2022.09.01更新

 

室内で必要? 日焼け止め


■こんな専門家も・・
室内にいるときでも、窓から日光が入るから、日焼け止めを塗っておいた方がいいと勧める専門家がいるらしい。確かに「紫外線の中でもUVAは波長が長いから窓ガラスを貫通して室内に入り、肌を老化させる・・」と書かれた文章を見かけることは多い。

■しかし・・
室内の光線量を実際に調べたわけでもないし、文献的な裏付けをしっかりおさえているわけでもないので、強くは言いづらいのですが、それはやりすぎではないだろうか、本当はいらないのでは?

■こんな調査が・・
そうした判断を支えているのは、数年前に講演で聴いた話。子供の近視が激増している原因は、外で遊ぶ時間が短くなって、太陽光に含まれるバイオレットライト(ブルーライトの近縁)が目に入らなくなったからという話。

この学説を唱えた慶応大学眼科の調査研究によると、都内の学校の教室内ではまったくバイオレットライトを検出できなかったといいます。窓からも入らなければ、照明にも含まれていない。ついでに言えば、メガネのレンズもバイオレットライトを通さない(だからメガネをかけると近視が進行するのかも)。

バイオレットライトすらないなら、それより波長の短いUVAがあるわけない。窓ガラスは紫外線のうちUVBはシャットアウトするけど、UVAは通してしまうとされてきたわけですが、それは昔の板ガラスの話で、現代建築のサッシ窓ならUVAもシャットアウトしている可能性がある。

■車内と室内
アンチエイジング医学の領域で、光老化の例としてよく使われるトラックドライバーの写真があって、これは顔の右半分だけが顕著に肌が劣化しているのですが(運転中に顔の右側にだけ日光を浴びている)、ガラスを通してでも光老化が進行する一つの実例になっています。

でも、車内と室内を同一視するのはさすがに強引。車内というのはガラスと人の位置が数十センチの距離に固定されている特殊な状況。室内で言えば、窓ガラスにずっとへばりついているようなもので、そんな過ごし方をする人はいない。

■可視光線からの防御は難しい
日光憎し(?)で凝り固まった方の中には、紫外線(UVA)はともかく、窓ガラスから光が入るなら可視光線は通してるはずで、可視光線でもブルーライトは日焼けの原因になるではないかと反撃してくるかもしれません。

しかし、それをいうなら市場に出回るほとんどの日焼け止めでは、どんなにSPFやPAが高くてもブルーライトなど可視光線の防御にはならないから、そう簡単に「室内でも日焼け止めを!」と言うなと反論したい。

■海外では・・
米国皮膚科学会は、外出前に、できたら15分前までに日焼け止めを塗るよう推奨しています。たぶん世界中探しても、室内での日焼け止めの使用を推奨しているガイドラインなどはないでしょう。ただ、さすがにそれを確かめてくれとは言わないでいただきたい。ないものをないと証明するのは難しいですから。

■たまにはお肌に楽をさせてあげて
吹けば飛ぶような話を大げさにして、がんじがらめのスキンケアを推奨するのが専門家の役目とはとうてい思えません。「室内でも日焼け止めを!」なんて、そんなスキンケアは窮屈すぎます。室内ではスキンケアも最小限にして、お肌を少しでも負担から解放してあげてはいかがでしょうか。


 

(参考文献)

1) How to apply sunscreen
https://aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen

2) Photoprotetion: clothing and glass
Almutawa F, et al.
Dermatol Clin.
2014;32(3):439-448

3) Photoprotection by window glass, automobile glass, and sunglasses
Tuchinda C, et al.
J Am Acad Dermatol.
2006;54(5):845-854

4) The role of glasses as a barrier against the transmission of ultraviolet radiation: an experimental study
Duarte I, et al.
Photoimmunol Photomed.
2009;25(4):181-184

5) Visible light Part II: Photoprotection against visible and ultraviolet light
Geisler AN, et al.
J Am Acad Dermatol.
2021;84(5):1233-1244


