肝斑

肝斑とは

どんなシミ?

 

顔の頬骨のあたりを中心に地図状に広がる褐色調のシミです。左右対称性に現れるとされますが、片側性のこともあります。まれに網目状に見えることはありますが、点状に出現することはありません。まぶたに入り込むことはなく、それが肝斑かどうかの判別に役立ちます。頬だけではなく、額や口周囲も好発部位でよく見られます。

思春期以降、30歳前後からできはじめ、高齢になると自然に消退するとされます。

 

 

 

原因


A 紫外線
B 女性モルモン
C 遺伝的素因
が原因として挙げられます。

A 紫外線
肝斑のある皮膚の組織検査をすると、特徴的に認めるのが、真皮の「光線性弾性線維症」。これは慢性の紫外線暴露で生じる変化で、「光老化」そのものです。肝斑を光老化の一症状とする見方もあります。

B 女性モルモン
妊娠、出産、また女性ホルモン製剤の内服を契機に発症、増悪することがあります。肝斑のある皮膚の免疫組織学検査をすると表皮で女性ホルモン受容体の発現が亢進しており、女性ホルモンが関与していることの裏付けとなっています。

C 遺伝的素因
肝斑は家族内発生することが知られています。ただし、原因遺伝子は特定されていません。

どのような機序で肝斑はできるのか?


肝斑は外見的には表皮の色素性病変ですが、主病変は真皮といってよさそうです。肝斑ではメラニン色素が増えるわけですが、メラニンを作る色素細胞に直接的に指令を出しているのは、真皮の線維芽細胞と判明しています。ただし、現状では何が線維芽細胞にそうさせているかまではわかっていません。

その他、肝斑に特徴的な病理所見である
1)光線性弾性線維症(光老化)
2)血管増生
3)基底膜の乱れ
4)マスト細胞の増加
は、すべてマスト細胞の紫外線暴露から始まっています。


(参考文献)

Heterogeneous pathology of melasma and its clinical implications.
Kwon SH,et.al
Int J Mol Sci
2016;17(6):824-33

 



肝斑の治療

 

最新の研究から肝斑でメラニン色素が増えるプロセスがわかってきました。肝斑でメラニン色素を作るよう色素細胞に働きかけているのは、真皮にある線維芽細胞でした。

そのことで、なぜ従来肝斑でレーザーが禁忌とされてきたかの謎が解けました。レーザーはメラニン色素がターゲットです。しかし、それでは色素を作るようシグナルを送る線維芽細胞を破壊することはできません。線維芽細胞にはメラニン色素が含まれていないからです。

表面にある色素は破壊して、排除できても、線維芽細胞は無傷で残りますから、すぐにまた色素細胞は過剰に色素を産生し始めます。それどころかレーザーのダメージによる色素沈着も加算されて、治療前よりも色濃くなってしまいます。

その点、レーザートーニングと言われる低出力のレーザー照射であれば、色素沈着を生じにくく、一時的には色素を減らすことができます。ただしそれをずっと続けることはできません。色素脱失という「白斑」ができてしまうリスクが高くなるためです。

現状では、肝斑を根本から治す方法はありません。徹底した紫外線防御、正しい角質ケアを習慣づけるとともに、メラニン色素を排泄させて色味を改善させる治療、肝斑でもっともダメージを受けている真皮への治療を組み合わせることがベストな治療です。

 

ステップ1 治療の前提条件

お肌を「こする」外的刺激が肝斑の原因になるという指摘があります。実際、肝斑の広がる皮膚では、表面の角質がうすくなってして、角質の持つバリア機能が落ちていることが指摘されています。また肝斑の病理所見から紫外線の影響が大きいことがうかがえます。

肝斑治療の前提としては
a 紫外線防御を徹底する
b 正しい角質ケアを習慣づける
ことが必要です。

1-a 紫外線防御を徹底する

紫外線防御には、サンスクリーン剤を塗ればよいと考えられがちですが、適切に塗るのは非常に難しいと言わざるを得ません。顔全体の適切な使用量は、クリーム剤でパール2粒相当、ローション剤で1円硬貨2枚分ですが、実際の使用量はそれよりずっと少ないという調査結果があります。さらに、サンスクリーン剤は3時間程度で塗り直しが必要になります。それを考えると、サンスクリーン剤だけでは、とても「徹底」した紫外線防御は不可能だとわかっていただけるでしょう。

サンスクリーン剤だけで十分とは思わず、「飲む日焼け止め」を内服したり、日傘、帽子、衣服などで物理的に紫外線からお肌を守る工夫も、ぜひ日常生活の中に取り入れて下さい。


飲む日焼け止め

クリスタルトマト

1-b 正しい角質ケアを習慣づける

肝斑が広がる皮膚では、皮膚表面の角質が薄くなっています。角質にはバリア機能がありますから、バリアが機能不全になっているというわけです。正しい角質ケアでバリア機能を回復させることが必要です。

正しい角質ケアとは、できるだけ角質を愛護的に扱うこと(擦る、引っ掻くは厳禁!)。とくにメイクをするとき、落とすときが大切です。たとえ自分では強く触っている自覚がない方でも、肝斑がある以上そのままでいいことにはなりません。ぜひご自身のスキンケアを見直して下さい。


ステップ2 表皮の色素を減らす(見た目を治療する)

