚の硬さは男性の皮膚のエイジングを計る指標になります。

皮膚の硬さで3つのグループ(A〜C)に分けて検討した研究からは、皮膚の柔らかい群(A)では、電気シェーバー使用者が、皮膚の硬い群(C)ではカミソリ使用者がそれぞれ70%を占めることが分かり、電気シェーバーを使う方が皮膚への負担が少ないことがうかがえます。(グラフ)(参考文献3)

(グラフについて)
棒グラフの下側の白い部分が電気シェーバー使用者、黒い部分がカミソリ使用者の割合を表しています。(左aが頬下部、右bが頬上部)


カミソリを使うと刃が直接皮膚にあたるため、どうしても皮膚の表層の角質を傷つけることが避けられません。できれば電気シェーバーにして、それも肌にやさしく軽く押し当てるようにして使いましょう。

どうしてもカミソリを使うなら「2分待て!」

 
ヒゲは大変丈夫にできていて、同じ太さの銅線と同じくらいの強度があります。ただし毛の構造蛋白であるケラチンは高い親水性があるので、水を吸収すると柔らかくなって、軽い力でも剃れるようになります。

グラフ(参考文献5)
縦軸はヒゲをカットするのに必要な力、横軸は保湿時間です。
最初の2分で急激にヒゲは柔らかくなり、4分を過ぎるとあとは変わらないことがわかります。

強い力で剃れば剃るほど皮膚の表面は傷つけられてしまいます。シェービングフォームをつけたら必ず2分待ちましょう。どんなシェービングフォームを選ぶかより、ヒゲが柔らかくなるまで待つことが大切です。



原則3 保湿

Uゾーンをしっかり保湿!


電動シェーバーを使うにせよカミソリを使うにせよ、ヒゲ剃りをするとどうしても皮膚にダメージを与えることが避けられません。皮膚の表面の角質が傷つけられ、バイア機能が障害されて、ドライスキン、肌荒れの原因となります。

先に述べたように男性の顔面皮膚は、Uゾーンでは水分量、バリア機能がともに低下しています。(参考文献3)男性は女性に比べ皮脂の分泌は多いのですが、テカテカしながらも乾いているというのが男性素肌の実態です。

化粧水は必須ではない!


保湿というと化粧水を思い浮かべる方が多く、男性でもスキンケア製品でもっとも利用率が高いのは化粧水という結果が出ています。

しかし、ドライスキンは本質的には水分不足というより皮膚で水分を保持できない(バリア機能不全)ことにあるため、化粧水は保湿に必須とは言えません。美容液、乳液、クリームから肌に合うものをひとつ使えば十分です。

額、鼻は除いて、Uゾーンを中心に目まわりも含めて保湿剤を塗りましょう。

保湿剤については、単なる皮膚への水分補給というより、バリア機能の回復が求められることから、有効成分としてセラミドが入った美容液、乳液、クリームをおすすめします。



原則4 UVケア

男性肌は紫外線に敏感なのに・・


日本人を対象にした研究で男性の方が女性より肌の紫外線感受性が高いことがわかっています。(参考文献6)しかし、男性のサンスクリーン剤使用率は低く、紫外線防御は男性スキンケアの大きな課題です。

白くならない、洗顔で落としやすい製剤が男性には使いやすいでしょう。ただ使い心地など好みの問題もありますので、使っている人から少しもらい試してみることをおすすめします。

なおサンスクリーン剤の効力はせいぜい2〜3時間ですから、一日中外にいるなら塗り直しが必要です。

紫外線防御でエイジング対策!


先にも紹介した皮膚の硬さで3つのグループ(A〜C)に分けて検討した研究からは、皮膚の柔らかい群(グループA)では、サンスクリーン剤の使用率が50%程度なのに対し、皮膚の硬い群(グループC)では10%以下にとどまっていました。(グラフとも参考文献3)

(グラフについて)
棒グラフはサンスクリーン剤の使用率を表しています。(左aが頬下部、右bが頬上部)

皮膚の加齢性変化が進行していた群でサンスクリーン剤使用率が低いことから、紫外線防御が皮膚のエイジング対策になり得ることが示唆されます。(参考文献3)

 

 

 

よくいただくご質問

Q

オススメの保湿剤はありますか?

A

セラミド含有保湿剤は数多くありますが、具体的には
NOVⅢシリーズ:保湿美容液バリアコンセントレイト
花王キュレル:乳液またはフェイスクリーム
挙げておきます。

NOVは保湿剤のコンセプトが秀逸なことと医療機関で試されていること、花王キュレルは臨床試験で実績を作ったことを評価しています。

なお、セラミドについては、ヒト型、合成型などと分類されますが、どのセラミドがより効果的か実証されていないため、気にする必要はありません。



参考文献


1)日本人男性の加齢に伴う顔面皮膚の生理的・形態的変化と自己意識について(第2報)
山口あゆみ、他
粧技誌
2007;41(2):103-111

2)男のスキンケア実情〜肌状態・外見・意識〜
大西一禎
香粧会誌
2009;33(4):305-311

3)日本人男性の加齢に伴う顔面皮膚の生理的・形態的変化と自己意識について(第1報)
大西一禎、他
粧技誌
2007;41(2):94-102

4)水性洗顔料の使用方法と肌への影響
佐藤千尋
粧技誌
2013;47(2):93-99

5)Male skin and ingredients relevant to male skin care.
Draelos ZD
Br J Dermatol
2012;166(suppl1),13-16

6)紫外線感受性の性差
長沼雅子、他
日皮会誌
1995;105(11):1427-1430