 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.08.15更新

正直に白状すれば、私は有酸素運動が好きではありません。ジムでバイクをこいだり、ランニングマシンで走っていると、ハムスターになったようで人間性を否定された気分になるし、単調さに耐えかねて「この時間を本や論文を読む時間に使った方が、自分の残された人生において有益ではないだろうか・・」というバカげた疑問に真剣に悩むことになります。

しかし、それでも有酸素運動には同情(?)するところもあって、それはほんとうのスゴさが十分に知れ渡っていないこと。有酸素運動のメリットというとたいてい心肺機能を強化できるとか、インスリン抵抗性や動脈硬化が改善するというのですが、そんな説明では人の心に響くわけがない。

有酸素運動のほんとうのスゴさは、今が健康だろうが、闘病中だろうが、長生きできるようになること。


米国には身体活動のガイドラインがあって、成人では週に有酸素運動を中強度(ウォーキングなど)なら150分以上、高強度(ランニングなど)なら75分以上、加えて筋トレを週2回以上することが推奨されています。

米国人はネコも杓子もランニングしている印象がありますが、実際にガイドラインを満たす身体活動をしているのは、成人全体の16%。有酸素運動だけ満たしたのは24%、筋トレだけは4.5%だとか。

そしてここからがスゴいのですが、50万人の成人米国人を対象に調査したところ、ガイドラインを満たす運動をしていた人は、全ての死亡原因をまとめた比較で、運動をしていない人に比べ、死亡率が40%、有酸素運動だけでもしていれば29%も減少していたのです。

死因を癌、心血管系、事故・ケガなどと8つの原因別に分けたとき、有酸素運動はすべての原因別死亡率を減少させていました。

そして、付け加えればこの効果は、健康人より基礎疾患のある人でより大きかったのです。


日本人でのデータもあります。それは糖尿病患者を対象にした研究ですが、1日30分程度のウォーキングで、なんと死亡率はほぼ半減しました。

この研究では、当初は心臓病による死亡率が減ることで、全体の死亡率を減少させるだろうと予想を立てていたようですが、実際は心臓病での死亡はそんなに減っていなくて、それではなぜ死亡率が半減までしたのかよくわからないという、何とも締まらない結末になるのですが、それにしても半減とはスゴい。

日頃、医者というのは、わずかな人数を対象にした研究で、吹けば飛ぶような数値の差を、統計式をこねくりまわして有意差があるとかないとかで大騒ぎしているのですが、それを思えば、何千、何万人単位で30%とか50%の差なんて、開いた口がふさがりません。

ここまで来ても、意気地のない私なんか「あまり膝に負担をかけると、膝関節症になるから・・」と駄々をこねたくなるのですが、最近講演で聞いた話では、ランニングしている人の方が、何もしていない人より膝関節症になりにくいとのことなので、残念ながら心配無用のようです。

「あんまり時間が・・」という最後の粘りにも、それなら筋トレは置いといて、まずは有酸素運動だけでもすべきというのが、エビデンスに基づく冷徹な結論。文献を読み過ぎたせいか、どうにも逃げ場がなくなって困ってしまいます。あとは朝の犬の散歩を何とか有酸素運動と呼べないかと、どこまでも図々しく考えているのですが、チンタラ歩いているだけなので、呼べるワケがない・・・。


有酸素運動とはいえないか!?


 

(参考文献)

1) Physical Activity Guidelines for Americans 2nd edition
https://health.gov/sites/default/files/2019-09/Physical_Activity_Guidelines_2nd_edition.pdf

2) Recommended physical activity and all cause and cause specific mortality in US adults: prospective cohort study
Zhao M, et al.
BMJ
2020;370:m2031

3) Leisure-time physical activity is a significant predictor of stroke and total mortality in Japanese patients with type 2 diabetes: analysis from the Japan Diabetes Complications Study(JDCS)
Sone H, et al.
Diabetologia
2013;56:1021-1030

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.07.31更新

大局観


■専門家が情報を伝えるということ
ツイッターをはじめて1年が過ぎました。規則正しく1日3個つぶやき続けています。私の場合は美容医学、抗加齢医学に関連した文献から情報を切り抜いて紹介しているのですが、文献といってもピンキリで、怪しげな情報にもいくらでも出会いますが、誤りの「少ない」情報提供をいつも心がけています。