2-a 美白剤

メラニン色素は、アミノ酸の一つチロシンから多くの段階を経て形成されます。肝斑治療に使われる代表的な美白剤は、ハイドロキノンですが、ハイドロキノンはメラニン生成における重要な酵素であるチロシナーゼを阻害することでメラニン生成を強力に抑制します。ハイドロキノンは美白剤として長く使われていますが、もっとも強力な美白剤であることに変わりありません。

美白剤では即効性は期待できません。新たに作られるメラニン色素の量を減らすことができても、すでにあるメラニン色素が新陳代謝で少しずつ排泄されるのを待たねばならないからです。効果が出るのにおよそ3ヶ月かかります。

ハイドロキノンは赤みなどの刺激症状が出る方もいますので、そうした方にはアゼライン酸をおすすめします。

ハイドロキノン

ナノHQクリーム

2-b ケミカルピーリング


メラニン色素の生成を抑制する美白剤と異なり、表皮からのメラニン排泄を促進して、色調を薄くするのがケミカルピーリングです。ケミカルピーリングは、皮膚表面の角質をその剥離作用で薄くすることで、表皮のターンオーバーを促進させ、新しい健康的な角質に作り替えます。

ただ、肝斑の広がる皮膚では、角質が薄くなっているため、ケミカルピーリングが過度に刺激的に感じられることがあります。その場合は、正しい角質ケアが習慣づいて角質が回復してからにしましょう。ケミカルピーリングは肝斑治療のメンテナンスとして用いるのに適しています。

2-c レーザートーニング

QスイッチNd:YAGレーザーを使って、低出力で反復照射を繰り返す治療法が「レーザートーニング」です。色素細胞へダメージを与えることなく、メラニン色素のみを分解し、その排出を促進させます。

2008年以降肝斑に対する治療法として急速に広まりましたが、一方で肝斑の増悪や色素脱出のリスクも明らかとなり、漫然とレーザートーニングを続けることは避けるべきと考えられるようになりました。

当院では、フラクショナルQスイッチルビーレーザーを用いてトーニング治療を行います。単なるQスイッチルビーレーザーでは、たとえ低出力で照射しても肝斑の増悪が避けられませんが、フラクショナル照射することで、炎症後色素沈着のリスクを抑えています。

トーニング治療は、肝斑の表皮内メラニン色素の排出を一時的に促進する治療手段です。根本的に肝斑を治療する施術ではありませんが、肝斑の色調をコントロールすることができます。

おすすめする治療

◎ルビートーニング

ステップ3 真皮のダメージを回復させる(原因を治療する)

3-a トラネキサム酸の内服

1979年に日本人医師が最初にトラネキサム酸が肝斑に有効だったとする報告を行い、それ以来検証を重ねた結果、日本ではトラネキサム酸は肝斑治療におけるもっとも有効な手段と位置づけられています。

川島らが行った有名な臨床研究では、トラネキサム酸、ビタミンC、Lシステインの3剤の併用治療で、肝斑に対する有効性を実証しています。これはその後「トランシーノ」の名で肝斑に対する内服薬として発売されることにつながりました。

また、肝斑研究では最近韓国から相次いで研究報告が発表されていますが、トラネキサム酸の内服と外用を併用して、治療前後で組織検査まで行った論文が注目されます。それによるとトラネキサム酸は、メラニン色素を減少させたばかりか、肝斑での特徴的な真皮所見である血管の増生、マスト細胞の増加までが抑えられることが分かりました。つまりトラネキサム酸は、表面的な色味を改善するだけでなく、肝斑でダメージを受けている真皮まで治療している可能性があります。

当院では肝斑治療として、トラネキサム酸、ビタミンC、Lシステインの3剤の内服とトラネキサム酸クリームの外用を標準治療としています。


(参考文献)
1肝斑に対するDH-4243(トラネキサム酸配合経口薬)の多施設共同無作為比較試験
川島 眞、川田 暁、林 伸和、他
臨皮
2007;61:735-43

2Effect of tranexamic acid on melasma:a clinical trial with histological evaluation.
Na JI,et.al
J Eur Dermatol Venereol
2013;27(8):1035-9

 価格(税込)
トランサミン 28日分 1,680円
シナール(ビタミンC)28日分 1,040円
ハイチオール(Lシステイン) 28日分 960円
肝斑セット(上記3剤)28日分 3,680円
トラネキサム酸クリーム20g 2,000円

■消費税別途

 

 

3-b トレチノイン


トレチノインは「真皮のダメージを回復させる」治療ですが、「表皮の色素を減らす」治療でもあります。

肝斑における主病変が真皮であり、その真皮で光老化の所見が目立つことから、肝斑を光老化の一症状とする考え方があります。そうであるなら光老化の治療薬であるトレチノインは肝斑を根本から改善できる可能性があります。

トレチノインは、ハイドロキノン、ステロイドと合わせた3剤での外用療法が、世界的には肝斑にはもっとも有効な外用剤と評価されています。しかし、肝斑治療が長期に及ぶことを考えるとステロイドの副作用が懸念されます。

それ以上にトレチノインで避けられない刺激症状がそうでなくても日本人には敬遠されがちであるのに、まして肝斑があるということは、角質がうすくなってバリア機能が落ちているわけですから、とても最初からは使いにくいという面があります。

トレチノインはメンテナンスとして使うことをおすすめします。


おすすめする治療

◎メラフェード

 

 

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