すべて正しいと言いたいところですが、神様ではないので、間違う可能性はいくらでもあります。実際に何を発信するかにはいつも頭を悩ませていて、その判断基準は長年の経験に基づく「大局観」としかいいようがありません。

■騒動一部始終
先日Twitterに、大学人としての華々しい経歴を掲載している先生が「レチノールを夏に使うのは控えた方がいい。皮膚癌のリスクが高くなるから。」とツイートしてちょっとした騒ぎになりました。まもなく別の皮膚科専門医の方が「デマに騙されないように!レチノールやディフェリンではなく、それはパルミチン酸レチノールの問題。」と火消し役を果して、この騒ぎは終息に向かったのでした。

■ほんとうの終息に向けて
ただ、「パルミチン酸レチノールの問題」なら一安心・・なわけはなく、やはり大問題。パルミチン酸レチノールを含有するコスメなんて日本はもちろん世界中にあふれています。

すべての始まりは、実験用に遺伝子操作された特殊なマウスに、パルミチン酸レチノールを塗って紫外線をあてると皮膚腫瘍が増えたという報告。米国FDA内の毒性を研究する機関が10年ほど前からポツポツ発表しています。

私の「大局観」からすると、パルミチン酸レチノールはシロ。そもそもFDAが人間での安全性を承認したから、さまざまなコスメ製品に使われているわけで、安全性に懸念があるというなら、しかも同じFDA内の機関が報告しているなら、10年もこの問題が放置されるわけがない。FDAがコスメメーカーに安全性の再調査を命じたという話は一向に聞こえてきません。

私の「大局観」では、みなさんが安心しないでしょうから、皮膚科領域での一流紙がこの問題をどう取り上げたか紹介します。American Journal of Clinical Dermatologyは2021年に出した総説でこう総括しています。
「十分に立証されていないし、(マウスの実験だけで)人では報告されてもいない。さらなる研究が必要である。」
紹介だけして、それ以上議論すらしていません。

American Journal of Clinical Dermatologyという虎の威を借りるのはイヤらしいですが、パルミチン酸レチノールの安全性には現時点で疑問の余地はないと結論づけさせていただきます。

■あらためて考えさせられること
自分のツイートを見て下さる方には少しでも有益な情報を提供したいという気持ちは誰でもあるから、ツイッターに勇み足で投稿した先生を非難する気にはとうていならないのですが、しいて反省点を探せば、情報の重大さに気づいて、情報の裏を取る努力をして欲しかった。専門家であっても、その専門領域のすべてを知り尽くすことはできないわけで、今回は専門家として情報をSNSで発信することの難しさを痛感させられました。

(参考文献)
1) Sunscreens and photoaging: a review of current literature
Guan LL, et al.
Am J Clin Dermatol.
2021;22:819-828

2) Photo-co-carcinogenesis of topically applied retinyl palmitate in SKH-1 hairless mice
Boudreau MD, et al.
Photochem photobiol.
2017;93:1096-1114

3) Vitamin A and its derivatives in experimental photocarcinogenesis: preventive effects and relevance to humans
Shapiro SS, et al.
J Drugs Dermatol.
2013;12(4):458-463

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.07.18更新

前回書いたようにバストを下垂させる要素として
・加齢
・22.7キロ(50ポンド)を越える体重減少
・肥満
・大きなブラサイズ
・妊娠回数が多い
・喫煙
を指摘した報告の中で、強調されていたのは、ひとつは「母乳育児は下垂の原因ではない」であり、もうひとつが、「筋トレしても下垂の予防や改善にはならない」ということ。

バストの下垂に関して、問題があると思うのは「クーパー靱帯が伸びてバストがたれてしまう」という説明。

あたかもクーパー靭帯が胸壁から伸びて乳房全体を支えているように誤解されやすいのですが、実はクーパー靱帯は乳腺組織と皮膚をつなぐ靭帯です。

バストの下垂を報告した米国の形成外科医は、筋トレが役に立たない理由をうまく説明してします。

「バストは皮膚とは強く、筋肉(胸壁)とはゆるくつながっています。(筋トレをしても)バストは筋肉とともに上がる以上に、皮膚とともに落ちるものなのです。」

これだけでは希望を打ち砕くだけですが、希望の灯として、ワコールからの発表を紹介しておきます。

ワコールが集積している日本人女性の体型計測のデータ解析によると、加齢による体型の変化は誰でも同じように進むのですが、進み方には個人差があって、40代、50代になっても20代の体型を維持している女性が2割ほどいるそうです。その人たちの特徴として以下の3つが挙げられています。

1)運動
特別ハードなトレーニングというわけではなく、美しい姿勢を意識していたり、たくさん歩いたり、身体をよく動かすことを心がけている。
2)食事
規則正しい食生活をしている。
3)下着
正しいサイズの下着を着用している。

ワコールの悪いクセ(?)は最後は必ずサイズの合った下着が大切と話をまとめようとするところ。まあそれは民間営利企業だから仕方ないと大目に見ることにするとして、注目すべきは「たくさん歩いたり」が挙げられていること。


揺らした方が

「バストが垂れるから有酸素運動はしない方がよい、筋トレだけしてればいい!」という見解があるのを知って、それに反論しようと、ここ数ヶ月バストや有酸素運動について文献を読みあさったのですが、「たとえバストを揺らすとしても、ウォーキングやジョギングなど積極的に身体を動かして健康的な生活を送ることが、結局は体型維持の秘訣である!」を結論とさせていただきます。

 



(参考文献)
1) Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

2) 日本女性の加齢による体型変化
坂本 晶子
アンチ・エイジング医学
2014;10(6):78-83

3) ボディエイジング〜加齢による女性の体型変化〜
岸本 泰蔵
日皮協ジャーナル
No.65(2011.2):278-286

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.07.03更新

論理の誤りの典型に「単なる前後関係を因果関係と見誤る」というのがあります。たとえば洗車をしたら雨が降ってすぐ汚れたことから、「洗車をしたから雨が降った!」と洗車が原因、雨が結果と思い込むこと。

これくらいバカバカしいとすぐに見透かすことができますが、では「授乳するとバストが垂れる」はどうでしょう?

何がバストを下向きにするのか


実際、世界の文化圏をまたいで、「授乳はバストの形を崩す」伝説はひろまっています。イタリアの女子高生の30%はそう信じていると回答していますし、ドミニカの女性が早めに母乳育児を切り上げる理由にもなっています。

このように「授乳はバストの形を崩す」伝説は、世界中の育児に影響を与えているわけですが、実は授乳がバストの形態にどう影響するか医学的な検証は行われていません。

バストは美容外科における大きな柱のひとつ。日本では圧倒的に胸を大きくする豊胸術が行われますが、米国では逆に大きく、垂れた胸を小さく、引き上げる手術がよく行われます。

肥満が社会問題になっている米国では、胃を小さくしたりする肥満に対する手術がよく行われ、その結果大幅に減量してバストが垂れて、今度はバストの下垂に対する美容手術の件数も伸びているとか。

そんなバストの下垂と日々向かいあう米国の形成外科医から、「何がバストを下垂させているか?」を検討した報告が出されました。

それによるとバストを下垂させる原因とされたのは
・加齢
・22.7キロ(50ポンド)を越える体重減少
・肥満
・大きなブラサイズ
・妊娠回数が多い
・喫煙
でした。

この報告は、「授乳はバストの下垂の原因にはならない」と結論づけています。「妊娠することで下垂したのであって、授乳したからではない」と、前後関係はあっても、原因と結果の因果関係にはないとしています。

報告した医師は、「授乳でバストが崩れる」ことへの懸念が、先進国で母乳育児する率が高まらない一因になっていると憂慮していますが、「妊娠でバストが崩れる」としたら、ますます少子化に拍車がかかるのではないかと私は憂慮してしまいます。


(参考文献)
Breast ptosis: causes and cure
Rinker B,et al.
Ann Plast Surg.
2010;64(5):579-584

 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.25更新

■□■□■□■□■□■□■ニキビ治療の誤解「ブツブツが治ったら治療は終わり」

ニキビ診療での課題のひとつは「皮膚科受診の遅れ」ですが、もうひとつ「中途半端な治療」も課題といえます。

多くの方は、「ブツブツが治ったら治療は終わり」と考えがちですが、治療を止めれば当然またできてしまうわけで、ひどくなったときだけ皮膚科にかかることを繰り返しています。

ニキビ治療の終わりをハッキリ線引きするのは難しいですが、そう簡単に肌質が変わるはずもないので、治療は長期戦を覚悟しなければなりません。


ニキビ治療は長〜いお付き合い

■□■□■□■□■□■□■治療を継続することに意味はある!?

もちろん治療の継続をいうからには、続けることに意味がないといけないのですが、その点については、次のようなエビデンスがあります。

日本では未発売ですが、エピデュオ・フォルテ(アダパレン0.3%+過酸化ベンゾイル2.5%)を使った臨床報告です。

ニキビ患者を集めて、顔の半分にだけこのエピデュオ・フォルテを6ヶ月間塗って治療効果をみました。

この報告の最も画期的な点は、塗り薬であるエピデュオ・フォルテでニキビ瘢痕の数を減らしたことですが(もちろん炎症性ニキビの減少、テクスチャーの改善も)、効果は3ヶ月、6ヶ月と尻上がりに上がって、治療を継続するすることの重要性が示唆されました。

実はこの報告には続きがあって、調子にのった(?)研究者が、さらに治療期間を半年延長したのです。

するとフォルテを使用した半顔は、半年でニキビ痕は22%減少していたのですが、1年後には27%まで減少させることができました。

返す返すも残念なのは、日本ではエピデュオ・フォルテは使えず、アダパレン(ディフェリン)の濃度が低いエピデュオゲルしかないこと。

ただこのシリーズには、そのエピデュオゲルを使ったバージョンもあって、半年間使用してニキビ瘢痕を増加させなかったという結論が得られています。しかも新しいニキビ瘢痕ができるのを防ぐだけでなく、すでにあるニキビ瘢痕を、数としては減らせなかったけれど、目立たなくするに役立ったと評価されています。

ニキビ治療をまじめに半年、1年と続けられる人はほとんどいないのではないでしょうか。ぜひ1年は続けて、そのとき止める理由がなければさらに続けてはどうでしょう。新しいニキビが出来るのを防ぐだけでなく、すでにある瘢痕の数を減らせる可能性すらあるのですから。


■□■□■□■□■□■□■ニキビの正解とは!?

ニキビには治療のガイドラインがあって、そこでは急性炎症期の治療に続いて、「維持療法」が明記され、アダパレン(ディフェリン)やBPO製剤の外用療法が推奨されています。

ニキビは「ブツブツが治ったら治療は終わり」なのではなく、その後またできないように「維持療法」を続ける、それが正解なのです。

ガイドラインが掲げる基本方針なのに、そうしたことがなぜか一般には浸透していないように思われます。何か裏があるのでしょうか?

もしかしたら維持療法が一般化して、国民の医療費がさらに増えるのは避けたいという政治的思惑から、あまり声高には言わないことになっているとか・・さすがに考えすぎか。


(参考文献)
1)Adapalene 0.1%/benzoyl peroxide 2.5% gel reduces the risk of atrophic scar formation in moderate inflammatory acne: a split-face randomized control trial
Dréno B,et al.
JEADV
2017;31:737-742

2)Prevention and reduction of atrophic acne scars with adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in subjects with moderate or severe facial acne: results of a 6-month randomized, vehicle-controlled trial using intra-individual comparison
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2018;19:275-286

3)Long-term effectiveness and safety of up to 48 weeks' treatment with topical adapalene 0.3%/benzoyl peroxide 2.5% gel in the prevention and reduction of atrophic acne scars in moderate and severe facial acne
Dréno B,et al.
Am J Clin Dermatol.
2019;20:725-732



 

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.18更新

ニキビには「早期から治療を!」と皮膚科の先生は言いますが、ほんとうに早期から治療したらメリットがあるのでしょうか?


結局、一番悪いのは


実はこれは簡単明瞭で、反対の意味の「治療の遅れ」がニキビが瘢痕化する有名なリスクファクターとして知られています。

リスクファクターの中でも特にこの「治療の遅れ」が重要視されるのは、これだけは自分でなんとかできるから。

そのほかのリスクファクターである「家族歴の有無」は、自分ではどうにも変えようがないし、「重症ニキビ」だって、そうなってからでは手遅れです。


ただ皮膚科の先生が一生懸命「早期からの治療」を叫んでも、実はそれを妨げている一因は皮膚科の先生自身にもある気がします。

日頃、ニキビのできている方には皮膚科受診をすすめるのですが、「時間がかかりすぎる」、「行っても治らない」、「ろくに診てくれない」、「話を聞いてくれない」と逆襲されることも多い。

そんなときは同業者の肩をもって「今の医療制度では、たくさんの患者さんを診ないと経営的に成り立たないから、皮膚科の先生も大変なんですよ」とフォローしますが、ほんとうにそうなのかどうかは定かではありません。

問題の多いニキビ診療の現状が、結局は美容皮膚科医につけいる余地を与えているわけで、うまい汁を吸ってる同業の先生方には「おぬし、ワルよの~!」と申し上げたい。



(参考文献)
1)Acne scarring: why we should act sooner rather than later
Dréno  B,et al.
Dermatol ther.
2021;11(4):1075-1078

2)Development of an atrophic acne scar risk assessment tool
Tan J,et al.
J Eur Acad Dermatol Venereol.
2017;31(9):1547-1554

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.09更新

ニキビの文献を読んでいて、次のような言葉を見つけました。

「ニキビには重症度のいかんを問わず瘢痕化するリスクがある。皮膚科医はたとえ軽症のニキビ患者であっても、早期から継続的な治療で瘢痕形成を防がねばならない。」

ニキビ治療の究極の目標は、ニキビの瘢痕化を防ぐこと。これが皮膚科・美容皮膚科の共通の認識なのです。

ニキビ瘢痕こうできる



ただそうなると、どんなニキビが瘢痕化しやすいのか、あらかじめ予想がつくと好都合。ところがこれまではただ漠然と「重症のニキビ、炎症の強いニキビほど瘢痕化しやすい」と言われていただけ。

反論の余地はないように思えますが、でも実際の臨床ではそう簡単に割り切れないから前述のように、「重症度のいかんを問わず」、「たとえ軽症であっても」となるわけです。

そんな臨床上のモヤモヤを吹き払うかのような、顔のニキビのひとつひとつをキッチリ2週間毎に6ヶ月追跡した臨床研究が報告されました。

それによると、ニキビ瘢痕の83%は炎症後の赤みや色素沈着から生じていました。もっとも多いのが、赤ニキビ→炎症後の赤み→瘢痕とたどるコース。

また、あとで瘢痕になった丘疹(ブツブツ)は、ならなかった丘疹より経過が長かった(10.5日対6.6日)ことも判明しました。

結論自体は当たり前すぎます。経過が長く、ブツブツが平らになったあとも赤味が残るような重症のニキビ、炎症の強いニキビほど凹み(瘢痕)を作りやすい、というものですから。

しかし、この研究は「長い経過」、「赤み」が、瘢痕になるニキビを見分ける重要なポイントだと明らかにしました。

ということは、「長い経過」の間に、まだ「赤み」のうちに適切な治療を開始すれば、瘢痕になることを予防できる可能性がありそうです。できてから1週間以上たつもの、平らになってからも赤みの残るものを放置していてはいけません。


(参考文献)
1)Acne scarring: why we should act sooner rather than later
Dréno  B,et al.
Dermatol ther.
2021;11(4):1075-1078

2)Prospective study of pathogenesis of atrophic acne scars and role of macular erythema
Tan J,et al.
J Drugs Dermatol.
2017;16(6)567-573

 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.06.03更新

皮膚粗鬆症は、美容皮膚科の対象ではありません。しかし、それでは皮膚科領域かと言えばそうでもない。なぜなら皮膚粗鬆症というのは正式な病名とは認められていないから。

では、誰が診ているのか?誰も診ていません。

皮膚粗鬆症

実際に皮膚粗鬆症で皮膚が剥けたりして生活に支障をきたしているのは、ご高齢のとくに介護施設などでケアを受けている方々に多いと想像されます。そうした施設に行くと手足に痛々しく包帯を巻いている方をよく見かけます。

皮膚が剥けてしまうことが、どれだけ大変なことか。皆様の中にもヤケドを負ったりして、皮膚のありがたみを実体験した方もいらっしゃるでしょう。面倒でも毎日手当しないといけませんし、触るといたいし、入浴のさいにはさらにしみて痛い。

介護施設には痛くても、お世話をしてくれる方には気兼ねして正直に言えず、ただただ我慢している方がたくさんいらっしゃるに違いありません。

何もやりようがないなら、それは年をとることの「苦痛」のひとつとして割り切るしかありません。しかし、少しでも改善させる対処法があるなら、少しでも痛みがなく、穏やかに暮らせるようにしてあげたい。

理想的には1%中分子ヒアルロン酸、0.05%レチナールと5%ビタミンCを含んだ保湿クリームがあればベストですが、コストが高くなりすぎて現実味がありません。

もし、このブログがどなたか化粧品メーカーの方の目に触れることがあれば、せめて有効成分として中分子ヒアルロン酸とビタミンCがある程度含まれた保湿剤を作っていただけませんでしょうか。

それは決して大きな利益を稼ぐようなものではありませんが、現実に苦しまれている多くの高齢者の方に福音をもたらし、メーカーにとって会社としての存在価値は爆上がりするに違いありません。



 

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投稿者: 美容外科・美容皮膚科 青い鳥

2022.05.27更新

皮膚粗鬆症は、肌の「究極の老化」、ということは、皮膚粗鬆症に効果的な治療法こそが、ほんとうのエイジングケアといえるし、有効でない治療は、エイジングケアとして役立たずだということ。

皮膚粗鬆症の治療法が模索される中で明らかになったのは、ヒアルロン酸の重要性です。


美肌へのアプローチ


これまでの美肌術はコラーゲンをターゲットにすることが多く、バカのひとつ覚えみたいに「コラーゲンを増やします!」なんてアピールしていたわけですが、実はそんなことはそれほど大事じゃなかった。

ひとつの証拠になるのは、皮膚粗鬆症の治療において、いわゆる「コラーゲン」を増やす施術は結果を出せていないこと。

もうひとつの証拠は、ヒアルロン酸を使った美肌術で、たとえば厚労省御用達(?)アラガン社のボライトでは、1回注入して数週間で結果が出ていること。

「コラーゲンを増やす」施術では、その期間では顕微鏡で見たらコラーゲンが増えてるのがわかるくらいがせいぜい、肉眼的にはまだ効果が見えてくるはずがない。コラーゲンなんて増やそうとしなくても、ヒアルロン酸を増やすだけで十分に美肌効果は出るということがわかってしまった。

皮膚の老化において、確かにコラーゲンも減少しているのだけれど、一番本質的で、皮膚の萎縮に直接的に関与しているのはヒアルロン酸。だからこそヒアルロン酸を補充することで皮膚の萎縮は改善される。

これまでの美容業界全体で推進してきた「コラーゲン伝説(コラーゲンを増やせば肌にハリが戻る)」は誤りとまではいえないけれど、ずいぶんと本質を遠回りしている感が否めません。

美容医療業界は皮膚の「再構築」という言葉が好きですが、皮膚のヒアルロン酸が代謝される過程でのヒアルロン酸受容体の活性化が「再構築」のカギを握っています。皮膚のヒアルロン酸代謝を活発に、そして円滑に回し続けることが、皮膚の「再構築」、老化対策としてもっとも重要なポイントなのです。


レチノイドが皮膚の老化治療に有効な理由として、コラーゲンの分解を抑制し、生成を促進するという面が強調されますが、それももしかしたら本質を見誤っているかもしれない。レチノイドは、皮膚のヒアルロン酸量を増やし、またヒアルロン酸受容体も増やすので、そちらがレチノイドの抗老化作用として本質的なのかも。

ここ数年で美容医療業界にはヒアルロン酸を主成分とした美肌術が次々に登場していて、私はそれを「ヒアルロン酸充填療法」と勝手に分類しているのですが、ヒアルロン酸充填療法とレチノイドの組み合わせは、現状で最強のエイジング対策と確信しています。


 

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